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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ストレッチ布帛およびその繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/513 20210101AFI20230613BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230613BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20230613BHJP
   A41D 31/18 20190101ALI20230613BHJP
   A41D 31/26 20190101ALI20230613BHJP
   D01F 1/07 20060101ALI20230613BHJP
   D01F 1/09 20060101ALI20230613BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20230613BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20230613BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20230613BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20230613BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
D03D15/513
A41D31/00 502B
A41D31/00 503M
A41D31/08
A41D31/18
A41D31/26 100
D01F1/07
D01F1/09
D02G3/04
D03D15/20 100
D03D15/47
D03D15/533
D03D15/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018242132
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105639
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 博樹
(72)【発明者】
【氏名】岩下 憲二
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059290(JP,A)
【文献】特表2009-523194(JP,A)
【文献】特開2014-240532(JP,A)
【文献】特開2014-208930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
20/00
31/00-31/32
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JISK7201により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸及び/または長繊維からなる伸縮糸との複合糸を用いた布帛であって、当該布帛は、JISL1096法により測定される伸び率が5~40%であり、かつ、JISL1094法に規定される帯電電荷量が6.0マイクロクーロン以下であることを特徴とするストレッチ布帛であって、
難燃性繊維を含む紡績糸と、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸を用いた導電性難燃複合糸とを経糸とし、難燃性繊維を含む紡績糸と伸縮糸を用いた伸縮性難燃複合糸を緯糸とし、
前記導電糸が、炭素粒子を配合した導電糸であり、JISL1094法に規定される帯電電荷量が4.0マイクロクーロン以下、前記難燃性繊維の重量比が布帛重量に対して40重量%以上であり、前記伸縮糸の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であり、前記導電糸の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であり、JISL1091A-4-1992法で規定される炭化長が100mm以下、かつ、残炎及び残塵が2秒以下であり、JISL1096B法で規定される経方向および/または緯方向の伸長率が5~20%であるストレッチ布帛。
【請求項2】
JISK7201により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸及び/または長繊維からなる伸縮糸との複合糸を用いた布帛であって、当該布帛は、JISL1096法により測定される伸び率が5~40%であり、かつ、JISL1094法に規定される帯電電荷量が6.0マイクロクーロン以下であることを特徴とするストレッチ布帛であって、
難燃性繊維と導電繊維を含む紡績糸と、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸を用いた導電性難燃複合糸とを経糸とし、難燃性繊維と導電繊維を含む紡績糸と伸縮糸を用いた伸縮性難燃複合糸を緯糸とし、
前記導電糸が、炭素粒子を配合した導電糸であり、JISL1094法に規定される帯電電荷量が4.0マイクロクーロン以下、前記難燃性繊維の重量比が布帛重量に対して40重量%以上であり、前記伸縮糸の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であり、前記導電糸及び/または前記導電繊維の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であり、JISL1091A-4-1992法で規定される炭化長が100mm以下、かつ、残炎及び残塵が2秒以下であり、JISL1096B法で規定される経方向および/または緯方向の伸長率が5~20%であるストレッチ布帛。
