(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】点検調査用人孔蓋、管路点検調査システム、及び管路点検調査方法
(51)【国際特許分類】
B64F 3/00 20060101AFI20230613BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230613BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230613BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230613BHJP
B64F 1/28 20060101ALI20230613BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20230613BHJP
B64U 70/90 20230101ALI20230613BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20230613BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C39/02
B64D27/24
B64D47/08
B64F1/28
B64U10/13
B64U70/90
B64U101:31
(21)【出願番号】P 2019149656
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】津野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮内 仁志
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1967(JP,A)
【文献】特開2017-87917(JP,A)
【文献】特開2015-42539(JP,A)
【文献】特開2019-167044(JP,A)
【文献】特開2021-99540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/00
B64C 39/02
B64D 27/24
B64D 47/08
B64F 1/28
B64U 10/13
B64U 70/90
B64U 101/31
E04F 7/00
E04F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の人孔に用いる蓋において、
電力による自律飛行が可能な飛行体が着地し得るプラットフォームと、
前記飛行体に給電する給電設備と、
前記飛行体に搭載される飛行体送受信手段とのデータ送受信を行う人孔蓋送受信手段と、を備えた、
ことを特徴とする点検調査用人孔蓋。
【請求項2】
衛星測位受信機を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の点検調査用人孔蓋。
【請求項3】
太陽光発電設備を、さらに備え、
前記給電設備は、前記太陽光発電設備によって発電された電気を蓄電する、
ことを特徴とする請求項1記載の点検調査用人孔蓋。
【請求項4】
飛行体によって管路内を点検調査するシステムであって、
前記飛行体と、2以上の点検調査用人孔蓋と、を備え、
前記飛行体は、電力による自律飛行が可能であり、自律飛行を制御する飛行体制御手段と、管路内における自機位置を測位する自機位置測位手段と、管路内の管内画像を取得する画像取得手段と、前記点検調査用人孔蓋が具備する第1人孔蓋送受信手段とのデータ送受信を行う飛行体送受信手段と、を有し、
前記点検調査用人孔蓋は、前記飛行体が着地し得るプラットフォームと、該飛行体に給電する給電設備と、前記飛行体送受信手段とのデータ送受信を行う前記第1人孔蓋送受信手段と、を有し、
前記飛行体は、事前に計画された起点側の前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームから、事前に計画された終点側の前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームまで、前記飛行体制御手段によって管路内を自律飛行し、終点側の該点検調査用人孔蓋の該プラットフォームに着地すると前記給電設備によって給電され、
さらに前記飛行体は、自律飛行しながら連続的、定期的、または断続的に、前記自機位置測位手段によって自機位置を測位するとともに、前記画像取得手段によって前記管内画像を取得し、
前記飛行体送受信手段が、前記管内画像及び自機位置を前記第1人孔蓋送受信手段に送信し、
前記第1人孔蓋送受信手段が、前記飛行体送受信手段によって送信された前記管内画像及び自機位置を受信する、
ことを特徴とする管路点検調査システム。
【請求項5】
情報管理部を、さらに備え、
前記点検調査用人孔蓋は、第2人孔蓋送受信手段を、さらに有し、
前記情報管理部は、前記第2人孔蓋送受信手段とのデータ送受信を行う管理部送受信手段を有し、
前記第2人孔蓋送受信手段が、前記管内画像及び自機位置を前記管理部送受信手段に送信し、
前記管理部送受信手段が、前記第2人孔蓋送受信手段によって送信された前記管内画像及び自機位置を受信する、
ことを特徴とする請求項4記載の管路点検調査システム。
【請求項6】
前記情報管理部は、背景地図に地理空間情報を表示する地理情報システムを、さらに有し、
前記地理情報システムは、前記管内画像を画像取得時の自機位置に関連付けて記憶し、該自機位置に基づいて自律飛行中の前記飛行体の位置を前記背景地図上に表示するとともに、該自機位置に基づいて該管内画像を前記背景地図上に表示する、
ことを特徴とする請求項5記載の管路点検調査システム。
【請求項7】
前記点検調査用人孔蓋は、衛星測位受信機を、さらに有し、
前記第2人孔蓋送受信手段は、前記衛星測位受信機の受信データを前記管理部送受信手段に送信し、
前記地理情報システムは、前記点検調査用人孔蓋にあらかじめ付与された識別子に関連付けて当該点検調査用人孔蓋の位置情報を記憶し、該位置情報に基づいて該点検調査用人孔蓋を前記背景地図上に表示する、
ことを特徴とする請求項6記載の管路点検調査システム。
