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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】二重構造容器用複合キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/32 20060101AFI20230613BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B65D47/32 310
B65D47/20 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054864
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152425
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068263(JP,A)
【文献】特開2017-222368(JP,A)
【文献】特開2018-095287(JP,A)
【文献】特開2018-002198(JP,A)
【文献】特開2012-180103(JP,A)
【文献】特開2012-206733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ
前記環状垂下フラップ片は、前記外筒容器の首部内面に当接するものであって、該首部内面からの離脱・接触により空気弁として機能し、
前記環状垂下フラップ片は、前記外筒容器の首部内面上端に形成されている傾斜面に当接して機能することを特徴とする二重構造容器用複合キャップ。
【請求項2】
内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ
前記環状垂下フラップ片は、前記筒状側壁の内面とは間隔をおいて前記頂板部の下面から垂下しており、該環状垂下フラップ片と該頂板部と該筒状側壁との間の空間に、前記外筒容器の首部が嵌合されることを特徴とする二重構造容器用複合キャップ。
【請求項3】
内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ
前記頂板部の下面において、前記インナーリングに囲まれる領域に中栓が設けられ、該中栓には、前記内容液注出用案内筒の内部と内袋容器の内部とを連通させる開口が形成され、
前記頂板部の下面からは、中栓保持用リングが延びており、該中栓保持用リングに前記中栓が保持されていることを特徴とする二重構造容器用複合キャップ。
【請求項4】
前記環状垂下フラップ片には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力が環境変化により増大した時に空気を排出するための流路を確保する細溝が設けられている請求項に記載の二重構造容器用複合キャップ。
【請求項5】
前記複合キャップは、該頂板部を開閉自在に設けられている上蓋を有するとともに、前記中栓には、該中栓の開口を開け閉めし得る前記逆止弁が設けられており、該上蓋には、該上蓋を閉じたときに、該逆止弁が該開口を閉じるように賦勢するポールが設けられている請求項に記載の二重構造容器用複合キャップ。
【請求項6】
請求項1~の何れかに記載の二重構造容器用複合キャップと、該複合キャップが装着された二重構造容器とからなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒容器と、外筒容器内に挿入されて保持された内袋容器とからなる二重構造容器に装着されて使用される二重構造容器用複合キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋容器と外筒容器とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばエアレスボトルとして、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている。かかるエアレスボトルは、逆止弁付の複合キャップと組み合わせで使用されるものであり、外筒容器であるボトルの胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出され、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外筒容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