【請求項3】
前記紡績糸の撚係数が2.5~4.5である請求項1または2に記載のストレッチ布帛。
【請求項4】
前記難燃性繊維が、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、難燃コットンの群から選ばれた1種類以上の繊維である、請求項1~3のいずれか1つに記載のストレッチ布帛。
【請求項5】
前記伸縮糸が、エーテル系ポリウレタンを含む請求項1~4のいずれか1つに記載のストレッチ布帛。
【請求項6】
前記難燃性繊維に難燃剤が練りこまれている請求項1~5のいずれか1つに記載のストレッチ布帛。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載されたストレッチ布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、伸縮性及び高い制電性を有するストレッチ布帛、および該ストレッチ布帛を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防、電力、化学会社など火炎に晒される可能性のある作業に従事する人々が着用する作業服として難燃布帛が用いられている。この難燃布帛は、メタ系アラミド繊維やパラ系アラミド繊維をはじめとする難燃性繊維を主体として使用しており、一般的には伸縮性の付与は難しいとされている。
【0003】
従来のアラミド繊維を用いたストレッチ布帛として、特許文献1には、アラミド繊維とその他の繊維と制電繊維とが混紡された紡績糸と、伸縮繊維とを合撚した合撚糸を用いた難燃ストレッチ織物が提案されている。しかしながら、従来のストレッチ布帛では伸縮性やピリング性は改善されたものの、市場の要求に対して難燃性や制電性等、更なる性能向上する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-208930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、難燃性と伸縮性に加えて優れた制電性を有するストレッチ布帛およびそれを用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、難燃性繊維を含む紡績糸と、導電糸と、伸縮糸とを用いることによって難燃性、伸縮性および制電性に優れる布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、JISK7201により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を含む紡績糸と、導電糸と、伸縮糸とを用いた布帛であって、当該布帛は、JISL1096法により測定される伸び率が5~40%であり、かつ、JISL1094法に規定される帯電電荷量が6.0マイクロクーロン以下であるストレッチ布帛が提供される。
【0008】
その際、難燃性繊維を含む紡績糸と、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸を用いた導電性難燃複合糸とを経糸とし、難燃性繊維を含む紡績糸と伸縮繊維を用いた伸縮性難複合糸とを緯糸とすることが好ましく、難燃性繊維と導電繊維を含む紡績糸と、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸を用いた導電性難燃複合糸とを経糸とし、難燃性繊維と導電繊維を含む紡績糸と伸縮繊維を用いた伸縮性難燃複合糸を緯糸とすることも好ましい、前記導電性複合糸は、布帛伸縮時5~50mmのピッチで経糸中に配設されることも好ましい、JISL1094法に規定される帯電電荷量が4.0マイクロクーロン以下であることも好ましい、難燃性繊維の重量比が布帛重量に対して40重量%以上であり、伸縮繊維の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であり、導電糸及び/または導電繊維の重量比が布帛重量に対して0.1~5重量%であることも好ましい、JISL1091A-4-1992法で規定される炭化長が100mm以下、かつ、残炎及び残塵が2秒以下であることも好ましい、紡績糸の撚係数が2.5~4.5であることも好ましい、難燃性繊維が、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、難燃コットンの群から選ばれた1種類以上の繊維であることも好ましい、伸縮繊維が、エーテル系ポリウレタンを含むことも好ましい、難燃性繊維に難燃剤が練りこまれていることも好ましい、JISL1096B法で規定される経方向および/または緯方向の伸長率が5~20%であることも好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記のストレッチ布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、軍服等の繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、難燃性と伸縮性に加えて優れた制電性を有するストレッチ布帛およびそれを用いてなる繊維製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明において、紡績糸は、JISK7201により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を含む。かかる難燃性繊維としては、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、難燃コットンなどが例示される。これらの難燃性繊維を1種または2種以上用いることができる。
