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特許7294831装飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋の製造方法
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  • 特許-装飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】装飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/44 20060101AFI20230613BHJP
   B65D 41/32 20060101ALI20230613BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B21D51/44 C
B65D41/32
B21D51/44 H
B21D22/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019038798
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020142249
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】市村 克仁
(72)【発明者】
【氏名】福士 誠司
(72)【発明者】
【氏名】見山 雄紀
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174266(JP,A)
【文献】特開2001-199460(JP,A)
【文献】特開2017-154809(JP,A)
【文献】特開平08-309464(JP,A)
【文献】実開昭62-072943(JP,U)
【文献】実開昭48-072253(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/44
B65D 41/32
B21D 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁、該天面壁の周縁から垂下するスカート壁、及び該スカート壁の下端から延出する延出片を含み、該天面壁には文字及び/又は図形から構成された装飾エンボスが配設されており、該天面壁及び該スカート壁には該延出片の両側から該スカート壁を上方に延び次いで該天面壁の周縁領域乃至該天面壁と該スカート壁との境界領域を弧状に延びる一対のスコアが形成されている金属製シェルを備えた容器蓋を製造する方法にして、
金属薄板の所定位置に該装飾エンボスを形成するエンボス形成工程、
該エンボス形成工程の後に、該金属薄板の所定位置に該一対のスコアを形成するスコア形成工程、及び
該スコア形成工程の後に、該金属薄板に打抜加工及び絞り加工を加えて該シェルを完成する打抜及び絞り工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該容器蓋は該シェルの該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーを備え、
該打抜及び絞り工程の後に、該天面壁の内面に該ライナーを形成するライナー形成工程を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
該容器蓋は延出片に連結された合成樹脂製把持リングを備え、
該ライナー形成工程の後に或いは該打抜及び絞り工程の後で且つ該ライナー形成工程の前に、該把持リングを形成するリング形成工程を含む、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
該エンボス形成工程においては、該金属薄板における該天面壁の外面を規定する部位に凹部を形成することによって該装飾エンボスを形成する、
請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該ライナーは中央部と周縁シール部とを有し、
該エンボス形成工程においては、該金属薄板における該天面壁の外面を規定する部位で、該一対のスコアよりも内側の領域で且つ該ライナーの該中央部に対応する部位に該ライナーの該中央部の厚さよりも小さい深さを有する凹部を形成することによって該装飾エンボスを形成する、
請求項2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天面壁には文字及び/又は図形から構成された装飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋の製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2に開示されている如く、清涼飲料或いはアルコール飲料のためのガラス、合成樹脂或いは金属から形成された容器のための易開封性容器蓋として、円形天面壁、この天面壁の周縁から垂下するスカート壁、及びスカート壁の下端から延出する延出片を含み、天面壁及びスカート壁には延出片の両側からスカート壁を上方に延び次いで天面壁の周縁領域乃至天面壁とスカート壁との境界領域を弧状に延びる一対のスコアが形成されている金属製シェルを備えた容器蓋が広く実用に供されている。下記特許文献2に開示されているとおり、通常、天面壁の内面には合成樹脂製ライナーが配設され、そしてまた延出片には合成樹脂製把持リングが連結されている。下記特許文献2には、更に、上記のとおりの容器蓋の製造方法として、金属薄板の所定部位に一対のスコアを形成し、次いで金属薄板に打抜加工及び絞り加工を加えて金属製シェルを完成し、しかる後に金属製シェルの延出片を所謂中子としてインサート成形することによって合成樹脂製把持リングを形成すると共に延出片に連結し、そして更に金属製シェルの天面壁の内面に合成樹脂製ライナーを形成することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭64-53724号公報