ところで、上記のような逆止弁付複合キャップでは、内袋容器からの内容液の排出は許容するが、内袋容器内への空気の流入を抑止する逆止弁が設けられるが、このような逆止弁とは別に、弁機能が必要である。即ち、二重構造容器では、外筒容器の胴部を押圧することにより、内袋容器の胴部が押圧され、内袋容器内に収容されている内容液が排出される。このようにして一定量の内容液を排出した後は、外筒容器の胴部が原形に復帰し、これに伴い、内袋容器の胴部と外筒容器の胴部との間の空間(以下、作用空間と呼ぶ)が減圧状態となり、これにより、作用空間に空気が流入し、この作用空間は常圧に戻る。このとき、空気が流入せず、作用空間が減圧状態のままであると、その後、外筒容器の胴部を押圧しても、内袋容器の胴部が十分に押圧されず、内袋容器内の内容液がほとんど排出されなくなってしまう。また、外筒容器の胴部も速やかに原形復帰に従って、外筒容器の胴部の押圧を停止したとき、該胴部が原形に復帰すると同時に、作用空間に空気を導入することが必要となるわけである。
【0004】
上記のような逆止弁とは別の弁機能を有する複合キャップ容器として、例えば、特許文献1には、外筒容器の首部に装着される複合キャップの筒状側壁の内面に、外筒容器の外側面に形成されている顎部の上面に密着するように、内方に突出した可撓性のシール片が設けられているものが提案されている。即ち、外筒容器の首部の上記顎部の上方には、内袋容器の胴部と外筒容器の胴部との空間(作用空間)に空気を導入するための空気導入口が設けられており、上記の可撓性シール片が空気弁として機能するようになっている。例えば、外筒容器の胴部を押圧したときには、上記のシール片は顎部上面に密着しており、これにより、作用空間内の空気が空気導入口から排出されることが防止され、また、外筒容器の胴部の押圧を停止し、該胴部の原形復帰により作用空間が負圧となったときには、上記のシール片が上方に撓み、顎部上面と該シール片との間に空隙が生じ、この空隙を通して、外部から空気が空気導入口を介して作用空間内に導入されることとなるわけである。
【0005】
しかしながら、上記のように、内方に突出した可撓性のシール片を空気弁として使用するときには、キャップの成形に際して、このシール片を形成する部分が無理抜きとなってしまうため、シール片の破損を生じ易いという問題がある。これを回避するためには、このシール片の内方への突出長さを短くすればよいが、この場合には、弁としての機能が損なわれるおそれがある。また、成形型には、上記のシール片を形成するための空間を設ける必要があり、このため、成形型の形状が複雑になってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-2198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、二重構造容器に装着されて使用される二重構造容器用複合キャップにおいて、成形時の無理抜き等によるシール片の破損が有効に防止されたシンプルな形状の弁部材を備えた複合キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ
前記環状垂下フラップ片は、前記外筒容器の首部内面に当接するものであって、該首部内面からの離脱・接触により空気弁として機能し、
前記環状垂下フラップ片は、前記外筒容器の首部内面上端に形成されている傾斜面に当接して機能することを特徴とする二重構造容器用複合キャップが提供される。
本発明によれば、また、内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ、
前記環状垂下フラップ片は、前記筒状側壁の内面とは間隔をおいて前記頂板部の下面から垂下しており、該環状垂下フラップ片と該頂板部と該筒状側壁との間の空間に、前記外筒容器の首部が嵌合されることを特徴とする二重構造容器用複合キャップが提供される。
本発明によれば、さらに、内容物が収容される内袋容器と該内袋容器を覆うように設けられた外筒容器とから成る二重構造容器に設けられる複合キャップにおいて、
前記複合キャップは、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下し且つ前記外筒容器の首部に嵌合する筒状側壁とからなるキャップ本体と、逆止弁とを有しており、該頂板部の上面には、該筒状側壁内の中空空間と連通している内容液注出用案内筒が立設され、該頂板部の下面には該内袋容器の首部の内面と密着するインナーリングが垂下しているとともに、
前記頂板部の下面において、前記筒状側壁と前記インナーリングとの間には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力変動により該空間内に空気を取り込み、或いは該空間からの空気の排出を防止するための空気弁として機能する環状垂下フラップ片がキャップ軸方向に延びるようにして設けられ、
前記頂板部の下面において、前記インナーリングに囲まれる領域に中栓が設けられ、該中栓には、前記内容液注出用案内筒の内部と内袋容器の内部とを連通させる開口が形成され、
前記頂板部の下面からは、中栓保持用リングが延びており、該中栓保持用リングに前記中栓が保持されていることを特徴とする二重構造容器用複合キャップが提供される。
本発明によれば、さらに、上記の二重構造容器用複合キャップと、該複合キャップが装着された二重構造容器とからなる包装体が提供される。
【0009】
本発明の二重構造容器用複合キャップにおいては、以下の態様が好適に適用される
(1)前記環状垂下フラップ片には、前記内袋容器と前記外筒容器との間の空間の圧力が環境変化により増大した時に空気を排出するための流路を確保する細溝が設けられていること
