(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電動機制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20230613BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20230613BHJP
【FI】
H02P27/08
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2019190644
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-204196(JP,A)
【文献】特開2006-287990(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083980(WO,A1)
【文献】特開2011-004571(JP,A)
【文献】特開2020-102935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を制御する電動機制御装置において、
前記電動機は、それぞれの一端が共通に接続された複数の巻線を備え、
前記電動機制御装置は、
複数の前記巻線のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記巻線の他端が接続されたスイッチング部と、
複数の前記巻線の共通接続点に接続された零相スイッチング部と、
各前記スイッチング部および前記零相スイッチング部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
各前記スイッチング部に対して与えられた各指令値に基づいて、各前記スイッチング部を制御し、
複数の前記スイッチング部を制御する複数のスイッチング信号を合成して得られる値を、前記零相スイッチング部に対する基本指令値に合成して零相指令値を求め、
前記零相指令値に基づいて前記零相スイッチング部を制御することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機制御装置において、
前記制御部は、
複数の前記スイッチング部を制御する複数の前記スイッチング信号を加算合計した値と、前記基本指令値とを加算または重み付け加算して前記零相指令値を求めることを特徴とする電動機制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動機制御装置において、
前記基本指令値は、
前記共通接続点に流れる零相電流を制御して、前記電動機のロータにトルクを発生させるための指令値であることを特徴とする電動機制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電動機制御装置において、
前記零相指令値は、前記共通接続点に流れる零相電流を制御するための指令値であることを特徴とする電動機制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動機制御装置において、
各前記スイッチング部および前記零相スイッチング部は、2つのスイッチング素子の各一端を接続したスイッチングアームを備え、
前記制御部は、
各前記スイッチング部に対する搬送波信号と各前記指令値との比較に基づいてパルス幅が定まる前記スイッチング信号に応じて、各前記スイッチング部における前記スイッチングアームが備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御し、
前記零相スイッチング部に対する搬送波信号と前記零相指令値との比較に基づいてパルス幅が定まる零相スイッチング信号に応じて、前記零相スイッチング部における前記スイッチングアームが備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御することを特徴とする電動機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機制御装置に関し、特に、それぞれの一端が共通に接続された複数の巻線を備える電動機の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーによってトルクを発生する電動機が電気自動車等に用いられている。電動機には、ロータに設けられた永久磁石と、ステータに設けられたステータコイルとの間の電磁気的な相互作用によってロータにトルクを発生するものがある。一般に、電動機のステータコイルはインバータに接続される。ステータコイルを構成する複数の巻線(多相巻線)には、ロータの周りに回転磁界を発生させる多相交流電流がインバータによって流され、回転磁界によってロータにトルクが発生する。
【0003】
なお、以下の特許文献1には、本願発明に関連する電動機が記載されている。この文献には、ステータコイルを構成する多相巻線に流れる零相電流を制御して、ロータに半径方向の力を発生させることが記載されている。零相電流は、ステータコイルを構成する多相巻線に同位相で流れる電流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機のロータに発生するトルクを増加させるためには、電動機に入力する多相交流電力を増加させることが考えられる。しかし、インバータに入力する直流電圧や、インバータの直流電圧利用率によっては、充分な多相交流電力を電動機に入力することが困難となり、必要なトルクが得られないことがある。
