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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】盗難監視システム及びその監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 13/02 20060101AFI20230613BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G08B13/02 A
G08B25/04 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018188248
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020057254
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】米本 和浩
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重嘉
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-065590(JP,A)
【文献】特開2003-063356(JP,A)
【文献】特開2011-044037(JP,A)
【文献】特開2005-322017(JP,A)
【文献】特開2008-243071(JP,A)
【文献】特開2017-173041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0189531(US,A1)
【文献】特開2007-140587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R25/00-99/00
G01H1/00-17/00
G08B13/00-15/02
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物に取り付けられ、当該監視対象物の振動を検出する第1の振動検出センサと、
前記第1の振動検出センサとは離隔し、前記監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するための第2の振動検出センサと、
前記第1の振動検出センサの検出結果を無線により送信する第1の送信装置と、
前記第1の送信装置から送信された検出結果を受信して前記第2の振動検出センサの検出結果と比較し、有意な振動が発生したと判定したときに、発報する信号収集検出装置とを具備する盗難監視システムにおいて、
敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視する場合に、敷設済のケーブルの全体に亘って定期的なパルス通信を行うパルス通信手段を更に設け、
前記パルス通信手段によるパルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断する
ことを特徴とする盗難監視システム。
【請求項2】
前記第1の振動検出センサは、監視対象物に取り付けられた子機であり、
前記第2の振動検出センサは、監視対象物の振動を検出するための基準となる信号を出力する母機であり、
前記信号収集検出装置に有線または無線で前記基準となる信号を送信する第2の送信装置を更に具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の盗難監視システム。
【請求項3】
前記第2の振動検出センサは、前記外乱に加えて更に前記監視対象物とは別の監視対象物の振動を検出し、
前記信号収集検出装置に無線で前記第2の振動検出センサで検出した振動を無線により送信する第2の送信装置を更に具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の盗難監視システム。
【請求項4】
前記振動検出センサは、加速度を検出する、ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つの項に記載の盗難監視システム。
【請求項5】
前記信号収集検出装置は、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの検出結果との差が、所定値を所定時間連続して超えたとき、あるいは所定値を所定回数超えたときに有意な振動が発生したと判定して発報する、ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1つの項に記載の盗難監視システム。
【請求項6】
前記信号収集検出装置は、有意な振動が発生したと判定した場合に、ネットワークサービスを介して外部サーバへ電子メールで発報する、ことを特徴とする請求項5に記載の盗難監視システム。
【請求項7】
