(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230613BHJP
G01L 5/165 20200101ALI20230613BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L5/165
(21)【出願番号】P 2019234185
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156126(JP,A)
【文献】特表2003-508779(JP,A)
【文献】特開2016-118411(JP,A)
【文献】特開2018-072200(JP,A)
【文献】特開2018-200210(JP,A)
【文献】特開2016-223912(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104215363(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00,5/16-5/173,1/14,1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層された、支持基板と、前記支持基板より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体と、第1絶縁体と、
前記第2絶縁体と前記支持基板との間に碁盤目状に敷き詰められるように設けられた複数の電極と、
前記第1絶縁体の前記第2絶縁体と反対側において第1方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第1方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第1帯状電極と、
前記第1絶縁体と前記第2絶縁体との間において前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第2方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第2帯状電極と、
前記電極と当該電極に平面視で重なっている第1帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能であり、前記電極と当該電極に平面視で重なっている第2帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能な静電容量測定回路と、
圧力が加えられて前記第2絶縁体が変形するときに、平面視で互いに重なっている電極と第1帯状電極との重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている電極と第2帯状電極との重なり面積が変化することで前記静電容量測定回路によって得られた静電容量測定結果に基づいて、せん断力を算出する、圧力算出回路と、
前記支持基板の前記第2絶縁体と反対側に設けられ、前記複数の電極のうち同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない2以上の電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の引き回し配線と、
を備えた圧力検出装置。
【請求項2】
前記複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、全ての電極が前記支持基板の貫通穴を介して接続されている請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、碁盤目状に敷き詰められている電極のうち周縁の電極を除いて前記支持基板の貫通穴を介して接続されている請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層された、支持基板と、前記支持基板より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体と、第1絶縁体と、
前記第2絶縁体と前記支持基板との間に碁盤目状に敷き詰められるように設けられた複数の電極と、
前記第1絶縁体の前記第2絶縁体と反対側において第1方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第1方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第1帯状電極と、
前記第1絶縁体と前記第2絶縁体との間において前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられた、前記複数の電極のうち前記第2方向と交差する方向に隣接する電極同士の間に延びることで前記隣接する電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている複数の第2帯状電極と、
前記電極と当該電極に平面視で重なっている第1帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能であり、前記電極と当該電極に平面視で重なっている第2帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能な静電容量測定回路と、
圧力が加えられて前記第2絶縁体が変形するときに、平面視で互いに重なっている電極と第1帯状電極との重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている電極と第2帯状電極との重なり面積が変化することで前記静電容量測定回路によって得られた静電容量測定結果に基づいて、せん断力を算出する、圧力算出回路と、
前記支持基板の前記第2絶縁体側に設けられ、絶縁膜によって被覆されるとともに、当該絶縁膜の前記第2絶縁体側に位置する前記複数の電極のうち同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない2以上の電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の引き回し配線と、
を備えた圧力検出装置。
【請求項5】
前記複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、全ての電極が前記絶縁膜の貫通穴を介して接続されている請求項4に記載の圧力検出装置。
【請求項6】
前記複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、碁盤目状に敷き詰められている電極のうち周縁の電極を除いて前記絶縁膜の貫通穴を介して接続されている請求項4に記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記複数の第1帯状電極のうち隣接しない2以上の第1帯状電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の第1帯状電極用引き回し配線を、さらに備えた請求項1~6に記載の圧力検出装置。
