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  • 特許-車両用制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20230613BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20230613BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20230613BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20230613BHJP
   B60W 20/14 20160101ALI20230613BHJP
   F16H 59/48 20060101ALI20230613BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20230613BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20230613BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/543
B60L7/14
B60W20/14
F16H59/48
F16H59/68
F16H61/662
F16H63/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019104301
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020196362
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】立脇 敬一
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-074997(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152354(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/189896(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/543
B60L 7/14
B60W 20/14
F16H 59/48
F16H 59/68
F16H 61/662
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源としてのエンジンと電動モータと、
前記エンジンと電動モータの駆動力が入力される無段変速機と、
エンジン停止時に、前記無段変速機に作動油を供給する電動オイルポンプが設けられたハイブリッド車両の減速時には、前記無段変速機をロー側への戻し変速を実行しつつ、前記電動モータを発電機として作用させて回生トルクを発生させる車両用制御装置であって、
前記発生する回生トルクに、前記ハイブリッド車両の減速度が大きくなるにつれて小さくなるような制限を設定する、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記設定した制限は、前記ハイブリッド車両が前記無段変速機の変速比が最ローとなる近傍の車速まで低下したときに作動する、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記設定した制限は、前記電動オイルポンプのトータルの必要流量に基づき、より小さくなるように修正する、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無段変速機の入力側に電動モータを配置したハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-234854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ハイブリッド車両では、ドライバの減速要求に対し、摩擦ブレーキ装置によるブレーキ力と電動モータによる回生トルクを調整して減速力を発生させるが、電動モータによる回生トルクを大きくすると無段変速機の伝達トルクが大きくなるため、ベルトあるいはチェーンをクランプするためのプーリ油圧が高くなる。
また、減速度が大きい場合、変速線に追従してロー変速させるためには、プーリのストロークに大流量の作動油が必要となる。
このため、ドライバの減速要求が大きい場合に、電動モータの回生トルクを増大させて高減速度を発生させると、変速流量としてのプーリに供給する作動油が高圧かつ大流量となるため、電動オイルポンプが大型化してコストや重量が増加し、レイアウト性も悪化してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、電動オイルポンプの大型化を抑制した車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制御装置では、発生する回生トルクに、前記ハイブリッド車両の減速度が大きくなるにつれて小さくなるような制限を設定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
よって、電動オイルポンプの大型化を抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成図である。
図2】実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すフローチャートである。
図3】実施形態1の回生トルクの制限マップを示す図である。
図4】実施形態1の車両減速時の状態変化を示す変速線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
図1は、本発明が適用される車両のシステム構成図である。
