(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】L-オルニチンフェニルアセテート製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20230613BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230613BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230613BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230613BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230613BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230613BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230613BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K31/198 ZMD
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61P1/16
A61P9/00
A61P13/02
(21)【出願番号】P 2018524369
(86)(22)【出願日】2016-11-11
(86)【国際出願番号】 US2016061678
(87)【国際公開番号】W WO2017083758
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506164729
【氏名又は名称】オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】グレー,リンダ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブコフツァー,スタンレー
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-529523(JP,A)
【文献】特表2018-513171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/198
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-オルニチンフェニルアセテートを含む、高アンモニア血症の処置または寛解するための即時放出経口医薬製剤であって、
前記製剤が、1日当たり8g~
12gの量のL-オルニチンフェニルアセテートを含み、経口投与の際に、10μg/mL~150μg/mL、20μg/mL~140μg/mL、30μg/mL~130μg/mL、または40μg/mL~120μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたら
し、
前記製剤が、1日1回または1日2回以上投与される、前記即時放出経口医薬製剤。
【請求項2】
前記製剤が、経口投与の際に、5μg/mL~100μg/mL、10μg/mL~80μg/mL、20μg/mL~60μg/mL、または25μg/mL~50μg/mLの範囲のフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす、請求項1に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項3】
前記製剤が、経口投与の際に、100hr*μg/mL~1000hr*μg/mL、200hr*μg/mL~800hr*μg/mL、350hr*μg/mL~600hr*μg/mL、または400hr*μg/mL~550hr*μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿AUC
0-tまたはAUC
0-infをもたらす、請求項1または2に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項4】
フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-tまたはAUC
0-infが、25hr*μg/mL~500hr*μg/mL、50hr*μg/mL~300hr*μg/mL、100hr*μg/mL~200hr*μg/mL、または120hr*μg/mL~180hr*μg/mLである、請求項3に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項5】
フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-infが、50hr*μg/mL~400hr*μg/mL、75hr*μg/mL~300hr*μg/mL、100hr*μg/mL~250hr*μg/mL、または150hr*μg/mL~200hr*μg/mLである、請求項3に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項6】
対象が、急性肝不全、慢性肝疾患、肝代償不全、及びチャイルド・ピュークラスA、B、またはCの分類を有する肝硬変からなる群より選択される1以上を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項7】
対象が肝性脳症または門脈圧亢進症を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項8】
対象が尿素サイクル異常症を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項9】
前記即時放出経口医薬製剤が、1日2回投与され、それぞれの回で4g~6gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項
1から8のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項10】
前記4g~6gのL-オルニチンフェニルアセテートが、単一の単位剤形中にある、請求項
9に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項11】
前記4g~6gのL-オルニチンフェニルアセテートが、2つ以上の単位剤形中にある、請求項
9に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項12】
前記4g~6gのL-オルニチンフェニルアセテートが、4~6つの単位剤形中にあり、それぞれが1gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項
11に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項13】
前記単位剤形が、錠剤、カプセル剤、丸剤、ペレット、流動性粉末、または液体である、請求項
10から
12のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項14】
前記製剤が、24時間で50%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、請求項1から
13のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項15】
前記製剤が、24時間で80%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、請求項
14に記載の即時放出経口医薬製剤。
【請求項16】
前記製剤が、食事と同時に投与される、請求項1から
15のいずれか一項に記載の即時放出経口医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の参照による組み込み
本出願は、2015年11月13日出願の米国仮特許出願第62/255,300号、2016年1月8日出願の米国仮特許出願第62/276,754号、および2016年4月19日出願の米国特許出願第15/133,087号に基づく優先権の利益を主張するものであり、これらの出願は全て、参照により全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
分野
本出願は、L-オルニチンフェニルアセテートの経口製剤を含む医薬組成物、ならびに、様々な急性および慢性の肝疾患ならびに障害、例えば急性肝不全、肝硬変、肝代償不全、門脈圧亢進症、肝性脳症を有する患者、または尿素サイクル異常症患者の高アンモニア血症を処置するための投与の方法および使用に関する。
【0003】
説明
慢性肝疾患は、肝組織が時間と共に漸進的に破壊され、それにより、健常で再生する肝組織が瘢痕および壊死組織にゆっくりと置き換えられることを特徴とする。これは肝硬変として知られている。正常な肝機能が損なわれ、瘢痕組織により、肝臓を通る血流が次第に減少する。正常な再生する肝組織が失われるため、栄養素、ホルモン、薬物、および毒素が効果的に処理されなくなる。これは、腸管を通して吸収されるタンパク質の異常なクリアランスによるアンモニアの蓄積、血液中にビリルビンを蓄積させ黄疸の生成につながる異常排泄、腹部における流体の蓄積(腹水貯留)につながる類洞圧の増加、ならびに、瘢痕化した肝組織が血流への障壁となり、門脈血圧の増加および食道静脈瘤につながる門脈圧亢進症(および門脈大循環シャント)を含む症状をもたらし得る。
【0004】
