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特許7294897レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20230613BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20230613BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230613BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20230613BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230613BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20230613BHJP
   H02N 2/12 20060101ALI20230613BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20230613BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G03B5/00 J
G03B15/00 V
G03B17/02
G03B30/00
H02N2/04
H02N2/12
H04N23/57
H04N23/68
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019107368
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020201359
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505060288
【氏名又は名称】ミニスイス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】MINISWYS S.A.
【住所又は居所原語表記】Quai du Bas 31a, Biel / Bienne Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホスリ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ローテン マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ブルマン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ボーム ロアン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊
(72)【発明者】
【氏名】板垣 洋一
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017923(JP,A)
【文献】特表2008-503995(JP,A)
【文献】国際公開第2020/036157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G03B 5/00
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 30/00
H02N 2/04
H02N 2/12
H04N 23/57
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを支持するレンズホルダーと、
前記レンズホルダーの外周に配置されたリング状の回転体と、
前記回転体の回転を前記レンズホルダーの光軸方向の移動に変換する機械要素と、
板状の圧電素子と、板状の共振部と、湾曲形状の動力伝達部と、を有し、前記圧電素子及び前記共振部が、互いの板面を貼り合わせた状態で前記回転体の外周に対向して配置され、前記動力伝達部が、前記湾曲形状を前記回転体の外周に沿わせた状態で前記回転体の外周に対向して配置され、前記動力伝達部の周方向両端が、前記共振部及び前記回転体に接続された、超音波モーターと、を有し、
前記圧電素子の振動を、前記振動に共振する前記共振部の直線運動により前記動力伝達部を前記周方向に移動させることで回転運動に変換して、前記レンズホルダーを前記光軸方向に移動させる、
レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記超音波モーターは、前記共振部と接する前記動力伝達部の当接部分を前記周方向に長くすることにより、前記レンズホルダーの前記光軸方向のストロークが長くなる構成である、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記超音波モーターは、前記共振部と接する前記動力伝達部の当接部分の前記周方向の長さが、前記レンズホルダーの前記光軸方向のストロークに応じた長さである、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、
前記レンズと、
前記レンズにより結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項5】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項4に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有するレンズ駆動装置が適用される(例えば特許文献1)。
【0003】
AF機能及びOIS機能を有するレンズ駆動装置は、レンズ部を光軸方向に移動させるためのオートフォーカス駆動部(以下「AF駆動部」と称する)と、レンズ部を光軸方向に直交する平面内で揺動させるための振れ補正駆動部(以下「OIS駆動部」と称する)と、を備える。特許文献1では、AF駆動部及びOIS駆動部に、ボイスコイルモーター(VCM)が適用されている。
【0004】