【請求項8】
前記飛行体制御手段は、自機位置から終点側の前記点検調査用人孔蓋までの飛行距離を求めるとともに、該飛行距離に要する必要電力量を求め、
さらに前記飛行体制御手段は、電力残量を取得するとともに、該電力残量と前記必要電力量とを照らし合わせ、該電力残量が該必要電力量を超えるときは終点側の前記点検調査用人孔蓋まで自律飛行するよう制御し、該電力残量が該必要電力量を下回るときは自機位置から最も近い前記点検調査用人孔蓋まで自律飛行するよう制御する、
ことを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の管路点検調査システム。
【請求項9】
管路点検調査システムを用いて、管路内を点検調査する方法であって、
前記管路点検調査システムは、飛行体と点検調査用人孔蓋を備え、
前記飛行体は、電力による自律飛行が可能であり、自律飛行を制御する飛行体制御手段と、管路内における自機位置を測位する自機位置測位手段と、管路内の管内画像を取得する画像取得手段と、前記点検調査用人孔蓋が具備する第1人孔蓋送受信手段とのデータ送受信を行う飛行体送受信手段と、を有し、
前記点検調査用人孔蓋は、前記飛行体が着地し得るプラットフォームと、該飛行体に給電する給電設備と、前記飛行体送受信手段とのデータ送受信を行う前記第1人孔蓋送受信手段と、を有し、
2以上の管路用人孔を対象管路用人孔として抽出するとともに、前記飛行体が出発する起点側管路用人孔と、前記飛行体が到着する終点側管路用人孔を設定する点検調査計画工程と、
前記対象管路用人孔の蓋を取り外すとともに、前記点検調査用人孔蓋を設置する蓋交換工程と、
前記起点側管路用人孔に設置された前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームに、前記飛行体を配置する飛行体配置工程と、
前記飛行体が、前記起点側管路用人孔に設置された前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームから、前記終点側管路用人孔に設置された前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームまで、前記飛行体制御手段によって管路内を自律飛行し、自律飛行しながら連続的、定期的、または断続的に、前記自機位置測位手段によって自機位置を測位するとともに、前記画像取得手段によって前記管内画像を取得する飛行工程と、
前記飛行体が、前記終点側管路用人孔に設置された前記点検調査用人孔蓋の前記プラットフォームに着地すると、前記給電設備によって給電される給電工程と、
前記飛行体送受信手段が、前記管内画像及び自機位置を前記第1人孔蓋送受信手段に送信し、前記第1人孔蓋送受信手段が、該飛行体送受信手段によって送信された該管内画像及び自機位置を受信する第1送受信工程と、を備えた、
ことを特徴とする管路点検調査方法。
【請求項10】
前記管路点検調査システムは、情報管理部を、さらに備え、
前記点検調査用人孔蓋は、第2人孔蓋送受信手段を、さらに有し、
前記情報管理部は、前記第2人孔蓋送受信手段とのデータ送受信を行う管理部送受信手段を有し、
前記第2人孔蓋送受信手段が、前記管内画像及び自機位置を前記管理部送受信手段に送信し、該管理部送受信手段が、該第2人孔蓋送受信手段によって送信された該管内画像及び自機位置を受信する第2送受信工程を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項9記載の管路点検調査方法。
【請求項11】
前記管路点検調査システムの前記情報管理部は、背景地図に地理空間情報を表示する地理情報システムを、さらに有し、
前記地理情報システムは、前記管内画像を画像取得時の自機位置に関連付けて記憶し、
前記地理情報システムを用いて、前記自機位置に基づいて自律飛行中の前記飛行体の位置を前記背景地図上に表示するとともに、該自機位置に基づいて該管内画像を前記背景地図上に表示する監視工程を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項10記載の管路点検調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下水道管などの管路内の点検調査技術に関するものであり、より具体的には、管路内を自律飛行する飛行体を用いた点検調査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昭和30年代に現行の下水道法が施行され、さらに第一次下水道整備五箇年計画が策定されたことによって、我が国の下水道整備は本格化した。そして、その後50年間で下水道の普及率は概ね80%に達している。英国(97%)や独国(93%)などの欧州諸国に比べると我が国の下水道普及率はまだ十分とはいえないものの、今後は普及率向上のための新たな建設と同時に、下水道施設の維持管理が重要となることは衆目の一致するところである。
【0003】
現在、全国の下水道管路の管理延長は約47万kmであり、そのうち約1万kmの下水道管が50年を経過し、20年後には約11万kmの下水道管が50年を経過することが知られている。多くの下水道管渠はコンクリート製であり、一般にコンクリートの耐久性は50年とも100年ともいわれるが仮に50年とすると、20年後には実に約1/4の下水道管渠が相当に老朽化することになる。実際、2015年には下水道施設の老朽化等に起因して3,300箇所にも及ぶ道路陥没が生じており、我が国にとって下水道施設の維持管理は喫緊の課題といえる。
【0004】
下水道管内の点検や調査(以下、総じて「点検調査」という。)は、目視による手法(以下、「目視式点検調査」という。)と機械を用いた手法(以下、「機械式点検調査」という。)に大別される。目視式点検調査は、人孔(マンホール)から作業者が下水道管内に立ち入って内部を目視で確認する手法であり、機械式点検調査は、管口カメラやテレビカメラを下水道管内に挿入して内部を確認する手法である。このように点検調査の手法は概ね確立されているものの、管理総延長が47万kmにも上る下水道管に対して点検調査を行うことは容易ではなく、十分な点検調査が行われていないのが現状である。特に人手不足を抱える地方公共団体では、下水道管の点検調査率が15%程度というところもあり、計画的に点検調査を実施している地方公共団体の割合も2割程度に過ぎないといわれている。