【0010】
[車両駆動装置の構成]
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、駆動源としてのエンジン3およびバッテリ10を電源とする電動モータ4を有している。
また、エンジン3および電動モータ4間に、プライマリプーリ5bおよびセカンダリプーリ5c、無端ベルト5dを備える無段変速機5が設けられている。
【0011】
プライマリプーリ5bのプライマリ軸50の一方側(図中左側)には、クラッチ6、トルクコンバータ11を介してエンジン3が連結され、プライマリプーリ5bのプライマリ軸50の他方側(図中右側)には、電動モータ4が連結されている。
また、セカンダリプーリ5cのセカンダリ軸51には、駆動輪出力軸18が連結されている。この駆動輪出力軸18には、ディファレンシャル機構16および一対のアクスル軸17を介して一対の駆動輪15が連結されている。
【0012】
また、エンジン3のクランク軸3cには、駆動ベルト3bを介してモータジェネレータ9が連結されている。モータジェネレータ9は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)であり、モータジェネレータ9を用いてクランク軸3cを回転させ、エンジン3を始動することが可能となっている。
【0013】
トルクコンバータ11とプライマリプーリ5bとの間に設けられたクラッチ6は、開放状態と締結状態とに切り換えることができる。クラッチ6を解放状態に切り換えることにより、プライマリプーリ5bとエンジン3とを切り離すことが可能となる。
これにより、走行モードをEVモードに設定することができ、エンジン3を停止させて電動モータ4の駆動力のみを各駆動輪15に伝達することが可能となる。
【0014】
一方、クラッチ6を締結状態に切り換えることにより、プライマリプーリ5bとエンジン3とを接続することが可能となる。これにより、走行モードをHEVモードに設定することができ、電動モータ4およびエンジン3の駆動力を各駆動輪15に伝達することが可能となる。
【0015】
前述したように、電動モータ4と各駆動輪15との間に設けられる無段変速機5は、電動モータ4のロータ軸4bに連結されるプライマリ軸50と、これに平行となるセカンダリ軸51とを有している。
プライマリ軸50にはプライマリプーリ5bが設けられており、プライマリプーリ5bの背面側にはプライマリ室5b1が区画されている。また、セカンダリ軸51にはセカンダリプーリ5cが設けられており、セカンダリプーリ5cの背面側にはセカンダリ室5c1が区画されている。
さらに、プライマリプーリ5bおよびセカンダリプーリ5cには無端ベルト5dが巻き掛けられている。
【0016】
そして、プライマリ室5b1に供給されるプライマリ圧とセカンダリ室5c1に供給されるセカンダリ圧とを調整することにより、プーリ溝幅を変化させて無端ベルト5dの巻き付け径を変化させることが可能となる。
これにより、プライマリ軸50からセカンダリ軸51に対する無段変速が可能となる。
【0017】
無段変速機5,トルクコンバータ11,クラッチ6等の油圧系に対して作動油を給排するために、トロコイドポンプ等よりなるオイルポンプ8が設けられている。
また、作動油の供給先や圧力を制御するために、複数の電磁バルブや油路(何れも図示せず)によって形成されるバルブユニット52が設けられている。
そして、オイルポンプ8から吐出された作動油は、バルブユニット52を経て、無段変速機5,トルクコンバータ11,クラッチ6等に供給される。
【0018】
オイルポンプ8は、アウタロータ8aとこれに組み込まれるインナロータ8bとを備えている。
オイルポンプ8のインナロータ8bの一端(図中左側)には、ロータ軸81および従動スプロケット82が取り付けられている。トルクコンバータ11のポンプシェル11aに固定されるとともにロータ軸81に平行となる中空軸84には、駆動スプロケット85が取り付けられている。
駆動スプロケット85および従動スプロケット82にはチェーン83が巻き掛けられており、中空軸84とインナロータ8bとはチェーン83を介して連結されている。
【0019】
オイルポンプ8のインナロータ8bには、プライマリ軸50と中空軸84とが連結されているため、エンジン3で駆動されるHEVモードでの車両走行時においては、エンジン3によって常にオイルポンプ8を駆動することができ、オイルポンプ8からの作動油によって無段変速機5等を油圧制御することが可能となる。
【0020】
一方、EVモードでの車両走行時には、エンジン3が停止するとともにオイルポンプ8が停止することになるが、この時においても、無段変速機5等の油圧系に対する作動油の供給を継続する必要がある。そのため、EVモードでの車両走行時に油圧系の基本油圧であるライン圧を確保するために、電動オイルポンプ7を備えている。この電動オイルポンプ7は、駆動モータ7aと駆動モータ7aにより駆動されるオイルポンプ7bとを備えている。
【0021】
[車両用制御装置の構成]
車両用制御装置2は、エンジン3、エンジン3始動用のモータジェネレータ9を制御するエンジン制御装置3a、無段変速機5、トルクコンバータ11、クラッチ6、電動オイルポンプ7を制御する変速機制御装置5a、電動モータ4を制御するモータ制御装置4aを制御している。
なお、車両用制御装置2には、アクセルペダルセンサ20、車速センサ21、ブレーキペダルセンサ(操作量または踏力)22、ブレーキ油圧センサ23、電動モータ回転速度センサ24、プライマリプーリ回転速度センサ25からの情報が入力されている。
【0022】
図2は、実施形態1の車両用制御装置2の制御処理を示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
図3は、実施形態1の回生トルクの制限マップを示す図であり、図4は、実施形態1の車両減速時の状態変化を示す変速線図である。
