(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】スピーカ筐体
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
H04R1/02 101F
(21)【出願番号】P 2019123084
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長岡 聡史
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-244030(JP,A)
【文献】特開2015-222939(JP,A)
【文献】特開2012-186576(JP,A)
【文献】特開2008-263361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/02
H04R 1/20-1/34
G10K 9/12-9/22
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットを収容するスピーカ筐体であって、
該スピーカ筐体は、筐体本体と底板とを有し、それらの間に前記スピーカユニットが設けられ、
前記筐体本体に第1リブが設けられ、
前記底板に第2リブが設けられ、
前記スピーカ筐体の内部に、前記スピーカユニットとの距離が連続的に変化する
ように、前記第1リブと前記第2リブは、前記スピーカユニットを中心とした渦巻き状に設けるスピーカ筐体。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカ筐体において、
前記筐体本体は、低背の円筒形の胴部と、前記胴部の上部開口を覆うドーム型のバッフル部と、前記バッフル部の中央部に同心状に設けられる円形の開口とを備えており、
前記第1リブは、板状の断面形状を有し、前記開口の周りにあるバッフル部の下面から下方に突出するスピーカ筐体。
【請求項3】
請求項
2に記載のスピーカ筐体において、
前記底板は、前記筐体本体の前記胴部の下部開口を覆う円板部と、前記円板部の上面中央部に上方へ突出する同心状に設けられる円柱形の台とを備えており、
前記第2リブは、板状の断面形状を有し、前記底板の前記台の周りにある前記円板部の上面から上方に突出するスピーカ筐体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載のスピーカ筐体
と、
前記スピーカ筐体の前記筐体本体と前記底板との間に設けられる前記スピーカユニットとを備えるスピーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカユニットを収容するスピーカ筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステムでは、ユニットの振動によって音がでるが、それらはエンクロージャーに伝わって不要な音をだす。スピーカ筐体では、肉厚を厚くしないで、重量を重くしないで、歪を少なくするために、リブを設けることがある。その際、特許文献1のフレームに設けられた補強リブ26Fのように、スピーカユニットの中心を中心とする同心円状のリブを設けると、ユニットからリブまでの距離が一定となり、共振がある一定の周波数に集中し、歪が悪化するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、歪の悪化を抑えることができるスピーカ筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明のスピーカ筐体は、スピーカユニットを収容するスピーカ筐体であって、該スピーカ筐体は、筐体本体と底板とを有し、それらの間に前記スピーカユニットが設けられ、前記筐体本体に第1リブが設けられ、前記底板に第2リブが設けられ、前記スピーカ筐体の内部に、前記スピーカユニットとの距離が連続的に変化するように、前記第1リブと第2リブは、前記スピーカユニットを中心とした渦巻き状に設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスピーカ筐体によれば、スピーカユニットを収容するスピーカ筐体であって、該スピーカ筐体は、筐体本体と底板とを有し、それらの間に前記スピーカユニットが設けられ、前記筐体本体に第1リブが設けられ、前記底板に第2リブが設けられ、前記スピーカ筐体の内部に、前記スピーカユニットとの距離が連続的に変化するように