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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】樋受部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E04D13/072 501R
E04D13/072 501Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018226631
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090788
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】595071922
【氏名又は名称】笹本 茂郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】笹本 茂郎
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-063806(JP,A)
【文献】特開2013-011118(JP,A)
【文献】特開2017-190561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
E04D 13/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状に折り曲げられた金属板の対向する縁同士が塑性変形により接続されて頂部(2b)と底部(2a)とが傾斜部(2c)によって交互に接続された折板屋根(2)に、樋受部材(10)を用いて雨樋(1)を取り付ける雨樋支持構造であって、
前記樋受部材(10)は、
前記折板屋根(2)の端縁(2g)に沿って並列して複数取り付けられる長尺状の上部吊り部材(11,14)と、
前記上部吊り部材(11,14)の下方に連結され前記雨樋(1)を保持する下部吊り部材(12,13,17)と、
を備え、
前記上部吊り部材(11,14)は前記折板屋根(2)の平面視において前記端縁(2g)の伸びる方向に交差する方向に並列する外方上部吊り部材(11)及び内方上部吊り部材(14)で構成され、前記外方上部吊り部材(11)及び内方上部吊り部材(14)はそれぞれ板状部材で構成されて前記折板屋根(2)の前記頂部(2b)に対して前記頂部(2b)を板厚方向に貫通するボルト(23a,24a)及びそれにねじ込まれるナット(23b,24b)で固定される水平部(11a,14a)と前記水平部(11a,14a)よりも下方の垂直部(11c,14b)とをそれぞれ備え、
前記下部吊り部材(12,13,17)は板状部材で構成されて前記外方上部吊り部材(11)及び前記内方上部吊り部材(14)の前記垂直部(11c,14b)に対して回動支持部(20)によって回動可能に連結され、
前記回動支持部(20)は、前記折板屋根(2)の平面視において前記端縁(2g)の伸びる方向に交差する軸方向を有する回動軸(21,22)を備え、前記外方上部吊り部材(11)及び前記内方上部吊り部材(14)と前記下部吊り部材(12,13,17)とが前記回動軸(21,22)の軸周りに回動可能である雨樋支持構造
【請求項2】
前記交差する方向に並列する複数の前記回動支持部(20)は前記折板屋根(2)の下端からの距離(H)が等しく設定されている請求項1に記載の雨樋支持構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種建築物における雨樋支持用の樋受部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種建築物において、屋根の端縁に沿って雨水を排水するための雨樋が配置される。このような雨樋の固定構造として、例えば、特許文献1、2に記載の樋受部材(樋受金具)を用いた構造がある。
【0003】
特許文献1、2に記載の樋受部材は、金属板を波状に折り曲げて構成された折板屋根に対して取り付けられるものである。折板屋根の端縁に、断面コ字状の雨樋を保持する吊り部材が固定されている。ここでは、吊り部材として、長尺状の吊りボルトが採用されている。吊りボルトの下端に、吊り具本体がナットを介して固定されている。吊り具本体は、折板屋根の端縁に沿って所定の間隔で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-303632号公報(第8頁第5図、第6図等を参照)
