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特許7294810経口摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークおよび関連システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】経口摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークおよび関連システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/49 20060101AFI20230613BHJP
   A61B 5/07 20060101ALI20230613BHJP
   H04B 13/00 20060101ALI20230613BHJP
   H04B 1/7136 20110101ALI20230613BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H04L25/49 J
A61B5/07
H04B13/00 500
H04B1/7136
H04B1/59
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018567017
(86)(22)【出願日】2017-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 US2017021664
(87)【国際公開番号】W WO2017156326
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】62/306,528
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518320513
【氏名又は名称】イーテクトアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マイヤース,ブレント,アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】シーツ,ジャッド
(72)【発明者】
【氏名】エイリアーノ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】バフキン,エリック
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0064165(US,A1)
【文献】特開2002-044166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0060976(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221766(US,A1)
【文献】特表2009-513183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309505(US,A1)
【文献】HISAYOSHI SUGIYAMA and KIYOSHI NOSU,MPPM: a method for improving the band-utilization efficiency in optical PPM,Journal of Lightwave Technology,1989年,Vol. 7, No. 3,pp. 465-472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/49
A61B 5/07
H04B 13/00
H04B 1/7136
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークであって:
複数の摂取可能なデバイスであって、該複数の摂取可能なデバイスのそれぞれは患者に関係するデータを取得し、該データを該データのビットをバーストすることによって送信するよう構成されており、電力低減のために送信においてはパルス間に選択された時間期間のギャップがあり、各パルスは所与のデータ・ビットについて一回または複数回繰り返され、前記データのバースト・パターンは50%以上のバースト密度をもつよう構成され、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって送信される前記パルスは実質的に1対1000のデューティーサイクルを有し、前記パルス間の前記選択された時間期間は、少なくとも、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって生成され、使用される搬送波周波数に基づいて決定される、デバイスと;
患者の身体の外部に位置され、前記データを受信するよう構成された受信器とを有する、
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
【請求項2】
各ビットが二つ以上(N個)のパルス・スロットにより表わされ、論理的な1のビットはN1個の前端パルスおよびN0個の後端パルスによって表わされ、論理的な0はN0個の前端パルスおよびN1個の後端パルスによって表わされ、中間には空のパルス・スロットがある、請求項1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
【請求項3】
前記データは一つまたは複数のメッセージを含み、各メッセージは一組のビットおよび完全にパルスから構成されるフレーム同期シーケンスを含み、前記受信器は、各フレームの開始を、データ相関器を使うことなく、少なくとも前記フレーム同期シーケンスに基づいて区別するよう構成されている、請求項1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
【請求項4】
前記選択された時間期間は、少なくとも、前記搬送波周波数を生成する前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれのオンチップ・クロックに基づいて決定される、請求項1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
【請求項5】
前記受信器が、前記パルス間の前記選択された時間期間を検出し、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって使用される一つまたは複数の周波数を決定するために使うよう構成されている、請求項1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医師が処方した薬物療法を患者が遵守しないことは、否定的な患者転帰、より高いヘルスケア・コストおよび伝染病の拡散のリスク増大を含む複数の問題を引き起こすことがある。遵守が決定的になりうる他の分野はたとえば、医薬の臨床治験、高齢者医療および精神衛生/アディション医療にある。その際、遵守モニタリングを提供することが有益である。遵守モニタリングは、直接的な観察または生体中でのバイオテレメトリーおよびモニタリングの形を取ることができる。
【発明の概要】
【0002】
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークおよび関連システムであって、電子的な服薬アドヒアランス・テレメトリー・システムの信頼性およびコスト効率を有意に改善しうるものが記述される。支えとなる回路および試験を含む通信プロトコルも記述される。
【0003】
本稿で「パルス反転キーイング(pulse reversal keying)」と称されるアウトリンク通信フォーマットが提供される。これは、送信されるバースト周波数とパルス間隔との間の固定した関係を含む。パルス反転キーイング・フォーマットは、データに関わりなく50%以上のバースト密度を保証し、動的なチューニングを許容することができ(これは受信器パフォーマンスを改善できる)、一意的だが短い開始シーケンスを提供することによってフレーム同期を単純化できる。
【0004】
摂取可能なバイオテレメトリー・タグ(「TAG」)は、アウトリンク信号を生成できる。該アウトリンク信号は、フレーム中のデータの各ビットについて、全部でN個のパルス・スロットを含むバーストから形成されるパルス反転キーイングされたシンボルを含む。ここで、論理的な1はN1個の前端パルスおよびN0個の後端パルスを含み、論理的な0はN0個の前端パルスおよびN1個の後端パルスを含む。パルス間隔は、送信搬送波信号についての送信搬送波周期に直接関係している。ある実装では、TAG上のコントローラ(これはマスター・デジタル制御およびプログラム回路と称されてもよい)は、(たとえばICに記憶されてもよく、患者IDまたは医薬型を含んでいてもよい)データ内容に基づく適切なパルス反転キーイングされたシンボルを用いてTX搬送波を変調するために使われるゲーティング信号を提供することができる。ゲーティングが、バーストのパルス間隔を設定する。ゲーティングは、TX搬送波を所望される動作周波数に位相ロックして周波数スケーリングするためにも使われるインリンク信号基準から導出されるオンチップ・クロックによって制御される。