また、近年では、複数(典型的には2つ)のレンズ駆動装置を有するカメラモジュールの実用化が進められている(いわゆるデュアルカメラ)。デュアルカメラは、焦点距離の異なる2枚の画像を同時に撮像できたり、静止画像と動画像を同時に撮像できたりするなど、利用シーンに応じて様々な可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-210550号公報
【文献】国際公開第2015/123787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、VCMを利用したレンズ駆動装置は、外部磁気の影響を受けるため、高精度の動作が損なわれる虞がある。特に、レンズ駆動装置が並置されるデュアルカメラにおいては、レンズ駆動装置間で磁気干渉が生じる可能性が高い。
【0007】
一方、特許文献2には、AF駆動部及びOIS駆動部に超音波モーターを適用したレンズ駆動装置が開示されている。特許文献2に開示のレンズ駆動装置は、マグネットレスであるため外部磁気の影響を低減できるが、構造が複雑であり、小型化及び低背化を図るのが困難である。
【0008】
本発明の目的は、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置の一態様は、
レンズを支持するレンズホルダーと、
前記レンズホルダーの外周に配置されたリング状の回転体と、
前記回転体の回転を前記レンズホルダーの光軸方向の移動に変換する機械要素と、
板状の圧電素子と、板状の共振部と、湾曲形状の動力伝達部と、を有し、前記圧電素子及び前記共振部が、互いの板面を貼り合わせた状態で前記回転体の外周に対向して配置され、前記動力伝達部が、前記湾曲形状を前記回転体の外周に沿わせた状態で前記回転体の外周に対向して配置され、前記動力伝達部の周方向両端が、前記共振部及び前記回転体に接続された、超音波モーターと、を有し、
前記圧電素子の振動を、前記振動に共振する前記共振部の直線運動により前記動力伝達部を前記周方向に移動させることで回転運動に変換して、前記レンズホルダーを前記光軸方向に移動させる。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールの一態様は、
上記のレンズ駆動装置と、
前記レンズと、
前記レンズにより結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
図2図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
図3図3A図3Bは、レンズ駆動装置の外観斜視図である。
図4図4は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
図5図5は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
図6図6A図6Bは、第1のOIS駆動部の斜視図である。
図7図7は、OIS可動部の分解斜視図である。
図8図8は、OIS可動部の分解斜視図である。
図9図9は、AF駆動部の斜視図である。
図10図10A図10Bは、回転スペーサーの回転に伴うレンズホルダーの挙動を示す図である。
図11図11A図11Bは、車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図1AはスマートフォンMの正面図であり、図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うとともに、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。図3A図3Bは、レンズ駆動装置1の外観斜視図である。図3Bは、図3AをZ軸周りに180°回転した状態を示す。図2図3A及び図3Bに示すように、本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。
【0018】
カメラモジュールAは、例えば、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側(+Z側)が光軸方向受光側(被写体側)、下側(-Z側)が光軸方向結像側である。また、X方向及びY方向はZ軸に直交する「光軸直交方向」であり、XY面は光軸に直交する「光軸直交面」である。
【0019】
図2等に示すように、カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現するレンズ駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部(図示略)、及び全体を覆うカバー3等を備える。
【0020】
カバー3は、光軸方向から見た平面視で矩形状の有蓋四角筒体である。本実施の形態では、カバー3は、平面視で正方形状を有している。カバー3は、上面に概略円形の開口3aを有する。レンズ部2は、開口3aから外部に臨み、光軸方向における移動に伴い、カバー3の開口面よりも受光側に突出するように構成される。カバー3は、レンズ駆動装置1のOIS固定部20(図4参照)に、例えば、接着により固定される。
【0021】
撮像部(図示略)は、レンズ駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像部(図示略)は、例えば、イメージセンサー基板及びイメージセンサー基板に実装される撮像素子を有する。撮像素子は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成される。撮像素子は、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。レンズ駆動装置1は、イメージセンサー基板(図示略)に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。レンズ駆動装置1の駆動制御を行う制御部は、イメージセンサー基板に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0022】
図4図5は、レンズ駆動装置1の分解斜視図である。図5は、図4をZ軸周りに90°回転させて下方から見た状態を示す。