【請求項8】
前記複数の第2帯状電極のうち隣接しない2以上の第2帯状電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の第2帯状電極用引き回し配線を、さらに備えた請求項1~7に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置、特に、入力面に対して垂直方向の応力と共にせん断応力を検出可能な圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧力の面内分布が検出できるセンサシートが開発及び製品化されている。例えば、体の下に敷いて体圧分布を測定するものや、圧力を検出できるタッチパッドが知られている。しかし、これらは全て、シート面に作用する法線方向(Z方向)のみの応力の面内分布を検出するものである。
一方、Z方向の応力だけでなくせん断方向(X,Y方向)の応力も検出できるものとして、3分力ロードセルなどがある。しかし、面内分布を検出するためには、3分力ロードセルを大量に敷き詰めて配置する必要があるので、装置の実用化は困難であった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するものとして、本出願人は、特許文献1において下記のような圧力検出装置をすでに提案している。
【0004】
特許文献1の圧力検出装置101は、
図21に示すように、支持基板11と、支持基板11より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体13と、第1絶縁体15を有している。また、当該圧力検出装置101は、複数の第3電極Rxと、複数の第1帯状電極Tyと、複数の第2帯状電極Txと、静電容量測定回路と、圧力検出回路と、を有している。
支持基板11と、第2絶縁体13と、第1絶縁体15は、圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層されている。
複数の第3電極Rxは、第2絶縁体13と支持基板11との間に全面的に敷き詰められるように設けられている。
【0005】
複数の第1帯状電極Tyは、第1絶縁体15の第2絶縁体13と反対側において第1方向としてX方向に延びて設けられている。複数の第1帯状電極Tyは、複数の第3電極のうち第1方向と交差する方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
複数の第2帯状電極Txは、第1絶縁体15と第2絶縁体13との間において第1方向に交差する第2方向としてY方向に延びて設けられている。複数の第2帯状電極Txは、複数の第3電極Rxのうち第2方向と交差する方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
【0006】
静電容量測定回路は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第1帯状電極Tyとの間で発生する静電容量を検出可能である。静電容量測定回路は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第2帯状電極Txとの間で発生する静電容量を検出可能である。
圧力算出回路は、圧力が加えられて第2絶縁体13が変形するときに、平面視で互いに重なっている第3電極Rxと第1帯状電極Tyとの重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている第3電極Rxと第2帯状電極Txとの重なり面積が変化することで静電容量測定回路によって得られた静電容量変化に基づいて、せん断力を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の圧力検出装置101において、センサ部103の第3電極Rxをすべて個別に制御回路105に引き回す場合(以後、「全引き回し」と表記する)は、引き回し配線が多くなりすぎて、現実的には不可能であると考えられる。
【0009】
そこで、特許文献1には、第3電極Rxにそれぞれスイッチング素子21を取り付けてアクティブマトリックスとすることが開示されている。
スイッチング素子21は、支持基板11の第3電極Rxとは反対側の面に設けられている(
図21参照)。第3電極Rxとスイッチング素子21は、貫通穴に設けられた接続線23によって接続されている。
また、スイッチング素子21は、各列に制御線53a~53cによってゲート駆動回路35に接続されている。複数の制御線53a~53cは、並び方向と交差する方向に延びており、当該方向に並んだ複数のスイッチング素子21に接続されている(
図22参照)。
【0010】
そして、第3電極Rxは、アクティブマトリックス内で、スイッチング素子21を介して、アンプ回路33(
図22参照)の入力に接続されている。具体的には、スイッチング素子21の一端は各第3電極Rxに接続されており、他端は各行ごとに読み出し線51a~51cよってアンプ回路33に接続されている。言い換えると、複数の読み出し線51a~51cは、複数のスイッチング素子21のうち一方向に並んだ複数のスイッチング素子21に接続されている。また、読み出し線51a~51cは、当該複数のスイッチング素子21の並び方向に延びて、アンプ回路33に接続されている。
【0011】
上記構成では、ゲート駆動回路35が1本の制御線によって複数のスイッチング素子21をONにした状態において、マイクロコントローラ25が複数の読み出し線51a~51cを順番に検出することで、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxと第3電極パターンRxとの交点の静電容量変化を検出する。つまり、読み出し線51a~51cが複数のスイッチング素子21を介して複数の第3電極Rxに接続されているので、読み出し線の数を減らすことができる。
少なくとも、第3電極Rxが4×4以上のマトリックスの場合は、「全引き回し」より、第3電極Rxのそれぞれにスイッチング素子21を取り付けたアクティブマトリックスの方が、制御回路105への引き回し配線の本数が半分以下になる。
【0012】
しかしながら、このスイッチング素子21を付けたアクティブマトリックスも、スイッチング素子21をOFFにしたときの出力端子間に存在する静電容量(Coff)の問題があり、現実的ではなかった。すなわち、Coffは、第3電極Rxと第1帯状電極Tyとの重なり又は第3電極Rxと第2帯状電極Txとの重なりで発生する測定すべき静電容量よりも十分に小さくする必要がある。何故ならば、Coffが大きいと、OFFにしているスイッチング素子21と繋がれている第3電極Rxからの信号まで拾ってしまうからである。しかしながら、現状、市販されているリレーでは、そのような設計は無理であった。