【文献】特開2011-173594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、近時においては、容器蓋の外観を一層魅力的なものにするために、そしてまた偽造製品のための容器蓋の偽造を防止するために、金属製シェルの天面壁に文字及び/又は図形から構成された装飾エンボス(即ち装飾のための凹部及び/又は凸部)を形成することが要請されている。しかしながら、かかる要請に応じて金属製シェルの天面壁に装飾エンボスを形成することは必ずしも容易ではなく、(1)装飾エンボスの形成に起因してスコアが虐待されて劣化されてしまう(即ち、部分的に破断され或いは過剰に弱化されてしまう)、(2)形成された装飾エンボスが合成樹脂製ライナーの形成の際に或いは容器蓋の搬送の際に損傷されてしまう、(3)装飾エンボスの存在に起因して合成樹脂製ライナーの密封特性が劣化されてしまう、等の問題を解決することが重要である。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、金属製シェルの天面壁に、スコアを虐待して劣化せしめることなく、所要の装飾エンボスを形成することができる、天面壁には文字及び/又は図形から構成された修飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋を製造する新規且つ改良された方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の解決に加えて、金属製シェルの天面壁に形成された装飾エンボスが合成樹脂製ライナーの形成の際に損傷されることがない、天面壁には文字及び/又は図形から構成された修飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋を製造する新規且つ改良された方法を提供することである。
【0007】
本発明の更に他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の解決に加えて、装飾エンボスの存在に起因して合成樹脂製ライナーの密封特性が劣化されることがない、天面壁には文字及び/又は図形から構成された修飾エンボスが配設されている金属製シェルを備えた容器蓋を製造する新規且つ改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、金属薄板の所定位置に装飾エンボスを形成した後に金属薄板の所定位置に一対のスコアを形成し、しかる後に金属薄板に打抜加工及び絞り加工を加えて金属製シェルを完成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
加えて、金属薄板における天面壁の外面を規定する部位に凸部ではなく凹部を形成することによって装飾エンボスを形成することによって、上記他の技術的課題を達成することができること、そしてまたライナーは中央部と周縁シール部とを有する形態である場合、金属薄板における天面壁の外面を規定する部位で且つライナーの中央部に対応する部位にライナーの中央部の厚さよりも小さい深さを有する凹部を形成することによって装飾エンボスを形成することによって上記更に他の技術的課題を達成することができること、を見出した。
【0010】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する方法として、
円形天面壁、該天面壁の周縁から垂下するスカート壁、及び該スカート壁の下端から延出する延出片を含み、該天面壁には文字及び/又は図形から構成された装飾エンボスが配設されており、該天面壁及び該スカート壁には該延出片の両側から該スカート壁を上方に延び次いで該天面壁の周縁領域乃至該天面壁と該スカート壁との境界領域を弧状に延びる一対のスコアが形成されている金属製シェルを備えた容器蓋を製造する方法にして、
金属薄板の所定位置に該装飾エンボスを形成するエンボス形成工程、
該エンボス形成工程の後に、該金属薄板の所定位置に該一対のスコアを形成するスコア形成工程、及び
該スコア形成工程の後に、該金属薄板に打抜加工及び絞り加工を加えて該シェルを完成する打抜及び絞り工程、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0011】
該容器蓋は該シェルの該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーを備え、該打抜及び絞り工程の後に、該天面壁の内面に該ライナーを形成するライナー形成工程を含むのが好都合である。好適形態においては、該容器蓋は延出片に連結された合成樹脂製把持リングを備え、該ライナー形成工程の後に或いは該打抜及び絞り工程の後で且つ該ライナー形成工程の前に、該把持リングを形成するリング形成工程を含む。上記他の技術的課題は、該エンボス形成工程においては、該金属薄板における該天面壁の外面を規定する部位に凹部を形成することによって該装飾エンボスを形成することによって達成される。上記更に他の技術的課題は、該ライナーは中央部と周縁シール部とを有し、該エンボス形成工程においては、該金属薄板における該天面壁の外面を規定する部位で且つ該ライナーの該中央部に対応する部位に該ライナーの該中央部の厚さよりも小さい深さを有する凹部を形成することによって該装飾エンボスを形成することによって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法においては、金属薄板の所定位置に装飾エンボスを形成した後に金属薄板の所定位置に一対のスコアを形成する故に、金属製シェルの天面壁に、スコアを虐待して劣化せしめることなく、所要の装飾エンボスを形成することができる。
