(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ランナーまたは歩行者に対して歩行またはランニング速度を信号化するための方法
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20230613BHJP
G01P 1/08 20060101ALI20230613BHJP
G01P 1/10 20060101ALI20230613BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A63B71/06 T
G01P1/08 C
G01P1/10 Z
G09F9/00 362
G09F9/00 366G
(21)【出願番号】P 2019527867
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2016002082
(87)【国際公開番号】W WO2018103812
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2019-11-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ベネイト-フェーレ、ヨルディ
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-35071(JP,A)
【文献】特開2011-30987(JP,A)
【文献】国際公開第2016/074689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00-71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行またはランニング中にランナーまたは歩行者に対して歩行またはランニング速度(v)を信号化するための方法であって、前記ランナーまたは歩行者は衣服(1)を着用し、前記方法は、
前記ランナーまたは歩行者によって着用されるまたは携帯される速度計(2)によって実際の前記速度(v)を
決定することと、
前記実際の速度(v)が
、基準速度(v
0
)から当該基準速度(v
0
)の第1の所定の割合の速度を減算した速度を下回る場合に第1の色が表示され、
前記実際の速度(v)が、
基準速度(v
0
)に当該基準速度(v
0)の
第2の所定の割合の速度を加算した速度を上回る場合に前記第1の色と異なる第2の色が表示され、
前記実際の速度(v)が、前記基準速度(v
0)
から当該基準速度(v
0
)の第1の所定の割合の速度を減算した速度以上、かつ、
当該基準速度(v
0
)に当該基準速度(Vo)の第2の所定の割合の速度を加算した速度以下の場合に前記第1の色および前記第2の色は表示されず、または前記第1の色および前記第2の色と異なる第3の色は表示され、
前記第1の所定の割合および前記第2の所定の割合は1%~10%の範囲内でそれぞれ定められ、
前記速度計は、GPSモジュール(4)を有する携帯電話(5)であり、前記実際の速度(v)は、前記GPSモジュール(4)によって検出される位置の変化、および前記位置の変化中に経過した時間によって
決定され、
前記第1ないし第3の色を表示することは、前記衣服(1)に取り付けられるまたは組み込まれるグラスファイバーまたは光ファイバーを具備する発光素子(3)によって行われる、方法。
【請求項2】
前記速度(v)の決定は、前記携帯電話(5)におけるアプリによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1ないし第3の色が表示される際に、当該第1ないし第3の色のいずれを表示するかの決定が、前記携帯電話(5)におけるアプリによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の色は赤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の色は青であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の色は緑であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行またはランニング中にランナーまたは歩行者に対して歩行またはランニング速度を信号化するための方法であって、ランナーまたは歩行者は衣服を着用し、方法は、
a)ランナーまたは歩行者によって着用されるまたは携帯される速度計によって実際の速度を判断することと、
b)実際の速度と所定の基準速度との間の速度差を算出することと、
c)速度差を光信号に変換することであって、光信号は速度差に対応する、変換することと、
d)発光素子によって光信号を表示することと、を含み、
ステップc)において、速度差に応じて光信号の少なくとも1つの所定の色を定めることによって、変換が行われ、
実際の速度が基準速度の第1の所定の割合を下回る場合に第1の色が表示され、
実際の速度が基準速度の第2の所定の割合を上回る場合に第1の色と異なる第2の色が表示され、
実際の速度が基準速度の第1の所定の割合を上回り、かつ基準速度の第2の所定の割合を下回る場合に、光信号は表示されず、または第1の色および第2の色と異なる第3の色が表示され、
速度計は、GPSモジュールを有する電子デバイスを含むまた電子デバイスであり、ここで、実際の速度は、GPSモジュールによって検出される位置の変化、および位置の変化中に経過した時間によって判断され、携帯電話(「スマートフォン」という用語がここでは同等に使用される)の一部であるGPSモジュールが使用される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、スポーツ活動中、ランナーまたは歩行者は、実際の歩行またはランニング速度を知ることに関心があることが多い。当技術分野において、例えば、腕時計のように設計される速度計が周知である。多くの場合、歩行者またはランナーが、自分の実際の速度に関する所望の情報を入手するために速度計のディスプレイを読まなければならない時にスポーツ活動が妨げられる。