【0005】
上記したとおり、下水道施設の維持管理は極めて重要である一方、人手不足などが原因で十分な点検調査が行われているとはいえない。人手不足を回避するには機械式点検調査が考えられるが、実際に管口カメラやテレビカメラを用いた点検調査を採用した実績は約0.45万km(全体の1/100)程度であり、コストも含めて決定的に有効な点検調査手法とはなっていない。
【0006】
そこで、従来手法とは異なる種々の機械式点検調査が、これまで提案されてきた。例えば特許文献1では、いわゆるドローンなど飛行体を利用して管路内の画像を取得する点検調査技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、カメラなどの撮像手段を搭載した無人の飛行体が下水道管内を飛行し、飛行中に取得した下水道管内の画像を確認することによって管内に生じたクラック等を検出する点検調査技術である。この手法によれば、従来の機械式点検調査に比して点検調査者等の労力を軽減することができる。
【0009】
しかしながら、ドローンなど一般的な飛行体は電力によって駆動し、しかも充電式とされることから、当然ながらその飛行距離は有限である。したがって、点検調査のため所定距離を飛行すると、一旦、飛行体を充電設備まで持ち帰って充電しなければならない。つまり特許文献1の点検調査技術は、直接的な点検調査作業にはそれほど人手がかからないが、飛行体の持ち運びや充電作業など点検調査のための準備作業には相当な労力を要するという問題点がある。また、下水道管内で飛行する状況は人が直接確認することができないことから、飛行に不測の事態が生じた場合も把握することができず、下水道管路の途中で電力を失って水没する事態を回避することができないといった問題も指摘することができる。
【0010】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち飛行体を所定の充電設備まで持ち帰ることなく、現地で自動的に給電しながら継続して飛行(すなわち点検調査)することができる点検調査用人孔蓋、管路点検調査システム、及び管路点検調査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、飛行体が着地し得る「プラットフォーム」と飛行体に給電する「給電設備」とを備えた点検調査用人孔蓋を利用する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0012】
本願発明の点検調査用人孔蓋は、管路の人孔に用いる蓋であって、電力による自律飛行が可能な飛行体が着地し得る「プラットフォーム」と、飛行体に給電する「給電設備」、そして飛行体送受信手段(飛行体に搭載)とのデータ送受信を行う「人孔蓋送受信手段」を備えたものである。
【0013】
本願発明の点検調査用人孔蓋は、衛星測位受信機をさらに備えたものとすることもできる。
【0014】
本願発明の点検調査用人孔蓋は、太陽光発電設備をさらに備えたものとすることもできる。この場合の給電設備は、太陽光発電設備によって発電された電気を蓄電することができるものである。
【0015】
本願発明の管路点検調査システムは、飛行体によって管路内を点検調査するシステムであって、飛行体と本願発明の点検調査用人孔蓋を備えたものである。このうち飛行体は、電力による自律飛行が可能であり、自律飛行を制御する飛行体制御手段と、管路内における自機位置を測位する自機位置測位手段、管路内の管内画像を取得する画像取得手段、そして第1人孔蓋送受信手段(点検調査用人孔蓋が具備)とのデータ送受信を行う飛行体送受信手段を有するものである。また飛行体は、起点側の点検調査用人孔蓋のプラットフォームから、終点側の点検調査用人孔蓋のプラットフォームまで、飛行体制御手段による制御にしたがって管路内を自律飛行し、終点側の点検調査用人孔蓋のプラットフォームに着地すると給電設備によって給電される。さらに飛行体は、自律飛行しながら連続的(定期的あるいは断続的)に、自機位置測位手段によって自機位置を測位し、画像取得手段によって管内画像を取得する。そして飛行体送受信手段が、管内画像と自機位置を第1人孔蓋送受信手段に送信すると、第1人孔蓋送受信手段が、飛行体送受信手段によって送信された管内画像と自機位置を受信する。
【0016】
本願発明の管路点検調査システムは、情報管理部をさらに備えたものとすることもできる。なおこの場合の点検調査用人孔蓋は、第2人孔蓋送受信手段をさらに有するものとされる。情報管理部は、第2人孔蓋送受信手段とのデータ送受信を行う管理部送受信手段を有しており、第2人孔蓋送受信手段が、管内画像と自機位置を管理部送受信手段に送信すると、管理部送受信手段が、第2人孔蓋送受信手段によって送信された管内画像と自機位置を受信する。
【0017】
本願発明の管路点検調査システムは、情報管理部が地理情報システム(背景地図に地理空間情報を表示するシステム)をさらに有するものとすることもできる。この地理情報システムは、管内画像を画像取得時の自機位置に関連付けて記憶し、さらに自機位置に基づいて自律飛行中の飛行体の位置を背景地図上に表示するとともに、自機位置に基づいて管内画像を背景地図上に表示することができるものである。
【0018】
本願発明の管路点検調査システムは、点検調査用人孔蓋が衛星測位受信機をさらに有するものとすることもできる。この場合、第2人孔蓋送受信手段が、衛星測位受信機の受信データを管理部送受信手段に送信すると、地理情報システムが、点検調査用人孔蓋にあらかじめ付与された識別子に関連付けて点検調査用人孔蓋の位置情報を記憶し、さらに位置情報に基づいて点検調査用人孔蓋を背景地図上に表示する。
【0019】
本願発明の管路点検調査システムは、電力残量と必要電力量に応じて飛行体制御手段が飛行体の自律飛行を制御するものとすることもできる。この場合、飛行体制御手段は、自機位置から終点側の点検調査用人孔蓋までの飛行距離を求めるとともに、飛行距離に要する必要電力量を求め、さらに電力残量を取得し、電力残量と必要電力量とを照らし合わせる。そして飛行体制御手段は、電力残量が必要電力量を超えるときは終点側の点検調査用人孔蓋まで自律飛行するよう制御し、電力残量が必要電力量を下回るときは自機位置から最も近い点検調査用人孔蓋まで自律飛行するよう制御する。
