(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】射出装置およびダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B22D17/32 E
(21)【出願番号】P 2019019537
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 俊治
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-297128(JP,A)
【文献】特開2018-015775(JP,A)
【文献】特開2018-001252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B29C 45/00-45/24,
45/46-45/63,
45/70-45/72,
45/74-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャに接続されるピストンと、
前記ピストンを内蔵し、前記ピストンによりロッド側室およびヘッド側室に分けられたシリンダ室を含むシリンダと、
前記ヘッド側室に作動油を流入させて前記ピストンを前進させるアキュムレータと、
前記ピストンを後退させて復帰位置に戻す際に前記ロッド側室に作動油を供給するポンプラインと、
前記プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、前記ロッド側室を加圧する加圧部と、
前記加圧部と前記ロッド側室とを接続する第1流路と、
前記第1流路に配置され、前記ロッド側室と前記加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部と、
前記第1流路から分岐して前記ポンプラインに接続される第2流路と、
前記第1流路とは別個に設けられ、前記アキュムレータと前記ヘッド側室と接続する第3流路とを備え、
前記切換部は、前記第3流路とは別個に設けられた前記第1流路において、前記ロッド側室と前記加圧部との間に配置されている、射出装置。
【請求項2】
前記プランジャによる溶湯の射出が開始される際に、前記切換部により前記ロッド側室と前記加圧部との接続を遮断する制御を行う制御部をさらに備える、請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記ロッド側室内の作動油が排出されるタンクをさらに備え、
前記切換部は、前記ロッド側室と前記タンクとの接続または遮断を切り換え可能に構成され、
前記制御部は、前記プランジャによる溶湯の射出が開始される際に、前記切換部により前記ロッド側室と前記加圧部との接続を遮断するとともに、前記切換部により前記ロッド側室と前記タンクとを接続する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プランジャによる溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、前記切換部により前記ロッド側室と前記加圧部とを接続する制御を行うように構成されている、請求項2または3に記載の射出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記プランジャによる溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、前記切換部により前記ロッド側室と前記加圧部とを接続するとともに、前記加圧部により前記ロッド側室を所定時間加圧する制御を行うように構成されている、請求項4に記載の射出装置。
【請求項6】
前記切換部は、前記ロッド側室と前記加圧部との接続と、前記ロッド側室と前記タンクとの接続と、前記ロッド側室と前記加圧部および前記タンクとの接続の遮断とを切り換える切換弁を含む、請求項3に記載の射出装置。
【請求項7】
前記切換部は、前記ロッド側室と前記加圧部との接続および接続の遮断を切り換える第1切換弁と、前記ロッド側室と前記タンクとの接続および接続の遮断を切り換える第2切換弁とを含み、
前記制御部は、前記第1切換弁と前記第2切換弁とを同期させて切り換える制御を行うように構成されている、請求項3に記載の射出装置。
【請求項8】
前記プランジャによる溶湯の射出が終了される前に、前記ヘッド側室に作動油を供給することにより前記ヘッド側室を増圧させる増圧部をさらに備え、
前記加圧部は、前記増圧部とは別個に設けられ、前記プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、前記ロッド側室を加圧するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項9】
前記第
2流路における前記第
1流路への分岐より上流側であり、かつ、前記ポンプラインの下流側に配置されるチェック弁をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項10】
注湯機構によって溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状のスリーブと、
前記スリーブ内に注湯された溶湯を射出するプランジャと、
前記プランジャを前記スリーブ内で移動させる射出装置とを備え、
前記射出装置は、
前記プランジャに接続されるピストンと、
前記ピストンを内蔵し、前記ピストンにより内部の空間をロッド側室およびヘッド側室に分けられたシリンダ室を含むシリンダと、
前記ヘッド側室に作動油を流入させて前記ピストンを前進させるアキュムレータと、
前記ピストンを後退させて復帰位置に戻す際に前記ロッド側室に作動油を供給するポンプラインと、
前記プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、前記ロッド側室を加圧する加圧部と、
前記加圧部と前記ロッド側室とを接続する第1流路と、
前記第1流路に配置され、前記ロッド側室と前記加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部と、
前記第1流路から分岐して前記ポンプラインに接続される第2流路と、
前記第1流路とは別個に設けられ、前記アキュムレータと前記ヘッド側室と接続する第3流路とを含み、
前記切換部は、前記第3流路とは別個に設けられた前記第1流路において、前記ロッド側室と前記加圧部との間に配置されている、ダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出装置およびダイカストマシンに関し、特に、プランジャに接続されるピストンと、ピストンを内蔵するシリンダとを備える射出装置およびダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プランジャに接続されるピストンと、ピストンを内蔵するシリンダとを備える射出装置およびダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、プランジャに接続されるピストンと、ピストンを内蔵する射出シリンダとを備える高圧鋳造機用(ダイカストマシン用)の射出装置が開示されている。上記特許文献1の射出装置は、アキュムレータと、メータアウトロジック弁とを備えている。
【0004】
上記特許文献1の射出シリンダの内部空間(シリンダ室)は、ピストンのヘッド部によりヘッド側圧力室(ヘッド側室)およびロッド側圧力室(ロッド側室)に分かれている。上記特許文献1のピストンのヘッド部におけるロッド側圧力室側の端面の面積は、ロッド側圧力室内に配置されるピストンのロッド部の分だけ、ピストンのヘッド部におけるヘッド側圧力室側の端面の面積よりも小さい。
【0005】
上記特許文献1のアキュムレータは、ヘッド側圧力室およびロッド側圧力室の各々に作動油を供給するように構成されている。上記特許文献1のメータアウトロジック弁は、アキュムレータにより供給されたロッド側圧力室の作動油を排出するように構成されている。
【0006】
ここで、上記特許文献1のピストンのヘッド部には、ヘッド側圧力室内の作動油の圧力がピストンのヘッド部におけるヘッド側圧力室側の端面に加えられることにより、ピストンを前進させる前進力が生じる。上記特許文献1のピストンのヘッド部には、ロッド側圧力室内の作動油の圧力がピストンのヘッド部におけるロッド側圧力室側の端面に加えられることにより、ピストンを後退させる後退力が生じる。
【0007】
上記特許文献1の射出装置は、ヘッド側圧力室内の作動油に生じた前進力を、ロッド側圧力室内の作動油に生じた後退力で抑えながら制御するメータアウト制御を行うように構成されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の射出装置では、同じアキュムレータから作動油が供給されることにより、プランジャによる溶湯の射出が開始される際において、ロッド側圧力室の作動油の圧力とヘッド側圧力室の作動油の圧力とが同程度である。また、ピストンのヘッド部におけるヘッド側圧力室側の端面の面積よりもピストンのヘッド部におけるロッド側圧力室側の端面の面積が小さいので、前進力よりも後退力が小さい。したがって、上記特許文献1の射出装置では、プランジャによる溶湯の射出が開始される際、ピストンのヘッド部におけるヘッド側圧力室側の端面に生じる前進力をピストンのヘッド部におけるロッド側圧力室側の端面に生じる後退力で抑えるメータアウト制御を行うことが困難である。このため、上記特許文献1の射出装置では、ピストンのヘッド部に生じる前進力と後退力とが釣り合う位置まで、ピストンが制御不能な状態で前進するという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、上記特許文献1には開示されていないが、上記のような不都合を解消するため、ロッド側圧力室内を加圧する加圧部を射出装置に設けられることが考えられる。上記加圧部は、メータアウトロジック弁とタンクとの間に配置されるとロッド側圧力室内を加圧することができないので、ロッド側圧力室とメータアウトロジック弁との間に配置されると考えられる。
