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  • 特許-流体機械及びその組立方法 図1
  • 特許-流体機械及びその組立方法 図2
  • 特許-流体機械及びその組立方法 図3
  • 特許-流体機械及びその組立方法 図4
  • 特許-流体機械及びその組立方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】流体機械及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20230613BHJP
   F04B 39/14 20060101ALI20230613BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20230613BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/14
H01Q1/42
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019085604
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180598
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐川 善彦
(72)【発明者】
【氏名】伊与泉 彰
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178806(JP,A)
【文献】特開2014-173466(JP,A)
【文献】特開2015-012504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を備え通信装置を有した流体機械の組立方法であって、
前記筐体は上面に開口部を有し、
前記筐体の上面前記流体機械の上面に取付ける前に該筐体内に設置される制御部と前記通信装置を配線して接続し、
前記筐体の上面前記流体機械の上面に取付け、
前記通信装置を、前記配線を取り外すことなく前記開口部をくぐらせ前記筐体の外部に取り出し、
前記通信装置はカバーを有し、該カバーを前記開口部を覆うように前記筐体に取り付けることで、前記制御部と配線済みの前記通信装置を前記筐体内に設置することを特徴とする流体機械の組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流体機械の組立方法であって、
前記通信装置は、基板アンテナと該基板アンテナを保持するアンテナ固定部と、カバーからなることを特徴とする流体機械の組立方法。
【請求項3】
請求項1に記載の流体機械の組立方法であって、
前記流体機械は、圧縮機であることを特徴とする流体機械の組立方法。
【請求項4】
筐体を備えた流体機械であって、
制御部と通信装置を前記筐体内に有し、
前記筐体は、横幅をW2、縦幅をL2とする取付け穴を有し、
前記通信装置は、横幅をW1、縦幅をL1、高さをH1としたとき、H1<L1<W1の関係を有し、
前記取付け穴と前記通信装置との関係は、W2<W1、L2<L1であり、かつ、前記通信装置のL1-H1平面において前記通信装置が前記取付け穴を通過可能なW2、L2であることを特徴とする流体機械。
【請求項5】
請求項4に記載の流体機械であって、
前記通信装置は、基板アンテナと該基板アンテナを保持するアンテナ固定部と、カバーからなり、
前記取付け穴は、前記筐体の上面に設けられていることを特徴とする流体機械。
【請求項6】
請求項4に記載の流体機械であって、
前記流体機械は、圧縮機であることを特徴とする流体機械。
【請求項7】
筐体を備えた流体機械であって、
制御部と通信装置を前記筐体内に有し、
前記通信装置は、基板アンテナと該基板アンテナを保持するアンテナ固定部と、カバーからなり、
前記筐体は取付け穴を有し、該取付け穴は、前記基板アンテナが通過可能な寸法よりも大きく、前記通信装置を前記カバーにより前記取付け穴を覆うように前記筐体に取り付けたときの前記カバー取り付け面積よりも小さいことを特徴とする流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働データを外部送信する流体機械、及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械において、稼働データ等の情報を外部送信するためには、例えば無線を用いた通信装置(アンテナ)の設置が必要である。この通信装置の設置場所は、電波が遮蔽されず、できるだけ全方位の電波を取得するために、流体機械の上面カバー上に設置される。このとき、安全性と外観の観点から、通信装置の配線は流体機械の外部には出さないようにすることが望ましい。
【0003】