【0020】
本願発明の管路点検調査方法は、本願発明の管路点検調査システムを用いて管路内を点検調査する方法であって、点検調査計画工程と蓋交換工程、飛行体配置工程、飛行工程、給電工程、第1送受信工程を備えた方法である。このうち点検調査計画工程では、2以上の管路用人孔を対象管路用人孔として抽出するとともに、起点側管路用人孔(飛行体が出発する管路用人孔)と終点側管路用人孔(飛行体が到着する管路用人孔)を設定する。また蓋交換工程では、対象管路用人孔の蓋を取り外すとともに点検調査用人孔蓋を設置し、飛行体配置工程では、起点側管路用人孔に設置された点検調査用人孔蓋のプラットフォームに飛行体を配置する。飛行工程では、飛行体が起点側管路用人孔のプラットフォームから終点側管路用人孔のプラットフォームまで飛行体制御手段の制御にしたがって管路内を自律飛行し、しかも自律飛行しながら連続的(定期的あるいは断続的)に自機位置測位手段によって自機位置を測位するとともに、画像取得手段によって管内画像を取得する。給電工程では、飛行体が終点側管路用人孔に設置された点検調査用人孔蓋のプラットフォームに着地したときに給電設備によって給電され、第1送受信工程では、飛行体送受信手段が管内画像と自機位置を第1人孔蓋送受信手段に送信すると、第1人孔蓋送受信手段が飛行体送受信手段によって送信された管内画像と自機位置を受信する。
【0021】
本願発明の管路点検調査方法は、第2送受信工程をさらに備えた方法とすることもできる。この場合、管路点検調査システムは情報管理部をさらに備えたものであって、点検調査用人孔蓋は第2人孔蓋送受信手段をさらに有するものであり、情報管理部は管理部送受信手段を有するものとされる。第2送受信工程では、第2人孔蓋送受信手段が管内画像と自機位置を管理部送受信手段に送信すると、管理部送受信手段が第2人孔蓋送受信手段によって送信された管内画像と自機位置を受信する。
【0022】
本願発明の管路点検調査方法は、監視工程をさらに備えた方法とすることもできる。この場合、情報管理部は地理情報システムをさらに有するものとされる。監視工程では、地理情報システムを用い、自機位置に基づいて自律飛行中の飛行体の位置を背景地図上に表示するとともに、自機位置に基づいて管内画像を背景地図上に表示する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の点検調査用人孔蓋、管路点検調査システム、及び管路点検調査方法には、次のような効果がある。
(1)従来の機械式点検調査に比して、点検調査者等の労力を大幅に軽減することができる。
(2)飛行体を所定の充電設備まで持ち帰ることなく現地で自動的に給電されることから、点検調査準備にかかる労力を軽減することができるうえ、長い時間継続して飛行(すなわち点検調査)することができる。
(3)下水道管内の画像を取得することから、客観的かつ定量的に下水道管の劣化度を評価することができる。
(4)地理情報システムを用いることで、所望位置における下水道管の劣化度について画像を参照しながら評価することができるうえ、飛行中の飛行体の自機位置をリアルタイムでしかも直感的に把握することができる。
(5)点検調査中も点検調査用人孔蓋で人孔を閉鎖していることから、道路の通行止め時間を従来に比して大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】下水道管用の人孔に本願発明の点検調査用人孔蓋が設置され、飛行体が下水道管内を飛行する状況を模式的に示す断面図。
【
図2】本願発明の管路点検調査システムの主な構成を示すブロック図。
【
図3】本願発明の点検調査用人孔蓋の主な構成を示すブロック図。
【
図4】下水用人孔に設置された本願発明の点検調査用人孔蓋を示す部分断面図。
【
図6】電力残量に応じて飛行体制御手段が飛行体を適宜誘導する処理の流れを示すフロー図。
【
図8】本願発明の管路点検調査システムの主な工程の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明の点検調査用人孔蓋、管路点検調査システム、及び管路点検調査方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお本願発明は、共同溝や電線共同溝、情報ボックスなど人孔(マンホール)が設けられたあらゆる管路を対象とすることができ、さらに人孔そのものの点検調査にも適用することができるが、便宜上ここでは、下水道管を対象とする例で説明する。
【0026】
1.全体概要
図1は、下水道管用の人孔(以下、単に「下水用人孔MH」という。)に本願発明の点検調査用人孔蓋100が設置され、飛行体200が下水道管SP内を飛行する状況を模式的に示す断面図である。この図に示すように、本願発明を実施するにあたっては、下水用人孔MHの本来の蓋を取り外して本願発明の点検調査用人孔蓋100を設置し、下水道管SP内で飛行体200を飛行させる。
【0027】
点検調査用人孔蓋100は、起点側の下水用人孔MH(図では左側)と終点側の下水用人孔MH(図では右側)を含む2以上の下水用人孔MHに設置され、飛行体200は、起点側の下水用人孔MHに設置された点検調査用人孔蓋100(以下、「起点側点検調査用人孔蓋100」という。)のプラットフォーム120から出発して、下水道管SP内の画像(以下、「管内画像」という。)を取得しながら飛行していき、終点側の下水用人孔MHに設置された点検調査用人孔蓋100(以下、「終点側点検調査用人孔蓋100」という。)のプラットフォーム120に到達する。なお飛行中、飛行体200の位置(以下、「自機位置」という。)が随時(連続的、定期的、または断続的に)測位され、この自機位置と管内画像は点検調査用人孔蓋100が具備する送受信手段(以下、「人孔蓋送受信手段」という。)に送信される。また、飛行体200が終点側点検調査用人孔蓋100のプラットフォーム120に着地すると、飛行体200は点検調査用人孔蓋100が具備する給電設備によって給電される。