(2)前記複合キャップは、該頂板部を開閉自在に設けられている上蓋を有するとともに、前記中栓には、該中栓の開口を開け閉めし得る前記逆止弁が設けられており、該上蓋には、該上蓋を閉じたときに、該逆止弁が該開口を閉じるように賦勢するポールが設けられている前記環状垂下フラップ片は、前記外筒容器の内面に当接しており、離脱・接触により空気弁として機能すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合キャップは、外筒容器と、外筒容器内に挿入されており且つ内容液が収容されている内袋容器とからなる二重構造容器に装着されて使用されるものであるが、キャップ軸方向に延びている環状垂下フラップ片を空気弁として備えている点に重要な特徴を有する。
即ち、上記の環状垂下フラップ片は、可撓性を有しており、キャップの内側方向及び外側方向に揺動し得る部材である。従って、内容液の排出のために、外筒容器の胴部を押圧したとき、外筒容器と内袋容器との間の空間(作用空間)の圧力が大きく増大するため、この環状垂下フラップ片は外方に大きく動き、外筒容器の内面に強く密着し、この作用空間からの空気の排出を防止し、これにより、外筒容器の胴部を押圧して内袋容器内に収容されている内容液を速やかに排出することができる。
また、外筒容器の胴部の押圧を停止し、外筒容器の胴部が原形に復帰し、作用空間が減圧状態となったときには、この環状垂下フラップ片が内方に動き、環状垂下フラップ片と外筒容器の内面から離れて、その間に空隙が形成され、この空隙によって外部と作用空間との間に空気路が形成される。このようにして形成される空気路を通して作用空間内に空気が導入され、これにより作用空間内の圧力は常圧に復帰し、次の内容液排出操作を行うことができる。
【0011】
このような可撓性を有する環状垂下フラップ片は、キャップ軸方向に延びているため、キャップ成形に際して、無理抜きを行うことがなく、このような無理抜きによる破損は有効に防止される。また、このような環状垂下フラップ片を成形するために、成形型に凹部等の形成する必要は無く、特殊な形状の成形型を用いる必要もない。
【0012】
さらに、外筒容器の首部内面の上端に内方に向かって傾斜した傾斜面が形成されている時には、この傾斜面を利用して、環状垂下フラップ片の空気弁機能を高めることができる。すなわち、複合キャップが二重構造容器に装着された通常状態において、環状垂下フラップ片の下端部は外筒容器の内面に当接するように形成されているが、環状垂下フラップ片の下端部を、この傾斜面と当接するように設けると、内容液注出時のスクイズ操作により外筒容器の胴部を大きく凹ませたときには、作用空間の圧力が大きく増大し、環状垂下フラップ片は外方(傾斜面を上がる方向)に大きく撓み、傾斜面と強く密着されるため、環状垂下フラップ片と傾斜面との間から空気が外部に流れることはなく、作用空間と外部とを繋ぐ空気路は遮断可能となる。
その後、スクイズ操作状態を解除すると作用空間が減圧状態となり、環状垂下フラップ片は内方(傾斜面を下る方向)に離れるように撓み、空気路が形成されるため、作用空間内に空気を容易に導入可能となる。
さらに、環状垂下フラップ片の外面に細溝を形成することによって、例えば環境温度の変化により、作用空間の圧力が少し上昇したときには、環状垂下フラップ片は、外方に撓むことなく上記細溝から空気が排気されることとなり、作用空間内の内圧が過度に上昇しないこととなる。
即ち、環境温度の変化により作用空間の内圧が過度に上昇している状態では、外筒容器の胴部をスクイズしなくとも、この複合キャップに設けられている上蓋を開けたときに、内容液が排出されてしまうおそれがあったが、上記のように、環状垂下フラップ片の外面に細溝を設けておくことにより、環境変化による温度上昇時には作用空間からのガス抜きが行われ、予期し得ないときの内容液の排出を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の複合キャップが適用される二重構造容器の概略構造を示す図。
図2】本発明の複合キャップが二重構造容器の首部に装着された状態を示す側断面図。
図3図2の複合キャップにおけるキャップ本体を上蓋が開放された状態で示す側断面図。
図4図3のキャップ本体の底面図。
図5図3のキャップ本体の上面図。
図6図2の複合キャップにおける環状垂下フラップ片の機能を説明するための部分拡大側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の複合キャップの構造を説明するに先立って、この複合キャップが装着される二重構造容器について、簡単に説明しておく。
【0015】
この二重構造容器の概略構造を示す図1を参照して、全体として1で示す二重構造容器は、ボトル形状の外筒容器3と、醤油等の内容液が収容される内袋容器5とからなり、図1から理解されるように、外筒容器3の内部に、内袋容器5が挿入されて保持されている。
【0016】
