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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】繊維製品用処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20230613BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20230613BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20230613BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M13/144
D06M13/165
D06M23/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018246593
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020105663
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 晋
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 寛也
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 - 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含有する重合体、
(B)機能性カプセル、及び
(C)6~25質量%の、炭素数1~4のアルコール、下記式(1)で表される化合物、及び下記式(2)で表される1,3-ジオキソラン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物
を含む、繊維製品用噴霧処理剤組成物。
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4は、水素原子又はアセチル基である。)
(式中、Raは炭素数1~14の直鎖のアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~14の直鎖のアルケニル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルケニル基、炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基、又は水素であり、Rb及びRcはそれぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖のアルケニル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルケニル基、又は水素である。)
【請求項2】
(C)成分を8~20質量%含む、請求項1に記載の繊維製品用噴霧処理剤組成物。
【請求項3】
(A)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含有する重合体、
(B)機能性カプセル、及び
(C)8~20質量%の、炭素数1~4のアルコール、下記式(1)で表される化合物、及び下記式(2)で表される1,3-ジオキソラン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物
を含む、繊維製品用処理剤組成物。
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4は、水素原子又はアセチル基である。)
(式中、Raは炭素数1~14の直鎖のアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~14の直鎖のアルケニル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルケニル基、炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基、又は水素であり、Rb及びRcはそれぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖のアルケニル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルケニル基、又は水素である。)
【請求項4】
(B)成分が、カチオン性機能性カプセルである、請求項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である、請求項3又は4に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項6】
(C)/(A)で表される質量比が100以上である、請求項のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用処理剤組成物に関する。詳細には、本発明は、乾燥性、分散安定性及び発香性に優れた繊維製品用処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、除菌、消臭、防臭、香り、しわとりなど、各社から家庭用の繊維製品用スプレーが多数発売されており、その市場は年々増加している。その中でも、香り等の機能の持続性に関するニーズは高く、更なる香りや機能の持続性が可能となる繊維製品用スプレーが求められている。
香りや機能の持続性を効果的に維持する方法としては、柔軟剤等に配合されているカプセル香料等を用いることが挙げられる(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-523078号公報
【文献】特表2007-503516号公報
【文献】特開2014-198070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スプレー剤組成のようにエタノール等の溶媒が多い(例えば10%前後)組成系では、機能性カプセルの壁膜が溶媒によって破壊されてしまう。そのため、保存安定性の維持が非常に難しく、お客様の実使用場面では性能実感が低下してしまうことが課題として挙げられる。この課題に対し、溶剤、機能性カプセル及びアクリル酸系高分子の組み合わせにおいて、乾燥性が良く、分散安定性に優れ、長期保存においても発香性や機能が維持できる組成を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記〔1〕~〔6〕に関するものである。