【0005】
データの双方向(コマンド・モード)および一方向(ブロードキャスト・モード)テレメトリーを含む通信プロトコルが提供される。これにより、たとえ双方向通信が利用可能でないときでもTAGからデータが受信できる。
【0006】
衝突の可能性を減らすためにTAGが複数の周波数ホップを実行する、複数の摂取方法論が提供される。複数の摂取可能なバイオテレメトリー・タグは、衝突の可能性を最小限にするために送信搬送波信号の周波数が変化する、あるいは異なる周波数に「ホップする」ことを許容することによって、同時に管理されることができる。IC技術の貧弱な周波数許容度という望ましくない特性を活用するブロードキャスト方法論は、ブロードキャスト・モードにある間は、錠剤の送信周波数がある周波数領域内でランダムに変化することを許容することを含む。スキャンされるべきチャネル数を減らすスキャン方法論は、フレームの先頭において(パルス反転キーイングのブロードキャスト・フォーマットに関して記載されるように構成されたときの)リーダーにおいてパルス周期を解析して、TAGの送信周波数を推定し、必要とされるときにはスキャンされる搬送波周波数にしかるべく再同調することを含む。
【0007】
コマンド・モードおよびブロードキャスト・モードをもつ通信プロトコルは、NEXT〔次〕ホップ位置についての情報をも提供できる。たとえば、ブロードキャスト方法論は、TAGがコマンド・モードにある間は、リーダーからのインリンク信号を使って時間同期パルスを提供し、該同期パルスに対してランダムな時刻にバーストを送信することを含む。(NEXTホップ位置のような)タグが送信する時間スロットは、各TAG内の乱数発生器によって決定されることができ、TAGは、インリンク・コマンドがTAGをあるスロットに凍結させるまで、あるスロットから別のスロットへと、ランダムにホップする。よって、リーダーは、TAGからアウトリンク信号を受信する適正な時間スロットを、次ホップの時間スロットを示すTAGからの信号によって、あるいは双方向通信が利用可能でないときはタグからの受信フレームの開始ビットから搬送波信号周波数を推定して、推定された搬送波信号周波数の許容差内でシフトされた搬送波信号周波数を求めてスキャンすることによって、同定することができる。
【0008】
試験方法論およびプロトコルも提供される。低コストの試験プラットフォームは、試験されるべきTAGを保持するタンクと、該タンクに接続され、ある領域に隣接するRFコイルをもつ試験シュートと、一時には単一のTAGがRFコイルによって電力を受けつつ試験を受けるよう試験シュートを通過することを許容するゲートと、試験の成功に基づいて試験されたTAGを適切なビンに移すビン・コントロールとを含むことができる。TAGはBIST回路と、TAG上の電気化学電池を作動させない電源とを含む。
【0009】
最小限の試験時間で試験を実行するようTAGの双方向通信回路を利用する試験シーケンスが提供される。試験シーケンスは、リーダーがインリンクを送り、TAGが電源投入される初期化で始まる。第一のフルのモード0フレーム(コマンド・モードに対応)がインリンクによって送られる。次いで、TAGが2ベース・フレームの遅延で失われたインリンクを識別するよう、リーダーがTAGにコマンドを送る。次いで、リーダーは通信することを止め(インリンクが除去される)、これによりTAGはブロードキャスト・モードで動作するはずである。リーダーは、ブロードキャスト・モードが動作しているかどうかを判定するために、関連する周波数ホッピングをもって二つのフルのフレームが送られる時間、待つ。リーダーはブロードキャスト・モードが成功であるかどうかを判定でき、TAGは、再確立されたインリンクからのコマンドを受信することに応答して、以前のシーケンスの間に得られたデジタル機能についてのBISTデータを送ることができる。
【0010】
この概要は、下記で詳細な説明においてさらに記載される概念のセレクションを単純化された形で紹介するために与えられている。この概要は、特許請求される主題のキーとなる特徴や本質的な特徴を同定することは意図されておらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使われることも意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】服薬アドヒアランスのための遵守モニタリング・システムを示す図である。
【0012】
図2】AおよびBは、インリンク基準がないときのインリンク信号強度およびアウトリンク信号周波数変動を示す図である。
【0013】
図3】本稿に記載される摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークのTAGのための変調フォーマットを示す図である。
【0014】
図4】例示的なフレーム・エンコードを示す図である。
【0015】
図5】AおよびBは、ブロードキャスト送信周波数のセグメント分割を示す。Aはスパンの五つの領域へのセグメント分割を示し、Bはさらなるセグメント分割を、可能なスペクトル分解とともに示す。
【0016】
図6】領域1のスキャンのための錠剤占有分布のグラフである。
【0017】
図7】6つの錠剤の摂取のための複数錠剤スロットの概念を示す図である。
【0018】
図8】AおよびBは、コマンド・モード(A)およびブロードキャスト・モード(B)における衝突制御方法論のための衝突確率のプロットを示す図である。
【0019】
図9】遵守モニタリング・システムのための例示的なブロードキャスト受信器アーキテクチャーを示す図である。
【0020】
図10】アウトリンクのための見本のベース・フレーム・データ・フィールドを示す図である。
【0021】
図11A】コマンド・モード・プロトコルを示す図である。
図11B】ブロードキャスト・モード・プロトコルを示す図である。
図11C】デュアル・モード・プロトコルを示す図である。
【0022】
図12】例示的な試験ステーションを示す図である。
【0023】
図13】AおよびBは、デュアル・モードをサポートするインリンク・データ・フィールドおよび試験プロトコルを示す図である。
【0024】
図14】例示的な試験方法論およびプロトコルを示す図である。
【0025】
図15】試験のためのTAGの電源を示す単純化されたTAGの図である。
【0026】
図16】試験のためのTAGの電源を有効にする例示的な励起タイミングを示す図である。
【0027】
図17】摂取可能なTAGの例示的な実装の高レベルの物理的な図である。
【0028】
図18A】例示的なTAG ICの高レベルのブロック図である。
【0029】
図18B図18AのTAG ICへのインターフェース・ピンの定義を示す図である。
【0030】
図19】TAG ICのための例示的なマスター・デジタル制御(MCD: Master Digital Control)の高レベルのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークおよび関連システムであって、電子的な服薬アドヒアランス・テレメトリー・システムの信頼性およびコスト効率を有意に改善しうるものが記述される。
【0032】
本稿に記載されるある種の実装は、信号伝搬を制約する生理的な傷害に対処することができる。本稿に記載されるある種の実装は、摂取される集積電子回路(「TAG」)の貧弱な内在的周波数安定性に対処できる。ある種の実装は、複数錠剤摂取に関してデバイスの制限を克服できる。ある種の実装は、モニタリングTAGの試験の複雑さに対処できる。
【0033】
図1は、服薬アドヒアランスのための遵守モニタリング・システムを示している。図1を参照するに、患者16における服薬遵守をモニタリングするためのシステム10は、電子センサー11を含む。これは好ましくは、RFトランシーバー12および一つまたは複数のアンテナ13を含む外部の無線モニターまたはリーダー11の形である。アンテナ13はリーダー11の外部または内部であることができ、当技術分野で知られている多様な仕方で実装でき、オンチップ・アンテナまたはアンテナとして機能する単純なパッドもしくは電気接点を含む。リーダーは、患者16のたとえば胃腸(GI)管における電子錠剤14の存在を検出する。図のように、電子錠剤14は、錠剤14に取り付けられたまたは錠剤14の一部であるタグ15をもつ。本開示の目的のためには、用語「錠剤」はカプセルまたは他の形の医薬投与もしくは試験を含むことができる。システム10は、患者の口M、食道E、胃S、十二指腸D、腸(結腸を含む)Iまたは直腸Rに位置するときに錠剤14を検出するよう設計される。
【0034】
上述したように、システム10は、内部的にもしくは外側表面上にまたはその両方で錠剤14に固定されたTAG 15を含む。錠剤14の摂取後、タグ15は電子的にアクティブになるまたはされることができ、外部のリーダー11との通信を始める。外部のリーダー11が常に患者とともにあることを保証するよう絶えずに身につけているのが快適かつ簡単であるよう、外部のリーダー11は、患者16が身につけるまたは患者16に取り付けられる筐体19の中にあってもよい。