外筒容器3は、首部3aと、首部3aに連なっており且つ下方に向かって拡径している肩部3bと、肩部3bに連なっている胴部3cを有しており、胴部3cの下端は、底部3dにより閉じられている。このような外筒容器3の首部3aの外面には、サポートリング3eが形成されている。かかる首部3aのサポートリング3eよりも上方部分に後述する本発明の複合キャップが嵌合固定される。
【0017】
一方、内容液が収容される内袋容器5は、首部5aと、首部5aに連なり且つ変形自在の袋状部5bとから構成されており、外筒容器3内に収容されている状態において、内袋容器5の首部5aは、外筒容器3の首部3a内に位置するようになっており、内袋容器5の袋状部5bと外筒容器3との間には空間(作用空間)Xが形成されている。
【0018】
このような形態の二重構造容器1は、一般に延伸ブロー成形を利用したプリフォーム-イン-ボトル法或いはスタックプリフォーム法により製造される。
【0019】
プリフォーム-イン-ボトル法は、予め、公知の延伸ブロー成形により外筒容器3を成形し、この外筒容器3内に、首部5aを有している試験管形状の内袋用プリフォームを挿入し、この状態で内袋用プリフォーム内にブロー流体を供給してブロー成形を行うという手法である。この方法では、外筒容器3がブロー型として機能し、内袋用プリフォームの首部5aよりも下方の部分が、袋状部5bの形態に賦形されることとなる。つまり、この方法では、外筒容器3についての延伸ブロー成形と内袋容器5の延伸ブロー成形とが逐次行われる。
【0020】
スタックプリフォーム法は、首部3aを有する外筒容器成形用プリフォームと、首部5aを有する内袋用プリフォームとを、射出成形によりそれぞれ成形し、内袋用プリフォームを外筒容器成形用プリフォーム内に挿入して、外筒容器成形用プリフォームと内袋用プリフォームとが重なったスタックプリフォームを形成し、このスタックプリフォームをブロー型内に保持し、スタックプリフォーム内部の内袋用プリフォーム内にブロー流体を供給して延伸ブロー成形を行うという手法である。つまり、この方法は、外筒容器成形用プリフォームは、内袋用プリフォームの膨張によって容器の形態に賦形されるものであり、外筒容器3についての延伸ブロー成形と内袋容器5の延伸ブロー成形とが同時に行われる。
【0021】
上記の何れの方法により製造された場合においても、外筒容器3では、首部3aを除き、肩部3b、胴部3c及び底部3dが延伸成形された部分となり、内袋容器5では、首部5aを除く袋状部5bが延伸成形された部分となっており、製造直後の段階では、内袋容器5の袋状部5bの外面は、外筒容器3の胴部3cの内面に密着した状態にある。
【0022】
従って、上記のような外筒容器3及び内袋容器5は、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどを用いて成形される。
【0023】
即ち、上記のような二重構造容器では、外筒容器3の胴部3cを押圧(スクイズ)することにより、胴部3cの凹みに伴って、内袋容器5の袋状部5bが押圧され、これにより、内袋容器5の袋状部5bに収容されている内容液が排出される。内容液が排出されると、内容液の原料に応じて袋状部5bが収縮し、外筒容器3の胴部3cは、その弾性により原形に復帰することとなる。このような排出操作を繰り返し行っていくとき、胴部3cのスクイズに際して、前述した作用空間X内の空気が排出されてしまうと、袋状部5bが局部的に押圧されることとなり、このため、袋状部5b内に内容液が満杯の状態で収容されている場合には問題ないが、内容液の量が減っていくと、内容液の排出を効果的に行うことが困難となる。従って、胴部3cを押圧して内容液を排出する際には、作用空間X内の空気が排出されず、胴部3cと袋状部5bとの間に空気層を存在させ、空気層を介して袋状部5bが押圧されることが必要である。
【0024】
また、内容液が排出されると、内容液が排出された分だけ袋状部5bの容積が減り、また、胴部3cが凹んだ状態から復帰するため、作用空間X内は負圧の状態となる。従って、内容液の排出後には、作用空間X内に空気を導入し、作用空間X内を常圧に戻す必要がある。負圧のままのときは、胴部3cの原形復帰がスムーズに行われないばかりか、次に、胴部3cを押圧して内容液の排出を行う場合、胴部3cを大きく凹ませなければならず、内容液の排出を効果的に行うことが困難となってしまう。
【0025】
さらに、上記のような内容液の排出は、後述する複合キャップの上蓋を開けた状態で行われるが、環境温度変化により、上記の作用空間Xの内圧が上昇していると、この上蓋を開けたときに、胴部3cを押圧していないにもかかわらず、袋状部5b内の内容液が排出されてしまうことがある。従って、作用空間X内の圧力が環境温度変化により上昇した時には、ガス抜きが行われ、作用空間X内が常圧に保持されるようにしておくことが望まれる。
【0026】
従って、上記の作用空間Xからの空気の排出が防止され、また、この空間Xには、適宜空気が導入され、さらには、ガス抜きが適宜行われるようにすることが求められる。本発明の複合キャップは、このような要求を満足する弁機能を有している。
【0027】