また、スイッチング素子21を設けるスペースの問題で、やはり現実的ではなかった。すなわち、第3電極Rxの大きさは数mm角であるので、これらの第3電極Rx1つにつき1個のスイッチング素子21を取り付けることは難しい。しかも、装置全体の厚みが厚くなってしまう。
【0013】
本発明の課題は、スイッチング素子を用いないで、引き回し配線の本数を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0015】
本発明の一見地に係る圧力検出装置は、支持基板と、支持基板より剛性が低く圧力が作用すると弾性変形する第2絶縁体と、第1絶縁体を有している。圧力検出装置は、複数の第3電極と、複数の第1帯状電極と、複数の第2帯状電極と、静電容量測定回路と、圧力検出回路と、複数の引き回し配線と、を有している。
支持基板と、第2絶縁体と、第1絶縁体は、圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層されている。
複数の第3電極は、第2絶縁体と支持基板との間に碁盤目状に敷き詰められるように設けられている。複数の引き回し配線は、支持基板の第2絶縁体と反対側に設けられ、複数の電極のうち同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない2以上の電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が静電容量測定回路に接続されている。
【0016】
複数の第1帯状電極は、第1絶縁体の第2絶縁体と反対側において第1方向に延びて設けられている。複数の第1帯状電極は、複数の第3電極のうち第1方向と交差する方向に隣接する第3電極同士の間に延びることで、隣接する第3電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
複数の第2帯状電極は、第1絶縁体と第2絶縁体との間において第1方向に交差する第2方向に延びて設けられている。複数の第2帯状電極は、複数の第3電極のうち第2方向と交差する方向に隣接する第3電極同士の間に延びることで、隣接する第3電極のそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
【0017】
静電容量測定回路は、第3電極と当該第3電極に平面視で重なっている第1帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能である。静電容量測定回路は、第3電極と当該第3電極に平面視で重なっている第2帯状電極との間で発生する静電容量を検出可能である。
圧力算出回路は、圧力が加えられて第2絶縁体が変形するときに、平面視で互いに重なっている第3電極と第1帯状電極との重なり面積及び/又は平面視で互いに重なっている第3電極と第2帯状電極との重なり面積が変化することで静電容量測定回路によって得られた静電容量変化に基づいて、せん断力を算出する。
【0018】
この装置では、各第1帯状電極は、第2方向に隣接して並んだ複数対の第3電極に対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。また、各第2帯状電極は、第1方向に隣接して並んだ複数対の第3電極に対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。
この装置では、例えば第2方向へのせん断力が第1絶縁体に作用すると、第1帯状電極においてせん断力が作用した部分では、第1帯状電極と隣接する一対の第3電極との各交点(第1帯状電極が対応する一対の第3電極に対して平面視で重なった部分)の面積が変化させられる。これにより、当該第1帯状電極と一方の第3電極との間の静電容量が増加し、当該第1帯状電極と他方の第3電極との間の静電容量が減少する。そして、静電容量測定回路が当該部分の静電容量変化を検出して、さらに圧力算出回路が当該静電容量変化に基づいてせん断力を算出する。
【0019】
このような装置において、本発明は、複数の引き回し配線は、複数の第3電極のうち同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない2以上の電極に短絡させ、複数対一で接続されているので、引き回し配線の本数を減らすことができる。
なお、複数の電極と複数の引き回し配線との接続は、全ての電極が支持基板の貫通穴を介して接続させることができる。また、複数の電極と複数の引き回し配線との接続は、碁盤目状に敷き詰められている電極のうち周縁の電極を除いて支持基板の貫通穴を介して接続されていてもよい。
【0020】
また、複数の引き回し配線は、支持基板の第2絶縁体側に設けられ、絶縁膜によって被覆されるとともに、当該絶縁膜の第2絶縁体側に複数の電極が位置するようにしてもよい。
この場合、複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、全ての電極が絶縁膜の貫通穴を介して接続させることができる。また、複数の電極と前記複数の引き回し配線との接続は、碁盤目状に敷き詰められている電極のうち周縁の電極を除いて絶縁膜の貫通穴を介して接続されていてもよい。
【0021】
さらに、複数の第1帯状電極のうち隣接しない2以上の第1帯状電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の第1帯状電極用引き回し配線を、さらに備えていてもよい。また、複数の第2帯状電極のうち隣接しない2以上の第2帯状電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が前記静電容量測定回路に接続された複数の第2帯状電極用引き回し配線を、さらに備えていてもよい。これらにより、引き回し配線の本数をさらに減らすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る圧力検出装置では、スイッチング素子を用いないで、引き回し配線の本数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図6】せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図。
【
図7】せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図。
【
図8】相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。
【
図9】相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。
【
図10】相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。
【
図11】相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図。