【0006】
特許文献1には、ステータコイルに流れる多相交流電流に加えて零相電流を利用する電動機が記載されている。特許文献1に記載される電動機では、ステータコイルに零相電流を流すことで発生する零相磁界により、ロータに対して半径方向の力を発生させているが、零相磁界により得られる力をトルク成分として利用していない。そこで、零相磁界によってロータに発生するトルクを増加させる制御について研究開発が行われている。
【0007】
ステータコイルに流れる零相電流を利用する制御においては、零相電流を適切な値に制御することに加えて、零相電流に含まれるリプル成分が少ない等、零相電流の特性が良好であることが望まれる。
【0008】
本発明は、電動機における複数の巻線に流れる零相電流を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電動機を制御する電動機制御装置において、前記電動機は、それぞれの一端が共通に接続された複数の巻線を備え、前記電動機制御装置は、複数の前記巻線のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記巻線の他端が接続されたスイッチング部と、複数の前記巻線の共通接続点に接続された零相スイッチング部と、各前記スイッチング部および前記零相スイッチング部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、各前記スイッチング部に対して与えられた各指令値に基づいて、各前記スイッチング部を制御し、複数の前記スイッチング部を制御する複数のスイッチング信号を合成して得られる値を、前記零相スイッチング部に対する基本指令値に合成して零相指令値を求め、前記零相指令値に基づいて前記零相スイッチング部を制御することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記制御部は、複数の前記スイッチング部を制御する複数の前記スイッチング信号を加算合計した値と、前記基本指令値とを加算または重み付け加算して前記零相指令値を求める。
【0011】
望ましくは、前記基本指令値は、前記共通接続点に流れる零相電流を制御して、前記電動機のロータにトルクを発生させるための指令値である。
【0012】
望ましくは、前記零相指令値は、前記共通接続点に流れる零相電流を制御するための指令値である。
【0013】
望ましくは、各前記スイッチング部および前記零相スイッチング部は、2つのスイッチング素子の各一端を接続したスイッチングアームを備え、前記制御部は、各前記スイッチング部に対する搬送波信号と各前記指令値との比較に基づいてパルス幅が定まる前記スイッチング信号に応じて、各前記スイッチング部における前記スイッチングアームが備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御し、前記零相スイッチング部に対する搬送波信号と前記零相指令値との比較に基づいてパルス幅が定まる零相スイッチング信号に応じて、前記零相スイッチング部における前記スイッチングアームが備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動機における複数の巻線に流れる零相電流を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るコントロールユニットの構成を示す図である。
【
図3】従来の電動機システムにおける零相電流のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電動機システムにおける零相電流のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
【
図6】コントロールユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示される同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。また、回路図を参照する際に用いられる「上」「下」の用語は、回路図における上下を示し、電子部品を実施に配置する際の位置関係を限定するものではない。
【0017】
図1には、本発明の第1実施形態に係る電動機システム1の構成が示されている。電動機システム1は、バッテリ10、インバータ12、電動機14、零相スイッチングアームZおよびコントロールユニット18を備えている。インバータ12は、バッテリ10から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、電動機14に出力する。電動機14のロータ(図示せず)は、インバータ12から出力された三相交流電力によって回転する。電動機14の中性点Nは、零相スイッチングアームZに接続されている。電動機システム1では、零相スイッチングアームZのスイッチングによって電動機14の各巻線に流れる零相電流が調整され、各巻線に流れる三相交流電流のみならず零相電流によってもロータにトルクが発生する。
【0018】