【0035】
電子錠剤14は、埋め込まれたまたは取り付けられた電子回路(TAG 15)をもつ経口摂取可能な、生体適合性の薬物輸送デバイスを含み、該デバイスは外部の無線リーダー11と通信する。電子錠剤14、より特定的にはTAG 15は、たとえばシリコン・ベースの集積回路および/またはコイル・アンテナおよびキャパシタのような他の受動コンポーネントをもつ。回路は、膨大な量の情報を提供するよう、さまざまな半導体処理工程を通じてパターン化された数百万のトランジスタを組み込むことができる。たとえば、電子錠剤14は、投与される薬物についての詳細な情報に加えて患者の病歴を記憶し、一意的な識別番号を提供し、外部の無線リーダー11に信頼できる仕方でデータを送信するための高度な通信回路およびプロトコルを実装することができる。
【0036】
使用においては、一つまたは複数の電子錠剤14が患者16によって服用されてもよい。データ・リーダー11および前記一つまたは複数のTAG 15は双方向データ50/52を交換することができる。リーダー11は、患者16内の前記一つまたは複数のTAG 15を探査してもよく、可能なときは、可能性としては多数のTAG 15とリーダー11との間の通信を調整する。複数の摂取されたタグは、同時に、逐次的に、または他の仕方で通信しうる。
【0037】
TAG 15は一意的な識別データを通信し、場合によってはGI管内にあるかどうかを通信する。リーダー11は、ラップトップまたはスマートフォンのようなユーザー・インターフェース54に出力データ58を提供することができ、いくつかの実装では、リモート・データベースまたは他の位置への医薬イベントのリアルタイム・アップロードを可能にする。リーダー11は、チャネル56を介して、医薬療法状態を示すユーザー・インターフェース54からの情報、たとえば次のスケジュールされた医薬イベントの時間、メイン・データベースからのイベントの確認または他の情報を、ユーザー・インターフェース54もしくはリモート・データベースもしくは治験調整センターから、広域ネットワーク(セルまたはWi-Fiネットワーク)チャネルを介して受領してもよい。いくつかの場合には、ユーザー・インターフェース54およびリーダー11は、身体に接触するまたは身体から離れた単一のデバイス中に埋め込まれる。
【0038】
リーダー11からタグ15へのデータ・リンクは「インリンク(in-link)」経路50として定義される。タグへのインリンク・データは、これに限られないが、同期、信号伝達、アドレスおよびタグ確認情報の少なくとも一つを含んでいてもよい。リーダー11は、差動的な金属皮膚接点によって情報を伝送しうる。インリンク信号50は患者16の身体を通過して、差動プローブ・ネットワークを通じてTAG 15によって感知されることができる。
【0039】
TAG 15からリーダー11へのデータ・リンクは「アウトリンク(out-link)」経路52として定義される。リーダーへのアウトリンク・データは、これに限られないが、GI感知、医薬、アドヒアランス、信号レベル、生理的データ、バイオメトリック識別データおよびアドレス情報の少なくとも一つを含んでいてもよい。アウトリンク・チャネル52は、患者16の身体および身体とリーダー11のアンテナとの間の自由空間の両方を通って進む無線周波信号である。TAG 15の小さなアンテナがアウトリンク信号52を放射し、それがリーダー11で受信される。リーダー11は複数のタグ15からの信号52を同時に受信することができてもよい。システム10はTAG 15およびリーダー11とともに一緒に機能し、摂取時刻、投薬量ならびに医薬および/またはシステムを使う被験者の特定的な識別情報を含む医薬イベントを正確に検出できるシステムを完成させる。この情報は、その後、薬物療法への枢要な遵守を検証するために使われる。このデータは、アドヒアランスおよび治療帰結を改善するために、他の患者データと組み合わせて使用されることもできる。
【0040】
図1に示され、上記で述べたように、遵守モニタリング・システムは、インリンク信号およびアウトリンク信号を提供する双方向テレメトリー・システムであることができる。インリンク信号は、パッチまたは他の注入機構から摂取されたTAGに送信される同期信号である。アウトリンク信号は、受信された同期信号を使うことによってTAGによって生成される。アウトリンク信号は、所望されるテレメトリー・データ(医薬型、投与量、シリアル番号など)を組み込む周波数安定な、外向きのテレメトリー信号である。TAGは、安定な時間ベースを提供するインリンク信号に位相ロックすることによってアウトリンク信号を生成することができる。この手法は、高価な、場所を消費する時間ベース回路(水晶または他の精密コンポーネント)をTAG上に追加することを回避する。さらに、インリンク信号からの時間ベースは、いくつかのTAG送信を多重化するためにも使われてもよく、よって素直な仕方で複数錠剤摂取の手段を提供する。
【0041】
現実世界の応用では、生理的な理由または他の理由により、インリンク信号が検出可能ではない時がありうる。パッチまたは他の信号注入方法を使うことが便利でなく、よってインリンク信号が全く存在し得ない状況もありうる。記載されるシステムおよび技法は、複数摂取を許容する機構は引き続き提供しつつ、TAGがインリンク信号がなくてもテレメトリー・データをブロードキャストすることを可能にする。
【0042】
図2のAおよびBは、記載されるシステムおよび技法が使用されないときのインリンク基準がない状況でのインリンク信号強度およびアウトリンク周波数変動を示している。図2のAは、(たとえば「電子服薬遵守モニタリング・システムおよび関連する方法」と題する出願第14/573,315号によって記載されるような)本物の摂取されたTAGによって見られるインリンク信号の受信信号強度を示している。ラベルRSSIに対応する、プロット中で丸で囲まれている形(四角)は、時間を追ったインリンク信号の信号パワーを示す。見て取れるように、信号は著しく変動する。実際、受信には、TAGによってテレメトリー・データが提供されないギャップがある。これらのギャップはインリンクの喪失に起因する。インリンク喪失は、いくつかの要因によって引き起こされることができる。そうした要因は、インリンクが存在し得ない胃の中に位置すること、あるいはインリンク受容器パッドがインリンク信号を感知するための適正な配向にないことがありうるTAG回転、あるいはTAGを圧迫したり持ち上げたりしてインリンク信号が検出できないようにする胃の蠕動を含む。そのような場合、データの喪失がある。
【0043】
さらに、インリンク信号が存在しないと、TAGは、安定した送信信号を生成するための時間基準をもたない。その代わり、TAGは、時間ベースを設定するために、抵抗器、キャパシタ、インダクタまたはトランジスタ特性といった統合されたコンポーネントに頼る必要がある。これらのコンポーネントの変動は有意であり、最終的には、15%以上よりよく制御されることはできない時間ベースにつながることはよく知られている。この効果の例解として、図2のBは、303.5MHzの平均周波数Mにチューニングされたリング発振器ベースの送信機の周波数分布を示している。発振(または送信周波数)は15MHzの分散をもつ正規分布をもつ(M=303.5;σ=15)。これは、潜在的な搬送波周波数の約90MHzの広がりに対応する。
【0044】
この広い変動に関する有意な問題は、アウトリンク・テレメトリーを受信するために要求される努力である。送信周波数が前もってわかっていないので、受信器は信号を探す必要がある。受信器が作動されている時間が長いほど、バッテリー・パワーを利用するときの受信器の寿命が短くなるので、探索時間は決定的である。さらに、正確な時間ベースが利用可能でないので、コヒーレントな復調技法は実際的でなくなり、よって振幅ベースの変調を使うことが必要とされる。二進データの0の長い系列が送信される場合には、受信器が復元し、ロックすべき送信データがないことになる。
【0045】
上記の問題は、複数の摂取に関して遵守をモニタリングするときには悪化する。たとえば、インリンク信号が複数のTAGを同期させる時間ベースを提供する場合、いずれか二つのTAGが同じスロットで送信する可能性が低くなることを保証するよう、各TAGでランダムな送信時間スロットが生成されることができる。しかしながら、インリンクがないと、同時に摂取された二つ以上のTAGが干渉しないことを保証する手段はなく、データ誤りが生じる。
【0046】
本稿では、上記で概説した問題に対処できる通信プロトコルが記載される。記載されるシステムおよび技法は、TAGがインリンクの喪失を感知して、テレメトリー・データのブロードキャスト・モードに切り換わることを可能にする。加えて、検出の確からしさを最大化しつつ受信時間を最小にする通信プロトコルが提供される。さらに、インリンクが存在するか否かによらず、非常に低い衝突確率で複数の摂取を許す通信プロトコルおよび関連するアルゴリズムが提供される。(本稿のさまざまなコンポーネントを組み合わせる)プロトコル全体は、インリンクが存在する場合と、存在しないときの両方を扱うことができる。定義の目的のため、「コマンド・モード」は堅牢なインリンクが存在するときの双方向通信を定義し、「ブロードキャスト・モード」はインリンク信号が利用可能でないときに定義される。