【
図12】第3電極と引き回し配線との接続構造を示す模式図。
【
図13】接続構造1における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表。
【
図15】接続構造2における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表。
【
図16】接続構造3における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表。
【
図17】接続構造4における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表。
【
図18】接続構造4における引き回し配線毎の短絡する第1電極の組合せ、第2電極の組合せを示す表。
【
図21】従来技術のタッチパッド装置のブロック構成図。
【
図22】従来技術における第3電極パターンのアクティブマトリックスを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
(1)タッチパッド装置の全体構造
図1を用いて、タッチパッド装置1(圧力検出装置の一例)の全体構成を説明する。
図1は、タッチパッド装置のブロック構成図である。
【0025】
タッチパッド装置1は、センサ部3(タッチパッド)と、制御回路5とを有している。
センサ部3は、圧力が作用した位置を検出する機能と、圧力を検出する機能とを有している。
制御回路5は、センサ部3を制御すると共に,センサ部3からの検出信号に基づいて各種測定を行う。
なお、タッチパッド装置1は、PC7を有している。PC7は、例えば、パーソナルコンピュータである。PC7によって、制御回路5に各種データ及び指示を入力することができ、さらに制御回路5からの情報をモニター画面に表示できる。例えば、後述する測定結果である相互容量のデータはPC7のモニターに表示される。
【0026】
(2)センサ部の基本構造
センサ部3は、支持基板11と、第2絶縁体13と、第1絶縁体15とを有しており、これらは圧力が入力される側と反対側から順番に並んで積層されている。具体的には、第2絶縁体13は、支持基板11の上面に設けられている。第1絶縁体15は、第2絶縁体13の上面に設けられている。
支持基板11は、例えば、ガラスエポキシ基板であり、厚みは1.6mmである。なお、支持基板11の材料は特に限定されない。
【0027】
第2絶縁体13は、力が作用すると弾性変形可能な部材である。第2絶縁体13の弾性率は、0.001~10MPaの範囲にあることが好ましく、0.001~0.01MPaの範囲にあることがさらに好ましい。第2絶縁体13は、例えば、ポリウレタンゲルシートあり、厚みは1mmである。ポリウレタンゲルシートは、硬度0であり、軽い荷重でも十分変形するものが好ましい。さらに、ポリウレタンゲルシートは、粘着性があるので、別に粘着剤などを用意することなく、支持基板11と第1絶縁体15を接着できる。なお、第2絶縁体13の材料は特に限定されない。
第2絶縁体13の厚みは、10μm~10000μmの範囲にあることが好ましく、100μm~2000μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0028】
第1絶縁体15は、第1電極パターンTyと第2電極パターンTxとを互いに絶縁しつつかつ積層方向に所定の距離に配置するための層である。
第1絶縁体15は、例えば、ウレタンフィルムであり、厚みは0.07mmである。
第1絶縁体15の弾性率は、1MPa~4000MPaの範囲にあることが好ましく、1MPa~10MPaの範囲にあることがさらに好ましい。
なお、第1絶縁体15の材料は特に限定されない。
第1絶縁体15の厚みは、1μm~1000μmの範囲にあることが好ましく、10μm~100μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0029】
第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxは、それぞれ複数の短冊状又は帯状の第2電極Tx及び第1電極Tyからなる。
第1電極パターンTyは、第1絶縁体15の上面に、すなわち第1絶縁体15の第2絶縁体13と反対側に設けられる。第1電極パターンTyは、
図2に示すように、図のY方向に並んでおり、X方向(第1方向の一例)に延びている。第1電極パターンTyは、X方向に延びる複数の第1電極Ty(1)、Ty(2)、Ty(3)、、、、、Ty(l-2)、Ty(l-1)、Ty(l)を有している。
図2は、第1電極パターンの平面図である。
【0030】
第2電極パターンTxは、第1絶縁体15の下面に、すなわち第1絶縁体15と第2絶縁体13との間に設けられる。第2電極パターンTxは、
図3に示すように、図のX方向に並んでおり、Y方向(第2方向の一例)に延びている。第2電極パターンTxは、Y方向に延びる複数の第2電極Tx(1)、Tx(2)、Tx(3)、、、、Tx(m-2)、Tx(m-1)、Tx(m)を有している。
図3は、第2電極パターンの平面図である。
上記の構成により、第2電極パターンTxは、第1電極パターンTyとの間で絶縁性を保ち且つ第1電極パターンTyと交差(この実施形態では、直交)して配置される。第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxは、引き出し配線によって接続端子(図示せず)に至るまで引き出される。
【0031】
第3電極パターンRx(第2絶縁体と支持基板との間に碁盤目状に敷き詰められるように設けられた複数の電極の一例)は、第2絶縁体13と支持基板11との間に設けられる。第3電極パターンRxは、
図4に示すように、全体に敷き詰められて配置された多数の島状の第3電極Rxからなる。
図4は、第3電極パターンの平面図である。
【0032】
第3電極パターンRxは、第3電極Rx(1,1)~Rx(n,o)のマトリックスを構成している。この実施形態では、個々の第3電極Rxの形状は正方形である。後述するように、隣り合う第3電極Rxの隙間を覆うように、第1電極Ty及び第2電極Txが配置されている。つまり、第1電極Ty及び第2電極Txの幅は、第3電極Rx同士の隙間より大きい。第3電極Rxの形状は、その他の形状であってもよい。
【0033】
第1電極パターンTy、第2電極パターンTx及び第3電極パターンRxの材料としては、数mΩから数百Ωの表面抵抗値(導電性)を示すことが好ましく、例えば、酸化インジウム、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸等の金属酸化物や、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属などで成膜することができる。これらの材料からなる第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxの形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法、あるいはCVD法、塗工法等で透明導電膜を形成した後にエッチングによりパターニングする方法や、印刷法等がある。