【0013】
なかでも、優れた限界酸素指数を示しかつ優れた機械的物性の点から、メタ系アラミド繊維すなわちメタフェニレンイソフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テイジンコーネックス」「テイジンコーネックスネオ」(商標名)、デュポン社製「ノーメックス」(商標名)など)は有用である。さらには、パラ系アラミド繊維すなわちパラフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「トワロン」(商標名)、東レ・デュポン株式会社製「ケブラー」(商標名)など)、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名)など)を混合させることも好ましい。
【0014】
これらの難燃性繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0015】
また、紡績糸は、前記の難燃性繊維のみからなることが好ましいが、非難燃性繊維(JIS K7201により測定される限界酸素指数が25未満の繊維)を含ませてもよい。その際、非難燃性繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、リヨセル繊維、アクリル系繊維、ビニロン繊維、コットン、麻、ウールなどが例示される。これらの非難燃性繊維を1種または2種以上用いることができる。
【0016】
これらの非難燃性繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子、導電粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0017】
また、難燃性繊維、非難燃性繊維は、繊維長としては35~110mmの範囲が好ましい。
【0018】
また、紡績糸の総繊度は、用途に応じて、表面外観、耐熱性、熱防護性、伸縮性、風合いなどを考慮して適宜選択すればよく、特に紡績糸の繊度は58dtex(英式綿番手100番単糸相当)~580dtex(英式綿番手10番手相当)の範囲が好ましい。
【0019】
また、紡績糸の単繊維繊度は、良好な紡績工程通過性、柔軟性の求められている衣料用途への使用の観点から、0.6~5.5dtexの範囲が好ましい。
【0020】
また、紡績糸の撚係数Kは布帛の物性および柔軟性の点から2.5~4.5の範囲であることが好ましい。ただし、T=K√nであり、Tは1インチ(2.54cm)あたりの撚数、nは英式綿番手、Kは撚係数である。
【0021】
また、紡績糸は単糸であってもよいし双糸であってもよい。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明の伸縮糸は、繊維の形状は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよいが、優れた伸縮性を得る上で長繊維(マルチフィラメント)が好ましい。伸縮糸は、伸縮性を持たせたナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、が好ましく、特にエーテル系ポリウレタンであることが好ましい。
【0023】
本発明の導電糸は、繊維の形状は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよいが、優れた伸縮性を得る上で長繊維(マルチフィラメント)が好ましい。導電糸は、導電性を持たせた繊維であればよく、例えば、炭素粒子/繊維や金属粒子/繊維を配合した繊維が挙げられる。
伸縮糸、導電糸の総繊度、単繊維繊度は用途に応じて適宜選定され、総繊度20~200dtex、単繊維繊度0.5~10.0dtexの範囲が好ましい。
【0024】
本発明の複合糸として、難燃性繊維を含む紡績糸(導電繊維を含んでいてもよい)と、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸を用いた導電性難燃複合糸(導電性難燃合撚糸)や、難燃性繊維を含む紡績糸と伸縮繊維を用いた伸縮性難複合糸(伸縮性難燃合撚糸)等が挙げられる。
【0025】
本発明の複合糸の複合方法は特に限定されないが、合撚糸条またはカバリング糸であることが好ましい。より具体的には、前記の紡績糸と複合繊維とを用いて、市販のアップツイスタ、カバリング機、イタリ式撚糸機、ダブルツイスタなどを使用して、合撚またはカバリングすることが好ましい。その際、撚り止めセットは要求される品質により実施しても良い。複合合撚糸の撚り止めセットは、通常の紡績糸のセットに用いられる真空スチームセットを用いる事ができる。複合合撚糸のセット時の温度は、50~80℃(より好ましくは65~75℃)の範囲が好ましい。複合合撚糸の撚り止めセット温度が高過ぎると、最終的に得られる布帛の伸縮性が損なわれるおそれがある。
【0026】
本発明のストレッチ布帛はかかる複合糸を用いてなる布帛である。その際、優れた難燃性を得る上で、前記難燃性繊維の重量比率が布帛重量に対して40重量%以上(好ましくは70~95重量%)の範囲であることが肝要である。前記難燃性繊維の重量比率が40重量%未満の場合、難燃性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0027】
また、前記伸縮糸の繊維が重量比率で布帛重量に対して5~15重量%の範囲であることが肝要である。前記伸縮糸の繊維が重量比率で布帛重量に対して15重量%を越える場合、炎が複合繊維に沿って伝わりやすく燃焼しやすくなるため好ましくない。また、逆に、前記伸縮糸の繊維が重量比率で5重量%未満の場合、布帛の伸縮性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0028】
