(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230613BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230613BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230613BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230613BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230613BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L29/78 657G
H01L29/78 652P
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 657A
H01L29/91 C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652S
H01L29/78 652N
H01L29/78 657C
H01L29/91 K
H01L27/06 102A
(21)【出願番号】P 2020008267
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】西脇 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 研也
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0138544(US,A1)
【文献】特開2001-274402(JP,A)
【文献】特開2001-102575(JP,A)
【文献】特開昭63-318781(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004774(WO,A1)
【文献】特開2013-115225(JP,A)
【文献】特開2000-294803(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092872(WO,A1)
【文献】特開2002-083964(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/861
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部のトレンチの内部に設けられ、前記トレンチ内の第1絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第2電極との間の第2絶縁部により前記第2電極から電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記トレンチ内において、前記第1制御電極と前記第1電極との間の距離よりも前記第1電極に近い位置に設けられ、前記トレンチ内の第3絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第1制御電極との間の第4絶縁部により前記第1制御電極から電気的に絶縁された第2制御電極と、
前記半導体部の前記表面側に設けられ、前記第2電極に電気的に接続されたダイオード素子と、
前記半導体部の前記表面を覆う絶縁膜上に設けられ、前記ダイオード素子に直列接続された抵抗素子と、
前記ダイオード素子と前記抵抗素子とを電気的に接続し、前記第2制御電極に電気的に接続された第1配線と、
前記抵抗素子と前記半導体部とを電気的に接続した第2配線と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含み、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間、前記第1電極と前記ダイオード素子との間、および、前記第1電極と前記抵抗素子との間に位置し、前記第2配線を介して前記抵抗素子に電気的に接続され、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁部を介して前記第1制御電極に向き合い、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁部に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続され、
前記ダイオード素子は、前記抵抗素子から前記第2電極に流れる電流の方向に対して逆方向の整流性を有するように配置された半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオード素子は、前記半導体部中に設けられた前記第2導電形の第4半導体層と、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第6半導体層と、を含み、
前記第4半導体層は、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第5半導体層は、前記第4半導体層中に設けられ、前記第1配線に電気的に接続され、
前記第6半導体層は、前記第4半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第4半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ダイオード素子は、前記絶縁膜上に設けられ、前記第1導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第6半導体層と、前記第5半導体層と前記第6半導体層との間に位置する第7半導体層と、を含み、
