(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、及び、パターニング基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20230613BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230613BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F2/44 C
C08F220/20
G03F7/027 502
G03F7/033
G03F7/20 521
G03F7/42
(21)【出願番号】P 2018245926
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】椿 幸樹
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071359(JP,A)
【文献】特開2006-178082(JP,A)
【文献】特開2015-135470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-297/08
G03F 7/00-7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるモノマー(A)と、
(メタ)アクリロイル酸を構成単位として含み
、且つ、酸価が酸固形分換算で10~200であり、重量平均分子量が5,000~50,000であるアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)と、
を含み、全固形分に対する前記式(1)で表されるモノマー(A)の含有量が10~60質量%である、硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、炭素数3~6であ
る環状の
飽和炭化水素基を示し、Yは、-NH-、-O-又は-S-を示し、Zは、(メタ)アクリロイル基、-OH又は-Hを示し、nは1~5の整数を示す。式(1)中、複数のY及びZはそれぞれ同一でもよいし異なっていてもよい。但し、複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数は、2~4である。)
【請求項2】
前記式(1)における複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数が、2である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)における複数のZの少なくとも一つが、-OHである請求項1又は請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに溶剤を含む請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が70~150℃である請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項7】
3%水酸化ナトリウム(40℃)への溶解する時間が0.01m
2及び膜厚15μm当たり20分間以下である請求項
6に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造されるパターニング基板の製造方法であって、
基板上に前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を付与する感光層形成工程と、
前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を露光する露光工程と、
前記露光工程にて露光した前記感光層を現像する現像工程と、
前記現像工程にて前記感光層を現像した前記基板にエッチング処理を施すエッチング工程と、
前記エッチング工程が施された前記基板から前記感光層を除去する除去工程と、
を含むパターニング基板の製造方法。
【請求項9】
前記除去工程は、水酸化ナトリウム水溶液によって前記感光層を除去する請求項
8に記載のパターニング基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いた硬化物、及び、パターニング基板の製造方法に関し、特にフォトリソグラフィのレジストに用いられる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化や技術の発展により、大規模集積回路(LSI)の高集積化や多層化が進んでいる。このようなLSIや各種精密部品を得るために、精密微細加工技術としてフォトリソグラフィ技術が多く用いられている。当該技術では、化学エッチングや電解エッチングなどを用いて微細なパターンなどを対象物に形成することができる。例えば、フォトリソグラフィ技術に関する技術としては、アルカリ可溶性樹脂及び光重合開始剤を含む樹脂膜用いたホールパターンの形成方法が開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、フォトリソグラフィ技術では、例えば、特許文献1に記載の樹脂膜のような感光層(エッチングレジスト)を露光・現像してパターニングすることで、対象物の表面にエッチング液に不溶なレジストパターンを形成し、その後エッチングが行われる。ネガ型光硬化性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する場合、露光によって、感光層の露光部はモノマーの架橋反応等によって硬化(不溶可)されている。レジストパターンを形成した後、化学エッチングの場合にはエッチング液を用いて対象物にエッチング処理を施し、微細な導体パターンなどを対象物の表面に形成する。