〔1〕(A)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含有する重合体、
(B)機能性カプセル、及び
(C)6~25質量%の、炭素数1~4のアルコール、下記式(1)で表される化合物、及び下記式(2)で表される1,3-ジオキソラン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物
を含む、繊維製品用処理剤組成物。
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4は、水素原子又はアセチル基である。)
(式中、Raは炭素数1~14の直鎖のアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~14の直鎖のアルケニル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルケニル基、炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基、又は水素であり、Rb及びRcはそれぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖のアルケニル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルケニル基、又は水素である。)
〔2〕(B)成分が、カチオン性機能性カプセルである、前記〔1〕に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔3〕(C)成分を8~20質量%含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔4〕(C)成分を9~15質量%含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔5〕(A)成分が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
〔6〕(C)/(A)で表される質量比が100以上である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、乾燥性が良い繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、分散安定性に優れた繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、長期保存においても発香性が維持できる繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
本発明の一態様によれば、乾燥性が良く、分散安定性に優れ、長期保存においても発香性が維持できる繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[(A)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(A)成分としてアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含む重合体を含有する。(A)成分は、構造粘性付与及び/又は保存安定性向上の目的で配合され得る。
ここで、アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸と脂肪族アルコールから得られるエステルであり、メタクリル酸エステルは、例えば、メタクリル酸と脂肪族アルコールから得られるエステルである。脂肪族アルコールは、例えば、炭素数1~40の飽和脂肪族アルコールである。
(A)成分は、例えば、下記式(a2)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含有する重合体であり、さらに下記式(a1)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含有する共重合体であることが好ましい。
式(a1)中、R5は水素原子又はメチル基であり、R6は水素原子である。
式(a2)中、R7は水素原子又はメチル基であり、R8は炭素数1~40のアルキル基である。R8におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、又は環状の構造(シクロアルキル環、又は芳香族環)を含んでいてもよい。R8におけるアルキル基の炭素数は1~40であり、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。
【0008】
式(a1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(a1)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(a1)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(a1)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
式(a1)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(a2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位は、式(a2)で表されるモノマーを含むモノマー成分を重合したときに、式(a2)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位である。
式(a2)で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イコシル等のアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イコシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
式(a2)で表されるモノマーは、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
(A)成分は、架橋されているものでもよく、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。(A)成分の架橋されているものとしては、例えば、架橋剤により架橋されているもの(高分子架橋体)が挙げられる。
前記の架橋剤としては、例えばアリルエーテル化合物が好適に挙げられる。