前記第5半導体層は、前記第1配線に電気的に接続され、前記第6半導体層は、前記第2電極に電気的に接続され、
前記第7半導体層は、前記第5半導体層および前記第6半導体層に接し、前記第5半導体層の第1導電形不純物よりも低濃度の第1導電形不純物、もしくは、前記第6半導体層の第2導電形不純物よりも低濃度の第2導電形不純物を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチ内において、前記第1電極と前記第2制御電極との間に設けられ、前記第3絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第2電極に電気的に接続された第3電極をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ダイオード素子の前記第
7半導体層は、アバランシェ降伏が支配的となる不純物濃度と、ツエナー降伏が支配的となる不純物濃度と、の間の濃度の第2導電形不純物を含む請求項
3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体部は、前記抵抗素子と第1半導体層との間に設けられた第2導電形の第8半導体層をさらに含み、
前記絶縁膜は、前記第8半導体層と前記抵抗素子との間に位置する部分を有する請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体層は、前記半導体部の表面に沿った方向に前記第2電極よりも外側に延出した延出部を有し、
ダイオード素子は、前記第2半導体層の前記延出部に設けられた前記第1導電形の第5半導体層と、前記第2導電形の第6半導体層と、を含み、
前記延出部は、前記第1半導体層と前記第1配線との間に位置し、
前記第5半導体層は、前記延出部と前記第1配線との間に位置し、前記第1配線に電気的に接続され、
前記第6半導体層は、前記延出部と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記抵抗素子は、第1導電形の第1抵抗部と、第2導電形の第2抵抗部と、を含み、
前記第1抵抗部および前記第2抵抗部は、それぞれ、前記絶縁膜に沿って延在し、前記第1配線および前記第2配線に電気的に接続される請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部のトレンチの内部に設けられ、前記トレンチ内の第1絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第2電極との間の第2絶縁部により前記第2電極から電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記トレンチ内において、前記第1制御電極と前記第1電極との間の距離よりも前記第1電極に近い位置に設けられ、前記トレンチ内の第3絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第1制御電極との間の第4絶縁部により前記第1制御電極から電気的に絶縁された第2制御電極と、
前記半導体部の前記表面側に設けられ、前記第2電極に電気的に接続されたダイオード素子と、
前記半導体部の前記表面を覆う絶縁膜上に設けられ、前記ダイオード素子に直列接続された抵抗素子と、
前記ダイオード素子と前記抵抗素子とを電気的に接続し、前記第2制御電極に電気的に接続された第1配線と、
前記抵抗素子と前記半導体部とを電気的に接続した第2配線と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含み、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間、前記第1電極と前記ダイオード素子との間、および、前記第1電極と前記抵抗素子との間に位置し、前記第2配線を介して前記抵抗素子に電気的に接続され、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁部を介して前記第1制御電極に向き合い、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁部に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続され、
前記ダイオード素子は、第2導電形の第4半導体層と、第1導電形の第5半導体層と、を含み、前記第4半導体層は前記第2電極に電気的に接続され、前記第5半導体層は前記第1配線に電気的に接続された半導体装置。
【請求項10】
前記第4半導体層は前記半導体部中に設けられ、
前記第5半導体層は前記第4半導体層中に設けられた、請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ダイオード素子は、前記半導体部中に設けられた前記第2導電形の第6半導体層と、をさらに含み、