【0005】
感光層を形成するための材料としては、例えば、フィルム状のドライフィルムレジストや、液状のレジストが挙げられる。これらの態様に完全に依存するものではないが、例えば、ドライフィルムレジストの場合、感光層を現像する際の現像液としてNa2CO3水溶液を用いたり、レジストパターンを剥離する際の剥離液としてNaOH水溶液を用いることができる。また、液状レジストでは、現像液としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を用いたり、剥離液としてTMAH/DMSO(ジメチルスルホキシド)水溶液を用いることができる。
【0006】
ここで、エッチング処理後にレジストパターンを剥離する際、レジストパターン剥離のメカニズムは用いる材料によって異なる。
例えば、ドライフィルムレジストで比較的採用される“膨潤剥離”は、剥離液としてアルカリ溶液等を使用することで、レジストパターンを構成するポリマーが強塩基によって塩化・親水化し、ポリマー内に水が浸透することでポリマーが膨潤して、レジストパターンが対象物から剥離する。膨潤剥離では、アルカリ水溶液など比較的取り扱い性や環境性に優れる剥離液を用いることができる。しかし、膨潤剥離では対象物からレジストパターンを剥離する際、レジストパターンが小片化してしまう。剥離したレジストパターンは対象物の微細構造内に剥離残渣として残存することがあり、このような剥離残渣は精密機器の駆動不良の原因となる。特に、パターンの高精細化が進むと小片化した剥離残渣は、対象物の構造内に残存しやすくなる。
【0007】
一方、液状レジストで比較的採用される“溶解剥離”は、レジストパターンを形成するポリマーを剥離液に溶解させることで、レジストパターンを対象物から剥離する。このため、溶解剥離ではレジストパターンの小片化という問題が生じにくく、剥離残渣の発生を抑制することができる。しかし、従来の液状レジスト(レジスト用硬化性樹脂組成物)では溶解剥離に用いる剥離液としてTMAH/DMSOなどを用いる必要があり、剥離液の取り扱い性が困難であったり、環境に対する悪影響が生じやすい。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決すべく、優れたエッチング耐性と、アルカリ水溶液等の剥離液に対する優れた溶解性とを示す硬化物を提供できる、硬化性樹脂組成物、硬化物、及び、パターニング基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> 下記式(1)で表されるモノマー(A)と、
(メタ)アクリロイル酸を構成単位として含むアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、炭素数3~6であり、直鎖状、分岐状若しくは環状の、飽和又は不飽和炭化水素基を示し、Yは、-NH-、-O-又は-S-を示し、Zは、(メタ)アクリロイル基、-OH又は-Hを示し、nは1~5の整数を示す。式(1)中、複数のY及びZはそれぞれ同一でもよいし異なっていてもよい。但し、複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数は、1~4である。)
<2> 前記式(1)における複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数が、1~2である前記<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
<3> 前記式(1)における複数のZの少なくとも一つが、-OHである前記<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4> 前記式(1)におけるXが環状の飽和又は不飽和炭化水素基である前記<1>~<3>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
<5> 全固形分に対する前記式(1)で表されるモノマー(A)の含有量が10~60質量%である前記<1>~<4>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
<6> さらに溶剤を含む前記<1>~<5>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
<7> 前記アルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)が70~150℃である前記<1>~<6>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
<8> 前記<1>~<7>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
<9> 3%水酸化ナトリウム(40℃)への溶解する時間が0.01m
2及び膜厚15μm当たり20分間以下である前記<8>に記載の硬化物。
<10> 前記<1>~<7>のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造されるパターニング基板の製造方法であって、
基板上に前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を付与する感光層形成工程と、