【0011】
このような射出装置では、ピストンのヘッド部におけるヘッド側圧力室側の端面の面積よりもピストンのヘッド部におけるロッド側圧力室側の端面の面積が小さいことに起因する前進力と後退力との差を、ロッド側圧力室を加圧部により加圧することによって補うことが可能である。
【0012】
しかしながら、上記射出装置では、メータアウト制御によりロッド側圧力室内の作動油をメータアウトロジック弁を介して排出してロッド側圧力室の圧力を小さくした場合でも、加圧部によりロッド側圧力室が加圧されるという不都合がある。つまり、上記射出装置では、加圧部をロッド側圧力室とメータアウトロジック弁との間に配置するように構成すると、メータアウト制御を行う際、ロッド側圧力室内の圧力変化が不安定になる。このため、上記射出装置では、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることが困難になるという問題点がある。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることが可能な射出装置およびダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における射出装置は、プランジャに接続されるピストンと、ピストンを内蔵し、ピストンによりロッド側室およびヘッド側室に分けられたシリンダ室を含むシリンダと、ヘッド側室に作動油を流入させてピストンを前進させるアキュムレータと、ピストンを後退させて復帰位置に戻す際にロッド側室に作動油を供給するポンプラインと、プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室を加圧する加圧部と、加圧部とロッド側室とを接続する第1流路と、第1流路に配置され、ロッド側室と加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部と、第1流路から分岐してポンプラインに接続される第2流路と、第1流路とは別個に設けられ、アキュムレータとヘッド側室と接続する第3流路とを備え、切換部は、第3流路とは別個に設けられた第1流路において、ロッド側室と加圧部との間に配置されている。
【0015】
この発明の第1の局面による射出装置に、上記のように、ロッド側室と加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部を設ける。そして、切換部を、ロッド側室と加圧部との間に配置する。これにより、メータアウト制御を行う際、ロッド側室内の作動油を排出してロッド側室内の圧力を小さくした場合に、ロッド側室と加圧部との接続を切換部により遮断することにより、加圧部によりロッド側室を加圧されないようにすることができる。したがって、メータアウト制御を行う際、ロッド側室に供給された作動油を排出することによりロッド側室の圧力を小さくした場合に、加圧部によりロッド側室が加圧されることを回避することができる。その結果、メータアウト制御を行う際、ロッド側室内の圧力変化が不安定になることを防止することができるので、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることができる。また、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることができることにより、プランジャを安定して前進させることできるので、溶湯の射出を安定させることができる。また、ロッド側室の作動油の圧力が加圧部よりも大きくなった場合でも、切換部によりロッド側室と加圧部との接続を遮断することにより、ロッド側室の作動油による加圧部への逆流を防止することができる。
【0016】
上記第1の局面による射出装置において、好ましくは、プランジャによる溶湯の射出が開始される際に、切換部によりロッド側室と加圧部との接続を遮断する制御を行う制御部をさらに備える。このように構成すれば、メータアウト制御によりプランジャによる溶湯の射出を行う場合、プランジャによる溶湯の射出の開始から、加圧部によりロッド側室が加圧されることを回避することができる。これにより、プランジャによる溶湯の射出を行っている間、ロッド側室内の作動油の圧力が加圧部により不安定になることを防止することができる。その結果、プランジャによる溶湯の射出を行っている間、ピストンを安定して前進させることによって、溶湯の射出を安定させることができる。
【0017】
この場合、好ましくは、ロッド側室内の作動油が排出されるタンクをさらに備え、切換部は、ロッド側室とタンクとの接続または遮断を切り換え可能に構成され、制御部は、プランジャによる溶湯の射出が開始される際に、切換部によりロッド側室と加圧部との接続を遮断するとともに、切換部によりロッド側室とタンクとを接続する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ロッド側室内の作動油をタンクに排出することによりロッド側室内の圧力を調整してピストンを前進させるメータアウト制御を行っている間、ロッド側室と加圧部との接続を切換部により遮断することにより、加圧部によりロッド側室を確実に加圧されないようにすることができる。これにより、メータアウト制御を行っている間、ロッド側室内の作動油の圧力が加圧部により不安定になることを防止することができる。また、ヘッド側室内の作動油の前進力のみを制御してピストンを前進させるメータイン制御を行う場合と異なり、メータアウト制御ではヘッド側室内の作動油に生じた前進力をロッド側内の作動油に生じた後退力で抑えることができる。したがって、前進力を緻密に制御しなければ、ピストンが制御不能な状態で前進する(飛び出す)メータイン制御とは異なり、メータアウト制御では前進力を緻密に制御する必要がない。その結果、前進力を緻密に調整するために必要となる複数のバルブを、シリンダのヘッド側室の上流側に設ける必要がないので、射出装置の部品点数の増加を抑制することができる。
【0018】
上記制御部を備える射出装置において、好ましくは、制御部は、プランジャによる溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換部によりロッド側室と加圧部とを接続する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、所定タイミングにおいてロッド側室の作動油の圧力を加圧部により加圧することができる。ここで、ピストンの延びる方向に直交する方向において、ピストンのヘッド部のロッド側室側の端面の面積は、ピストンのロッド部の分だけ、ピストンのヘッド部のヘッド側室側の端面の面積よりも小さい。これにより、ピストンのヘッド部のヘッド側室側の端面の面積とピストンのヘッド部のロッド側室側の端面の面積との比に起因するピストンのヘッド部のヘッド側室側の端面に生じる前進力とピストンのヘッド部のロッド側室側の端面に生じる後退力との差を加圧部により補うことができる。その結果、メータアウト制御を行う際、前進力と後退力とが釣り合う位置まで、ピストンが制御不能な状態で前進することを抑制することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、制御部は、プランジャによる溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換部によりロッド側室と加圧部とを接続するとともに、加圧部によりロッド側室を所定時間加圧する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、加圧部の加圧によりロッド側室の作動油の圧力を所望の圧力に確実に到達させることができるので、ピストンのヘッド部のヘッド側室側の端面に生じる前進力とピストンのヘッド部のロッド側室側の端面に生じる後退力との差を加圧部により確実に補うことができる。また、所定時間経過後に加圧部による加圧が停止されるので、切換部によりロッド側室と加圧部との接続が遮断されない場合でも、ロッド側室内の圧力が加圧部により不安定になることを抑制することができる。
【0020】
上記切換部とタンクとを備える射出装置において、好ましくは、切換部は、ロッド側室と加圧部との接続と、ロッド側室とタンクとの接続と、ロッド側室と加圧部およびタンクとの接続の遮断とを切り換える切換弁を含む。このように構成すれば、単一の切換弁により、ロッド側室と加圧部との接続を遮断するとともにロッド側室とタンクとを接続させることができるので、射出装置の部品点数の増加を抑制することができるとともに射出装置の構成が複雑になることを抑制することができる。
【0021】
上記切換弁とタンクとを備える射出装置において、好ましくは、切換部は、ロッド側室と加圧部との接続および接続の遮断を切り換える第1切換弁と、ロッド側室とタンクとの接続および接続の遮断を切り換える第2切換弁とを含み、制御部は、第1切換弁と第2切換弁とを同期させて切り換える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、単一の切換弁を用いる場合において単一の切換弁に必要とされる機能を、第1切換弁と第2切換弁とに分けることができるので、射出装置の切換弁の構造の複雑化を抑制することができる。これにより、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることができるとともに、射出装置の切換弁の構造の複雑化を抑制することができる。