【0028】
2.管路点検調査システム
次に、本願発明の管路点検調査システムについて詳しく説明する。なお本願発明の点検調査用人孔蓋100は、本願発明の管路点検調査システムを構成するものであるから、管路点検調査システムを説明する中で点検調査用人孔蓋100についても説明することとする。また本願発明の管路点検調査方法は、管路点検調査システムを用いて管路(下水道管)を点検調査する方法であり、したがってまずは管路点検調査システムについて説明し、その後に本願発明の管路点検調査方法について説明することとする。
【0029】
図2は、本願発明の管路点検調査システムの主な構成を示すブロック図である。この図に示すように管路点検調査システムは、2以上(図では3個)の点検調査用人孔蓋100と、1又は2以上(図では2機)の飛行体200を含んで構成され、さらに情報管理部300を含んで構成することもできる。この情報管理部300は、飛行体200が取得した自機位置と管内画像を、点検調査用人孔蓋100の人孔蓋送受信手段を介して収集するものであり、現地(下水用人孔MH)から離れた場所(管理棟やデータセンターなど)に設けることができる。
【0030】
(点検調査用人孔蓋)
図3は、本願発明の点検調査用人孔蓋100の主な構成を示すブロック図であり、
図4は、下水用人孔MHに設置された点検調査用人孔蓋100を示す部分断面図である。
図3に示すように点検調査用人孔蓋100は、蓋本体110とプラットフォーム120、給電設備130、人孔蓋送受信手段140(
図3では第1人孔蓋送受信手段141)を含んで構成され、さらに第2人孔蓋送受信手段142や衛星測位受信機150や太陽光発電設備160、ロッド170を含んで構成することもできる。このうち蓋本体110は、従来用いられている下水用人孔MH用の蓋を利用することができる。
【0031】
プラットフォーム120は、飛行体200を着地させるいわば着地台であり、ロッド170を介して蓋本体110に取り付けることができる。
図4に示すように蓋本体110を所定位置に設置したときのプラットフォーム120は、飛行体200を着地させるため、その上面が略水平(水平含む)な平坦面とされ、また下水道管SP内に位置するように配置される。ただし蓋本体110と下水道管SPとの間隔はそれぞれ下水用人孔MHによって異なることから、ロッド170を伸縮自在なものとし、プラットフォーム120の位置(高さ)を調整することができる構造にするとよい。
【0032】
給電設備130は、電力によって駆動する飛行体200に電気を供給するものである。特に、飛行体200がプラットフォーム120に着地すると、その飛行体200に対して給電設備130が自動的に給電を開始する仕様にするとよい。この場合、飛行体200がプラットフォーム120のうちあらかじめ設定された範囲内に着地することとし、電磁誘導方式によって飛行体200に給電する仕様にすることができる。例えば、プラットフォーム120の上面全体を電極とし、プラットフォーム120の任意位置に着地した飛行体200に対して給電可能な構造とするとよい。あるいは、飛行体200が着地すると一方(例えばプラットフォーム120)のプラグが他方ソケット(例えば飛行体200)のソケット(コンセント)に差し込まれる仕様にすることもできる。
【0033】
給電設備130が飛行体200に供給する電気は、キャプタイヤ等を利用して点検調査用人孔蓋100の設置位置まで送電することもできるし、相当容量を有する蓄電池を給電設備130の周辺に設置することもできる。あるいは、発電設備を給電設備130の周辺に設置することもできる。この場合、蓋本体110の上面側(外側)に太陽光発電設備160を取り付け、太陽光発電設備160によって発電された電気を給電設備130に蓄電させる構成にするとよい。
【0034】
衛星測位受信機150は、衛星測位システム(GNSS:GlobalNavigationSatelliteSystem)によって測位するためのものであり、測位衛星からの搬送波(電波)を受信する受信機である。そのため衛星測位受信機150は、太陽光発電設備160と同様、蓋本体110の上面側(外側)に取り付けるとよい。
【0035】
第1人孔蓋送受信手段141は、飛行体200から送信される管内画像と自機位置を受信する手段であり、第2人孔蓋送受信手段142は、第1人孔蓋送受信手段141が受信した管内画像と自機位置を情報管理部300に送信する手段である。そのため、第1人孔蓋送受信手段141で受信したデータは第2人孔蓋送受信手段142に受け渡される構成とされる。また第2人孔蓋送受信手段142は、管内画像と自機位置とともに、衛星測位受信機150が測位衛星からの受信した情報(以下、「受信データ」という。)を情報管理部300に送信することもできる。
【0036】
ここで、第1人孔蓋送受信手段141と飛行体200との通信(データ送受信)は、閉鎖空間での通信となり、飛行体200が移動することから無線通信が望ましい。そのため、飛行体200が具備する通信手段(以下、「飛行体送受信手段」という。)と第1人孔蓋送受信手段141は、それぞれ無線通信が可能であっていわゆる屋内通信が可能なものを採用するとよい。一方、第2人孔蓋送受信手段142と情報管理部300との通信(データ送受信)は、通常の屋外での通信となる。ただし、点検調査用人孔蓋100が道路内に設置される場合もあることからやはり無線通信が望ましく、情報管理部300が具備する通信手段(以下、「管理部送受信手段」という。)と第2人孔蓋送受信手段142は、それぞれ無線通信が可能であっていわゆる屋外通信が可能なものを採用するとよい。なお、第1人孔蓋送受信手段141と第2人孔蓋送受信手段142は別体として構成することもできるし、屋内外対応のものを利用して第1人孔蓋送受信手段141と第2人孔蓋送受信手段142を一体のものとして構成することもできる。
【0037】
(飛行体)