上記の構造では、第2電極パターンTxと第3電極パターンRxの間には、入力面からの応力に応じて変形可能な弾性体としての第2絶縁体13が介在している。よって、入力面からの応力によって、第2電極パターンTx及び第1電極パターンTyが第3電極パターンRxに対して変位できる。
なお、第2電極Tx、第1電極Ty、第1絶縁体15も、ある程度の柔らかが必要である。PETフィルムなど剛性が高いものが積層されていると、その剛性によって第2絶縁体13の弾性変形を妨げてしまうためである。
【0034】
センサ部3は、保護層17を有している。保護層17の上面が、指がタッチする入力面になっている。保護層17は、前述した電極パターンを保護するための層であり、指と電極パターンが導通するのを防止したり、電極パターンの損傷を防止したりする機能を有している。保護層17は、例えば、ウレタンフィルムであり、厚みは0.05mmである。なお、保護層17は任意の部材であり、省略可能である。
【0035】
保護層17の下面には、第4電極パターンTaが設けられている。第4電極パターンTaは、第1電極パターンTyと、第2電極パターンTxと、第3電極パターンRxを全て覆うようなベタパターンである。第4電極パターンTaも任意の部材である。また、第4電極パターンTaは、第3電極パターンRxを覆うことができればよいので、第1電極パターンTyと同一平面上で第1電極パターンTyの間に形成されていてもよい。第4電極パターンTaは、一定電位に保持されており、外部からの電気的なノイズをシャットアウトする。
保護層17と第1絶縁体15は、絶縁層としてのPSA19によって互いに固定されている。
【0036】
第1絶縁体15は第2絶縁体13より薄い。第1絶縁体15の厚みは第2絶縁体13の厚みの20%以下の範囲にあることが好ましく、10%以下の範囲にあることがさらに好ましい。例えば、第2絶縁体13の厚みが1mmである場合に、第1絶縁体15の厚みが0.07mmである。この装置では、第2絶縁体13が薄く設定されることで、第1電極パターンTyと第2電極パターンTxとの距離が短く設定されている。したがって、第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxが第3電極Rxに対して変位するときに、第1電極パターンTyが第3電極Rxに対して変位する量と第2電極パターンTxが第3電極Rxに対して変位する量とに大きな差が生じない。
【0037】
(3)せん断応力の検出原理
図5~
図7を用いて、入力面をせん断方向に応力が受けた場合の電極位置の変化と、その検出原理の説明を定性的に説明する。
図5は、電極パターンの重なり状態を示す平面図である。
図6及び
図7は、せん断力が作用したときの電極パターンの重なり状態の変化を示す平面図である。
【0038】
複数の第1電極Tyは、複数の第3電極RxのうちY方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
複数の第2電極Txは、複数の第3電極RxのうちX方向に隣接する第3電極Rx同士の間に延びることで、隣接する第3電極Rxのそれぞれの一部にのみ平面視で重なっている。
【0039】
以上に述べたように、各第1電極Tyは、Y方向に隣接して並んだ複数対の第3電極Rxに対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。また、各第2電極Txは、X方向に隣接して並んだ複数対の第3電極Rxに対して平面視で重なることで、多数の交点を構成している。
【0040】
図5を用いて、第3電極パターンRxのうち第3電極Rx(a-1,b+1)~第3電極Rx(a+1,b-1)(a,bは任意の自然数)と、それらと重なりを持つ第2電極Tx(d)、第2電極Tx(d+1)、第1電極Ty(c)、第1電極Ty(c+1)について考える。
図5は、応力が無い状態の第1電極Ty、第2電極Tx、第3電極Rxの重なりを示している。各第2電極Tx及び第1電極Tyは、第3電極Rxと重なりを有し、その面積にほぼ比例した相互容量を有する。
【0041】
以後、ハッチングが施された4つの重なりA~Dについて検討する。
重なりA:Rx(a-1,b)/Tx(d)間
重なりB:Rx(a,b)/Tx(d)間
重なりC:Rx(a,b+1)/Ty(c)間
重なりD:Rx(a,b)/Ty(c)間
【0042】
さらに、重なりA~Dにおける相互容量は、下記のような符号表現で表すことにする。
重なりAの相互容量:C[Rx(a-1,b)/Tx(d)]
重なりBの相互容量:C[Rx(a,b)/Tx(d)]
重なりCの相互容量:C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]
重なりDの相互容量:C[Rx(a,b)/Ty(c)]
【0043】
図6に示すように、入力面に+X方向の応力を受けた場合、第2電極Tx及び第1電極Tyは第3電極Rxに対して+X方向に移動し、それに応じて重なり面積が変化する。具体的には、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]は増大し、重なりAの相互容量C[Rx(a-1,b)/Tx(d)]は減少する。一方、重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]と重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]は変化しない。
図7に示すように、入力面に+Y方向の応力を受けた場合は、第2電極Tx及び第1電極Tyは第3電極Rxに対して+Y方向に移動し、それに応じて重なり面積が変化する。具体的には、重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]は増大し、重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]は減少する。
【0044】
以上より、上記4つの重なりA~Dの静電容量を測定することで、X方向とY方向の移動を検出でき、それによりせん断応力が検出できる。
【0045】
(4)相互容量、せん断応力、法線方向応力の関係
次に、第2電極Tx及び第1電極Tyと第3電極Rxとの相互容量と、せん断応力、さらには法線方向(Z方向)の応力との関係を、定量的に解析する。X方向について考えるため、
図8~
図11に、第2電極Tx(d)と第3電極Rx(a-1,b)及び第3電極Rx(a,b)の位置関係を断面図として示す。
図8~
図11は、相互容量、せん断応力、法線方向の応力の関係を示すための模式的断面図である。