布帛の布帛組織としては特に限定されないが、織物または編物であることが好ましい。織物であれば、平組織、綾組織、朱子組織および各組織のリップストップ化などが例示される。また、編物であれば、機械編、かぎ針編、棒針編、アフガン編、レース編などが例示される。
【0029】
例えば、織物であれば、経方向および/または緯方向に、前記の複合糸を全量配してもよいし、前記の紡績と前記複合糸とを、例えば1:1、2:1、3:1、1:2、1:3の配列比で配列させてもよいが、難燃性繊維を含む紡績糸と導電糸とを合撚した導電性難燃合撚糸が、布帛の伸縮時に経糸中に5~50mmのピッチ(好ましくは5~30mm)で配置されることが好ましい。なお、製編織の方法は特に限定されず、通常の編機や織機を用いた方法でよい。このように導電性難燃合撚糸を配置することで高い制電性を得ることができる。ピッチが50mmを超えると制電性が低下するため好ましくない。
【0030】
布帛は、毛焼、精錬、リラックス、染色処理、セットなどの熱処理を施す。布帛には、吸水加工、撥水加工、起毛加工、難燃加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0031】
布帛の伸縮性は、経方向および/または緯方向の伸長率が5~40%(より好ましくは5~20%)の範囲であることが好ましい。また、布帛の伸長回復率としては、経方向および/または緯方向の伸長回復率が70%以上(より好ましくは73~99%)であることが好ましい。
【0032】
布帛の難燃性は、JIS K7201により測定される限界酸素指数が25以上(より好ましくは25~40)であることが好ましい。
【0033】
布帛のピリングは、JIS L1076 A法(ICI 10hr)で規定される等級が3.0以上(より好ましくは3.5以上)であることが好ましい。
【0034】
布帛の制電性(帯電電荷量)は、JISL1094 C法により規定される帯電電荷量が6マイクロクーロン以下(より好ましくは4.0マイクロクーロン以下、特に好ましくは3.0マイクロクーロン以下)であることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の繊維製品は前記の布帛を用いてなるものである。かかる繊維製品は前記の布帛を用いているので、伸縮性および難燃性に優れる。かかる繊維製品には、消防服、防火服、執務服、モータースポーツ用レーシングスーツ、作業服、手袋、帽子、ベスト、各種産業資材(シート、テント、膜材、幌、建築資材、住宅材、車両内装材など)などが含まれる。また、前記作業服には、製鉄所や鉄鋼工場の作業用作業服、溶接作業用作業服、防爆エリアにおける作業服などが含まれる。また、前記手袋には、精密部品を取り扱う航空機産業、情報機器産業、精密機器産業などで使用される作業手袋などが含まれる。
【実施例
【0036】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるもの
ではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)難燃性
JIS K7201:1999(酸素指数法による高分子材料の燃焼試験法)により限
界酸素指数(LOI)を測定し、難燃性の指標とした。
(2)伸縮性
JIS L1096:2011(B法、定荷重法)にしたがって、伸長率及び伸長回復
率を測定した。
(3)燃焼性
JIS L1091 A-4法付属書8にしたがって、残炎時間、残じん時間、炭化長
を測定し、燃焼性の指標とした。
(4)ピリング測定
JIS L1076 A法(ICI 10hr)にしたがって、ピリング測定を行った。
(5)帯電電荷量(制電性)
20℃±2℃、40±2%RHの環境下で、JISL1094 C法 摩擦帯電電荷量測定法試験片(250mm×350mm)にしたがって測定した。
【0037】
[実施例1]
紡績糸として、紡績工程において、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが32であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))からなる短繊維と、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが25であるコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))からなる短繊維を重量割合(テイジンコーネックス:テクノーラ)93:7の割合で混紡し、撚数24T/inch(撚係数=3.4)、英式綿番手で40番単糸を得た。
【0038】
前記紡績糸2本を合糸し、ダブルツイスタ―にて上撚数20.9T/inchにて交撚した後、真空スチームセット機にてセット温度120℃、セット時間20分の条件で撚り止めセットし、難燃合撚糸を得た。
【0039】
次いで、前記紡績糸2本と導電糸(帝人(株)B-TCF(U300HX31T5))1本を合糸し、ダブルツイスタ―にて上撚数20.9T/inchにて交撚した後、真空スチームセット機にてセット温度120℃、セット時間20分の条件で撚り止めセットし、難燃導電合撚糸を得た。
【0040】
一方、伸縮繊維として、ポリウレタンフィラメント(長繊維)を用意した。(22T/inch)
次いで、前記紡績糸2本とポリウレタンフィラメント1本とを合糸し、ダブルツイスタ―にて上撚数19.8T/inchにて撚糸した後、真空スチームセット機にてセット温度70℃、セット時間20分の条件で撚り止めセットし、難燃伸縮合撚糸を得た。
【0041】
次いで、経糸に前記難燃合撚糸と、10mmピッチの間隔で難燃導電合撚糸を配設し、緯糸は前記難燃伸縮合撚糸のみを配して、織物密度が経54本/inch、緯63本/inchで織物組織が2/1綾織にて織り成した。
織り成した織物を毛焼-精練-セット(温度160℃×時間30秒)-リラックス(温度120℃×時間30分)工程した。
【0042】