以下に、本発明の複合キャップの構造について、この複合キャップが装着される二重構造容器1の首部3a、5aの形態と併せて詳細に説明する。
【0028】
前述した図1と共に図2を参照して、外筒容器3の首部3aの上端部の外面には、アンダーカット3fが形成されており、このアンダーカット3fとの係合を利用して後述した複合キャップが装着され、安定に保持される。また、この首部3aの内面から上端面及び外面にそって、作用空間Xから外部にかけての空気路が形成されるように、アンダーカット3fは一部切り欠かれている(後述する図6において、この部分の切欠きは3f’で示されている)。また、首部3aの内面は、直立したストレートの面となっていてもよいが、作用空間Xの圧力が環境温度変化により上昇したときに作用空間Xからのガス抜きが行われるように、上端から内方且つ下方に向かって傾斜した傾斜面Yとなっていることが好適である。また、この外筒容器3の首部3aの内面には、上方部分に段差3gが形成されており、段差3gの若干上方には小突起3hが形成されている。
【0029】
また、上記の首部3a内に位置している内袋容器5の首部5aの上端には、外方に突出した小フランジ5cが形成されている。この小フランジ5cは、ブロー成形時にプリフォームを治具によりしっかりと把持するために形成されているものである。さらに、この首部5aの下方の外面には、周状突起5dが形成されている。この周状突起5dが、上記の段差3g及び小突起3hの部分で挟持されることにより、外筒容器3内に挿入された内袋容器5が安定に位置決めされる。
さらに、この周状突起5dには、切欠き部5d’が部分的に形成されている。このような切欠き部5d’の形成により、作用空間Xから外部にかけての空気路を確保することができる。
【0030】
さらに、図2図5、特に図2を参照して、この複合キャップは、全体として10で示すキャップ本体と、キャップ本体10内に保持されている中栓11及び逆止弁13とから構成されている。
尚、図2では、煩雑さを避けるため、複合キャップについて、一部の部材の番号を省略している。
【0031】
キャップ本体10は、前述した外筒容器3の首部3aに装着される筒状側壁21と、該筒状側壁21にヒンジ連結されている上蓋23とを有している。
【0032】
上記の筒状側壁21の上端には、その内部空間を閉じるように延びている頂板部25が一体に形成されている。
また、特に限定されるものではないが、この筒状側壁21には、上方から下方に延びている円弧状のスリット27が形成されており、これにより二重壁構造となっている。このような二重壁構造により、使用済の複合キャップを、格別の器具を用いずに、二重構造容器1から容易に引き剥がすことが可能となっており、分別廃棄性が高められている。
【0033】
また、上記の筒状側壁21の下端内面には、アンダーカット29が形成されており、このアンダーカット29が、外筒容器3の首部3aの上端外面に形成されているアンダーカット3fと係合することにより、キャップ本体10(筒状側壁21)が首部3aに係合保持される。
さらに、このアンダーカット29には、切欠き29aが形成されており(図4参照)、これにより、作用空間Xから外部にかけての空気路(及び外部から作用空間Xにかけての空気路)が遮断されないようになっている。
【0034】
上記の筒状側壁21の上端から内方に延びている頂板部25の下面には、筒状側壁21よりも内方側に、筒状側壁21の内面とは間隔をおいて、下方に延びているインナーリング31が形成されており、このインナーリング31と筒状側壁21との間の空間に、外筒容器3の首部3a及び内袋容器5の首部5aが挿入され、インナーリング31の外面が、内袋容器5の首部5aの内面に密着し、これにより、内袋容器5のシール性が確保されるようなっている。
【0035】
また、筒状側壁21の内面の上端部から頂板部25の下面にかけて、補助突起33が周状に形成されており、この補助突起33が、外筒容器3の首部3aの上端面から外面に密着することにより、このキャップ本体10(筒状側壁21)が、ガタツクことなく、しっかりと首部3aに固定される。
さらに、周状に形成されている補助突起33にも、複数の切欠き33aが設けられている。尚、図4に示した例では、この切欠き33aは、前述したアンダーカット29に形成されている切欠き29aに対応する位置に形成されているが、補助突起33によって、作用空間Xから外部にかけての空気路が遮断されないような構造である限り、切欠き33aの位置は、図4に示す態様に限定されるものではない。
【0036】
尚、頂板部25の下面において、インナーリング31よりも外方側且つ筒状側壁21よりも内方側に、環状垂下フラップ片35が設けられている。この環状垂下フラップ片35は、空気弁として機能するものであり、この機能については、後述する。
【0037】
上述した頂板部25の下面には、インナーリング31で囲まれる領域内に、後述する逆止弁13の作動空間を規定する中栓11を保持するための中栓保持用リング37(以下、単にリングと呼ぶことがある)が設けられている。このリング37内に中栓11が収容されるが、収容された中栓11が脱落せずにしっかりと保持されるように、このリング37は、下方に向かってやや縮径した形状を有しており、且つリング37の内面下端には、突起39が形成されている。さらに、中栓保持用リング37の内方側の頂板部25の下面には、やはり中栓11を安定に保持するために周状小突起41が形成されている。
