(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型の排気構造
(51)【国際特許分類】
B29C 33/10 20060101AFI20230613BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230613BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B29C33/10
B29C35/02
B29C33/02
(21)【出願番号】P 2019193333
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-21690(JP,B1)
【文献】特開平10-146840(JP,A)
【文献】特開2016-221840(JP,A)
【文献】特開2015-229263(JP,A)
【文献】特開2003-340825(JP,A)
【文献】特開2018-89879(JP,A)
【文献】特開2003-245923(JP,A)
【文献】特開2002-234033(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0109565(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスリーブと、
前記スリーブの軸方向の一方側に設けられ、前記スリーブの中心軸を中心として回転可能な蓋と
を備え、
前記スリーブは、前記スリーブの軸方向に延びる複数のベントホールを備え、
前記蓋は、少なくとも1つの開口部を備え、
前記複数のベントホールと前記少なくとも1つの開口部とは、前記スリーブの軸方向から見て、前記スリーブの中心軸を中心とした同一円周上に配置されている、タイヤ加硫金型の排気構造。
【請求項2】
前記蓋を前記スリーブに向けて付勢する付勢手段を備え、
前記蓋は、前記スリーブに対向する面に設けられ、前記複数のベントホールのうちの1つに嵌合する突起部を備える、請求項1に記載のタイヤ加硫金型の排気構造。
【請求項3】
前記蓋は、複数の前記開口部を備え、
前記蓋の複数の前記開口部と、前記スリーブの前記複数のベントホールとは、前記蓋を前記スリーブの前記中心軸を中心として所定の角度回転移動したときに、前記複数のベントホールと連通する前記開口部の数が変化するように配置されている、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型の排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型の排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のタイヤ用モールドは、蓋と、筒状の胴部を有するベントプラグを備える。この蓋は、胴部の上部を覆っており、蓋は、その上面から下面まで貫通する複数の排気口を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベントプラグの汚れなどに起因して排気量が変化することや、ゴムの流動性が変化すると必要とされる排気量が変化することから、排気量を適宜調整したいという要請がある。しかし、特許文献1のタイヤ用モールドでは、排気量を調整できない。
【0005】
本発明は、排気量を調整できるタイヤ加硫金型の排気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状のスリーブと、前記スリーブの軸方向の一方側に設けられ、前記スリーブの中心軸を中心として回転可能な蓋とを備え、前記スリーブは、前記スリーブの軸方向に延びる複数のベントホールを備え、前記蓋は、少なくとも1つの開口部を備え、前記複数のベントホールと前記少なくとも1つの開口部とは、前記スリーブの軸方向から見て、前記スリーブの中心軸を中心とした同一円周上に配置されている、タイヤ加硫金型の排気構造を提供する。
【0007】
この構成によれば、蓋に設けられた開口部のうち、ベントホールと連通している部分が排気口として機能する。蓋をスリーブに対して相対的に回転させると、蓋の開口部のうち、ベントホールと連通している部分の大きさ(排気口の開口面積)が変化するので、排気量を調整できる。
【0008】
前記蓋を前記スリーブに向けて付勢する付勢手段を備えてもよく、前記蓋は、前記スリーブに対向する面に設けられ、前記複数のベントホールのうちの1つに嵌合する突起部を備えてもよい。
【0009】