監視対象物の振動を検出する第1の振動検出センサと、前記第1の振動検出センサとは離隔し、前記監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するための第2の振動検出センサとで振動を検出するステップと、
前記第1の振動検出センサの検出結果を無線により送信するステップと、
前記第1の振動検出センサの検出結果を受信し、前記第2の振動検出センサの検出結果と信号収集検出装置で比較するステップと、
前記信号収集検出装置で有意な振動が発生したと判定したときに発報するステップとを具備する盗難監視方法において、
敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視する場合に、前記ケーブルの全体に亘って定期的なパルス通信を行うステップを更に有し、パルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断する
ことを特徴とする盗難監視方法。
【請求項8】
前記第1の振動検出センサで検出した振動と前記第2の振動検出センサの検出結果とを信号収集検出装置で比較するステップは、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの最新の複数の検出結果を比較する、ことを特徴とする請求項7に記載の盗難監視方法。
【請求項9】
前記発報するステップは、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの検出結果との差が、所定値を所定時間連続して超えたとき、あるいは所定値を所定回数超えたときに有意な振動が発生したと判定して発報する、ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の盗難監視方法。
【請求項10】
前記発報するステップは、有意な振動が発生したと判定した場合に、ネットワークサービスを介して外部サーバへ電子メールで発報する、ことを特徴とする請求項9に記載の盗難監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力輸送用ケーブルや建築資材、建設機械等の盗難を監視する、盗難監視システム及びその監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設・工事現場では、電力輸送用ケーブルや建築資材、建設機械等の盗難が発生している。
【0003】
そして、例えば、特許文献1には、太陽光発電所等で利用されるケーブルの盗難を監視するために、敷設されたケーブルに近接してLC発振回路部を配置し、発振周波数の変化を検知することで盗難を監視するシステムが開示されている。
【0004】
一方、工事現場に静置された敷設前の電力輸送用ケーブルや建築資材、建設機械等については、監視対象物に振動検出センサや傾斜センサ等を取り付け、センサの設置後の揺れや傾き開始を検出して発報することで、盗難を抑止する監視装置が市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-33219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単純に振動や傾きの変化を検出したのでは、地震動等により誤作動する可能性がある。また、敷設済のケーブルでは、ケーブル長全体を監視することはできない。
【0007】
特に、建設・工事現場では、センサ近傍における重量のある車両の移動や、機械工具(杭打機等)の稼働による振動、固定具の緩み等による傾きの変化等の様々な要因の外乱が発生する。このため、センサが盗難以外の振動や傾きの変化を誤検出する、という課題があった。また、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視できない、という課題があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、外乱による誤検出を抑制し、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視できる盗難監視システム及びその監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る盗難監視システムは、監視対象物に取り付けられ、当該監視対象物の振動を検出する第1の振動検出センサと、前記第1の振動検出センサとは離隔し、前記監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するための第2の振動検出センサと、
前記第1の振動検出センサの検出結果を無線により送信する第1の送信装置と、前記第1の送信装置から送信された検出結果を受信して前記第2の振動検出センサの検出結果と比較し、有意な振動が発生したと判定したときに、発報する信号収集検出装置とを具備する盗難監視システムにおいて、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視する場合に、敷設済のケーブルの全体に亘って定期的なパルス通信を行うパルス通信手段を更に設け、前記パルス通信手段によるパルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断することで、上述した課題を解決した。