【0022】
上記第1の局面による射出装置において、好ましくは、プランジャによる溶湯の射出が終了される前に、ヘッド側室に作動油を供給することによりヘッド側室を増圧させる増圧部をさらに備え、加圧部は、増圧部とは別個に設けられ、プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室を加圧するように構成されている。このように構成すれば、増圧部によりロッド側室を加圧するために増圧部と切換部とを接続する場合と比較して、
加圧部を切換部の近くに配置することができるので、加圧部と切換部とを容易に接続することができる。
【0024】
上記第1の局面による射出装置において、好ましくは、第2流路における第1流路への分岐より上流側であり、かつ、ポンプラインの下流側に配置されるチェック弁をさらに備える。
【0025】
この発明の第2の局面におけるダイカストマシンは、注湯機構によって溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状のスリーブと、スリーブ内に注湯された溶湯を射出するプランジャと、プランジャをスリーブ内で移動させる射出装置とを備え、射出装置は、プランジャに接続されるピストンと、ピストンを内蔵し、ピストンにより内部の空間をロッド側室およびヘッド側室に分けられたシリンダ室を含むシリンダと、ヘッド側室に作動油を流入させてピストンを前進させるアキュムレータと、ピストンを後退させて復帰位置に戻す際にロッド側室に作動油を供給するポンプラインと、プランジャによる溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室を加圧する加圧部と、加圧部とロッド側室とを接続する第1流路と、第1流路に配置され、ロッド側室と加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部と、第1流路から分岐してポンプラインに接続される第2流路と、第1流路とは別個に設けられ、アキュムレータとヘッド側室と接続する第3流路とを含み、切換部は、第3流路とは別個に設けられた第1流路において、ロッド側室と加圧部との間に配置されている。
【0026】
この発明の第2の局面によるダイカストマシンでは、上記のように、ロッド側室と加圧部との接続または接続の遮断を切り換える切換部を設ける。切換部を、ロッド側室と加圧部との間に配置する。これにより、メータアウト制御を行う際、ロッド側室内の作動油を排出してロッド側室内の圧力を小さくしても、ロッド側室と加圧部との接続を切換部により遮断することにより、加圧部によりロッド側室を加圧されないようにすることができる。したがって、メータアウト制御を行う際、ロッド側室に供給された作動油を排出することによりロッド側室の圧力を小さくしたとしても、加圧部によりロッド側室が加圧されることを回避することができる。つまり、メータアウト制御を行う際、ロッド側室内の圧力変化が不安定になることを回避することができる。その結果、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることが可能なダイカストマシンを得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上記のように、メータアウト制御においてピストンを安定して前進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態による射出装置において、加圧工程の状態を模式的に示した図である。
【
図3】第1実施形態による射出装置において、低速射出工程および高速射出工程の状態を模式的に示した図である。
【
図4】第1実施形態による射出装置において、増圧射出工程の状態を模式的に示した図である。
【
図5】第1実施形態による射出装置において、復帰工程の状態を模式的に示した図である。
【
図6】第1実施形態による射出装置における制御装置の射出処理を示したフローチャートである。
【
図7】第2実施形態による射出装置において、加圧工程の状態を模式的に示した図である。
【
図8】第2実施形態による射出装置において、低速射出工程の状態を模式的に示した図である。
【
図9】第3実施形態による射出装置において、加圧工程の状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照して、第1実施形態によるダイカストマシン1の構成について説明する。
【0031】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すように、ダイカストマシン1は、移動金型21が水平方向に移動される横型のマシンである。また、ダイカストマシン1は、コールドチャンバ方式のマシンであり、ダイカストマシン1に取り付けられた金型2内(移動金型21と固定金型22とにより形成されるキャビティC)に溶湯(液状の金属材料)を射出することによりダイカスト製品(成形品)を製造するように構成されている。
【0032】
ダイカストマシン1は、金型2と、スリーブ3と、注湯機構4と、蓋機構5と、プランジャ6と、射出装置7と、制御装置8とを備えている。なお、制御装置8は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0033】
ここで、以下の説明では、上下方向をZ方向とし、水平方向のうち、プランジャ6の延びる方向をX方向とする。また、X方向のうち溶湯を射出する際のプランジャ6の移動方向をX1方向とし、X1方向の逆方向をX2方向とする。
【0034】
金型2は、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティC(空洞部分)を形成するように構成されている。
【0035】
具体的には、金型2は、移動金型21と、固定金型22とを含んでいる。固定金型22は、固定ダイプレート23に固定されている。移動金型21は、固定金型22に当接または離間する方向(X方向)に移動可能に移動ダイプレート24に取り付けられている。キャビティCは、固定金型22に移動金型21を当接させることにより形成されている。
【0036】
スリーブ3は、プランジャ6をX方向に移動可能に収容するとともに溶湯を注湯可能に構成されている。
【0037】
具体的には、スリーブ3は、注湯口31と、溶湯通路32とを含んでいる。スリーブ3は、筒形状を有している。スリーブ3は、X方向に延びている。注湯口31は、注湯機構4により溶湯を溶湯通路32内に注湯するために設けられている。注湯口31は、スリーブ3のZ1方向側の部分をZ方向に貫通している。溶湯通路32は、スリーブ3をX方向に貫通する貫通孔である。溶湯通路32は、X1方向においてキャビティCに連通している。
【0038】
注湯機構4は、保持炉(図示せず)から液状の金属材料(溶湯)を汲み取って、スリーブ3に供給(注湯)するように構成されている。
【0039】
具体的には、注湯機構4は、ラドル41と、アーム42とを備えている。ラドル41は、保持炉から液状の金属材料を汲み取るように構成されている。アーム42は、スリーブ3の注湯口31までラドル41を移動させるとともに、ラドル41を傾けて溶湯をスリーブ3内に注湯するように構成されている。
【0040】
蓋機構5は、注湯機構4によりスリーブ3内に溶湯を注湯した後、注湯口31を塞ぐように構成されている。
【0041】
具体的には、蓋機構5は、蓋部51と、アーム52とを含んでいる。蓋部51は、Z1方向から視て、注湯口31の形状に沿った形状を有している。蓋部51は、アーム52の先端部に配置されている。アーム52は、蓋部51を注湯口31まで移動させるように構成されている。
【0042】
プランジャ6は、スリーブ3内に注湯された溶湯を射出するように構成されている。
【0043】
具体的には、プランジャ6は、プランジャチップ61と、プランジャロッド62とを有している。プランジャチップ61は、溶湯に接触する部材である。プランジャチップ61は、プランジャロッド62のX1方向側の端部に着脱可能に取り付けられている。プランジャロッド62は、射出装置7において生じた駆動力をプランジャチップ61に伝達する部材である。プランジャロッド62は、X方向に延びる棒形状を有している。プランジャロッド62は、X2方向側の端部において射出装置7に接続されている。
【0044】
(射出装置)
射出装置7は、プランジャ6を移動させることにより、キャビティC内に溶湯を射出するように構成されている。つまり、射出装置7は、プランジャ6をスリーブ3内でX方向に往復移動させるように構成されている。具体的には、
図2に示すように、射出装置7は、アキュムレータ70(Accumulator:ACC)と、ピストン71と、シリンダ72と、タンク73と、位置センサ74と、増圧部75と、加圧部76と、ポンプライン77と、チェック弁78と、切換弁79とを含んでいる。なお、切換弁79は、特許請求の範囲の「切換部」の一例である。ポンプライン77は、特許請求の範囲の「作動油供給源」の一例である。
【0045】
また、射出装置7は、複数の構成のそれぞれを接続する複数の流路を有している。複数の流路は、それぞれ、第1流路91、第2流路92、第3流路93、第4流路94、第5流路95、第6流路96および第7流路97を有している。なお、第4流路94は、特許請求の範囲の「流路」の一例である。
【0046】