図4図5に示すように、本実施の形態において、レンズ駆動装置1は、OIS可動部10(第2可動部)、OIS固定部20(第2固定部)、OIS駆動部30(XY方向駆動部)及びOIS支持部40(第2支持部)等を備える。
【0023】
OIS可動部10は、振れ補正時に光軸直交面内で揺動する部分である。OIS可動部10は、AF可動部11(第1可動部)、第1ステージ12(第1固定部)、AF駆動部13(Z方向駆動部)、AF支持部14(第1支持部)及び回転スペーサー15を有するAFユニットを含む(図7等参照)。
OIS固定部20は、OIS支持部40を介してOIS可動部10が接続される部分である。OIS固定部20は、ベース21を含む。
OIS支持部40は、OIS固定部20に対して、OIS可動部10を光軸方向に離間した状態で支持する。OIS支持部40は、第2ステージ41X、41Y、ボール42、43及びOIS用付勢部材44を含む。
OIS可動部10は、OIS固定部20に対して光軸方向に離間して配置され、OIS支持部40を介してOIS固定部20と連結される。また、OIS可動部10とOIS固定部20は、OIS可動部10の外周面の4箇所に配置されたOIS用付勢部材44によって、互いに近づく方向に付勢されている。
本実施の形態では、OIS支持部40を構成するボール42、43(計11個)の転動可能な方向を規制することにより、OIS可動部10をXY面内で精度よく揺動できるようになっている。なお、OIS支持部40を構成するボール42、43の数は、適宜変更することができる。
【0024】
ベース21は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)、又は液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)からなる成形材料で形成された、平面視で矩形状の部材であり、中央に円形の開口21aを有する。
ベース21は、2つの角部に、OIS駆動部30が配置されるOISモーター固定部21bを有する。OISモーター固定部21bは、ベース21の主面から光軸方向受光側に向けて突出して形成され、OIS駆動部30を保持可能な形状を有している。
【0025】
図示を省略するが、ベース21には、例えば、インサート成形により、端子金具及び配線が配置されている。また、ベース21には、ホール素子51X、51Yが実装されたセンサー基板が配置されている。
配線は、AF駆動部13(図7等参照)及びOIS駆動部30への給電ラインを含む。配線は、例えば、ベース21の周縁部から露出し、センサー基板に形成された配線及びOIS用付勢部材44と電気的に接続される。
【0026】
また、ベース21は、ボール42を収容するボール収容部21c、21d、21eを有する。ボール収容部21cは、円形状に凹んで形成されており、ベース21と第1ステージ12との間に介在するボール42を収容する。ボール収容部21dは、X方向に延びる矩形状に凹んで形成されており、ベース21と第2ステージ41Xとの間に介在するボール42を収容する。ボール収容部21eは、Y方向に延びる矩形状に凹んで形成されており、ベース21と第2ステージ41Yとの間に介在するボール42を収容する。ボール収容部21d、21eの側面は、例えば、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成される。
【0027】
センサー基板(図示略)は、ホール素子51X、51Y用の給電ライン及び信号ラインを含む配線(図示略)を有する。ホール素子51X、51Yは、センサー基板に形成された配線(図示略)を介して、ベース21の配線(図示略)と電気的に接続される。第2ステージ41X、41Yにおいて、ホール素子51X、51Yに対向する位置にはマグネット52X、52Yが配置されている。ホール素子51X、51Y及びマグネット52X、52YからなるXY位置検出部により、OIS可動部10のX方向及びY方向の位置が検出される。
【0028】
第2ステージ41X、41Yは、例えば、液晶ポリマーで形成され、全体としてL字形状を呈する。第2ステージ41X、41Yの内周面は、レンズホルダー11の外形に沿って円弧状に形成されている。第2ステージ41X、41Yは、それぞれ、X方向、Y方向に沿って配置されている。また、第2ステージ41X、41Yが互いに独立して移動できるように、それぞれの近接する部分は、所定の間隔で離間している。
第2ステージ41X、41Yの外側面は、内側に凹んで形成されており、レンズ駆動装置1を組み立てたときに、OIS駆動部30X、30Yが位置するようになっている。本実施の形態では、第2ステージ41X、41Yを全体としてL字形状に形成するとともに、第1ステージ12において、薄肉に形成された部分の下方に第2ステージ41X、41Yを配置することにより、OIS可動部10の低背化が図られている。
【0029】
第2ステージ41X、41Yの周縁には、光軸方向受光側に突出する係合片41e、41fが設けられている。係合片41e、41fには、OIS動力伝達部33の一端部が固定される。また、係合片41e、41fは、第1ステージ12に設けられた係合溝12g、12hに遊嵌される。具体的には、係合片41eと係合溝12gは、少なくとも第1ステージ12がY方向に移動する際にY方向に対向する面同士が当接しない程度に係合し、係合片41fと係合溝12hは、少なくとも第1ステージ12がY方向に移動する際にY方向に対向する面同士が当接しない程度に係合する。すなわち、第1ステージ12がY方向に移動しても第2ステージ41Xは変位せず、第1ステージ12がX方向に移動しても第2ステージ41Yは変位しないようになっている。
【0030】
それぞれの第2ステージ41X、41Yは、下面(光軸方向結像側の面)に、ボール42を収容する3つのボール収容部41a、41bを有する。ボール収容部41aは、ベース21のボール収容部21d、21eに対向する。ボール収容部41a、41bは、それぞれ、X方向、Y方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。また、ボール収容部41a、41bの側面は、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成されている。