【0010】
上記構成の盗難監視システムによれば、外乱によって第1の振動検出センサに発生する振動成分による影響を低減して誤発報を抑制し、ケーブル全体に亘ってパルス信号をかけることでケーブル全長の健全性が確認できる。
【0011】
これによって、対応業務にあたる作業者の負担を軽減できる。また、特別なセンサや高価なセンサを用意することなく、市販の安価なセンサを用いることができるので低コストでシステムを構築できる。しかも、第2の振動検出センサは、第1の振動検出センサとは離隔し、監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出できる場所を選択すればよく、検出信号伝達を無線方式にすれば結線等の手間がなくなり容易に設置できる。
【0012】
本発明に係る盗難監視システムにおいて、前記第1の振動検出センサは、監視対象物に取り付けられた子機であり、前記第2の振動検出センサは、監視対象物の振動を検出するための基準となる信号を出力する母機であり、前記信号収集検出装置に有線または無線で前記基準となる信号を送信する第2の送信装置を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0013】
第1の振動検出センサが子機で、第2の振動検出センサが母機の場合には、信号収集検出装置に有線または無線で基準となる信号を送信する第2の送信装置を設けることで、盗難を防止したい監視対象物が単体でも複数でも、外乱による誤検出を抑制できる。
【0014】
更に、前記第2の振動検出センサは、前記監視対象物とは別の監視対象物の振動を検出し、前記信号収集検出装置に無線で前記第2の振動検出センサで検出した振動を無線により送信する第2の送信装置を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
第2の振動検出センサは、第1の振動検出センサとは離隔し、前記監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出できれば、監視対象物とは別の監視対象物の振動を検出するものであっても構わない。
【0016】
この場合には、第1の振動検出センサまたは第2の振動検出センサで異常な振動を検出した場合に盗難と判定する。第1、第2の振動検出センサの両方で異常な振動を検出した場合には、地震動と判定する。
【0017】
更に、前記振動検出センサは、加速度を検出することで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
監視対象物が移動開始した時には「上下降運動」あるいは「横方向への移動」に伴う加速度が生じるので、この加速度を検出することにより、盗難開始を検知できる。
【0019】
加えて、前記信号収集検出装置は、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの検出結果との差が、所定値を所定時間連続して超えた振動検出センサ、あるいは所定値を所定回数超えた振動検出センサに有意な振動が発生したと判定して発報することで、同じく上述した課題を解決した。
【0020】
第1の振動検出センサの検出結果と第2の振動検出センサの検出結果のレベル差、連続時間、回数を考慮することで、ノイズ等の瞬間的な変動による影響を低減できる。
【0021】
また、前記信号収集検出装置は、有意な振動が発生したと判定した場合に、ネットワークサービスを介して外部サーバへ電子メールで発報することで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
管理者の持つスマートフォン等の携帯情報端末へ電子メールで発報することで、建設・工事現場から離れた場所で盗難を通知でき、管理者の安全を図れる。
【0023】
この他、本発明に係る盗難監視方法は、監視対象物の振動を検出する第1の振動検出センサと、前記第1の振動検出センサとは離隔し、前記監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するための第2の振動検出センサとで振動を検出するステップと、前記第1の振動検出センサの検出結果を無線により送信するステップと、前記第1の振動検出センサの検出結果を受信し、前記第2の振動検出センサの検出結果と信号収集検出装置で比較するステップと、前記信号収集検出装置で有意な振動が発生したと判定したときに発報するステップとを具備する盗難監視方法において、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体を監視する場合に、前記ケーブルの全体に亘って定期的なパルス通信を行うステップを更に有し、パルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断することで、上述した課題を解決した。