この構成によれば、蓋に設けられた突起部とベントホールとの嵌合により、蓋がスリーブの中心軸を中心として回転することを規制することで蓋が位置決めされる。これにより、加硫成形時に蓋の開口部のうち、ベントホールと連通している部分の大きさ(排気口の開口面積)が変化することを抑制できる。また、突起部とベントホールとが嵌合した状態で、付勢手段により蓋がスリーブに向けて付勢されるので、突起部がベントホールから抜けることを抑制できる。
【0010】
前記蓋は、複数の前記開口部を備えてもよく、前記蓋の複数の前記開口部と、前記スリーブの前記複数のベントホールとは、前記蓋を前記スリーブの前記中心軸を中心として所定の角度回転移動したときに、前記複数のベントホールと連通する前記開口部の数が変化するように配置されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、中心軸を中心として蓋を回転させることで、ベントホールと連通する開口部の数を変更できるので、ベントホールユニットの排気量を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤ加硫金型の排気構造によれば、排気量を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫金型の概略構成を示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係るベントホールユニットの分解斜視図。
【
図3】第1実施形態に係るスリーブをキャビティ側から見た図。
【
図4】第1実施形態に係る蓋部材をキャビティ側から見た図。
【
図5】
図1のX矢視による第1実施形態のタイヤ加硫金型の成形面を示す図。
【
図7】ベントホールユニットの他の使用態様を説明するための図
【
図8】ベントホールユニットの更に他の使用態様を説明するための図
【
図9】第1実施形態に係るスリーブをキャビティ側から見た図。
【
図10】第1実施形態の変形例に係る蓋部材をキャビティ側から見た図。
【
図11】第1実施形態の変形例に係るスリーブをキャビティ側から見た図。
【
図12】第1実施形態の他の変形例に係る蓋部材をキャビティ側から見た図。
【
図13】第2実施形態の他の変形例に係るスリーブをキャビティ側から見た図。
【
図14】第2実施形態に係る蓋部材をキャビティ側から見た図。
【
図15】
図1のX矢視による第2実施形態のタイヤ加硫金型の成形面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るタイヤ加硫金型1の概略構成を示す断面図であり、タイヤ径方向の一方側(
図1において右側)のみ示している。なお、
図1には、タイヤ加硫金型1において加硫成形される空気入りタイヤTが、仮想線(二点鎖線)で併せて示されている。空気入りタイヤTは、グリーンタイヤをタイヤ軸線が上下方向に向くようにタイヤ加硫金型1にセットして加硫成形することによって製造される。
【0016】
図1に示すように、タイヤ加硫金型1は、環状のセクターモールド2と、この内径側に位置する上下一対のサイドプレート3,4と、この更に内径側に位置する上下一対のビードリング5,6とを備え、これらの内側に空気入りタイヤTが加硫成形されるキャビティ7が画定されている。タイヤ加硫金型1は、所謂セグメンテッドモールドとして構成されている。
【0017】
セクターモールド2、サイドプレート3,4、及びビードリング5,6のキャビティ7を画定する内壁面はそれぞれ、空気入りタイヤTのトレッド部T1、サイドウォール部T2、及びビード部T3をそれぞれ加硫成形する成形面として構成されている。
【0018】
図1に示すように、セクターモールド2には、空気入りタイヤTのトレッド部T1を成形するタイヤ成形面2aと、タイヤ成形面2aから背面2b(タイヤ成形面2aと反対側の面)まで貫通した貫通孔2cが設けられている。また、貫通孔2cには、キャビティ7内の空気をタイヤ加硫金型1の外側に排出するためのベントホールユニット8が取り付けられている。本実施形態のベントホールユニット8は、本発明に係るタイヤ加硫金型1の排気構造の一例である。
【0019】
図2は、本実施形態に係るベントホールユニット8の分解斜視図である。
【0020】
本実施形態のベントホールユニット8は、円筒状のスリーブ10と、スリーブ10の軸方向の一方側(
図2において上側)を覆う蓋部材20とを備える。ベントホールユニット8は、軸方向の一方側がタイヤ加硫金型1のキャビティ7(