また、それぞれの第2ステージ41X、41Yは、上面(光軸方向受光側の面)に、ボール43を収容する2つのボール収容部41c、41dを有する。ボール収容部41c、41dは、それぞれ、Y方向、X方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。ボール収容部41c、41dの側面は、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成されている。
【0031】
ボール42は、ベース21のボール収容部21c~21eと、第1ステージ12のボール収容部12b及び第2ステージ41X、41Yのボール収容部41a、41bにより挟持される。特に、ベース21のボール収容部21d、21eと第2ステージ41X、41Yのボール収容部41a、41bとの間において、ボール42は多点接触となっている。したがって、ボール42は、安定してX方向又はY方向に転動する。
また、ボール43は、第2ステージ41X、41Yのボール収容部41c、41dと第1ステージ12の下面により、多点接触で挟持される。したがって、ボール43は、安定してX方向又はY方向に転動する。
【0032】
OIS用付勢部材44は、例えば、引張コイルばねで構成され、OIS可動部10とOIS固定部20を連結する。本実施の形態では、OIS用付勢部材44の一端は、ベース21の配線(図示略)に接続され、他端は、第1ステージ12の配線(図示略)に接続されている。OIS用付勢部材44は、OIS可動部10とOIS固定部20を連結したときの引張荷重を受けて、OIS可動部10とOIS固定部20が互いに近づくように作用する。すなわち、OIS可動部10は、OIS用付勢部材44によって、光軸方向に付勢された状態(ベース21に押し付けられた状態)で、XY面内で揺動可能に保持されている。これにより、OIS可動部10をがたつきのない安定した状態で保持することができる。
また、本実施の形態では、OIS用付勢部材44は、AF駆動部13への給電ラインとして機能する。
【0033】
OIS駆動部30は、OIS可動部10をX方向及びY方向に移動させるアクチュエーターである。具体的には、OIS駆動部30は、OIS可動部10をX方向に移動させる第1のOIS駆動部30X(第1のXY方向駆動部)と、OIS可動部10をY方向に移動させる第2のOIS駆動部30Y(第2のXY方向駆動部)とで構成される。
第1のOIS駆動部30Xは、X方向に沿って延在するように、ベース21のOISモーター固定部21bに固定される。第2のOIS駆動部30Yは、Y方向に沿って延在するように、ベース21のOISモーター固定部21bに固定される。すなわち、第1のOIS駆動部30X及び第2のOIS駆動部30Yは、互いに直交する辺に沿って配置される。
【0034】
OIS駆動部30の構成を図6A図6Bに示す。図6Aは、OIS駆動部30の各部材を組み付けた状態を示し、図6Bは、OIS駆動部30の各部材を分解した状態を示す。なお、図6A図6Bは、第2のOIS駆動部30Yを示しているが、第1のOIS駆動部30Xの主要構成は同様であるので、OIS駆動部30を示す図として扱う。
【0035】
図6A図6Bに示すように、OIS駆動部30は、OIS共振部31、OIS圧電素子32、OIS電極(図示略)及びOIS動力伝達部33を有する。OIS共振部31、OIS圧電素子32及びOIS電極(図示略)により超音波モーターが構成され、超音波モーターの駆動力は、OIS動力伝達部33を介して第2ステージ41X、41Yに伝達される。
【0036】
OIS圧電素子32は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。
OIS電極(図示略)は、OIS共振部31及びOIS圧電素子32を挟持し、OIS圧電素子32に電圧を印加する。OIS電極は、例えば、ベース21の配線(図示略)と電気的に接続される。
【0037】
OIS共振部31は、導電性材料で形成され、OIS圧電素子32の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。本実施の形態では、OIS共振部31は、OIS圧電素子32に挟持される略矩形状の胴部31a、胴部31aの上部及び下部から延在する2つのアーム部31b、胴部31aの中央部から突出する突出部31c、及び、胴部31aの中央部から突出部31cとは反対側に延在する通電部31dを有している。通電部31dは、例えば、ベース21の配線と電気的に接続される。2つのアーム部31bは対称的な形状を有し、それぞれの自由端部がOIS動力伝達部33に当接し、OIS圧電素子32の振動に共振して対称的に変形する。
【0038】
OIS共振部31の胴部31aに、厚さ方向からOIS圧電素子32が貼り合わされ、OIS電極(図示略)により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。例えば、給電経路の一方がOIS電極に接続され、他方がOIS共振部31の通電部31dに接続されることで、OIS圧電素子32に電圧が印加され、振動が発生する。
【0039】
OIS共振部31は、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、OIS共振部31は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。異なる挙動とは、OIS動力伝達部33をX方向又はY方向に前進させる挙動と、後退させる挙動である。
【0040】
OIS動力伝達部33は、一方向に延在するチャッキングガイドであり、一端がOIS共振部31に接続され、他端が第2ステージ41X、41Yに接続される。OIS動力伝達部33は、OISモーター当接部33a、ステージ固定部33c、及び連結部33bを有する。OISモーター当接部33aは、例えば、断面略L字状に形成され、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部と当接する。ステージ固定部33cは、OIS動力伝達部33の端部に配置され、第2ステージ41X、41Yの係合片41e、41f(図4等参照)に固定される。連結部33bは、OISモーター当接部33aとステージ固定部33cを連結する部分であり、ステージ固定部33cから2つに分岐して互いに平行に形成されている。