第1流路91は、アキュムレータ70とシリンダ72とを接続する流路である。第2流路92は、第1流路91から分岐し、アキュムレータ70と増圧部75とを接続する流路である。第3流路93は、第1流路91に合流し、増圧部75とシリンダ72とを接続する流路である。第4流路94は、ポンプライン77と切換弁79とを接続する流路である。第5流路95は、第4流路94から分岐し、加圧部76と切換弁79とを接続する流路である。第6流路96は、切換弁79とシリンダ72とを接続する流路である。第7流路97は、切換弁79とタンク73とを接続する流路である。
【0047】
アキュムレータ70は、ピストン71をX1方向に移動させるための作動油をシリンダ72に供給するように構成されている。つまり、アキュムレータ70は、油圧源である。
【0048】
ピストン71は、シリンダ72内をX方向に往復移動するように構成されている。具体的には、ピストン71は、ヘッド部71aと、ロッド部71bとを有している。ヘッド部71aは、円柱形状を有している。Z方向において、ヘッド部71aの長さは、ロッド部71bよりも大きい。ヘッド部71aのX1方向側の端部は、ロッド部71bのX2方向側の端部に接続されている。ロッド部71bは、円柱形状を有している。ロッド部71bのX2方向側の端部は、ヘッド部71aのZ1方向における中央部分に接続されている。
【0049】
Z方向において、ヘッド部71aのロッド側室S1側の端面の面積は、ロッド部71bの分だけ、ヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面の面積よりも小さい。
【0050】
ピストン71は、プランジャ6に接続されている。詳細には、ロッド部71bのX1方向側の端部が、プランジャロッド62のX2方向側の端部に取り付けられている。これにより、プランジャ6は、ピストン71のX方向の移動に連動して移動可能に構成されている。
【0051】
シリンダ72は、ピストン71をX1方向に移動させるための作動油およびピストン71をX2方向に移動させるための作動油を流入可能なように構成されている。具体的には、シリンダ72は、ピストン71を内蔵し、ピストン71によりロッド側室S1およびヘッド側室S2に分けられたシリンダ室Sを有している。また、シリンダ72は、第1開口72aと、第2開口72bとを有している。
【0052】
シリンダ室Sは、シリンダ72内に形成された空間である。シリンダ室Sには、シリンダ72に内蔵されたピストン71のヘッド部71aおよびロッド部71bの一部が配置されている。
【0053】
ヘッド側室S2は、シリンダ室Sにおいてピストン71のヘッド部71aよりもX2方向側の空間である。ヘッド側室S2には、アキュムレータ70からの作動油または増圧部75からの作動油が流入する。これにより、ピストン71のヘッド部71aには、ピストン71をX1方向に移動させる前進力が生じる。なお、前進力とは、ヘッド側室S2内の作動油の圧力がピストン71のヘッド部71aにおけるヘッド側室S2側の端面に加えられることにより生じるピストンを前進させる(X1方向に押す)力である。
【0054】
ヘッド側室S2の容積は、ピストン71がX1方向に移動(前進)するに伴って大きくなる。ヘッド側室S2の容積は、ピストン71がX2方向に移動(後退)するに伴って小さくなる。
【0055】
ロッド側室S1は、シリンダ室Sにおいてピストン71のヘッド部71aよりもX1方向側の空間である。ロッド側室S1には、切換弁79からの作動油が流入する。これにより、ピストン71のヘッド部71aには、ピストン71をX2方向に移動させる後退力が生じる。なお、後退力とは、ロッド側室S1内の作動油の圧力がピストン71のヘッド部71aにおけるロッド側室S1側の端面に加えられることにより生じるピストンを後退させる(X2方向に押す)力である。
【0056】
ロッド側室S1の容積は、ピストン71がX1方向に移動(前進)するに伴って小さくなる。ロッド側室S1の容積は、ピストン71がX2方向に移動(後退)するに伴って大きくなる。
【0057】
第1開口72aは、アキュムレータ70または増圧部75とシリンダ72のヘッド側室S2とを接続している。第1開口72aでは、アキュムレータ70からの作動油または増圧部75からの作動油をヘッド側室S2内が流入する。第1開口72aは、シリンダ72のX2方向側の端部に形成されている。第1開口72aは、シリンダ72をX方向に貫通する貫通孔である。第1開口72aは、第1流路91の下流側端部に接続されている。
【0058】
第2開口72bは、シリンダ72のロッド側室S1と切換弁79とを接続している。第2開口72bでは、ロッド側室S1内の作動油が切換弁79に流出しまたは切換弁79からの作動油がロッド側室S1内に流入する。第2開口72bは、シリンダ72のZ2方向側の端部に形成されている。第2開口72bは、X1方向側に配置されている。第2開口72bは、シリンダ72をZ方向に貫通する貫通孔である。第2開口72bは、第6流路96の下流側端部に接続されている。
【0059】
シリンダ72は、シリンダ72内に配置されたピストン71のロッド部71bとシリンダ72外に配置されたプランジャ6とを接続可能に構成されている。具体的には、シリンダ72は、挿通孔72cを有している。挿通孔72cには、ピストン71のロッド部71bが挿通している。挿通孔72cは、シリンダ72のX1方向側の端部に形成されている。挿通孔72cは、シリンダ72をX方向に貫通する貫通孔である。このように、ピストン71のロッド部71bは、シリンダ72からX1方向に突出する部分を有している。
【0060】
タンク73は、シリンダ72のロッド側室S1から排出される作動油を貯留するように構成されている。タンク73は、第6流路96、切換弁79および第7流路97を介して、ロッド側室S1から排出された作動油を貯留している。
【0061】
位置センサ74は、シリンダ72から突出したピストン71のロッド部71bの突出量を検出するように構成されている。位置センサ74は、検出したロッド部71bの突出量に基づいて、間接的にプランジャ6の先端位置を検出するように構成されている。位置センサ74は、制御装置8に電気的に接続されている。
【0062】
増圧部75は、プランジャ6による溶湯の射出が終了される前に、ヘッド側室S2に作動油を供給することによりヘッド側室S2を増圧させるように構成されている。つまり、増圧部75は、キャビティC内に溶湯を充填させた後、ヘッド側室S2内の作動油の圧力を大きく(増圧)し、ピストン71をX1方向にさらに移動させる前進力を発生させる。増圧部75は、第1流路91と開閉弁が配置された第2流路92とを介してアキュムレータ70に接続されている。増圧部75は、第3流路93とチェック弁が配置された第1流路91とを介してヘッド側室S2に接続されている。なお、図示はしないが、増圧部75は、増圧用シリンダおよび増圧用ピストンを有している。
【0063】
〈加圧部〉
加圧部76は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室S1を加圧するように構成されている。つまり、加圧部76は、増圧部75とは別個に設けられ、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室S1を加圧するように構成されている。このように、加圧部76は、メータアウト制御の開始の際、ピストン71をX1方向に制御不能な状態で飛び出さないようにするため、ロッド側室S1内の作動油を加圧して後退力を大きくするように構成されている。
【0064】
具体的には、加圧部76は、加圧用ピストン76aと、加圧用シリンダ76bとを有している。加圧用ピストン76aは、加圧用シリンダ76b内をX方向に往復移動するように構成されている。加圧用ピストン76aは、ヘッド部171と、ロッド部172とを有している。シリンダ72は、ピストン71の全体を内蔵している。加圧用シリンダ76bのX1方向側の端部には、伝達口173が形成されている。伝達口173は、加圧用ピストン76aにより加圧された圧力をロッド側室S1に伝達するように構成されている。伝達口173は、加圧用シリンダ76bをX方向に貫通する貫通孔である。
【0065】
ロッド側室S1内の作動油の圧力は、加圧用ピストン76aをX1方向に移動(前進)させることにより大きくなる。ロッド側室S1内の作動油の圧力は、加圧用ピストン76aをX2方向に移動(後退)させることにより元の圧力に戻る。なお、加圧用ピストン76aは、図示しない油圧源から供給される作動油により、X1方向に移動(前進)する。また、加圧用ピストン76aは、図示しない油圧源から供給される作動油により、X2方向に移動(後退)する。
【0066】
加圧部76は、制御装置8に電気的に接続されている。ここで、制御装置8は、図示しない油圧源から供給される作動油による加圧用ピストン76aの前進および後退を制御するように構成されている。
【0067】
〈ポンプライン〉
ポンプライン77は、ピストン71をX2方向に移動させるための作動油をシリンダ72に供給するように構成されている。つまり、ポンプライン77は、タンク73から作動油を汲み上げるポンプである。ポンプライン77は、第4流路94、切換弁79および第6流路96を介して、ロッド側室S1に作動油を供給する。
【0068】
〈チェック弁〉
チェック弁78は、加圧部76により加圧を行う際、加圧部76により加圧された作動油のポンプライン77への流入を防止するように構成されている。具体的には、チェック弁78は、逆止弁である。チェック弁78は、第4流路94におけるポンプライン77の上流側に配置されている。ここで、チェック弁78は、切換弁79とポンプライン77との間に配置されている。
【0069】
〈切換弁〉
