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特許7295028サンプルを調製するためのガラス化デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】サンプルを調製するためのガラス化デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230613BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20230613BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N1/04
C12Q1/02
C12N5/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019557379
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018028672
(87)【国際公開番号】W WO2018195496
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】62/488,655
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516008497
【氏名又は名称】フジフイルム アーバイン サイエンティフィック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】リン、 サブリナ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ニー、 シャオ-ツー
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/098825(WO,A1)
【文献】国際公開第02/055673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートを有する入力部と、
サンプル室と、
前記サンプル室と流体連通する廃棄容器と、
前記サンプル室内に生物試料であるサンプルを保持しながら、前記入力ポートを通って導入される流体が前記サンプル室から前記廃棄容器内へと選択的に通過することを可能にするフィルタ機構と
前記入力ポートを閉じるために前記入力部に可逆的に結合することが可能なキャップと
を備え、
前記サンプル室、廃棄容器及びフィルタ機構は、前記サンプル室から前記フィルタ機構を通って前記廃棄容器へと毛細管現象によって流体を引き込むように構成される、ガラス化デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの観察窓をさらに備え、前記観察窓は、前記サンプル室内のサンプルが前記観察窓を通して観察可能であるように構成される、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項3】
前記キャップは、前記キャップが前記入力部に結合されるときに前記ガラス化デバイス内の流体の流れを妨げるように前記入力ポートを密封するように構成される、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項4】
前記フィルタ機構は、毛細管現象を促進するために複数のマイクロ流体チャネルを形成するようにサイズが決められかつ構成される複数の細孔を有するフィルタを備える、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項5】
前記サンプル室は、液体窒素に耐性のある材料を備える、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項6】
前記サンプル室は、熱伝導性材料を備える、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項7】
前記サンプル室は、アクリル系材料、ポリプロピレン系材料、ポリカーボネート系材料、及びコポリエステル系材料の少なくとも1つから形成される、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項8】
前記サンプル室は、0.002インチ以下の厚みの壁有する、請求項1に記載のガラス化デバイス。
【請求項9】
サンプル室内でガラス化するためのサンプルを調製するための方法であって、
フィルタ機構に隣接するサンプル室内へ生物試料であるサンプルを送達するステップと、
前記フィルタ機構が前記サンプル室内に前記サンプルを保持しながら、前記サンプル室を通して廃棄容器内へと流体力によって第1の流体を押し込むことによって前記第1の流体で前記サンプルを処理するステップと、
キャップを結合することにより前記サンプル室内に流体を流すための入力ポートを密封するステップと
を含み、
前記廃棄容器内へと前記第1の流体を押し込むことによって毛細管現象が開始され、後続の流体が前記サンプル室を通して前記廃棄容器内へと引き込まれる、方法。
【請求項10】
前記フィルタ機構が前記サンプル室内に前記サンプルを保持しながら、前記サンプル室を通して前記廃棄容器内へと毛細管現象によって第2の流体を引き込むことによって前記第2の流体で前記サンプルを処理するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプル室における観察窓を通して前記サンプル室内の前記サンプルを観察するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプル室内の前記サンプルをガラス化するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは、前記サンプル室を液体窒素と接触させることによりガラス化される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル室を温溶液と接触させることにより前記サンプルを解凍するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、サンプルを調製するためのガラス化デバイス及び方法に関する。
【0002】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2017年4月21日に提出された米国仮出願第62/488,655号への米国特許法第119条(e)の定めによる利益及び優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ヒト卵母細胞凍結保存(卵子凍結保存)とは、女性の生殖能力を保存するために使用される技術の1つである。女性の卵母細胞が摘出され、凍結され、かつ保存される。将来的に、卵子は解凍され、受精され、かつ胚として子宮に移植される。代替的に、受精した胚が凍結及び保存されて、後に解凍されて女性の子宮に移植されてもよい。
【0004】
ガラス化とは、例えば、液体窒素を使用して生物標本を数秒以内に凍結する高速凍結過程である。卵母細胞又は胚のガラス化は、卵母細胞及び胚の生殖能力及び生存能力の保存に関して、緩慢凍結法によって得られるものよりもはるかに優れた結果をもたらすことが示されている。
【0005】
ガラス化によって保存される生物試料は、典型的には、小さなサイズを有しており、非常に繊細で、マイクロピペット法による移植中等の人間の操作中に活性消失及び損傷を受けやすい。従来、サンプルは、保持されるガラス化ツールに移植されて液体窒素に露出される前に、様々な薬剤及び溶液を使用してガラス化のために事前処理及び調製される。同様に、解凍するために、凍結されたサンプルは、様々な温薬剤又は温溶液によって処理される。各操作ステップは、マイクロピペットを使用して卵母細胞又は胚等の試料をある溶液から別の溶液に移すことを含む。すなわち、従来の過程及びツールはサンプル損傷の実質的なリスクを抱えており、このような操作に関連付けられる様々な人為的エラーを回避することができない。
【0006】
したがって、この分野では、サンプル損傷及び人為的エラーのリスクを実質的に減らすことができる生物試料のガラス化のための新たなガラス化デバイス及びそれに関連する過程が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、ガラス化デバイスに関する。いくつかの実施形態では、デバイスは、入力ポートを有する入力部と、サンプル室と、前記サンプル室と流体連通する廃棄容器と、前記サンプル室内にサンプルを保持しながら、前記入力ポートから導入される流体を前記サンプル室から前記廃棄容器へと選択的に通過させるフィルタ機構とを備える。いくつかの実施形態では、前記サンプル室、廃棄容器及びフィルタ機構は、前記サンプル室から前記フィルタ機構を通って前記廃棄容器へと毛細管現象によって流体を引き込むように構成される。
【0008】
前記ガラス化デバイスは、少なくとも1つの観察窓をさらに備え、前記観察窓は、前記サンプル室内のサンプルが前記観察窓を通して観察可能であるように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記ガラス化デバイスは、前記入力ポートを閉じるために前記入力部に可逆的に結合することが可能なキャップをさらに備える。いくつかの実施形態では、前記キャップは、前記キャップが前記入力部に結合されるときに前記ガラス化デバイス内の流体の流れを妨げるように前記入力ポートを密封するように構成される。いくつかの実施形態では、前記フィルタ機構は、毛細管現象を促進するために複数のマイクロ流体チャネルを形成するようにサイズが決められかつ構成される複数の細孔を有するフィルタを備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記サンプル室は、液体窒素に耐性のある材料を備える。いくつかの実施形態では、前記サンプル室は、熱伝導性材料を備える。いくつかの実施形態では、前記サンプル室は、アクリル系材料、ポリプロピレン系材料、ポリカーボネート系材料、及びコポリエステル系材料の少なくとも1つから形成される。いくつかの実施形態では、前記サンプル室は、0.002インチ以下の厚みの壁の有する。