【0038】
一方、頂板部25の上面には、周縁部分に、背の低い上蓋係合用突起43が形成され、これにより、上蓋23を閉じたとき、上蓋23がしっかりと保持される。
【0039】
また、頂板部25の上面の中心部分には、内容液注出用案内筒45が立設されている。
この案内筒45は、筒状側壁21内の中空空間(図2において、200で示す)と連通しており、内袋容器5から排出される内容液の注出路となる。
【0040】
前記した筒状側壁21の上端部分或いは頂板部25の外周縁には、ヒンジバンド47により上蓋23が旋回可能に連結されている。
この上蓋23は、天板部51と天板部51の外周縁に連なるスカート部53とから構成されている。
【0041】
上記の上蓋23において、スカート部53の内面には、係合用凹部55が形成されており、上蓋23を旋回して閉じたとき、この凹部55が前述した上蓋係合用突起43と係合し、これにより、上蓋23の閉蓋状態が安定に保持される。また、スカート部53の外面には、ヒンジバンド47とは反対側の位置に開封用タブ57が設けられている。これにより、このタブ57を持って、上蓋23の開蓋操作を容易に行うことができる。
【0042】
天板部51の内面(図3において、上側の面)には、背の高い緩衝用突起59が周状に形成されている。上蓋23を閉じたとき、この緩衝用突起59の先端(一部切り欠き部を有する)が頂板部25の上面に当接するように形成されている。即ち、上蓋23が閉じられている状態において、偶発的に大きな垂直荷重が加わったとき、この緩衝用突起59により応力が緩和されるため、後述するポール61が逆止弁13に必要以上の荷重を与えてしまうことが防止されるのである。
【0043】
また、天板部51の中央部分には、逆止弁13を上方から賦勢するためのポール61が立設されている。
このポール61は、上蓋23を閉じたとき、中栓保持用リング37内に収容されている中栓11に保持されている逆止弁13を押圧賦勢するための部材であり、従って、上蓋23を閉じたとき、このポール61は、内容液注出用案内筒45内に侵入し、逆止弁13に当接することとなる。従って、案内筒45の上端は、ヒンジバンド47側が背が低く形成されている。また、ポール61は、付け根部側61aが比較的大径に形成され、先端部側61bが小径に形成されており、これに伴い、案内筒45の内面の上方部分には、内方に突出した内方突起45aが設けられている。即ち、上蓋23を閉じたとき、案内筒45内に侵入したポール61は、大径の付け根部側61aが内方突起45aとの嵌合によりしっかりと固定され、ポール61の小径の先端部側61bが位置決めされ、一定位置で逆止弁13に当接し、逆止弁13を賦勢するように構成されている。これにより、内容液を排出後において、逆止弁13の弁体81が正規の位置まで戻っていない場合でも開口70が弁体81で確実に閉じられた状態となるのである。
【0044】
さらに、天板部51の内面には、上記のポール61を取り囲み、且つ上蓋を閉じたとき、案内筒45を取り囲むような位置に、小さな保護環状突起63が設けられている。これにより、内容液がポール61やその周辺部に付着した場合、内容液を留めることが出来る。すなわち、上蓋23を開放したとき、頂板部25の上面側に内容液が垂れ落ちないようにすることができる。また、同様の目的で、ポール61の周辺部には、小さな溝65が設けられている。
【0045】
さらに、図2にも示されているように、キャップ本体10に設けられている中栓保持用リング37内には、中栓11が収容されるが、この中栓11は、案内筒45の内部と内袋容器5の内部とを連通させる開口70が中央部分に形成されている。即ち、この開口70を通って、内袋容器5内の内容液は案内筒45内に流れ、案内筒45から排出されることとなる。
【0046】
上記のような中栓11は、筒状基部71と、筒状基部71の内面の下端から上方に向かって内方に延びている周状傾斜フランジ73と、周状傾斜フランジ73の内端から降下して延びている降下壁75と、降下壁75の下端から内方に突出している水平フランジ77とから形成されており、この水平フランジ77で囲まれている空間が、前述した開口70となっている。このような中栓11の形態は、以下に述べる逆止弁13を安定に保持するために形成されたものである。
【0047】
即ち、内袋容器5内に収容されている内容液を排出するためには、上記の開口70が開放された状態になければならないが、排出をしない状態では、空気が内袋容器5内に流入するのを防止するために、この開口70を閉じておく必要がある。空気が流入すると、内容液の排出により収縮した袋状部5bが膨らんでしまい、その後の内容液の排出に支障を来すこととなるからである。また、内容液の酸化劣化の要因となる内袋容器5内の空気流入を極力抑えて、内容液の品質を保持する上でも、内容液の排出後は、速やかに開口70が閉じられることが望まれる。このような機能を確保するために、逆止弁13が使用される。