【文献】特開2001-49813号公報(第6頁第3図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、折板屋根は、金属板を波状に折り曲げて構成されている。その形状は、例えば、図9に示すように、フラットな板面を有する頂部2bと、フラットな板面を有する底部2aとが傾斜部2cによって交互に接続されている。頂部2bと傾斜部2c、底部2aと傾斜部2cとの接続箇所が金属板の折れ点であり、全体として山と谷が交互に配置されている。
【0006】
従来の樋受部材では、特許文献1、2に示すように、折板屋根に固定する吊り部材として、長尺状の吊りボルトが、フラットな板面を有する頂部2bや底部2aに固定されている。ここで、吊り部材として、長尺状の吊りボルトに代えて、長尺状の板状部材が用いられることもある。
【0007】
このような吊り部材は、折板屋根の頂部2bや底部2aの板面方向が一様でないと、その向きがまちまちとなる。特に、図9に示すように、折板屋根を構成する折板同士の接合部2dの近傍は、カシメによって板面2e、2fが傾斜している場合が多い。このため、図9の中央に示すように、接合部2d付近に吊り部材3を設けると、その吊り部材3の向きBが、屋根材に対する垂直方向(屋根材の端縁が水平であれば鉛直方向に相当)Dに対して傾いてしまう事態が生じやすい。なお、図9の左端及び右端に示す吊り部材3は、その向きA、Cが屋根材に対する垂直方向に一致した状態を示している。
【0008】
多数並列する吊り部材の向きが統一されていないと、建築物の美観を損なうという問題がある。なお、折板屋根の板面の傾斜は、折板同士の接合によって生じるだけではなく、折板の製造時における曲げ精度のばらつきや、建築物への取り付け時における施工精度のばらつき等によっても生じ得る。
【0009】
この点、特許文献2の樋受部材によれば、折板の板面と締付用のナットとの間にくさび状のワッシャを介在させることによって、長尺状の吊り部材の方向を調整することができる。しかし、この技術では、吊り部材の向きを調整するために、1本1本の吊り部材に対してナットを緩めて、ワッシャの向きを調整する必要がある。ワッシャは、折板を挟んで表裏両側に配置されているので、この調整は、折板の表裏両側での作業となり繁雑である。また、大規模な施工現場では、何百、何千もの樋受部材を使用する場合があるので、容易に且つ簡素な構造で調整できる吊り部材が求められている。
【0010】
そこで、この発明の課題は、折板屋根の端縁に、雨樋を保持するために固定する長尺状の吊り部材の向きを、容易に且つ簡素な構造で調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、金属板を波状に折り曲げて構成された折板屋根と、前記折板屋根の端縁に沿って並列して複数取り付けられる長尺状の上部吊り部材と、前記上部吊り部材の下方に連結され雨樋を保持する下部吊り部材と、前記上部吊り部材と前記下部吊り部材とを回動可能に連結する回動支持部と、を備える雨樋支持用の樋受部材を採用した。
【0012】
ここで、前記回動支持部は、前記折板屋根の平面視において前記端縁の伸びる方向に交差する軸方向を有する回動軸を備え、前記上部吊り部材と前記下部吊り部材とは前記回動軸の軸周りに回動可能である構成を採用することができる。
【0013】
また、前記上部吊り部材及び前記下部吊り部材は板状部材であり、前記回動軸は前記板状部材からなる前記上部吊り部材及び前記下部吊り部材を貫通する構成を採用することができる。
【0014】
これらの各態様において、前記上部吊り部材は、前記折板屋根の平面視において前記端縁に交差する方向に並列して複数取り付けられ、複数の前記上部吊り部材にそれぞれ前記回動支持部を介して前記下部吊り部材が連結され、前記交差する方向に並列する複数の前記回動支持部は前記折板屋根の下端からの距離が等しく設定されている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、折板屋根の端縁に沿って並列して複数の長尺状の上部吊り部材を取り付け、上部吊り部材の下方に回動支持部を介して雨樋を保持する下部吊り部材を連結したので、雨樋を保持するための吊り部材の向きを、容易に且つ簡素な構造で調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態を示す要部拡大斜視図
図2】樋受部材の斜視図
図3】樋受部材を折板屋根に固定した状態を示す断面図
図4】樋受部材を折板屋根に固定した状態を示す正面図
図5】樋受部材を折板屋根の接合部近傍に固定した状態を示す正面図
図6】他の実施形態を示す樋受部材の斜視図