【0011】
本開示の別の態様は、サンプルを調製する方法に関する。いくつかの実施形態では、前記方法は、フィルタ機構に隣接するサンプル室内へサンプルを送達するステップと、前記フィルタ機構が前記サンプル室内に前記サンプルを保持しながら、前記サンプル室を通して廃棄容器内へと流体力によって第1の流体を押し込むことによって前記第1の流体で前記サンプルを処理するステップを含む。前記廃棄容器内へと前記第1の流体を押し込むことによって毛細管現象が開始され、後続の流体が前記サンプル室を通して前記廃棄容器内へと引き込まれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記フィルタ機構が前記サンプル室内に前記サンプルを保持しながら、前記サンプル室を通して前記廃棄容器内へと毛細管現象によって第2の流体を引き込むことによって前記第2の流体で前記サンプルを処理するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記サンプル室における観察窓を通して前記サンプル室内の前記サンプルを観察するステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記方法は、キャップを結合することにより前記サンプル室内に流体を流すための入力ポートを密封するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記サンプル室内の前記サンプルをガラス化するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記サンプルは、前記サンプル室を液体窒素と接触させることによりガラス化される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記サンプル室を温溶液と接触させることにより前記サンプルを解凍するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの一部の斜視図である。
【0016】
図2A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスのキャップの斜視図である。
【0017】
図2B】本開示のいくつかの実施形態による図2Aのキャップの断面図である。
【0018】
図2C】本開示のいくつかの実施形態による図2Aのキャップの正面図である。
【0019】
図3】本開示のいくつかの実施形態によるキャップによって覆われたガラス化デバイスの入力部の斜視図である。
【0020】
図4A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの前部の斜視図である。
【0021】
図4B】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの前部の上面図である。
【0022】
図5A】キャップがデバイスの入力部に結合されている本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの一部の縦断面図である。
【0023】
図5B】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの入力部の断面図である。
【0024】
図5C】本開示のいくつかの実施形態による図5Bのキャップ部の正面図である。
【0025】
図6A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの入力部の一部の斜視図である。
【0026】
図6B】本開示のいくつかの実施形態による濾過格子の一部の側面図である。
【0027】
図7図7A-7Cは、本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの入力部の様々な実施形態の部分図である。
【0028】
図8図8A-8Bは、本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの入力部の様々な実施形態の上面図である。
【0029】
図9A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの一部の上面図である。
【0030】
図9B図9Aの線A-Aに沿って取られたガラス化デバイスの断面図である。
【0031】
図9C】本開示のいくつかの実施形態による図9Bに示されたエリアDの拡大図である。
【0032】
図10A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの入力部の一部の斜視図である。
【0033】
図10B】本開示のいくつかの実施形態による図10Aのガラス化デバイスの断面図である。
【0034】
図10C】本開示のいくつかの実施形態による図10Aのガラス化デバイスの正面図である。
【0035】
図11A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスを使用して胚試料を凍結するための例示的な手順を示す。
【0036】
図11B】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスを使用して胚試料を解凍するための例示的な手順を示す。
【0037】
図12図12A-12Bは、本開示によるガラス化デバイスの複数のユニットを積み重ねるための例示的な実施形態を示す。
【0038】
図13A】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの斜視図である。
【0039】
図13B】本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの入力部の斜視図である。
【0040】
図14A】入力部にキャップを備えた本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの上面図である。
【0041】
図14B】キャップが取り除かれている本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの上面図である。
【0042】
図14C図14Bの線A-Aに沿った断面図である。
【0043】
図14D】本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの断面図である。
【0044】
図15A】本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの部分断面図である。
【0045】
図15B】本開示のいくつかの実施形態による図13Aのガラス化デバイスの部分断面図である。
【0046】
図16】本開示のいくつかの実施形態によるガラス化デバイスの上面斜視図である。
【0047】
図17】本開示のいくつかの実施形態による図16のガラス化デバイスの断面図である。
【0048】
図18】本開示のいくつかの実施形態による図16のガラス化デバイスの入力部の斜視図である。
【0049】
図19】本開示のいくつかの実施形態による図18に示された入力部の一部の断面図である。
【0050】
図20】本開示のいくつかの実施形態による図16のガラス化デバイスの一部の断面図である。
【0051】
図21】本開示のいくつかの実施形態による図16のガラス化デバイスの一部の断面図である。
【0052】
図22図22A-22Dは、本開示のいくつかの実施形態による図16のガラス化デバイスの入力部の代替的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書では、例えば、液体窒素を使用してサンプルを急速凍結するためのデバイス及び方法が提供される。好ましい所定の実施形態では、毛細管現象によって生成される力等の低圧力を使用して、デバイスにおける(複数の)サンプルに損傷を与えることなくデバイスを通して流体を押し込む又は引き込むことができる。
【0054】
図1を参照すると、本開示の一実施形態によるガラス化デバイス101の斜視図が示されている。ガラス化デバイス101は、伸長形状及び2つの端部を備える。一方の端部において、デバイス101は、取り外し可能なキャップ103に可逆的に結合される入力部(図示せず)を備える。他方の端部において、デバイス101は、ハンドル102を備える。キャップ103は、入力部に結合され、キャップ103の長手軸の周囲を回転可能である。ガラス化デバイス101は、閉鎖構成及び少なくとも1つの開放構成を有する。いくつかの実施形態では、閉鎖構成と開放構成との切り替えは、キャップ103を回転させることにより実現される。いくつかの実施形態では、キャップ103と入力部との結合は可逆的であってもよく、キャップ103は、ユーザの必要に応じて入力部から取り外すことができる。
【0055】
図2Aは、キャップ103の斜視図を示す。キャップ103は、開放端103a及び閉鎖端103bを有する。いくつかの実施形態では、キャップ103は、少なくとも1つの入力ポート104及び少なくとも1つの観察窓105を備える。いくつかの実施形態では、キャップ103は、1つ以上の開口(図示せず)をさらに備える。いくつかの実施形態では、閉鎖端103bには、キャップ103の保持及び回転を容易にするためのグリップ106が形成される。
【0056】