得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、非難燃性繊維の重量割合は11.0wt%、限界酸素指数は32.0、緯伸長率は10.0%と良好な伸縮性が得られ、伸長回復率は85%であった。また、帯電電荷量は2.3μCと良好な制電性が得られた。評価結果を表1に示す。
【0043】
次いで、該伸縮性難燃織物を用いて作業服を得たところ、伸縮性と難燃性に優れるものであった。
【0044】
[実施例2]
紡績糸として、紡績工程において、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが26であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「帝人コーネックスネオ」(商標名))からなる短繊維と、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが25であるポリパラフェニレンテレフタラミド(PPTA)繊維(帝人株式会社製「トワロン」(商標名))と短繊維繊度3.3dtex、カット長(繊維長)38mmである導電繊維(三菱ケミカル製「コアブリットET10」(商標名))からなる短繊維を重量割合93:5:2(帝人コーネックスネオ:トワロン:コアブリットET10)の割合で混紡し、撚数24T/inch(撚係数=3.4)、英式綿番手で40番単糸を得た以外は実施例1と同様にした。
【0045】
得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、非難燃性繊維の重量割合は11.0wt%、限界酸素指数は29.0、緯伸長率は10.0%と良好な伸縮性が得られ、伸長回復率は85%であった。また、帯電電荷量は2.1μCと良好な制電性が得られた。評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
紡績糸として、紡績工程において、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが32であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))からなる短繊維と、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが25であるコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))からなる短繊維と単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、ポリエステル繊維(帝人(株)製eco-PET(RA02)単繊維繊度2.2dtex、繊維長38mmからなる短繊維を75:5:20の割合で混紡し、撚数20.87T/inch(撚係数=3.3)、英式綿番手で40番単糸を得た以外は実施例1と同様にした。また、帯電電荷量は2.5μCと良好な制電性が得られた。評価結果を表1に示す。
【0047】
得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、非難燃性繊維の重量割合は20wt%、限界酸素指数は33.0、緯伸長率は12.0%と良好な伸縮性が得られ、伸長回復率は86%であった。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
[比較例1]
導電繊維は含まず、経糸および緯糸に難燃合撚糸を配して織り成したこと以外は、実施例1と同様にした。得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、非難燃性繊維の重量割合は2wt%、限界酸素指数は26.0、緯伸長率は10.0%と良好な伸縮性が得られ、伸長回復率は90%であった。しかしながら、帯電電荷量は14.0μCであり制電性が不十分であった。評価結果を表2に示す。
【0050】
[比較例2]
導電繊維は含まず、経糸および緯糸に難燃合撚糸を配して織り成したこと以外は、実施例2と同様にした。
【0051】
得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、非難燃性繊維の重量割合は4wt%、限界酸素指数は26.0、緯伸長率は10.0%と良好な伸縮性が得られ、伸長回復率は90%であった。しかしながら、帯電電荷量は7.0μCであり制電性は凡庸であった。評価結果を表2に示す。
【0052】
[比較例3]
紡績糸として、紡績工程において、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが32であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))からなる短繊維と、単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、LOIが25であるコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))からなる短繊維と単繊維繊度1.7dtex、カット長(繊維長)51mm、ポリウレタン短繊維を47:3:10の割合で混紡し、撚数20.87T/inch(撚係数=3.3)、英式綿番手で40番単糸を得た以外は実施例1と同様にした。
【0053】
得られた伸縮性難燃織物において、織物密度が経68本/inch、緯64本/inch、限界酸素指数は23.0、緯伸長率は20.0%と優れた伸縮性が得られ、伸長回復率は95%であった。しかしながら、燃焼性試験で布帛が全焼してしまったため、難燃性布帛としては不十分であった。また、帯電電荷量は15.0μCであり制電性も不十分であった。評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】