図1に示す)側に向くように配置される。以下の説明において、円筒状のスリーブ10の軸方向を単に「軸方向」という場合があり、円筒状のスリーブ10の周方向を単に「周方向」という場合がある。また、以下の説明において、スリーブ10の中心軸Cを単に「中心軸C」という場合がある。
【0021】
本実施形態のスリーブ10は、円筒状のスリーブ本体11と、スリーブ本体11に設けられた複数(本実施形態では、6つ)のベントホール12A~12Fとを備える。ベントホール12A~12Fは、スリーブ本体11を軸方向に貫通するように設けられている。また、スリーブ本体11は、その中心を通り軸方向に延びた挿通孔11aを備える。
【0022】
本実施形態の蓋部材20は、円板状の蓋21を備える。蓋部材20は、スリーブ10と同軸状に配置されている。
【0023】
蓋21は、円板状の蓋本体22と、蓋本体22に設けられた3つの開口部23A~23Cとを備える。蓋21は、スリーブ10と同軸状に配置されている。言い換えれば、スリーブ10の中心軸Cは、蓋本体22の中心を通過する。また、蓋21は、中心軸Cを中心にして回転可能である。言い換えれば、蓋21は、自転可能である。
【0024】
また、本実施形態の蓋部材20は、蓋21から軸方向の他方側(
図2において下側)に延びた軸部24と、軸部24の軸方向の他方側の端部に設けられたストッパ25とを備える。
【0025】
軸部24は、円柱状であり、蓋21と一体に形成されている。軸部24の直径は、スリーブ本体11の挿通孔11aの内径よりも小さい。これにより、軸部24は、スリーブ本体11の挿通孔11aに挿通される。
【0026】
ストッパ25は、軸部24の軸方向の他方側(
図2において下側)に設けられている。また、ストッパ25は、円錐形状を有している。ストッパ25の外径は、挿通孔11aの内径よりも小さい。
【0027】
また、本実施形態に係るベントホールユニット8は、蓋部材20の蓋21をスリーブ10に向けて付勢するためのスプリング30と、蓋部材20の軸部24に取り付けられるCリング31とを備える。
【0028】
図3は、本実施形態のスリーブ10を軸方向の一方側(
図2の上側)から見た図である。
【0029】
図3を参照すると、本実施形態では、6つのベントホール12A~12Fは、スリーブ10の中心軸Cを中心とした同一円周上(
図3において2点鎖線で示す)に設けられている。本実施形態のベントホール12A~12Fの直径は、1.3mmである。
【0030】
6つのベントホール12A~12Fのうち5つのベントホール12A~12Eは、スリーブ本体11の周方向に等間隔に並んで配置されている。具体的には、ベントホール12A~12Eは、周方向に沿って40度間隔で配置されている。
【0031】
ベントホール12Fは、周方向に沿ってベントホール12Eから80度度間隔を開けて配置されている。言い換えれば、ベントホール12Fは、周方向に沿ってベントホール12Aから120度間隔を開けて配置されている。
【0032】
図4は、本実施形態の蓋部材20を軸方向の一方側(
図2の上側)から見た図である。
【0033】
図4を参照すると、本実施形態の3つの開口部23A~23Cは、中心軸Cを中心とした同一円周上(
図4において2点鎖線で示す)に配置されている。3つの開口部23A~23Cは、周方向に沿って等間隔に設けられている。言い換えれば、3つの開口部23A~23Cは、周方向に沿って120度間隔で設けられている。また、開口部23A~23Cの直径は、1.3mmである。言い換えれば、開口部23A~23Cの直径は、ベントホール12A~12F(
図3に示す)の直径と同じである。
【0034】
また、蓋本体22のスリーブ10(
図2に示す)と対向する面には、スリーブ10のベントホール12A~12F(
図2に示す)に嵌合できる突起部22aが設けられている。突起部22aは、3つの開口部23A~23Cと同一円周上に配置されている。また、突起部22aは、開口部23Aと開口部23Bとの間に設けられている。突起部22aは、周方向に沿って開口部23Aから40度間隔を開けて配置されている。
【0035】
図5は、
図1のX矢視によるタイヤ加硫金型1の成形面を示す図である。本実施形態では、開口部23A~23Cの直径は、ベントホール12A~12Fの直径と同じであるが、
図5では、明瞭な説明のために、ベントホール12A~12Fの直径を開口部23A~23Cの直径よりも大きく示している。
【0036】
図5を参照すると、本実施形態の蓋部材20の蓋21の端面は、セクターモールド2のタイヤ成形面2aの一部を構成している。
【0037】
図5を参照すると、スリーブ10の6つのベントホール12A~12Fと、蓋21の3つの開口部23A~23C及び突起部22aとは、中心軸Cを中心とした同一の円周Ci上に配置されている。また、