【0041】
OISモーター当接部33a間の幅は、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部間の幅よりも広く設定される。これにより、OIS共振部31にOIS動力伝達部33を取り付けたときに、OIS動力伝達部33が板バネとして機能し、OIS共振部31のアーム部31bを押し広げる方向に付勢力が作用する。この付勢力により、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部間にOIS動力伝達部33が保持され、OIS共振部31からの駆動力がOIS動力伝達部33に効率よく伝達される。
【0042】
OIS共振部31とOIS動力伝達部33は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をX方向又はY方向に大きくするだけで、レンズ駆動装置1の外形を大きくすることなく、OIS可動部10の移動距離(ストローク)を長くすることができる。
【0043】
第1のOIS駆動部30Xは、ベース21と第2ステージ41Xを連結するように固定されており、第2のOIS駆動部30Xは、ベース21と第2ステージ41Yを連結するように固定されている。
第1のOIS駆動部30XによるX方向の振れ補正時は、第2ステージ41X及び第1ステージ12が移動し、第2ステージ41Yは移動しない。一方、第2のOIS駆動部30YによるY方向の振れ補正時は、第2ステージ41Y及び第1ステージ12が移動し、第2ステージ41Xは移動しない。すなわち、一方のOIS駆動部30によるOIS可動部10の移動は、他方のOIS駆動部30の構造によって妨げられないようになっている。OIS可動部10のZ軸周りの回転を防止することができるので、OIS可動部10をXY平面内で精度よく揺動させることができる。
【0044】
図7図8は、OIS可動部10の分解斜視図である。図8は、図7をZ軸周りに90°回転させて下方から見た図を示す。なお、図8では、AF駆動部13を回転スペーサー15に取り付けた状態を示している。
図7図8に示すように、本実施の形態において、OIS可動部10は、AF可動部11、第1ステージ12、AF駆動部13、AF支持部14及び回転スペーサー15等を有する。
【0045】
AF可動部11は、ピント合わせ時に光軸方向に移動する部分である。AF可動部11は、第1ステージ12(第1固定部)に対して径方向に離間して配置され、AF支持部14を介して第1ステージ12と接続される。
【0046】
AF可動部11は、レンズ部2(図2参照)を保持するレンズホルダーで構成される(以下、「レンズホルダー11」と称する)。レンズホルダー11は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ、液晶ポリマー等で形成される。レンズホルダー11は、筒状のレンズ収容部11aを有する。レンズ収容部11aには、レンズ部2(図2参照)が、例えば、接着により固定される。
【0047】
レンズホルダー11は、レンズ収容部11aの上部外周縁に、径方向外側に突出するスライド部11bを有する。スライド部11bの下面11cは、光軸方向に傾斜して形成されており、回転スペーサー15の回転に連動してスライド部11bが光軸方向結像側にせり上がり、レンズホルダー11が光軸方向に移動するようになっている。
【0048】
第1ステージ12は、AF支持部14を介してレンズホルダー11を支持する部分である。第1ステージ12の下方には、ボール43を介して第2ステージ41X、41Yが配置される。第1ステージ12は、振れ補正時に、第2ステージ41X、41Yの移動に連動して、X方向及びY方向に移動する。
【0049】
第1ステージ12は、略矩形筒状の部材であり、例えば、液晶ポリマーで形成される。第1ステージ12は、レンズホルダー11に対応する部分に略円形状の開口12aを有する。第1ステージ12において、第2ステージ41X、41Yに対応する部分は、他の部分に比較して、第2ステージ41X、41Yの厚み分だけ薄肉に形成されている。
【0050】
第1ステージ12は、下面に、ベース21との間に介在する42を収容するボール収容部12bを有する。ボール収容部12bは、ベース21のボール収容部21eとZ方向において対向する位置に、円形状に凹んで形成されている。また、第1ステージ12は、下面に、第2ステージ41X、41Yとの間に介在するボール43を収容するボール収容部12m、12nを有する。ボール収容部12m、12nは、それぞれ、第2ステージ41X、41Yのボール収容部41c、41dとZ方向において対向する位置に、Y方向、X方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。ボール収容部12m、12nの側面は、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成されている。
第1ステージ12は、上面の4隅に、AF支持部14を固定する上バネ固定部12cを有する。上バネ固定部12cは、主面12jよりも光軸方向受光側に突出して形成されている。
【0051】
第1ステージ12は、開口12aの周縁部に、スペーサー配置部12d及びモーター固定部12fを有する。スペーサー配置部12dは、主面12jよりも光軸方向結像側に凹んで形成されており、ボール17を収容するボール収容部12eを有している。スペーサー配置部12dと主面12jとの段差によって、回転スペーサー15の回転が規制される。モーター固定部12fには、AF駆動部13が固定される。
【0052】
本実施の形態では、3つのスペーサー配置部12dが、周方向に沿って等間隔で設けられている。これにより、回転スペーサー15の姿勢が安定するので、回転動作を精度良く制御することができる。なお、スペーサー配置部12dは、2又は4以上設けられてもよい。
【0053】
