(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】タンクの解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E04G23/08 J
(21)【出願番号】P 2019155545
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168907
【氏名又は名称】本田 太久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】津井 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 伸彦
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-060893(JP,A)
【文献】特開2018-168674(JP,A)
【文献】特開2013-002106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
B65D 88/00-90/66
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの解体方法であって、
前記タンクは、
屋根板と、
前記屋根板を下方から支持する円筒状の側板と、
前記側板よりも板厚が厚く形成され、前記屋根板と前記側板とを接続するリング状のナックルプレートと、
を備え、
前記タンクの解体方法は、
前記屋根板を解体する屋根板解体工程と、
前記屋根板解体工程をおこなった後、前記ナックルプレートを解体するナックルプレート解体工程と、
を含み、
前記ナックルプレート解体工程は、
前記ナックルプレートを周方向に沿って切断して幅狭のリング状に形成する周方向切断工程と、
前記周方向切断工程をおこなう前に、前記ナックルプレートの内周縁と前記周方向切断工程において切断する切断位置との間を径方向に沿って複数切断する径方向切断工程を含む、
ことを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項2】
タンクの解体方法であって、
前記タンクは、
屋根板と、
前記屋根板を下方から支持する円筒状の側板と、
前記側板よりも板厚が厚く形成され、前記屋根板と前記側板とを接続するリング状のナックルプレートと、
を備え、
前記タンクの解体方法は、
前記屋根板を解体する屋根板解体工程と、
前記屋根板解体工程をおこなった後、前記ナックルプレートを解体するナックルプレート解体工程と、
を含み、
前記ナックルプレート解体工程は、
前記ナックルプレートを周方向に沿って切断して幅狭のリング状に形成する周方向切断工程と、
前記周方向切断工程におこなうことにより切断された切断位置と前記ナックルプレートの外周縁との間を径方向に沿って複数切断する第2径方向切断工程を含む、
ことを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項3】
タンクの解体方法であって、
前記タンクは、
屋根板と、
前記屋根板を下方から支持する円筒状の側板と、
前記側板よりも板厚が厚く形成され、前記屋根板と前記側板とを接続するリング状のナックルプレートと、
を備え、
前記タンクの解体方法は、
前記屋根板を解体する屋根板解体工程と、
前記屋根板解体工程をおこなった後、前記ナックルプレートを解体するナックルプレート解体工程と、
を含み、
前記ナックルプレート解体工程は、
前記ナックルプレートを周方向に沿って切断して幅狭のリング状に形成する周方向切断工程と、
前記周方向切断工程をおこなう前に、前記ナックルプレートの内周縁と前記周方向切断工程において切断する切断位置との間を径方向に沿って複数切断する径方向切断工程と、
前記周方向切断工程におこなうことにより切断された切断位置と前記ナックルプレートの外周縁との間を径方向に沿って複数切断する第2径方向切断工程を含む、
ことを特徴とするタンクの解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの解体方法に関し、特に、円筒状に形成されたタンクの解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、低温液体(例えば、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)、以下、「LNG」と称す)を貯蔵する地上式のタンクとして、ドーム状の屋根板と、これを下方から支持する円筒状の側板とを備えた、円筒タンク(例えば、直径70m,高さ50m)が知られている。
【0003】
一般に、円筒タンクは、屋根板と側板とが、リング状のナックルプレート(ナックルリングともいわれる)を介して接続されるように構成される(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
ところで、このようなナックルプレートを備えた円筒タンクを解体する場合、通常、
(a)まず、屋根板を解体する、