慢性肝疾患患者は、かなり安定な臨床状態にあり、症状をほとんどまたは全く示さない場合がある。しかしながら、そのような患者には、肝不全の急性増悪を引き起こし得る、患者の状態の急激な悪化のリスクがある。このような、肝臓が低下したレベルではあるが機能することのできる「代償性」状態から、肝機能が働かない「非代償性」状態への推移には、誘発事象の影響が関与する。慢性肝疾患に関連付けられる誘発事象としては、胃腸出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症、および脱水症が挙げられる。
【0005】
肝性脳症(HE:Hepatic encephalopathy)は、非代償性肝硬変の一般的な合併症であり、肝臓移植後でさえも生存期間に著しい悪影響を及ぼし、認知機能の不可逆的な機能障害に関連付けられている。硬変を有する対象のうち推定60~70%が、少なくともわずかな神経認知機能障害の徴候を有し、HEは、入院した対象における主要な診断である。顕性のHEは、硬変集団においておよそ30%の有病率を有し、米国における年間約150,000件の入院の主要因である。
【0006】
肝性脳症(HE)は、急性または慢性の肝疾患および自発性門脈体静脈シャントなどの多様な臨床的状況において起こる複雑な精神神経障害である。肝性脳症の初期には、集中力低下、錯乱、および失見当識などのわずかな精神的変化が起こる。重度の症例では、肝性脳症は、昏迷、昏睡、脳腫脹(脳浮腫)、および死に至る場合がある。慢性肝疾患の結果としてHEを発症する患者の場合、HEの発病は、胃腸出血、敗血症(感染症)、門脈血栓症、または脱水症などの臨床的な誘発事象の結果であることが多い。
【0007】
胃腸出血および門脈大循環シャントは、通常は肝臓によって代謝される毒性物質が肝臓を迂回し、体循環に入り、血液脳関門を横断して、中枢神経系に直接的または間接的な神経毒性作用を及ぼすことを可能にする。アンモニアの蓄積は、肝性脳症の進行および多臓器不全(呼吸不全、循環不全、腎不全)において重要な役割を果たすと考えられている。アンモニアに加えて、胃腸出血後間もなく発症する敗血症(または細菌性腹膜炎)もまた、肝性脳症をもたらす要因である可能性が高い。
【0008】
肝代償不全は次に、多臓器不全および肝性脳症を引き起こし得る。肝性脳症の初期には、集中力低下、または単純な物体を構築する能力の低下などのわずかな精神的変化が起こる。重度の症例では、肝性脳症は、昏迷、昏睡、脳腫脹、および死に至る場合がある。
【0009】
尿素サイクル異常症または尿素サイクル欠損症は、血流からのアンモニアの除去を担う尿素サイクル中の酵素のうちの1つの欠乏によって生じる遺伝性障害である。通常、尿素は尿中に運ばれ、身体から除去される。尿素サイクル異常症では、窒素が毒性物質であるアンモニアの形態で蓄積し、身体から除去されない。この状態の管理には、フェニル酪酸ナトリウムが使用され得ると報告されている。例えば、Batshaw, M. L. et al., “Alternative pathway therapy for urea cycle disorders: twenty years later,”J. Pediatr. (2001) 138 (1 Suppl): S46-S55を参照されたい。
【0010】
肝性脳症患者のための一般的療法は、アンモニアの濃度を低下させる方略を含む。これには、食物タンパク質摂取量の制限、ラクツロース、ネオマイシン、L-オルニチンL-アスパラギン酸塩(LOLA:L-ornithine L-aspartate)、または安息香酸ナトリウムの投与、および洗浄浣腸が含まれる。現在、尿素サイクル異常症(UCD:urea cycle disorder)に起因する高アンモニア血症の処置のためのアンモニア捕捉剤(結合剤)として、フェニル酢酸を含有する市販品(例えば、AMMONUL(登録商標))、またはフェニル酢酸のプロドラッグ、例えばフェニル酪酸(BUPHENYL(登録商標))もしくはグリセロールフェニル酪酸(RAVICTI(登録商標))が存在する。RAVICTI(登録商標)もまた、臨床治験で評価され、肝性脳症の処置のための予備的効力を示している。例えば、Rockey D. et al., “Randomized, Double-Blind, Controlled Study of Glycerol Phenylbutyrate in Hepatic Encephalopathy,” Hepatology, 2014, 59(3):1073-1083を参照されたい。加えて、L-オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症および肝性脳症の有効な処置となることが報告されている。Jalanらは、L-オルニチンフェニルアセテートがアンモニア低下に有用であることをデータが示した臨床研究を報告した。Jalan et al., “L-Ornithine phenylacetate (OP): a novel treatment for hyperammonemia and hepatic encephalopathy,” Med Hypotheses 2007; 69(5):1064-69を参照されたい。また、米国特許出願公開第2008/0119554号明細書、同第2010/0280119号明細書、および同第2013/0211135号明細書を参照されたい。これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0011】
L-オルニチンフェニルアセテートは、米国食品医薬品局によりオーファンドラッグステータスを与えられ、高アンモニア血症および結果として生じる肝性脳症の処置のためのファストトラックの指定を与えられた。現在、L-オルニチンフェニルアセテートは、非代償性肝硬変患者における顕性HEの処置のための臨床調査下にある。患者は、肝機能障害のベースライン重症度に応じて1日当たり10、15、または20gの用量のL-オルニチンフェニルアセテートの持続静脈内注入を5日間にわたって受ける。
【0012】
典型的に、L-オルニチンフェニルアセテートは、水または水溶液中での優れた溶解性を有する。急性または慢性の肝疾患を処置するためのL-オルニチンフェニルアセテートの公知の臨床研究の全てにおいて、L-オルニチンフェニルアセテートは、一定期間、例えばヒト研究において1日から最長5日間にわたる静脈内注入によって投与されている。患者の利便性を向上させるために代替的な投与経路を開発する必要が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本開示のいくつかの実施形態は、約0.1g~約10gの経口投与量のL-オルニチンフェニルアセテートと、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤もしくは担体とを含む、経口医薬製剤に関する。いくつかの実施形態では、本製剤は、経口投与の際にL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出プロファイルをもたらす。ある実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口投与量は、約2g~約8gである。一実施形態において、L-オルニチンフェニルアセテートの経口投与量は、約5gである。別の実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口投与量は、約2.5gである。いくつかの他の実施形態では、本経口医薬製剤は、L-オルニチンフェニルアセテートの制御放出をもたらす。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、高アンモニア血症の処置または寛解を必要とする対象に、本明細書に記載のL-オルニチンフェニルアセテートを含む経口医薬製剤を投与することを含む、高アンモニア血症を処置または寛解する方法に関する。いくつかの実施形態では、対象は急性肝不全または慢性肝疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は肝硬変または肝代償不全を有する。いくつかの実施形態では、対象は肝性脳症を有する。さらにいくつかの実施形態では、対象は門脈圧亢進症を有する。いくつかのさらなる実施形態では、慢性肝疾患または肝硬変は、チャイルド・ピューA、B、またはCと分類される。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態は、高アンモニア血症の処置を必要とする対象に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む経口医薬製剤を投与することを含み、医薬製剤が、約10μg/mL~約150μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす、高アンモニア血症を処置する方法に関する。いくつかの実施形態では、本医薬製剤はまた、約5μg/mL~約100μg/mLの範囲のフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす。いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤は、投与後にL-オルニチンフェニルアセテートの制御放出をもたらす。いくつかの他の実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤は、投与後にL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、約0.1g~約10gの経口投与量のL-オルニチンフェニルアセテートを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】制御放出製剤A、B、およびC、RAVICTI(登録商標)、ならびにL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出経口製剤の投与後の、ヒトにおけるフェニル酢酸(PAA)の生体内血漿中薬物動態プロファイルを示す線グラフである。