【0013】
更に、金属薄板における天面壁の外面を規定する部位に凹部を形成することによって装飾エンボスを形成する故に、金属製シェルの天面壁に形成された装飾エンボスが合成樹脂製ライナーの形成の際に或いは容器蓋の搬送の際に損傷されることがない(金属薄板における天面壁の外面を規定する部位に凸部を形成することによって装飾エンボスを形成する場合には、合成樹脂製ライナーを形成する際に装飾エンボスを規定する凸部が天面壁を支持する基台に押圧され、或いは容器蓋の搬送の際に装飾エンボスを規定する凸部が搬送ガイドを擦り、装飾エンボスが損傷される虞がある)。更にまた、ライナーは中央部と周縁シール部とを有する場合、エンボス形成工程においては、金属薄板における天面壁の外面を規定する部位で且つライナーの中央部に対応する部位に該ライナーの該中央部の厚さよりも小さい深さを有する凹部を形成することによって装飾エンボスを形成する故に、ライナーの周縁シール部が装飾エンボスの形成によって悪影響を受けて合成樹脂製ライナーの密封特性が劣化されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の方法によって製造された容器蓋の典型例を示す平面図。
図2図1の線II-IIに沿った断面図。
図3図1の線III-IIIに沿った断面図。
図4】本発明の方法の好適実施形態における孔形成工程を説明するための簡略図。
図5】本発明の方法の好適実施形態におけるエンボス形成工程を説明するための簡略図。
図6】本発明の方法の好適実施形態におけるスコア形成工程を説明するための簡略図。
図7】本発明の方法の好適実施形態における打抜及び絞り工程を説明するための簡略図。
図8】本発明の方法の好適実施形態におけるライナー形成工程を説明するための簡略図。
図9】本発明の方法の好適実施形態における把持リング形成工程を説明するための簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の方法の好適実施形態について詳述する。
【0016】
最初に、図1乃至図3を参照して本発明の方法によって製造される容器蓋の典型例について説明する。全体を番号2で示す容器蓋は、アルミニウム基合金薄板、クロム酸処理鋼薄板或いはブリキ薄板の如く適宜の金属薄板から形成された金属製シェル4を含んでいる。かかるシェル4は円形天面壁6、天面壁6の周縁から垂下するスカート壁8及び周方向における特定部位においてスカート壁6の下端から延出する延出片10(図7を参照されたい)を含んでいる。延出片10の周方向両側においてスカート壁8の下端部には略三角形状の切欠12a及び12bが形成されている。シェル4には、更に、一対のスコア14a及び14bも形成されている。スコア14a及び14bの各々は、夫々、切欠12a及び12bから(即ち延出片10の両側から)スカート壁8を上方に延び、次いで天面壁6の周縁領域乃至天面壁6とスカート壁8との境界領域を弧状に延びる。スコア14a及び14bは、シェル4の外面側に工具を作用させて肉厚を局部的低減せしめることによって形成することもできるが、シェル4の内面側に工具を作用させて(従ってシェル4の内面側に溝を形成することによって)肉厚を局部的に低減せしめることによって形成されているのが好都合である。延出片10の先端部には一対の孔16が形成されている(図7を参照されたい)。
【0017】
上記シェル4の天面壁6の内面には、軟質ポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から形成された合成樹脂製ライナー18が配設されている。全体として円板形状であるライナー18は比較的肉薄の中央部20と比較的肉厚の周縁シール部22とを有する。周縁シール部22には下方に突出する一対の環状シール、即ち内側環状シール24と外側環状シール26が形成されている。上記延出片10の先端部にはポリプロピレン又はポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から形成されている把持リング28が接続されている。所望ならば、合成樹脂製把持リング28の形成を省略して、金属製シェル4の延出片10自体を所要寸法を有する把持リング形状にすることもできる。
【0018】
図示の容器蓋2における上述したとおりの構成は当業者には周知であるので、それらの詳細についての説明は省略する。
【0019】
而して、本発明の方法によって製造された容器蓋2においては、シェル4の天面壁6には、更に詳しくはシェル4の天面壁6における上記一対のスコア14a及び14bよりも内側の領域には、文字及び/又は図形から構成された装飾エンボス(装飾のための凹部及び/又は凸部)30が配設されている。図示の実施形態においては、装飾エンボス30は天面壁6の外面にN字状の凹部から構成されている。装飾エンボス30を構成する凹部の外縁は、図2を参照することによって明確に理解されるとおり、成形の容易性及び装飾性の向上等の点からシェル4の中心軸線に対して30乃至60度の角度αで傾斜しているのが好ましい。また、装飾エンボス30の形成に起因して合成樹脂製ライナー18による容器口頸部の密封効果が毀損されるのを確実に回避するために、装飾エンボス30を規定する凹部は天面壁6における合成樹脂製ライナー18における周縁シール部22の内側に位置する中央部20に対応する部位に形成されており、そして凹部の深さdは合成樹脂製ライナー18の中央部20の厚さtよりも小さいことが好ましい。天面壁6の外面に形成された凸部から装飾エンボスを構成することもできるが、かくすると、後に更に言及する如く、天面壁6の内面に合成樹脂製ライナー18を形成する際に装飾エンボス30が損傷されてしまう虞がある。