【0048】
かかる逆止弁13は、図2に示されているように、円形であり且つ若干上方に膨らんだドーム形状の弁体81を有しており、この弁体81は、環状支持部材83から延びている複数のストラップ85により上下動可能に保持されている。この環状支持部材83は、中栓保持用リング37の内部に嵌め込まれて固定され、また、弁体81は、通常状態においては開口70を閉じるように、周状傾斜フランジ73と降下壁75の境界領域に着座された状態にあり、この弁体81が上昇すると、開口70が開放され、開口70を通して内容液が排出されることとなる。この場合、弁体81は、複数のストラップ85により保持されているため、開口70を通った内容液は、ストラップ85の間隙を通って案内筒45内に流れることとなる。また、上蓋23を閉じたときには、前述したポール61が弁体81をしっかりと押付けるため、この降下壁75内に弁体81が嵌め込まれた状態となり、開口70が弁体81によりしっかりと閉じられた状態となる。
【0049】
即ち、上蓋23を開けた状態で二重構造容器1を傾け、外筒容器3の胴部3cを押圧することにより、内袋容器5の袋状部5bが押圧され、このときの内圧上昇により弁体81が持ち上げられ、上記のように開口70を通して内容液が排出される。また、胴部3cのスクイズを停止すると、ストラップ85の弾性により弁体81は、開口70を閉じる正規の位置に戻り、さらに、上蓋23を閉じることにより、この弁体81は、降下壁75の内部にがっちりと保持されることとなる。
【0050】
尚、上述した中栓11及び逆止弁13のキャップ本体10内への組み込みは、例えば、中栓11内に逆止弁13を組み込んだ後、この組立体を、キャップ本体10の中栓保持用リング37内に押し込むにより行われる。これにより、逆止弁13を収容保持している中栓11は、その筒状基部71が、リング37の内側に、下端の突起39と共にしっかりと挟持固定される。
【0051】
ところで、上蓋23を開放し、外筒容器3の胴部3cを押圧することにより、逆止弁13の弁体81を押し上げて内容液を排出するとき、外筒容器3の内面と内袋容器5の外面との間の作用空間Xから空気が排出するのを防止し、内容液排出後には、作用空間Xに空気を導入し、作用空間Xを常圧に戻すことが必要となる。本発明では、このような機能を確保するために、可撓性を有する環状垂下フラップ片35(以下、単にフラップ片と呼ぶ)が設けられている。
【0052】
このフラップ片35の機能を説明するための図6を参照して、先ず、このフラップ片35は、頂板部25の下面において、インナーリング31よりも外方側且つ筒状側壁21よりも内方側から垂下しており、キャップ軸方向Zに延びている(図6(a)参照)。従って、このフラップ片35は、無理抜きすることなく、成形することができる。
しかしながら、フラップ片35は必ずしも鉛直形状である必要はなく、成形可能な範囲であれば、内外方に向かって多少傾斜するフラップ片35であっても構わない。
【0053】
本発明において、この複合キャップを二重構造容器(外筒容器3の首部3a)に装着したとき、このフラップ片35と頂板部25と筒状側壁21との間の空間に、外筒容器3の首部3aの上端部分が入り込んだ状態となっており、このフラップ片35の外面側に外筒容器3の首部3aが位置しており、このフラップ片35の下端外面が首部3aの内面に当接するようになっている。
【0054】
ところで、図2に示されているように、内袋容器5の首部5aに形成されている周状突起5dには切欠き5d’が形成されており、外筒容器3の首部3aに形成されているアンダーカット3fにも切欠き3f’が形成され、筒状側壁21の下端のアンダーカット29にも切欠き29aが形成され、さらには、キャップ本体10の筒状側壁21から頂板部25にかかる内面に形成されている補助突起33にも切欠き33aが形成されている。
【0055】
即ち、キャップ装着後の常態時においては、図6(a)に示されているように、フラップ片35は、外筒容器3の首部3aの内面に接触しているが、外筒容器3と内袋容器5との間の作用空間Xは、外部と等圧に保持されている。
この状態で、外筒容器3の胴部3cをスクイズして凹ませたとき、作用空間Xの圧力が上昇するが、図6(b)に示されているように、フラップ片35は外側に傾斜するように、その下端外面が外筒容器3の首部3aの内面に強く当接する。この結果、作用空間Xと外部との空気路が遮断された状態に保持され、作用空間Xからの空気の排出が確実に阻止される。これにより、外筒容器3の胴部3cをスクイズすることで弁体81が持ち上げられ開口70を開き、内容液の排出をスムーズに行うことができる。
【0056】
一方、胴部3cのスクイズを停止し、内容液の排出を終了させると、弁体81が通常状態に戻り開口70を封止され、内容液の排出により内袋容器5の袋状部5bの容積が縮小する。それと同時に、外筒容器3の胴部3cは自身の有する弾性力により凹んだ状態から原形に復帰し、作用空間Xは負圧の状態になる。このとき、フラップ片35は、図6(c)に示されているように、内方に傾倒し、この結果、フラップ片35と外筒容器3の首部3aとの間に空隙が生じ、この結果、外部から作用空間Xに空気が導入される。そして、再び、図6(a)の状態に戻る。即ち、このような空気の導入により、次の外筒容器3の胴部3cをスクイズしての内容液の排出操作をスムーズに行うことができる。