電動機システム1の具体的な構成および動作について説明する。電動機14は、発電機としての機能を備えた発電電動機であってもよい。電動機14は、ステータコイルを構成するU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wを備えている。また、電動機14は、U相端子22u、V相端子22v、W相端子22wおよびロータを備えている。U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれの一端は中性点Nで共通に接続されている。U相巻線20Uの他端、V相巻線20Vの他端およびW相巻線20Wの他端は、それぞれ、U相端子22u、V相端子22vおよびW相端子22wに接続されている。U相端子22u、V相端子22vおよびW相端子22wに三相交流電流が流れることで、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wは、電動機14内に回転磁界を発生する。ロータは回転磁界に応じて回転する。
【0019】
コントロールユニット18は、例えば、プロセッサによって構成され、自らが記憶するプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムに従って動作してよい。コントロールユニット18は、インバータ12および零相スイッチングアームZのスイッチング制御を行う。
【0020】
インバータ12は、スイッチングアームU、VおよびWを備えている。スイッチングアームUは、直列接続された上スイッチング素子S1および下スイッチング素子S2から構成されている。スイッチングアームVは、直列接続された上スイッチング素子S3および下スイッチング素子S4から構成されている。スイッチングアームWは、直列接続された上スイッチング素子S5および下スイッチング素子S6から構成されている。
【0021】
スイッチングアームU、VおよびWは並列に接続されており、これらのスイッチングアームの上端はバッテリ10の正極端子に接続され、下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0022】
スイッチングアームUにおける上スイッチング素子S1と下スイッチング素子S2との接続点には電動機14のU相端子22uが接続されている。スイッチングアームVにおける上スイッチング素子S3と下スイッチング素子S4との接続点には電動機14のV相端子22vが接続されている。スイッチングアームWにおける上スイッチング素子S5と下スイッチング素子S6との接続点には電動機14のW相端子22wが接続されている。
【0023】
零相スイッチングアームZは、直列接続された上スイッチング素子A1および下スイッチング素子A2を備えている。上スイッチング素子A1と下スイッチング素子A2との接続点には、電動機14の中性点Nが接続されている。上スイッチング素子A1の上端はバッテリ10の正極端子に接続されている。下スイッチング素子A2の下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0024】
インバータ12および零相スイッチングアームZが備えるスイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体素子が用いられてよい。
図1には、スイッチング素子としてIGBTが用いられた例が示されている。各IGBTには、コレクタ端子とエミッタ端子との間に、エミッタ端子側がアノード端子となる向きで接続されたダイオードDが含まれている。
【0025】
図2には、コントロールユニット18の構成が示されている。コントロールユニット18は、uvw/dq0変換器30、dq軸制御部32、dq/uvw変換器36、PWMユニット38、合成器40、加算器42および零相PWM変調器38zを備えている。
【0026】
uvw/dq0変換器30には、ロータ回転角θ、U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwが入力されている。ロータ回転角θは、ロータの回転角を表す情報であり、電動機14に取り付けられたレゾルバから出力される情報であってよい。U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwは、それぞれ、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる電流の検出値である。U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwは、例えば、各巻線に至る導線に設けられた電流センサによって検出してよい。あるいは、U相端子22u、V相端子22vおよびW相端子22wに設けられた電流センサによって検出してよい。
【0027】
uvw/dq0変換器30は、ロータ回転角θを用いて、U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwを、d軸電流値id、q軸電流値iqおよび零相電流値i0に変換する。ここで、d軸電流値idおよびq軸電流値iqは、U相電流検出値iuをα軸(横軸)にとり、U相電流検出値iuに対し位相が90°異なる成分をβ軸(縦軸)にとったときにおけるd軸およびq軸の電流成分値をいう。ここで、d軸およびq軸は、α軸およびβ軸と原点を共通にし、α軸およびβ軸に対してロータ回転角θだけ回転させた2つの直交する座標軸をいう。ロータ回転角θが時間tに対し、回転角速度ωを用いてωtと表される場合、d軸およびq軸はα軸およびβ軸に対し回転角速度ωで回転する。