前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を露光する露光工程と、
前記露光工程にて露光した前記感光層を現像する現像工程と、
前記現像工程にて前記感光層を現像した前記基板にエッチング処理を施すエッチング工程と、
前記エッチング工程が施された前記基板から前記感光層を除去する除去工程と、
を含むパターニング基板の製造方法。
<11>前記除去工程は、水酸化ナトリウム水溶液によって前記感光層を除去する前記<10>に記載のパターニング基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたエッチング耐性とアルカリ水溶液等の剥離液に対する優れた溶解性とを示す硬化物を提供できる、硬化性樹脂組成物、硬化物、及び、パターニング基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
《硬化性樹脂組成物》
本実施形態の硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある。)は、下記式(1)で表されるモノマー(A)と、(メタ)アクリロイル酸を構成単位として含むアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)と、を含む。
【0013】
【化2】
(式(1)中、Xは、炭素数3~6であり、直鎖状、分岐状若しくは環状の、飽和又は不飽和炭化水素基を示し、Yは、-NH-、-O-又は-S-を示し、Zは、(メタ)アクリロイル基、-OH又は-Hを示し、nは1~5の整数を示す。式(1)中、複数のY及びZはそれぞれ同一でもよいし異なっていてもよい。但し、複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数は、1~4である。)
【0014】
本実施形態の樹脂組成物は、銅張積層板の銅膜や半導体基板の酸化膜等を有するエッチング対象物をエッチングして導体パターンや酸化膜パターンなどを形成する際の感光層(エッチングレジスト)として用いることができる。感光層は、本実施形態の樹脂組成物をエッチング対象物の表面に塗布等して形成することができる。特に限定されるものではないが、本実施形態の樹脂組成物は、例えば、光重合開始剤等を含めることで、ネガ型光硬化性樹脂組成物とすることができる。ネガ型光硬化性樹脂組成物を用いて感光層を形成した場合、感光層に光等の放射線を照射して露光することによって(感光させることによって)、露光部を硬化させることができる(以下、本実施形態の樹脂組成物を硬化させた硬化物を「本実施形態の硬化物」又は単に「硬化物」と称することがある)。この際、感光層の非硬化部(非露光部)は現像液に対して可溶であるが、硬化部(露光部)は現像液に対して不溶となる。このため、感光層に対してマスク等を用いてパターン状に光を照射して露光した後、現像液を用いて非硬化部を現像する(除去する)ことで、エッチング対象物の表面に本実施形態の硬化物で形成されたレジストパターンを形成することができる。
レジストパターンを形成した後、エッチング対象物はエッチング液を用いてエッチングされ、銅膜や酸化膜が除去されて、導体パターンや酸化膜パターン等が形成される。その後、レジストパターンは、剥離液を用いてエッチング対象物表面から除去される。なお、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、エッチング液を用いた化学エッチング用のレジスト用組成物に限定されるものではなく、電解エッチング用のレジスト用組成物としても用いることができる。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物を用いた硬化物は、優れたエッチング耐性とアルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性とを有する。
ここで、「エッチング耐性」とは、レジストパターンの、塩化第二鉄水溶液などのエッチング液に対する耐性を意味する。例えば、エッチング対象物に対し、本実施形態の樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成し、エッチングによって導体パターン等を形成した際、表面に凹凸がなく、直線的なパターン(例えば、導体パターンの断面が矩形)を形成することができる。
また、「アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性」とは、レジストパターンを剥離する際における、剥離液に対するレジストパターン(硬化物)の溶解性を意味する。すなわち、本実施形態の樹脂組成物を硬化させたレジストパターンは、エッチング液に対する耐性に優れると供に、レジストパターンを剥離する際の剥離液に対する溶解性に優れる。剥離液に対する溶解性が高いと剥離液中のレジストパターン残渣が少ないため、当該残渣に起因する問題の発生を抑制することができる。また、本実施形態の樹脂組成物を硬化させたレジストパターンは、水酸化ナトリウム水溶液(3%)などの低濃度のアルカリ性剥離液に対しても優れた溶解性を発揮することできる。このため、比較的短い時間でレジストパターンを溶解することができるため、剥離液によってエッチング対象がダメージを受けることを抑制することができる。
【0016】
さらに、本実施形態の樹脂組成物を用いた感光層は、K2CO3水溶液等の現像液に対する現像速度に優れる。
【0017】
(式(1)で表されるモノマー(A))