【0047】
アウトリンク信号は、典型的には1ないし2ミリ秒の継続時間でミリ秒程度の周期の、パルス変調された無線周波(RF)信号の系列であることができる。これは、約1対1000のデューティーサイクルである。つまり、信号が存在するときよりも存在しないときのほうがずっと多い。パルスは、何らかの型の変調方式に基づいて存在する。たとえば、パルスの存在は、送信されるデータ・ビット1を表わしてもよく、一方、パルスの不在はデータ0である。信号対雑音比を改善するために、パルスは、N個のパルスがデータ1を表わすよう構成されてもよい。Nはたとえば5であってもよい。N個のパルスの不在は0を表わす。データ0の長い連なりがある場合、これはアウトリンク・パルスが発生しない長い期間を含意する。そのような状況は、受信器が、信号ロックを維持するためのエネルギーをもたず、アウトリンクが喪失されうることを意味する。これを克服するために、図3に示されるような「パルス反転キーイング」変調フォーマットが利用されることができる。ここでは、論理的な1を表わす変調シンボルはN1個の前端パルスおよびN0個の後端パルスならびに中間の空のスロットからなる。
【0048】
パルス反転キーイングのためには、論理的な1を表わす前端および後端パルスは論理的な0については反転される。たとえば、図3に示されるように、論理的な1(データ1)は、N=10の場合についてのバースト・シーケンスにおける2個の後端パルス(N0)および5個の前端パルス(N1)をもって示されている。論理的な0(データ0)については、このシーケンスが反転される。検出の最適はN0=0かつN1=N/2であるときに達成されることが示せる。マークは、パルスが存在する時点を表わし、スペースは、パルスが存在しない時点を表わす。データ内容に関わりなく、パルスは50%の密度で存在し、任意のデータ・ストリングに関して同期を可能にする。変調フォーマットの枢要な側面は、コマンド・モード、ブロードキャスト・モードのいずれにおいても、設計上、パルス間隔が送信搬送波周期に直接的に関係しているということである。ひとたび検出されたら、この情報は、厳密な搬送波周波数を決定するために使われることができる(特にブロードキャスト・モードにおいて)。そのような情報は、アウトリンク受信器をファインチューニングし、信号対雑音比を改善するために使用されてもよい。
【0049】
図4は、39ビットのデータをエンコードするフレームを含む例示的なフレーム同期シーケンスを示している。この特別なフレーム同期シーケンスは、受信器が、データ相関器(correlator)を必要とすることなく、フレーム開始を容易に区別することを許容する。このフレーム開始シーケンスは、他のいかなるデータのグループにおいても決して生起できないという意味で一意的である。具体的には、図4に示した例示的な一意的なシーケンスについては、ビット0およびビット1が完全に、パルス反転キーイングのエンコードを使って生起することがありえないパルスから構成されていることが見て取れる。有利には、START〔開始〕ビット長を減らすことは、全フレーム送信時間を短縮する。
【0050】
ブロードキャスト・モードで送信するときには、送信周波数の先験的な知識はない。図2のBに関して述べ、図5に再び示されるように、可能な送信周波数は、正規分布で90MHzにまたがる。1μsのパルス幅では、これは318kHzの送信帯域幅に対応する。よって、90MHzの範囲では、282個の可能な伝送チャネルがある。受信器は、これらのチャネルのいずれかでバーストが発生するかどうかを判定することができなければならない。アウトリンク受信器は、これらのチャネルにわたってスキャンすることができるが、それは時間がかかり、あるいは各チャネルを並列に見ることができるが、それはハードウェアおよびコストの点で現実的でない。折衷解決策は、範囲は大きいものの、大半のTAGは303.5MHzという平均の近くで送信するということを認識することである。図5のAに示されるように、範囲がそれぞれ約18MHzの5つの領域に分解されれば、任意の錠剤が中央の領域(1)にはいる45%の可能性があり、領域(2)または(3)にはいる48%の可能性がある。まずこれらの領域を見ることで、平均的には、最速の検出時間が与えられる。しかしながら、18MHzの検出帯域幅は貧弱な信号対雑音比(SNR)を与え、また、複数摂取シナリオでは、二つ以上の送信が領域(1)にはいる可能性はきわめて高い。そのような衝突は、ビット誤りにつながる。妥協案は、各領域をさらに小さな領域に分解して、これらのそれぞれを並列に処理することである。たとえば、各領域は、図5のBに示されるように、約3.6MHzの5つの均等なビンに分割されることができる。
【0051】
複数摂取が行なわれるときには、検出器要求は複雑さを増す。単一の患者がいくつかの投与量または型の医薬を同時に服用することがありうるので、送信重複の可能性は、同時摂取数が増すごとに大きくなる。コマンド・モードでは、この問題は、インリンク信号を、時間同期パルスを提供する手段として使い、各錠剤に同期パルスに対してランダムな時刻にバーストを送信させることによって解決される。TAGが送信する時間スロットは、各TAG内の乱数発生器によって決定される。各TAGは、インリンク・コマンドがTAGをあるスロットに凍結させるまで、あるスロットから別のスロットへとランダムにホップする。TAGを凍結させるか否かは完全にインリンク・コントローラ次第である。だがひとたびTAGがある時間スロットに凍結されたら、TAGはその寿命の残りの間、そこに留まる。
【0052】
ブロードキャスト・モードでは、利用可能な時間ベースはない。幸いなことに、あるTAGから別のTAGにかけての送信周波数の相対的な周波数変動性により、本来的な多重化機構がある。これは、錠剤1と錠剤2が異なる周波数ビンにはいる図5のBを参照することで明らかである。しかしながら、それでも二つ以上の錠剤がいずれかの周波数ビンにおいて衝突する可能性はある。特に摂取数が増す場合はそうである。図5のBの状況について、衝突の確からしさがどのくらいかを計算することができる。
【0053】
領域1における5つのビンのそれぞれについて(それぞれ帯域幅3.6MHz)錠剤送信が生起する確率は図6に見ることができる。たとえば、送信が領域1のビン1またはビン5において生起することができる確率は0.085である。5つの同時送信が行なわれる場合、少なくとも二つが領域(1)内の同じ送信ビン(3.6MHz)を占める可能性が21%であることを示せる。特に、k個の錠剤のうち少なくとも二つが領域1(N個のビン)において衝突する確率は、k=5、N=5について、次のようになる。
【数1】
ここで、PEiは任意の単一のTAGがビンiにおいて送信する確率である。錠剤は領域1の外になることがありえ、その場合、そうした錠剤は別の領域において処理されることを注意しておく。
【0054】
少なくとも二つの錠剤が同じ送信帯域幅(ビン)を占める21%の確率は、受け入れられないほど大きい。細かい帯域幅を3.6MHzより小さくすれば衝突確率を下げることはできるが、細かい帯域幅を小さくすることはハードウェア的にコスト高である。本稿に記載されるある実装によれば、各錠剤の送信周波数は、領域1内でランダムに変化することが許容される。換言すれば、TAGの送信は、図5のBに示される細かい帯域幅の間でランダムにホップすることが許容される。有利なことに、図7に示されるように、何回かのランダムなホップの後には、それらのホップの少なくとも一つの結果、送信重なりなしになった可能性はきわめて高い。
【0055】
図7を参照するに、スロットは、(コマンド・モードにおけるように)時間または(ブロードキャスト・モードにおけるように)周波数を表わしうる。時間が進むにつれて(図では上から下に垂直方向に)、最終的に、アンサンブル内に、衝突が発生しないサンプルがあることが見て取れる。そのサンプルの間は、各錠剤は衝突なしで一意的に検出される。それらのメッセージを分離することは、目録管理の単純な問題である。よって、図8に示される場合について、ビンは、錠剤(x)が占有しうる時間または周波数スロットを表わす。コマンド・モードでは、時間スロットが占有される均等な確率をもつ。ブロードキャスト・モードでは、周波数スロットは、占有される正規分布の確率をもつ。数回のホップを経て、アンサンブルの少なくとも一つがスロット衝突なしである高い確率がある。
【0056】