前記第6半導体層は、前記第4半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第4半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第4半導体層と前記第5半導体層は前記絶縁膜上に設けられた、請求項9記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ダイオード素子は、前記絶縁膜上に設けられ、前記第4半導体層と前記第5半導体層との間に設けられた前記第2導電形の第7半導体層 と、をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第4半導体層及び前記第5半導体層に電気的に接続され、前記第5半導体層の第1導電形不純物よりも低濃度の第1導電形不純物、もしくは、前記第4半導体層の第2導電形不純物よりも低濃度の第2導電形不純物を含む請求項12記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御に用いられる半導体装置には、オン抵抗が小さく、オフ時の耐圧が高いことが求められる。例えば、トレンチゲート構造を有するMOSトランジスタでは、ゲートトレンチの内部にゲート電極とフィールドプレート電極とを配置することにより、低オン抵抗および高耐圧を実現している。例えば、フィールドプレート電極は、ゲート電極とドレイン電極との間に配置される。このため、フィールドプレート電極を半導体層から絶縁するフィールドプレート絶縁膜には、高い絶縁性が求められる。しかしながら、フィールドプレート絶縁膜を厚く形成すると、ゲートトレンチ間の電流経路が狭くなり、オン抵抗の低減を阻害する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、オン抵抗を低減できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、第1制御電極と、第2制御電極と、ダイオード素子と、抵抗素子と、第1配線と、第2配線と、を備える。前記第1制御電極は、前記第2電極と前記半導体部との間において、前記半導体部のトレンチの内部に設けられ、前記トレンチ内の第1絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第2電極との間の第2絶縁部により前記第2電極から電気的に絶縁される。前記第2制御電極は、前記トレンチ内において、前記第1制御電極と前記第1電極との間の距離よりも前記第1電極に近い位置に設けられ、前記トレンチ内の第3絶縁部により前記半導体部から電気的に絶縁され、前記第1制御電極との間の第4絶縁部により前記第1制御電極から電気的に絶縁される。前記ダイオード素子は、前記半導体部の前記表面側に設けられ、前記第2電極に電気的に接続される。前記抵抗素子は、前記半導体部の前記表面を覆う絶縁膜上に設けられ、前記ダイオード素子に直列接続される。前記第1配線は、前記ダイオード素子と前記抵抗素子とを電気的に接続し、前記第2制御電極に電気的に接続される。前記第2配線は、前記抵抗素子と前記半導体部とを電気的に接続する。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、を含む。前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間、前記第1電極と前記ダイオード素子との間、および、前記第1電極と前記抵抗素子との間に位置し、前記第2配線を介して前記抵抗素子に電気的に接続される。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第1絶縁部を介して前記第1制御電極に向き合う。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁部に接する位置に配置され、前記第2電極に電気的に接続される。前記ダイオード素子は、前記抵抗素子から前記第2電極に流れる電流の方向に対して逆方向の整流性を有するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図2】実施形態に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図3】実施形態に係る半導体装置の配線構造を示す模式断面図である。
【
図4】実施形態に係る半導体装置を示す回路図である。
【
図5】実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図6】実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図7】実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図8】実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図9】実施形態の変形例に係る半導体装置のダイオード素子を示すグラフ図である。
【
図10】実施形態に係る半導体装置のダイオード特性を示すグラフである。
【
図11】実施形態の変形例に係る半導体装置の抵抗素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1~
図4は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式図である。半導体装置1は、例えば、電力制御用のMOSトランジスタであり、抵抗素子、ダイオード素子、を含む。
【0010】
図1は、半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、半導体部10と、第1電極(以下、ドレイン電極20)と、第2電極(以下、ソース電極30)と、を含む。ドレイン電極20は、半導体部10の裏面側に設けられる。ソース電極30は、半導体部10の表面側に設けられる。
【0011】
半導体部10は、例えば、シリコンである。ドレイン電極20は、例えば、アルミニウム、チタニウム等を含む金属層である。ソース電極30は、例えば、アルミニウム、タングステン等を含む金属層である。
【0012】
半導体装置1は、例えば、ゲート電極40およびフィールドプレート電極(以下、FP電極50)を含むトレンチゲート構造を有する。ゲート電極40およびFP電極50は、例えば、導電性のポリシリコンである。