【
図2】制御放出製剤A、B、およびC、RAVICTI(登録商標)、ならびにL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出経口製剤の投与後の、ヒトにおけるフェニルアセチルグルタミン(PAGN)の生体内での代替の血漿中薬力学プロファイルを示す線グラフである。
【
図3】4つの異なる処置におけるL-オルニチンフェニルアセテート5gの単回用量の投与後の、慢性肝疾患の分類がチャイルド・ピュークラスAの対象における、フェニル酢酸(PAA)の生体内血漿中薬物動態プロファイルを示す線グラフである。
【
図4】4つの異なる処置におけるL-オルニチンフェニルアセテート5gの単回用量の投与後の、慢性肝疾患の分類がチャイルド・ピュークラスAの対象における、フェニルアセチルグルタミン(PAGN)の生体内での代替の血漿中薬力学プロファイルを示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示のいくつかの実施形態は、L-オルニチンフェニルアセテートの経口製剤を対象とする。本製剤のいくつかの実施形態は、RAVICTI(登録商標)と比較して大幅に低い用量で同等のフェニルアセテートを使用した低用量製剤を提供する。いくつかのそのような実施形態は、即時放出製剤である。本製剤の他の実施形態は、制御放出系または長期放出系を提供する。
【0018】
定義
本明細書において使用される節の見出しは、構成のみを目的とするものであり、記載される主題を限定するものと解釈されてはならない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。「含む(including)」という用語ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。「有する(having)」という用語ならびに「有する(have)」、「有する(has)」、および「有した(had)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。本明細書で使用される場合、移行句においてか請求項本文においてかを問わず、「含む(comprise(s))」および「含む(comprising)」という用語は、制限のない意味を有するものとして解釈されるものとする。すなわち、上記の用語は、「少なくとも~を有する(having at least)」または「少なくとも~を含む(including at least)」という表現と同義的に解釈されるものとする。例えば、あるプロセスとの関連で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、そのプロセスが、列挙されたステップを少なくとも含むが、追加のステップを含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、製剤、またはデバイスとの関連で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、その化合物、組成物、製剤、またはデバイスが、列挙された特徴または構成要素を少なくとも含むが、追加の特徴または構成要素を含んでもよいことを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、系統的な一般的略語は以下のように定義される。
AUC:曲線下面積
AUC0-t:時間=0(ゼロ)から最後の数量化可能な濃度の時間までの濃度対時間曲線下面積
AUC0-inf:無限時間まで外挿した血漿濃度時間曲線下面積
CL:全血漿クリアランス
C12:薬物投与後12時間における薬物濃度
Cmax:最大血漿濃度
F:バイオアベイラビリティ絶対値(%)
hr:時間
IR:即時放出
ORN:オルニチン
PAA:フェニル酢酸(または共役塩基であるフェニルアセテート)
PAGN:フェニルアセチルグルタミン
PD:薬力学的な
PK:薬物動態学的な
【0021】
本明細書で使用される「即時放出」という用語は、当業者により理解されるその通常の意味を有し、したがって、非限定的な例として、投与後の比較的短い期間における剤形からの薬物の放出を含む。
【0022】
本明細書で使用される「制御放出」という用語および「長期放出」という用語はそれぞれ、当業者により理解されるその通常の意味を有し、したがって、非限定的な例として、長期間にわたる剤形からの薬物の制御放出を含む。例えば、いくつかの実施形態では、制御放出製剤または長期放出製剤は、比較可能な即時放出形態の放出速度よりも実質的に長い放出速度を有するものである。これら2つの用語は互換的に使用することができる。
【0023】
本明細書で使用される「約」という用語は、基準の分量、値、数、割合、量、または重量から、その種類の分量、値、数、割合、量、または重量について許容されると当業者がみなす差異だけ異なる、分量、値、数、割合、量、または重量を指す。様々な実施形態において、「約」という用語は、基準の分量、値、数、割合、量、または重量に対して20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の差異を指す。
【0024】
本明細書で使用される「経口剤形」という用語は、当業者により理解されるその通常の意味を有し、したがって、非限定的な例として、丸剤、錠剤、コア、カプセル剤、カプレット、ルースパウダー、液体溶液、または懸濁液を含む、ヒトに経口投与可能な形態における薬物の製剤を含む。
【0025】
本明細書で使用される「フェニル酢酸」という用語は、ベンゼン酢酸または2-フェニル酢酸としても知られている。これは、次の化学構造を有する。
【0026】
【0027】
本明細書で使用される「フェニルアセテート」という用語は、次の化学構造を有するフェニル酢酸のアニオン型を指す。
【0028】
【0029】
本明細書で使用される「L-オルニチンフェニルアセテート」という用語は、L-オルニチンカチオンおよびフェニルアセテートアニオンからなる化合物を指す。これは、次の化学構造を有する。
【0030】
【0031】
本明細書で使用される「フェニルアセチルグルタミン」という用語は、フェニル酢酸とグルタミンとの共役によって形成される生成物を指す。これは、ヒトの尿中に見られる一般的な代謝物である。これは、次の化学構造を有する。
【0032】
【0033】
本明細書で使用される場合、「フェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの24時間の変換率」という用語は、患者に投与されたフェニルアセテートのうち、24時間にわたり尿中で採取されるフェニルアセチルグルタミンに変換される質量パーセントを指す。
【0034】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質にそのような媒体および薬剤を使用することは、当該技術分野で周知である。いずれかの従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、処置用の組成物または製剤におけるその使用が想定される。補足的な活性成分を組成物または製剤に組み込むこともできる。加えて、当該技術分野で一般的に使用されるものなどの様々なアジュバントが含まれてもよい。これらおよび他のかかる化合物は、例えば、Merck Index, Merck & Company, Rahway, NJの文献に記載されている。様々な成分を医薬組成物に含める際の検討事項は、例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Pressに記載されている。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、好ましい実施形態の化合物の生物学的な有効性および特性を保持し、かつ生物学的または別様に望ましくないことのない塩を指す。多くの場合、好ましい実施形態の化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれらと同様の基の存在によって、酸塩および/または塩基塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸を用いて形成することができる。塩が誘導され得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩が誘導され得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基を用いて形成することができる。塩が誘導され得る無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が特に好ましい。塩が誘導され得る有機塩基としては、例えば、第一級、第二級、および第三級のアミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、特にイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンなどが挙げられる。1987年9月11日に公開されたJohnstonらの国際公開第87/05297号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、多くのそのような塩が当該技術分野で知られている。