【0003】
上述した種類の方法は、特許文献1から既知である。発光素子として、スポーツ活動中に実際の速度を読むことを複雑にする表示装置を有する出力デバイスが使用される。
【0004】
別の方法は特許文献2から既知である。ここで、光ファイバー構造を備えた照明付きベストが開示されている。着用者には、スポーツ活動中の自身の律動が遅すぎる場合に光信号が与えられる。他の解決策は、特許文献3および特許文献4から既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2407218号
【文献】米国特許出願公開第2014/0078773号
【文献】米国特許出願公開第2016/0317101号
【文献】国際公開第2016/074689号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の目的は、歩行者またはランナーに対して歩行者またはランナーの実際の速度に関する情報を歩行またはランニングが妨げられないまたは妨害されないような便利なやり方で変換することが可能である方法およびデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるこの目的の解決策は、
上記のステップd)に従って光信号を表示することが、衣服に取り付けられるまたは組み込まれるグラスファイバーまたは光ファイバーの形態の発光素子によって行われることを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明によると、設定された(所定の)所与の値に対する速度差は、衣服と接続される発光素子によって通信される。体的には、グラスファイバーおよび光ファイバーはそれぞれ、衣服が上着などである場合、好ましくは衣服の腕袖にまで達する発光素子として使用されることで、歩行者またはランナーが発光素子を容易に見られるようにすることができる。歩行者またはランナーの実際の速度についての情報を入手するために速度計のディスプレイを読みことは必要ではない。具体的には、歩行者またはランナーの所望の設定速度が維持されるかどうかを便利なやり方で監視することが容易になる。
【0009】
上着、特に、ランニング用上着などが好ましいが、本思想による概念を、例えば、ランニング用ズボンなどのような他の衣服に適用することも可能である。
【0010】
速度判断は、携帯電話におけるアプリ(ソフトウェアアプリケーション)によって行われ得る。また、速度差を光信号に変換することは、携帯電話におけるアプリによって行われ得る。
【0011】
本発明による方法では、速度差に応じて光信号の少なくとも1つの所定の色を定めることによって、変換が行われることが提案される。よって、歩行者またはランナーは、発光素子の実際の色を単に注視することによって自分の実際の速度についての情報を容易に入手できる。
【0012】
第1の所定の割合および/または第2の所定の割合は、好ましくは1%~10%である。
【0013】
さらに、実際の速度が、基準速度から当該基準速度の第1の所定の割合の速度を減算した速度以上、且つ、前記基準速度に当該基準速度の第2の所定の割合の速度を加算した速度以下の場合に表示される光信号はない。このことは、実際の速度が、下限の速度である、基準速度から当該基準速度の第1の所定の割合の速度を減算した速度、及び、上限の速度である、基準速度に当該基準速度の第2の所定の割合の速度を加算した速度によって定められる許容差の範囲内にある場合に、表示される信号はないように理解されなければならない。下限より遅くなることによって第1の色が表示されることになり、上限より早くなることによって第2の色が表示されることになる。
【0014】
すなわち、歩行者またはランナーが定められた許容限界の範囲内にある速度を維持する限り、発光素子を介して与えられる光信号はない。歩行者またはランナーの速度が述べられた第1の割合を下回って低減する場合、発光素子によって(好ましくは、グラスファイバーまたは光ファイバーによって)第1の色(好ましくは、赤)が表示され、歩行者またはランナーに対するメッセージは、遅すぎるである。歩行者またはランナーの速度が述べられた第2の割合を上回って増大する場合、発光素子によって(好ましくは、グラスファイバーまたは光ファイバーによって)第2の色(好ましくは、青)が表示され、歩行者またはランナーに対するメッセージは、早すぎるまたは十分早いである。
【0015】
述べられた場合に光信号を表示しない代替策として、実際の速度が、基準速度から当該基準速度の第1の所定の割合の速度を減算した速度以上、且つ、前記基準速度に当該基準速度の第2の所定の割合の速度を加算した速度以下の場合に、第1の色および第2の色と異なる第3の色が表示されることも、考慮に入れられる。
【0016】
すなわち、例えば、「遅すぎる」場合に赤の光信号が与えられ、「許容上限より速い」場合に青の光信号が与えられ得る。速度が許容差の範囲内にある場合、緑の光信号が与えられる可能性があり、これは「設定範囲内の速度」を示している。
【0017】
そのため、歩行者またはランナーは、速度計のいずれのディスプレイも読むことなく所望の速度を容易に維持できる。
【0018】
歩行またはランニング中にランナーまたは歩行者に対して歩行またはランニング速度を信号化するためのランナーまたは歩行者用デバイスは、
-ランナーまたは歩行者がランニングまたは歩行中に着用する衣服と、
-衣服に取り付けられるまたは組み込まれる少なくとも1つの発光素子と、
-GPSモジュールを含む携帯電話を受けるまたは保持するための受け室または保持デバイスと、
-携帯電話によって放出される信号に従って少なくとも1つの発光素子の作動を制御するための制御要素と、
-制御要素を携帯電話と接続するための接続手段と、を含み、