図5に示す状態では、3つの開口部23A~23Cの外形は、スリーブ10の3つのベントホール12A,12D,12Fの外形とそれぞれ一致している。これにより、3つの開口部23A~23Cは、スリーブ10の3つのベントホール12A,12D,12Fとそれぞれ連通している。具体的には、蓋21の開口部23Aは、スリーブ10のベントホール12Aと連通しており、蓋21の開口部23Bは、スリーブ10のベントホール12Dと連通している。また、蓋21の開口部23Cは、スリーブ10のベントホール12Fと一致している。蓋21の突起部22aの外形は、ベントホール12Bの外形と略一致している。これにより、
図5に示す状態では、蓋21の突起部22aは、ベントホール12Bと嵌合している。
【0038】
【0039】
図6を参照すると、スリーブ10のスリーブ本体11は、セクターモールド2に設けられた貫通孔2cに嵌合している。
【0040】
蓋部材20の軸部24は、スリーブ本体11の挿通孔11aに挿入されている。これにより、蓋部材20は、中心軸Cを中心としてスリーブ10に対して相対的に回転可能である。言い換えれば、蓋部材20は、自転可能である。
【0041】
また、蓋部材20の蓋21に設けられた突起部22aは、スリーブ10のベントホール12Bと嵌合している。これにより、蓋部材20の周方向への移動が制限されている。
【0042】
Cリング31は、蓋部材20のストッパ25の軸方向の一方側(
図6において上側)の端面に当接するように設けられている。また、スプリング30は、スリーブ本体11の端面11bと、Cリング31との間に縮んだ状態で設けられている。これにより、蓋部材20の蓋21が、スリーブ10に向けて付勢されている。本実施形態に係るスプリング30は、本発明に係る付勢手段の一例である。
【0043】
図5及び
図6に示すように、蓋21の開口部23A~23Cのうちの少なくとも1つが、スリーブ10のベントホール12A~12Fのいずれか1つと連通することで、タイヤ加硫金型1の内側の空気をタイヤ加硫金型1の外側に排出できる。
【0044】
(ベントホールユニットの使用態様)
蓋21の開口部23A~23Cと、スリーブ10のベントホール12A~12Fとは、蓋21をスリーブ10の中心軸Cを中心として所定の角度回転移動したときに、ベントホール12A~12Fと連通する開口部23A~23Cの数が変化するように配置されている。言い換えれば、蓋21の開口部23A~23Cと、スリーブ10のベントホール12A~12Fとは、使用態様に応じて、ベントホール12A~12Fと連通する開口部23A~23Cの数が変化するように配置されている。
【0045】
以下、本実施形態のベントホールユニット8の他の使用態様を説明する。
図7は、ベントホールユニット8の他の使用態様を説明するための図である。
図8は、ベントホールユニット8の更に他の使用態様を説明するための図である。本実施形態では、開口部23A~23Cの直径は、ベントホール12A~12Fの直径と同じであるが、
図7及び
図8では、明瞭な説明のために、ベントホール12A~12Fの直径を開口部23A~23Cの直径よりも大きく示している。また、
図7及び
図8は、
図5と同様に
図1のX矢視によるタイヤ加硫金型1のタイヤ成形面2aを示している。
【0046】
図7に示すベントホールユニット8の他の使用態様は、
図5に示す使用態様から、中心軸Cを中心として蓋部材20を回転方向Rに40度回転させた状態である。
【0047】
図7に示す状態では、2つの開口部23A,23Bの外形は、スリーブ10の2つのベントホール12B,12Eの外形とそれぞれ一致している。これにより、2つの開口部23A,23Bは、スリーブ10の2つのベントホール12B,12Eとそれぞれ連通している。具体的には、蓋21の開口部23Aは、スリーブ10のベントホール12Bと連通しており、蓋21の開口部23Bは、スリーブ10のベントホール12Eと連通している。蓋21の突起部22aの外形は、ベントホール12Cの外形と略一致している。これにより、
図7に示す状態では、蓋21の突起部22aは、ベントホール12Cと嵌合している。
【0048】
図8に示すベントホールユニット8の更に他の使用態様は、
図7に示す使用態様から、中心軸Cを中心として蓋部材20を回転方向Rに40度回転させた状態である。言い換えれば、
図8に示すベントホールユニット8の更に他の使用態様は、
図5に示す使用態様から、中心軸Cを中心として蓋部材20を回転方向Rに80度回転させた状態である。