図7図6の樋受部材を折板屋根に固定した状態を示す断面図
図8】さらに他の実施形態を示す樋受部材の斜視図
図9】従来例を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、例えば、倉庫や工場等のように、屋根材として折板2(以下、折板屋根2と称する。)が固定されている各種建築物における雨樋支持用の樋受部材10、及び、その樋受部材10を用いた雨樋1の支持構造に関するものである。
【0018】
建築物を構成する柱や梁材に対して、屋根材として折板屋根2が固定されている。折板屋根2は、金属板を波状に折り曲げて構成されている。その形状は従来例と同様であり、フラットな板面を有する頂部2bと、フラットな板面を有する底部2aとが傾斜部2cによって交互に接続されている。頂部2bと傾斜部2c、底部2aと傾斜部2cとの接続箇所が金属板の折れ点であり、全体として山と谷が交互に配置されている。図1は、このような折板屋根2の端縁2gに沿って取り付けられた、この発明に係る雨樋1の支持構造を示している。
【0019】
なお、折板屋根2における頂部2bや底部2aの幅や、頂部2bと底部2aとの高低差、傾斜部2cの傾斜角度等は、折板屋根2の仕様に応じて任意に設定される。以下、折板屋根2の平面視において、山と谷の並列方向、すなわち、雨樋1の取り付け箇所における端縁2gの伸びる方向を「端縁2gの方向」、又は、単に「端縁方向」と称する。また、山と谷が伸びる方向、すなわち、端縁2gに交差(通常は直交)する方向を「端縁2gに対する交差方向」、又は、単に「端縁交差方向」と称する。折板屋根2は、端縁方向及び端縁交差方向に複数連結されて使用される。1枚の折板屋根2における端縁方向への幅、及び、端縁交差方向への長さ、山と谷の繰り返し数は仕様に応じて適宜設定される。
【0020】
折板屋根2同士の端縁方向への連結は、図1に示すように、金属板の縁同士を塑性変形させた接合部(カシメ部)2dを介して行われる。折板屋根2同士の端縁交差方向への連結は、隣り合う折板屋根2の山と山、谷と谷同士を重ね合わせて、その重なり部分を貫通するボルトと、ボルトにねじ込まれるナットとによって行われる。
【0021】
樋受部材10の構成は、折板屋根2の端縁2gに沿って並列して複数取り付けられる長尺状の上部吊り部材11,14と、上部吊り部材11,14の下方に連結され雨樋1を保持する下部吊り部材12,13と、上部吊り部材11,14と下部吊り部材12,13とを回動可能に連結する回動支持部20とを備えたものとなっている。樋受部材10の素材は通常は金属であるが、強度や耐久性が確保されるならば、繊維強化樹脂等の他の素材であってもよい。
【0022】
この実施形態では、上部吊り部材11,14は、図1図3に示すように、折板屋根2の平面視における端縁2gに対する交差方向に並列して2つ取り付けられている。ここで、折板屋根2の端縁2g側に位置する上部吊り部材11を、外方上部吊り部材11と称する。折板屋根2の端縁2gよりも奥部側に位置する上部吊り部材11を、内方上部吊り部材14と称する。
【0023】
外方上部吊り部材11は、長尺状の板状部材を曲げ加工して構成されている。外方上部吊り部材11は、折板屋根2の頂部2bに固定される水平部11aと、その水平部11aの外方端に接続される傾斜部11bと、傾斜部11bの下端に接続される垂直部11cとを備えている。水平部11aと傾斜部11b、傾斜部11bと垂直部11cの境界は、それぞれ曲げ加工された板状部材の折れ点となっている。
【0024】
水平部11aは、折板屋根2の頂部2bの上面に面接触した状態に固定される。頂部2bに接合部2dがある場合は、頂部2bの上面は傾斜面2e,2fとなっているので、水平部11aは、この傾斜面2e,2fの上面に面接触した状態に固定される。傾斜部11bは、水平部11aの端部から外方へ向かうにつれて下り勾配である。その傾斜部11bの下端に垂直部11cが続いている。なお、外方上部吊り部材11は、傾斜部11bを省略した態様も考えられる。
【0025】
内方上部吊り部材14は、同じく、長尺状の板状部材を曲げ加工して構成されている。内方上部吊り部材14は、折板屋根2の頂部2bに固定される水平部14aと、その水平部14aの内方端に接続される垂直部14bとを備えている。水平部14aと垂直部14bの境界は、曲げ加工された板状部材の折れ点となっている。なお、水平部14aと垂直部14bとの間に、外方上部吊り部材11のような傾斜部を介在させてもよい。
【0026】