図8のAおよびBは、コマンド・モード(図8のA)およびブロードキャスト・モード(図8のB)における衝突制御方法論についての衝突確率のプロットを示している。64個の可能な時間スロットがあるコマンド・モードの場合を考える。数回のランダムなスロット・ホップ(Hn)が生起するにつれての衝突確率は容易に計算される。たとえば、図8のAのプロットに示されるように、10個の錠剤が一度に服用される場合、衝突確率Pc3は0.505であるが、たった8回のランダム・ホップ後に、それらのホップの一つが衝突なしになる確率は1に近づく。生起しうるホップ回数に(時間以外の)制限はないので、最終的にすべての錠剤が検出されるのは事実上確実である。これは、錠剤の数が利用可能なスロットの数に近づくまで成り立つが、実際上、錠剤の数が利用可能なスロットの数に近づくことは起こりそうもない。
【0057】
ブロードキャスト・モードについては、図8のBのプロットに示されるように、服用される5つの錠剤があるとき、任意の一つのホップについての衝突の確率はPc1=0.217であるが、たった4回のホップ後には、一意的な検出の可能性はほぼ1である。よって、送信プロトコルにホッピング機構を導入することにより、追加的なハードウェア・サポートなしに多数の摂取をサポートする手段が明白となる。
【0058】
図9は、例示的なアウトリンク受信器アーキテクチャーを示している。図9を参照するに、細かいチャネル(範囲の各領域をビンに分割するサブ領域)は並列に処理されることができる。受信器は、コマンドを受けて、粗いチャネルをスキャンすることができる。スキャンは、周波数分布によって決定されることができる。受信器アルゴリズムは、フロントエンド受信器を用いてそれぞれの大領域にチューニングし、次いで可能な検出イベントを求めて細かい区分を並列処理することに関わる。これは、スキャンにおけるチャネル・スロットの数を282から5に減らすが、低下したSNRおよび複数摂取の場合に潜在的な衝突の確率が高くなることを代償とする。下記でより詳細に述べるブロードキャスト通信プロトコルへの向上により、これらの制限は克服できる。
【0059】
アウトリンク受信器戦略と組み合わせた変調フォーマットは、複数摂取パフォーマンスをさらに改善できる。受信チェーンの帯域幅を縮小できれば、ブロードキャスト・モードにおける衝突の可能性が低くなるか、あるいは周波数ホップの回数を減らすことができる。変調フォーマット(たとえば図3および図4に示したもの)は、フレームの先頭におけるパルスの長い系列を提供する。また、設計上、パルス間隔期間がブロードキャスト周波数に直接関係している。たとえば、パルス周期(たとえば1ms)のブロードキャスト搬送波周期(たとえば2.5ns)に対する比はちょうど400,000である。搬送波周期を10%増せば、パルス周期は10%増して1.1msとなる。これは受信器によって測定されることができ、搬送波周波数363.636MHz(1/2.75ns)に再同調するために使われることができる。フレームの先頭の間にパルス間隔を測定することによって、送信周波数が推定されることができ、検出器帯域幅がしかるべく縮小されることができる。帯域幅の縮小は、近傍における他のTAG送信を拒否する。変調フォーマットおよび間隔と搬送波の関係を利用するいくつかの検出アルゴリズムが考えられる。
【0060】
最大検出レート、すべての条件における堅牢なパフォーマンスを可能にし、複数摂取の場合に効率的に動作するために、新たな通信プロトコルが提案される。このプロトコルは、実は、上記の制限のいくつかを利用して、全体的なパフォーマンスを向上させる。プロトコルは、三つの動作モードをサポートする:
1)コマンド・モード:システムはインリンク信号に依存し、インリンクがないと動作できない
2)ブロードキャスト・モード:システムはインリンクを必要とせず、外部同期なしにデータをブロードキャストする
3)デュアル・モード:インリンクが存在するときにはコマンド・モードで、インリンクがないときにはブロードキャスト・モードで動作する。
【0061】
どのプロトコルも、TAGによって記憶されたまたは感知されたデータを送信することを受け持つ。このデータ・フィールドは、いかなる長さまたは定義であってもよい。図10は、医療アドヒアランス・デバイスに見出されうるものを表わす、アウトリンクのための見本のベース・フレーム・データ・フィールドを示している。ビット・フィールドは次のようなものであることができる。
【0062】
START〔開始〕。STARTフィールドは固定されており、TAGデータ送信の始まりを示す。
【0063】
GI。チップ上で測定され、デジタル化されたバッテリー電圧。最下位ビット(LSB)が先に送信される。
【0064】
NEXT ID〔次ID〕。チップ上で生成されるランダム・アドレス。このフィールドは、TAGがホップする次のスロット/ビンを示す。リーダーは、これを検出して、任意的には同じアドレスをもつインリンク・ヘッダにおいて応答することで、それを「永久に」TAG上にロックしてもよい。
【0065】
RSSI。測定されたインリンク信号強度。LSBが先に送信される。RSSIは対数的な性質である。
【0066】
TRACK ID〔追跡ID〕。TAG/CHIP上にプログラムされる。ユーザー定義されるフィールド。
【0067】
RID。TAG/CHIP上にプログラムされて、ユーザー無線機と関連付け、別ユーザー干渉を緩和する。
【0068】
PILL ID〔錠剤ID〕。チップ上で生成されたランダム・アドレス。このフィールドは、電源投入時に一度設定され、TAGの寿命にわたって固定されたままである。複数錠剤プロトコルのために使われる。
【0069】
END〔終了〕。ENDフィールドは固定されており、TAG送信フレームの終わりを示す。
【0070】
特に注意すべきはPILL IDおよびNEXT IDフィールドである。これらは複数錠剤摂取をサポートする。PILL IDは電源投入時に一度生成されるランダムなアドレスである。複数の錠剤があるとき、これにより、各錠剤が別個に登録されることができる。NEXT IDフィールドは、アウトリンク受信器にどこに次の送信スロットがあるかの事前通知を与えるためのNEXT〔次の〕時間または周波数ホップの位置である。これは、再取得の必要なしにメッセージの連続性を許容する。
【0071】
図11A~11Cは、コマンド・モード・プロトコル、ブロードキャスト・モード・プロトコルおよびデュアル・モード・プロトコルをそれぞれ例解している。
【0072】
図11Aを参照するに、コマンド・モード・プロトコルについては、ベース・フレームは10回(または所望に応じて他の任意の量)連結される。10個のベース・フレームの送信後、TAGは、複数摂取をサポートするために新たな時間スロットにシフトする。このプロセスは、インリンク信号がTAGに任意的に特定のスロット(今の例ではスロット32)上に凍結するようコマンドするまで繰り返されるか、あるいは無期限でホップし続ける。
【0073】
図11Bを参照するに、ブロードキャスト・モード・プロトコルについては、2つのベース・フレームが連結され、送信される。これに周波数ホップ(図5のAで定義されるような大領域内の範囲に制限される)が続く。このプロセスは、新たなベース・フレームが新たにサイクルを始めるまで繰り返される(この例では3回)。
【0074】
デュアル・モードはコマンド・モードとブロードキャスト・モードの組み合わせである。図11Cを参照するに、TAGが(IC上のプログラム・ピンによって決定されるところにより)このモードにあるとき、インリンク信号の存在がTAGをコマンド・モードに構成する。インリンク信号がないときは、TAGはブロードキャスト・モードで動作する。TAGは、図11Cに示される二つのシナリオによりブロードキャスト・モードに転換する。第一の場合は、図11Cの上に示されている。インリンクが何らかの理由により失われる場合、TAGは、ある公称時間(この例では15秒)にわたってコマンド・モードにおいて再取得しようと試みる。この時間後になってもインリンクが感知されない場合には、TAGはブロードキャスト・モードに切り換わる。TAGは、インリンクが回復されるまでブロードキャスト・モードに留まる。しかしながら、コマンド・モードに戻る切り換えが行なわれるのは、完成したフレームがブロードキャスト・モードで送信された後のみである。第二の場合は、図11Cの下に示されている。堅牢なインリンク環境の場合、TAGは、ブロードキャスト・モードにはいるよう指令されてもよいが、上記の15秒の遅延はない。インリンク信号内のデータが、TAGの遅延をベース・フレーム長のオーダーになるよう構成する。ひとたびこれがTAGにプログラムされたら、インリンクは除去されて、パーツはブロードキャスト・モードにはいる。ひとたびインリンク信号が再開したら、TAGはブロードキャスト動作モードを完了して、コマンド・モードにはいる。
【0075】
上記のプロトコルを実装するTAGをもつことが有益なばかりでなく、TAGが適正に製造されたことを保証するためにTAGを試験する方法があるべきである。医療アドヒアランス・システムは、実際上の恩恵があるためには、コスト効率がよい必要もある。TAGは摂取される各医療カプセルまたはタブレット(医薬担体)に付随しているので、各担体にTAGを加える増分費用はできるだけ低く保つ必要がある。ICを含むTAGのための材料費は、ICのダイ・サイズを小さくすることと、TAG電力生成およびアウトリンク信号を送信するために使われるアンテナのための低コスト材料の創造的な使用とによって最小化される。問題なのは、カプセル化後にTAGが適正に機能していることを検証するために使われる方法論である。試験時間は、試験コストに直接はねかえる。よって、低コスト・モデルをサポートする電子的アドヒアランス・システムのための試験方法論を呈示することが、本開示の目的である。