図5は、飛行体200の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように飛行体200は、飛行体本体210と飛行体制御手段220、自機位置測位手段230、画像取得手段240、飛行体送受信手段250を含んで構成され、さらに飛行計画記憶手段260や人孔蓋記憶手段270を含んで構成することもできる。なお、飛行体制御手段220と自機位置測位手段230、画像取得手段240、飛行体送受信手段250、飛行計画記憶手段260、人孔蓋記憶手段270は、飛行体本体210に搭載される。
【0038】
飛行体本体210は、電力によって無人で飛行するUAV(UnmannedAirVehicle)であり、いわゆるドローンなど市場に提供されているものを利用することができる。また飛行体制御手段220は、飛行体本体210の飛行を制御するものであり、コンピュータを利用することができる。なお飛行体本体210は、飛行体制御手段220の制御によって自ら飛行することから、便宜上ここでは飛行体200の飛行のことを「自律飛行」ということとする。
【0039】
飛行体制御手段220は、あらかじめ設定された「飛行計画」にしたがって飛行体200を自律飛行させる。この飛行計画には、起点側点検調査用人孔蓋100と終点側点検調査用人孔蓋100、起点側点検調査用人孔蓋100の種々の座標(特にプラットフォーム120の3次元座標)、終点側点検調査用人孔蓋100の種々の座標(特にプラットフォーム120の3次元座標)、起点側点検調査用人孔蓋100と終点側点検調査用人孔蓋100を連結する下水道管SP、その下水道管SPの線形や3次元座標などが含まれる。起点側点検調査用人孔蓋100と終点側点検調査用人孔蓋100との間に点検調査用人孔蓋100が設置されている場合は、中間点検調査用人孔蓋100とその座標(特にプラットフォーム120の3次元座標)も飛行計画に含まれる。飛行体200が飛行計画記憶手段260を具備する場合、飛行計画は飛行計画記憶手段260によって記憶され、飛行体制御手段220が飛行計画記憶手段260から飛行計画を読み出して実行する。
【0040】
自機位置測位手段230は、飛行中の飛行体200の自機位置を連続的(定期的あるいは断続的)に取得する手段である。ただし、下水道管SP内では衛星測位の搬送波(電波)を受信することが難しいため、自機位置測位手段230はいわゆる屋内測位技術を利用して自機位置を測位する。屋内測位技術としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)による測位方法や、無線LANのアクセスポイントを利用する測位方法、室内に電波発信機を配置して測位するIMES(IndoorMessagingSystem)、LEDの高速点滅を信号として伝送する可視光通信を利用した測位方法、赤外線通信を利用した測位方法などが挙げられる。このうちSLAMは、カメラやレーザーによって得られるデータを高速に繋いでいくことで、下水道管SP内の3次元地図を作成すると同時に、この3次元地図におけるカメラやレーザー計測機の位置(3次元座標)と姿勢(ω、φ、κ)も得られる技術であり、下水道管SP内における自機位置の測位には適している。なおSLAMを採用した場合、画像取得手段(デジタルカメラやデジタルビデオ)あるいはレーザー計測機を具備することとなり、測位の結果得られる画像取得手段等の3次元座標をそのまま自機位置の座標とすることもできるし、画像取得手段等の3次元座標に基づいて(オフセットを勘案して)自機位置の座標を求めることができる。
【0041】
飛行体制御手段220は、自機位置測位手段230が取得した自機位置の3次元座標と、飛行計画(特に下水道管SPの線形や3次元座標)とを照らし合わせ、現在の自機位置が飛行計画から著しく外れている場合は、自律飛行を修正する機能を有するものとすることもできる。この場合、起点側点検調査用人孔蓋100の位置や終点側点検調査用人孔蓋100の位置、中間の点検調査用人孔蓋100の位置、下水道管SPの線形等を規定する座標系と、自機位置測位手段230が取得した自機位置を規定する座標系は、同じ座標系とすることが望ましい。例えば、両者の座標系を世界測地系といったいわゆる絶対座標系で統一することもできるし、両者の座標系をいわゆる任意座標系(ローカル座標系)で統一してもよい。
【0042】
画像取得手段240は、飛行体200が自律飛行しながら連続的(定期的あるいは断続的)に管内画像を取得する手段であり、例えばデジタルカメラやデジタルビデオ、あるいは赤外線カメラ、近赤外線カメラなどを利用することができる。自機位置測位手段230がSLAMを採用し画像取得手段を具備する場合、画像取得手段240はSLAM用のものと兼用することもできる。もちろん、目的が違うため画像取得手段240とSLAM用のものはそれぞれ別に用意してもよい。画像取得手段240は、管内画像を広く撮影できるものが望ましく、用いられるレンズは広角のもの(望ましくは画角120~190°のもの)が適し、超広角レンズや円周魚眼レンズを採用するとよい。
【0043】
また、画像取得手段240が画像を取得する際に照明を与える照明手段を設けることもできる。この照明手段は、光を常時照射する仕様とすることもできるし、画像取得手段240が画像取得するタイミングで(つまり画像取得手段240による画像取得と同期して)光を照射する仕様とすることもできる。
【0044】
飛行体送受信手段250は、点検調査用人孔蓋100の第1人孔蓋送受信手段141に管内画像と自機位置を送信する手段であり、既述したとおり無線通信が可能であっていわゆる屋内通信が可能なものが望ましい。また、管内画像と、その管内画像を取得したとき(あるいは最も近いとき)の自機位置を関連付けて(紐付けて)送信するとよい。なお、管内画像や自機位置は、それぞれ取得するたびに送信してもよいし、ある程度まとめて送信してもよい。
【0045】
飛行計画記憶手段260は、既述したとおり飛行計画を記憶するものであり、人孔蓋記憶手段270は、点検調査用人孔蓋100の設置位置(例えば中心座標)やプラットフォーム120の位置を示す3次元座標などを、設置された複数の点検調査用人孔蓋100ごとに記憶するものである。なお、飛行計画記憶手段260と人孔蓋記憶手段270は飛行体本体210に搭載されると説明したが、これに代えて(あるいは加えて)情報管理部300に設置することとし、飛行体送受信手段250と管理部送受信手段によって必要な情報を送受信して利用することもできる。
【0046】