切換弁79は、ロッド側室S1と加圧部76との接続または接続の遮断を切り換えるように構成されている。また、切換弁79は、ロッド側室S1とタンク73との接続または接続の遮断を切り換え可能に構成されている。つまり、切換弁79は、ロッド側室S1と加圧部76との接続と、ロッド側室S1とタンク73との接続と、ロッド側室S1と加圧部76およびタンク73との接続の遮断とを切り換える三方弁である。
【0070】
詳細には、切換弁79は、ロッド側室S1と加圧部76とを接続し、ロッド側室S1とタンク73との接続を遮断する第1接続状態に切り換える。切換弁79は、ロッド側室S1とタンク73とを接続し、ロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断する第2接続状態に切り換える。切換弁79は、ロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともに、ロッド側室S1とタンク73との接続を遮断する第3接続状態に切り換える。このように、ロッド側室S1と加圧部76とは、切換弁79によりロッド側室S1とタンク73とを接続している間、遮断されている。
【0071】
切換弁79は、三方弁としての油圧サーボバルブである。ここで、切換弁79は、第2接続状態において、ロッド側室S1からタンク73に排出される作動油の量を制御する流量制御弁としての機能を有している。また、切換弁79は、第1および第3接続状態において、ロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断する開閉弁としての機能を有している。
【0072】
第1実施形態の切換弁79は、ロッド側室S1内の作動油の圧力を減圧する際、ロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断可能な位置に配置されている。詳細には、切換弁79は、ロッド側室S1と加圧部76との間に配置されている。すなわち、切換弁79は、加圧部76からロッド側室S1に流れる作動油の流れにおいて、加圧部76よりも下流側に配置され、かつ、ロッド側室S1の上流側に配置されている。
【0073】
切換弁79は、制御装置8に電気的に接続されている。
【0074】
(制御装置)
射出装置7は、上記制御装置8を含んでいる。制御装置8は、ダイカストマシン1の各部の駆動を制御するように構成されている。制御装置8は、射出装置7だけでなくダイカストマシン1の各部に電気的に接続されている。制御装置8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部とを含んでいる。
【0075】
記憶部には、ダイカストマシン1の各部の駆動を制御する制御プログラムが格納されている。制御プログラムは、タイマー部81を有する射出処理部8aを有している。制御装置8は、射出処理部8aにより射出装置7の各部を制御する。制御装置8は、タイマー部81により加圧部76を駆動させる。
【0076】
射出処理部8aは、制御装置8により射出装置7の各部を制御することによって、射出工程を行うように構成されている。射出工程は、加圧工程(
図2参照)、低速射出工程(
図3参照)、高速射出工程(
図3参照)、増圧射出工程(
図4参照)および復帰工程(
図5参照)を有している。射出工程では、加圧工程、低速射出工程、高速射出工程、増圧射出工程および復帰工程の順に行われ、復帰工程の後に加圧工程に戻ることにより射出工程が繰り返される。
【0077】
射出処理部8aは、射出装置7の各部を制御するメータアウト制御および加圧制御を有している。メータアウト制御は、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面に生じた前進力を、ピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じた後退力で抑える制御である。加圧制御は、メータアウト制御開始前にロッド側室S1を加圧部76により加圧することによって、メータアウト制御開始時において、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面に生じる前進力とピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じる後退力との差を補う制御である。
【0078】
タイマー部81は、所定時間、加圧部76により一定圧力にロッド側室S1を加圧するように構成されている。なお、所定時間は、加圧部76によるロッド側室S1の加圧によって、ロッド側室S1の作動油に生じる後退力をヘッド側室S2の作動油に生じる前進力に合った圧力にし、ロッド側室S1内の作動油の圧力を保持する時間である。また、所定時間は、制御装置8により管理される。
【0079】
図2~
図5に示すように、制御装置8は、切換弁79により、メータアウト制御と加圧制御とを切り換えて、ピストン71およびピストン71と連動するプランジャ6の移動を制御するように構成されている。
【0080】
〈加圧工程〉
図2に示すように、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76とを接続する制御を行うように構成されている。つまり、制御装置8は、所定タイミングから開始される加圧工程において、加圧部76によりロッド側室S1を加圧する制御を行うように構成されている。
【0081】
具体的には、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76とを接続するとともに、加圧部76によりロッド側室S1を所定時間加圧する制御を行うように構成されている。
【0082】
ここで、制御装置8は、所定タイミングにおいて、切換弁79により、ロッド側室S1とタンク73との接続を遮断するとともにロッド側室S1と加圧部76とを接続するように構成されている。また、制御装置8は、所定タイミングにおいて、タイマー部81により、加圧部76による所定時間の加圧を開始するように構成されている。この際、加圧部76とロッド側室S1とは、連通している。これにより、ロッド側室S1の作動油の圧力は、加圧部76により大きくなる。タンク73とロッド側室S1とは、連通していない。これにより、タンク73には、加圧部76により加圧された作動油が排出されない。
【0083】
制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出の開始時点から逆算することにより所定タイミングを取得するように構成されている。ここで、所定タイミングは、復帰工程の終了時点から低速射出工程開始時点までの時点である。なお、所定タイミングは、復帰工程の終了時点と低速射出工程開始時点との中間時点よりも、低速射出工程開始時点寄りであることが好ましい。ここで、プランジャ6による溶湯の射出の開始時点とは、射出工程のうち低速射出工程(
図3参照)が開始される時点である。
【0084】
所定時間の長さは、所定タイミングからプランジャ6による溶湯の射出の開始時点までの時間に合わせて設定される。なお、所定時間の長さは、所定タイミングからプランジャ6による溶湯の射出の開始時点までの時間と同じでもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。所定時間の長さは、所定タイミングからプランジャ6による溶湯の射出の開始時点までの時間前後であることが好ましい。
【0085】
〈低速射出工程〉
図3に示すように、第1実施形態の制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するように構成されている。つまり、制御装置8は、メータアウト制御が開始される低速射出工程の際、加圧部76によるロッド側室S1の加圧を回避した制御を行うように構成されている。
【0086】
具体的には、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともに、切換弁79によりロッド側室S1とタンク73とを接続する制御を行うように構成されている。すなわち、制御装置8は、ロッド側室S1の減圧が開始される際に、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させないとともに、ロッド側室S1とタンク73とを連通させる制御を行うように構成されている。ここで、ロッド側室S1は、加圧部76とロッド側室S1とを連通させていないので、加圧部76により加圧されない。タンク73とロッド側室S1とは、連通している。これにより、タンク73には、ロッド側室S1内の作動油が排出される。
【0087】
ここで、制御装置8は、メータアウト制御を行うため、切換弁79により、加圧部76とロッド側室S1と接続を遮断した状態で、ロッド側室S1からタンク73への作動油の排出量の制御を行うように構成されている。すなわち、制御装置8は、低速射出工程において、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させることなく、ピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じる後退力を調整してピストン71を前進させる制御を行うように構成されている。ここで、ピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じる後退力は、ロッド側室S1からタンク73へ作動油を排出してロッド側室S1内の圧力を変化させることにより調節されている。
【0088】
〈高速射出工程〉
図3に示すように、低速射出工程と同様に、制御装置8は、メータアウト制御が行われる高速射出工程の際、切換弁79により加圧部76とロッド側室S1との接続を遮断する制御を行うように構成されている。つまり、制御装置8は、高速射出工程において、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させることなく、ロッド側室S1内の作動油をタンク73に排出することによりロッド側室S1内の圧力を調整してピストン71を前進させる制御を行うように構成されている。