【0013】
ゲート電極40およびFP電極50は、半導体部10とソース電極30との間に設けられる。ゲート電極40およびFP電極50は、半導体部10に設けられたゲートトレンチGTの内部に配置される。ゲート電極40は、例えば、ソース電極30とFP電極50との間に位置する。FP電極50は、ドレイン電極20とゲート電極40との間に位置する。
【0014】
ゲート電極40は、例えば、第1絶縁部(以下、絶縁膜43)により半導体部10から電気的に絶縁される。また、ゲート電極40は、例えば、第2絶縁部(以下、層間絶縁膜45)によりソース電極30から電気的に絶縁される。絶縁膜43および層間絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0015】
FP電極50は、第3絶縁部(以下、絶縁膜53の一部)により半導体部10から電気的に絶縁される。絶縁膜53は、ゲートトレンチGTの内部に設けられ、第3絶縁部として機能する部分を含む。絶縁膜53の一部は、ゲートトレンチGTの内部において、半導体部10とFP電極50との間に位置する。絶縁膜53は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0016】
FP電極50は、ゲート電極40から離間して設けられ、第4絶縁部(以下、絶縁膜57)によりゲート電極40から電気的に絶縁される。絶縁膜57は、ゲート電極40とFP電極50との間に位置する。絶縁膜57は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0017】
半導体装置1は、例えば、X-Y平面内において、活性領域AAと終端領域TAとを有する。活性領域AAには、ゲート電極40およびFP電極50を含むトレンチゲートが配置される。終端領域TAは、活性領域AAを囲む。活性領域AAと終端領域TAとの境界に位置するゲートトレンチGTには、ゲート電極40は配置されず、FP電極50pを配置する。
【0018】
半導体装置1は、抵抗素子60と、ダイオード素子70と、をさらに備える。抵抗素子60およびダイオード素子70は、終端領域TAに設けられる。抵抗素子60およびダイオード素子70は、半導体部10の表面側に設けられる。
【0019】
抵抗素子60は、例えば、終端領域TAにおいて、半導体部10の表面を覆う絶縁膜53の別の一部の上に設けられる。抵抗素子60は、配線35により、半導体部10のn形領域(例えば、n形コンタクト層31、n形ドリフト層11およびn形ドレイン層21)を介してドレイン電極20に電気的に接続される。抵抗素子60は、例えば、所定の抵抗率を有するポリシリコン層である。
【0020】
ダイオード素子70のカソードは、例えば、半導体部10の内部に設けられ、配線33を介して抵抗素子60に直列接続される。また、ダイオード素子70のアノードは、ソース電極30に電気的に接続される。
【0021】
図1に示すように、半導体部10は、例えば、第1半導体層(以下、n形ドリフト層11)と、第2半導体層(以下、p形拡散層13)と、第3半導体層(以下、n形ソース層15)と、p形コンタクト層17と、n形ドレイン層21と、を含む。
【0022】
n形ドリフト層11は、活性領域AAおよび終端領域TAの両方に延在する。n形ドリフト層11は、ドレイン電極20とソース電極30との間、ドレイン電極20と抵抗素子60との間、ドレイン電極20とダイオード素子70との間に位置する。
【0023】
p形拡散層13は、n形ドリフト層11とソース電極30との間に設けられる。p形拡散層13は、活性領域AAに設けられ、絶縁膜43を介してゲート電極40に向き合う。
【0024】
n形ソース層15は、p形拡散層13とソース電極30との間に選択的に設けられる。n形ソース層15は、絶縁膜43に接する位置に配置される。n形ソース層15は、n形ドリフト層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。なお、n形ソース層15は、活性領域AAと終端領域TAとの境界に位置しFP電極50pを含むゲートトレンチGTとそれに最近接したゲートトレンチGTとの間には設けられない。
【0025】
p形コンタクト層17は、p形拡散層13とソース電極30との間に選択的に設けられる。p形コンタクト層17は、p形拡散層13のp形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。
【0026】
n形ソース層15およびp形コンタクト層17は、p形拡散層13とソース電極30との間において、例えば、ソース電極30に沿って並べて配置される。ソース電極30は、n形ソース層15およびp形コンタクト層17に電気的に接続される。また、ソース電極30は、p形コンタクト層17を介してp形拡散層13に電気的に接続される。
【0027】
n形ドレイン層21は、n形ドリフト層11とドレイン電極20との間に設けられる。n形ドレイン層21は、n形ドリフト層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。ドレイン電極20は、n形ドレイン層21に電気的に接続される。ドレイン電極20は、n形ドレイン層21を介してn形ドリフト層11に電気的に接続される。
【0028】
半導体部10は、n形コンタクト層31と、p形ウエル71と、n形カソード層73と、p形アノード層75と、p形中間層77と、をさらに含む。n形コンタクト層31、p形ウエル71、n形カソード層73、p形アノード層75およびp形中間層77は、終端領域TAに設けられる。
【0029】