アリルエーテル化合物としては、アリルエーテル、糖のアリルエーテル、糖アルコールのアリルエーテル等が挙げられる。
糖のアリルエーテルにおける糖としては、例えばスクロース等が挙げられる。
糖アルコールのアリルエーテルにおける糖アルコールとしては、例えばペンタエリスリトール等が挙げられる。
(A)成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(A)成分は、式(a1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位及び式(a2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し単位以外の繰り返し単位(他の繰り返し単位)を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、他のモノマーから誘導された繰り返し単位が挙げられる。他のモノマーとしては、式(a1)で表されるモノマー及び式(a2)で表されるモノマーと共重合可能であれば特に制限されず、1種以上を用いることができる。
(A)成分の平均分子量は、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量で1000~10000000であり、好ましくは3000~5000000である。
一実施態様において、(A)成分は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体であることが好ましい。
【0010】
(A)成分の具体例としては、例えば以下の商品名が挙げられる。
架橋タイプの(A)成分の市販品としては、例えば、Lubrizol社製のアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol Aqua30」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である「Carbopol Aqua SF-1」;Lubrizol社製のアクリル酸アルキル(C10~C30)、メタクリル酸アルキル(C10~C30)及びアクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である商品名「Carbopol EZ-4」;DOW社製のアクリル酸アルキルと、アクリル酸又はメタクリル酸とからなる架橋型共重合体である商品名「ACUSOL830」等が挙げられる。
(A)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.005~1.5質量%、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.03~0.8質量%である。(A)成分の含量が0.005質量%以上であると充分な保存安定性が達成でき、1.5質量%以下であると乾燥性への影響を低減できる。(A)成分の含量が0.01~1質量%の範囲内であると、保存安定性の向上、及び乾燥性への影響低減の点で好ましい。
【0011】
[(B)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(B)成分として機能性カプセルを含有する。(B)成分は、香りや機能を持続させる目的で配合され得る。
機能性カプセルは、芯物質と、当該芯物質を覆う壁物質とから構成されるマイクロカプセルであり、芯物質は香料や精油、忌避剤等を含む。このような芯物質の香料及び精油は、本発明の技術分野において周知の成分を用いることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。
機能性カプセルの壁物質は、高分子物質から構成され、繊維製品用処理剤組成物等に含有されるカプセルに一般的に使用される材料を用いることができる。壁物質として、例えば、ゼラチン、寒天等の天然系高分子、油脂、ワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、ポリウレア系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質などを挙げることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。壁物質は、カプセルが破壊された際の発香性の観点から、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂或いは尿素-ホルムアルデヒド樹脂からなるアミノプラストポリマー、ポリアクリル酸系或いはポリメタクリル酸系ポリマーであることが好ましい。特に、特開2010-520928号に記載されているようなアミノプラストポリマーが好ましい。具体的には、ポリアミン由来の部分/芳香族ポリフェノール由来の部分/メチレン単位、ジメトキシメチレン及びジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなるターポリマーであることが好ましい。
【0012】
マイクロカプセルの表面電荷は正電荷、負電荷のどちらでもよく、2種以上を組み合わせても良い。中でも、表面が正に帯電しているマイクロカプセルが好ましい。このようなマイクロカプセルは、カチオン性マイクロカプセル、或いはカチオン性機能性カプセルと呼ばれる。表面電位(ゼータ電位)について、負電荷の好ましい範囲は、-1~-80mVであり、-5~-70mVがより好ましく、-10~-60mVが特に好ましい。正電荷の好ましい範囲は1~80mVであり、5~70mVがより好ましく、10~60mVが特に好ましい。
本明細書において、表面電位(ゼータ電位)は、試料をナノピュア水で10%に希釈し、希釈した試料をディスポシリンジを用いて空気が入らないようにキャピラリーセル(DTS1060)に注入し、ゼータ電位計(ゼータサイザーNanoZS、マルバーン(株)製)を用いて25℃で表面電荷測定を行って測定した値である。
【0013】
香料を芯物質として用いた機能性カプセルは、カプセル香料とも呼ばれる。カプセル香料は、市販の製品から適宜選択することができるが、具体的には、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」、IMPACTPOPSCENT「197593BMHN2911」、及びAPPLEPOPSCENT「113285FBMHN2911」;ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS、及びCOSMICCAPS;IFF社製のUNICAP101、及びUNICAP503等が挙げられる。