(b)次に、ナックルプレートを解体する、
(c)その後、側板を解体する、
といった手順を踏むことで、その作業がおこなわれる。
【0005】
とりわけ、ナックルプレートを解体する場合にあっては、周方向に間隔を空けてブロック状に切断し、これを側板の上端から順に撤去していくのが一般的である(特許文献2の
図2および
図3と逆の手順)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-242266号公報
【文献】特開2014-193726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ナックルプレートは、多大な応力が作用しがちな屋根板と側板との接続部分を補強するための部材として機能させる観点から、その板厚(例えば、30mm~50mm)が、側板や屋根板の板厚(例えば、10mm~15mm)よりも厚く形成されている。
【0008】
この点、ナックルプレートは、側板や屋根板に比して、単位面積当たりの重量が重いものといえる。
【0009】
すなわち、上記円筒タンクの解体方法では、側板からブロック状にしたナックルプレートを順に撤去していくと、その途中の段階(特に、最終段階)で、必然的に、重量のあるナックルプレートが、側板の上端部に片持ち状に支持された状態で残存する期間が生じる。
【0010】
かかる期間中、残存するナックルプレート(以下、「残存ナックルプレート」と称す)と側板との接続部分には、径方向内側へ向かう荷重が作用する(構造上不安定になる)ため、「残存ナックルプレート」の板厚(重量)や形状等によっては、この部分を作用点として側板が倒れかねない、といった問題があった。特に、このような期間中に、地震や強風(例えば、台風)が発生した場合においては、なおさらである。
【0011】
この点、従来の円筒タンクの解体方法では、安全性の面において多大に改善の余地があるものといえる。
【0012】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、ナックルプレート解体中におけるタンク構造の不安定化を抑制することで、解体作業をより安全におこなうことが可能なタンクの解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、本発明にかかるタンクの解体方法によれば、タンクの解体方法であって、前記タンクは、屋根板と、前記屋根板を下方から支持する円筒状の側板と、前記側板よりも板厚が厚く形成され、前記屋根板と前記側板とを接続するリング状のナックルプレートと、を備え、前記タンクの解体方法は、前記屋根板を解体する屋根板解体工程と、前記屋根板解体工程をおこなった後、前記ナックルプレートを解体するナックルプレート解体工程と、を含み、前記ナックルプレート解体工程は、前記ナックルプレートを周方向に沿って切断して幅狭のリング状に形成する周方向切断工程を含む、ことにより解決される。
【0014】
なお、ここでいう「タンク」とは、流体(例えば、「LNG」)を貯蔵するタンクのみならず、このような流体を貯蔵しないタンクをも包含する意味であり、いわゆる二重殻タンクに限られず、例えば、一重殻タンクであっても構わない趣旨である。
【0015】
上記構成では、例えば、
(a)ナックルプレートを周方向に切断して、ナックルプレートの径方向の幅を幅狭にする、
(b)その後、残存された幅狭のナックルプレートを、ブロック状に切断して、これを側板の上端部から順次撤去する、
といった手順でナックルプレートの解体作業をおこなうことができるように構成されている。
【0016】
すなわち、上記構成では、ナックルプレートを幅狭化するまでの間(上記(a)の作業が完了するまでの間)にあっては、ナックルプレートが、リング状のまま、換言すれば、補強部材としての機能を十分に果たしている状態のまま、側板の上端部に取り付けられているため、解体途中のタンクの構造が不安定になってしまうことがない。
【0017】
一方、上記構成では、その後、残存するナックルプレートを側板の上端部からブロック状に撤去していくと、必然的に、これが側板の上端部に片持ち状に支持される期間が生じるが、ナックルプレートがこの時点で既に軽量化(幅狭化)されているため、この期間においても、タンクの構造が不安定になってしまうことを有効に抑制することが可能である。
【0018】
これらをまとめると、上記構成では、ナックルプレートを解体している何れの段階においても、解体途中のタンクが構造上不安定になってしまうことを十分に抑制することが可能なため、ナックルプレートの解体作業をより安全におこなうことができる。
【0019】
なお、本発明にかかるタンクの解体方法においては、前記ナックルプレートの内周縁と前記周方向切断工程において切断する切断位置との間を径方向に沿って複数切断する径方向切断工程を含む、と好適である。
【0020】