図示を省略するが、第1ステージ12には、例えば、インサート成形により、配線が配置されている。配線は、適宜、第1ステージ12から露出しており、この部分に、AF駆動部13及びOIS用付勢部材44と電気的に接続される。AF駆動部13には、OIS用付勢部材44及び第1ステージ12の配線を介して給電が行われる。
【0054】
また、第1ステージ12のX方向に沿う一方の側面及びY方向に沿う一方の側面において、第2ステージ41X、41Yの係合片41e、41fと対応する位置には、係合溝12g、12hが設けられている。レンズ駆動装置1を組み立てた状態において、第2ステージ41X、41Yの係合片41e、41fは、第1ステージ12の係合溝12g、12hと係合する。これにより、OIS可動部10(第1ステージ12)は、第2ステージ41X、41Yの移動に連動して、X方向又はY方向に移動する。
【0055】
AF支持部14は、第1ステージ12に対して、レンズホルダー11を光軸方向に移動可能に支持する。本実施の形態では、AF支持部14は、第1ステージ12に対してレンズホルダー11を光軸方向受光側(上側)で弾性的に支持する上バネで構成されている(以下、「上バネ14」と称する)。上バネ14は、例えば、ベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等の金属材料からなる板バネである。
【0056】
上バネ14は、レンズホルダー固定部14a、ステージ固定部14b、及びアーム部14cを有する。レンズホルダー固定部14aは、レンズホルダー11のレンズ収容部11aの上面に対応する形状を有する。ステージ固定部14bは、第1ステージ12の上バネ固定部12cに対応する位置に設けられる。アーム部14cは、レンズホルダー固定部14aから延在し、レンズホルダー固定部14aとステージ固定部14bを連結する。
【0057】
上バネ14は、例えば、レンズホルダー固定部14aに設けられた位置決め片14dが、レンズホルダー11のスライド部11bに設けられた位置決め孔11dに係合されることにより、レンズホルダー11に対して位置決めされ、固定される。また、上バネ14は、例えば、ステージ固定部14bが第1ステージ12の上バネ固定部12cに接着されることにより、第1ステージ12に対して固定される。レンズホルダー11が光軸方向に移動するとき、レンズホルダー固定部14aはレンズホルダー11とともに変位し、アーム部14cは弾性的に変形する。
【0058】
回転スペーサー15は、AF駆動部13の直線運動を受けて光軸を中心に回転する回転体である。回転スペーサー15は、円環形状を有し、レンズホルダー11の外周面に沿って配置される。また、回転スペーサー15は、AF駆動部13が接続されるモーター接続部15dを有する。
【0059】
回転スペーサー15は、円環部15a及びステージ固定部15bを有する。ステージ固定部15bは、第1ステージ12のスペーサー配置部12dに対応する位置に設けられ、例えば、円環部15aから光軸方向結像側に突出して形成される。ステージ固定部15bの上面15cは、光軸方向に傾斜して形成されており、レンズホルダー11のスライド部11bが載置される(以下、「ホルダー案内部15c」と称する)。
【0060】
回転スペーサー15のホルダー案内部15cとレンズホルダー11のスライド部11bは、回転スペーサー15の回転に伴って、ホルダー案内部15cに沿ってスライド部11bが摺動する端面カム18(図10A等参照)を構成する。端面カム18は、回転運動を光軸方向の直線運動に変換する機械要素である。
【0061】
本実施の形態では、3つの端面カム18が、周方向に沿って等間隔で設けられている。これにより、回転スペーサー15の回転運動が端面カム18によって直線運動に変換され、レンズホルダー11に均等に伝達されるので、レンズホルダー11の移動動作を精度良く制御することができる。なお、端面カム18は、周方向に沿って等間隔で2つ又は4つ以上設けられてもよい。
【0062】
本実施の形態では、ホルダー案内部15cとスライド部11bの間にはボール16が配置され、両者は間接的に当接しており、回転スペーサー15とレンズホルダー11が滑らかに摺動するようになっている。なお、回転スペーサー15とレンズホルダー11との間にボール16を配置せず、両者が直接的に当接し、摺動するようにしてもよい。
また、回転スペーサー15と第1ステージ12の間には、ボール17が配置され、第1ステージ12上で回転スペーサー15が滑らかに回転するようになっている。
【0063】
AF駆動部13は、レンズホルダー11をZ方向に移動させるアクチュエーターである。AF駆動部13は、OIS駆動部30と同様に、超音波モーターで構成されている。AF駆動部13は、回転スペーサー15の周面に沿うように、第1ステージ12のモーター固定部12fに固定される。
【0064】
AF駆動部13の構成を図9に示す。
図9に示すように、AF駆動部13は、AF共振部131、AF圧電素子132、AF電極(図示略)及びAF動力伝達部133を有する。AF共振部131、AF圧電素子132及びAF電極(図示略)により超音波モーターが構成され、超音波モーターの駆動力は、AF動力伝達部133を介して回転スペーサー15に伝達される。
【0065】
AF圧電素子132は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。
AF電極(図示略)は、AF共振部131及びAF圧電素子132を挟持し、AF圧電素子132に電圧を印加する。AF電極は、例えば、第1ステージ12の配線(図示略)と電気的に接続される。
【0066】
AF共振部131は、導電性材料で形成され、AF圧電素子132の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。本実施の形態では、AF共振部131は、AF圧電素子132に挟持される略矩形状の胴部131a、胴部131aの上部及び下部から延在する2つのアーム部131b、胴部131aの中央部から突出する突出部131c、及び、胴部131aの中央部から突出部131cとは反対側に延在し給電経路(第1ステージ12の配線)と電気的に接続される通電部131dを有している。2つのアーム部131bは対称的な形状を有し、それぞれの自由端部がAF動力伝達部133に当接し、AF圧電素子132の振動に共振して対称的に変形する。