図2Bは、本開示の1つの例示的な実施形態によるキャップ103を示す。キャップ103は、複数の凹所及び/又は開口を備えた略中空シリンダの形状となる。キャップ103は、開放端103a及び閉鎖端103bを有する。図2Bは、閉鎖端103bから取ったキャップ103の正面図である図2Cの線A-Aに沿ったキャップ103の断面を示す。この図に示されているように、キャップ103は、開放端103a、閉鎖端103b及び空洞103cを有する。キャップ103の外側と空洞103cを接続する少なくとも1つの入力ポート104がある。この例示的な実施形態では、入力ポート104は、キャップ103の壁面にある凹所104aと、キャップ103の長手軸と鋭角を成す入力チャネル104bとを備える。それにより入力ポート104から送達された溶液等の流動剤が、空洞103c内に設けられるサンプルエリアに直接的に流れる。いくつかの実施形態では、キャップ103の長手軸と入力チャネル104bとの角度は、約20°から約70°の範囲内である。いくつかの実施形態では、この角度は、20°、30°、40°、50°、60°又は70°である。
【0057】
いくつかの実施形態では、キャップ103は、壁面に少なくとも1つの観察窓105も備える。いくつかの実施形態では、デバイスのユーザが空洞103c内に位置するサンプルの状態を調べるために容易に中を見ることができるように、観察窓105は透明材料から作られる。様々な実施形態において、観察窓105は、キャップ103の残りの部分と比較して同じ又は異なる材料から作られてもよい。いくつかの実施形態では、観察窓105のエリアの厚みが壁の平均的な厚みよりも小さくなるように、観察窓105は壁面において凹所を形成してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、キャップ103は、1つ以上の開口をさらに備える。図2Bに示された例示的な実施形態では、キャップ103は、外側と空洞103cを接続する2つの開口107、108を有する。いくつかの実施形態では、キャップ103が液体窒素と接触している場合、液体窒素は、開口から空洞103cに流れ込んで、そこに位置しているサンプルの近傍に入る。いくつかの実施形態では、キャップ103におけるこのような開口の数は2つに限定されない。様々な実施形態では、キャップ103は、1つ、2つ又は3つ以上の開口を有してもよい。いくつかの実施形態では、キャップ103において複数の開口を有することは、液体窒素が一方の開口から入りながら、空洞103cに閉じ込められた空気が他方の開口から逃れることができるので、液体窒素がサンプルエリアの近傍に速く流れること、すなわちサンプルの高速ガラス化を可能にすると考えられる。
【0059】
図2Bに示された例示的な実施形態では、2つの矢印Bの間の距離によって測定されるグリップ106の厚みは、約0.06インチから約0.12インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、グリップ106の厚みは、0.114インチである。
【0060】
いくつかの実施形態では、2つの矢印Dの間の距離によって測定される空洞103cの直径は、約0.06インチから約0.13インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、直径は0.126インチである。いくつかの実施形態では、空洞103cは、ガラス化デバイスのテーパ状入力部を収容するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、入力部は約1°の抜き勾配を有し、キャップ103は空洞103c内に一致する1°の抜き勾配を有する。キャップ103が入力部に結合されると、テーパ形状によって、2つの部分を係合する及び/又は密封するのを支援する楔力がもたらされる。様々な実施形態では、入力部及びキャップ103は、1°から5°の範囲内で一致する抜き勾配を有してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、距離Eによって測定されるキャップ103の長さは、約0.3インチから約0.7インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、キャップ103の長さは、0.64インチである。
【0062】
図3は、ガラス化デバイス101の前部の斜視図を示しており、これはデバイスの入力部110とキャップ103との結合を示している。この図には、特に、ガラス化デバイス101の第1の開放構成が示されている。入力ポート104がサンプル室111と流体連通しかつ観察窓105がサンプル室111の上になるように、キャップ103は入力部110に対して配置される。いくつかの実施形態では、入力部110は、廃棄物を保管しかつ処分するための廃棄容器112a及び廃棄チャネル113をさらに備える。
【0063】
第1の開放構成を用いて、ユーザは、観察窓105を介してサンプル室111内の内容物及び/又は活動を監視しながら、入力ポート104からサンプル室111内に、サンプル又はサンプルを調製若しくは処理するための溶液等の流動剤を送達してもよい。廃棄容器112aは、サンプル室111と流体連通している。次に、廃棄物は、廃棄容器112aの中に集められて、廃棄チャネル113から処分される。様々な実施形態において、サンプル室111は、廃棄容器112に到達するように廃棄物を通過させながら、サンプルを保管するための異なる機構を備えてもよい。
【0064】
図4A及び4Bは、第2の開放構成にあるガラス化デバイス101の斜視図及び上面図をそれぞれ示す。この構成では、キャップ103における1つ以上の開口107、108がサンプル室111の上になるように、キャップ103は入力部110に対して配置される。すなわち、この構成を用いて、ユーザは、少なくとも1つの開口107、108を通してサンプル室111からサンプルを操作及び/又は取得し得る。様々な実施形態において、キャップ103における開口107、108の寸法は、同じであるか又は異なってもよい。理論に制限されることなく、少なくとも1つの開口107がそこからサンプルを操作及び取得することを容易にすることができる十分な大きさを有すると考えられる。選択的に、(複数の)開口を通る液体窒素の流れがサイズによって妨げられない限り、(複数の)他の開口108はより小さくてもよい。
【0065】
図5Aは、図3の第1の開放構成で示されたガラス化デバイス101の断面図を示す。図5Aの断面図で示されるように、入力部110は、廃棄容器112a/112bと流体連通しているサンプル室111を備える。いくつかの実施形態では、廃棄容器112bは、デバイスのハンドル102内に延びる。図5Aに示されているように、サンプル室111は入力部110に設けられ、入力部の廃棄容器112aは廃棄チャネル113を通ってハンドル102の内側に設けられた廃棄容器112bに接続される。いくつかの実施形態では、デバイスは、流体廃棄物をハンドル102内の廃棄容器112bの中に処分する。いくつかの実施形態では、デバイスは、廃棄物が廃棄容器112a/112bからサンプル室111に戻ることを防ぐ逆止め弁等の機構をさらに備える。いくつかの実施形態では、デバイスは、流体が廃棄容器112bに入ると閉じ込められた空気が放出されることを可能にし、かつ液体窒素が廃棄容器112bに入ることを防ぐフィルタ等の機構をハンドル102内にさらに備える。
【0066】
いくつかの実施形態では、入力部110は、サンプル室111に近接する少なくとも1つの凹所114をさらに備える。図5Aに示された例示的な実施形態では、特に、凹所114は、薄い壁150よってサンプル室111から分けられている。いくつかの実施形態では、キャップ103は、少なくとも1つの開口107、108をさらに備える。閉鎖構成においてキャップは入力部に結合されている場合、液体窒素が開口を通って凹所に流れ込むことができるように、開口107、108と凹所114との間は流体連通している。いくつかの実施形態では、デバイスは、閉鎖構成において液体窒素に浸されるように構成される。すなわち、キャップ上の開口によって、液体窒素が入力部110の凹所114に流れ込むことが可能になり、それによりそこに保持されたサンプルを高速で凍結するためにサンプル室111の近傍に入ることができる。いくつかの実施形態では、キャップ103は少なくとも2つの開口107、108を備え、これらによって、液体窒素が一方の開口から入って凹所に閉じ込められた空気が他方の開口から逃れるので、液体窒素はより簡単に凹所114に流れ込むことが可能になる。
【0067】
いくつかの実施形態では、その縦軸に沿った異なる位置において入力部110の寸法は同じであるか又は異なってもよい。特に、いくつかの実施形態では、入力部110はテーパ状である。いくつかの実施形態では、キャップ103の内部空間も、入力部110の形状に適合するようにテーパ状である。テーパ形状は、キャップ103と係合して入力部110を密封するのを支援する楔力をもたらす。いくつかの実施形態では、入力部110及びキャップ103は、1°から5°の範囲内で一致する抜き勾配を有する。
【0068】
図5Bは、入力部110の正面図である図5Cの線A-Aに沿った入力部110の断面を示す。図示のように、この例示的な実施形態では、入力部110の寸法は、それがハンドル102と接続される場所(入力部110の基部)から入力部110の他方端(入力部110の前端)に向かって徐々に小さくなる。特に、2つの矢印Dの間の距離で測定される基部の寸法は、約0.1インチから約0.2インチの範囲に入っている。1つの例示的な実施形態では、入力部110の基部における寸法は、0.127インチである。2つの矢印Bの間の距離で測定される入力部の前端の寸法は、約0.1インチから約0.2インチの範囲に入っている。1つの例示的な実施形態では、前端における寸法は、約0.116インチである。
【0069】
いくつかの実施形態では、2つの矢印Eの間の距離で測定される入力部110の長さは、約0.1インチから約0.4インチの範囲に入っている。1つの例示的な実施形態では、入力部110の長さは、約0.351インチである。いくつかの実施形態では、図5Bにおける距離Fで測定されるハンドル102及び入力部110を含むデバイスの長さは、約0.5インチから約3インチの範囲に入っている。
【0070】