【0028】
u相電流検出値iu、v相電流検出値ivおよびw相電流検出値iwとα軸電流値iαおよびβ軸電流値iβとの間には、(数1)および(数2)で表される関係がある。
【0029】
【0030】
また、d軸電流値idおよびq軸電流値iqと、α軸電流値iαおよびβ軸電流値iβとの間には(数3)および(数4)で表される関係がある。
【0031】
【0032】
なお、零相電流検出値i0と、U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwとの間には、(数5)で表される関係がある。
【0033】
【0034】
零相電流検出値i0、U相電流検出値iu、V相電流検出値ivおよびW相電流検出値iwについては、これらのうちいずれか3つが検出されればよい。残りの1つは(数5)から求められてもよい。
【0035】
dq軸制御部32は、d軸電流値id、q軸電流値iqおよび零相電流検出値i0に対して、それぞれ、減算器34d、34qおよび34zを備えている。また、dq軸制御部32は、d軸電流値id、q軸電流値iqおよび零相電流検出値i0に対して、それぞれ、制御器32d、32qおよび32zを備えている。
【0036】
減算器34dは、d軸電流目標値idrからd軸電流値idを減算してd軸成分誤差を求め、制御器32dに出力する。制御器32dは、d軸成分誤差に対して定数を乗算した値、d軸成分誤差の積分値およびd軸成分誤差の微分値のうち少なくともいずれかを、所定の割合で加えた値に基づいてd軸成分指令値Vdを求める。
【0037】
減算器34qは、q軸電流目標値iqrからq軸電流値iqを減算してq軸成分誤差を求め、制御器32qに出力する。制御器32qは、q軸成分誤差に対して定数を乗算した値、q軸成分誤差の積分値およびq軸成分誤差の微分値のうち少なくともいずれかを所定の割合で加えた値に基づいてq軸成分指令値Vqを求める。
【0038】
減算器34zは、零相電流目標値i0rから零相電流検出値i0を減算して零相電流誤差を求め、制御器32zに出力する。制御器32zは、零相電流誤差に対して定数を乗算した値、零相電流誤差の積分値および零相電流誤差の微分値のうち少なくともいずれかを所定の割合で加えた値に基づいて零相電圧指令値Vzを求める。
【0039】
ここで、d軸電流目標値idrおよびq軸電流目標値iqrは、ロータに発生させるトルクの目標値に基づいてコントロールユニット18が求めてよい。零相電流目標値i0rは、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる零相電流が、ロータのトルクを増加させるように、コントロールユニット18が求めてよい。
【0040】
dq/uvw変換器36には、ロータ回転角θ、d軸成分指令値Vdおよびq軸成分指令値Vqが入力されている。dq/uvw変換器36は、ロータ回転角θを用いて、d軸成分指令値Vdおよびq軸成分指令値VqをU相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VwおよびW相電圧指令値Vwに変換し、PWMユニット38に出力する。
【0041】
U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VwおよびW相電圧指令値Vwは、それぞれ、スイッチングアームU、VおよびWをPWM(Pulse Width Modulation)制御するための指令値である。零相電圧指令値Vzは、零相スイッチングアームZをPWM制御するための指令値である。
【0042】
PWMユニット38は、U相PWM変調器38u、V相PWM変調器38vおよびW相PWM変調器38wを備えている。U相PWM変調器38u、V相PWM変調器38vおよびW相PWM変調器38wには、それぞれ、U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VwおよびW相電圧指令値Vwが入力されている。また、U相PWM変調器38u、V相PWM変調器38vおよびW相PWM変調器38wには、それぞれ、搬送波信号Cru、CrvおよびCrwが入力されている。各搬送波信号は時間波形が三角波である信号であってよい。搬送波信号Cru、CrvおよびCrwは、相互に位相が120°ずれた信号である。
【0043】
U相PWM変調器38uは、搬送波信号CruとU相電圧指令値Vuとの比較に基づいて、U相スイッチング信号Tuおよび反転U相スイッチング信号Tu^を出力する。すなわち、搬送波信号CruがU相電圧指令値Vuより大きいときにハイ(例えば、正の値H)となり、搬送波信号CruがU相電圧指令値Vu以下であるときにロー(例えば0)となるU相スイッチング信号Tuを出力する。また、U相スイッチング信号Tuのハイおよびローを反転した反転U相スイッチング信号Tu^を出力する。
【0044】
U相PWM変調器38uが実行する処理と同様の処理によって、V相PWM変調器38vは、搬送波信号CrvとV相電圧指令値Vvとの比較に基づいて、V相スイッチング信号Tvと、V相スイッチング信号Tvのハイおよびローを反転した反転V相スイッチング信号Tv^を出力する。
【0045】