本技術分野に関する背景技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、密閉されたケーシング内に、電動機と、電動機によって駆動される圧縮機構と、電動機の駆動制御を行う制御装置とが配置された圧縮機であって、ケーシングには、制御装置に接続される信号線とケーシング外部の信号線とがケーシングの内外で接続される端子が設けられていて、制御装置は、複数の信号を多重化した状態で信号線を介して送受信する信号多重化部を有していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-1785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、工場にて通信装置を取付けて出荷する場合、出荷前に通信装置の配線を行い、商用試験にて通信装置の導通状態を確認する。導通状態を保証するために、導通試験後は通信装置の配線を外さずに出荷することが望ましい。ここで、油漏れ等の異常箇所の目視や、モータの銘版等の確認、試験結果が不合格となった場合の修正工数の低減といった理由から、商用試験は、流体機械の筐体上面を含む底面以外の筐体面が組付いていない状態で行われることが望ましい。すなわち、商用試験後に筐体上面を流体機械に取付けた後に、配線を外さずに配線済みの通信装置を筐体上面に取付け可能であり、なおかつ配線が外部に出さないような取付機構、取付方法が必要となる。このような構成について、特許文献1は考慮されていない。
【0006】
本発明の目的の一つは、流体機械の商用試験時の作業性を損なわず、通信装置の配線を流体機械の外部に出さず、流体機械の通信装置の導通状態を保証した状態で流体装置を出荷することが可能となる流体機械及びその組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、筐体を備え通信装置を有した流体機械の組立方法であって、筐体は開口部を有し、筐体を取付ける前に制御部と通信装置を配線して接続し、筐体を取付け、通信装置を、配線を取り外すことなく開口部をくぐらせ筐体の外部に取り出し、通信装置を、開口部を覆うように筐体に取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流体機械の商用試験時の作業性を損なわず、通信装置の配線を流体機械の外部に出さず、流体機械の通信装置の導通状態を保証した状態で流体装置を出荷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における圧縮機の全体外観図である。
図2】実施例1における圧縮機のアンテナホルダの組付手順を示す模式図である。
図3】実施例1における圧縮機のアンテナホルダの模式図である。
図4】実施例1における圧縮機のアンテナホルダの分解図である。
図5】実施例1における圧縮機の筐体上面のアンテナホルダ取付穴部分の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例においては本発明の実施の一例として圧縮気体を生成する圧縮機を用いた例を示す。また、圧縮機としては、空気等の気体を吸い込み圧縮空気を吐き出す容積式や回転式(遠心式)といった種々の圧縮機構を有するものを適用することができる。また、本発明は圧縮機に限定するものではなく、ポンプや膨張機、油圧モータ、送風機、真空ポンプ、冷凍機など流体機械一般に適用可能である。
【実施例1】
【0011】
図1に、本実施例における圧縮機の全体外観図を示す。図1において、圧縮機1は、通信装置である、通信電波を送受するアンテナを備えたアンテナホルダ20と、これを取付ける圧縮機筐体上面30を主に備える。
【0012】
すなわち、例えば、クラウド監視システムに圧縮機を対応させるにあたり、圧縮機に通信のためのアンテナを搭載させる必要がある。アンテナの設置位置について、電波が遮蔽されず、できるだけ全方位の電波を取得するために、圧縮機の上面に設置する必要がある。また、工場にてアンテナを取付けて出荷するにあたり、輸送時の破損を防ぐために、できるだけアンテナ自体の高さを抑えることが望ましい。加えて、安全性と外観との観点からアンテナの配線は圧縮機の外部には出さないようにすることが望ましい。以上から、アンテナは薄い平面の基板アンテナを使用し、基板アンテナを保持する樹脂製のアンテナホルダ20を圧縮機筐体上面30に設置する。これにより、圧縮機1はアンテナを介して圧縮機の稼働データを送信することができる。
【0013】
ここで、アンテナ搭載の圧縮機を出荷するには、出荷前の商用試験時においてアンテナと圧縮機制御部とを配線接続し、アンテナの導通状態を確認する必要がある。導通状態を保証するためにも、商用試験後には圧縮機制御部とアンテナは接続されたままにすることが望ましい。また商用試験時には、油漏れ等の異常箇所の目視、モータの銘版等の確認、試験結果がNGとなった場合の修正工数の低減といった理由から、圧縮機筐体の上面を含む全面を外した状態とする。すなわち、商用試験後に圧縮機に筐体上面を取付けた後に、配線された状態のアンテナをアンテナホルダを介して筐体上面に取付けが可能であり、なおかつ配線が外に出ないような取付機構、取付方法が求められる。
【0014】
図2は、本実施例における圧縮機のアンテナホルダの組付手順を示す模式図であり、アンテナ取り付け部分を拡大した図を示している。
【0015】