携帯電話または制御要素は、ランナーまたは歩行者の実際の速度を測定するための速度計を含むことを特徴とすることができる。
【0019】
携帯電話と、発光素子を制御する制御要素との間の通信は好ましくは、無線で行われる。接続手段は好ましくは、ブルートゥース(登録商標)接続を確立するための要素を含み、このことは、当技術分野では周知であるため、ここでは詳細に説明する必要はない。
【0020】
受け室は好ましくは、衣服の内側におけるポケットである。代替的には、別の保持デバイスは、携帯電話を適所に維持するために使用可能である。
【0021】
少なくとも1つの発光素子は好ましくは、衣服、特に、衣服の腕袖に固定される光ファイバーである。
【0022】
それぞれ1つの発光素子は、衣服の左領域および右領域に配置可能である。
【0023】
衣服は、好ましくは、少なくとも、ランナーまたは歩行者の肘にまで達する2つの腕袖を有する。
【0024】
この方法ステップは、好ましくは、歩行者またはランナーに、自身の実際の速度に関する永久信号を示すために周期的に繰り返されかつ実行される。
【0025】
衣服はランナーの上着であるのが好ましい。しかしながら、本思想による概念は、当然ながら、例えば、ランナー用ズボンのような他の衣服にも適用可能である。
【0026】
よって、本発明は、GPSナビゲーション機能を有するスマートフォンを使用して、ランナーまたは歩行者が自分の実際の速度に関する情報を入手するための効果的なツールを供給する思想に基づいている。この情報は光信号によって通信される。
【0027】
よって、特に、身体トレーニング(ランニング)中に支援するためにスマートフォンが使用されることは、本発明の概念の重要な態様である。有益には、2つの別個の光学素子(光ファイバー/グラスファイバー/エレクトロルミネッセンス素子)は、速度情報を容易なやり方で可視にするために衣服において衣服の袖上に定着させる。
【0028】
光学素子(光ファイバー/グラスファイバー)は、身体トレーニング中に着用されるスマートフォンと通信するブルートゥース(登録商標)デバイスと接続される。スマートフォンによって制御されるこの状況によると、ブルートゥース(登録商標)を介してスマートフォンからこの情報を入手する制御要素によって別個の光ファイバーに光が放出される。そのため、実際の速度、および具体的には、実際の速度と設定される(所定の)速度との間の差は述べられたやり方で表示可能である。
【0029】
本発明はここでは、当該衣服を着用する歩行者またはランナーに言及しているが、当然ながら、スキーヤーまたはサイクリストのようなある特定の速度または速力を有するスポーツを行うアスリート全てに対しても適用可能でありかつ特許請求される。
【0030】
図面において、本発明の一実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】ランニング用上着であるスポーツ用衣服の正面図である。
【
図2】本発明によるスポーツ用衣服の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1において、ランナーの上着である衣服1は、2つの(長い)腕袖9および10を有するように示されている。衣服1の内側には、携帯電話5が挿入される受け室6(
図2を参照)が配置される。光ファイバーである発光素子3(または2つの別々の発光素子3)は、衣服1の袖領域において延在するように衣服1に配置される。
【0033】
図2において、配置の詳細が概略的に示される。衣服1における受け室6は、スマートフォン5が挿入されるように示される。スマートフォン5は、当技術分野で既知のように、GPSモジュール4を有し、すなわち、スマートフォン5の着用者の厳密な位置が検出可能である。GPSモジュール4は、速度計2と接続される(速度計2は、図示されるようにスマートフォン5の一部とすることができる、または制御要素7の一部とすることができる、以下を参照)。速度計2は、GPSモジュール4によってスマートフォン5の場所の変更を永続的に受信し、かつ内部クロックによって実際の速度を算出できる(v=Δs/Δtであり、Δsはmにおける場所の差であり、Δtは場所の差が生じた間に経過したsにおける時間差である)。
【0034】
スマートフォン5は、(本発明の場合ではブルートゥース(登録商標)接続である)制御手段8によって、衣服1に装備される制御要素7と通信できる。
【0035】
歩行者またはランナーに対する実際の速度v、または実際の速度と設定された所定の速度との実際の差(スマートフォン5または制御要素7において算出可能である)を表示するために、信号は、制御手段8を介して制御要素7に通信される。制御要素7は、制御要素7によって切り換え可能であるまたは影響され得る発光ダイオード(LED)11を有する。LED11は発光素子3と接続される。LED11は具体的には、LEDの制御信号に従って種々の色の光を放出するように設計される。
【0036】
その結果として、歩行者またはランナーの実際の速度vに従って、光信号は、発光素子3を介して歩行者またはランナーに出力可能である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態として、発光素子3は、衣服1の袖9、10に組み込まれるまたは定着させるグラスファイバー/光ファイバーとして設計される。
【0038】
述べたように、制御要素7は、発光ダイオード11の色に影響するように設計可能である。よって、色または色変化である信号は、ユーザの実際の速度v、または実際の速度と設定速度値との間の速度差と相関するシステムのユーザに与えられ得る。
【符号の説明】
【0039】
1 衣服
2 速度計
3 発光素子
4 GPSモジュール
5 携帯電話/スマートフォン
6 受け室
7 制御要素
8 接続手段
9 腕袖
10 腕袖
11 発光ダイオード
v 実際のランニング/歩行速度
v0 基準速度
Δv 速度差(v-v0)