また、忌避剤を芯物質として用いた機能性カプセルは、カプセル忌避剤とも呼ばれる。カプセル忌避剤は、市販の製品から適宜選択することができるが、具体的には、大和化学工業株式会社製のアニンセンPCR-M、アニンセンPCR-U、アニンセンCLC-3600S;三木理研社製の、リケンレジンRMC-HBC、リケンレジンRMC-PTLC等が挙げられる。
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
(B)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し、例えば、0.005~5質量%、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.01~2質量%である。(B)成分の含量が0.005質量%以上であると充分な発香性が達成でき、5質量%以下であると白残りを抑制できる。(B)成分の含量が0.01~5質量%の範囲内であると、発香性、白残りの点で好ましい。
なお、白残りとは、機能性カプセルが一部に片寄った場合に、繊維に白く残る場合があり、これを白残りと呼んでいる。
【0014】
[(C)成分]
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、(C)成分として、炭素数1~4のアルコール、下記式(1)で表される化合物、及び下記式(2)で表される1,3-ジオキソラン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する。(C)成分は、乾燥性向上の目的で配合され得る。
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4は、水素原子又はアセチル基である。)
(式中、Raは炭素数1~14の直鎖のアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~14の直鎖のアルケニル基、炭素数1~14の分岐鎖のアルケニル基、炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基、又は水素であり、Rb及びRcはそれぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基、炭素数1~5の直鎖のアルケニル基、炭素数1~5の分岐鎖のアルケニル基、又は水素である。)
式(2)中、好ましくは、Raは炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基を表す。
式(2)中、好ましくは、Rb及びRcはそれぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、又は炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基を表す。
式(2)で表される1,3-ジオキソラン化合物は、好ましくは、Raが炭素数1~14の直鎖のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~14の分岐鎖のヒドロキシアルキル基を表し、Rb及びRcが、それぞれ独立に、炭素数1~5の直鎖のアルキル基、又は炭素数1~5の分岐鎖のアルキル基を表すものである。
【0015】
炭素数1~4のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールが挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、例えば、3-メトキシブタノ-ル、3-メトキシ-3-メチルブタノ-ル、3-メトキシ-3-エチルブタノ-ル、3-メトキシ-3-プロピルブタノ-ル、3-メトキシ-2-メチルブタノ-ル、3-メトキシ-2-エチルブタノ-ル、3-メトキシ-2-プロピルブタノ-ル、3-メトキシ-1-メチルブタノ-ル、3-メトキシ-1-エチルブタノ-ル、3-メトキシ-1-プロピルブタノ-ル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシ-3-エチルブチルアセテート、3-メトキシ-3-プロピルブチルアセテート、3-メトキシ-2-メチルブチルアセテート、3-メトキシ-2-エチルブチルアセテート、3-メトキシ-2-プロピルブチルアセテート、3-メトキシ-1-メチルブチルアセテート、3-メトキシ-1-エチルブチルアセテート、3-メトキシ-1-プロピルブチルアセテートが拳げられ、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシ-2メチルブタノール、3メトキシ-1-メチルブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテートが好ましく、3-メトキシ-3―メチルブタノールがより好ましい。
式(2)で表される化合物としては、例えば、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-エタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-プロパノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-ブタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-ペンタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-ヘキサノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-ヘプタノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-プロパノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-ブタノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-ペンタノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-ヘキサノール、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-ヘプタノールなどが好ましい。
式(2)で表される化合物の中では、本発明の効果が特に得られやすいことから、2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールがより好ましい。