また、本発明にかかるタンクの解体方法においては、前記周方向切断工程におこなうことにより切断された切断位置と前記ナックルプレートの外周縁との間を径方向に沿って複数切断する第2径方向切断工程を含む、と好適である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明にかかるタンクの解体方法によれば、比較的簡易な構成でありながらも、ナックルプレートの解体作業をより安全におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態にかかる低温タンクの概要を説明するための概要図である。
【
図3】ナックルプレートの解体順序を説明するための説明図である。
【
図4】本実施形態にかかるタンクの解体方法の作業の流れを説明するためのフロー図である。
【
図5】
図4の第1径方向切断工程における作業の内容を説明するための平面図である。
【
図6】
図4の第1周方向切断工程における作業の内容を説明するための平面図である。
【
図7】
図4の残存ナックルプレート分割撤去工程における作業の内容を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかる低温タンクの概要を説明するための概要図、
図2は
図1の低温タンクの斜視図、
図3はナックルプレートの解体順序を説明するための説明図、
図4は本実施形態にかかるタンクの解体方法の作業の流れを説明するためのフロー図、
図5は
図4の第1径方向切断工程における作業の内容を説明するための平面図、
図6は
図4の第1周方向切断工程における作業の内容を説明するための平面図、
図7は
図4の残存ナックルプレート分割撤去工程における作業の内容を説明するための平面図である。
【0024】
図1は、本実施形態にかかるタンクの解体方法が適用される低温タンク1を示したものである。なお、上記タンクの解体方法と、低温タンク1とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「タンクの解体方法」と、「タンク」とに該当する。
【0025】
(低温タンク1の構成)
ここで、タンクの解体方法について説明する前に、本実施形態にかかる低温タンク1について説明する。
図1に示すように、低温タンク1は、地上式のいわゆる二重殻タンクであって、低温液体としての「LNG」を貯蔵する内槽10と、内槽10の周囲を囲むようにして配置される外槽20とを備えている。
【0026】
(内槽10)
内槽10は、板状の金属部材(例えば、ニッケル鋼やステンレス鋼)からなり、円状の内槽底板11と、円筒状の内槽側板12と、ドーム状の内槽屋根板13とを有している。なお、内槽側板12と、内槽屋根板13とが、特許請求の範囲に記載の「側板」と、「屋根板」とに該当する。
【0027】
詳しくは後述するが、内槽底板11は、底部リング24上に載置固定され、外槽20の外槽底板21との間で底部保冷空間SBを形成する。
また、内槽側板12は、内槽底板11の外周部から起立するように設けられる一方、内槽屋根板13は、リング状のナックルプレート14を介して内槽側板12の上端部に接続されている。なお、上記ナックルプレート14が特許請求の範囲に記載の「ナックルプレート」に該当する。
【0028】
(ナックルプレート14)
ここで、ナックルプレート14について
図1および
図2を参照しつつ説明する。
図1および
図2に示すように、ナックルプレート14は、その板厚(例えば、30mm~50mm)が、内槽側板12および内槽屋根板13の板厚(例えば、10mm~15mm)よりも厚く形成された金属部材(例えば、ニッケル鋼、ステンレス鋼およびアルミ合金)からなり、径方向内側へ向けて上方に傾斜する形状を有している。
【0029】
すなわち、ナックルプレート14は、単位面積当たりの重量が、内槽側板12および内槽屋根板13と比較して、重いものとなっている。
【0030】
このようにして、内槽側板12と内槽屋根板13との接続部分に板厚のナックルプレート14を設けたのは、これらの接続部分には、
(a)内槽10に貯蔵された「LNG」が気化して内部の圧力が上昇した際に、内槽屋根板13のリフトアップに伴って、多大な負荷がかかりやすいうえ、
(b)内槽屋根板13の重みによって、とかく応力が集中しやすい、
ため、この部分を十分に補強する必要があること、また、
(c)地震が発生したときに、内槽屋根板13等の振動荷重を良好に基礎B(コンクリート基礎)に伝達する必要があること、
等の理由からである。
【0031】
(外槽20)
外槽20は、板状の金属部材(例えば、炭素鋼)からなり、内槽10と同様に、円状の外槽底板21と、円筒状の外槽側板22と、ドーム状の外槽屋根板23とを有している。
【0032】
外槽底板21は、基礎B上に載置固定され、上述したように、内槽底板11との間で底部保冷空間SBを形成する。
【0033】
本実施形態にかかる底部保冷空間SBには、パーライトコンクリート(「パーライト」にセメントや砂等を混ぜたもの)からなるリング状の底部リング24と、底部リング24の内側に充填配置される不図示の保冷材(例えば、パーライトコンクリートからなる円筒ブロック、および、その内部等に充填された粉状のパーライト(以下、「粉状パーライト」)と称す)とが設けられている。
【0034】