【0036】
本明細書で使用される「対象」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類、もしくはトリ、例えばニワトリ、ならびにいかなる他の脊椎動物または無脊椎動物をも意味する。
【0037】
本明細書で使用される「処置する(Treat)」、「処置(treatment)」、または「処置すること(treating)」は、予防的および/または治療的な目的で医薬組成物/製剤を投与することを指す。「予防的処置(prophylactic treatment)」という用語は、疾患を未だ患ってはいないが、特定の肝疾患にかかりやすいか、そうでなければそのリスクがある患者を処置することにより、その処置が、患者が肝疾患を発症する可能性を低減させることを指す。「治療的処置(therapeutic treatment)」という用語は、肝疾患を既に患っている患者に処置を施すことを指す。
【0038】
本明細書に記載される組成物または製剤は、好ましくは、単位剤形で提供される。本明細書で使用される場合、「単位剤形」とは、適正な医療行為により、単回投与において、動物、好ましくは哺乳動物の対象に投与するのに好適である量の化合物を含有する、組成物/製剤である。しかしながら、単回または単位の剤形の調製は、その剤形が1日当たり1回もしくは治療の過程において1回投与されること、またはその単位剤形が単回で投与される用量の全てを含有することを暗示しない。そのような剤形は、1日当たり1回、2回、3回、またはそれ以上投与されることが想定され、単回投与は特に除外されないものの、治療の過程中で2回以上与えられてもよい。加えて、意図される全用量を達成するために、複数の単位剤形が実質的に同時に投与されてもよい(例えば、完全な用量を達成するために、2つ以上の錠剤が患者により嚥下されてもよい)。本製剤が治療の全過程を特に想定しないこと、およびそのような決断が製剤化ではなく処置の技術分野における当業者に委ねられることは、当業者であれば認識するであろう。
【0039】
本明細書で使用される場合、「提供する」という行為には、本明細書に記載される組成物を供給すること、入手すること、または投与すること(自己投与を含む)が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、薬物を「投与すること」という用語は、個人が自ら薬物を取得して摂取することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、個人は薬物を薬局から取得し、本明細書に提供される方法に従って薬物を自己投与する。
【0041】
本明細書に記載される実施形態のうちのいずれかにおいて、処置の方法は、スイス型使用クレームなどの使用クレームを代替的に含意する場合がある。例えば、組成物で線維症を処置する方法は、線維症の処置のための薬品の製造における組成物の使用、または線維症の処置のための組成物の使用を代替的に含意し得る。
【0042】
薬物動態パラメータが、例えば、本明細書に記述された実施例に記載されているような、当業者に知られ許容されている臨床治験法を使用した参照標準との比較によって決定され得ることは、当業者であれば理解するであろう。薬物の薬物動態は患者毎に異なり得るため、そのような臨床治験は、一般に、複数の患者および結果として得られたデータの適切な統計分析(例えば、信頼度90%のANOVA)を含む。薬物動態パラメータの比較は、当業者には理解されているように、用量調節基準であり得る。
【0043】
低用量製剤
本開示のいくつかの実施形態は、約0.1g~約10gの投与量のL-オルニチンフェニルアセテートと、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤もしくは担体とを含む、経口医薬製剤に関する。いくつかの実施形態では、本製剤は、投与の際にL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出プロファイルをもたらす(例えば、液体溶液または懸濁液の形態における即時放出経口製剤)。他の実施形態は、制御放出または長期放出のプロファイルをもたらす。好ましい実施形態において、本医薬製剤は、経口医薬製剤である。いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、約0.5g、約1g、約1.5g、約2g、約2.5g、約3g、約3.5g、約4g、約4.5g、約5g、約5.5g、約6g、約6.5g、約7g、約7.5g、約8g、約8.5g、約9g、約9.5g、もしくは約10gの投与量、または前出の値のいずれか2つによって定義される投与量範囲(例えば、約1g~約9g、約2g~約8g、約3g~約7g、約4g~約6g、約1g~約6g、約1g~約5g、約1g~約4g、約1g~約3g、約2g~約6g、約2g~約5g、もしくは約2g~約4g)である。一実施形態において、経口投与量は、約2.5gである。別の実施形態では、経口投与量は、約5gである。
【0044】
いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、単一の単位剤形である。いくつかの他の実施形態では、本医薬製剤は、2つ以上の単位剤形(すなわち、分割用量)である。例えば、経口投与量が約5gである場合、それは、それぞれが約1.25gまたは1gのL-オルニチンフェニルアセテートを含有する4つまたは5つの錠剤の形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、単位剤形は、錠剤、カプセル剤、丸剤、ペレット、流動性粉末、または液体である。一実施形態において、単位剤形は、5gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む液体溶液である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、24時間で約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかのさらなる実施形態では、本製剤は、24時間で約80%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかの実施形態では、変換効率は、排泄された尿中フェニルアセチルグルタミンに基づいて決定される。
【0046】
いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、12時間で約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかのさらなる実施形態では、本製剤は、12時間で約60%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかの実施形態では、変換効率は、排泄された尿中フェニルアセチルグルタミンに基づいて決定される。
【0047】
本明細書に記載される低用量医薬製剤は、任意の好適な経路によって投与されてよく、例えば、経口、静脈内、胃内、腹腔内、または血管内の経路によって投与されてもよい。好ましい一実施形態において、L-オルニチンの医薬製剤は、経口剤形、例えば経口溶液である。別の実施形態では、本医薬製剤は、静脈内剤形である。
【0048】
処置の方法
本開示のいくつかの実施形態は、高アンモニア血症の処置または寛解を必要とする対象に、有効量のL-オルニチンフェニルアセテートを含む医薬製剤、特に本明細書に記載の経口医薬製剤を経口投与することを含む、高アンモニア血症を処置または寛解する方法に関する。いくつかの実施形態では、対象は急性肝不全または慢性肝疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は肝硬変または肝代償不全を有する。いくつかのそのような実施形態では、慢性肝疾患または肝硬変は、チャイルド・ピュークラスA、B、またはCの分類を有する。いくつかの実施形態は、チャイルド・ピュー分類Aの肝疾患を有する対象を特定することと、次に、本明細書に記載の組成物を投与することとを含む。いくつかの実施形態は、チャイルド・ピュー分類Bの肝疾患を有する対象を特定することと、次に、本明細書に記載の組成物を投与することとを含む。いくつかの実施形態では、対象は肝性脳症を有する。いくつかの実施形態は、チャイルド・ピュー分類Cの肝疾患を有する対象を特定することと、次に、本明細書に記載の組成物を投与することとを含む。さらにいくつかの実施形態では、対象は門脈圧亢進症を有する。いくつかの実施形態では、対象は尿素サイクル異常症を有する。いくつかの他の実施形態では、対象は、ラクツロースの処置を最近中断したものであり、例えば、対象は、ラクツロースの処置を1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、またはそれ以上にわたり中断したものである。
【0049】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、約10μg/mL~約150μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす。いくつかのそのような実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxは、約20μg/mL~約140μg/mLである。いくつかのそのような実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxは、約30μg/mL~約130μg/mLである。いくつかのそのような実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxは、約40μg/mL~約120μg/mLである。いくつかのさらなる実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxは、約50μg/mL~約110μg/mLである。