U相PWM変調器38uが実行する処理と同様の処理によって、W相PWM変調器38wは、搬送波信号CrwとW相電圧指令値Vwとの比較に基づいて、W相スイッチング信号Twを出力する。また、W相スイッチング信号Twのハイおよびローを反転した反転W相スイッチング信号Tv^を出力する。
【0046】
U相PWM変調器38u、V相PWM変調器38vおよびW相PWM変調器38wは、それぞれ、U相スイッチング信号Tu、V相スイッチング信号TvおよびW相スイッチング信号Twを合成器40に出力する。合成器40は、U相スイッチング信号Tu、V相スイッチング信号TvおよびW相スイッチング信号Twを加算合計し、所定の係数kを乗算した合成指令値Vn=k・(Tu+Tv+Tw)を求め、加算器42に出力する。
【0047】
加算器42は、制御器32zから出力された零相電圧指令値Vzに合成指令値Vnを加算して、修正・零相指令値Vzzを求め、零相PWM変調器38zに出力する。零相PWM変調器38zには、時間波形が三角波である搬送波信号Crzが入力されている。U相PWM変調器38uが実行する処理と同様の処理によって、零相PWM変調器38zは、搬送波信号Crzと修正・零相電圧指令値Vzzとの比較に基づいて、零相スイッチング信号Tzを出力する。また、零相スイッチング信号Tzのハイおよびローを反転した反転零相スイッチング信号Tz^を出力する。
【0048】
図1に戻って、電動機システム1の動作について説明する。インバータ12におけるスイッチングアームUは、U相スイッチング信号Tuおよび反転U相スイッチング信号Tu^に従ってスイッチングされる。すなわち、上スイッチング素子S1は、U相スイッチング信号Tuがハイであるときにオンになり、U相スイッチング信号Tuがローであるときにオフになる。下スイッチング素子S2は、反転U相スイッチング信号Tu^がハイであるときにオンになり、U相スイッチング信号Tuがローであるときにオフになる。これによって、上スイッチング素子S1および下スイッチング素子S2は交互にオンオフする。
【0049】
同様に、スイッチングアームVにおける上スイッチング素子S3および下スイッチング素子S4は、それぞれ、V相スイッチング信号Tvおよび反転V相スイッチング信号Tv^によって制御され、交互にオンオフする。また、スイッチングアームWにおける上スイッチング素子S5および下スイッチング素子S6は、それぞれ、W相スイッチング信号Twおよび反転W相スイッチング信号Tw^によって制御され、交互にオンオフする。さらに、零相スイッチングアームZにおける上スイッチング素子A1および下スイッチング素子A2は、それぞれ、零相スイッチング信号Tzおよび反転零相スイッチング信号Tz^によって制御され、交互にオンオフする。
【0050】
スイッチングアームU、VおよびWのスイッチングによって、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wには三相交流電流が流れる。ロータの周りには回転磁界が発生し、ロータにトルクが発生する。また、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wには零相電流が流れる。ロータにトルクを発生させるように零相電流目標値i0rが求められており、零相電流目標値i0rに応じた零相電流が流れた場合には、零相磁界によってロータのトルクが増加する。
【0051】
このように、本実施形態に係る電動機システム1における電池10、インバータ12、零相スイッチングアームZおよびコントロールユニット18は、電動機14を制御する電動機制御装置として動作する。電動機14は、それぞれの一端が共通に接続された複数の巻線として、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wを備えている。電動機システム1は、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれに対応して設けられ、対応する巻線の他端が接続されたスイッチング部としてのスイッチングアーム(U,V,W)を備えている。電動機システム1は、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wの共通接続点に接続された零相スイッチング部としての零相スイッチングアームZを備えている。電動機システム1は、スイッチングアームU,VおよびWと、零相スイッチングアームZを制御する制御部としてのコントロールユニット18を備えている。コントロールユニット18は、各スイッチングアーム(U,V,W)および零相スイッチングアームZに対して与えられた各指令値に基づいて、各スイッチングアーム(U,V,W)および零相スイッチングアームZをPWM制御する。コントロールユニット18は、複数のスイッチングアームU,VおよびWに対するPWM制御に用いられるPWM信号であるU相スイッチング信号Tu、V相スイッチング信号TvおよびW相スイッチング信号Twを合成した値を、零相スイッチングアームZに対する基本指令値としての零相電圧指令値Vzに合成して、零相指令値として修正・零相指令値Vzzを求める。コントロールユニット18は、修正・零相指令値Vzzに基づいて零相スイッチングアームZを制御する。
【0052】