【0024】
上記のような盗難監視方法によれば、外乱によって第1の振動検出センサに発生する振動成分による影響を低減して誤発報を抑制し、ケーブル全体に亘ってパルス信号をかけることでケーブル全長の健全性が確認できる。
【0025】
これによって、対応業務にあたる作業者の負担を軽減できる。また、第2の振動検出センサは、第1の振動検出センサとは離隔し、監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出できる場所を選択すればよいので設置工事を簡単化できる。
【0026】
更に、前記第1の振動検出センサで検出した振動と前記第2の振動検出センサの検出結果とを信号収集検出装置で比較するステップは、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの最新の複数の検出結果を比較することで、同じく上述した課題を解決した。
【0027】
第2の振動検出センサの最新の複数の検出結果を比較することで、盗難に起因する振動か外乱によるものかをより正確に検出できる。また、昼と夜、あるいは夏と冬等の周辺環境の変化や、経時変化によるセンサへの影響等も低減できる。
【0028】
加えて、前記発報するステップは、前記第1の振動検出センサの検出結果と前記第2の振動検出センサの検出結果との差が、所定値を所定時間連続して超えたとき、あるいは所定値を所定回数超えたときに有意な振動が発生したと判定して発報することで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
第1の振動検出センサの検出結果と第2の振動検出センサの検出結果のレベル差、連続時間、回数を考慮することで、ノイズ等の瞬間的な変動による影響を低減できる。
【0030】
また、前記発報するステップは、有意な振動が発生したと判定した場合に、ネットワークサービスを介して外部サーバへ電子メールで発報することで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
管理者の持つスマートフォン等の携帯情報端末へ電子メールで発報することで、建設・工事現場から離れた場所で盗難を通知でき、管理者の安全を図れる。
【発明の効果】
【0032】
上記のような構成並びに方法によれば、第1の振動検出センサの検出結果と、この第1の振動検出センサとは離隔し、監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するための第2の振動検出センサの検出結果とを比較して有意な振動が発生したか否か判定でき、外乱によって第1の振動検出センサに発生する振動成分による影響を低減して誤発報を抑制できる。また、ケーブル全体に亘ってパルス信号をかけることで、ケーブル全長の健全性が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に至る前段階の盗難監視システムの概略構成図である。
図2図1に示した盗難監視システムの具体的な構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に至る前段階の盗難監視方法について説明するためのフローチャートである。
図4】振動検出センサにおける定常時の振動検出波形と異常(盗難)発生時の振動検出波形の測定例を比較して示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に至る前段階の盗難監視システムの概略構成図である。盗難監視システム1は、子機2-1,2-2、母機3、信号収集検出装置4、ネットワークサービス5及び携帯情報端末6等で構成される。
【0036】
ケーブル束や敷設用のケーブルの巻かれたドラム、建築資材、建設機械等は、建設中のビル建屋内あるいは仮設事務所内に静置、保管されている。子機2-1は監視対象物7-1(例えば、ケーブル束A)に取り付けられ、子機2-2は別の監視対象物7-2(例えば、ケーブル束B)に取り付けられる。ここでは、説明を簡単にするために2台の子機2-1,2-2を例に取って説明するが、子機は1台でも3台以上でも良い。
【0037】
母機3は、子機2-1,2-2の振動を検出する基準となる信号を生成して、信号収集検出装置4に無線(有線でも構わない)で送信するもので、子機2-1,2-2とは離隔して設置され、監視対象物7-1,7-2の振動による影響を受けずに外乱のみを検出するようになっている。
【0038】
子機2-1,2-2及び母機3は、それぞれ信号収集検出装置4と無線通信によって結ばれている。図1では、ケーブル束Aの盗難が開始され、子機2-1が振動を検出して有意信号を出力し、子機2-2は振動を検出せず、子機2-2からは無意信号が出力されている状態を示している。
【0039】
信号収集検出装置4は、子機2-1,2-2の検出結果と母機3の検出結果との差が、所定値を所定時間連続して超えたとき、あるいは所定値を所定回数超えたときに有意な振動が発生したと判定して発報する。
【0040】