【0049】
図8に示す状態では、1つの開口部23Aの外形は、スリーブ10の1つのベントホール12Cの外形とそれぞれ一致している。これにより、1つの開口部23A、スリーブ10の1つのベントホール12Cとそれぞれ連通している。蓋21の突起部22aの外形は、ベントホール12Dの外形と略一致している。これにより、
図8に示す状態では、蓋21の突起部22aは、ベントホール12Dと嵌合している。
【0050】
本実施形態のタイヤ加硫金型1の製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0051】
本実施形態のタイヤ加硫金型1の排気構造によれば、蓋21に設けられた開口部23A~23Cのうち、ベントホール12A~12Fと連通している部分が排気口として機能する。蓋21をスリーブ10に対して中心軸Cを中心として相対的に回転させることで、蓋21の開口部23A~23Cのうち、ベントホール12A~12Fと連通している部分の大きさ(排気口の開口面積)が変化するので、排気量を調整できる。
【0052】
空気入りタイヤTの製造に用いられるゴムの流動性は、季節によって変化するので、季節に応じて、ベントホールユニット8の排気量を調節してもよい。例えば、ゴムの流動性が低い冬には、ベントホールユニット8の排気量を十分に確保するために、
図5に示すように、3つの開口部23A~23Cを、3つのベントホール12A,12D,12Fと連通させてもよい。一方で、ゴムの流動性が高い夏には、ベントホールユニット8に要求される排気量が低下するので、
図8に示すように、1つの開口部23Aを、1つのベントホール12Cと連通させてもよい。
【0053】
本実施形態のタイヤ加硫金型1の排気構造によれば、蓋21に設けられた突起部22aがベントホール12A~12Fのいずれかと嵌合することにより、スリーブ10の中心軸Cを中心とした蓋21の回転を規制される。これにより、蓋21のスリーブ10に対する位置が固定されるので、加硫成形時に開口部23A~23Cのうち、ベントホール12A~12Fと連通している部分の大きさ(排気口の開口面積)が変化することを抑制できる。また、突起部22aとベントホール12A~12Fのいずれかが嵌合した状態で、スプリング30により蓋21がスリーブ10に向けて付勢されるので、突起部22aがベントホール12A~12Fのいずれかから抜けることを抑制できる。
【0054】
本実施形態のタイヤ加硫金型1の排気構造によれば、中心軸Cを中心として蓋部材20を回転させることで、ベントホールと連通する開口部の数を変更できるので、ベントホールユニット8の排気量を容易に調整できる。
【0055】
(変形例)
第1実施形態では、
図3に示すように配置されたベントホール12A~12Fを有するスリーブ10と、
図4に示すように配置された開口部23A~23Cを有する蓋21を組み合わせて使用したが、ベントホール12A~12Fの配置と開口部23A~23Cの配置とは、これに限定されない。以下、
図9~
図12を参照して、第1実施形態の変形例を説明する。
【0056】
第1実施形態の変形例として、例えば、
図9に示すように配置された6つのベントホール12A~12Fを有するスリーブ10を、
図10に示すように配置された3つの開口部23A~23Cを有する蓋部材20と組み合わせた場合でも、同様の作用効果を奏する。
【0057】
また、第1実施形態の別の変形例として、例えば、
図11に示すように配置された4つのベントホール12A~12Dを有するスリーブ10を、
図12に示すように配置された3つの開口部23A~23Cを有する蓋部材20と組み合わせた場合でも、同様の作用効果を奏する。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態のベントホールユニットは、スリーブに設けられたベントホールの数及び蓋に設けられた開口部の数を除いて、第1実施形態のベントホールユニットと同様の構成を有しており、
図1を援用する。第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には、同様の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図13は、本実施形態のスリーブ10を軸方向の一方側から見た図である。
【0060】
図13を参照すると、本実施形態では、スリーブ10のスリーブ本体11には、9つのベントホール112A~112Iが設けられている。9つのベントホール112A~112Iは、スリーブ10の中心軸Cを中心とした同一円周上(