【0050】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約5μg/mL~約100μg/mLの範囲である。いくつかのそのような実施形態では、代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約10μg/mL~約80μg/mLである。いくつかのそのような実施形態では、代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約20μg/mL~約60μg/mLである。いくつかのそのような実施形態では、代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約25μg/mL~約50μg/mLである。いくつかのさらなる実施形態では、代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約30μg/mL~約45μg/mLである。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態は、高アンモニア血症の処置を必要とする対象に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む経口医薬製剤を投与することを含み、医薬製剤が、約10μg/mL~約150μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす、高アンモニア血症を処置する方法に関する。特に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む経口医薬組成物は、約10μg/mL、約15μg/mL、約20μg/mL、約25μg/mL、約30μg/mL、約35μg/mL、約40μg/mL、約45μg/mL、約50μg/mL、約55μg/mL、約60μg/mL、約65μg/mL、約70μg/mL、約75μg/mL、約80μg/mL、約85μg/mL、約90μg/mL、約95μg/mL、約100μg/mL、約105μg/mL、約110μg/mL、約115μg/mL、約120μg/mL、約125μg/mL、約130μg/mL、約135μg/mL、約140μg/mL、約145μg/mL、もしくは約150μg/mL、または前出の値のいずれか2つによって定義される範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす。一実施形態において、フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルは、約20μg/mL~約140μg/mLである。別の実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルは、約30μg/mL~約130μg/mLである。さらに別の実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルは、約40μg/mL~約120μg/mLである。さらなる一実施形態では、フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルは、約50μg/mL~約110μg/mLである。いくつかの実施形態では、フェニル酢酸の血漿AUC0-tまたはAUC0-infは、約100~約1000hr*μg/mL、約150hr*μg/mL~約900hr*μg/mL、約200hr*μg/mL~約800hr*μg/mL、約250hr*μg/mL~約700hr*μg/mL、約300hr*μg/mL~約650hr*μg/mL、約350hr*μg/mL~約600hr*μg/mL、または約400hr*μg/mL~約550hr*μg/mLである。いくつかの実施形態では、本医薬製剤はまた、約5μg/mL~約100μg/mLの範囲のフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす。特に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む経口医薬組成物は、約5μg/mL、約10μg/mL、約15μg/mL、約20μg/mL、約25μg/mL、約30μg/mL、約35μg/mL、約40μg/mL、約45μg/mL、約50μg/mL、約55μg/mL、約60μg/mL、約65μg/mL、約70μg/mL、約75μg/mL、約80μg/mL、約85μg/mL、約90μg/mL、約95μg/mL、もしくは約100μg/mL、または前出の値のいずれか2つによって定義される範囲のフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす。一実施形態において、フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約10μg/mL~約80μg/mLである。別の実施形態では、フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約20μg/mL~約60μg/mLである。なおも別の実施形態では、フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxは、約25μg/mL~約50μg/mLである。いくつかの実施形態では、フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC0-tは、約25hr*μg/mL~約500hr*μg/mL、約50hr*μg/mL~約300hr*μg/mL、約100hr*μg/mL~約200hr*μg/mL、または約120hr*μg/mL~約180hr*μg/mLである。いくつかの実施形態では、フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC0-infは、約25hr*μg/mL~約500hr*μg/mL、または約50hr*μg/mL~約400hr*μg/mL、約75hr*μg/mL~約300hr*μg/mL、約100hr*μg/mL~約250hr*μg/mL、または約150hr*μg/mL~約200hr*μg/mLである。
【0052】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本経口医薬組成物は、絶食条件下で投与される。いくつかの他の実施形態では、本経口医薬組成物は、摂食条件下で、例えば、食事と同時または食事後60分間以内に投与される。
【0053】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤は、投与後にL-オルニチンフェニルアセテートの制御放出をもたらす。いくつかの他の実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤は、投与後にL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出をもたらす。
【0054】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、1日当たり約0.1g~約50g、1日当たり約0.5g~約45g、1日当たり約1g~約40g、1日当たり約1.5g~約35g、1日当たり約2g~約30g、1日当たり約2.5g~約25g、1日当たり約3g~約20g、または1日当たり約5g~約15gの量で投与される。いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、少なくとも1日1回の投与用である。いくつかのさらなる実施形態では、本医薬製剤は、1日2回以上の投与用である。一実施形態において、本医薬製剤は、1日3回の経口投与用である。
【0055】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、約1.0g~約10.0gの量の単回用量として投与される。いくつかのさらなる実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、約2g~約8gの量の単回用量として投与される。様々な他の実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、約1g~約9g、約2g~約8g、約3g~約7g、約4g~約6g、約1g~約6g、約1g~約5g、約1g~約4g、約1g~約3g、約2g~約6g、約2g~約5g、または約2g~約4gの範囲内の単回用量として投与される。一実施形態において、L-オルニチンフェニルアセテートは、約2.5gの量の単回用量として投与される。別の実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、約5gの量の単回用量として投与される。いくつかのそのような実施形態では、そのような量のL-オルニチンフェニルアセテートを含有する医薬製剤は、単一の経口剤形である。いくつかの他のそのような実施形態では、そのような量のL-オルニチンフェニルアセテートを含有する医薬製剤は、2つ以上の単位剤形である。例えば、いくつかの実施形態は、それぞれが約0.1g~約2gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む1~5つの単位剤形、またはそれぞれが約0.5g~約1.25gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む約2~4つの単位剤形を投与することを含む。いくつかの実施形態は、それぞれが約1.25gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む4つの単位剤形を投与することを含む。いくつかの実施形態は、それぞれが約1gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む5つの単位剤形を投与することを含む。いくつかの他の実施形態は、約5gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む1つの単位剤形を投与することを含む。一実施形態において、本医薬製剤は、1日3回投与される。例えば、複数の単位剤形が一度に投与される場合、その複数の単位剤形の投与が1日3回繰り返される。別の実施形態では、本医薬製剤は、1日1回投与される。