図6A及び6Bは、ガラス化デバイスの入力部の例示的な一実施形態を示している。特に、図6Aは、入力部110の部分構造の斜視図を示している。ハンドル102の一部、廃棄容器112a及び廃棄チャネル113の開口が示されており、これらは入力部110上に設けられている。また、サンプル室111と廃棄容器112aとを分離するブロック115も入力部110上に設けられている。いくつかの実施形態では、キャップ(図示せず)が入力部110に結合されているとき、ブロック115の上端がキャップの内壁と係合する。いくつかの実施形態では、図6Aに示されているように、キャップ(図示せず)が入力部110に結合されているとき、ブロック115の上端は、サンプル室111と廃棄容器112との流体連通を維持する濾過格子151等のフィルタ機構を備える。
【0071】
図6Bは、図6Aに示された濾過格子151の部分構造を示す拡大図である。また、デバイスのハンドル102及び入力部110の部分構造も示されている。この実施形態では、濾過格子151は、交互に並んだ複数の低部151a及び高部151bを備える。すなわち、入力部110がキャップ(図示せず)と係合しているとき、高部151bの上端がキャップの内壁と係合して、廃棄容器112aとサンプル室111とを流体連通するように接続するチャネルを低部151aに形成する。
【0072】
いくつかの実施形態では、キャップが付いているとき、マイクロピペット等の流体送達デバイスがチャネルを通して廃棄流体を廃棄容器に押し込むために使用される一方で、サンプルエリアにおいて卵母細胞又は胚等のサンプルは保持され得る。すなわち、いくつかの実施形態では、濾過格子151の寸法は、ガラス化デバイスと共に使用されるサンプルのタイプに依存する。いくつかの実施形態では、寸法は、チャネルが廃棄物を通過させるがサンプルを保持するように選択される。例えば、サンプルがヒト卵母細胞又は胚である実施形態では、各チャネルの寸法(チャネルの形状に依存する直径、幅又は長さ等)は、0.0005から0.0015インチの範囲に入っている。
【0073】
さらに、理論によって制約されることを意図せずに、チャネルの寸法はサンプル室に位置しているサンプルに対する液体圧にも影響を及ぼすと考えられる。チャネルの数は重要ではなく、デバイスは1つ又は複数のチャネルで動作する。いくつかの実施形態では、複数チャネル設計が背圧を減少させることを支援して、これがサンプルエリアにおけるサンプルに対するより少ない応力及び迅速な流体充填を可能にすると考えられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、濾過格子151は、サンプル室と廃棄容器とを接続する単一のチャネルを形成し、流路面積(チャネルの縦軸に垂直な断面積として定義される)は、約7×10-7平方インチから1.5×10-6平方インチの範囲に入っている。他の実施形態では、濾過格子151は、サンプル室と廃棄容器とを接続する複数のチャネルを形成し、全てのチャネルを結合した合計流路面積は、約7×10-7平方インチから1.5×10-6平方インチの範囲に入っている。
【0075】
ここで理解されるように、いくつかの実施形態では、濾過格子151は、サンプル室111に保持された特定のサンプルから流体廃棄物を分離することを容易にする。いくつかの実施形態では、濾過格子151は、サンプル室から廃棄物を除去することを容易にする。特に、いくつかの実施形態では、流体廃棄物が濾過格子151によって形成されたチャネルを通って廃棄容器112aに流れ込む一方で、チャネルの直径よりも大きな粒子サイズを有するサンプルはサンプル室111内に保持される。本願のデバイス内の流体の流れは、様々な機構によって駆動され得る。例えば、いくつかの実施形態では、キャップが入力部と係合している場合、マイクロピペット等の流体送達デバイスは、入力ポートを介してサンプル室に液体圧を伝達して、廃棄容器に向かって流体を押し込むことができる。代替的な実施形態では、吸引機構によって、流体の流れを廃棄容器に向かって引き込んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、濾過格子151によって形成されるマイクロ流体チャネルは、廃棄容器に向かって液体廃棄物を引き込むことを容易にする毛細管吸い上げ力を提供するように構成される。ピペット等を使用することによる流体力で第1の溶液が入力ポート104を通って導入されると毛細管現象が開始される。流体は、サンプル室111から濾過格子151を通って廃棄容器112に押し込まれる。デバイス全体を通る特定サイズのマイクロ流体チャネルと組み合わせて、廃棄容器112内の流体の存在は、毛細管現象を用いてデバイス101を通して後続の流体を引き込むのに十分に強い力を生成する。
【0076】
図7A-7Cは、ガラス化デバイスの追加の例示的な実施形態を示す。特に、図7Aは、入力部710の部分構造の斜視図である。この実施形態では、島部719がサンプル室711と廃棄容器712とを分離している。島部719の両側におけるバイパスチャネル718によって、サンプル室711と廃棄容器とが流体連通するように接続されている。いくつかの実施形態では、島部719は、その中にサンプルを捕捉して保持するように構成される捕捉ポケット716をさらに備える。捕捉ポケット716は、サンプル室711に向かう開放端、及び廃棄容器712に向かう閉鎖端を有する。図示されているように、いくつかの実施形態では、捕捉ポケット716は、「U字」形状になっている。
【0077】
いくつかの実施形態では、島部719の上端は、複数の濾過チャネル717等のフィルタ機構をさらに備え、これは一方端が捕捉ポケット716と接続され、他方端が廃棄容器712と接続される。キャップ(図示せず)が入力部710と結合されているとき、島部719の上面はキャップの内壁と係合し、濾過チャネル717は、捕捉ポケット716と廃棄容器712とを流体連通するように接続する。
【0078】
本開示によれば、濾過チャネル及びバイパスチャネルの寸法が変更されてもよい。図7Bは、バイパスチャネル718が底部に沿って部分的に埋められて、それによってチャネル718をより小さな寸法に制限する例示的な実施形態を示している。理論によって制約されることを意図せずに、バイパスチャネル718及び濾過チャネル717の寸法は、捕捉ポケット716に位置するサンプル上の流体の流量と共にサンプルに対する液体圧に影響を及ぼすと考えられる。バイパスチャネル718又は濾過チャネル717の数を定義することは重要ではない。本願のデバイスは、少なくとも1つのバイパスチャネル718及び少なくとも1つの濾過チャネル717によって動作することができる。本明細書で用いられる場合、チャネルの流路面積は、チャネルの縦軸に垂直な断面積として定義される。いくつかの実施形態では、(複数の)バイパスチャネルの合計流路面積は、約5×10-6平方インチから約2×10-5平方インチの範囲に入っている。いくつかの実施形態では、(複数の)濾過チャネルの合計流路面積は、約7×10-7平方インチから約1.5×10-6平方インチの範囲に入っている。
【0079】
いくつかの実施形態では、バイパスチャネルの合計流路面積と濾過チャネルの合計流路面積との比率は、捕捉ポケットにおけるサンプルに対する最適な流れ及び液体圧を達成するように選択される。バイパス対濾過の高い比率は、より多くの流体がバイパスチャネルを流れる(すなわち、捕捉ポケットをバイパスする)ように駆動し、そのため捕捉ポケットにおけるサンプルはより少ない流体処置を受けると考えられる。より低い比率は、より多くの流体が捕捉ポケット及び濾過チャネルを流れるように駆動し、それによりサンプルに対するより高い液体圧をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、バイパス対濾過の比率は、約6:1から約4:1の範囲に入っている。特に、いくつかの実施形態では、バイパス対濾過の比率は、約5:1である。
【0080】
いくつかの実施形態では、濾過チャネルの寸法は、ガラス化デバイスと共に使用されるサンプルのタイプにも基づいて選択される。特に、いくつかの実施形態では、濾過チャネルの寸法は、それが廃棄物を通過させるがサンプルを捕捉ポケット内に保持するように選択される。例えば、サンプルがヒト卵母細胞又は胚である実施形態では、各濾過チャネルの直径は、0.0005から0.0015インチの範囲に入っている。
【0081】
本開示によれば、捕捉ポケットのサイズは変更されてもよい。例えば、図7Cは、図7Aに示された実施形態と比較して捕捉ポケット916の長さが増している例示的な実施形態を示している。他の実施形態では、捕捉ポケット716の厚み及び/又は幅が変更されてもよい。いくつかの実施形態では、捕捉ポケットの容積は、ヒト又は動物の数個の卵母細胞又は胚を保持するのに十分なものある。いくつかの実施形態では、入力部910におけるサンプル室711のサイズが変更されてもよい。例えば、図8A及び8Bは2つの例示的な実施形態を示しており、図8Aでは、図8Bと比較してサンプル室811を収容する入力部810の長さが長くなっている。
【0082】
図9A-9Cは、本開示によるガラス化デバイスの一実施形態の概略図である。図9Aは、ハンドル902、入力部910、及び入力部910に設けられる様々な構造であって、サンプル室911、廃棄容器912、廃棄チャネル913の開口及び島部919を含むものを示している。この実施形態では、島部919は、U字状捕捉ポケット916、及びU字状ポケットを廃棄容器912と接続する複数の濾過チャネル917等のフィルタ機構を有している。図9Bは、図9Aの線A-Aに沿った断面図を示している。この断面図には、ハンドル902、入力部910及び入力部910に設けられる様々な構造であって、凹所914、捕捉ポケット916及び複数の濾過チャネル917を含むものが示されている。図9Cは、図9Bに示されたエリアDの拡大図である。この図面から見られるものには、バイパスチャネル918がさらに含まれている。
【0083】
いくつかの実施形態では、図9Aの2つの矢印Dの間の距離によって測定されるU字状捕捉ポケット916の長さは、約0.02インチから約0.04インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、捕捉ポケット916の長さは、0.038インチである。