図13において2点鎖線で示す)に設けられている。9つのベントホール112A~112Iは、周方向に沿って等間隔に設けられている。言い換えれば、9つのベントホール112A~112Iは、周方向に沿って40度間隔で設けられている。本実施形態のベントホール112A~112Iの直径は、1.3mmである。
【0061】
図14は、本実施形態の蓋部材20を軸方向の一方側から見た図である。
【0062】
図14を参照すると、本実施形態では、蓋部材20の蓋21には、1つの開口部123が設けられている。開口部123の直径は、1.3mmである。言い換えれば、開口部123の直径は、ベントホール112A~112Iの直径と同じである。
【0063】
また、蓋本体22のスリーブ10と対向する面には、スリーブ10のベントホール112A~112I(
図13に示す)に嵌合できる突起部22aが設けられている。突起部22aは、開口部123と同一円周上(
図14において2点鎖線で示す)に配置されている。突起部22aは、周方向に沿って開口部123から40度間隔を開けて配置されている。
【0064】
図15は、
図1のX矢視による本実施形態のタイヤ加硫金型1の成形面を示す図である。本実施形態では、開口部123の直径は、ベントホール112A~112Iの直径と同じであるが、
図5では、明瞭な説明のために、ベントホール112A~112Iの直径を開口部123の直径よりも大きく示している。
【0065】
図15を参照すると、スリーブ10の9つのベントホール112A~112Iと、蓋21の開口部123及び突起部22aとは、中心軸Cを中心とした同一の円周Ci上に配置されている。また、
図15に示す状態では、蓋21の開口部123の外形は、スリーブ10のベントホール112Aの外形と一致している。これにより、開口部123は、スリーブ10のベントホール112Aと連通している。蓋21の突起部22aの外形は、ベントホール112Bの外形と略一致している。これにより、
図15に示す状態では、蓋21の突起部22aは、ベントホール112Bと嵌合している。
【0066】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
また、本実施形態のタイヤ加硫金型1の排気構造によれば、中心軸Cを中心として蓋部材20を回転させることで、蓋21の開口部123が連通するベントホールを変更できる。これにより、開口部123と連通しているベントホールでのゴムの詰まり又は汚れなどによりベントホールユニット8の排気量が低下した場合に、開口部123を新しいベントホールに連通させることで排気量を調整できる。
【0068】
また、本実施形態のタイヤ加硫金型1の排気構造によれば、ベントホール112A~112Iを切り替えて使用できるので、ベントホールが1つの場合と比較して、タイヤ加硫金型1の排気構造の洗浄の頻度を低減できる。
【0069】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0070】
例えば、ベントホールの数は2つ以上であればよく、開口部の数は、1つ以上であればよい。
【0071】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、本発明に係るベントホール及び開口部は、円形であったが、これに限定されない。
【0072】
第1実施形態及び第2実施形態では、ベントホールの直径は、1.3mmであったが、これに限定されず、適宜変更可能である。一般的には、ベントホールの直径は、0.6~2.0mm程度である。また、開口部の直径は、ベントホールの直径に合わせて適宜変更可能である。
【0073】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、ベントホールユニットは、セクターモールドに設けられていたが、これに限定されず、サイドプレート又はビードリングに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 タイヤ加硫金型
2 セクターモールド
2a タイヤ成形面
2b 背面
2c 貫通孔
3,4 サイドプレート
5,6 ビードリング
7 キャビティ
8 ベントホールユニット
10 スリーブ
11 スリーブ本体
11a 挿通孔
11b 端面
12A~12F ベントホール
20 蓋部材
21 蓋
22 蓋本体
22a 突起部
23A~23C 開口部
24 軸部
25 ストッパ
30 スプリング
31 Cリング
T 空気入りタイヤ
T1 トレッド部
T2 サイドウォール部
T3 ビード部
C 中心軸
Ci 円周