【0020】
次に、上記のとおりの容器蓋2を製造する本発明の方法の好適実施形態について説明する。
【0021】
孔形成工程
図4を参照して説明すると、先ず、シェル4を形成するための金属薄板32を準備する。この金属薄板32はアルミニウム基合金薄板、クロム酸処理鋼薄板或いはブリキ薄板でよく、アルミニウム基合金薄板の場合には厚さが0.15乃至0.25mm程度であるのが望ましい。金属薄板32の表面及び裏面には、それら自体は周知の適宜の保護被膜乃至着色塗装を施すことができる。図示の実施形態においては、金属薄板32の所要部位に一対の孔16を形成する。所望ならば、かかる孔16の形成は、後述するエンボス形成工程よりも後で打抜及び絞り工程よりも前の適宜の時点で遂行することもできる。
【0022】
エンボス形成工程
次いで、図5に図示する如く、金属薄板32の所定位置に装飾エンボス30を構成する凹部(及び/又は凸部)を形成する。装飾エンボス30が凹部から構成されている場合には、支持基盤(図示していない)上に載置された金属薄板32の表面に、凹部に対応した先端形状を有する加工具を作用せしめて凹部を形成することができる。
【0023】
スコア形成工程
しかる後に、図6に図示する如く、金属薄板32の所定位置に一対のスコア14a及び14bを形成する。かかるスコア14a及び14bの形成は、金属薄板32の裏面(内側面)又は表面(外側面)に工具を作用せしめて溝を形成することによって遂行することができるが、金属薄板32の裏面(内側面)に工具を作用せしめて金属製シェル4の天面壁6の内側面に溝を形成して厚さを局部的に低減することによって規定するのが好都合である。而して、本発明の方法においては、スコア形成工程は上記エンボス形成工程の後で且つ後述する打抜及び絞り工程よりも前に遂行することが重要である。本発明者等の経験によれば、スコア14a及び14bを形成した後にエンボス形成工程を遂行する場合には、装飾エンボス30を構成する凹部(及び/又は凸部)を形成することによって、既に形成されているスコア14a及び14bが虐待され(換言すればスコア14a及び14bに悪影響が及ぼされ)、スコア14a及び14bが劣化され(即ち部分的に破損され或いは過剰に弱化され)、これに起因して容器蓋2の開封特性が劣化乃至不安定化し、そしてまた密封特性が低下してしまう傾向がある。
【0024】
打抜及び絞り工程
上記スコア形成工程に続いて、打抜及び絞り工程を遂行する。この打抜及び絞り工程においては、図7に示すとおり、金属薄板32に打抜加工及び絞り加工が加えられ、シェル4が完成される。打抜加工と絞り加工とは実質上同時に遂行することもできるし、打抜加工を遂行し次いで絞り加工を遂行することもできる。
【0025】
ライナー形成工程
次いで、図8に図示する如く、シェル4の天面壁6の内面に合成樹脂製ライナー18を形成するライナー形成工程が遂行される。このライナー形成工程においては、支持基盤(図示していない)上にシェル4を倒立状態(即ち天面壁6の外側面を支持基盤に当接せしめた状態)で載置する。そして、天面壁6の内面に軟化乃至溶融状態の合成樹脂素材を供給し、かかる合成樹脂素材に型押工具を作用せしめて合成樹脂製ライナー18を型押成形するのが好都合である。この際に、上記装飾エンボス30が凹部から構成されている場合には凹部が支持基盤に接触することがなく、従って装飾エンボスが損傷されることはないが、上記装飾エンボス30が凸部から構成されている場合には凸部が支持基盤に当接せしめられた状態で成形圧力が付加され、それ故に装飾エンボス30が損傷されてしまう虞がある。
【0026】
リング形成工程
図示の実施形態においては、上記ライナー形成工程の後に、図9に図示するとおり、リング形成工程が遂行される。このリング形成工程においては、シェル4の延出片10を中子としてリングを圧縮又は射出成形することによって把持リング28が形成されると共に延出片10の先端部に把持リング28が接続され、かくして容器蓋2が完成される。所望ならば、上記打抜及び絞り工程の後で且つ上記ライナー形成工程の前にリング形成工程を遂行することもできる。
【0027】
上記の説明においては1個のシェル4の製造を説明したが、実際の工業的製造においては、比較的大寸法の金属薄板を準備し、かかる金属薄板の複数箇所において孔形成工程、エンボス形成工程、スコア形成工程及び打抜及び絞り工程を夫々同時的に順次遂行し、複数個のシェル4を同時に形成することができる。
【0028】
上記孔形成工程、スコア形成工程、打抜及び絞り工程、ライナー形成工程及びリング形成工程自体は当業者には周知の工程であるので、かかる工程の詳細については本明細書においては説明を省略する。そしてまた、本発明の方法によって製造された容器蓋2の使用様式、即ち容器口頸部に装着して容器口頸部を密封する様式及び容器口頸部から離脱して容器口頸部を開封する様式も周知の事項であるので、その説明は本発明においては省略する。
【符号の説明】
【0029】
2:容器蓋
4:金属製シェル
6:天面壁
8:スカート壁
10:延出片
12a:切欠
12b:切欠
14a:スコア
14b:スコア
16:孔
18:合成樹脂製ライナー
20:合成樹脂製ライナーの中央部
22:合成樹脂製ライナーの周縁シール部
24:内側環状シール
26:外側環状シール
28:把持リング
30:装飾エンボス
32:金属薄板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9