コントロールユニット18は、各スイッチングアーム(U,V,W)に対する搬送波(Cru,Crv,Crw)と各指令値(Vu,Vv,Vw)との比較に基づいてパルス幅が定まる各PWM信号に応じて、各スイッチングアーム(U,V,W)が備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御する。また、零相スイッチングアームZに対する搬送波Crzと零相指令値との比較に基づいてパルス幅が定まるPWM信号に応じて、零相スイッチングアームZが備える2つのスイッチング素子をオンオフ制御する。
【0053】
本実施形態に係る電動機システム1では、基本となる零相電圧指令値Vz(基本指令値)に合成指令値Vnを加算して求められた修正・零相指令値Vzz(零相指令値)に基づいて、零相スイッチングアームZがオンオフ制御される。U相スイッチング信号Tu、V相スイッチング信号TvおよびW相スイッチング信号Twを加算合計した値は、中性点Nに発生するリプル成分に比例する成分、または中性点Nに発生するリプル成分に近似した成分を有する。そのため、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる零相電流に含まれるリプル成分が抑制される。
【0054】
リプル成分が抑制される原理について、電圧方程式の観点から以下に説明する。なお、以下の(数6)~(数13)を参照して説明される電圧Vu、Vv、VwおよびVzは、これらの電圧に対する指令値ではなく、実際の電圧である。
【0055】
零相電圧Vzを基準としたU相端子22u、V相端子22v、W相端子22wの各電圧V^=(Vu-Vz,Vv-Vz,Vw-Vz)と、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる電流i^=(iu,iv,iw)との間には、キルヒホッフの電圧則に従う(数6)で表される関係が成立する。
【0056】
【0057】
V^およびi^は3行1列の行列、すなわち、3成分のベクトル量であり、(数7)のように表される。
【0058】
【0059】
(数6)中のVm^は、各巻線に現れる起電力を表す3成分のベクトル量である。U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに現れる起電力には、相互に2π/3(120°)の位相差があり、Vm^は(数8)のように表される。
【0060】
【0061】
ここで、ωはロータの回転角周波数であり、ψmは回転角周波数に乗ぜられる比例定数である。(数6)中のlaは、各巻線の自己インダクタンスを表す。I3
-は、3行3列の単位行列である。m-(θ)は3行3列のインダクタンス行列であり、d軸電流成分に対するインダクタンスLdおよびq軸電流成分に対するインダクタンスLqを用いて、i行j列の成分が(数9)のように表される。
【0062】
【0063】
(数9)中のθ1~θ3は(数10)のように表される。
【0064】
【0065】
(数6)は、U相、V相およびW相の各相の電圧および電流に対して成立する式である。(数11)で表される変換行列t-を用いて、(数6)をα軸成分、β軸成分および変換後零相成分に対して成立する式に変換すると、(数12)のようになる。
【0066】
【0067】
【0068】
(数12)中、2本の「-」が上方に付されたm(θ)は2行2列の行列である。I2は2行2列の単位行列である。φ2×1は2行1列の行列であり、φ1×2は1行2列の行列である。α軸成分電圧Vα、β軸成分電圧Vβおよび変換後零相電圧Vγは、U相電圧Vu、V相電圧Vv、W相電圧Vwおよび零相電圧Vzを用いて(数13)のように表される。
【0069】
【0070】
(数13)に示されているように、変換後零相電圧Vγには、U相電圧Vu、V相電圧VvおよびW相電圧Vwの加算合計値に比例する成分が含まれている。理想的にはU相電圧Vu、V相電圧VvおよびW相電圧Vwの加算合計値は0となるが、各電圧に対する指令値に基づいてPWM信号を生成し、各相のスイッチングアームを制御した場合、加算合計値は0とはならず、リプル成分が生じる。
【0071】
そこで、本実施形態に係る電動機システム1では、零相電圧のリプル成分に相当する値につき極性を反転した値を、基本となる零相電圧指令値Vzに加算することで、リプル成分が抑制される。リプル成分に相当する値につき極性を反転した値は、合成指令値Vn=k・(Tu+Tv+Tw)である。
【0072】
本実施形態に係る電動機システム1では、基本となる零相電圧指令値Vzに合成指令値Vn=k・(Tu+Tv+Tw)を加算して求められた修正・零相指令値Vzzに基づいて、零相スイッチングアームZがオンオフ制御される。これによって、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる零相電流に含まれるリプル成分が抑制される。
【0073】
零相電流に含まれるリプル成分が抑制されることで、電動機システム1において発せられるノイズ電磁波、ノイズ電流、ノイズ電圧等が抑制される。また、リプル成分に基づく電力損失が低減される。
【0074】
図3には、従来の電動機システムにおける零相電流のシミュレーション結果が示されている。すなわち、
図3には、基本となる零相電圧指令値Vzに基づいて零相スイッチングアームZをオンオフ制御した場合の零相電流のシミュレーション結果が示されている。横軸はロータ回転角θを示し、縦軸は零相電流を示す。破線は理想的な零相電流を示し、実線はリプル成分が含まれる零相電流を示す。