これらの中でも、(C)成分として、炭素数1~4のアルコールを配合することが好ましく、エタノールを配合することが特に好ましい。
【0016】
(C)成分の含量は、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対し6~25質量%であり、好ましくは8~20質量%、より好ましくは9~15質量%である。(C)成分の含量が6質量%以上であると充分な乾燥性が達成でき、25質量%以下であると保存安定性への影響を低減できる。(C)成分の含量が8~20質量%の範囲内であると、乾燥性の向上、及び保存安定性への影響低減の点で好ましい。
また、(A)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(A))が10以上であると、乾燥性がより高まる。(C)/(A)は、12以上であることが好ましく、14以上であることがより好ましい。また、(C)/(A)は、保存安定性への影響を低減する観点から、200以下であることが好ましい。
【0017】
[任意成分]
繊維製品用処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記(A)、(B)及び(C)成分以外の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、各種界面活性剤、シリコーン化合物、キレート剤、再汚染防止剤、高分子、防腐剤、抗菌剤、防カビ剤、忌避剤、天然物などのエキス、分散剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、紫外線吸収剤など、安全性が高くしかも通常の繊維製品用処理剤に使用されるものであればどのようなものでもよく、特に限定されるものではない。本発明における任意成分の配合量は、上限が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
例えば、繊維製品上での菌の増殖を抑制し、不快臭の発生を抑制する観点から、有機系防菌防カビ剤、無機系防菌防カビ剤の中から1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。有機系防菌防カビ剤としては、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、糖質系、トロポロン系、有機金属系のものが挙げられる。また、無機系防菌防カビ剤としては、金属酸化物、銀系のものが挙げられる。例えばイソプロピルメチルフェノールなどの抗菌剤或いは除菌剤を繊維製品用処理剤組成物中に0.05~1質量%の範囲で配合することが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。本発明の繊維製品用処理剤組成物の安定性を高めるために、非イオン性界面活性剤が好ましい。
本発明において使用できる非イオン性界面活性剤としては、炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1~3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が20~100モルである硬化ヒマシ油、などが挙げられる。中でも、炭素数10~14のアルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が5~20モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が30~50モルである硬化ヒマシ油が好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物における非イオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。この範囲にあると、繊維製品用処理剤組成物の分散安定性を高めることができる。
【0018】
シリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、なかでもHLBが13以下、好ましくは10以下、更に好ましくは7以下のポリエーテル変性シリコーンが、着用じわを減少させる観点から好ましい。具体的には東レ・ダウコーニング社製のSH3775C、SH3772CやSH3775Mなどの化合物が好適である。
シリコーン化合物の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維製品用処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~5質量%であり、しわ減少効果と経済性の観点からより好ましくは0.1~1質量%である。
また、繊維製品用処理剤組成物中に含まれる成分の保存安定性を確保するために、pH調整剤を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。酸として、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。アルカリとして、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
さらに、繊維製品用処理剤組成物そのもの、または繊維製品用処理剤組成物により処理された繊維製品に香り付けをするために、香料を繊維製品用処理剤組成物に配合してもよい。本発明の分野において通常使用されているいかなる香料が使用でき、例えば特開2008-7872号公報に記載されているような香料成分、溶剤、安定化剤を含有する香料組成物が挙げられる。香料は、繊維製品用処理剤組成物中に0.005~5質量%配合することができ、香り付けの効果と経済性の観点から、0.01~1質量%配合することが好ましい。
【0019】
[繊維製品用処理剤組成物の製造方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物の製造方法は特に限定されず、本発明の繊維製品用処理剤組成物は定法により製造することができる。
例えば、水に(C)成分及び(A)成分を加え、pH調整剤を用いて組成物のpHを中性にし、(B)成分を添加して混合する。その後、任意成分等を添加して混合後、必要であれば水酸化ナトリウムや塩酸、硫酸等のpH調整剤を用い、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で、配合物をスターラーにて攪拌したままpHを調整した後、残りの水を添加することにより製造することができる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物のpHは、保存安定性を確保するために6以上~9以下であると好ましく、6.5以上~8以下であるとより好ましい。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物の粘度は、200mPa・s以下であることが好ましい。本発明の繊維製品用処理剤組成物をスプレー容器に入れて使用する場合には、150mPa・s以下であることがより好ましい。なお、本明細書で示す粘度はB型粘度計(トキメック社製)を用いて、原液を25℃で測定した場合の数値である。