【0089】
ここで、高速射出工程におけるピストン71の前進速度は、低速射出工程におけるピストン71の前進速度よりも大きい。また、制御装置8は、位置センサ74により間接的に検出されるプランジャ6の先端位置に基づいて、高速射出工程の開始を判断するように構成されている。
【0090】
〈増圧射出工程〉
図4に示すように、低速射出工程と同様に、制御装置8は、メータアウト制御が行われる増圧射出工程の際、切換弁79により加圧部76とロッド側室S1との接続を遮断する制御を行うように構成されている。つまり、制御装置8は、増圧射出工程において、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させることなく、ロッド側室S1内の作動油をタンク73に排出することによりロッド側室S1内の圧力を調整してピストン71を前進させる制御を行うように構成されているように構成されている。
【0091】
ここで、ヘッド側室S2に供給される作動油は、増圧部75から供給される作動油である。増圧部75から供給される作動油の圧力は、アキュムレータ70から供給される作動油の圧力よりも大きい。また、制御装置8は、位置センサ74により間接的に検出されるプランジャ6の先端位置に基づいて、増圧射出工程の開始を判断するように構成されている。
【0092】
〈復帰工程〉
図5に示すように、制御装置8は、復帰工程の際、切換弁79によりポンプライン77とロッド側室S1とを接続させる制御を行うように構成されている。つまり、制御装置8は、復帰工程において、ロッド側室S1とタンク73とを連通させることなく、ポンプライン77の作動油をロッド側室S1に供給することによりピストン71を後退させて復帰位置に戻す制御を行うように構成されている。
【0093】
ここで、制御装置8は、位置センサ74により間接的に検出されるプランジャ6の先端位置に基づいて、ピストン71の復帰位置を判断するように構成されている。
【0094】
(射出処理)
以下に、射出処理について
図6を参照して説明する。射出処理は、ピストン71に連動するプランジャ6により金型2のキャビティC内に溶湯を射出する処理である。
【0095】
まず、ステップS1~ステップS3は、ロッド側室S1を事前に加圧する加圧工程を行うためのステップである。
【0096】
ステップS1において、制御装置8により、所定タイミングか否かが判断される。つまり、ロッド側室S1の加圧を開始するか否かが判断される。所定タイミングである場合にはステップS2に進み、所定タイミングではない場合にはステップS1を繰り返す。ステップS2において、制御装置8により、加圧部76によるロッド側室S1の加圧が行われる。つまり、タイマー部81により、ロッド側室S1の加圧が所定時間行われる。これにより、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面に生じる前進力と、ピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に後退力とが釣り合う。
【0097】
ステップS3において、制御装置8により、所定時間経過したか否かが判断される。所定時間経過した場合にはステップS4に進み、所定時間経過していない場合にはステップS3を繰り返す。
【0098】
ステップS4およびステップS5は、プランジャ6を低速で移動させて溶湯を射出する低速射出工程を行うためのステップである。
【0099】
ステップS4において、制御装置8により、加圧部76による加圧が遮断される。つまり、制御装置8により切換弁79を切り換えることによって、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させることなく、ロッド側室S1とタンク73とを連通させる。ステップS5において、制御装置8により、低速射出が開始される。ここで、低速射出工程において、メータアウト制御により、ピストン71が前進される。
【0100】
ステップS6およびステップS7は、プランジャ6を高速で移動させて溶湯を射出する高速射出工程を行うためのステップである。
【0101】
ステップS6において、制御装置8により、高速射出開始位置か否かが判断される。高速射出開始位置である場合にはステップS7に進み、高速射出開始位置ではない場合にはステップS6を繰り返す。ステップS7において、制御装置8により、高速射出が開始される。ここで、高速射出工程において、メータアウト制御により、ピストン71が前進される。
【0102】
ステップS8~ステップS10は、増圧部75によりヘッド側室S2を増圧した状態で、プランジャ6により溶湯を射出する増圧射出工程を行うためのステップである。
【0103】
ステップS8において、制御装置8により、増圧射出開始位置か否かが判断される。増圧射出開始位置である場合にはステップS9に進み、増圧開始位置ではない場合にはステップS8を繰り返す。ステップS9において、制御装置8により、増圧射出が開始される。ここで、増圧射出工程において、メータアウト制御により、ピストン71が前進される。
【0104】
ステップS10において、制御装置8により、射出終了位置か否かが判断される。つまり、制御装置8により、プランジャ6の射出を終了するか否かが判断される。射出終了位置である場合にはステップS11に進み、射出終了位置ではない場合にはステップS10を繰り返す。
【0105】
ステップS11およびステップS12は、プランジャ6を復帰位置(初期位置)に戻す復帰工程を行うためのステップである。
【0106】
ステップS11において、制御装置8により、ピストン71が後退する。つまり、ピストン71と連動するプランジャ6は、ロッド側室S1にポンプライン77から作動油を供給してピストン71を後退させることにより後退する。ステップS12において、制御装置8により、復帰位置か否かが判断される。復帰位置である場合にはステップS1に戻り、復帰位置ではない場合にはステップS12を繰り返す。この際、ロッド側室S1内の作動油の圧力は、ポンプライン77の作動油の圧力になる。
【0107】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の効果について説明する。
【0108】
第1実施形態では、上記のように、射出装置7に、ロッド側室S1と加圧部76との接続または接続の遮断を切り換える切換弁79を設ける。そして、切換弁79を、ロッド側室S1と加圧部76との間に配置する。これにより、メータアウト制御を行う際、ロッド側室S1内の作動油を排出してロッド側室S1内の圧力を小さくした場合に、ロッド側室S1と加圧部76との接続を切換弁79により遮断することにより、加圧部76によりロッド側室S1を加圧されないようにすることができる。したがって、メータアウト制御を行う際、ロッド側室S1に供給された作動油を排出することによりロッド側室S1の圧力を小さくしたとした場合に、加圧部76によりロッド側室S1が加圧されることを回避することができる。この結果、メータアウト制御を行う際、ロッド側室S1内の圧力変化が不安定になることを防止することができるので、メータアウト制御においてピストン71を安定して前進させることができる。また、メータアウト制御においてピストン71を安定して前進させることができることにより、プランジャ6を安定して前進させることできるので、溶湯の射出を安定させることができる。また、ロッド側室S1の作動油の圧力が加圧部76よりも大きくなった場合でも、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断することにより、ロッド側室S1の作動油による加圧部76への逆流を防止することができる。
【0109】
また、第1実施形態では、上記のように、射出装置7に、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断する制御を行う制御装置8を設ける。これにより、メータアウト制御によりプランジャ6による溶湯の射出を行う場合、プランジャ6による溶湯の射出の開始から、加圧部76によりロッド側室S1が加圧されることを回避することができる。したがって、プランジャ6による溶湯の射出を行っている間、ロッド側室S1内の作動油の圧力が加圧部76により不安定になることを防止することができる。この結果、プランジャ6による溶湯の射出を行っている間、ピストン71を安定して前進させることによって、溶湯の射出を安定させることができる。
【0110】
また、第1実施形態では、上記のように、射出装置7に、ロッド側室S1内の作動油が排出されるタンク73を設ける。制御装置8を、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともに、切換弁79によりロッド側室S1とタンク73とを接続する制御を行うように構成する。これにより、メータアウト制御を行っている間、ロッド側室S1と加圧部76との接続を切換弁79により遮断することにより、加圧部76によりロッド側室S1を確実に加圧されないようにすることができる。この結果、メータアウト制御を行っている間、ロッド側室S1内の作動油の圧力が加圧部76により不安定になることを防止することができる。また、ヘッド側室S2内の作動油の前進力のみを制御してピストン71を前進させるメータイン制御を行う場合と異なり、メータアウト制御ではヘッド側室S2内の作動油に生じた前進力をロッド側室S1内の作動油に生じた後退力で抑えることができる。したがって、前進力を緻密に制御しなければ、ピストン71が制御不能な状態で前進する(飛び出す)メータイン制御とは異なり、メータアウト制御では前進力を緻密に制御する必要がない。この結果、前進力を緻密に調整するために必要となる複数のバルブを、シリンダ72のヘッド側室S2の上流側に設ける必要がないので、射出装置7の部品点数の増加を抑制することができる。