【0056】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本医薬製剤は、24時間で約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかのさらなる実施形態では、本医薬製剤は、24時間で約80%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかの実施形態では、変換効率は、排泄された尿中フェニルアセチルグルタミンに基づいて決定される。
【0057】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、本医薬製剤は、12時間で約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかのさらなる実施形態では、本製剤は、12時間で約60%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす。いくつかの実施形態では、変換効率は、排泄された尿中フェニルアセチルグルタミンに基づいて決定される。
【0058】
本明細書に記載される血漿CmaxまたはAUC値のいずれかの実施形態では、かかる値は、血漿CmaxまたはAUCの平均値または中央値から選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される血漿CmaxおよびAUCは、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤の単回用量投与後に達成される。いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載される血漿CmaxおよびAUCは、L-オルニチンフェニルアセテートの経口医薬製剤の複数回用量投与後に達成される定常状態の血漿CmaxおよびAUCである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される血漿CmaxおよびAUCは、絶食状態で測定される。いくつかの他の実施形態では、これらのPKパラメータは、摂食状態で測定される。
【0059】
薬学的に許容される担体またはその賦形剤として機能し得る物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびメチルセルロースなど;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムなどの固体潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびカカオ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;アルギン酸;TWEENSなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;香味剤;錠剤化剤、安定剤;抗酸化剤;防腐剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;ならびにリン酸緩衝溶液である。
【0060】
いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートの経口剤形は、液体、特に液体溶液の形態であってもよい。経口剤製剤もまた、本明細書において詳解される経口溶液製剤に一般的に使用されるものを含む、従来の薬学的に適合性のあるアジュバント、賦形剤、または担体を含んでよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される経口製剤は、これまでに期待されているよりも低い用量を提供する。例えば、RAVICTI(登録商標)(グリセロールフェニル酪酸、フェニルアセテートのプレプロドラッグ)は、1日2回6mLの用量(約1.02g/mLのフェニル酪酸の送達)で肝性脳症事象の発生率を低下させることが臨床研究で分かった。本明細書に記載されるL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出および制御放出両方の経口医薬製剤が同様のPAGNの尿中排泄率をもたらすため、RAVICTI(登録商標)または他のフェニルアセテート製剤と比較して実質的に低いAPI用量の使用が可能になる。
(実施例)
【0062】
以下の実施例は、実験および達成された結果を含め、例示のみを目的として提供されるものであり、本出願を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0063】
健常なヒトにおける第I相薬物動態研究
非盲検、5剤5期、単回用量、クロスオーバーの第1相ヒト臨床研究を行って、L-オルニチンフェニルアセテートの長期放出経口剤形3種を単回投薬した後のフェニル酢酸およびフェニルアセチルグルタミンの薬物動態を、フェニル酢酸のプロドラッグであるRAVICTI(登録商標)(グリセロールフェニル酪酸)と比較して評価した。この研究では、単回用量のL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出経口溶液と比較した、単回用量のL-オルニチンフェニルアセテートの長期放出経口剤形3種の薬物動態および安全性も比較した。
【0064】
5つの処置は、次に列記する通りである:処置A、B、およびCのそれぞれは、10gの単回経口用量の製剤A、B、およびC(それぞれPAA約5gの当量)を指し、これらの製剤の成分を以下の表1に要約し、処置Dは、6mLの単回経口用量のRAVICTI(登録商標)(PAA約5gの当量)を指し、処置Eは、5gの単回経口用量のL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出製剤(PAA約2.5gの当量)を指す。
【0065】
【0066】
第一目的は、健常なヒト対象において、L-オルニチンフェニルアセテートの長期放出製剤3種の単回経口投薬後のフェニル酢酸(強力なアンモニア捕捉剤)、オルニチン、およびフェニルアセチルグルタミン(アンモニアの排除を担う最終生成物)の血漿プロファイルならびに薬物動態を、L-オルニチンフェニルアセテートの経口溶液およびフェニル酢酸のプロドラッグ(グリセロールフェニル酪酸、RAVICTI(登録商標))と比較して査定することである。二次的な目的は、3種の長期放出製剤の安全性、耐容性、および美味性を、健常な対象において判定することである。
【0067】
適格の男性または女性の健常な成人対象を登録し、まず、各処置間に少なくとも7日間の休薬期間を設け、バランスのとれた4×4のラテン方格法設計を使用したクロスオーバー様式において、4つの投薬期間にわたって4つの処置(処置A~D)を受けさせ、続いて、最低7日間の休薬期間後の第5(最後)の投薬期間において、全ての対象に処置Eを受けさせた。各投薬期間における投薬後、PK査定のために、投薬後24時間まで一連の血液および尿の試料採取を対象に受けさせた。
【0068】
PK査定
処置A、B、C、またはD(L-オルニチンフェニルアセテートまたはRAVICTI(登録商標)の長期放出(ER)製剤)が投与された投薬期間において、静脈血試料(各5mL)を次の時点:投薬直前(15分以内)、それから投薬後0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、および24時間で採取した。L-オルニチンフェニルアセテートの即時放出製剤が投与された投薬期間(期間5)では、静脈血試料(各5mL)を次の時点:投薬直前(15分以内)、それから投薬後0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、および12時間で採取した。
【0069】
加えて、尿試料を次の時間間隔:投薬前1時間以内(スポット試料)、それから投薬後0~4時間、4~8時間、8~12時間、および12~24時間の間隔にわたって累積的に採取した。血液採取の1時間以内に遠心分離によって血漿試料を分離させ、分析までおよそ-80℃で保管した。各採取間隔で全尿体積を測定および記録し、一定分量の尿を分析までおよそ-80℃で保管した。
【0070】
生化学分析法
有効性が認められたLC-MS/MS法を使用して、血漿試料中のフェニル酢酸(PAA)、フェニルアセチルグルタミン(PAGN)、およびオルニチン(ORN)の濃度を分析した。有効性が認められたLC-MS/MS法を使用して、全ての尿試料中のPAGNの濃度を分析した。
【0071】
エンドポイント