【0020】
[繊維製品用処理剤組成物の使用方法]
本発明の繊維製品用処理剤組成物を、繊維製品に使用する方法としては、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。
スプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。トリガースプレー容器の例としては、特開平9-268473号公報、特開平9-256272号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器の例としては、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
また、本発明の繊維製品用処理剤組成物は、プラスチック製容器に収納することができる。プラスチック製容器としては、ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000-72181号公報に記載のものが挙げられるが、材質としては、内層に100~250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15~30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
本発明の繊維製品用処理剤組成物を使用する対象の繊維製品としては、特に限定されないが、例えば、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、靴、トイレマット、バスマット、玄関マット、カーペット、ラグ、絨毯等が挙げられる。また、対象とする繊維製品の素材も、特に限定されないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられ、その中でも、普段の手入れが困難なウール及びその混紡品において、本発明の組成物の効果が顕著に発揮される。
【実施例
【0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例において、成分配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0022】
[(A)成分]
下記のA-1及びA-2を使用した。
・A-1:架橋型アクリル酸系高分子(Carbopol AQUA30 Lubrizol社製)
A-1は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である。
・A-2:架橋型アクリル酸系高分子(Carbopol AQUA SF-1 Lubrizol社製)
A-2は、アクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4及びC8)、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる2種類以上のモノマーからなる架橋型共重合体である。
比較例として下記のA-3~A-9を使用した。
・A-3:ポリアクリル酸(sokalanCP10 BASF社製)
・A-4:アクリル酸マレイン酸コポリマー(sokalanCP7 BASF社製)
・A-5:ジェランガム(KELCOGEL LH 三晶社製)
・A-6:グアガム(イネゲル GR-10 伊那食品工業社製)
・A-7:カチオン化グアガム(JAGUR C17 三晶社製)
・A-8:キサンタンガム(ラボールガムGC-S DSP五協フード&ケミカル社製)
・A-9:ヒドロキシエチルセルロース(HEC SP600 ダイセル化学工業株式会社製)
【0023】
[(B)成分]
下記のB-1~B-11を使用した。
・B-1:VELVET UP(Givaudan社製)
・B-2:IMPACT POPSCENT 197593 BMHN 2911(フィルメニッヒ社製)
・B-3:APPLE POPSCENT 113285 FBMHN 2911(フィルメニッヒ社製)
・B-4:GREENBREEZE CAPS(Givaudan社製)
・B-5:VELVET CAPS(Givaudan社製)
・B-6:COSMIC CAPS(Givaudan社製)
・B-7:BLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」(フィルメニッヒ社製)
・B-8:アニンセン3600-S(大和化学工業社製)
・B-9:アニンセンPCR-M(大和化学工業社製)
・B-10:リケレジンRMC-PTLC(三木理研社製)
・B-11:リケレジンRMC-HBC(三木理研社製)
これらのうち、B-1、B-2及びB-3はカチオン性カプセル香料であり、B-4~B-11はいずれもアニオン性カプセル香料である。
【0024】
[(C)成分]
下記のC-1~C-4を使用した。
・C-1:合成エタノール95%(日本アルコール販売社製)
・C-2:3-メトキシ-3-メチルブタノール。(クラレ社製、商品名「ソルフィット」)
C-2は、式(1)で表される化合物であり、式(1)中、R1がメチル基であり、R2、R3及びR4が水素原子である。
・C-3:2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール(Solvey社製、商品名「Augeo Clean Multi」)
・C-4:2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール(Solvey社製、商品名「Augeo Clean Plus」)
【0025】
[共通成分]
共通成分I
・メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム「MGDA」(BASF社製) 0.3%
・硫酸亜鉛(II)(関東化学株式会社製) 0.3%
・ポリエーテル変性シリコーン(SH3775M)(東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.5%
・下記表1で示される香料組成物 0.1%
【表1】
共通成分II
・ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド:0.2%
共通成分III
・ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート:0.2%
【0026】
[繊維製品用処理剤組成物の調製方法]
下記手順に従って、実施例1~18及び比較例1~12の組成物を調製した。
あらかじめ(A)成分を任意量の水で希釈し、pH調整剤を用いて所定のpHに調整した後、(B)成分と(C)成分を添加し、攪拌させ、繊維製品用処理剤組成物を調製した。共通成分はいずれも、(A)成分と水を混合する際に併せて添加した。
【0027】
[評価方法]
<カプセルのゼータ電位>
(B)成分の各試料をナノピュア水で10%に希釈し、希釈した試料をディスポシリンジを用いて空気が入らないようにキャピラリーセル(DTS1060)に注入し、ゼータ電位計(ゼータサイザーNanoZS、マルバーン(株)製)を用いて表面電荷測定を行った(25℃、N=3)。測定結果を下記の評価基準に従って評価した。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
◎:表面電荷が正電荷のカプセル香料
○:表面電荷が負電荷のカプセル香料
【0028】
<乾燥性>
ウールサージ布(15cm×10cm、2.5g)の試験布に対して、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物をディスペンサーポンプスプレー(スタイルガード しわもニオイもすっきりスプレー、ライオン(株)製)を用いて、上記試験布に20%o.w.f.となるように噴霧した。20℃、50%RHの恒温室内に吊り干しした状態で放置し、5分毎に重量を測定した。噴霧直後の重量(M)に対し、t分後の重量を(Mt)とし、下記式により乾燥性(K)を測定した。
(K)=(Mt)/(M)×100
測定結果を下記の評価基準に従って評価した。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
◎:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が60分以下
○:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が90分以下
×:(K)が30以下に達するまでに要する時間(t)が90分超え
【0029】
<保存安定性>
上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物を軽量PSガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に100mL入れて密栓し、40℃条件下で1ヶ月間保管し、(B)成分(マイクロカプセル)の分散性を以下に示す3段階評価法により評価を行った。また、カプセル膜の観察は、光学顕微鏡BX51(OLYMPUS株式会社製)を用いて目視にて行った。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2及び3に示す。
≪評価基準≫
◎:香料カプセルの浮遊・沈降及びカプセル膜の崩壊がみとめられない
○:香料カプセルの浮遊・沈降が認められず、極、わずかにカプセル膜の崩壊が認められるもの
×:はっきりと香料カプセルの浮遊・沈降及びカプセル膜の崩壊が認められる
【0030】
<発香性>
ウールサージ布(15cm×10cm、2.5g)の試験布に対して、上記のとおり調製した繊維製品用処理剤組成物(実施例1~7及び12~18、並びに比較例1~12)をディスペンサーポンプスプレー(スタイルガード しわもニオイもすっきりスプレー、ライオン(株)製)を用いて、上記試験布に20%o.w.f.となるように噴霧した。20℃、50%RHの恒温室内に吊り干しした状態で放置し、24時間乾燥させた後の試験布を擦った時の香気強度を、下記の6段階臭気強度表示法に準拠し官能評価した。専門パネラー8人の平均点により、下記判定基準で発香性を判定した。商品価値上、○以上を合格とした。結果を下記表2及び3に示す。
≪6段階臭気強度表示法≫
0:無臭
1:やっと検知できる程度の香り
2:何の香りか分かる程度の香り
3:楽に感知できる香り
4:強い香り
5:強烈な香り
≪判定基準≫
◎:3.5点以上
○:3.0点以上3.5点未満
×:3.0点未満
【0031】
<害虫忌避効果(忌避率)>
まず以下の処理を実施した。
「繊維製品の前処理」
繊維製品として、市販のB.V.D肌シャツ(綿100%、フジボウアパレル社製)2枚を二槽式洗濯機(三菱電機社製、CW-C30A1-H)にて市販洗剤「トップブルーダイヤ」(ライオン社製)を用いて、以下の条件で前処理を行った。
洗剤標準使用量、浴比30倍、50℃の水道水、洗浄15分、脱水5分の工程を2回、その後流水すすぎ15分、脱水5分の工程を5回繰り返す。
「洗浄処理」
前処理した2枚の繊維製品(B.V.D肌シャツ)を縦型全自動式洗濯機(AW-8V2 TOSHIBA社製)に入れ、洗浄10分すすぎ1回、脱水5分を行った。
【0032】
「乾燥処理」
脱水終了直後の2枚の繊維製品と一緒に、上記方法で作製した繊維製品処理用物品(実施例8~11)を電気乾燥機(ED-45C TOSHIBA社製)に入れ、50~80℃で1時間乾燥処理を行った。ブランクとして、繊維製品処理物品は入れずに上記と同様に乾燥処理を行った。
【0033】
上記方法で処理した繊維製品(以下、「処理品」ともいう。)について、害虫忌避効果(防蚊性)を刺咬阻止率(忌避率)として以下の手順で評価した。結果を下記表2及び3に示す。
「試験条件」
天気:晴れ、気温:25.0℃、湿度:60%、試験実施場所:ヒトスジシマカが棲息する屋外土壌上。
「試験方法」
実地忌避効力試験:
無処理品(ブランク)及び処理品のB.V.D肌シャツを着用し、3分間当たりに全身に寄って来るヒトスジシマカの数をカウントした。無処理品着用時に寄って来た蚊の数をA、処理品着用時に寄って来た蚊の数をBとした。
試験後、ヒトスジシマカによる刺咬数を調査し、下記式により刺咬阻止率(忌避率)を算出した。刺咬阻止率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
刺咬阻止率(%)={(A-B)/A}×100
≪判定基準≫
○:80%以上
△:60%以上
×:60%を下回る
【0034】
【表2】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。
【0035】
【表3】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。