なお、Y方向の応力については重なりDの相互容量C[Rx(a,b)/Ty(c)]と重なりCの相互容量C[Rx(a,b+1)/Ty(c)]を使って同様に検出できるので、ここでは省略する。
【0046】
図8は、応力が印加されていない状況を示している。この状況での、第2電極Tx(d)と第3電極Rx(a-1)又は第3電極Rx(a,b)の平面の法線方向の距離をz0とし、この時の各相互容量は以下の数式1のように表せる。
【数1】
【0047】
ここで、K1とK2はそれぞれ、第2絶縁体13の誘電率や厚み、各電極パターンの大きさやX方向、Y方向の位置などによって決まる比例定数である。
図9に示すように、-Z方向に押圧した場合、圧力の強さに応じて第2電極Tx(d)は第3電極Rx(a-1,b)と第3電極Rx(a,b)に近づく。つまり、距離がz0からz0-Δzになる。この場合、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]zと重なりAの相互容量C[Rx(a-1,b)/Tx(d)]zは、Δzに応じて、以下の数式2のように変化する。
【数2】
【0048】
数式1と数式2を連立させると、Δzは以下の数式3のように表される。
【数3】
【0049】
弾性体の変形が弾性領域である場合、Δzは応力に比例するので、数式3によって、容量の変化によって-Z方向の応力を検出できる。
【0050】
次に、
図10に示すように、+X方向に押圧(せん断応力)が発生した場合を考える。その場合、第2電極Txは圧力の強さに応じて移動する。この場合、重なりBの相互容量C[Rx(a,b)/Tx(d)]xと重なりAの相互容量C[Rx(a-1,b)/Tx(d)]xは、Δxに応じて以下の数式4のように変化する。
【数4】
【0051】
ここで、Kpは
図5で表した斜線部分の長さに比例する値である。数式1と数式4から、Δxは以下の数式5のように表せる。
【数5】
【0052】
第2絶縁体13の変形が弾性領域である場合、Δxは応力に比例するので、数式5によって、容量の変化によって+X方向の応力を検出できる。
【0053】
最後に、
図11に示すように、+X方向の押圧と-Z方向の押圧が同時に作用した場合を考える。この場合、第2電極Tx(d)はZ方向へΔz移動し、さらにX方向へΔx移動すると考える。C[Rx(a,b)/Tx(d)]zxとC[Rx(a-1,b)/Tx(d)]zxは、数式4のZ0をZ-Δzに置き換えて計算できるので、以下の数式6のように表せる。
【数6】
【0054】
数式6と数式1から、以下の数式7が得られる。
【数7】
【0055】
以上より、Δzは、下記の数式8に比例する。
【数8】
【0056】
また、以上より、Δxは、下記の数式9に比例する。
【数9】
【0057】
以上に述べたように第1電極Ty及び第2電極Txが第3電極Rxに対して平面視において多数の交点を形作るように配置されているので、交点の相互容量を測定することによって、指の接触位置とその圧力が検出できる。つまり、指が第1電極Ty及び第2電極Txに近づくと、接触位置に近い交点の相互容量が変化し、さらに押圧によって、第2絶縁体13が変形すれば第1電極Ty及び第2電極Txが第3電極パターンRxに近づくことでその交点の相互容量が変化する。
例えば、Y方向へのせん断力がある点に作用すると、第1電極Tyにおいてせん断力が作用した部分では、第1電極Tyと隣接する一対の第3電極Rxとの各交点(第1電極Tyが対応する一対の第3電極Rxに対して平面視で重なった部分)の面積が変化させられる。これにより、当該第1電極Tyと一方の第3電極Rxとの間の静電容量が増加し、当該第1電極Tyと他方の第3電極Rxとの間の静電容量が減少する。
【0058】
(6)引き回し配線の接続構造
引き回し配線80は、支持基板11の第2絶縁体13と反対側に設けられている。引き回し配線80は、複数の第3電極Rxのうち同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない2以上の電極に短絡させ、複数対一で接続されており、一端が静電容量測定回路に接続されている。第3電極Rxと引き回し配線80は、
図1に示すように、支持基板11の貫通穴81に設けられた接続線によって接続されている。
引き回し配線80は、例えば、銀や銅などの金属ペーストを材料として用いたものであり、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、などの通常印刷法や、インクジェット印刷などによって任意のパターンに形成される。
【0059】
以下、
図12~
図18を用いて、第3電極Rxと引き回し配線80の接続構造について、各種の具体例を示しながら説明する。
【0060】
〔接続構造1〕
例えば、
図12は、第3電極パターンの引き回し配線との接続構造を示す模式図である。
図12に示す例では、第3電極パターンは、4×4=16個の第3電極Rxからなる。図中、各第3電極Rxには、左上から0、1、2、、、、、、14、15と番号を付与している。これらの第3電極Rxは、図示しない支持基板11の貫通穴81を介して、引き回し配線80に接続されている。
なお、本接続構造では、第3電極Rxとの間で相互容量を測定する第1電極Ty及び第2電極Txのエレメントは、Ty(1)、Ty(2)、Ty(3)及びTx(1)、Tx(2)、Tx(3)の各々3本ずつとなる。
図12中では、図面が見にくくなるため第1電極Ty及び第2電極Txを描かず、その形成位置と個々の番号だけを示している。
【0061】
図12に示す例では、各引き回し配線80は、引き回す途中で、同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない第3電極Rxを2個ずつ短絡させている。したがって、引き回し配線80の本数は8本である。
これら8本の引き回し配線80に、それぞれL0、L1、、、、、L6、L7の番号を付与し、それぞれがどの第3電極Rxと接続されるかの一例を、
図13に示した。
図13は、接続構造1における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表である。
【0062】
上記のように、接続構造1の引き回し配線80の本数は、16個の第3電極Rxに対して半分の8本で済んでいる。したがって、スイッチング素子を用いないで、引き回し配線の本数を十分に減らすことができる。
【0063】
〔接続構造2〕
また、
図14は、第3電極パターンの別の例を示す模式図である。
図14に示す例では、第3電極パターンは、12×12=144個の第3電極Rxからなる。図中、各第3電極Rxには、左上から0、1、2、、、、、、140、143と番号を付与している。これらの第3電極Rxは、接続構造1と同様に、図示しない支持基板11の貫通穴81を介して、引き回し配線80に接続されている。
なお、本接続構造では、第3電極Rxとの間で相互容量を測定する第1電極Ty及び第2電極Txのエレメントは、Ty(1)、Ty(2)、Ty(3)、、、、、Ty(11)及びTx(1)、Tx(2)、Tx(3)、、、、、Tx(11)の各々11本ずつとなる。