薬物動態:試験薬のそれぞれを単回経口投薬した後のフェニルアセテート、オルニチン、およびフェニルアセチルグルタミンの血漿濃度対時間プロファイルを、非コンパートメントPK法によって分析した。決定した薬物動態パラメータは、Cmax、tmax、AUC0-t、AUC0-∞、C12、およびt1/2を含む。各採取間隔および24時間間隔全体にわたる、尿中に排泄されたPAGNの量、および尿中にPAGNとして排泄されたPAA用量の割合もまた決定した。
【0072】
図1および
図2は、この第1相研究でのPAAおよびPAGNの平均血漿プロファイルをそれぞれ例示する。
図1は、即時放出溶液およびグリセロールフェニル酪酸と比較した、単回経口用量の制御放出製剤の投与後の平均血漿PAA濃度対時間曲線を示す。
図2は、即時放出溶液およびグリセロールフェニル酪酸と比較した、単回経口用量の制御放出製剤の投与後の平均血漿PAGN濃度対時間曲線を示す。
【0073】
3種の長期放出製剤からの血漿PAAの平均最大濃度(Cmax)は、投薬後4~9時間にわたる様々な時点でおよそ50~90μg/mLの範囲であった。比較のために述べると、RAVICTI(登録商標)は、投薬後4~6時間においておよそ10μg/mLの平均血漿PAA Cmaxをもたらした。RAVICTI(登録商標)6mLの単回経口投薬後の血漿PAAデータは、健常な対象における公開データと一致する。加えて、L-オルニチンフェニルアセテートの長期放出製剤を用いたPAA曝露は、RAVICTI(登録商標)よりも低い対象間の可変性を示した。
【0074】
アンモニア捕捉の最終生成物であるPAGNの血漿プロファイルもまた、PAAプロファイルと同様のパターンを示した。L-オルニチンフェニルアセテートの長期放出製剤3種による血漿PAGNの平均Cmaxは、投薬後4~10時間にわたる様々な時点でおよそ30~45μg/mLの範囲であった。比較のために述べると、RAVICTI(登録商標)は、およそ5時間で約20~25μg/mLの平均血漿PAGN Cmaxをもたらした。これらのデータも、健常な対象における公開データと一致する。
【0075】
24時間にわたるPAGNの全尿中排泄データを以下の表2に要約する。平均PAGN排泄量は、それぞれで24時間にわたって約80%のPAAがPAGN排泄に変換された処置AからCで比較可能であった。対照的に、RAVICTI(登録商標)を用いた処置Dは、およそ同じPAAモル用量において処置AからCと比較して約40%の変換効率しか示さなかった(RAVICTI(登録商標)の場合では、PAAはグリセロールフェニル酪酸プロドラッグから提供される)。驚くべきことに、即時放出製剤の処置Eもまた、RAVICTI(登録商標)アームで投与されたPAAのおよそ半分のモル用量において同様の平均PAGN排泄量をもたらした、約80%の変換効率を示したことが観察された。
【0076】
【0077】
結論:制御放出製剤および即時放出製剤は、毒性または深刻な有害事象が観察されることなしに、研究全体を通じて良好な耐容性を示した。これらの結果は、3種全ての長期放出製剤について、投薬後少なくとも24時間の全ての時点でRAVICTI(登録商標)(グリセロールフェニル酪酸)により達成されるものを超える平均血漿PAA濃度で、堅調な長期放出パターンを示した。加えて、平均血漿PAGN濃度および尿中PAGN排泄率は、およそ同じPAAモル用量において、RAVICTI(登録商標)よりも3種全ての長期放出剤形で高かった。また、L-オルニチンフェニルアセテートの即時放出製剤での尿中PAGN排泄率は、RAVICTI(登録商標)のおよそ2倍効率的であったことが示された。
【実施例2】
【0078】
チャイルド・ピュークラスAの対象における第I相薬物動態研究
この実施例では、単回用量の部分的ランダム化臨床研究を行って、肝硬変(チャイルド・ピュークラスA)を有する5人の対象において、摂食条件下、絶食条件下、またはラクツロース中断後の絶食条件下で投与された5gのL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液を評価した。その目的は、肝硬変(チャイルド・ピュークラスA)を有する対象において、摂食条件下、絶食条件下、またはラクツロース中断後の絶食条件下で5gの単回用量のL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液を投与した後のPAAおよびPAGN薬物動態を、絶食条件下で5gの単回静脈内用量のL-オルニチンフェニルアセテートと比較して決定することである。
【0079】
これらの処置は次に要約する通りである:処置Aは、絶食条件下で投与された5gの単回経口用量のL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液であり、処置Bは、摂食条件下で投与された5gの単回経口用量のL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液であり、処置Cは、絶食条件下で1時間にわたり注入された5gの単回静脈内用量のL-オルニチンフェニルアセテート溶液であり、処置Dは、ラクツロース中断後の絶食条件下で投与された5gの単回経口用量のL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液である。
【0080】
適格の対象は、1日目に単回用量の試験薬を受けた。薬物動態査定のための最終の血液試料が取得されるまで、1日目の登録からの第1相ユニットに対象を制限した。投薬期間1では、全ての対象がL-オルニチンフェニルアセテートを静脈内に受け(処置C)、投薬期間4では、全ての対象がラクツロース中断後に単回用量のL-オルニチンフェニルアセテート経口溶液を受けた(処置D)。処置AおよびBは、投薬期間2および3中にランダム化様式で投与した。投薬期間1、2、および3の終わりに、対象を次の投薬期間のために診療所に戻した。投薬期間3の終わりには、全ての対象がラクツロースを中断した。連続した投薬期間の間に最低4日間の休薬期間を設けた。
【0081】
薬物動態査定
各経口投薬(処置A、B、およびD)の後、静脈血試料(各5mL)を次の時点:投薬直前(15分以内)、それから投薬後0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、および12時間で採取した。処置D(投薬期間4)に関しては、投薬後24時間で追加の血液試料を取得した。静脈内投薬(処置C)の後、静脈血試料(各5mL)を次の時点:注入開始の直前(15分以内)、それから注入開始後0.5時間、そして注入終了の直前、その後、注入終了後10分、20分、30分、45分、および60分、それから注入終了後1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、および24時間で採取した。
【0082】
加えて、尿試料を各処置のために次の時間間隔:投薬前1時間以内(スポット試料)、それから投薬後0~4時間、4~8時間、および8~12時間の間隔にわたって累積的に採取した。処置CおよびD(投薬期間1および4)に関しては、投薬後12~24時間の間隔でも尿を採取した。
【0083】
図3および
図4は、この第1相研究でのPAAおよびPAGNの平均血漿プロファイルをそれぞれ例示する。
図3は、上述の4つの処置(処置A、B、C、およびD)の投与後の平均血漿PAA濃度対時間曲線を示す。
図4は、上述の4つの処置(処置A、B、C、およびD)の投与後の平均血漿PAGN濃度対時間曲線を示す。PAAおよびPAGNの薬物動態パラメータを表3および表4に要約する。
【0084】
【0085】
【0086】
L-オルニチンフェニルアセテート5gの単回経口投薬後のチャイルド・ピューA対象におけるPAAの血漿曝露データおよびPKパラメータ推定値は、健常な対象での過去のデータからの予測に基づき、予想通りであった。
【0087】
少数の対象に基づき、この研究では、チャイルド・ピューA対象にL-オルニチンフェニルアセテート5gを単回経口投薬後、平均ピーク血漿PAA濃度(Cmax)は、健常な対象のものよりもわずかに(20%)低く、PAAへの全体的な血漿曝露(AUC0-inf)は約30%高かったことが示された。チャイルド・ピューA対象でわずかに高いAUC値は、チャイルド・ピューA対象ではPAAの代謝が遅くPAAの排出半減期が長いことに起因する可能性が最も高く、PAAの排出半減期は、健常な対象の約0.9時間から、チャイルド・ピューA対象では1.4時間に増加した。L-オルニチンフェニルアセテートを静脈内または経口のいずれかで投与した後の血漿PAA曝露には、対象間で大きな可変性があった。
【0088】
L-オルニチンフェニルアセテート5gの単回経口投薬後のチャイルド・ピューA対象において静脈内投薬と比較して決定された96%のPAAバイオアベイラビリティ絶対値(F)によって示されるように、L-オルニチンフェニルアセテートの経口投薬後、PAAはほぼ完全に生体利用可能であった。
【0089】
ラクツロースを受けている対象では、単回経口用量のL-オルニチンフェニルアセテートの投与によるPAAおよびPAGNの血漿プロファイルならびに薬物動態が、ラクツロースが洗い出される前と後で同様であるようであった。
【0090】
PAGNの血漿曝露および薬物動態プロファイルは、チャイルド・ピューA対象における4つの処置間で、すなわち、静脈内もしくは経口、食事ありもしくはなし、またはラクツロースなしでの、L-オルニチンフェニルアセテート5gの単回経口用量の後に、比較可能であった。チャイルド・ピューA対象のPAGNの平均AUC0-infは、健常な対象よりもわずかに(約10%)低かった。チャイルド・ピュー対象におけるPAGNの平均血漿半減期は2.6時間で、健常な対象の1.4時間よりも長かった。
【0091】
【0092】