前述の通り、商用試験でアンテナの導通試験を行うため、アンテナが配線されている状態でアンテナを装着したアンテナホルダを圧縮機筐体上面に取付ける必要がある。そこで、筐体上面にアンテナホルダ取付穴31を設け、アンテナホルダ取付穴31の内側からアンテナホルダを通すようにすることで、配線済みのアンテナを、外に配線が出ることなく取付可能とした。以下、図2を用いて取付手順を説明する。
【0016】
まず、(a)は、アンテナを備えたアンテナホルダ20が商用試験を終えて圧縮機制御部40と配線されている状態であり、商用試験の後工程で筐体上面30が圧縮機筐体として組み付けられている状態である。なお、筐体上面30にはアンテナホルダ取付穴31が設けられている。
【0017】
その後、(b)で、アンテナホルダ20を、配線されたまま、筐体上面30のアンテナホルダ取付穴31に通す。すなわち、アンテナホルダ20を、配線を取り外すことなくアンテナホルダ取付穴31をくぐらせ筐体の外部に取り出す。このとき、アンテナホルダ20は、傷つき防止のために保護フィルム(ビニール袋)で覆われている。そして、(c)で、アンテナホルダ20が、アンテナホルダ取付穴31を通過した後、保護フィルム(ビニール袋)が外され、圧縮機1の筐体内部から筐体外部に出される。そして、(d)で、アンテナホルダ20は、アンテナホルダ取付穴31を覆うように取付けられ、筐体上面30に設置される。このように、圧縮機1の組立工程において、アンテナホルダ取付穴31を有する筐体上面30に配線済みアンテナを装着したアンテナホルダ20が取付けられる。
【0018】
図3は、本実施例におけるアンテナホルダ20の模式図である。また、図4は、本実施例におけるアンテナホルダ20の分解図である。図4に示すように、アンテナホルダ20は、カバー21と基板アンテナ22とアンテナ固定部23から構成される。そして、基板アンテナ22は配線24で接続端子25に接続されている。また、図3に示すように、接続端子25はアンテナ固定部23に固定されている。圧縮機制御部と配線する場合は、圧縮機制御部の配線26の接続端子を基板アンテナ22の接続端子25と接続させる。
【0019】
アンテナホルダ20の形状は、図3図4に示すように、横幅をW1、縦幅をL1、高さをH1とすると、それぞれの長さの関係は、H1<L1<W1である。アンテナホルダ20をアンテナホルダ取付穴31に通すときは、アンテナホルダ20の最長の辺であるW1が含まれないL1-H1平面が筐体上面3と水平となるようにする。
【0020】
図5は、本実施例における圧縮機の筐体上面30のアンテナホルダ取付穴部分の上面図である。筐体上面30は、アンテナホルダ20を取付けるためのアンテナホルダ取付穴31を有する。アンテナホルダ取付穴31の横幅をW2、縦幅をL2とする。アンテナホルダ20の横幅W1と縦幅L1との関係は、W2<W1、L2<L1である。これは、アンテナホルダ20をアンテナホルダ取付穴31に取付けた時、アンテナホルダ取付穴31がアンテナホルダ20で完全に覆われるようにするためである。すなわち、アンテナホルダ取付穴31は、アンテナホルダ20を取付け後の面積よりも小さい取付け穴とする。また、アンテナホルダ20をアンテナホルダ取付穴31に通すために、アンテナホルダ20のL1-H1平面の寸法が通過するようなW2、L2とする必要がある。
【0021】
このように、本実施例によれば、配線済みアンテナを装着したアンテナホルダを、圧縮機の筐体上面が取付けられた後に筐体上面に取付けが可能であり、なおかつアンテナの配線を圧縮機の外部に出さず、圧縮機のアンテナの導通状態を保証した状態で圧縮機を出荷することが可能となる。
【実施例2】
【0022】
実施例1では、基板アンテナをアンテナホルダ20に装着した状態で、アンテナホルダ取付穴31に通すことで対応した。これに対して、本実施例では、基板アンテナは、アンテナホルダ20に装着せずにアンテナホルダ取付穴31を通す例について説明する。
【0023】
本実施例では、実施例1における図2の(a)において、アンテナと圧縮機制御部40が配線されている状態ではあるが、アンテナホルダ20にアンテナは装着されていない状態とする。
【0024】
そして、図4に示すアンテナである基板アンテナ22のみを、配線されたまま筐体上面30のアンテナホルダ取付穴31に通す。そして、その後、アンテナホルダ取付穴31を通過した基板アンテナ22をアンテナホルダ20に装着し、アンテナホルダ20をアンテナホルダ取付穴31に取付ける。
【0025】
このように、本実施例ではアンテナホルダ20に装着しない基板アンテナ22のみをアンテナホルダ取付穴31に通すので、アンテナホルダ取付穴31を基板アンテナ22が通過するような寸法とすればよい。よって、アンテナホルダ取付穴31を通過した後に基板アンテナ22をアンテナホルダ20に装着するので、実施例1に比べて作業性は劣るものの、アンテナホルダ取付穴31を小さくできるという利点がある。
【0026】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:圧縮機、20:アンテナホルダ、21:カバー、22:基板アンテナ、23:アンテナ固定部、24、26:配線、25:接続端子、30…筐体上面、31…アンテナホルダ取付穴、40:圧縮機制御部
図1
図2
図3
図4
図5