本実施形態の樹脂組成物に用いられるモノマー(A)は、下記式(1)で表される。
【化3】
(式(1)中、Xは、炭素数3~6であり、直鎖状、分岐状若しくは環状の、飽和又は不飽和炭化水素基を示し、Yは、-NH-、-O-又は-S-を示し、Zは、(メタ)アクリロイル基、-OH又は-Hを示し、nは1~5の整数を示す。式(1)中、複数のY及びZはそれぞれ同一でもよいし異なっていてもよい。但し、複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数は、1~4である。)
【0018】
式(1)中、Xは、炭素数3~6であり、直鎖状、分岐状若しくは環状の、飽和又は不飽和炭化水素基を示す。特に限定はされないが、Xとしては、環状の飽和又は不飽和炭化水素基が好ましく、環状の飽和炭化水素基がさらに好ましい。
Xとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、などが挙げられ、シクロヘキシレン基、フェニレン基、が好ましく、シクロヘキシレン基がさらに好ましい。
【0019】
式(1)中、Yは、-NH-、-O-又は-S-を示す。式(1)において、複数のYは、それぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。モノマー(A)はYとして少なくとも酸素原子を含むものが好ましい。
【0020】
式(1)中、Zは、(メタ)アクリロイル基、-OH又は-Hを示す。式(1)において、複数のYは、それぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。但し、式(1)中、複数のZにおいて、全(メタ)アクリロイル基の数は、1~4であり、耐エッチング性、アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性及び現像性の観点から、1~2であることが好ましい。また、モノマー(A)中、特に限定はないが、アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性の観点から、複数のZの少なくとも一つが-OH(水酸基)であることが好ましく、モノマー(A)が1~4の水酸基を有することがさらに好ましく、1~2の水酸基を有することが特に好ましい。
式中(1)nは、1~5の整数を示す。nとしては、現像性の観点から1~3が好ましく、1~2がさらに好ましい。なお、複数のnは同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0021】
モノマー(A)としては、例えば、下記化合物が挙げられる。
【化4】
【0022】
【0023】
モノマー(A)の分子量としては、特に限定はないが、現像速度の観点から、300~1,000が好ましく、300~800がさらに好ましく、400~700が特に好ましい。モノマー(A)の分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。
【0024】
モノマー(A)の含有量としては、特に限定はないが、アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性をさらに高める観点から、全固形分に対して、10~60質量%が好ましく、20~50質量%がさらに好ましく、20~40質量%が特に好ましい。本明細書を通じて「全固形分」とは、樹脂組成物における溶媒以外の全成分を意味する。
また、モノマー(A)に他のモノマーを併用する場合、モノマーの全量としては、特に限定はないが、アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性の観点から、全固形分に対して、10~60質量%が好ましく、20~50質量%がさらに好ましく、20~40質量%が特に好ましい。
さらに、組成物中の全モノマー(x)と全ポリマー(y)との比(x/y)は、特に限定はないが、パターニング性の観点から、20/80~80/20が好ましく、30/70~60/40がさらに好ましく、40/60~60/40が特に好ましい。
【0025】
(アルキル(メタ)アクリレートポリマー(B))
本実施形態においてアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)(以下、単に「ポリマー(B)と称することがある」は、(メタ)アクリロイル酸を構成単位として含むアルカリ可溶性樹脂である。
ポリマー(B)の構成単位となりうるモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート及び脂環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリマー(B)は、これらモノマーを重合させることで得ることができる。
アルキル(メタ)アリクレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
脂環式(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
また、ポリマー(B)は、(メタ)アクリロイル酸を構成単位として含んでいればよく、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。ポリマー(B)がコポリマーの場合、ポリマー(B)はアルキル(メタ)アクリレートに共重合可能な他のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、スチレン、マレイミド誘導体等が挙げられる。ポリマー(B)が他のポリマーに由来する構成単位を含む共重合体である場合、ポリマー(B)全体におけるアルキル(メタ)アクリレートに由来構成単位の割合は、特に限定されるものではないが、現像速度の点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0026】