n形コンタクト層31は、n形ドリフト層11のn形不純物の濃度よりも高濃度のn形不純物を含む。n形コンタクト層31は、例えば、n形ソース層15と同時に形成され、n形ソース層15のn形不純物と同じ濃度のn形不純物を含む。抵抗素子60は、配線35を介してn形コンタクト層31に電気的に接続される。
【0030】
ダイオード素子70は、p形ウエル71中に設けられ、n形カソード層73と、p形アノード層75と、p形中間層77と、を含む。p形ウエル71は、例えば、p形拡散層13のp形不純物と略同一の濃度を有するp形不純物を含み、半導体部10の表面からの深さが、p形拡散層13の表面からの深さよりも深くなるように設けられる。また、p形ウエル71は、p形拡散層13のp形不純物よりも低濃度のp形不純物を含むように設けられても良い。
【0031】
n形カソード層73およびp形アノード層75は、p形ウエル71の表面側に選択的に設けられる。n形カソード層73は、p形ウエル71の表面に露出され、配線33を介して抵抗素子60に電気的に接続される。p形アノード層75は、p形ウエル71の表面に露出され、ソース電極30に電気的に接続される。
【0032】
p形中間層77は、p形ウエル71とn形カソード層73との間に設けられる。p形中間層77は、p形ウエル71のp形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。p形中間層77のp形不純物濃度は、ダイオード素子70が所定の降伏電圧VBを有するように設定される。ダイオード素子70の降伏電圧VBは、ドレイン電極20とソース電極30との間に印加されるドレイン電圧VDDよりも低い。ダイオード素子70の降伏電圧VBは、例えば、5Vに設定される。
【0033】
図1に示すように、層間絶縁膜45は、例えば、終端領域TAにも延在し、絶縁膜53および抵抗素子60を覆う。ソース電極30は、例えば、第1層30f、第2層30gおよび第3層30hを含む積層構造を有する。配線33は、例えば、第1層33f、第2層33gおよび第3層33hを含む積層構造を有する。配線35は、例えば、第1層35f、第2層35gおよび第3層35hを含む積層構造を有する。
【0034】
第1層30f、33fおよび35fは、例えば、チタニウムおよび窒化チタニウムの積層構造(Ti/TiN)を有し、半導体部10に設けられた各半導体層に対してオーミックコンタクトを形成すると共に、金属原子の半導体部10への移動を妨げるバリア層として機能する。
【0035】
第2層30g、33gおよび35gは、例えば、タングステン(W)を含み、コンタクトホール(
図2参照)を埋め込むように設けられる。第3層30h、33hおよび35hは、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層であり、第1層および第2層よりも厚く設けられる。
【0036】
ソース電極30は、終端領域TAにおいて、層間絶縁膜45の上に設けられる。ソース電極30は、層間絶縁膜45および絶縁膜53を貫いて延伸し、p形アノード層75に電気的に接続される部分を含む。
【0037】
配線33は、終端領域TAにおいて、層間絶縁膜45の上に設けられる。配線33は、層間絶縁膜45および絶縁膜53を貫いて延伸し、n形カソード層73に電気的に接続される部分と、層間絶縁膜45を貫いて延伸し、抵抗素子60に電気的に接続される部分と、を含む。
【0038】
配線35は、終端領域TAにおいて、層間絶縁膜45の上に設けられる。配線35は、層間絶縁膜45を貫いて延伸し、抵抗素子60に電気的に接続される部分と、層間絶縁膜45および絶縁膜53を貫いて延伸し、n形コンタクト層31に電気的に接続される部分を含む。
【0039】
図2は、半導体装置1を示す模式平面図である。
図2は、半導体装置1の表面の一部を示す模式図である。
図1は、
図2中に示すA-A線に沿った断面を示す模式図である。
【0040】
図2に示すように、配線33、35、ゲート配線37および抵抗素子60は、終端領域TAに設けられる。配線33およびゲート配線37は、ソース電極30から離間して配置される。また、配線33は、ゲート配線37から離間して配置される。
【0041】
ソース電極30は、p形拡散層13(
図1参照)およびゲートトレンチGTの上方に設けられる。また、ソース電極30は、例えば、ダイオード素子70の上方に位置する部分を含み、コンタクトホール30cを介して、ダイオード素子70のp形アノード層75に電気的に接続される(
図1参照)。
【0042】
ゲートトレンチGTは、X-Y平面内において、例えば、Y方向に延在するように設けられる。ゲート電極40は、ゲートトレンチGTの延在方向(Y方向)に延伸する。また、ゲート電極40は、ソース電極30の下方において、ソース電極30の外縁の位置よりも外側に延出するように設けられる。
【0043】
ゲート電極40は、延出された端部において、ゲート配線37に電気的に接続される。ゲート配線37は、例えば、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール37cを介してゲート電極40に接続される(
図3参照)。
【0044】
配線33は、抵抗素子60に接続される部分、および、ダイオード素子70の上方に位置する部分を含む。配線33は、層間絶縁膜45および絶縁膜53に設けられたコンタクトホール33caを介して、ダイオード素子70のn形カソード層73に電気的に接続される(
図1参照)。また、配線33は、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール33cbを介して、抵抗素子60に電気的に接続される(
図1参照)。
【0045】