図14中では、図面が見にくくなるため第1電極Ty及び第2電極Txを描かず、その形成位置と個々の番号だけを示している。
【0064】
接続構造2では、図示しない各引き回し配線80は、引き回す途中で、同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない第3電極Rxを6個ずつ短絡させている。したがって、引き回し配線80の本数は24本である。なお、引き回し配線80の具体例の図示は、非常に見にくくなるため、ここでは省略する。
これら24本の引き回し配線80に、それぞれL0、L1、、、、、L22、L23の番号を付与し、それぞれがどの第3電極Rxと接続されるかの一例を、
図15に示した。
図15は、接続構造2における引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せを示す表である。
【0065】
上記のように、接続構造2の引き回し配線80の本数は、144個の第3電極Rxに対し6分の1の24本で済んでいる。したがって、スイッチング素子を用いないで、引き回し配線の本数を十分に減らすことができる。
【0066】
〔接続構造3〕
接続構造3は、接続構造2と同じ第3電極パターンについて、接続構造2と同様に同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない第3電極Rxを6個ずつ短絡させているが、引き回し配線毎の短絡する第3電極の組合せが接続構造2と異なる(
図16参照)。
【0067】
〔接続構造4〕
接続構造4は、接続構造2と同じ第3電極パターンについて、接続構造1と同様に、引き回し配線80が同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でない第3電極Rxを2個ずつ短絡させている。したがって、引き回し配線80の本数は72本である。
これら72本の引き回し配線80に、それぞれL0、L1、、、、、L70、L71の番号を付与し、それぞれがどの第3電極Rxと接続されるかの一例を、
図17に示した。
【0068】
また、本接続構造では、第1電極Ty及び第2電極Tx用の各引き回し配線は、引き回す途中で、隣接しない第1電極Ty及び第2電極Txを2又は3個ずつ短絡させている。その結果、第1電極Ty及び第2電極Tx用の各引き回し配線の本数は4本である。
4本の第1帯状電極用引き回し配線にそれぞれLy0、Ly1、Ly3、Ly4の番号を付与し、それぞれがどの第1電極Tyと接続されるかの一例を、
図18(a)に示した。また、4本の第2帯状電極用引き回し配線にそれぞれLx0、Lx1、Lx3、Lx4の番号を付与し、それぞれがどの第2電極Txと接続されるかの一例も、
図18(b)に示した。
【0069】
上記のように、接続構造4の引き回し配線の本数は、第3電極Rx用のみならず、第1電極Ty及び第2電極Tx用でも減らすことができる。
【0070】
(7)タッチパッド装置の制御構成
図1を用いて、タッチパッド装置1の制御構成を説明する。
制御回路5は、マイクロコントローラ25を有している。マイクロコントローラ25は、CPU、RAM、ROM等を有するコンピュータである。
【0071】
制御回路5は、信号発生回路27を有している。信号発生回路27は、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxと、マイクロコントローラ25に接続されている。信号発生回路27は、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxに電圧パルスを印加可能である。
制御回路5は、ADC(アナログ-デジタル変換器)29を有している。ADC29はマイクロコントローラ25にデジタル信号を入力可能に接続されている。
制御回路5は、アンプ回路33を有している。アンプ回路33は、第3電極パターンRx及びADC29に接続されている。アンプ回路33は、第3電極パターンRxからのアナログ信号を増幅してADC29に送信する。
【0072】
マイクロコントローラ25は、第1電極パターンTy及び第2電極パターンTxと第3電極Rxとの重なり部分(交点)の相互容量を検出可能である。つまり、マイクロコントローラ25が静電容量測定回路としての機能を有している。具体的には、マイクロコントローラ25は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第1電極Tyとの間で発生する静電容量を検出可能である。マイクロコントローラ25は、第3電極Rxと当該第3電極Rxに平面視で重なっている第2電極パターンTxとの間で発生する静電容量を検出可能である。
さらに具体的には、マイクロコントローラ25は、信号発生回路27を介して、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxを送信電極として電圧パルスを順次印加し、複数の第3電極Rxを受信電極として受信強度を測定することにすることで、各電極交点における相互容量の変化を検出する。
【0073】
マイクロコントローラ25は、各交点における相互容量の変化に基づいて、圧力作用位置を算出する。つまり、マイクロコントローラ25は、圧力作用位置算出回路の機能を有している。圧力作用位置の算出技術は公知であるので、説明を省略する。
【0074】
マイクロコントローラ25は各交点における相互容量の変化に基づいて、圧力を算出する。つまり、マイクロコントローラ25は、圧力算出回路の機能を有している。
この装置では、例えば指が保護層17を押すと、マイクロコントローラ25が第2電極Tx又は第1電極Tyに信号を送り、第3電極Rxが受ける信号をアンプ回路33によって増幅された信号としてADC29を介して受け取ることで、マイクロコントローラ25が、第2電極Tx又は第1電極Tyと第3電極Rxとの相互容量を測定できる。そして、マイクロコントローラ25が圧力作用位置を算出し、さらに圧力(入力面に対する法線方向の応力及びせん断応力)を算出する。
【0075】
(8)圧力作用位置及び圧力の検出制御
図19を用いて、マイクロコントローラ25によるタッチパッド装置1のタッチ検出制御動作を説明する。
図19は、圧力測定の制御フローチャートである。
最初に、マイクロコントローラ25は、アンプ回路33からのレベル信号に基づいて、タッチ入力の有無を判断する(ステップS1)。
【0076】
タッチされたと判断されれば(ステップS1でYes)、マイクロコントローラ25が、第1電極パターンTyと第3電極パターンRxとの交点の静電容量を測定する(ステップS2)。
マイクロコントローラ25が、第2電極パターンTxと第3電極パターンRxとの交点の静電容量を測定する(ステップS3)。
各交点の静電容量の値は、マイクロコントローラ25のメモリに保存される。
【0077】
ステップS2とステップS3の順序は前記実施例に限定されない。