特に限定されるものではないが、ポリマー(B)を構成するモノマーの組み合わせとしては、例えば、以下が挙げられる。
・(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸〕と;
メチル(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸メチル〕と;
ブチルアクリレート〔(メタ)アクリル酸ブチル〕と;の組み合わせ
・(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸〕と;
ベンジル(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸ベンジルと;
ブチルアクリレート〔(メタ)アクリル酸ブチルと:の組み合わせ
【0027】
ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)としては、特に限定はないが、タック性及び現像性向上の観点から、60~150℃が好ましく、60~130℃がさらに好ましく、70~130℃が特に好ましい。
ポリマー(B)の重量平均分子量としては、特に限定はないが、エッチング耐性の観点から、5,000~80,000が好ましく、8,000~50,000がさらに好ましく、10,000~30,000が特に好ましい。
ポリマー(B)の分子量測定は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC(東ソー(株)製、品番:GPC-8320、カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel-G5000H、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/min))を用いて行なうことができる。
【0028】
ポリマー(B)の酸価は、アルカリ現像において現像不良の発生及び露光部分の表面が現像液で侵食される等の不具合の発生を抑制する観点から、固形分換算で10~200であることが好ましく、20~120が更に好ましく、30~60が特に好ましい。酸価を調整する方法としては、水酸基に酸無水物を付加させる方法や、アクリル樹脂に関してはカルボン酸含有アクリレートを共重合させる方法等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物中におけるポリマー(B)の含有量は特に限定はなく、上述のモノマー(A)との関係に基づいて適宜決定することができるが、例えば、現像速度の観点から、組成物中の全固形分に対して、30~70質量%が好ましく、40~60質量%が更に好ましく、40~50質量%が特に好ましい。
【0030】
(光重合開始剤)
本実施形態における樹脂組成物は光重合開始剤を含むことができる。特に限定されるものではないが、本実施形態における光重合開始剤は、i線(365nm)に吸収波長を有するものを好適に用いることができる。
【0031】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン〔イルガキュア907〕等のα-アミノケトン系光重合開始剤や、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-〔9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤や、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等の硫黄化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシフェニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシナフチル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル フォスフィンオキサイド〔イルガキュアTPO〕等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、その1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することもできる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物中における光重合開始剤の含有量は特に限定はないが、例えば、硬化物の硬化性の観点から、組成物中の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、0.5~7.5質量%が更に好ましく、1.0~5.0質量%が特に好ましい。
【0033】
(その他)
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の樹脂組成物の効果を阻害しない範囲で、例えば、光重合開始助剤や100nm以下の微粒子等を含んでいてもよい。
【0034】