【0084】
いくつかの実施形態では、図9Aの2つの矢印Bの間の距離によって測定される捕捉ポケット916の幅は、約0.005インチから約0.02インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、捕捉ポケット916の幅は、0.015インチである。
【0085】
いくつかの実施形態では、図9Aの2つの矢印Cの間の距離によって測定される島部919の長さは、約0.03インチから約0.07インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、島部919の長さは、0.68インチである。
【0086】
いくつかの実施形態では、図9Cの2つの矢印Eの間の距離によって測定される捕捉ポケット916の深さは、約0.01インチから約0.03インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、捕捉ポケット916の深さは、0.021インチである。
【0087】
いくつかの実施形態では、図9Cの2つの矢印Fの間の距離によって測定されるバイパスチャネル918の深さは、約0.001インチから約0.005インチまでの範囲を取る。1つの例示的な実施形態では、バイパスチャネル918の深さは、0.005インチである。
【0088】
いくつかの実施形態では、ガラス化デバイスが第1の開放構成にある場合、キャップの入力ポートは、入力ポートの少なくとも一端が捕捉ポケットにごく接近するように入力部に対して配置される。すなわち、ユーザは、例えば、マイクロピペットを使用して、入力ポートを介して捕捉ポケット内に容易にサンプルを送達することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、濾過格子717、917は、捕捉ポケット716、916に保持された特定のサンプルから流体廃棄物を分離することを容易にする。特に、いくつかの実施形態では、流体廃棄物が濾過格子717、917を通って廃棄容器712、912に流れ込む一方で、チャネルの直径よりも大きな粒子サイズを有するサンプルは捕捉ポケット716、916内に保持される。流体廃棄物の流れは、様々な機構によって駆動され得る。例えば、いくつかの実施形態では、キャップが入力部と係合している場合、マイクロピペット等の流体送達デバイスは、入力ポートを介してサンプル室に液体圧を伝達して、廃棄容器に向かって流体の流れを押し込むことができる。代替的な実施形態では、吸引機構によって、流体の流れを廃棄容器に向かって引き込んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルが、廃棄容器に向かって液体廃棄物を引き込むことを容易にする毛細管吸い上げ力を提供するように構成される。ピペット等を使用することによって、第1の溶液が流体力でサンプル室711、911に導入されると毛細管現象が開始される。流体は、サンプル室711、911から濾過格子717、917を通って廃棄容器712、912及び廃棄チャネル713、913に押し込まれる。デバイス全体を通る特定サイズのマイクロ流体チャネルと組み合わせて、廃棄チャネル713、913内の流体の存在は、毛細管現象を用いてデバイス701、901を通して後続の流体を引き込むのに十分に強い力を生成する。
【0090】
図10A-10Cは、本開示によるガラス化デバイスのさらなる実施形態を示す。特に、図10Aは、デバイスの部分構造の斜視図であり、これはハンドル1002及び入力部1010を示している。入力部1010は、サンプル室1011、フィルタ1021を含むフィルタ機構、及びサンプル室1011とフィルタ1021との間に配置されるランプ1020を備える。図10Bは、入力部1010及びハンドル1002を示す図10Cの線A-Aに沿って取られた図10Aに示された実施形態の断面図である。図10Bには、ハンドル1002に設けられた廃棄容器1012に連結される廃棄チャネル1013を覆うフィルタ1021が示されている。
【0091】
いくつかの実施形態では、図10Bの2つの矢印Bの間の距離で測定されるフィルタ1021の厚みは、約0.01インチから約0.03インチの範囲に入っている。1つの例示的な実施形態では、フィルタ1021の厚みは、0.22インチである。
【0092】
ランプ1020は、フィルタ1021とサンプル室1011を接続する。図10Bは、上を向いたサンプル室1021と水平に配置されたガラス化デバイス(キャップなし)を示している。図示のように、ランプ1020は、サンプル室1011の表面に対する傾斜角を有し、サンプル室1011の一端から上向きに延びている。いくつかの実施形態では、廃棄物を収集するために、マイクロピペットを使用して、ランプ1020を通ってフィルタ1021に向かって流れるようにサンプル室1011内の流体を押し込む。流体廃棄物がフィルタ1021を通って廃棄容器1012に流れ込む一方で、より大きなサイズのサンプルが流れ込むことを防ぐ。すなわち、サンプルはサンプル室内に保持される。理論によって制約されることを意図せずに、重力がサンプルに作用して、それらをランプ1020の下に引っ張ってフィルタ1021から引き離すので、ランプ1020によって、卵母細胞又は胚等のサンプルのフィルタ1021への付着を防ぐことが支援されると考えられる。
【0093】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、ランプ1020によって少なくとも1つのマイクロ流体チャネルが形成され、それによってサンプル室1011からフィルタ1021に向かって液体廃棄物を移動させるための毛細管吸い上げ力が提供される。ピペット等を使用することによる流体力で第1の溶液がサンプル室1011に導入されると毛細管現象が開始される。流体は、サンプル室1011からランプに沿って廃棄容器1012へと押し込まれる。デバイス全体を通る特定サイズのマイクロ流体チャネルと組み合わせて、廃棄容器1012内の流体の存在は、毛細管現象を用いてデバイス1001を通して後続の流体を引き込むのに十分に強い力を生成する。代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、フィルタ1021はスポンジ又はフィルタ紙等の吸収材から作られるので、サンプル室1011からの液体廃棄物の除去を容易にする吸い上げ力も提供される。
【0094】
いくつかの実施形態では、フィルタ1021は、サンプルが通過することを防ぎながら、廃棄物を廃棄チャネル1013へと選択的に通過させる。例えば、いくつかの実施形態では、フィルタ1021は、廃棄物及びサンプルをそれらの各サイズに基づいて分離する機構を備える。いくつかの実施形態では、この機構は、液体成分を通過させるが、混合物の個体成分を保持する。いくつかの実施形態では、フィルタ1021は、卵母細胞又は胚等の個体サンプルの通過を阻止するのに十分に小さい細孔を有する。様々な実施形態では、細孔のサイズは、サンプルのタイプに依存して変化してもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ1021は、濾過材から作られる。本開示との関連で使用され得る適切な濾過材には、限定されないが、焼結ポリエチレンビーズ、ポリマーメッシュ、及び繊維紙が含まれる。いくつかの実施形態では、濾過材は、フィルタ1021に対するサンプルの粘着を妨げる。
【0095】
いくつかの実施形態では、ガラス化デバイスは、閉鎖構成(図示せず)をさらに有する。閉鎖構成では、キャップは、キャップ上の開口がサンプル室と流体連通せず、サンプル室がキャップの壁によって密封されるように入力部に対して配置される。いくつかの実施形態では、閉鎖構成では、キャップ上の1つ以上の凹所又は開口は、サンプル室にごく近接して配置される。いくつかの実施形態では、閉鎖構成では、キャップの1つ以上の開口は、入力部上の凹所と流体連通している。
【0096】
閉鎖構成におけるガラス化デバイスは、サンプル室の内容物を直接的に流体に晒すことなく流体に沈められてもよい。いくつかの実施形態では、ガラス化デバイスは、サンプル室に保持されたサンプルのガラス化のために少なくとも入力部及びキャップ部を液体窒素に浸からせるように構成される。いくつかの実施形態では、デバイスは、その中に保持されたサンプルを解凍するために温媒体に浸かるようにさらに構成される。こうした実施形態では、液体窒素又は温媒体は、キャップ上の開口等を通してサンプルに容易に接近することができるが、デバイスが閉鎖構成にあるときはサンプルに直接的に接触しない。いくつかの実施形態では、デバイスの少なくとも入力部及びキャップ部は、液体窒素に耐性がある材料から作られる。いくつかの実施形態では、サンプルの迅速なガラス化及び解凍を達成することができるように、材料は熱伝導性を有する。本開示との関連で使用され得る例示的な材料には、限定されないが、アクリル系材料、ポリプロピレン系材料、ポリカーボネート系材料、及びコポリエステル系材料が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、開放構成と閉鎖構成との切り替えは、その縦軸に沿ってキャップを、例えば、約10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、140°、150°、160°、170°、又は180°回転させることにより行われる。特に、図2Bに示された例示的な実施形態を再び参照すると、入力ポート104及び開口107、108は、キャップ103の反対側に設けられている。この実施形態では、第1の開放構成と閉鎖構成との切り替えは、その縦軸に沿って約90°キャップ103を回転させることにより行われてもよく、第1の開放構成と第2の開放構成との切り替えは、その縦軸に沿って約180°キャップ103を回転させることにより行われ得る。いくつかの実施形態では、キャップ103は、キャップの保持及び回転を容易にするグリップ106をさらに備える。
【0098】