【0067】
AF共振部131の胴部131aに、厚さ方向からAF圧電素子132が貼り合わされ、AF電極(図示略)により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。例えば、AF共振部131の通電部131d及びAF電極が、第1ステージ12の配線(図示略)に接続されることで、AF圧電素子132に電圧が印加され、振動が発生する。
【0068】
AF共振部131は、OIS共振部31と同様に、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、AF共振部131は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。異なる挙動とは、AF動力伝達部133を、周方向に沿って前進させる挙動と、後退させる挙動である。
【0069】
AF動力伝達部133は、周方向に沿って延在するチャッキングガイドであり、一端がAF共振部131に接続され、他端が回転スペーサー15に接続される。AF動力伝達部133は、AFモーター当接部133a、スペーサー固定部133c、及び連結部133bを有する。AFモーター当接部133aは、例えば、平板状に形成され、AF共振部131のアーム部131bの自由端部と当接する。スペーサー固定部133cは、AF動力伝達部133の端部に配置され、回転スペーサー15のモーター接続部15dに固定される。連結部133bは、AFモーター当接部133aとスペーサー固定部133cを連結する部分であり、スペーサー固定部133cから2つに分岐して互いに平行に、かつ収容方向に沿うように湾曲して形成されている。
【0070】
AF動力伝達部133は、AF共振部131の直線運動を受けて運動をするが、AF動力伝達部133の一端は回転スペーサー15に接続されて拘束されているので、AF共振部131のアーム部131bとAF動力伝達部133のAFモーター当接部133aが摺動し、AF動力伝達部133は回転することとなる。つまり、AF駆動部13は、AF動力伝達部133を含めると、振動運動を回転運動に変換しているといえる。
【0071】
AFモーター当接部133a間の幅は、AF共振部131のアーム部131bの自由端部間の幅よりも広く設定される。これにより、AF共振部131にAF動力伝達部133を取り付けたときに、AF動力伝達部133が板バネとして機能し、AF共振部131のアーム部131bを押し広げる方向に付勢力が作用する。この付勢力により、AF共振部131のアーム部131bの自由端部間にAF動力伝達部133が保持され、AF共振部131からの駆動力がAF動力伝達部133に効率よく伝達される。
【0072】
AF共振部131とAF動力伝達部133は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分を周方向に沿って大きくするだけで、レンズ駆動装置1の外形を大きくすることなく、回転スペーサー15の回転量、すなわち、レンズホルダー11の移動距離(光軸方向のストローク)を長くすることができる。
【0073】
レンズ駆動装置1において、AF駆動部13に電圧を印加すると、AF圧電素子132が振動し、AF共振部131が周波数に応じた挙動で変形する。AF駆動部13の駆動力により、回転スペーサー15が回転し、レンズホルダー11が光軸方向に移動して、ピント合わせが行われる。
【0074】
回転スペーサー15の回転に伴うレンズホルダー11の挙動の具体例を図10A図10Bに示す。図10Aは、AF駆動部13が駆動されていない初期状態を示し、図10Bは、AF駆動部13が駆動されている状態を示す。
図10A図10Bに示すように、AF駆動部13が駆動され、AF動力伝達部133がAF共振部131側に引き込まれると、AF動力伝達部133に接続されている回転スペーサー15が回転する。これに伴い、端面カム18が動作し、回転スペーサー15のホルダー案内部15cに沿ってレンズホルダー11のスライド部11bがせり上がり、レンズホルダー11が光軸方向受光側に移動する。
【0075】
レンズ駆動装置1において、OIS駆動部30に電圧を印加すると、OIS圧電素子32が振動し、OIS共振部31が周波数に応じた挙動で変形する。OIS駆動部30の駆動力により、OIS動力伝達部33がX方向又はY方向に摺動される。これに伴い、OIS可動部10がX方向又はY方向に移動し、振れ補正が行われる。
【0076】
具体的には、第1のOIS駆動部30Xが駆動され、OIS動力伝達部33がX方向に移動する場合、第1のOIS駆動部30Xが配置されているベース21から第2ステージ41Xに動力が伝達される。第2ステージ41Xとベース21とで挟持されているボール42(ボール収容部21dに配置されているボール42)は、X方向に転動可能に配置されているので、ベース21に対して第2ステージ41XはX方向に移動する。第1ステージ12と第2ステージ41Xで挟持されているボール43(ボール収容部41cに配置されているボール43)はX方向に転動できないので、第2ステージ41Xに対して第1ステージ12のX方向の位置は維持され、第1ステージ12は第2ステージ41Xに連動してX方向に移動する。
このとき、第2ステージ41Yと第1ステージ12とで挟持されているボール43(ボール収容部41dに配置されているボール43)はX方向に転動可能に配置されているので、第1ステージ12は、第2ステージ41Y上をスムーズに摺動する。また、第2ステージ41Yとベース21とで挟持されているボール42(ボール収容部21eに配置されているボール42)によって、ベース21に対する第2ステージ41YのX方向への移動は規制されている。
したがって、ベース21に対して第2ステージ41Yは変位せず、第2ステージ41Xと第1ステージ12だけがX方向に移動する。
【0077】