次にマイクロコントローラ25は、タッチの圧力作用位置及び圧力をそれぞれ決定する(ステップS4)。
【0078】
なお、ステップS2及びステップS3の各交点の静電容量の測定においては、マイクロコントローラ25は、引回し配線80から順番に第3電極Rxからの信号を読み取る。
このとき、各々の引回し配線80において短絡させた第3電極Rx同士は、同じ行及び隣接する行でなく、かつ、同じ列及び隣接する列でないので、静電容量値を、全ての第1電極Ty、第2電極Tx及び第3電極Rxの組み合わせについて別々に測定することができる。
【0079】
以上の結果、シート状弾性体に加わるX,Y,Z方向の応力全ての面内分布が検出できるようになる。上記装置の応用例として、複数の指で触った場合に、各指のXYZ方向の力が検出できている。PCのタッチパッドのような入力デバイスとして応用すれば、疑似的に回転方向の応力も検出できるので、“つまむ”や、“表面を捩じる”などの新しいジェスチャーを検出できるようになる。また、3D画像を操作する新しい入力デバイスにもなり得る。
【0080】
このセンサの応用例としては、体圧分布を測定するものがある。例えば、歩行又は走行計測のため、足裏に掛かる圧力分布を測定する場合など、せん断力の測定が望まれている。また、ベッドに敷けば、寝ている人に加わる体全体のせん断力の分布が測定できるので、床ずれの研究や予防などに役立つ。
【0081】
2.他の実施形態
以上、本発明の一又は複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、信号発生回路27が第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxと接続され、アンプ回路33が第3電極パターンRxに接続されているが、これに限定されない。すなわち、信号発生回路27が第3電極パターンRxと接続され、アンプ回路33が第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxに接続されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、複数の引き回し配線80を支持基板11の第2絶縁体13とは反対側に設けたが、これに限定されない。例えば、
図20に示すように、複数の引き回し配線80は、支持基板11の第2絶縁体13側に設けられ、絶縁膜90によって被覆されるとともに、当該絶縁膜90の第2絶縁体13側に複数の第3電極Rxが位置するようにしてもよい。
この場合、複数の第3電極Rxと前記複数の引き回し配線80との接続は、全ての第3電極Rxが絶縁膜90の貫通穴81を介して接続させることができる。また、複数の第3電極Rxと前記複数の引き回し配線80との接続は、碁盤目状に敷き詰められている第3電極Rxのうち周縁の電極を除いて絶縁膜90の貫通穴81を介して接続されていてもよい。
【0084】
絶縁膜90としては、メタアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリシロキサン樹脂などの熱硬化型樹脂、メラミンアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、メタアクリルアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂などのアクリレート樹脂、ポリビニールアルコール樹脂などの光硬化型樹脂などからなるものがある。絶縁膜90は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、などの通常印刷法を用いて。貫通穴81などを有する任意のパターンに形成する。また、貫通穴81はフォトプロセスにて形成してもよい。
【0085】
各層の積層順序及び他の層の有無は、前記実施形態に限定されない。
【0086】
各層の材料及び厚みは、前記実施形態に限定されない。
【0087】
制御構成は前記実施形態に限定されない。
制御フローチャートは前記実施形態に限定されない。具体的には、複数のステップの順序及び有無は特に限定されない。特に、前後して説明されたステップは、全て同時に又は一部同時に行われてもよい。
【0088】
第4電極パターンTaと第3電極パターンRxとの間で静電容量を測定してもよい。
第4電極パターンのTaの静電容量を測定することで、弱い圧力を測定できるようにしてもよい。
【0089】
支持基板11は、2層構成の絶縁体からなり、これら絶縁体の中間層としてGND電極パターンが設けられていてもよい。
GND電極パターンは、第3電極パターンRxを除いて全て覆うような開口パターンである。GND電極パターンも任意の部材である。また、GND電極パターンは、一定電位に保持されており、引回し配線80と、第1電極パターンTy又は第2電極パターンTxとの間に、不要な静電容量を持たないように、第3電極Rx間の隙間をガードしている。
【0090】
また、第1電極パターンTyのエレメントうち最も外側となる第1電極(
図2におけるTy(1)およびTy(l))のさらに外側に、
図2に図示しないX方向(第1方向の一例)に延びる電極TyGND(第3帯状電極の一例)が各々設けられていてもよい。電極TyGNDは、第3電極パターンRxの碁盤目の外縁においてそれぞれの一部にのみ平面視で重なっており、一定電位に保持されている。
第1電極Tyが存在する部分と存在しない部分とでは、この装置の積層体の硬さに差が生じる。すなわち、電極の密度によって変形のしやすさが異なるので、面内で感度が異なる。Y方向に並ぶ第1電極Tyが、第3電極Rx同士の隙間だけでなく、Y方向で最も外側の第3電極Rxにおける隙間とは反対辺にダミー電極として重複させることによって、硬い部分が感圧領域全体においてY方向で均等に配置される。したがって、電極の密度が面内で等しいので、面内での感圧感度を等しくでき、測定値の補正が不要である。
【0091】
同様の目的で、第2電極パターンTxのエレメントのうち最も外側となる第2電極(
図3におけるTx(1)およびTx(m))のさらに外側に、
図3に図示しないY方向(第2方向の一例)に延びる電極TxGND(第4帯状電極の一例)が各々設けられていてもよい。電極TxGNDは、第3電極パターンRxの碁盤目の外縁においてそれぞれの一部にのみ平面視で重なっており、一定電位に保持されている。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、圧力検出装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1,101 :タッチパッド装置
3,103 :センサ部
5,105 :制御回路
11 :支持基板
13 :第2絶縁体
15 :第1絶縁体
25 :マイクロコントローラ
27 :信号発生回路
33 :アンプ回路
35 :ゲート駆動回路
80 :引き回し配線
81 :貫通穴
90 :絶縁膜
Rx :第3電極パターン
Ta :第4電極パターン
Tx :第2電極パターン
Ty :第1電極パターン