【0057】
また、本発明においては、上記のフラップ片35の外面(筒状側壁21に対面する側の面)の少なくとも一部に、軸方向に且つ下端にまで延びている線状細溝35aが形成されていることが好ましく、さらに、このフラップ片35が当接する外筒容器3の首部の内面が、図6に示されているように、傾斜面Yとなっていることが好ましい。尚、図4において、この線状細溝35aが設けられている領域は100で示されている。
【0058】
本発明では、フラップ片35の外面に線状細溝35aを形成し、さらに、外筒容器3の首部の内面を傾斜面Yとしておくことにより、上述した空気弁としての機能に加え、ガス抜き機能をフラップ片35に持たせることができる。
即ち、上記のような線状細溝35aと傾斜面Yとが形成されている場合、キャップ装着後の状態時では、フラップ片35の下端部は、傾斜面Yに当接しているが、線状細溝35aにより傾斜面Yとフラップ片35との間には空隙が存在しており、作用空間Xと外部とは連通状態にあるが(図6(a)参照)、この状態において、胴部3cをスクイズすると、胴部3cが大きく凹むため、作用空間Xの圧力が大きく増大し、フラップ片35は外方(傾斜面を上がる方向)に大きく撓み、傾斜面Yに強く密着する(図6(b)参照)。このため、線状細溝35aによる空隙は遮断され、前記と同様、内容液の排出はスムーズに行われる。さらに、スクイズを停止したときには、外筒容器3の胴部3cは自身の有する弾性力により凹んだ状態から原形に復帰し、作用空間Xは負圧となるため、フラップ片35は内方(傾斜面を下る方向)に撓み、傾斜面Yから離れるため、作用空間Xには、外部から空気が導入される(図6(c)参照)。
上記の説明から理解されるように、線状細溝35aと傾斜面Yとの形成により、上述した空気弁の機能は損なわれることが無い。
【0059】
ところで、二重構造容器1が置かれた環境の変化、例えば環境温度の上昇により、作用空間Xの圧力が上昇してしまうことがある。このような場合、上蓋23を開けたときに、逆止弁13の弁体81が押し上げられ、内容液が排出されてしまうことがある。しかるに、上記のように線状細溝35a及び傾斜面Yが形成されている場合には、環境温度の上昇に起因する内圧上昇程度では、フラップ片35は、傾斜面Yに強く当接することなく、外方には撓まず、撓んだとしても極僅かであり、図6(d)に示されているように、線状細溝35aによって形成されているフラップ片35と傾斜面Yとの空隙は、常態と同様、確保されている。このため、環境温度の変化により作用空間Xの圧力が増大したとしても、作用空間Xからのガス抜きが、この空隙を通して行われ、上記のような不都合を有効に防止することが可能となる。
【0060】
尚、上記のような線状細溝35aがフラップ片35の外面に形成されている領域100は、図4に示されているように、アンダーカット29に形成されている切欠き29aの位置や、筒状側壁21から頂板部25にかかる内面に形成されている補助突起33に形成されている切欠き33aの位置は、かかる領域100に対応するように設定することが好ましく、これにより、線状細溝35aを通してのガス抜きを効果的に行うことができる。
【0061】
このように、本発明によれば、フラップ片35の形成により、外用容器3の胴部3cをスクイズしての内容液の排出操作に際して、作用空間Xからの空気の排出を有効に抑制でき、また、スクイズ停止後においては、作用空間X内に速やかに空気を導入することができる。しかも、このようなフラップ片35は、成形に際して、無理抜き等を行うことなく成形することができるため、成形時の破損も有効に防止されている。
さらに、このようなフラップ片35の外面に線状細溝35aを設け、外筒容器3の首部3aの内面を傾斜面Yとすることにより、作用空間X内の圧力が環境温度変化により上昇したときのガス抜きも有効におこなうことができる。
【0062】
尚、上述したキャップ本体19、中栓11及び逆止弁13は、何れも、オレフィン系樹脂、例えば、低、中或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いての射出成形、圧縮成形等により製造され、既に述べたように、逆止弁が収容されている中栓11をキャップ本体10内に嵌合固定させた後、打栓により、二重構造容器1(特に外筒容器3の首部3a)に装着される。
【符号の説明】
【0063】
1:二重構造容器
3:外筒容器
3a:首部
3c:胴部
5:内袋容器
5b:袋状胴部
10:キャップ本体
11:中栓:
13:逆止弁
21:筒状側壁
23:上蓋
37:中栓保持用リング
45:内容液注出用案内筒
61:ポール
81:弁体
X:作用空間
Y:傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6