【0075】
図4には、本実施形態に係る電動機システム1における零相電流のシミュレーション結果が示されている。すなわち、
図4には、基本となる零相電圧指令値Vzに合成指令値Vnを加算して求められた修正・零相指令値Vzzに基づいて、零相スイッチングアームZをオンオフ制御した場合の零相電流のシミュレーション結果が示されている。横軸はロータ回転角θを示し、縦軸は零相電流を示す。破線は理想的な零相電流を示し、実線はリプル成分が含まれる零相電流を示す。本実施形態では、従来技術に比べて零相電流に含まれるリプル成分が低減されることがシミュレーションによって示された。
【0076】
図5には、本発明の第2実施形態に係る電動機システム2の構成が示されている。電動機システム2は、バッテリ10、昇圧コンバータ50、インバータ12、電動機14、零相スイッチングアームZおよびコントロールユニット52を備えている。バッテリ10、昇圧コンバータ50、インバータ12、零相スイッチングアームZおよびコントロールユニット52は、電動機14を制御する電動機制御装置として動作する。電動機システム2は、
図1の電動機システム1に対し、バッテリ10とインバータ12との間に昇圧コンバータ50を挿入した点が異なる。昇圧コンバータ50は、バッテリ10の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧をインバータ12に出力する。
【0077】
昇圧コンバータ50は、リアクトル54、スイッチングアームXおよびコンデンサ56を備えている。スイッチングアームXは、直列接続された上スイッチング素子B1および下スイッチング素子B2から構成されている。リアクトル54の一端は、バッテリ10の正極端子に接続されている。リアクトル54の他端は、上スイッチング素子B1と下スイッチング素子B2との接続点に接続されている。
【0078】
スイッチングアームXの上端は、インバータ12のスイッチングアームU,VおよびWの上端に接続され、スイッチングアームXの下端は、インバータ12のスイッチングアームU,VおよびWの下端に接続されている。また、スイッチングアームXの上端と下端との間には、コンデンサ56が接続されている。
【0079】
スイッチングアームXが備える上スイッチング素子B1および下スイッチング素子B2には、IGBT、MOSFET等の半導体素子が用いられてよい。
図5には、スイッチング素子としてIGBTが用いられた例が示されている。各IGBTには、コレクタ端子とエミッタ端子との間に、エミッタ端子側がアノード端子となる向きで接続されたダイオードDが含まれている。
【0080】
コントロールユニット52は、例えば、プロセッサによって構成され、自らが記憶するプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムに従って動作してよい。コントロールユニット52は、昇圧コンバータ50、インバータ12および零相スイッチングアームZのスイッチング制御を行う。
【0081】
コントロールユニット52の制御によって、上スイッチング素子B1および下スイッチング素子B2は交互にオンオフする。下スイッチング素子B2がオンになることで、バッテリ10の正極端子からリアクトル54を通って下スイッチング素子B2に電流が流れる。この状態で下スイッチング素子B2がオフになり、上スイッチング素子B1がオンになることで、リアクトル54に誘導起電力が発生し、バッテリ10の出力電圧にリアクトル54の誘導起電力が加わった電圧Vhが、コンデンサ56およびインバータ12に印加される。これによって、バッテリ10の出力電圧が昇圧され、インバータ12に出力される。
【0082】
図6にはコントロールユニット52の構成のうち、インバータ12および零相スイッチングアームZの制御に関する部分が示されている。コントロールユニット52は、基本となる零相電圧指令値Vzに第1重み付け係数G1を乗じて加算器42に出力する第1重み付け部60と、合成指令値Vnに第2重み付け係数G2を乗じて加算器42に出力する第2重み付け部62が、
図2に示されたコントロールユニット18に付け加えられたものである。第1重み付け係数G1および第2重み付け係数G2は、0以上1以下の数値であってよい。また、G1+G2=1が成立するように第1重み付け係数G1および第2重み付け係数G2が決定されてよい。
【0083】
第1重み付け部60は、重み付け零相電圧指令値Vzg=G1・Vzを、基本となる新たな零相電圧指令値として加算器42に出力する。第2重み付け部62は、重み付け合成指令値Vng=G2・Vnを加算器42に出力する。加算器42は、重み付け零相電圧指令値Vzgおよび重み付け合成指令値Vngを加算して、重み付け修正・零相指令値Vzzg=Vzg+Vngを零相PWM変調器38zに出力する。
【0084】
第1重み付け係数G1を大きくする程、または第2重み付け係数をG2を小さくする程、零相電流をトルクに寄与させる効果が大きくなる。一方、第1重み付け係数G1を小さくする程、または第2重み付け係数G2を大きくする程、零相電流に含まれるリプル成分を低減する効果が大きくなる。
【0085】