【0076】
TAGは弱い電気化学電池または他の環境発電の電源によって電力を受けるので、利用可能なエネルギー量はきわめて少ない。TAGの平均的な電力散逸は約50μW以下に制限される必要がある。これは最終的には、非常に遅いデータ伝送レートにつながる。情報のフレームを送信するために0.2ないし1秒以上かかることがある。ひとたびTAGがカプセル化されたら、TAGが適正に機能しているかどうかを検証する唯一の手立てはTAGテレメトリー・システム自身を使うことである。だが、どの摂取においても、TAGは、可能な配位のうちの若干数でランダムに現われるだけである。それぞれの可能な配位を試験することは、実際的でないほど長い時間がかかる(可能性としては何分も)。TAGがすべての可能な組み合わせを、実際にそれぞれを用いる必要なしに、検証する手段が必要である。
【0077】
TAG試験は、堅牢かつ信頼できる医療アドヒアランスを保証することにおいて本質的である。堅牢な試験は、時間および材料において非常に低コストである必要もある。何百万または何十億ものTAGが製造され、試験される場合、試験コストが最小化されなければならないことは明らかである。TAG電子回路の内在的な機能および関連する通信プロトコルに依拠する試験解決策が開示される。さらに、ひとたびカプセルが組み立てられたら、記載される技法は、電気化学電池の作動を必要とすることなく、機能を検証するために動作する。製品容量が増しても再現できる簡単な試験ステーションが、低コスト解決策を容易にする。図12は、例示的な試験ステーションを示している。この試験ステーションは、アドヒアランスTAGを含むすべての組み立てられたカプセルを検証するための根本的なプラットフォームを提供できる。図12を参照するに、カプセルは試験シュートに給送される。試験シュートは、単一のカプセルが試験チャンバにはいることを可能にするよう制御されるゲートを含む。十分な強さのRF場が加えられ、それがTAG上で整流され、それによりTAG電力を生成する。カスタム試験リーダーがインリンクを生成し、試験対象カプセルからアウトリンク信号を受信する。リーダーおよび試験コントロールは、次いで、試験結果に依存してカプセルをビンにソートする。
【0078】
試験を容易にするために、TAG電子回路は、TAG中のすべてのデジタル電子回路を検証する組み込み自己試験(BIST: Built In Self Test)電子回路を組み込むことができる。次いで、TAGはBISTの結果をアウトリンク送信を介して渡すことができる。いくつかの場合には、アウトリンクのベース・フレームのフィールド定義は、所望される関連するBIST試験結果を渡すよう、図10に関して記述したものとは変わってもよい。TAGの試験の間、インリンク・データ・フィールド内のビットはTAGを試験モードに構成する。インリンクは周波数変調されるデータ・フィールドを含むことができる。たとえば、TAGが、ここに参照によって組み込まれる出願第14/573315に記載されるような位相ロックループ(PLL)を含むとき、リーダーは、やはり同出願に記載されるように周波数変調を実行することができる。たとえば、リーダーは、基準信号(たとえば4MHz基準信号)を、タグ15についての任意の必要とされる情報または構成データを用いて周波数変調することができる。タグPLLがロックされる場合(たとえばリーダーがTAGをロックする信号を送ることに応答して)、変調されたデータはタグPLL上のVCO制御電圧から直接抽出されることができ、TAG PLLは復調ブロックとして作用することができる。次いで、タグPLLは、ロックしたモードに戻り、安定化する。PLLが基準信号を周波数逓倍するコマンドを与えられるときは、TAGはTXバースト信号を生成する。
【0079】
デュアル・モードおよび試験プロトコルをサポートするインリンク・データ・フィールドが図13のAに示されている。試験モードを構成するための、ビット定義のさらなる内訳が図13のBに示されている。試験モードにあるときは、所望される場合にBIST動作を支援するために追加的な試験ベクトルを送ることが可能である。
【0080】
ビット・フィールドは次のとおりであることができる。
【0081】
SYNC。SYNCパターンは固定であり、描かれているように送られる。これらのビットは、有効なインリンク信号が送信されたことを検証するためにTAGによって送られる。
【0082】
DSEND。DSYNCが1に設定されるとき、DSENDは単一の送信フレームを開始する。リーダーはDSENDを1ヘッダについて高に設定し、その後のヘッダについては0にリセットする。1フレーム後、DSENDが再び高に設定されれれば、別のフレームが開始される。DSYNCが0であれば、DSENDは何の効果もなく、フレームは中断なしに定期的に送信される。デュアル・モードでは、試験は図13のBに示されるように再定義される。
【0083】
DSYNC。DSYNCはフレーム同期が所望されるかどうかを決める。DSYNCが1に等しければ、すべてのタグはDSENDビットによって指令されたときに1フレームのみを送信する。そうでなく、DSYNCが0に等しければ、TAGはTAG間の同期なしに定期的に送信する。デュアル・モードでは、試験は図13のBに示されるように再定義される。
【0084】
SET。SETはC1、C0に依存する。SETビットは、構成設定に依存してIC構成のために使用される。
【0085】
C0。構成設定ビット。
【0086】
C1。C1は通常(0)または生産試験(1)に構成される。このビットは、TAGが試験モードになるかどうかを制御する。
【0087】
WIN ID。WIN IDはTAGスロット番号である。リーダーはTAGが送るランダム・アドレスを読む。WIN IDがこの値に設定される場合、適正なTAGは、そのアドレスにおいてロックすることによって応答する。あるいはまた、リーダーは、TAGがそのアドレスに相関するまで固定したアドレスを送ってもよい。このようにして、リーダーはTAGを特定のスロットに強制しうる。
【0088】
図13のBに目を転じると、ある種のモードがC1およびC0によって制御されることができる。図13のBに示される場合、C1が0に等しければ、C0の値に関わりなく、SETビットがブロードキャストTX周波数をチューニングしてもよく、DSYNCおよびDSENDがフレーム同期のために使われる。C1が1に等しければ(生産試験を示す)、C0の値に関わりなく、SET、DSYNCおよびDSENDビットは試験ベクトル入力のために使われる。
【0089】
図14は、例示的な試験方法論およびプロトコルを示している。試験は三つのフェーズで行なわれる。第一に、TAGは、基本動作を検証するために標準的なコマンド・モードで行使されることができる(A)。これに続いて、TAGに、インリンクが失われる場合、2ベース・フレーム遅延しかもたないよう指令する。インリンクが除去され、パーツはブロードキャスト・モードに切り換わるべきである。関連する周波数ホッピングをもってフル・フレームが送られる(B)。このシーケンスの間、TAGは、(A)および(B)の間に検査されなかったデジタル機能に対してBISTを実行している。ブロードキャスト・モードが選択された後、TAGはBISTデータを送出する。このデータのうちには、BISTが合格したかどうかを示すフラグがある。BISTが合格したことを示すフラグが生起する場合、TAGは良好と見なされ、しかるべくビン分けされる(C)。試験時間を短縮するために、変調フォーマットは、データ・ビット当たり1バーストの単純なパルス振幅変調(PAM: pulse amplitude modulation)であることができることを述べておくべきである。これはフレーム・サイズを縮小し、より高速な試験時間につながる。これが可能なのは、制御された試験環境では、高度な変調技法が必要ないほどSNRが高いからである。試験リーダーはTAGの出力パワーを記録し、インリンクを身体において期待される最小レベルに設定する。試験シーケンス全体が合格するとすると、TAGが有効確認される。すべてのコンポーネントが適正に動作しない限り試験は成功できないので、これは、すべてのアナログおよびデジタル機能を有効確認する。この手法は、効率的な試験方法を提供するためにシステムの内在的な機能を利用する。
【0090】
試験機能をサポートするために、TAGは、バッテリーを作動させることなく電力を与えられる。単純な方法は、TAGがアウトリンク経路のためのアンテナをもつという事実を活用する。このアンテナは、外部RF電源のための受信アンテナとしても使用できる。図15の簡略化されたTAGの図に示されるように、エネルギーが収穫されて、チップ上で整流される。アウトリンク・アンテナはTAG上のRFドライバーに接続されているので、ドライバーは、アウトリンクが存在しないときに高いインピーダンスの状態をもつよう設計される(要求される)。TAG IC上に設置されている静電気放電(ESD)保護ダイオードが、外部RF場を整流するために使用できる。外部バースト・キャパシタ(TAGがバーストするときにエネルギーを提供する)が、整流されたRFエネルギーをフィルタリングし、IC全体のための電力を供給する。アウトリンク・バーストが存在するときの衝突をなくすために、外場は図16に示されるように時間多重されてもよい。