【0111】
また、第1実施形態では、上記のように、制御装置8を、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76とを接続する制御を行うように構成する。これにより、所定タイミングにおいてロッド側室S1の作動油の圧力を加圧部76により加圧することができる。ここで、Z方向において、ピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面の面積は、ピストン71のロッド部71bの分だけ、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面の面積よりも小さい。したがって、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の面積とピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の面積との比に起因するピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面に生じる前進力とピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じる後退力との差を加圧部76により補うことができる。この結果、メータアウト制御を行う際、前進力と後退力とが釣り合う位置まで、ピストン71が制御不能な状態で前進することを抑制することができる。
【0112】
また、第1実施形態では、上記のように、制御装置8を、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76とを接続するとともに、加圧部76によりロッド側室S1を所定時間加圧する制御を行うように構成する。これにより、加圧部76の加圧によりロッド側室S1の作動油の圧力を所望の圧力に確実に到達させることができるので、ピストン71のヘッド部71aのヘッド側室S2側の端面に生じる前進力とピストン71のヘッド部71aのロッド側室S1側の端面に生じる後退力との差を加圧部76により確実に補うことができる。また、所定時間経過後に加圧部76による加圧が停止されるので、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76との接続が遮断されない場合でも、ロッド側室S1内の圧力が加圧部76により不安定になることを抑制することができる。
【0113】
また、第1実施形態では、上記のように、切換弁79を、ロッド側室S1と加圧部76との接続と、ロッド側室S1とタンク73との接続と、ロッド側室S1と加圧部76およびタンク73との接続の遮断とを切り換えるように構成する。これにより、単一の切換弁79により、ロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともにロッド側室S1とタンク73とを接続させることができるので、射出装置7の部品点数の増加を抑制することができるとともに射出装置7の構成が複雑になることを抑制することができる。
【0114】
また、第1実施形態では、上記のように、加圧部76を、増圧部75とは別個に設ける。加圧部76を、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室S1を加圧するように構成する。これにより、増圧部75によりロッド側室S1を加圧するために増圧部75と切換弁79とを接続する場合と比較して、加圧部76を切換弁79の近くに配置することができるので、加圧部76と切換弁79とを容易に接続することができる。
【0115】
また、第1実施形態では、上記のように、射出装置7に、第4流路94におけるポンプライン77の上流側に配置されるチェック弁78を設ける。これにより、加圧部76により加圧された作動油が第4流路94を介してポンプライン77に流れることを防止することができるので、加圧部76からロッド側室S1へ作動油を確実に供給することができる。
【0116】
[第2実施形態]
次に、
図7および
図8を参照して、本発明の第2実施形態による射出装置207の構成について説明する。第2実施形態では、三方弁である切換弁79を用いた上記第1実施形態とは異なり、二方弁である第1切換弁279aおよび第2切換弁279bを用いた例について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0117】
(射出装置)
第2実施形態の射出装置207は、
図7に示すように、アキュムレータ70(ACC)と、ピストン71と、シリンダ72と、タンク73と、位置センサ74と、増圧部75と、加圧部76と、ポンプライン77と、チェック弁78と、第1切換弁279aおよ第2切換弁279bとを含んでいる。なお、第1切換弁279aおよび第2切換弁279bは、各々、特許請求の範囲の「切換部」の一例である。ポンプライン77は、特許請求の範囲の「作動油供給源」の一例である。
【0118】
また、射出装置207は、複数の構成のそれぞれを接続する複数の流路を有している。複数の流路は、それぞれ、第1流路91、第2流路92、第3流路93、第4流路294、第5流路295、第6流路296、第7流路297および第8流路298を有している。なお、第4流路294は、特許請求の範囲の「流路」の一例である。
【0119】
第1流路91は、アキュムレータ70とシリンダ72とを接続する流路である。第2流路92は、第1流路91から分岐し、アキュムレータ70と増圧部75とを接続する流路である。第3流路93は、第1流路91に合流し、増圧部75とシリンダ72とを接続する流路である。第4流路294は、ポンプライン77と第1切換弁279aとを接続する流路である。第5流路295は、第4流路294から分岐し、加圧部76と切換弁79とを接続する流路である。第6流路296は、第1切換弁279aと第7流路297とを接続する流路である。第7流路297は、第2切換弁279bとシリンダ72とを接続する流路である。第8流路298は、第2切換弁279bとタンク73とを接続する流路である。
【0120】
〈第1切換弁および第2切換弁〉
第1切換弁279aは、ロッド側室S1と加圧部76との接続または接続の遮断を切り換えるように構成されている。第2切換弁279bは、ロッド側室S1とタンク73との接続または接続の遮断を切り換えるように構成されている。つまり、第1切換弁279aおよび第2切換弁279bは、各々、二方弁である。第1切換弁279aおよび第2切換弁279bは、各々、油圧サーボバルブ(電磁油圧切換弁)である。
【0121】
(制御装置)
第2実施形態の制御装置8は、第1切換弁279aと第2切換弁279bとを同期させて切り換える制御を行うように構成されている。すなわち、制御装置8は、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76と接続するとともに、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73との接続を遮断する制御を行うように構成されている。また、制御装置8は、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともに、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73とを接続する制御を行うように構成されている。
【0122】
〈加圧工程〉
図7に示すように、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76とを接続する制御を行うように構成されている。
【0123】
具体的には、制御装置8は、所定タイミングにおいて、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73との接続を遮断するとともに、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76とを接続するように構成されている。また、制御装置8は、所定タイミングにおいて、タイマー部81により、加圧部76により加圧された作動油の所定時間の供給を開始するように構成されている。
【0124】
〈低速射出工程〉
図8に示すように、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するように構成されている。つまり、制御装置8は、メータアウト制御が開始される低速射出工程の際、加圧部76によりロッド側室S1を加圧できない制御を行うように構成されている。
【0125】
具体的には、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断するとともに、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73とを接続する制御を行うように構成されている。すなわち、制御装置8は、ロッド側室S1の減圧が開始される際に、ロッド側室S1と加圧部76とを連通させないとともに、ロッド側室S1とタンク73とを連通させる制御を行うように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0126】