本例では、信号収集検出装置4は、有意な振動が発生したと判定した場合に、ネットワークサービス5を通じて外部サーバへ電子メールで発報することで、管理者の持つスマートフォン等の携帯情報端末6へ通知して情報を表示するようになっている。
【0041】
図2は、図1に示した盗難監視システムの具体的な構成例を示すブロック図である。子機2-1は、振動検出センサ(第1の振動検出センサ)2-1aと、この振動検出センサ2-1aで検出した検出結果を処理する信号処理装置2-1bと、処理結果を無線通信により送信する送信装置(第1の送信装置)2-1cとを備えている。
【0042】
振動検出センサ2-1aは、発振器やタイマの出力に基づき、所定の時間間隔で定期的に振動を検出して振動検出値を出力する。信号処理装置2-1bは、振動検出センサ2-1aから出力される振動検出値をそれぞれアナログ/デジタル変換(A/D変換)する。更に、送信装置2-1cは、信号処理装置2-1bから出力される振動検出値に搬送波を合成して変調し、出力発信回路から送信する。
【0043】
子機2-2は、振動検出センサ(第1の振動検出センサ)2-2aと、この振動検出センサ2-2aで検出した検出結果を処理する信号処理装置2-2bと、処理結果を無線通信により送信する送信装置(第1の送信装置)2-2cとを備え、子機2-1と同様な構成で実質的に同じ機能を有する。
【0044】
母機3は、子機2-1,2-2と同様に構成されており、振動検出センサ(第2の振動検出センサ)3aと、この振動検出センサ3aで検出した検出結果を処理する信号処理装置3bと、処理結果を無線通信により送信する送信装置(第2の送信装置)3cとを備え、子機2-1,2-2の検出結果が盗難によるものか否かの基準となる信号を出力する。
【0045】
そして、振動検出センサ2-1a,2-2a,3aで監視対象物が移動開始した時の「上下降運動」あるいは「横方向への移動」に伴う加速度を検出することにより盗難開始を検知する。
【0046】
各振動検出センサ2-1a,2-2a,3aからの検出信号は、所定の周期で無線通信により信号収集検出装置4に伝えられ、振動検出が無い場合も信号発報は行われている。
【0047】
信号収集検出装置4は、受信装置11と、専用のコンピュータ12で構成されている。受信装置11は、子機2-1,2-2と母機3から受けた振動検出値を受信して復号し、コンピュータ12に入力する。コンピュータ12は、受信した振動検出値の時刻補正を行った後、そのデータを内蔵されている不揮発性のメモリに記憶する。
【0048】
また、子機2-1,2-2による検出結果と母機3による検出結果のうち、最新の複数の検出結果(本例では5振動データ)を比較する。そして、子機2-1,2-2と母機3の振動検出センサの検出結果の差が、所定値を所定時間連続して超えた振動検出センサ、あるいは所定値を所定回数超えた振動検出センサに有意な振動が発生したと判定する。
【0049】
しかしながら、敷設済のケーブルには、ケーブル長全体を監視することが必要になる。この際、一部分の振動検出では、その部分を残して切断された場合には対応できない。
そこで、本発明の実施形態では、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体の監視を行うために、ケーブル長全体に亘って定期的なパルス通信を行い、パルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断する手法と組み合わせる。ケーブル全体に亘ってパルス信号をかけることで、ケーブル全長の健全性を確認できる。
そして、有意な信号が発生した、盗難の可能性があると判定されると、ネットワークサービス(電話回線やWiFiネットワーク)5を通じて、管理者の携帯情報端末6にその情報を表示する。
【0050】
有意な信号ではないと判定されると、内蔵された不揮発性のメモリにその記録が行われる。
【0051】
図3は、本発明の実施形態に至る前段階の盗難監視方法について説明するためのフローチャートである。信号収集検出装置4の電源が投入されると、子機2-1,2-2と母機3が起動され、各振動検出センサ2-1a,2-2a,3aの動作確認が行われるとともに、伝達路(無線通信)が正常か否か検査され(ステップS1)、異常が無ければ振動入力待ち、すなわち待機状態(ステップS2)となる。
【0052】
ステップS3で振動ありと判定されると、子機2-1,2-2と母機3による振動データの収集を行う(ステップS4)。続いて、子機2-1,2-2と母機3の最新の5振動データの差分を比較し(ステップS5)、有意な振動か否かを判定する(ステップS6)。サンプリングは、例えば、10回/秒程度で、最新データ5回分の分析を行えば0.5秒間のデータ分析となる。
【0053】
図4(a)は振動検出センサ2-1a,3aにおける定常時の振動検出波形、図4(b)は異常(盗難)発生時の振動検出波形の測定例を示している。
【0054】