外槽側板22は、内槽側板12から所定の間隔を空けた状態で、外槽底板21の外周部上に接続され、内槽側板12との間で側部保冷空間SSを形成する。
【0035】
同様に、外槽屋根板23は、内槽屋根板13から所定の間隔を空けた状態で、外槽側板22の上端部に接続され、内槽屋根板13との間で屋根部保冷空間SUを形成する。
【0036】
本実施形態において、側部保冷空間SSおよび屋根部保冷空間SUには、公知の低温タンクと同様に、保冷材としての粉状パーライト31が充填されている。なお、本実施形態では、これらの空間に、保冷材としての粉状パーライト31のみを充填するように構成したが、例えば、側部保冷空間SSにおいては、内槽側板12に接するようにグラスウールを設けるとともに、その他の部分に粉状パーライト31を充填することも可能である。
【0037】
次に、本実施形態にかかるタンクの解体方法について
図1~
図7を参照しつつ説明する。
なお、以下においては、
(a)屋根部保冷空間SU、側部保冷空間SSおよび底部保冷空間SB内の保冷材(粉状パーライト31等)の除去作業(抜取り作業)が完了した後に、
(b)外槽屋根板23および内槽屋根板13が、例えば、特許文献1と同様な手法(ブロック状に分割して撤去する手法)で解体されて、ナックルプレート14が露出している状態(
図2参照)となっていること、
を前提として説明する。なお、上記内槽屋根板13を解体する作業が特許請求の範囲に記載の「屋根板解体工程」に該当する。
【0038】
図4に示すように、本実施形態にかかるタンクの解体方法は、上述した外槽屋根板23および内槽屋根板13を解体する解体工程(屋根板解体工程)のほか、ステップS100の第1径方向切断工程と、ステップS200の第1周方向切断工程と、ステップS300のナックルプレート幅狭化確認工程と、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程と、ステップS500のナックルプレート解体完了確認工程と、ステップS600の側板・底板解体工程とを備えている。なお、上記ステップS100の第1径方向切断工程~ステップSナックルプレート解体完了確認工程と、ステップS100の第1径方向切断工程と、ステップS200の第1周方向切断工程とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「ナックルプレート解体工程」と、「径方向切断工程」と、「周方向切断工程」とに該当する。
[0039]
(ステップS100)
ナックルプレート14を解体する作業は、ステップS100の第1径方向切断工程をおこなうことから始まる。
[0040]
図4および
図5に示すように、この第1径方向切断工程では、ナックルプレート14に、周方向に所定の間隔を空けて、複数(本実施形態では、「16箇所」)の切れ目L1を形成する作業をおこなう。
【0039】
具体的に、第1径方向切断工程では、切れ目L1を、ナックルプレート14の内周縁から径方向外側に向けて、リング幅(径方向の幅)の途中の位置(例えば、1/2~3/4となる位置)まで形成する作業をおこなう。なお、このような切れ目L1は、バーナ等の切断工具を用いることで形成することが可能である。
【0040】
本実施形態では、ステップS100の第1径方向切断工程(複数の切れ目L1を形成する作業)をおこなった後、次工程であるステップS200の第2周方向切断工程がおこなわれるように構成されている。
【0041】
(ステップS200)
図4および
図6に示すように、ステップS200の第1周方向切断工程では、隣接する切れ目L1,L1の切断端間を周方向に切断して、ナックルプレート14をブロック化した状態で順次撤去する作業をおこなう。なお、このような切断は、切れ目L1を形成したときと同じ要領で、バーナ等の切断工具を用いておこなえばよい。
【0042】
ここで、この第1周方向切断工程でおこなう作業について
図3および
図6を参照しつつ説明する。なお、
図3に示す「丸数字」は、ブロック状にしたナックルプレート14を撤去する順番を示したものである。また、以下においては、説明の便宜上、例えば、「1番目」に撤去するブロック状のナックルプレート14を「分割ナックルプレート14a1」と、「17番目」に撤去するブロック状のナックルプレート14を「分割ナックルプレート14a17」と、それぞれ、称することとする。
【0043】
図3、
図6に示すように、本実施形態では、ステップS200の第1周方向切断工程において、
(a)まず、分割ナックルプレート14a1に対応する切れ目L1,L1の切断端間を周方向に切断して、分割ナックルプレート14a1を撤去する(
図6(a)参照)、
(b)次に、分割ナックルプレート14a1と点対称の位置にある分割ナックルプレート14a2を、分割ナックルプレート14a1を撤去したときと同じ要領で撤去する(
図6(b)参照)、
(c)その後、
・分割ナックルプレート14a1と時計回り方向に隣接する分割ナックルプレート14a3(
図6(c)参照)→
・分割ナックルプレート14a2と時計回り方向に隣接する分割ナックルプレート14a4(
図6(d)参照)→