水平部14aは、折板屋根2の頂部2bの下面に面接触した状態に固定される。頂部2bに接合部2dがある場合は、水平部14aは、頂部2bの傾斜面2e,2fの下面に面接触した状態に固定される。
【0027】
水平部11a,14aの頂部2bへの固定は、図2及び図3に示すように、固定手段23,24によって行われる。この実施形態の固定手段23,24は、それぞれ、水平部11a,14aと頂部2bを貫通するボルト23a,24aと、そのボルト23a,24aに挿通されるワッシャ23c,24c、ボルト23a,24aにねじ込まれるナット23b,24bとで構成されている。頂部2bの板面とナット23b,24bやワッシャ23c,24cとの間に、適宜スペーサ等を介在させてもよい。
【0028】
外方上部吊り部材11及び内方上部吊り部材14には、それぞれ回動支持部20を介して下部吊り部材12,13が連結されている。すなわち、下部吊り部材12,13も、端縁2gに対する交差方向に並列して2つ配置されている。ここで、折板屋根2の端縁2g側に位置する下部吊り部材12を、外方下部吊り部材12と称する。折板屋根2の端縁2gよりも奥部側に位置する下部吊り部材13を、内方下部吊り部材13と称する。
【0029】
外方下部吊り部材12は、長尺状の板状部材で構成されている。外方下部吊り部材12は、回動支持部20が設けられる上端部12aから、内方下部吊り部材13との接続点である下端部12bに至る直線状の部材である。上端部12aと下端部12bとの間に、雨樋1を保持するためのフック状の係止部15を備えている。
【0030】
内方下部吊り部材13も、同じく、長尺状の板状部材を曲げ加工して構成されている。内方下部吊り部材13は、回動支持部20が設けられる上端部13dを有する垂直部13aと、その垂直部13aの下端に接続され水平方向外方へ伸びる下方部13bとを備えるL字状の部材である。垂直部13aの途中に、雨樋1を保持するためのフック状の係止部16を備えている。垂直部13aと下方部13bの境界は、曲げ加工された板状部材の折れ点となっている。
【0031】
外方下部吊り部材12の下端部12bと、内方下部吊り部材13の下方部13bの外方端に設けた接続部13cとは、固定手段25によって接続されている。この実施形態の固定手段25は、下端部12bと接続部13cを貫通するボルト25aと、そのボルト25aに挿通されるワッシャ25c、ボルト25aにねじ込まれるナット25bとで構成されている。
【0032】
なお、通常は、この実施形態のように、上部吊り部材11,14を端縁交差方向に並列して2つセットで用いるが、雨樋1の形状や大きさによっては、これを1つのみ、又は、3つ以上セットで用いる構成も考えられる。上部吊り部材11,14を2つセットで用いた場合、二つの上部吊り部材11,14にそれぞれ下部吊り部材12,13が接続される。すなわち、下部吊り部材12,13が設置された箇所数と同数だけ、上部吊り部材11,14と下部吊り部材12,13とを接続する回動支持部20が設置されることが望ましい。また、上部吊り部材11,14及び下部吊り部材12,13は、必ずしも一体に成型又は切り出された部材でなくてもよく、複数の部材が接合されたものであってもよい。
【0033】
雨樋1は、底部1aとその底部1aの幅方向両端から立ち上がる側壁部1bとからなる凹状の断面を有し、その断面が一定の長さで連続する長手状の溝部材である。雨樋1の素材は、用途や仕様に応じて、金属や樹脂等が採用される。
【0034】
雨樋1は、側壁部1bの上端付近が、係止部15,16によって保持されている。また、底部1aが、外方下部吊り部材12又は内方下部吊り部材13によって保持されている。ここで、底部1aが、外方下部吊り部材12によって保持される構成としてもよい。
【0035】
回動支持部20は、端縁交差方向に向けて軸方向を有する回動軸21,22を備えている。回動軸21は、板状部材からなる外方上部吊り部材11と外方下部吊り部材12の重なり部を板厚方向に貫通し、外方上部吊り部材11と外方下部吊り部材12を回動軸21の軸周りに回動可能に支持している。また、回動軸22は、板状部材からなる内方上部吊り部材14と内方下部吊り部材13の重なり部を板厚方向に貫通し、内方上部吊り部材14と内方下部吊り部材13を回動軸22の軸周りに回動可能に支持している。
【0036】
この実施形態では、回動軸21,22は、頭部と軸部とを有するリベット形式のピンであり、軸部を板状部材の重なり部の穴に貫通させた後、軸部の先端を塑性変形によりカシメることで抜け止めし、両者を回動自在に保持している。回動軸21,22は、リベット形式のピン以外にも、例えば、ボルトとナット等を採用することができる。
【0037】