図11A及び11Bは、本願のガラス化デバイスを使用して胚を凍結及び解凍するための例示的な手順を示している。図11Aに示されているように、凍結するには、デバイスは最初に第1の開放構成で配置される。キャップ上の入力ポートを通して培養基がサンプル室に送達され、その後で胚試料がサンプル室に送達される。次に、入力ポートを通して適切な平衡化溶液が追加され、胚は、廃棄物が収集される前の所定期間にわたり平衡化溶液で平衡化させられる。その後、入力ポートを通してガラス化溶液が追加され、胚は、廃棄物が収集される前の所定期間にわたりガラス化溶液で培養される。次に、キャップは閉鎖構成になるように回転させられて、デバイスの入力部は、胚のガラス化のために迅速に液体窒素タンクの中に入れられる。
【0099】
図11Bに示されているように、解凍するには、閉鎖構成で凍結されたデバイスが、迅速に37°Cの加温水槽に入れられて、所定期間にわたり培養される。次に、キャップが第1の開放構成になるように回転させられる。37°Cの解凍溶液が入力ポートを通してサンプル室に適用されて、胚を所定期間にわたり温めることができる。次に、室温の希釈溶液が追加されて、胚は、廃棄物が収集される前の所定期間にわたり希釈溶液で平衡化させられる。その後、サンプル室に室温の洗浄溶液が追加されて、胚は、廃棄物が収集される前の所定期間にわたり平衡化させられる。37°Cの培養基がサンプル室に追加される前に、洗浄ステップは必要に応じて反復されてもよい。次に、キャップは第2の開放構成になるように回転させられて、胚はキャップ上の開口を通して回収される。
【0100】
本デバイスを使用してサンプルを凍結及び/又は解凍するための手順は、調製されたサンプルの品質を損なわずにマイクロピペット操作の数を少なくとも4倍減らすことができると考えられる。さらに、組み込み廃棄物収集機構によって、各湿潤ステップで持ち越される溶液の量が減少し、ユーザごとに一貫性が向上する。すなわち、本デバイスの利点は、脆弱なサンプルのヒトによる操作に関連付けられる損傷の危険性を低下させることと共に、サンプル調製に関連付けられる人的エラーを減らすことにより、サンプル品質の一貫性を向上させることを含んでいる。
【0101】
上記の凍結及び解凍の手順は、単なる例示であって、本ガラス化デバイスの使用を記載された特定の例示に限定することを意図していない。例えば、本デバイスとの関連で使用され得るサンプルは、胚試料に限定されておらず、例えば、卵母細胞、体細胞及び他の適切なサンプルタイプも含んでいる。さらに、サンプルを処理するために使用される化学物質は、上記のものに限定されるのではなく、本デバイスは多用途であり、市販の異なるガラス化キットと共に使用され得ると考えられる。さらに、本デバイスは、凍結及び解凍と関わりなくサンプルの処理及び保存に使用されてもよい。当業者であれば、本開示の原理から逸脱することなくさらなる修正及び変形を構想することが可能であり、このように修正及び変形された実施形態も本願の範囲に含まれる。
【0102】
図12A及び図12Bは、本開示によるガラス化デバイスの複数のユニットが、例えば、利便性のある保管又は搬送のために互いに積み重ねられ得る例示的な実施形態を示している。図12Aは、ガラス化デバイス1201の各ユニットが一方端においてプラグ1202を他方端においてレセプタクルを有する例示的な実施形態を示している。あるユニットのプラグ1202が別のユニットのレセプタクル1203と係合し、それにより2つのユニットを互いに積み重ねることができる。図12Bは、ガラス化デバイス1201の各ユニットが両端において磁石1202、1203を有する別の例示的な実施形態を示している。磁石1202、1203は互いに係合し、それにより複数のユニットが互いに積み重なる。
【0103】
図13Aは、本開示によるガラス化デバイスの代替的な実施形態を示す。図示のように、ガラス化デバイス1301は、ハンドル部1302及び入力部1310を有する細長部材を含んでいる。入力部1310は、キャップ1303に可逆的に結合され得る。いくつかの実施形態では、入力部1310は、円筒形であり、キャップ1303内の円筒の空洞と係合し得る。いくつかの実施形態では、入力部1310は、ハンドル1302の近位端におけるより大きな寸法、ハンドル1302の遠位端におけるより小さな寸法を有するテーパ状である。いくつかの実施形態では、入力部1310は、約1°から約5°の抜き勾配でテーパ状になっている。いくつかの実施形態では、キャップ1303内の空洞も一致する抜き勾配でテーパ状になっており、それにより入力部1310及びキャップ1303のテーパ形状が2つの部分を互いに係合及び/又は密封するのを支援する楔力がもたらされる。いくつかの実施形態では、入力部1310は、キャップ1303が入力部1310に向かってさらに移動することを防ぐためのキャップストッパ1323をさらに備えており、それによりキャップ1303が観察窓1305又は凹所1314を覆ってしまうことを防ぐ。いくつかの実施形態では、キャップ1303は、キャップ1303の保持及び回転を容易にするためのグリップ1306をさらに備える。
【0104】
図13Bは、ガラス化デバイスの入力部1310の斜視図である。いくつかの実施形態では、入力部1310は、ハンドル1302内に含まれている廃棄容器(図示せず)と流体連通するサンプル室(図示せず)を含んでいる。入力ポート1304は、外側とサンプル室を接続する。入力部は観察窓1305をさらに備えており、サンプル室の少なくとも一部が観察窓1305を通して外側から可視であり得る。いくつかの実施形態では、入力部1310は、サンプル室にごく近接している1つ以上の凹所1314をさらに備える。いくつかの実施形態では、液体窒素と接触しているとき、凹所1314によって、その中に保持されたサンプルを良好にガラス化するために液体窒素がサンプル室にごく近接することが可能になる。いくつかの実施形態では、入力部1310は、入力ポート1304の開口に隣接する凹所1315をさらに備える。凹所1315によって、マイクロピペット等のサンプル送達ツールがより簡単に入力ポート1304の開口に接近することが可能になる。凹所1315は、キャップ1303が入力部1310上に押し込まれるときに、空気がサンプル室に入って気泡になることも防ぐ。
【0105】
図14A-14Dは、ハンドル1302、入力部1310及びキャップ1303を示すガラス化デバイス1301を示している。図14Aの上面図に示されているように、ハンドル部1302に遠位の入力部1310の部分がキャップ1303に挿入されている。いくつかの実施形態では、キャップストッパ1323は、キャップ1303が観察窓1305を遮るのを防ぐことを支援する。特に、いくつかの実施形態では、キャップストッパ1303は、観察窓1305よりもハンドル1302に対して遠位に設けられている。いくつかの実施形態では、キャップは、キャップ1303の保持及び取り扱いを容易にするためのグリップ1306をさらに備える。図14Bも、ガラス化デバイス1301の上面図を示している。この図では、キャップ1303が入力部1310から取り外され、入力ポート1304が露出している。
【0106】
図14Cは、図14Bの線A-Aに沿った断面を示している。図示のように、入力部1310は、入力ポート1304を介して外側と接続されているサンプル室1311を備える。サンプル室1311は、サンプルを置くことができる少なくとも1つの表面1321を備える。サンプル室1311内の活動及び/又は内容物を外側から見ることができるように、観察窓1305がサンプル室1311の上に置かれる。凹所1314は、サンプル室1311にごく近接している。この例示的な実施形態では、サンプル室1311及び凹所1314は、例えば、サンプル室1311内のサンプルと凹所1314内の液体窒素との間で高速熱伝導を可能にする薄い壁で分離されている。いくつかの実施形態では、入力部1310は、入力ポート1304の開口に隣接する凹所1315をさらに備える。
【0107】
サンプル室1311は、デバイスのハンドル1302の部分に延びる廃棄容器1312と流体連通している。フィルタ機構1320が、サンプル室1311と廃棄容器1312との間に配置されている。いくつかの実施形態では、フィルタ機構1320は、サンプル室1311内にサンプルを保持しながら、廃棄物を廃棄容器1312へと選択的に通過させる。いくつかの実施形態では、フィルタ機構1320は、廃棄物及びサンプルをそれらの各サイズに基づいて分離する。いくつかの実施形態では、フィルタ機構1320は、液体成分を通過させるが、混合物の個体成分を保持する。いくつかの実施形態では、フィルタ機構1320は、卵母細胞又は胚等の個体サンプルの通過を阻止するのに十分に小さい細孔を有する。様々な実施形態では、細孔のサイズは、サンプルのタイプに依存して変化してもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、フィルタ機構1320はメッシュである。いくつかの実施形態では、メッシュを通る穴は、吸い上げ力が毛細管現象によって流体を引き込むことを可能にするのに十分に小さな穴である。いくつかの実施形態では、使用中に、メッシュを通るように液体を押し込むための流体圧が最初にサンプル室1311に提供される。廃棄容器1312内の流体の存在は、毛細管現象を用いてデバイス1301を通して後続の流体を引き込むのに十分に強い力を生成する。さらに、メッシュを通って流れて穴を湿らせる液体は、流体圧がなくても液体及び/又は後続のさらなる液体をメッシュを通過させるように吸い上げ力を増大させてもよい。本開示によれば、フィルタ機構1320に適切な材料には、限定されないが、焼結ポリエチレンビーズ、ポリマーメッシュ、及び繊維紙が含まれる。いくつかの実施形態では、材料は、円滑面を有し、サンプルの粘着又は付着を防ぐ。
【0109】