なお、図3の縦軸は回生トルク制限値αで、横軸は減速度であり、図4の縦軸はプライマリプーリ5bに入力される入力回転数であり、横軸は車速である。
【0023】
ステップS1では、EVモードか否かを判定する。
すなわち、エンジン3が停止し、オイルポンプ8が非駆動状態か否かを判定している。
EVモードのときには、ステップS2へ進み、EVモードでないときには、ステップS1へ戻る。
ステップS2では、ブレーキペダルセンサ(操作量または踏力)22からの情報により、ドライバによるブレーキ操作があったか否かを判定する。
ドライバによるブレーキ操作があったときには、ステップS3へ進み、ドライバによるブレーキ操作がないときには、ステップS2へ戻る。
ステップS3では、ハイブリッド車両1の減速度を取得する。
すなわち、ブレーキペダルセンサ(操作量または踏力)22あるいはブレーキ油圧センサ23からの情報により、減速度を取得する。
ステップS4では、図3に示す回生トルクの制限マップから、変速流量を確保するための回生トルクを制限する制限値αを取得する。
これにより、減速度が大きい場合、電動モータ4による回生トルクを大きくすると無段変速機5の伝達トルクが大きくなるため、無端ベルト5dをクランプするためのプーリ油圧が高くなり、さらに、変速線に追従してロー変速させるためには、両プーリ5b、5cのストロークに大流量の作動油が必要となるが、減速度が大きくなるほど、電動モータ4の回生トルクを制限したので、電動オイルポンプ7への負荷の増大を抑制することができ、電動オイルポンプ7の大型化が抑制できる。
ステップS5では、油温に対応する作動油のリーク量、クーラ流量、潤滑流量から変速流量以外の必要流量Qaを算出する。
ステップS6では、算出した必要流量Qaが所定流量Qo以上か否かを判定する。
算出した必要流量Qaが所定流量Qo以上のときには、ステップS7へ進み、算出した必要流量Qaが所定流量Qo未満のときには、ステップS10へ進む。
ステップS7では、電動オイルポンプ7の負荷をさらに減らすために、制限値αをより小さく修正して、最終制限値αaを算出し、設定する。
これにより、変速流量以外の要因による流量不足により発生する各種問題の発生も抑制することができる。
ステップS8では、ハイブリッド車両1の車速Vが、図4に示す最ロー近傍の所定車速Vo以下か否かを判定する。
ハイブリッド車両1の車速Vが、所定車速Vo以下のときには、ステップS9へ進み、ハイブリッド車両1の車速Vが、所定車速Vo以下でないときには、ステップS8へ戻る。
これにより、変速流量は、変速比が最ロー近傍で大きくなるので、このときの所定車速Voにて、電動モータ4の回生トルクを制限することにより、電動オイルポンプ7の負荷を減らすことで、電動オイルポンプ7の大型化が抑制できるとともに、できるだけ回生トルクによる発電もでき、燃費悪化も抑制することができる。
ステップS9では、最終制限値αaの回生トルクを電動モータ4により発生させるとともに、摩擦ブレーキ装置のブレーキ力を増加させる。
ステップS10では、回生トルクの制限マップから取得した制限値αを最終制限値αaとして設定する。
【0024】
以上説明したように、実施形態1にあっては下記の作用効果が得られる。
(1)ハイブリッド車両1の減速時の減速度に対応して、電動モータ4の回生トルクを制限して、摩擦ブレーキ装置のブレーキ力を増加するようにした。
よって、減速度が大きい場合、電動モータ4による回生トルクを大きくすると無段変速機5の伝達トルクが大きくなるため、無端ベルト5dをクランプするためのプーリ油圧が高くなり、さらに、変速線に追従してロー変速させるためには、両プーリ5b、5cのストロークに大流量の作動油が必要となるが、減速度が大きくなるほど、電動モータ4の回生トルクを制限したので、電動オイルポンプ7への負荷の増大を抑制することができ、電動オイルポンプ7の大型化が抑制できる。
【0025】
(2)電動モータ4の回生トルクの制限は、高圧、大流量の作動油が必要となる最ロー近傍の所定車速Vo以下で、実行するようにした。
よって、変速流量は、変速比が最ロー近傍で大きくなるので、このときの所定車速Voにて、電動モータ4の回生トルクを制限することにより、電動オイルポンプ7の負荷を減らすことで、電動オイルポンプ7の大型化が抑制できるとともに、できるだけ回生トルクによる発電もでき、燃費悪化も抑制することができる。
【0026】
(3)変速流量以外の油温に対応する作動油のリーク量、クーラ流量、潤滑流量から算出した必要流量Qaが、所定流量Qo以上のときには、回生トルクを制限する制限値αをより小さく修正して、最終制限値αaを算出し、設定するようにした。
よって、変速流量以外の要因による流量不足により発生する各種問題も抑制することができる。
【0027】
[他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態を実施形態に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態1では、ブレーキペダルセンサ(操作量または踏力)22あるいはブレーキ油圧センサ23からの情報により、減速度を取得するようにしたが、Gセンサ、車速センサの変化、GPSによる位置情報の変化等から取得してもよい。
また、車両用制御装置が、エンジン制御装置、変速機制御装置を制御しているが、車両用制御装置が、エンジン制御装置、変速機制御装置の機能を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ハイブリッド車両
2 車両用制御装置
3 エンジン
3a エンジン制御装置
4 電動モータ
4a 電動モータ制御装置
5 無段変速機
5a 変速機制御装置
5b プライマリプーリ
5c セカンダリプーリ
5d 無端ベルト
6 クラッチ
6a 一方側部材
6b 他方側部材
7 電動オイルポンプ
9 モータジェネレータ
10 バッテリ
11 トルクコンバータ
15 駆動輪
α 回生トルク制限値
図1
図2
図3
図4