高速射出工程および増圧射出工程については、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76との接続を遮断し、かつ、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73とを接続した状態で、第1実施形態と同様の工程を行うので説明を省略する。また、復帰工程についても、第1切換弁279aによりロッド側室S1と加圧部76とを接続し、かつ、第2切換弁279bによりロッド側室S1とタンク73との接続を遮断した状態で、第1実施形態と同様の工程を行うので説明を省略する。
【0127】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の効果について説明する。
【0128】
第2実施形態では、上記のように、射出装置207に、ロッド側室S1と加圧部76との接続または接続の遮断を切り換える切換弁79を設ける。切換弁79を、ロッド側室S1と加圧部76との間に配置する。これにより、メータアウト制御においてピストン71を安定して前進させることができる。
【0129】
また、第2実施形態では、上記のように、切換弁79に、ロッド側室S1と加圧部76との接続および接続の遮断を切り換える第1切換弁279aと、ロッド側室S1とタンク73との接続および接続の遮断を切り換える第2切換弁279bとを設ける。制御装置8を、第1切換弁279aと第2切換弁279bとを同期させて切り換える制御を行うように構成する。これにより、単一の切換弁を用いる場合において単一の切換弁に必要とされる機能を、第1切換弁279aと第2切換弁279bとに分けることができるので、射出装置207の切換弁の構造の複雑化を抑制することができる。この結果、メータアウト制御においてピストン71を安定して前進させることができるとともに、射出装置207の切換弁の構造の複雑化を抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0130】
[第3実施形態]
次に、
図1および
図9を参照して、本発明の第3実施形態による射出装置307の構成について説明する。第3実施形態では、増圧部75とは別個の加圧部76を用いた上記第1実施形態とは異なり、増圧部375によりロッド側室S1を加圧する例について説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0131】
(射出装置)
図9に示すように、第3実施形態の射出装置307は、アキュムレータ70(ACC)と、ピストン71と、シリンダ72と、タンク73と、位置センサ74と、増圧部375と、ポンプライン77と、チェック弁78と、切換弁79とを含んでいる。なお、切換弁79は、特許請求の範囲の「切換部」の一例である。ポンプライン77は、特許請求の範囲の「作動油供給源」の一例である。増圧部375は、特許請求の範囲の「加圧部」の一例である。
【0132】
制御装置308は、ダイカストマシン301(
図1参照)の各部の駆動を制御する制御プログラムが格納された記憶部を含んでいる。制御プログラムは、射出処理部308aを有している。制御装置308は、射出処理部308aにより射出装置307の各部を制御する。
【0133】
また、射出装置307は、複数の構成のそれぞれを接続する複数の流路を有している。複数の流路は、それぞれ、第1流路91、第2流路92、第3流路93、第4流路94、第5流路395、第6流路96および第7流路97を有している。なお、第4流路94は、特許請求の範囲の「流路」の一例である。
【0134】
第1流路91は、アキュムレータ70とシリンダ72とを接続する流路である。第2流路92は、第1流路91から分岐し、アキュムレータ70と増圧部375とを接続する流路である。第3流路93は、第1流路91に合流し、増圧部375とシリンダ72とを接続する流路である。第4流路94は、ポンプライン77と切換弁79とを接続する流路である。第5流路395は、増圧部375と第4流路94とを接続する流路である。第6流路96は、切換弁79とシリンダ72とを接続する流路である。第7流路97は、切換弁79とタンク73とを接続する流路である。
【0135】
増圧部375は、プランジャ6による溶湯の射出が終了される前に、ヘッド側室S2に作動油を供給することによりヘッド側室S2を増圧させるように構成されている。増圧部375は、第1流路91と第2流路92とを介してアキュムレータ70に接続されている。増圧部375は、第3流路93と第1流路91とを介してヘッド側室S2に接続されている。
【0136】
また、第3実施形態の増圧部375は、第1実施形態の加圧部76を兼ねて設けられ、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室S1を加圧可能に構成されている。具体的には、増圧部375は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前に、ロッド側室S1を加圧するように構成されている。
【0137】
〈加圧工程〉
図9に示すように、制御装置8は、プランジャ6による溶湯の射出が開始される前の所定タイミングで、切換弁79によりロッド側室S1と加圧部76とを接続する制御を行うように構成されている。つまり、制御装置8は、所定タイミングから開始される加圧工程において、増圧部375によりロッド側室S1を加圧する制御を行うように構成されている。
【0138】
低速射出工程、高速射出工程、増圧射出工程および復帰工程については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0139】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態の効果について説明する。
【0140】
第3実施形態では、上記のように、射出装置307に、ロッド側室S1と加圧部76との接続または接続の遮断を切り換える切換弁79を設ける。切換弁79を、ロッド側室S1と加圧部76との間に配置する。これにより、メータアウト制御においてピストン71を安定して前進させることができる。
【0141】
また、第3実施形態では、上記のように、増圧部375を、第1実施形態の加圧部76を兼ねて設ける。増圧部375を、プランジャ6による溶湯の射出が開始される際に、ロッド側室S1を加圧可能に構成する。これにより、増圧部と加圧部とを別個に設ける場合と比較して、部品点数の増加を抑制することができるので、射出装置307の構成が複雑になることを抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0142】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0143】
たとえば、上記第1および第3実施形態では、切換弁79(切換部)は、ロッド側室S1と加圧部76(増圧部375)との接続と、ロッド側室S1とタンク73との接続と、ロッド側室S1と加圧部76(増圧部375)およびタンク73との接続の遮断とを切り換える三方弁である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロッド側室と加圧部との接続と、ロッド側室とポンプラインとの接続と、ロッド側室とタンクとの接続と、ロッド側室と加圧部、タンクおよびポンプラインとの接続の遮断という4つの接続状態を切り換える四方弁などであってもよい。
【0144】
また、第1および第3実施形態では、切換弁79は、油圧サーボバルブ(電磁油圧切換弁)である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、切換弁は、電動サーボバルブなどの他の形式の流量制御弁であってもよい。
【0145】
また、第2実施形態では、第1切換弁279aは、油圧サーボバルブ(電磁油圧切換弁)である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1切換弁は、開閉のみの機能を有する電磁弁であってもよい。
【0146】
また、上記第1~第3実施形態では、ダイカストマシン1(301)を横型に構成した例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンを縦型に構成してもよい。
【0147】
また、上記第1~第3実施形態では、制御装置8(308、制御部)は、位置センサ74により検出されるプランジャ6の先端位置に基づいて、低速射出工程、高速射出工程、増圧射出工程および復帰工程の開始を判断するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、位置センサ以外のセンサにより検出される情報に基づいて、低速射出工程、高速射出工程、増圧射出工程および復帰工程の開始を判断するように構成されてもよい。
【0148】
また、上記第1および第2実施形態では、制御装置8(制御部)は、タイマー部81により加圧部76を駆動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、タイマー部を用いることなく射出処理部により加圧部を駆動させてもよい。
【0149】
また、上記第1実施形態では、説明の便宜上、制御装置8(制御部)の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 ダイカストマシン
6 プランジャ
7、207、307 射出装置
8、308 制御装置(制御部)
71 ピストン
72 シリンダ
73 タンク
75、375 増圧部
76 加圧部
77 ポンプライン(作動油供給源)
78 チェック弁
79 切換弁(切換部)
94 第4流路(流路)
279a 第1切換弁(切換部)
279b 第2切換弁(切換部)
S シリンダ室
S1 ロッド側室
S2 ヘッド側室