前記光重合開始助剤は、単独では光重合開始剤として機能しないが、光重合開始剤と組合せて使用することで光重合開始剤の能力を増大させる化合物である。光重合開始助剤としては、例えば、ベンゾフェノンと組合せて使用すると効果のあるトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0035】
100nm以下の微粒子を添加すると本実施形態における樹脂組成物の硬化物の弾性復元率を向上させることができる。100nm以下の微粒子としては、特に限定はないが、例えば、Al2O3、TiO2、Fe2O3、ZnO、CeO2、Y2O3、Mn3O4、SiO2などが挙げられる。また、微粒子の形状についても特に限定はないが、真球状、球状、多面体形状のものを挙げることができる。
【0036】
(樹脂組成物の調製)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のモノマー(A)、ポリマー(B)に加えて、光重合開始剤等や、必要に応じて溶剤、レベリング剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、粘度調整剤などを加え、混合することで調製することができる。
【0037】
-溶剤-
前記溶剤としては、感光性樹脂組成物に用いられる公知の溶剤を適宜選定して用いることができる。溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチル-3-メトキシプロピオネート等のエステル類や、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等を挙げることができる。
【0038】
《パターニング基板の製造方法》
本実施形態のパターニング基板の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を用いて製造されるパターニング基板の製造方法であって、
基板上に前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を付与する感光層形成工程と、
前記硬化性樹脂組成物を含む感光層を露光する露光工程と、
前記露光工程にて露光した前記感光層を現像する現像工程と、
前記現像工程にて前記感光層を現像した前記基板にエッチング処理を施すエッチング工程と、
前記エッチング工程が施された前記基板から前記感光層を除去する除去工程と、
を含む。
【0039】
実施形態のパターニング基板の製造方法は、上述のようにフォトリソグラフィ法によって露光、現像及びエッチングを施すことで、例えば、銅張積層板上に銅膜の導体パターンを設けたり、半導体基板上に酸化膜のパターンを形成した基板を製造することができる。
【0040】
-感光層形成工程-
感光層形成工程は、基板上に硬化性樹脂組成物を含む感光層(エッチングレジスト)を付与する工程である。硬化性樹脂組成物の付与方法は特に限定はなく、塗布など公知の方法を適宜採用できる。感光層の層厚は特に限定はないが、例えば、耐エッチング性の観点から、1~30μmが好ましく、5~20μmがさらに好ましく、10~20μmが特に好ましい。感光層は塗布等によって層状にした後に加熱(ポストベーク)処理をおこなってもよい。前記基板は、所望の目的に応じて適宜変更可能だが、例えば、特に限定はないが、例えば、銅張積層板や酸化膜を設けた半導体基板等が挙げられる。
【0041】
-露光工程-
露光工程は、硬化性樹脂組成物を含む感光層を露光する工程である。一般的に露光は所望のパターンを有するマスクを介して行われる。上述のように本実施形態の樹脂組成物がネガ型光硬化性樹脂組成物の場合には、露光部のモノマー(A)が架橋反応によって硬化し現像液に対して不溶化する。露光工程における光源としては、用いる光重合開始剤の種類等によって異なるが、例えば、超高圧水銀灯、キセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0042】
-現像工程-
現像工程は、露光工程にて露光した感光層を現像する工程である。本実施形態の樹脂組成物がネガ型光硬化性樹脂組成物の場合には、露光した感光層を現像すると、未露光部が現像液によって除去され、樹脂組成物の硬化物からなる露光部によって形成されたエッチングパターンが形成される。
【0043】
現像工程に用いられる現像液は、特に限定はないが、アルカリ水溶液(例えば、K2CO3水溶液(0.3%))、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、が挙げられ、環境性及び作業安全性の観点から、アルカリ水溶液が好ましい。
【0044】
現像工程における現像時間は特に限定はないが、本実施形態の樹脂組成物は現像液に対して優れた現像速度を有するため、例えば、現像液としてK2CO3水溶液(0.3%)等のアルカリ水溶液を用いた場合、好ましくは60秒以内、さらに好ましくは40秒以内で感光層の非露光部を溶解(除去)することができる。
【0045】
-エッチング工程-
エッチング工程は、現像工程にて感光層を現像した基板にエッチング処理を施す工程である。本工程においては、現像工程にて感光層を現像した基板、即ち、エッチングパターンが形成された基板に対しエッチング処理を施すことによって、導体パターンや酸化膜のパターン等を形成することができる。また、本実施形態の樹脂組成物を用いた硬化物(レジストパターン)はエッチング耐性に優れるため、エッチング処理時におけるエッチング液の染み込みを抑制でき、直線的な導体パターン等を形成することができる。なお、レジストパターンの厚さは、感光層の厚さがおおむね維持されるが、硬化収縮等により感光層の厚さよりも薄くなる場合もある。したがって、感光層の厚さは、1~30μmが好ましく、5~20μmがさらに好ましく、10~20μmが特に好ましい。また、15μmとすることもできる。