・分割ナックルプレート14a5・・・分割ナックルプレート14a16(
図6(e)参照)、
の順で撤去する作業をおこなう。なお、このような作業は、例えば、分割ナックルプレートの内周縁側をクローラクレーン等で吊り上げ支持しながらおこなうことにより実現することが可能である。
【0044】
本実施形態では、ステップS200の第1周方向切断工程(隣接する切れ目L1,L1の切断間を周方向に切断する作業)をおこなった後、次工程であるステップS300のナックルプレート幅狭化確認工程がおこなわれるように構成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、分割ナックルプレートを、点対称となる位置で順に撤去することで、内槽側板12に作用する荷重をバランスよく分散するように構成したが、例えば、分割ナックルプレート14a1から時計回り(反時計回り)に順次撤去してもよく、また、ランダムに撤去してもよい。
【0046】
(ステップS300)
図2~
図4および
図6に示すように、ステップS300のナックルプレート幅狭化確認工程では、ステップS200の第1周方向切断工程をおこなうことで、ナックルプレート14がリング状に幅狭化されたか否かを確認する作業をおこなう。
【0047】
具体的に、ステップS300のナックルプレート幅狭化確認工程では、
(a)分割ナックルプレート14a1~14a16が全て撤去されていない場合、(例えば、分割ナックルプレート14a15,14a16が残存している場合(
図2等参照))、ナックルプレート14がリング状に幅狭化されていないと判断する一方、
(b)分割ナックルプレート14a1~14a16の全てが撤去されている場合(
図6(e)参照)、ナックルプレート14がリング状に幅狭化されていると判断する、
作業をおこなう。
【0048】
本実施形態では、ナックルプレート14が、
(a)リング状に幅狭化されていないと判断した場合、ステップS200の第1周方向切断工程が引き続きおこなわれる一方、
(b)リング状に幅狭化されていると判断した場合、次工程であるステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程がおこなわれるように構成されている。
【0049】
(ステップS400)
図2~
図4および
図7に示すように、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程では、残存しているナックルプレート14をブロック状に切断しながら、内槽側板12の上端部から撤去する作業をおこなう(
図7(f)の分割ナックルプレート14a17~14a32参照)。
【0050】
この点について、
図2および
図7を例にとって具体的に説明すると、本実施形態では、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程において、
(a)まず、分割ナックルプレート14a17を撤去するため、切れ目L1を形成したときと同じ要領で、一対の切れ目L2,L2を、ナックルプレート14の外周縁まで形成する(第2径方向切断工程、
図7(a)参照)、
(b)次に、切れ目L2,L2の切断端(ナックルプレート14の外周端)間を周方向に切断して、分割ナックルプレート14a17を、分割ナックルプレート14a1~14a16を撤去したときと同じ要領で撤去する(第2周方向切断工程、
図7(b)参照)、
(c)次に、分割ナックルプレート14a17と点対称の位置にある分割ナックルプレート14a18を、分割ナックルプレート14a17を撤去したときと同じ要領で撤去する(
図7(c)参照)、
(d)その後、
・分割ナックルプレート14a17と時計回り方向に隣接する分割ナックルプレート14a19(
図7(d)参照)→
・分割ナックルプレート14a18と時計回り方向に隣接する分割ナックルプレート14a20(
図7(e)参照)→
・分割ナックルプレート14a21・・・分割ナックルプレート14a32(
図7(f)参照)、
の順で撤去する作業をおこなうように構成されている。なお、上記切れ目L2を形成する作業が特許請求の範囲に記載の「第2径方向切断工程」に該当する。
【0051】
本実施形態では、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程をおこなった後、次工程であるステップS500のナックルプレート解体完了確認工程がおこなわれるように構成されている。
【0052】
なお、本実施形態では、分割ナックルプレートを点対称となる位置で順次撤去することで、内槽側板12に作用する荷重をバランスよく分散するように構成したが、例えば、分割ナックルプレート14a17から時計回り(反時計回り)に順次撤去してもよく、ランダムに撤去することも可能である。
【0053】
また、本実施形態では、分割ナックルプレートを周方向に切断することで撤去するように構成したが、例えば、分割ナックルプレートの内周縁側を上下方向に移動させることによって撤去することができるような場合、上述したような切断作業を省略することもできる。
【0054】
(ステップS500)
図2、