コントロールユニット52は、昇圧コンバータ50からインバータ12に印加される高圧側電圧Vh(コンデンサの端子間電圧)に応じて第1重み付け係数G1および第2重み付け係数G2を制御してもよい。コントロールユニット52は、例えば、高圧側電圧Vhが所定の電圧閾値を超えるときは、第2重み付け係数G2を重み付け閾値g2よりも大きくし、第1重み付け係数G1を重み付け閾値g1以下としてよい。また、高圧側電圧Vhが所定の電圧閾値以下であるときは、第2重み付け係数G2を重み付け閾値g2以下とし、第1重み付け係数G1を重み付け閾値g1よりも大きくしてよい。
【0086】
高圧側電圧Vhが所定の電圧閾値を超えるときは、零相電流に含まれるリプル成分が大きくなる傾向がある。そのため、第2重み付け係数G2を大きくし、あるいは第1重み付け係数G1を小さくすることで、零相成分に含まれるリプル成分を低減する制御が行われてよい。一方、高圧側電圧Vhが所定の閾値以下であるときは、電動機14で発生するトルクが小さくなることがある。そのため、第1重み付け係数G1を大きくし、あるいは第2重み付け係数G2を小さくすることで、電動機14のトルクを増加させる制御が行われてよい。
【0087】
なお、コントロールユニット52は、高圧側電圧Vhが大きい程、第1重み付け係数G1を小さくし、あるいは第2重み付け係数G2を大きくする制御を行ってもよい。同様に、コントロールユニット52は、高圧側電圧Vhが小さい程、第1重み付け係数G1を大きくし、あるいは第2重み付け係数G2を小さくする制御を行ってもよい。
【0088】
また、コントロールユニット52は、零相電流目標値i0rの時間変化の度合いに応じて第1重み付け係数G1および第2重み付け係数G2を制御してもよい。この場合、コントロールユニット52は、零相電流目標値i0rの所定時間内の変動値(例えば、所定時間内における絶対値の最大値)が、所定の変動閾値を超えるときは、第2重み付け係数G2を所定値g2以下とし、第1重み付け係数G1を所定値g1よりも大きくする。
【0089】
コントロールユニット52は、零相電流目標値i0rの所定時間内の変動値が、所定の変動閾値以下であるときは、次のような処理を実行してよい。すなわち、コントロールユニット52は、零相電流の検出値と零相電流目標値i0rとの差の絶対値が、所定の偏差閾値を超えるときは、第2重み付け係数G2を所定値g2以下とし、第1重み付け係数G1を所定値g1よりも大きくする。一方、コントロールユニット52は、零相電流の検出値と零相電流目標値i0rとの差の絶対値が、所定の偏差閾値以下であるときは、第2重み付け係数G2を所定値g2よりも大きくし、第1重み付け係数G1を所定値g1以下とする。
【0090】
このように、コントロールユニット52は、U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VvおよびW相電圧指令値Vwを加算合計した値と、零相電圧指令値Vz(基本指令値)とを重み付け加算して重み付け修正・零相指令値Vzzg(零相指令値)を求める。
【0091】
このような制御によれば、零相電流目標値i0rの変動が大きいとき、あるいは、零相電流目標値i0rの変動が小さくても零相電流の検出値と零相電流目標値i0rとの差が大きいときは、電動機14のトルクを増加させることを重視した制御が行われる。また、零相電流目標値i0の変動が小さく、かつ、零相電流の検出値と零相電流指令値との差が小さいときは、零相電流に含まれるリプル成分を抑制することを重視した制御が行われる。
【0092】
上記では、各巻線に流れる零相電流をトルクの増加に寄与させる制御について説明した。電動機システム1および2では、零相電流目標値i0rを0または0に近い値とし、零相電流を0に一致させ、あるいは0に近付ける制御が行われてもよい。零相電流を抑制することで、電力損失が低減されることがある。この場合であっても、合成指令値Vn=k・(Tu+Tv+Tw)を零相スイッチングアームZの制御に用い、リプル成分を抑制する制御が行われてもよい。
【0093】
上記では、合成器40が、U相スイッチング信号Tu、V相スイッチング信号TvおよびW相スイッチング信号Twを加算合計した値に基づいて、合成指令値Vnを求める例が示された。合成器40は反転U相スイッチング信号Tu^、反転V相スイッチング信号Tv^および反転W相スイッチング信号Tw^を加算合計した値に基づいて、合成指令値Vnを求めてもよい。
【0094】
また、上記では、3相の巻線を有する電動機14を制御する実施形態について説明した。本発明は、4相以上の巻線を有する電動機の制御に用いられてよい。本発明に係る電動機制御装置は、電気自動車やハイブリッド車等の電動自動車に搭載された電動機の制御装置として用いられてよい。
【符号の説明】
【0095】
1,2 電動機システム、10 バッテリ、12 インバータ、14 電動機、18,52 コントロールユニット、20U U相巻線、20V V相巻線、20W W相巻線、22u U相端子、22v V相端子、22w W相端子、30 uvw/dq0変換器、32 dq軸制御部、32d,32q,32z 制御器、34d,34q,34z 減算器、36 dq/uvw変換器、38 PWMユニット、38u U相PWM変調器、38v V相PWM変調器、38w W相PWM変調器、38z 零相PWM変調器、40 合成器、42 加算器、50 昇圧コンバータ、54 リアクトル、60 第1重み付け部、62 第2重み付け部、U,V,W スイッチングアーム、Z 零相スイッチングアーム、S1,S3,S5,A1,B1 上スイッチング素子、S2,S4,S6,A2,B2 下スイッチング素子。