図14Dは、デバイス全体の断面図を示している。キャップ1303は、入力部1310を収容するための内部の空洞1324を有する。いくつかの実施形態では、キャップ1303が入力部1310に結合されると、入力ポート1304は密封される。キャップ1303が入力部1310上に押し込まれると、凹所1315にエアポケットが形成される。すなわち、キャップ1303が入力部1310に結合されたときに、凹所1315は空気が入力ポート1304に押し込まれてサンプル室1311で気泡になることを防ぐ。いくつかの実施形態では、入力部1310は、キャップ1303が観察窓1305を遮るのを防ぐためのキャップストッパ1323をさらに備える。いくつかの実施形態では、デバイスは、廃棄物が廃棄容器1312からサンプル室1311に戻ることを防ぐ機構をさらに備える。いくつかの実施形態では、デバイスは、廃棄物が入ると廃棄容器1312内の空気を放出させて、液体窒素が廃棄容器1312に入ることを防ぐフィルタ1322等の機構をさらに備える。いくつかの実施形態では、フィルタ1322は、液体廃棄物が廃棄容器1312から漏出することも防ぐ。いくつかの実施形態では、フィルタ1322は、液体が通過することを防ぐのに十分に小さいが、空気を通過させるのに十分に大きい細孔サイズを有する。いくつかの実施形態では、フィルタ1322は、約20ミクロンの細孔サイズを有する。いくつかの実施形態では、フィルタ1322は、PTFE、ポリエチレン又はポリプロピレンから作られる。
【0110】
図15A及び15Bは、ガラス化デバイス1301の代替的な実施形態の斜視図を示す。デバイスの長手軸に沿った断面も示されている。特に、図15Aには、ハンドル1302(部分的に示す)及び入力部1310(部分的に示す)を含むガラス化デバイス1301の部分構造が示されている。入力部1310は、サンプル室1311を備える。入力ポート1304は、サンプル室を外側と接続する。入力部1310は、ハンドル1302内に延びる廃棄容器1312をさらに備える。この例示的な実施形態では、メッシュ等のフィルタ機構1320が、サンプル室1311と廃棄容器1312との間に配置されている。ユーザがサンプル室1311内の活動及び/又は内容物を観察窓1305を通して見ることができるように、観察窓1305がサンプル室1311の上に置かれる。入力部1310は、サンプル室1311に近接する少なくとも2つの凹所1314をさらに備える。液体窒素と接触すると、凹所1314によって、ガラス化効果を向上させるために液体窒素がサンプル室1311に近接することが可能になる。キャップ(図示せず)が入力部1310と係合すると、入力ポート1304は密封される。いくつかの実施形態では、入力部1310は、入力ポート1304の開口の付近に凹所1315をさらに備える。凹所1315によって、マイクロピペット等のサンプル送達ツールがより簡単に入力ポート1304の開口に接近することが可能になる。凹所1315は、キャップが入力部1310上に押し込まれるときに、空気がサンプル室1311に入って気泡になることも防ぐ。
【0111】
図15Aに示されているように、サンプル室1311は、サンプルが配置され得る少なくとも1つの表面1321を有する。サンプル受容面1321は、サンプルを表面1321に送達することを容易にするために入力ポート1304に対して所定の角度を成してもよい。いくつかの実施形態では、入力ポート1304とサンプル受容面1321との間の角度は、約20°から約70°の範囲内である。本開示によれば、サンプルを容易に送達することができる限り、サンプル受容面1321及び入力ポート1304の寸法は重要ではない。図15Bは、サンプル受容面1321の面積が削減された代替的な実施形態を示している。この例示的な実施形態では、入力ポート1304は、2つのセグメントを有している。入力ポート1304の開口に隣接する第1のセグメントは、サンプル室に隣接する第2のセグメントと比較してより大きな直径を有する。他の実施形態では、入力ポート1304は、開口において直径が大きいがサンプル室1311に向かって直径が小さくなるテーパ状であってもよい。
【0112】
図16-21は、本開示によるガラス化デバイスの代替的な実施形態を示す。図16は、ガラス化デバイス1601の斜視図である。ガラス化デバイス1601は、2つの端部を備えた細長形状を含む。一方の端部において、デバイス1601は、取り外し可能なキャップ1603に可逆的に結合することができる入力部(図示せず)を備える。いくつかの実施形態では、入力部1610は、円筒形であり、キャップ1603内の円筒の空洞と係合し得る。デバイスは、第2の端部において、ハンドル部1602及びキャップ1630をさらに含む。デバイス1601は、少なくとも1つの観察窓1605も含む。ガラス化デバイスは、(図16に示された)閉鎖構成及び(図18-19に示された)開放構成を有する。閉鎖構成及び開放構成に切り替えることは、それぞれ入力部1610とキャップ1603を結合又は外すことにより行われる。図示の実施形態では、キャップ1603は、キャップ1603の保持及び取り扱いを容易にするためのグリップを形成する複数の隆起を有する。
【0113】
図17は、キャップ1603が入力部1610結合された閉鎖構成におけるガラス化デバイス1601の縦断面図である。この構成では、入力ポート1604、そしてサンプル室1611はキャップ1603の壁によって密封されている。閉鎖構成におけるガラス化デバイス1601は、上記のようにサンプル室1611の内容物を直接的に流体に晒すことなく流体に沈められてもよい。
【0114】
開放構成のときに、入力ポート1604は、サンプル室1611に送達されるサンプル及び流動剤を受け入れるように構成される。入力ポート1604は、サンプル室1611と流体連通しており、サンプル室はフィルタ1621を含むフィルタ機構を介して廃棄容器1612と流体連通している。観察窓1605は、サンプル室1611の周囲のエリアに設けられる。開口1607は、観察窓1605の直径方向の反対側のハンドル部1602に形成される。
【0115】
図18は、ガラス化デバイス1601のハンドル1602の一部及び入力部1610を示している。ガラス化デバイス1601は、入力ポート1604が露出されるように開放構成(キャップ1603が取り外されている)で示されている。入力ポート1604は、入力部1610の壁にあるトラフ状凹所1604a及びサンプル室1611に通じる入力チャネル1604bを備える。凹所1604aによって、マイクロピペット等のサンプル送達ツールがより簡単に入力チャネル1604bの開口に接近することが可能になる。凹所1604aによって送達される流動剤は、入力チャネル1604bを介してサンプル室1611におけるサンプルに直接的に流れる。
【0116】
観察窓1605は、デバイスのユーザがサンプル室1611内に位置するサンプルの状態を観察及び検査することを可能にする。いくつかの実施形態では、観察窓1605は、サンプル室1611の外壁が露出されるように、壁にある開口によって形成されてもよい。他の実施形態では、デバイスのユーザがサンプル室1611内に位置するサンプルの状態を検査するために容易に中を見ることができるように、観察窓1605は透明材料から作られる。様々な実施形態において、観察窓1605は、デバイス1601の残りの部分と同じ又は異なる材料から作られてもよい。サンプル室1611は、室内のサンプルを観察することを可能にするために透明材料によって囲まれる。いくつかの実施形態では、サンプル室1611の壁は、0.005インチよりも薄く、好ましくは、0.002インチ以下の薄さであり、それによりサンプルが好ましい速度で解凍することを可能にする。
【0117】
図19は、図18に示されたハンドル1602の一部及び入力部1610の断面図である。この図では、観察窓1605の直径方向の反対側に開口1607が示されている開口1607は、サンプル室1611を取り囲む空間を露出させる。入力部1610が液体窒素に沈められると、例えば、液体窒素は、開口1607を通って、サンプル室1611内のサンプルに近接して流れ込む。いくつかの実施形態では、このような開口の数は1つに限定されない。様々な実施形態において、観察窓1605も、同様の開口として機能する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの開口を有することは、液体窒素が一方の開口から入り、サンプル室1611を取り囲む空間に閉じ込められた空気が他方の開口から逃れることができるので、液体窒素がサンプルエリアの近傍に速く流れること、すなわちサンプルの高速ガラス化を可能にすると考えられる。
【0118】
ユーザは、観察窓1605を介してサンプル室1611内の内容物及び/又は活動を監視しながら、入力ポート1604からサンプル室1611内に、サンプル又はサンプルを調製若しくは処理するための溶液等の流動剤を送達してもよい。次に、廃棄物は、廃棄容器1612内に収集される。様々な実施形態において、デバイス1601は、廃棄容器1612に到達するように廃棄物を通過させながら、サンプルを保管するためのフィルタ機構等の機構を備える。例えば、この実施形態では、フィルタ1621が廃棄容器1612からサンプル室1611を分離している。
【0119】
フィルタ1621の詳細が、図20の斜視断面図に示されている。いくつかの実施形態では、フィルタ1621は、サンプルが通過することを防ぎながら、廃棄物を廃棄容器1612内へと選択的に流れ込ませる。例えば、いくつかの実施形態では、フィルタ1621は、廃棄物及びサンプルをそれらの各サイズに基づいて分離する濾過機構を備える。いくつかの実施形態では、濾過機構は、液体成分を通過させるが、混合物の個体成分を保持する。すなわち、サンプルはサンプル室1611内に保持される。いくつかの実施形態では、フィルタ1621は、卵母細胞又は胚等の個体サンプルの通過を阻止するのに十分に小さい細孔を有する。様々な実施形態では、細孔のサイズは、サンプルのタイプに依存して変化してもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ1621は、複数の細孔、例えば、射出成形されたコンポーネントに設けられたレーザドリル穴を有する。細孔のサイズ、数及び/又は配置は、(以下に記載の)毛細管現象を促進するように選択される。いくつかの実施形態では、フィルタ1621のコンポーネントは、細孔の中心間に0.003の間隔で約0.002インチの直径を有する7x9配列の細孔を含む。他の実施形態では、フィルタ1621は、配列の異なる数の細孔、異なる直径の細孔、及び/又は細孔間の異なる間隔を有してもよい。