図4(a),(b)において、横軸は時間[msec]、縦軸は加速度[m/sec]であり、破線が振動検出センサ2-1aの出力波形、実線が振動検出センサ3aの出力波形、一点鎖線で示すように発報の閾値は加速度が0.25[m/sec]に設定している。ここで、閾値として用いた0.25[m/sec]は、人が物を持つときの一般的な加速度である。
【0055】
図4(a)に示すように、例えば、子機2-1の振動検出センサ2-1aで検出した加速度と、母機3の振動検出センサ3aで検出した加速度がほぼ一致している場合には、有意な信号は発生していないと判定する。
【0056】
有意な信号が発生していないと判定された場合には、所定時間、例えば、n秒経過したか判定し(ステップS7)、経過していない場合にはステップS4に戻って再度振動データの収集を行い、経過した場合にはステップS2に戻って振動入力を待機する。
【0057】
一方、図4(b)に示すように、例えば、子機2-1の振動検出センサ2-1aで検出した加速度と、母機3の振動検出センサ3aで検出した加速度の差が、閾値である0.25[m/sec](所定値)を所定時間連続して超えたとき、あるいは0.25[m/sec]を所定回数超えたときに有意な信号が発生したと判定する。
【0058】
換言すれば、母機3から出力される加速度をGmとし、子機2-1から出力される加速度をGcとすると、振動サンプリングのデータを比較演算し、差分加速度Gs=(Gc-Gm)/Gmが所定の閾値を決められた秒数以上連続して超えたとき、あるいは所定の閾値を決められた回数超えたときに盗難発生と判定する。
【0059】
尚、ここで、閾値、連続時間、閾値を超えた回数などは設置場所の環境や状況に合わせて調整可能である。また、サンプリングの間隔や、最新データ何回分の分析を行うかなどは、必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0060】
このように、複数箇所での振動検出及びその振動波形の比較により、一点の振動収集点では得られなかった空間的な広がりが得られ、部分的な振動発生を検出できる。
加えて、本発明の実施形態では、敷設したケーブルにおけるケーブル長全体の監視を行うために、ケーブル長全体に亘って定期的なパルス通信を行い、パルス通信の健全性が保たれているときは、ケーブルの全長が保持されていると判断する手法と組み合わせる。ケーブル全体に亘ってパルス信号をかけることで、ケーブル全長の健全性を確認できる。
そして、有意な信号が発生した、盗難の可能性があると判定されると、ネットワークサービス5を介して外部サーバへ発報する。この際、送信確認信号も発報する(ステップS8)。
【0061】
外部サーバ側では、信号収集検出装置4側に信号受信確認信号を発報するとともに、電子メールの送信を準備して送信する(ステップS9)。このようにして、管理者は携帯情報端末6により電子メールで盗難警報信号を受信する(ステップS10)。
【0062】
上述したように本発明によれば、子機2-1,2-2の検出結果と母機3の検出結果とを比較して有意な振動が発生したか否か判定するので、外乱によって子機2-1,2-2に発生する振動成分を低減して誤発報を抑制できる。
【0063】
これによって、対応業務にあたる作業者の負担を軽減できる。また、特別なセンサや高価なセンサを用意することなく、市販の安価なセンサを用いることができるので低コストでシステムを構築できる。しかも、母機3は、子機2-1,2-2とは離隔し、監視対象物の振動による影響を受けずに外乱のみを検出できる場所を選択すればよく、検出信号伝達を無線方式にすれば結線等の手間がなくなり容易に設置できる。
【0064】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
<変形例1>
例えば、上述した実施形態では、子機の振動を検出する基準となる信号を生成する母機を設ける場合を例に取って説明したが、複数の子機をそれぞれの監視対象物の振動による影響を受けないように設け、子機同士の検出結果を比較すれば母機を設ける必要はない。
【0065】
すなわち、盗難を防止したい監視対象物が単体の時は、基準となる母機と子機を設置し、検出される波形を比較することで正確な盗難開始の検出を行うことができる。監視対象物が複数の時は、子機にて検出される信号を相互に比較して検出を行えばよい。また、複数の子機と複数の母機を設けても良いのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の盗難監視システム及びその監視方法は、外乱による誤検出を抑制しつつ、敷設済電力輸送用ケーブルの盗難開始を検出でき、産業上有用である。
【符号の説明】
【0070】
1…盗難監視システム
2-1,2-2…子機
2-1a,2-2a…振動検出センサ(第1の振動検出センサ)
2-1b,2-2b…信号処理装置
2-1c,2-2c…送信装置(第1の送信装置)
3…母機
3a…振動検出センサ(第2の振動検出センサ)
3b…信号処理装置
3c…送信装置(第2の送信装置)
4…信号収集検出装置
5…ネットワークサービス
6…携帯情報端末
7-1,7-2…監視対象物
11…受信装置
12…専用のコンピュータ
図1
図2
図3
図4