飛行体制御手段220は、原則として飛行計画にしたがい飛行体200を終点側点検調査用人孔蓋100に誘導するが、必ずしも飛行体200が飛行計画どおりに自律飛行するとは限らない。下水道管SPを自律飛行している飛行体200は目視確認することはできないため、場合によっては不測の事態が生じて終点側点検調査用人孔蓋100に向かう途中で電力を失い墜落するおそれもある。そこで、飛行体制御手段220が残された電力量(以下、「電力残量」という。)に応じて飛行体200を適宜誘導する仕様を採用することもできる。
【0047】
図6は、電力残量に応じて飛行体制御手段220が飛行体200を適宜誘導する処理の流れを示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。以下、この図を参照しながら、電力残量に応じて飛行体制御手段220が飛行体200を適宜誘導する処理について詳しく説明する。
【0048】
飛行体制御手段220の制御によって飛行体200が終点側点検調査用人孔蓋100に向かって自律飛行を行いながら(Step101)、自機位置測位手段230が飛行中の飛行体200の自機位置を連続的(定期的あるいは断続的)に取得する(Step102)。飛行体制御手段220は、自機位置の座標と終点側点検調査用人孔蓋100の座標に基づいて、終点側点検調査用人孔蓋100までの飛行距離を求める(Step103)。このとき、下水道管SPの線形や座標も考慮するとよい。
【0049】
飛行距離を求めると、単位距離当たりに要する電力量(例えば100m飛行するために必要な電力量)に基づいて、飛行距離に要する電力量(以下、「必要電力量」という。)を求める(Step104)。必要電力量を求めると、飛行体制御手段220は電力残量を取得し(Step105)、必要電力量と電力残量を照らし合わせる(Step106)。そして、電力残量が必要電力量を超えるとき(Step106のYes)、飛行体制御手段220は飛行体200をそのまま終点側点検調査用人孔蓋100に向けて自律飛行させる。一方、電力残量が必要電力量を下回るとき(Step106のNo)、飛行体制御手段220は自機位置から最も近い点検調査用人孔蓋100を検出する(Step107)。具体的には、飛行体制御手段220が自機位置をもって人孔蓋記憶手段270に照会すると、人孔蓋記憶手段270に記憶された複数の点検調査用人孔蓋100中から最も自機位置に近い点検調査用人孔蓋100が選出され、飛行体制御手段220に引き渡される。最寄りの点検調査用人孔蓋100が検出されると、飛行体制御手段220は飛行体200をその最寄りの点検調査用人孔蓋100に向けて自律飛行させる(Step108)。なお、電力残量が必要電力量を下回るときは、最寄りの点検調査用人孔蓋100を検出することなく直ちに起点側点検調査用人孔蓋100に自律飛行させる仕様とすることもできる。
【0050】
飛行体200が、終点側点検調査用人孔蓋100(あるいは最寄りの点検調査用人孔蓋100)に到達し、そのプラットフォーム120に着地すると、飛行体200は終点側点検調査用人孔蓋100(あるいは最寄りの点検調査用人孔蓋100)が具備する給電設備によって給電される。
【0051】
(情報管理部)
図7は、情報管理部の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように情報管理部300は、管理部送受信手段310を含んで構成され、さらに地理情報システム320やディスプレイ等の表示手段330、人孔情報記憶手段340、管路情報記憶手段350、背景地図記憶手段360、取得情報記憶手段370、人孔蓋記憶手段380を含んで構成することもできる。
【0052】
管理部送受信手段310は、点検調査用人孔蓋100の第2人孔蓋送受信手段142から送信される管内画像と自機位置、衛星受信データ(GNSSデータ)を受信する手段であり、既述したとおり無線通信が可能であっていわゆる屋外通信が可能なものが望ましい。
【0053】
人孔情報記憶手段340は、下水用人孔MHごとにその位置座標や属性情報を記憶するものであり、管路情報記憶手段350は、下水道管SPの線形や3次元座標、形状や寸法、材質(断面と長さ)を記憶するものであり、背景地図記憶手段360は、後述する地理情報システム320の背景地図を記憶するものである。また取得情報記憶手段370は、管理部送受信手段310が受信したデータ(管内画像と自機位置、衛星受信データ)を記憶するものであり、管内画像と、その管内画像を取得したとき(あるいは最も近いとき)の自機位置が関連付けられた(紐付けられた)うえで記憶され、自機位置はその自機位置に係る飛行体200と関連付けられた(紐付けられた)うえで記憶される。人孔蓋記憶手段380は、設置された複数の点検調査用人孔蓋100ごとに点検調査用人孔蓋100の設置位置(例えば中心座標)や属性情報を記憶するものであり、それぞれ点検調査用人孔蓋100の識別子(ID:identification)に関連付けられた(紐付けられた)うえで記憶される。これら人孔情報記憶手段340と管路情報記憶手段350、背景地図記憶手段360、取得情報記憶手段370、人孔蓋記憶手段380は、例えばデータベースサーバに構築することができ、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0054】
地理情報システム320は、一般に「GIS:Geographic Information System)」と呼ばれるもので、コンピュータ装置を使用して背景地図上に種々の地理空間情報を表示することができるものである。ここで地理空間情報とは、地点(ポイント)や領域(エリア)の位置を示す情報(位置情報)、あるいは位置情報に加えその位置に関連付けられた様々な情報のことであり、地図に記載するための情報という概念を超えたものである。例えば、建物や道路、河川といった地物の場合、地物の位置や形状を表す情報だけでなく、地物が出現した時間、その地物の名称や分類、地物が有する機能など、必要とされる全ての情報を含んだものも、その地物の地理空間情報とすることができる。
【0055】