【0120】
他の実施形態では、フィルタ1621は、濾過材から作られる。本開示との関連で使用され得る適切な濾過材には、限定されないが、焼結ポリエチレンビーズ、ポリマーメッシュ、及び繊維紙が含まれる。いくつかの実施形態では、濾過材は、フィルタ1621に対するサンプルの粘着を妨げる。
【0121】
ガラス化デバイス1601は、毛細管現象によって入力ポート1604からフィルタ機構を通じて廃棄容器1612へと流体を引き込むようなサイズであり、かつそのように構成される。このようにして、サンプルは、外力の支援がなくても又は外力に対抗さえして、入力ポート1604からサンプル室1611を通じて廃棄容器1612へと流れる。いくつかの実施形態では、入力ポート1604、サンプル室1611、フィルタ1621における細孔、及び/又は廃棄容器1612を通過する小通路によってマイクロ流体チャネルが形成され、それにより液体廃棄物をサンプル室1611からフィルタ1621に向かって移動させる毛細管吸い上げ力が提供される。ピペット等を使用することによる流体力で第1の溶液が入力ポート1604を通って導入されると毛細管現象が開始される。流体は、サンプル室1611からフィルタ1621の細孔を通過して廃棄容器1612へと押し込まれる。デバイス全体を通る特定サイズのマイクロ流体チャネルと組み合わせて、廃棄容器1612内の流体の存在は、毛細管現象を用いてデバイス1621を通して後続の流体を引き込むのに十分に強い力を生成する。追加的に、いくつかの実施形態では、フィルタ1621は、湿るとサンプル室1611からの液体廃棄物の除去を容易にする吸い上げ力をもたらすスポンジ、フィルタ紙又はメッシュ等の吸収材から作られる。いくつかの実施形態では、液体が材料を通って流れて穴を湿らせると、毛細管現象が開始され、吸い上げ力は、流体圧がなくても液体及び/又は後続のさらなる液体が材料を通過することを支援する。
【0122】
液体廃棄物は、ハンドル部1602に保持される廃棄容器1612に収集される。いくつかの実施形態では、廃棄容器は、ガラス化されるサンプルの事前処理及び調製の間に使用される全ての廃棄流体を保持するための容積を有するようなサイズであり、かつそのように構成され、そのため廃棄容器1612は最大容積に到達せずかつ空にする必要もない。廃棄容器1612は、図21に示されているように、入力部1610の反対の端部においてキャップ1630を有し、これは流体がサンプル室1611から引き込まれるときに容器を放出させる。さらに、キャップ1630は、(凍結のための)液体窒素及び(解凍のための)温水が廃棄容器1612の周囲を通過するように廃棄容器の周囲に等しい隙間を提供するために、廃棄容器1612の位置をデバイス1601の軸中心線に維持するのに役立つ。いくつかの実施形態では、キャップ1630は、複数の色で成形することによりユーザに独自の色識別性を提供し、デバイス1621の様々なサイズ、使用等に関して独自である。
【0123】
デバイス1621は、液体窒素に沈めるためにサンプル室1611を密封するようにさらに構成される。特に、キャップ1603は、デバイス1621の入力部1610の端部を密封し、他方の端部はプラグとして作用する廃棄容器1612内の凍結溶液によって密封される。
【0124】
図22A-22Dは、ガラス化デバイス1601の入力部1610の代替的な実施形態を示す。こうした図面に示されているように、入力部1610は、サンプルの凍結又は解凍時に気泡が試料室1611へ通過することを防ぐ又は制限するための様々な設計特性を有する入力ポート1604を含む。溶液が導入された後でキャップ1603がデバイス1621上に配置されると、液面が入力ポート1604の上端を下回るときにキャップ1603の下に気泡が形成される。結果として、気泡は、入力チャネル1604bの開口に向かって押される。気泡はサンプル室1611内のサンプルを損傷させる可能性があるので、図22A-22Dの特徴は、サンプルの損傷の可能性を制限することを支援する。
【0125】
図22Aでは、入力ポート1604は、隆起部1622によって入力凹所1604aの端部から分離された入力チャネル1604bへの開口を有する。キャップ(図示せず)が入力部1610上に配置されると、形成された全ての気泡は、隆起部1622の上の入力チャネル1604bより上に残る。凍結されると、凍結された液体の収縮によって、気泡が室内に吸い込まれる可能性はない。したがって、解凍されると、室内は気泡がない状態に維持される。
【0126】
図22Bでは、入力ポート1604は、入力チャネル1604bの開口に対して異なる高さの部分を含む。第2の凹部1624は、入力ポートの凹所1604aより低いが、入力チャネル1604bの開口に対しては高度が高い。このようにして、液面は、より少ない液体量によって第2の凹部1624より上(かつ入力チャネル1604bへの開口より上)に維持される。入力ポートの凹所1604aと第2の凹部1624とを分離するランプ部が、液面を入力チャネル1604bの開口より上に維持するのに役立つ。このようにして、解凍のために大量の流体を必要とする凹所1604aの深さが全て同じである場合よりも解凍過程は速い可能性がある。解凍により多くの時間がかかれば、試料の生存能力を危険に晒す可能性がある。
【0127】
図22C-22Dに関して、入力ポートの凹所1604aは、狭い部分1626を含む。ポートの凹所1604aと同等の幅の気泡が、狭い部分1626を押し通されることはない。したがって、気泡は、入力チャネル1604bの開口から遠ざけられる。さらに、図22Cでは、入力凹所1604aは傾斜しており、凹所1604aに存在する最小量の流体が使用されることを可能にしながら、液面が低く下がり過ぎない(すなわち、入力チャネル1604bへの開口よりも上に維持される)ことも確実にする。液体をより少なくすることで、温溶液が試料により迅速に到達することが可能になり、それにより試料の生存能力を促進する。
【0128】
図22Dでは、入力凹所1604a内にトラフ1628がある。解凍後に入力チャネル1604bの開口の近くに気泡が閉じ込められていても、トラフ1628は、液体が流れることが可能な通路を提供する。トラフ1628は常に液体で満たされていることが意図される。したがって、液体が流れるための通路を有することにより、気泡が形成されていても、試料の解凍時に非常に重要となる液体の動きがある。気泡が流路の障害になる場合、試料の生存能力が損なわれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、デバイスの少なくとも入力部及びキャップ部は、液体窒素に耐性がある材料から作られる。いくつかの実施形態では、サンプルの迅速なガラス化及び解凍を達成することができるように、材料は熱伝導性を有する。本開示との関連で使用され得る例示的な材料には、限定されないが、アクリル系材料、ポリプロピレン系材料、ポリカーボネート系材料、及びコポリエステル系材料が含まれる。
【0130】
開示された様々な実施形態による上記のガラス化デバイスは、類似の特徴を含み、類似の原理に従って動作し、同じ参照番号は同じ要素を意味する。所定のコンポーネント又は詳細は所定の実施形態の記載から省略されてもよく、類似の要素がガラス化デバイスの他の実施形態と関連して先に記載されたものと同じ機能を実行し又は同じ特徴を含むことが理解されるべきである。
【0131】
(均等物)
本技術は、現在の技術の個別の態様の1つの例示として意図されているこの出願に記載された特定の実施形態に関して限定されない。その精神及び範囲から逸脱することなく本技術の多くの修正及び変形を行うことが可能であり、それは当業者には明らかであろう。本明細書で列挙されたものに加えて、本技術の範囲内で機能的に均等な方法及び装置も、当業者には先の記載から明らかであろう。このような修正及び変形が、本技術の範囲内に含まれることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成又は当然に変化し得る生物系に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載すること目的としており、限定を意図していないことが理解されるべきである。
【0132】
当業者には理解されるように、いかなる及び全ての目的に対して、特に、記載された説明を提供することに関して、本明細書に開示の全ての範囲は、その任意の及び全の可能な部分範囲及び部分範囲の組み合わせも含んでいる。列挙されたいずれの範囲も、同じ範囲が少なくとも等しく半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分割されることを十分に記載し及び可能にしていると容易に理解され得る。非限定的な例として、本明細書で検討された各範囲は、下部3分の1、中部1及び上部3分の1等に容易に分割され得る。当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きな」、「より少ない」等の全ての言葉は、記載された数を含みかつ上記のように後で部分範囲に分割され得る範囲も意味する。最後に、当業者には理解されるように、範囲はそれぞれ個別の要素を含む。
【0133】
全ての数字表示、例えば、範囲を含むpH、温度、時間、濃度、量、及び分子量は、必要に応じて、(+)又は(-)10%、1%又は0.1%変化する近似値である。常に明示されている訳ではないが、全ての数字表示の前に「約」という言葉が伴い得ることが理解されるべきである。また、常に明示されている訳ではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、当技術分野ではこれらの均等物が知られていることが理解されるべきである。

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D