、前記第1リブと前記第2リブは、前記スピーカユニットを中心とした渦巻き状に設けることにより、スピーカユニットから第1リブ、第2リブまでの距離が一定ではなくなり、共振が分散されて、顕著な共振が発生せず、歪の悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示すスピーカシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるスピーカ筐体を備えるスピーカシステムの斜視図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は筐体本体の底面図、
図4は底板の正面図である。
【0010】
図1~
図2に示すように、スピーカシステム1は、電気を音に変換するスピーカユニット2と、スピーカユニット2を収容するスピーカ筐体3とを備えている。
【0011】
スピーカユニット2は動電型のものであり、磁気回路20と、ボイスコイル21と、振動板22と、駆動系(磁気回路20)と振動系(ボイスコイル21と振動板22)とを支えてそれらを結合するフレーム23とを備えており、ボイスコイル21に駆動電流を流すことによって、振動系が上下方向に振動し、音を出すものである。
【0012】
スピーカユニット2は円形のものであり、磁気回路20、ボイスコイル21、振動板22、フレーム23がそれぞれ円形の形をしていてそれぞれの中心が一致した状態で組み立てられている。
【0013】
図1~
図4に示すように、スピーカ筐体3は、筐体本体30と、底板31とを備えており、それぞれ合成樹脂を成形することによって形成されている。
【0014】
筐体本体30は、低背な円筒形の胴部30aと、胴部30aの上部開口を覆うドーム型のバッフル部30bとを備えており、バッフル部30bの中央部に円形の開口30cを同心状に設け、開口30cの周りにあるバッフル部30bの下面に下方に突出する複数のボス30dを等間隔に設けている。
【0015】
底板31は、筐体本体30の胴部30aの下部開口を覆う円板部31aを備えており、円板部31aの上面中央部に上方へ突出する円柱形の台31bを同心状に設け、台31bの周りにある円板部31aの上面に上方に突出する複数のボス31cを等間隔に設けている。
【0016】
以上の構成において、筐体本体30と底板31との間にスピーカユニット2を挟み込み、スピーカユニット2と筐体本体30と底板31のそれぞれの中心、より具体的にはスピーカユニット2の振動系と筐体本体30のバッフル部30bと底板31の円板部31aのそれぞれの中心が一致した状態で、筐体本体30と底板31とを複数本のビス32よって締結して、内部にスピーカユニット2を収容・保持した状態で、円盤型のスピーカ筐体3が組み立てられて、スピーカシステム1が構成されている。
【0017】
この際、スピーカユニット2が底板31の台31bの上に載置され、その底板31の円板部31aの上に筐体本体30が被せられ、スピーカユニット2の振動板22に筐体本体30のバッフル部30bの開口30cが対向するとともに、スピーカユニット2のフレーム23の上端部に筐体本体30のバッフル部30bの内周縁部(開口30c縁部)が対向し、その対向する筐体本体30のバッフル部30bの内周縁部とスピーカユニット2のフレーム23の上端部との間に、ゴムなどの弾性材料からなる円環状のガスケット33が挟み込まれた状態になっている。
【0018】
また、底板31の円板部31aの外周縁部に筐体本体30の胴部30aの下端部が対向し、その対向する底板31の円板部31aの外周縁部と筐体本体30の胴部30aの下端部との間に、ゴムなどの弾性材料からなる円環状のガスケット34が挟み込まれた状態になっている。
【0019】
また、底板31の円板部31aの各ボス31cの上端部に筐体本体30のバッフル部30bの各ボス30dの下端部が対向し、その対向する底板31の円板部31aのボス31cの上端部と筐体本体30のバッフル部30bのボス30dの下端部との間に、ゴムなどの弾性材料からなる円筒状の弾性体35が挟み込まれた状態になっている。
【0020】
また、底板31の下面側から底板31の円板部31aの各ボス31c内にビス32が挿入され、弾性体35を挿通して筐体本体30のバッフル部30bのボス30d内に螺合して締め付けられた状態になっている。
【0021】
また、各ビス32の頭部と底板31の間には、ゴムなどの弾性材料からなりシールを兼ねる円筒状の弾性体36が挟み込まれた状態になっている。