図4は、回動支持部20を挟んで上下の吊り部材の軸心c,aが、一直線上になっている状態を示している。この箇所では、折板屋根2の頂部2bがフラットな水平状態であるため、上下の吊り部材の軸心c,aは、頂部2bの面方向に直交する方向であり、外観上も綺麗な状態となっている。
【0038】
図5は、回動支持部20を挟んで上下の吊り部材の軸心j,gが、一直線上になっていない状態を示している。この箇所では、折板屋根2の頂部2bが接合部2dを伴う傾斜面2e,2fであるため、上方の吊り部材の軸心jは、本来の頂部2bの面方向kに直交する方向とはなっておらず、角度αだけ傾いた傾斜面eや傾斜面fに直交する方向となっている。そこで、この発明では、上下の吊り部材の軸心j,gを互いに角度αで交差させることで、下方の吊り部材の軸心gを本来の頂部2bの面方向kに直交する方向とし、図4に示す隣接する樋受部材10との外観上の統一を図っている。
【0039】
なお、図4及び図5では、外方上部吊り部材11と外方下部吊り部材12との関係を示しているが、内方上部吊り部材14と内方下部吊り部材13との関係においても、同様のことがいえる。
【0040】
ここで、端縁交差方向に並列する複数の回動支持部20、すなわち、外方上部吊り部材11と外方下部吊り部材12との間の回動支持部20と、内方上部吊り部材14と内方下部吊り部材13との間の回動支持部20は、図3に示すように、互いに、折板屋根2の下端からの距離Hが等しく設定されている。ここでは、回動支持部20は回動軸21,22によるものであるので、回動軸21,22の軸心が同軸に設定されている。このため、上下の吊り部材同士を回動させる際に、外方側の吊り部材同士の交差角度と内方側の吊り部材同士の交差角度とを等しく設定しやすい。この点においても、外観上綺麗な樋受部材10とすることができる。
【0041】
他の実施形態を、図6及び図7に示す。この実施形態は、上記図1図5に示す実施形態の外方下部吊り部材12と内方下部吊り部材13に代えて、一体の下部吊り部材17を採用したものである。下部吊り部材17は、回動支持部20を介して、外方上部吊り部材11と内方上部吊り部材14の両方に対して回動可能に支持されている。
【0042】
下部吊り部材17は、本体部17aの外方側端と内方側端に、それぞれ回動支持部20に接続される垂直部17bを備えている。垂直部17bの下端には、雨樋1の側壁部1bに設けた突出部1cを保持する、内向きの係止部17cを備えている。また、本体部17aの下面には抜け止め片17dを備え、突出部1cが係止部17cから脱落することを防止している。
【0043】
このように、樋受部材10における回動支持部20を挟む上下の吊り部材の態様は、上記の実施形態には限定されず、雨樋1を保持できる限りにおいて、種々の形態を採用できる。
【0044】
さらに他の実施形態を、図8に示す。この実施形態は、樋受部材10を構成する板状部材からなる吊り部材に対し、その剛性を高めるためのリブを備えたものである。図では、外方上部吊り部材11の幅方向両側の縁にリブ11dを設けているが、外方下部吊り部材12や、内方上部吊り部材14、内方下部吊り部材13に対して、このようなリブを設けてもよい。吊り部材の剛性が高まれば、強風やその他の外力によって部材が変形することを防止できる。
【0045】
上記の各実施形態では、上部吊り部材11,14及び下部吊り部材12,13,17を板状部材とし、回動支持部20は、上部吊り部材11,14と下部吊り部材12,13,17を貫通する回動軸21,22を備えるのとしたが、回動支持部20の構成は、回動軸21,22によるものには限定されない。回動支持部20として、例えば、二つの部材を首振り可能に接続するボールジョイント、ユニバーサルジョイント等の周知の機構を採用してもよい。
【0046】
さらに、上部吊り部材11,14及び下部吊り部材12,13,17は板状部材には限定されず、例えば、これらの部材を長尺状の軸状部材で構成してもよい。折板屋根2に固定する上部吊り部材11,14を、従来例のような折板屋根2を貫通する長尺状の吊りボルトとし、その吊りボルトに回動支持部20を介して、下部吊り部材12,13,17を接続してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 雨樋
2 折板屋根
2a 底部
2b 頂部
2c 傾斜部
2d 接合部
2g 端縁
10 樋受部材
11,14 上部吊り部材
12,13,17 下部吊り部材
20 回動支持部
21,22 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9