【0091】
〈実装例〉
【0092】
上記のアウトリンクTXシンボルおよび通信プロトコルを実装するために、摂取可能なTAGは、適切なアウトリンク信号を生成し、通信プロトコルを実現するよう構成される。図17は、摂取可能なTAGの例示的な実装の高レベルの物理的な図を示している。TAGは、インリンク信号の存在または不在を感知する必要がある。さらに、TAGはアウトリンク信号をコマンド、ブロードキャストまたはデュアル・モードで構成して、それらのモードのための適正なTXデータ・フォーマットを提供する必要がある。これは、パルス反転キーイングされた(PRK)シンボルを使ってデータを符号化し、パルス間隔と搬送波周波数との間の関係を保証し、適正なTX送信フレームを生成することを含む。図17を参照するに、TAGは電気化学電池の正負の端子(Vbat、LF-)、インリンク受容器パッド(LF+)、接続ポート(HF+、HF-)をもつアウトリンク・アンテナおよびシンボルおよびプロトコル生成を含め要求される電気的機能のすべてを実装するTAG集積回路(IC)を含む。実装に依存して、電気化学電池の代わりに他の電源が使われて、電力端子(正負の端子をもつ)に接続されてもよい。
【0093】
図18のAは、例示的なTAG ICの高レベルのブロック図を示している;図18のBは、ICへのインターフェース・ピンの定義を示している。Mode〔モード〕ピンは、TAGをコマンド、ブロードキャストまたはデュアル・モードの動作の一つに構成するために使われる。たとえば、Modeが高に(Vbatに)つながれる場合、コマンド・モードが使われ、低(LF-)ならブロードキャスト、浮動(接続なし)ならデュアル・モードに構成する。たいていの用途については、デュアル・モード動作が選択される。ピンd0、d1およびd2は、低につなぐこと、高につなぐことまたはフロートによって単純なチップIDを提供するために使用されてもよい。
【0094】
TAG ICは、図19に示されるようなマスター・デジタル制御およびプログラム・ブロック(MCD)によって制御されて、三つのモードのうちの一つで動作する。このMCDブロックは、すべての外部信号伝達を解釈し、TAGを適切に構成することを受け持つ。コマンド・モードまたはブロードキャスト・モードで明示的に動作するようモード・ピンによって指令される場合には、構成は単純である。デュアル・モードでは、コントローラがインリンクが存在するときを感知しなければならないので、動作はより複雑になる。それぞれのモードについて下記で手短かに述べる。
【0095】
コマンド・モード。コマンド・モードはインリンク信号が存在すると想定する。インリンク信号はLF+において受領され、RX Ampによって増幅される。受信信号強度(RSSI)が導出され、抽出されたインリンク信号(C-ref)がMUXを通じてPLL Demod syncブロックに渡される(Mode-SELがこれを、MCDによって決定されるところにより制御する)。インリンク基準信号は公称上、周波数が約4MHzである。PLL Demodブロックはこの基準を使って、該基準より100倍大きい(典型的には400MHz)、位相ロックされ、スケーリングされた搬送波周波数を生成する。構成データを搬送するインリンク信号の部分が抽出され、MCDに送られる(In-Linkデータ)。それは、所望されるなら、さらなるチップ構成のために使われてもよい。同時に、インリンク信号(ref)はバッファリングされ、MCD内で主システム・クロックとして使われる。一方、MCDは、抽出されたバッテリーおよび信号強度(GIおよびRSSI)から構成される送信制御(TX-Burst cntl)を生成して、自己生成したアドレスおよび不揮発性データ、たとえば患者IDもしくは医薬種別を含むデータをIC上に記憶している。TX-Burst cntlは本質的には、データ内容に基づいて適切なパルス反転キーイングされた(PSK)シンボルをもって搬送波を変調するために使われるゲーティング信号である。このゲートは、コマンド・モードのための通信プロトコルおよびシンボルに基づく。ゲーティングはTXバーストのパルス間隔を設定し、これはインリンク信号(ref)から導出されるMCDクロックによって制御されることを注意しておく。この信号はTX搬送波に位相ロックされるので、プロトコルによって要求されるように、搬送波周波数とパルス間隔との間に直接的な関係がある。
【0096】
ブロードキャスト・モード。ブロードキャスト・モードはインリンク信号が存在しないと想定する。この場合、TAG ICはすべての信号を内部的に生成する。基本的には、インリンク基準信号がMCDによって制御されるオンチップ発振器によって置き換えられることのほかは、全動作はコマンド・モードと同じである。MCD内で使われる基準クロックは(異なる源からではあるが)いまだTX搬送波を生成するために使われたものと同じなので、パルス間隔およびTX周波数が関係しているという要請は、いまだ達成され、こうしてプロトコル要求はいまだ満たされる。TX-Burst cntlは、プロトコルの違いという明らかな例外はあるが(図11のBに関する記述を参照)、ブロードキャストの場合のように生成される。シンボル生成は同じままである。
【0097】
デュアル・モード。デュアル・モード動作については、MCDはMode-SEL信号を、コマンド・モードとブロードキャスト・モードとの間で切り換わるよう設定する(図11のCに関する記述を参照)。その決定は、主として、PLL Demod syncブロックによって提供されるインリンク・データおよび感知情報に基づく。デュアル・モードでは、MCDは、インリンクとオンボード発振器の間でクロック・ドメインをシームレスに変化させるよう設計されている。これはインリンクが失われ、初期の再取得が試みられる場合に特に枢要である。この状況では、オンボード発振器は、再取得が行なわれる間に一時的または遷移クロック(T-clk)を提供するために使われる。このようにして、インリンク探索を続けるためにインリンク経路は維持されうる。ひとたびMCDがインリンクがうまく回復されたと判定したら、T-clkはclkによって置き換えられる。
【0098】
MCDおよび関連するデジタル回路は、要求されるプロトコルおよびシンボル生成要件を達成するために、TAGによって使われる。図19に示される例を参照するに、TDCブロックは、要求される全クロックを、clkおよびT-clk信号を基準として使って生成する。TDCブロックは、プロトコル要件に基づいてこれらをシームレスに生成する。TDCブロックは、タイマー、ゲーティング論理などを含んでいてもよい。TX-Burst cntlおよびBIST-Burst cntl信号は関連するブロックによって生成される。TXデータ・バースト・シンボル(TX Data Burst Symbol)生成およびタイミング制御(TBS)ブロックは、組み立てられたTXフレーム・データを使い、各データ・ビットについて適正なPRKシンボルを生成する。TBSブロックは、TDCブロックから抽出されたBurst-clkに基づいて変調ゲーティングを設定する。このクロックは位相ロック技法に基づいて導出されたものなので、パルス間隔と搬送波周波数の関係に対する要件は設計によって満たされる。TXフレーム組み立ては、適切なフレーム定義によって指定されるように、抽出されたデータおよび記憶されているデータの両方を集める。これは、プロトコルによって要求される次スロット・ホップ情報を含む。同様に、試験モードで動作させられるとき、BIST-Burst cntl(試験モードのためのインリンク・データ・フィールドの理解に関して上記したようなもの)が適正に生成される。
【0099】
ブロードキャスト・プロトコルを実装するために、TX搬送波は、周波数領域内でランダムにホップするべきである。これは、ブロードキャスト・モードで、TX搬送波が内部発振器に位相ロックされるときに要求される。内部発振器はデジタル制御される発振器であり、発信周波数はデジタル制御語に比例する。この制御語の、ランダムな値をもつ部分を変えることにより、ランダムな周波数ホップが生成される。これは単に、図に示した乱数発生器を使ってなされる。ブロードキャスト・モードでは、この値は、ブロードキャスト・プロトコルに基づいて発振器に渡される。
【0100】
最後に、ユニットが試験モードにあるとき、MCDはすべてのBIST機能を、プロトコルにおいて定義されるように制御する。チップ上のDACおよびADC機能を試験するために、BIST DAC制御を通じたループバック経路が提供される(図18のAも参照)。このようにして、チップのすべてのブロックが試験されてもよく、結果がBIST-Burst cntlを、よってアウトリンク経路を通じて渡されてもよい。