【0022】
そして、
図2、
図3に示すように、スピーカ筐体3の肉厚を厚くしないで、重量を重くしないで、歪を少なくするために、筐体本体30の開口
30cの周りにあるバッフル部30bの下面に、板状の断面形状を有して下方に突出する第1リブ30eを、スピーカユニット2の中心、より具体的にはスピーカユニット2の振動系の中心を中心とする渦巻き状に設け、本発明の要旨構成であるリブを設けている。すなわち、スピーカ筐体3の内部に、スピーカユニット2に対する距離が連続的に変化するリブを設けている。
【0023】
さらに、
図2、
図4に示すように、スピーカ筐体3の肉厚を厚くしないで、重量を重くしないで、歪を少なくするために、底板31の台31bの周りにある円板部31aの上面に、板状の断面形状を有して上方に突出する第2リブ31dを、スピーカユニット2の中心、より具体的にはスピーカユニット2の振動系の中心を中心とする渦巻き状に設け、本発明の要旨構成であるリブを設けている。すなわち、スピーカ筐体3の内部に、スピーカユニット2に対する距離が連続的に変化するリブを設けている。
【0024】
本実施形態のスピーカシステム1と図示しない従来のスピーカシステムの周波数特性を
図5に示す。
図5において、A1が本実施形態のスピーカシステム1の音圧周波数特性、A2が従来のスピーカシステムの音圧周波数特性、B1が本実施形態のスピーカシステム1の歪率周波数特性、B2が従来のスピーカシステムの歪率周波数特性である。
【0025】
従来のスピーカシステムは、本実施形態のスピーカシステム1における第1リブ30e、第2リブ31dに代えて第3リブ、第4リブを設けた点で本実施形態のスピーカシステム1と異なっており、その他は同一構造を有するものである。第3リブは、従来のスピーカシステムにおける筐体本体30の開口30cの周りにあるバッフル部30bの下面に、板状の断面形状を有して下方に突出するリブであって、スピーカユニット2の中心、より具体的にはスピーカユニット2の振動系の中心を中心とする同心円状に設けたものである。第4リブは、従来のスピーカシステムにおける底板31の台31bの周りにある円板部31aの上面に、板状の断面形状を有して上方に突出するリブであって、スピーカユニット2の中心、より具体的にはスピーカユニット2の振動系の中心を中心とする同心円状に設けたものである。
【0026】
従来のスピーカシステムの音圧周波数特性A2では、2k~3kHzの間に急峻なディップがあるが、これは従来のスピーカシステムのスピーカ筐体3が、スピーカユニット2の振動系の中心を中心とする同心円状の第3リブ、第4リブを設けるため、スピーカユニット2から各リブまでの距離が一定となり、共振がある一定の周波数に集中することによるものであり、従来のスピーカシステムの歪率周波数特性B2でも、同じ周波数に歪率のピークがある。また、その他の周波数にも歪率のピークがあることが判る。
【0027】
一方、本実施形態のスピーカシステム1の音圧周波数特性A1では、なだらかな曲線を描いており、極端なピークディップがなく、強い共振を持たないことが判る。また、本実施形態のスピーカシステム1の歪率周波数特性B1でも、極端なピークディップがなく、強い共振を持たないことが判る。これは本実施形態のスピーカシステム1のスピーカ筐体3が、スピーカユニット2に対する距離が連続的に変化する第1リブ30e、第2リブ31dを設け、より具体的には第1リブ30e、第2リブ31dは、スピーカユニット2を中心とする渦巻き状に設けるため、スピーカユニット2から各リブ30e、31dまでの距離が一定ではなくなり、共振が分散されることによるものと考えられる。
【0028】
以上、本実施形態のスピーカシステム1のスピーカ筐体3は、ピーカユニット2を収容するスピーカ筐体3であって、該スピーカ筐体3は、筐体本体30と底板31とを有し、それらの間にスピーカユニット2が設けられ、筐体本体30に第1リブ30eが設けられ、底板31に第2リブ31dが設けられ、スピーカ筐体3の内部に、スピーカユニット2との距離が連続的に変化するように、第1リブ30eと第2リブ31dは、スピーカユニット2を中心とした渦巻き状に設けることにより、スピーカユニット2から第1リブ30e、第2リブ31dまでの距離が一定ではなくなり、共振が分散されて、顕著な共振が発生せず、歪の悪化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
2 スピーカユニット
3 スピーカ筐体
30e 第1リブ
31d 第2リブ