【0046】
エッチング工程に用いられるエッチング液は、特に限定はないが、塩化第二鉄水溶液(40%)など、エッチング対象に合わせて公知のエッチング液を適宜選定することができる。このようなエッチング液としては、塩化第二鉄水溶液(4%)の他、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、環境性及び作業安全性の観点から、エッチングパターンの形成性の観点から塩化第二鉄水溶液が好ましい。
【0047】
-除去工程-
除去工程は、エッチング工程が施された基板から感光層を除去する工程である。本工程においては、エッチング工程が施された基板から感光層、即ち、エッチングパターンが形成された基板に対しエッチング処理を施した後、エッチングパターンを除去する工程である。
【0048】
除去工程に用いられる剥離液は、特に限定はないが、アルカリ水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液(3%)、水酸化カリウム水溶液(3%))やその他公知の剥離液が挙げられるが、環境性及び作業安全性の観点から、アルカリ水溶液が好ましい。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は剥離液に対して高い溶解度を有する。“剥離液に対する溶解度”とは、10cm×10cm(0.01m2)四方のガラス基板上に本実施形態の樹脂組成物をスピンコーターによって塗布・乾燥して乾燥膜厚15μmの塗膜を形成し、得られた塗膜に超高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射して硬化させた硬化層を水酸化ナトリウム水溶液(3%;40℃)に浸漬し、塗膜が完全に水酸化ナトリウム水溶液に溶解するまでの時間を意味する。本実施形態の樹脂組成物を用いた硬化物(レジストパターン)の剥離液に対する溶解度(即ち、0.01m2及び膜厚15μm当たりの3%水酸化ナトリウム(40℃)への溶解する時間)は、好ましくは20分間以下、さらに好ましくは15分間以下、特に好ましくは10分間以下である。また、硬化物が0.01m2及び膜厚1μm当たりの3%水酸化ナトリウム(40℃)への溶解する時間)は、好ましくは5分間以下、より好ましくは4分間以下、さらに好ましくは3分間以下、特に好ましくは2分間以下、最も好ましくは1分間以下である。
【0050】
本実施形態のパターニング基板の製造方法によってパターニング基板を製造するために用いる装置や手法等は特に限定されず、公知のパターニング基板を製造する装置や、後述する方法により製造することができる。すなわち、上記のパターニング基板の製造方法は、上記の各工程を含むパターニング方法を実施できる装置や手法により行うことができる。
【0051】
以上、本発明の態様について実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【実施例】
【0052】
[製造例1]
(アクリル樹脂(P-1)の製造)
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び、窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸20.0g、メタクリル酸メチル60.5g、アクリル酸ブチル11.9gを仕込んだ。次いで、系内の気相部分を窒素で置換したのち、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)7.6gを添加し、80℃に加熱した。同温度で8時間反応させ、目的の重合体(P-1)の40%溶液を得た。
得られた重合体(P-1)の固形分換算した酸価は141.1であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は18,700であった。重量平均分子量(Mw)は、GPC(東ソー(株)製、品番:GPC-8320、カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel-G5000H、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/min)〕を用いてポリスチレン換算で測定した。
【0053】
[製造例2]
(アクリル樹脂(P-2)の製造)
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び、窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、メタクリル酸20.0g、メタクリル酸ベンジル106.6g、アクリル酸ブチル11.9gを仕込んだ。次いで、系内の気相部分を窒素で置換したのち、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)7.6gを添加し、80℃に加熱した。同温度で8時間反応させ、目的の重合体(P-2)の40%溶液を得た。
得られた重合体(P-2)の固形分換算した酸価は94.1であった。また、GPCによる重量平均分子量(Mw)は20,500であった。重量平均分子量(Mw)は、製造例1と同様の手段にて測定した。
【0054】
[製造例3]
(2官能モノマー(M-1)の製造)