地理情報システム320は、背景地図記憶手段360から読み出した背景地図を表示手段330に表示するとともに、人孔情報記憶手段340から読み出した下水用人孔MHを背景地図のうちその設置位置に表示し、管路情報記憶手段350から読み出した下水道管SPを背景地図のうちその敷設位置に表示し、人孔蓋記憶手段380から読み出した点検調査用人孔蓋100を背景地図のうちその設置位置に表示することができる。さらに地理情報システム320は、取得情報記憶手段370から読み出した管内画像を背景地図のうちその取得位置に表示することができ、取得情報記憶手段370から読み出した自機位置に基づいて飛行体200の位置をリアルタイムで背景地図上に表示することができる。このとき複数の飛行体200が自律飛行している場合は、飛行体200ごとにその位置をリアルタイムで背景地図上に表示することができる。
【0056】
3.管路点検調査方法
続いて本願発明の管路点検調査方法について
図8を参照しながら説明する。なお、本願発明の管路点検調査方法は、ここまで説明した管路点検調査システムを用いて管路(下水道管)を点検調査する方法であり、したがって管路点検調査システムで説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の管路点検調査方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.管路点検調査システム」で説明したものと同様である。
【0057】
図8は、本願発明の管路点検調査システムの主な工程の流れを示すフロー図である。この図に示すように、まずは点検調査計画を行う(Step201)。具体的には、点検調査対象とする下水道管SPを選出するとともに、点検調査対象となった下水道管SPに設置された管路用人孔MHを「対象管路用人孔」として抽出する。そして対象管路用人孔の中から、飛行体200が出発する対象管路用人孔を「起点側管路用人孔」、飛行体200が到達する対象管路用人孔を「終点側管路用人孔」、それ以外の対象管路用人孔を「中間管路用人孔」として抽出する。なお、点検調査対象とする水道管SPの範囲によっては、起点側管路用人孔と終点側管路用人孔のみが抽出されることもある。
【0058】
点検調査計画を行うと、現地に赴き対象管路用人孔とされた蓋を取り外し、本願発明の点検調査用人孔蓋100を設置する(Step202)。そして、起点側管路用人孔に設置された点検調査用人孔蓋100のプラットフォーム120に、飛行体200を配置して(Step203)、準備を終える。
【0059】
オペレータ操作によって飛行体200に対して運転開始の指示を送ると、飛行体200は、起点側点検調査用人孔蓋100のプラットフォーム120を飛び立って飛行体制御手段220の制御による自律飛行を開始する。自律飛行中は、随時(連続的、定期的、または断続的に)自機位置測位手段230によって自機位置を取得するとともに、画像取得手段240によって管内画像を取得する(Step204)。また、取得された管内画像と自機位置は、飛行体送受信手段250によって第1人孔蓋送受信手段141に送信され(Step205)、第2人孔蓋送受信手段142によって管理部送受信手段310に送信される(Step206)。
【0060】
管理部送受信手段310が、管内画像と自機位置、衛星受信データ(GNSSデータ)を受信すると、地理情報システム320を使用して背景地図を表示手段330に表示するとともに、下水用人孔MHや下水道管SP、点検調査用人孔蓋100を背景地図に表示する。さらに地理情報システム320を使用して、飛行体200の現在位置を監視しつつ、取得位置に表示した管内画像を確認することで下水道管SP内部の劣化状況を把握する(Step207)。
【0061】
管理部送受信手段310が、管内画像と自機位置、衛星受信データ(GNSSデータ)を受信すると、地理情報システム320を使用して背景地図を表示手段330に表示するとともに、下水用人孔MHや下水道管SP、点検調査用人孔蓋100を背景地図に表示する。さらに地理情報システム320を使用して、飛行体200の現在位置を監視しつつ、取得位置に表示した管内画像を確認することで下水道管SP内部の劣化状況を把握する(Step207)。
【0062】
飛行体200が、終点側点検調査用人孔蓋100(あるいは最寄りの点検調査用人孔蓋100)に到達し、そのプラットフォーム120に着地すると、飛行体200は終点側点検調査用人孔蓋100(あるいは最寄りの点検調査用人孔蓋100)が具備する給電設備によって給電される(Step208)。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明の点検調査用人孔蓋、管路点検調査システム、及び管路点検調査方法は、下水道管のほか、共同溝や電線共同溝、情報ボックスなど、人孔が設けられた様々な埋設管に利用することができる。本願発明は、我が国のライフラインである下水道施設等の永続的な運用に資することを考えれば、産業上利用できるうえに社会的にも貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0064】
100 点検調査用人孔蓋
110 (点検調査用人孔蓋の)蓋本体
120 (点検調査用人孔蓋の)プラットフォーム
130 (点検調査用人孔蓋の)給電設備
141 (点検調査用人孔蓋の)第1人孔蓋送受信手段
142 (点検調査用人孔蓋の)第2人孔蓋送受信手段
150 (点検調査用人孔蓋の)衛星測位受信機
160 (点検調査用人孔蓋の)太陽光発電設備
170 (点検調査用人孔蓋の)ロッド
200 飛行体
210 (飛行体の)飛行体本体
220 (飛行体の)飛行体制御手段
230 (飛行体の)自機位置測位手段
240 (飛行体の)画像取得手段
250 (飛行体の)飛行体送受信手段
260 (飛行体の)飛行計画記憶手段
270 (飛行体の)人孔蓋記憶手段
300 情報管理部
310 (情報管理部の)管理部送受信手段
320 (情報管理部の)地理情報システム
340 (情報管理部の)人孔情報記憶手段
350 (情報管理部の)管路情報記憶手段
360 (情報管理部の)背景地図記憶手段
370 (情報管理部の)取得情報記憶手段
380 (情報管理部の)人孔蓋記憶手段
MH 下水用人孔
SP 下水道管