同様に、第2のOIS駆動部30Yが駆動され、OIS動力伝達部33がY方向に移動する場合、第2のOIS駆動部30Yが配置されているベース21から第2ステージ41Yに動力が伝達される。第2ステージ41Yとベース21とで挟持されているボール42(ボール収容部21eに配置されているボール42)は、Y方向に転動可能に配置されているので、ベース21に対して第2ステージ41YはY方向に移動する。第1ステージ12と第2ステージ41Yで挟持されているボール43(ボール収容部41dに配置されているボール43)はY方向に転動できないので、第2ステージ41Yに対して第1ステージ12のY方向の位置は維持され、第1ステージ12は第2ステージ41Yに連動してY方向に移動する。
このとき、第2ステージ41Xと第1ステージ12とで挟持されているボール43(ボール収容部41cに配置されているボール43)はY方向に転動可能に配置されているので、第1ステージ12は、第2ステージ41X上をスムーズに摺動する。また、第2ステージ41Xとベース21とで挟持されているボール42(ボール収容部21dに配置されているボール42)によって、ベース21に対する第2ステージ41XのY方向への移動は規制されている。
したがって、ベース21に対して第2ステージ41Xは変位せず、第2ステージ41Yと第1ステージ12だけがY方向に移動する。
【0078】
このように、第2ステージ41X、41Yは、互いに干渉せず、それぞれ独立して移動可能となっている。つまり、第2ステージ41Xに接続されている第1のOIS駆動部30Xは、第2ステージ41Yの移動によってY方向の力を受けることはなく、第2ステージ41Yに接続されている第2のOIS駆動部30Yは、第2ステージ41Xの移動によってX方向の力を受けることはない。したがって、精度よくXY面内における振れ補正を行うことができる。
【0079】
このようにして、OIS可動部10がXY平面内で揺動し、振れ補正が行われる。具体的には、カメラモジュールAの角度振れが相殺されるように、振れ検出部(例えばジャイロセンサー、図示略)からの角度振れを示す検出信号に基づいて、OIS駆動部30への通電電圧が制御される。このとき、マグネット52X、52Y及びホール素子51X、51Yで構成されるXY位置検出部の検出結果をフィードバックすることで、OIS可動部10の並進移動を正確に制御することができる。
【0080】
このように、実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、第1ステージ12(第1固定部)と、レンズ部2を保持し、第1ステージ12と離間して配置されるレンズホルダー11(第1可動部)と、第1ステージ12に対してレンズホルダー11を支持するAF支持部14(第1支持部)と、振動運動を直線運動に変換する超音波モーターで構成され、第1ステージ12に対してレンズホルダー11を光軸方向(Z方向)に移動させるAF駆動部13(Z方向駆動部)と、を備える。レンズ駆動装置1は、AF駆動部13の直線運動を受けて光軸を中心に回転する回転スペーサー15(回転体)と、回転スペーサー15の回転運動を光軸方向の直線運動に変換する端面カム18(機械要素)と、を有し、回転スペーサー15が回転することにより、レンズホルダー11が光軸方向に移動する。
【0081】
レンズ駆動装置1によれば、AF駆動部13が超音波モーターで構成されているので、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができる。したがって、スマートフォンMのように、レンズ駆動装置1を有するカメラモジュールAを近接して配置しても磁気的な影響はないので、デュアルカメラ用として極めて好適である。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0083】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンMを挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部を有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器は、例えば自動車を含む。
【0084】
図11A図11Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。図11Aは自動車Vの正面図であり、図11Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。図11A図11Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0085】
また、実施の形態では、レンズホルダー11のスライド部11bと回転スペーサー15のホルダー案内部15cとで構成される端面カム18を利用しているが、レンズホルダー11と回転スペーサー15の間に介在する機械要素には、その他のカム構造等を適用してもよい。
【0086】
また、実施の形態では、AF駆動部13により回転スペーサー15を回転させ、端面カム18により回転運動を直線運動に変換してレンズホルダー11を光軸方向に移動させているが、レンズホルダー11を回転させながら光軸方向に移動させる、すなわち、レンズホルダー11を回転体として機能させ、螺旋運動させるようにしてもよい。この場合、レンズホルダー11と第1ステージ12の間に機械要素が設けられる。
【0087】
また、本発明は、オートフォーカスだけでなく、ズームなど、第1可動部(レンズホルダー11)を光軸方向に移動させる場合に適用することができる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 レンズ駆動装置
10 OIS可動部(第2可動部)
11 AF可動部、レンズホルダー(第1可動部)
11b スライド部
12 第1ステージ(第1固定部)
13 AF駆動部(Z方向駆動部)
14 AF支持部、上バネ(第1支持部)
15 回転スペーサー
15c ホルダー案内部
16、17 ボール
18 端面カム(機械要素)
20 OIS固定部(第2固定部)
30 OIS駆動部(XY方向駆動部)
40 OIS支持部(第2支持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11