尿中排泄率データは、PAGNとして尿中で回収された平均PAA用量率が、L-オルニチンフェニルアセテートの単回IV投薬後で78.3%であり、L-オルニチンフェニルアセテートの単回経口投薬(処置D)後で84.7%であったことを示した。PAGNとして尿中で回収されたPAA用量%が処置AおよびBにおいて低いのは、尿採取間隔が短い、すなわち12時間であることに起因している可能性がある。
なお、本発明は、以下の態様をも含むものである。
<1> 約0.1g~約10gの経口投与量のL-オルニチンフェニルアセテートと、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む、経口医薬製剤。
<2> 経口投与の際にL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出プロファイルをもたらす、上記1に記載の経口医薬製剤。
<3> L-オルニチンフェニルアセテートの前記経口投与量が約2.5gである、上記1に記載の経口医薬製剤。
<4> L-オルニチンフェニルアセテートの前記経口投与量が約5gである、上記1に記載の経口医薬製剤。
<5> 単一の単位剤形である、上記1から4のいずれかに記載の経口医薬製剤。
<6> 2つ以上の単位剤形である、上記1から5のいずれかに記載の経口医薬製剤。
<7> 前記単位剤形が、錠剤、カプセル剤、丸剤、ペレット、流動性粉末、または液体である、上記6に記載の経口医薬製剤。
<8> 前記単位剤形が液体溶液である、上記7に記載の経口医薬製剤。
<9> 24時間で約30%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記1から8のいずれかに記載の経口医薬製剤。
<10> 24時間で約50%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記9に記載の経口医薬製剤。
<11> 24時間で約80%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記10に記載の経口医薬製剤。
<12> 高アンモニア血症の処置または寛解を必要とする対象に、上記1から11のいずれかに記載の経口医薬製剤を経口投与することを含む、高アンモニア血症を処置または寛解するための方法。
<13> 前記経口医薬製剤が、約10μg/mL~約120μg/mLのフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす、上記12に記載の方法。
<14> フェニル酢酸の血漿Cmaxが、約20μg/mL~約110μg/mLである、上記13に記載の方法。
<15> 前記経口医薬製剤が、約10μg/mL~約80μg/mLのフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす、上記12から14のいずれかに記載の方法。
<16> フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxが、約20μg/mL~約45μg/mLである、上記15に記載の方法。
<17> 高アンモニア血症の処置または寛解を必要とする対象に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む医薬製剤を経口投与することを含み、前記投与が、約10μg/mL~約150μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿Cmaxをもたらす、高アンモニア血症を処置または寛解するための方法。
<18> フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルが、約20μg/mL~約140μg/mLである、上記17に記載の方法。
<19> フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルが、約30μg/mL~約130μg/mLである、上記18に記載の方法。
<20> フェニル酢酸の血漿Cmaxレベルが、約40μg/mL~約120μg/mLである、上記19に記載の方法。
<21> 前記投与が、約5μg/mL~約100μg/mLの範囲のフェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxをもたらす、上記17から20のいずれかに記載の方法。
<22> フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxが、約10μg/mL~約80μg/mLである、上記21に記載の方法。
<23> フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxが、約20μg/mL~約60μg/mLである、上記22に記載の方法。
<24> フェニルアセチルグルタミンの血漿Cmaxが、約25μg/mL~約50μg/mLである、上記23に記載の方法。
<25> 高アンモニア血症の処置または寛解を必要とする対象に、L-オルニチンフェニルアセテートを含む医薬製剤を経口投与することを含み、前記投与が、約100hr*μg/mL~約1000hr*μg/mLの範囲のフェニル酢酸の血漿AUC
0-t
またはAUC
0-inf
をもたらす、高アンモニア血症を処置または寛解するための方法。
<26> フェニル酢酸の血漿AUC
0-t
またはAUC
0-inf
が、約200hr*μg/mL~約800hr*μg/mLである、上記25に記載の方法。
<27> フェニル酢酸の血漿AUC
0-t
またはAUC
0-inf
が、約350hr*μg/mL~約600hr*μg/mLである、上記26に記載の方法。
<28> フェニル酢酸の血漿AUC
0-t
またはAUC
0-inf
が、約400hr*μg/mL~約550hr*μg/mLである、上記26に記載の方法。
<29> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-t
またはAUC
0-inf
が、約25hr*μg/mL~約500hr*μg/mLである、上記25から28のいずれかに記載の方法。
<30> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-t
が、約50hr*μg/mL~約300hr*μg/mLである、上記29に記載の方法。
<31> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-t
が、約100hr*μg/mL~約200hr*μg/mLである、上記30に記載の方法。
<32> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-t
が、約120hr*μg/mL~約180hr*μg/mLである、上記31に記載の方法。
<33> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-inf
が、約50hr*μg/mL~約400hr*μg/mLである、上記29に記載の方法。
<34> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-inf
が、約75hr*μg/mL~約300hr*μg/mLである、上記33に記載の方法。
<35> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-inf
が、約100hr*μg/mL~約250hr*μg/mLである、上記34に記載の方法。
<36> フェニルアセチルグルタミンの血漿AUC
0-inf
が、約150hr*μg/mL~約200hr*μg/mLである、上記35に記載の方法。
<37> 前記医薬製剤が、上記1から11のいずれかから選択される、上記25から36のいずれかに記載の方法。
<38> 前記対象が急性肝不全または慢性肝疾患を有する、上記12から37のいずれかに記載の方法。
<39> 前記対象が肝硬変または肝代償不全を有する、上記38に記載の方法。
<40> 慢性肝疾患または肝硬変が、チャイルド・ピュークラスA、B、またはCの分類を有する、上記38または39に記載の方法。
<41> 前記対象が肝性脳症を有する、上記12から37のいずれかに記載の方法。
<42> 前記対象が門脈圧亢進症を有する、上記12から37のいずれかに記載の方法。
<43> 前記対象が尿素サイクル異常症を有する、上記12から37のいずれかに記載の方法。
<44> 前記経口医薬製剤がL-オルニチンフェニルアセテートの即時放出をもたらす、上記12から43のいずれかに記載の方法。
<45> 前記経口医薬製剤が、少なくとも1日1回投与される、上記12から44のいずれかに記載の方法。
<46> 前記経口医薬製剤が、1日2回以上投与される、上記12から45のいずれかに記載の方法。
<47> 前記投与が、24時間で約30%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記12から46のいずれかに記載の方法。
<48> 前記投与が、24時間で約50%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記47に記載の方法。
<49> 前記投与が、24時間で約80%超のフェニルアセテートからフェニルアセチルグルタミンへの変換をもたらす、上記48に記載の方法。
<50> それぞれが約0.1g~約2gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む1~5つの単位剤形を経口投与することを含む、上記12から49のいずれかに記載の方法。
<51> それぞれが約0.5g~約1.25gのL-オルニチンフェニルアセテートを含む2~4つの単位剤形を経口投与することを含む、上記12から50のいずれかに記載の方法。