【0101】
本稿に記載される例および実施形態は単に例解目的のためであり、それに照らしたさまざまな修正または変更が当業者に思いつかれるであろうこと、それは本願の精神および視野内に含まれるものであることは、理解しておくべきである。
【0102】
主題は構造的な特徴および/または工程に固有の言辞で記載されているが、付属の請求項において定義される主題は必ずしも上記の特定的な特徴または工程に限定されないことは理解されるものとする。むしろ、上記の特定的な特徴および工程は、請求項を実施することの例として開示されており、他の等価な特徴および工程が請求項の範囲内であることが意図される。
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワークであって:
複数の摂取可能なデバイスのそれぞれであって、患者に関係するデータを取得し、該データを該データのビットをバーストすることによって送信するよう構成されており、電力低減のために送信においてはビット間に選択されたギャップがあり、各ビットは一回または複数回繰り返され、前記データのバースト・パターンは50%以上のバースト密度をもつよう構成される、デバイスと;
患者の身体の外部に位置され、前記データを受信するよう構成された受信器とを有する、
摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様2〕
各ビットが二つ以上(N個)のパルス・スロットにより表わされ、論理的な1のビットはN1個の前端パルスおよびN0個の後端パルスによって表わされ、論理的な0はN0個の前端パルスおよびN1個の後端パルスによって表わされ、中間には空のパルス・スロットがある、態様1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様3〕
前記データは一つまたは複数のメッセージを含み、各メッセージは一組のビットおよび完全にパルスから構成されるフレーム同期シーケンスを含み、前記受信器は、各フレームの開始を、データ相関器を使うことなく、少なくとも前記フレーム同期シーケンスに基づいて区別するよう構成されている、態様1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様4〕
ビット間の前記選択されたギャップは、少なくとも、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって生成され、使用される搬送波周波数に基づいて決定される、態様1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様5〕
前記選択されたギャップは、少なくとも、前記搬送波周波数を生成する前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれのオンチップ・クロックに基づいて決定される、態様4記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様6〕
前記受信器が、ビット間の前記選択されたギャップを検出し、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって使用される一つまたは複数の周波数を決定するために使うよう構成されている、態様1記載の摂取可能なバイオテレメトリー通信ネットワーク。
〔態様7〕
インリンク信号およびアウトリンク信号をリーダー装置と交換することによって双方向通信を実施するよう構成されている第一の回路と;
前記アウトリンク信号を前記リーダー装置に送信することによって一方向通信を実施するよう構成されている第二の回路とを有する、
摂取可能なデバイス。
〔態様8〕
前記インリンク信号を探し、前記インリンク信号を検出する際には前記双方向通信を実施し;
前記インリンク信号を検出しないことに応答して前記一方向通信に切り換える
よう構成されている第三の回路をさらに有する、態様7記載の摂取可能なデバイス。
〔態様9〕
前記インリンク信号またはアウトリンク信号の完全なフレームが送信された後および良好なまたは失われたインリンク信号が検出される設定された時間後にのみ前記一方向通信と双方向通信の間で切り換えるよう構成されている第四の回路をさらに有する、態様7記載の摂取可能なデバイス。
〔態様10〕
患者によって摂取される複数の摂取可能なデバイスと;
患者の身体の外部に位置されるリーダー装置とを有する
摂取可能なバイオテレメトリー・システムであって、
前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれと前記リーダー装置は、少なくとも、前記複数の摂取可能なデバイスが前記リーダー装置によって同時に検出されることを許容する通信プロトコルに基づいて、互いと通信するよう構成されている、
摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様11〕
前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれは、他の摂取可能なデバイスとの衝突を避けるために周波数を変えるよう構成されている、態様10記載の摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様12〕
前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれが、ランダムに周波数を変える、態様10記載の摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様13〕
前記リーダー装置は、前記複数の摂取可能なデバイスの一つからの最後に受信されたメッセージの周波数と、前記複数の摂取可能なデバイスの一つからの次のメッセージの開始ビットのタイミングとを使ってその後の周波数ホップの周波数を検出するよう構成されている、態様10記載の摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様14〕
患者によって摂取される複数の摂取可能なデバイスであって、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれはパルス・シーケンスを送信する際にある周波数で動作する、デバイスと;
患者の身体の外部に位置されるリーダー装置とを有する
摂取可能なバイオテレメトリー・システムであって、
前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれと前記リーダー装置は、少なくとも、前記リーダー装置が、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれの検出周波数を、検出の際の各パルス・シーケンスのパルス周期を測定することによって微調整することを許容する通信プロトコルに基づいて、互いと通信するよう構成されている、
摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様15〕
前記パルス周期が、前記複数の摂取可能なデバイスのそれぞれによって使用される搬送波周波数に比例する、態様14記載の摂取可能なバイオテレメトリー・システム。
〔態様16〕
摂取可能なデバイスであって:
GI細胞を介して胃腸(GI)流体から電力を収穫することおよび外部から送信される無線周波(RF)信号から電力を捕捉することの少なくとも一方によって、患者によって摂取される当該摂取可能なデバイスに電力を与えるよう構成された回路を有する、
摂取可能なデバイス。
〔態様17〕
前記回路がさらに:
当該摂取可能なデバイスが外部RF場にさらされるときに当該摂取可能なデバイスに付随するRF装置からエネルギーを収穫し;
当該摂取可能なデバイスが適正に機能していることを示す信号を送信するようさらに構成されている、
態様16記載の摂取可能なデバイス。
〔態様18〕
当該摂取可能なデバイスが試験装置によって外部RF場にさらされ、前記試験装置は、摂取可能なデバイスのビンを受け入れ、各摂取可能なデバイスをソートして前記外部RF場にさらし、各摂取可能なデバイスからの応答を検出し、該応答に基づいて各摂取可能なデバイスが適正に機能しているかどうかを判定するよう構成されている、態様16記載の摂取可能なデバイス。
〔態様19〕
前記RF信号が電力および情報を当該摂取可能なデバイスに伝送する、態様16記載の摂取可能なデバイス。
〔態様20〕
当該摂取可能なデバイスに送られた前記情報が、当該摂取可能なデバイスが自らを試験するべきであることを示す、態様19記載の摂取可能なデバイス。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
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図15
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図18A
図18B
図19