図4および
図7に示すように、ステップS500のナックルプレート解体完了確認工程では、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程をおこなうことで、ナックルプレート14が完全に撤去されたか否かを確認する作業をおこなう。
【0055】
具体的に、ステップS500のナックルプレート解体完了確認工程では、
(a)分割ナックルプレート14a17~14a32の何れかが内槽側板12の上端部に残存している場合、ナックルプレート14が完全に撤去されていないと判断する一方、
(b)分割ナックルプレート14a17~14a32も何れもが内槽側板12の上端部に残存していない場合、ナックルプレート14が完全に撤去されていると判断する、
作業をおこなう。
【0056】
本実施形態では、ナックルプレート14が、
(a)完全に撤去されていないと判断した場合、ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程が引き続きおこなわれる一方、
(b)完全に撤去されていると判断した場合、次工程であるステップS600の側板・底板解体工程がおこなわれるように構成されている。
【0057】
(ステップS600)
図1および
図2に示すように、ステップS600の側板・底板解体工程では、
(a)内槽側板12および外槽側板22を解体する、
(b)外槽底板21を解体する(上記保冷材の除去作業(抜取り作業)時に内槽底板11を解体していない場合には内槽底板11の解体もおこなう)、
といった手順で作業をおこなう。
【0058】
本実施形態では、ステップS600の側板・底板解体工程をおこなった後、本実施形態にかかるタンクの解体方法による作業が完了するように構成されている。
【0059】
以上のように、本実施形態では、ナックルプレート14の解体作業をおこなうのにあたり、
(a)まず、リング幅の所定位置まで複数の切れ目L1を形成する(ステップS100の第1径方向切断工程)、
(b)次に、隣接する切れ目L1,L1の切断端間を周方向に切断して、ナックルプレート14をブロック化した状態で順次撤去する(ステップS200の第1周方向切断工程)、
(c)その後、ナックルプレート14がリング状に幅狭化した後(ステップS300のナックルプレート幅狭化確認工程)、一対の切れ目L2,L2を形成しつつ、残存するナックルプレート14をブロック化した状態で順次撤去する(ステップS400の残存ナックルプレート分割撤去工程)、
ように構成されている。
【0060】
すなわち、本実施形態では、上記(a)および(b)の作業をおこなっている間にあっては、ナックルプレート14が、リング状のまま、換言すれば、補強部材としての機能を十分に果たしている状態のまま、内槽側板12の上端部に取り付けられているため、この段階で、タンクの構造が不安定しなってしまうことがない(
図6参照)。
【0061】
一方、本実施形態では、上記(c)の作業をおこなっている間にあっては、残存するナックルプレート14が内槽側板12の上端部に片持ち状に支持される期間が生じるが、この時点でナックルプレート14が既に幅狭化(軽量化)されているため、この期間においても、タンクの構造が不安定になってしまうことを有効に抑制することができる(
図7参照)。
【0062】
これらをまとめると、本実施形態では、ナックルプレート14を解体する解体作業中に、低温タンク1の構造が不安定になってしまうことを十分に抑制することが可能なため、その作業を安全におこなうことができる。
【0063】
なお、本実施形態では、ナックルプレート14をリング状に幅狭化する回数を「1回」としたが(
図6(e)参照)、「2回」以上とすることも可能である。
【0064】
また、本実施形態では、いわゆる二重殻タンクを解体する場合を例にとって説明したが、屋根板と側板との間に、補強部材としてのリング状のナックルプレートが設けられているタンクであれば、いかなる円筒タンク(例えば、一重殻タンク)にでも、本発明を適用することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、内槽屋根板13の板厚を、ナックルプレート14よりも薄く形成したが、必要に応じて、これと同等または厚く形成することも可能である。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されるものではない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることはもちろんであることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0067】
1 低温タンク
10 内槽
11 内槽底板
12 内槽側板
13 内槽屋根板
14 ナックルプレート
14a1~14a32 分割ナックルプレート
20 外槽
21 外槽底板
22 外槽側板
23 外槽屋根板
24 底部リング
25 マンホール
31 粉状パーライト
B 基礎
SB 底部保冷空間
SS 側部保冷空間
SU 屋根部保冷空間
L1,L2 切れ目