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、及び、窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル20.0g、アクリル酸8.8g、トリフェニルホスフィン0.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.2gを仕込んだ。次いで、系内の気相部分を空気で置換した後100℃に加熱した。同温度で12時間反応させ、目的の2官能モノマー(M-1)の80%溶液を得た。
【0055】
【0056】
[製造例4]
(4官能モノマー(M-3)の製造)
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル20.0g、無水メタクリル酸19.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.0gを仕込んだ。次いで、系内の気相部分を空気で置換した後70℃に加熱し、同温度で12時間反応させ、目的の4官能モノマー(M-3)の80%溶液を得た。
【0057】
【0058】
[実施例1]
(光硬化性樹脂組成物の調製)
重合体(P-1)35.2g、2官能アクリレート(M-1)17.6g、光重合開始剤(I-1)(イルガキュア907,BASF社製)1.2g、光重合開始剤(I-2)(イルガキュアTPO、BASF社製)0.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)44.9gを遮光下で混合し、光硬化性樹脂組成物(エッチングレジスト組成物)を調製した。
【0059】
(レジストパターンの作製方法)
基板として、35μm圧延銅箔を積層した1.6mm厚の銅張積層板を用いた。基板上に調製した実施例1の光硬化性樹脂組成物をスピンコーターで均一に塗布した後、ホットプレート上90℃で2分間乾燥をおこない感光層を形成した(感光層形成工程)。得られた感光層に対し、200μmラインアンドスペースの開口部を有するマスクを通して、超高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射した(照度はi線換算20mW)(露光工程)。なお、マスクと基板との間隔(露光ギャップ)は50μmで露光した。その後、0.3%K2CO3水溶液を用いてアルカリ現像した(現像工程)。その後、水洗したのち、90℃で2分間乾燥し、膜厚15μmのレジストパターンを作製した。
【0060】
レジストパターンを作製した銅張積層板を塩化第二鉄水溶液(40%)に30分間浸漬し、銅箔をエッチングした(エッチング工程)。その後、レジストパターンを水酸化ナトリウム水溶液(3%)によって40℃、20分間の剥離処理を行い、レジストパターンを除去し(除去工程)、導体パターンを形成した。
【0061】
(耐エッチング性)
得られた導体パターンを顕微鏡で観察し、以下の基準に基づいてランク分けした。
〔耐エッチング性評価基準〕
A:導体パターンが直線的に形成されており、エッチング液の染み込みが見られなかった。
B:導体パターンが直線的に形成されているが、エッチング液の染み込みが見られた。
C:導体パターンが直線的に形成されておらず、パターン表面に凹凸が見られた。
【0062】
(アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性)
10cm×10cm四方のガラス基板上に前記光硬化性樹脂組成物をスピンコーターによって塗布し、乾燥し、乾燥膜厚15μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に超高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射して硬化層とした。得られた硬化層を基板と共に剥離液(水酸化ナトリウム水溶液(3%))に浸漬し、40℃で20分間静置した。次いで剥離液を顕微鏡で観察し、以下の基準に基づいてランク分けした。
〔溶解性評価〕
A:基板上の硬化層が完全に溶解しており、剥離液中に不溶物がなかった。
B:基板上の硬化層は溶解しているが、剥離液中に少量の不溶物が認められた。
C:基板から硬化層が剥離しているが、剥離液中に不溶物が多量に認められた。
【0063】
〔現像速度〕
10cm×10cm四方のガラス基板上に前記光硬化性樹脂組成物をスピンコーターにより塗布し、乾燥し、乾燥膜厚15μmの塗膜(感光層)を形成した。得られた塗膜をホットプレート上で90℃、2分間加熱した。加熱後、K2CO3水溶液(0.3%)を用いて塗膜をアルカリ現像し、基板上からレジスト残渣が無くなるまでの現像時間を測定し、以下の基準に従ってランク分けした。
〔現像性評価基準〕
A:現像時間が40秒以内であった。
B:現像時間が40秒超60秒以内であった。
C:現像時間が60秒超80秒以内であった。
【0064】
[実施例2~6及び比較例]
下記表に従って各成分を用いた以外は実施例1と同様にして他の実施例及び比較例の光硬化性樹脂組成物を調製した。また、実施例1と同様にレジストパターンを作製し、同様の評価を行った。結果を下記表に示す。
【0065】
【0066】
【化8】
表1の記載からわかるように、本発明におけるモノマー(A)に該当するM-1及びM-3を用いた実施例は現像性、耐エッチング性及びアルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性はいずれも十分な効果を示していた。一方、M-1及びM-3を用いていない比較例は、いずれも剥離液中に多量の不溶物が認められ、アルカリ水溶液等の剥離液に対する溶解性が劣っていた。