配線33は、層間絶縁膜45の上面に沿って延伸した延在部33epを含む。FP電極50は、ゲート電極40の端部とゲートトレンチGTの端との間に位置する接続部50cを有し、延在部33epは、FP電極50の接続部50cの上方に延伸する。延在部33epは、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール33cpを介して、FP電極50の接続部50cに電気的に接続される(
図3参照)。
【0046】
配線33の延在部33epは、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール33cpを介して、FP電極50pにも電気的に接続される。FP電極50pは、活性領域AAと終端領域TAとの境界に設けられたゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0047】
配線35は、配線33から離間して配置され、抵抗素子60に接続された部分を含む。配線35は、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール35caを介して、抵抗素子60に電気的に接続される(
図1参照)。また、配線35は、層間絶縁膜45および絶縁膜53に設けられたコンタクトホール35cbを介して、半導体部10のn形コンタクト層31に電気的に接続される(
図1参照)。
【0048】
図3は、実施形態に係る半導体装置1の配線構造を示す模式断面図である。
図3は、
図2中に示すB-B線に沿った断面を示す模式図である。
【0049】
ゲート電極40は、層間絶縁膜45によりソース電極30から電気的に絶縁される。ゲート電極40は、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホール37cを介して、ゲート配線37に電気的に接続される。ゲート配線37は、例えば、ソース電極30、配線33および配線35と同じ積層構造を有する。
【0050】
FP電極50は、ゲート電極40に沿って、例えば、Y方向に延在する。FP電極50は、絶縁膜57によりゲート電極40から電気的に絶縁される。また、FP電極50は、ゲートトレンチGTの端とゲート電極40の端との間に延在する接続部50cを含む。
【0051】
FP電極50の接続部50cは、例えば、Z方向において、ゲート電極40の上面40fと同じレベルに位置する上面50fを有する。配線33は、例えば、層間絶縁膜45および絶縁膜57に設けられたコンタクトホール33cpを介して、接続部50cの上面50fに接続される。
【0052】
図4は、半導体装置1の回路図である。
図4に示すように、抵抗素子60およびダイオード素子70は、ドレイン電極20とソース電極30との間に直列接続される。
【0053】
ダイオード素子70は、ドレイン電極20から抵抗素子60を介してソース電極30に流れるリーク電流のILの方向に対し、逆方向の整流性を有するように配置される。ドレイン電極20とソース電極30との間の抵抗素子60を介したリーク電流は、ダイオード素子70により阻止される。ドレイン電極20とソース電極30との間に印加されるドレイン電圧VDDは、抵抗素子60とダイオード素子70により分割され、中間の電圧VFPが配線33を介してFP電極50に供給される。抵抗素子60は、リーク電流ILを低減するために、高抵抗であることが好ましい。
【0054】
例えば、ダイオード素子70の逆方向の降伏電圧VBは、ドレイン電圧VDDよりも低く設定される。ダイオード素子70の電圧VDが降伏電圧VBよりも低いと、リーク電流ILは抑制され、抵抗素子60の電圧降下IL×Rが小さくなる。このため、ダイオード素子70の電圧VDは上昇し、降伏電圧VBに近づく。例えば、ダイオード素子70の電圧VDが降伏電圧VBになると、ダイオード素子70はブレイクダウンし、リーク電流ILが大きくなる。この時、抵抗素子60における電圧降下が大きくなり、ダイオード素子70の電圧VDは押し下げられる。結果として、ダイオード素子70の電圧VDは、降伏電圧VBに近い値で安定する。
【0055】
半導体装置1のFP電極50には、ダイオード素子70の降伏電圧VBに近い電圧VFPが供給される。例えば、ドレイン電圧VDDが60Vの場合、ダイオード素子70の降伏電圧VBは、5V程度に設定される。
【0056】
例えば、ソース電極30とFP電極50との間に正の電圧を与えると、ゲートトレンチGTの底部における電界が低減され、n形ドリフト層11とp形拡散層13との間のpn接合近傍の電界が高くなる。すなわち、FP電極50をソース電極30とを同電位とした場合に、n形ドリフト層11とFP電極50との間の絶縁膜53を厚くするのと同じ効果が得られる。したがって、ソース電極30とFP電極50との間に正の電圧を与えれば、n形ドリフト層11とFP電極50との間の絶縁耐圧を維持しながら、絶縁膜53を薄くすることができる。
【0057】
例えば、隣り合うFP電極50間の間隔が一定であるとすれば、絶縁膜53の膜厚を薄くすることにより、FP電極50間の電流経路を広げることが可能となり、オン抵抗を低減することが可能となる。
【0058】
図5は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置2を示す模式断面図である。半導体装置2は、例えば、トレンチゲート構造を有するMOSトランジスタであり、抵抗素子60とダイオード素子70とを備える。
【0059】
半導体装置2では、絶縁膜53(
図1参照)に代えて、絶縁膜43が終端領域TAに延在し、半導体部10の表面を覆う。抵抗素子60は、絶縁膜43の上に設けられる。層間絶縁膜45は、終端領域TAにおいて、絶縁膜43および抵抗素子60を覆う。
【0060】
絶縁膜43は、p形拡散層13とゲート電極40との間に位置するゲート絶縁膜として設けられる。このため、絶縁膜43の膜厚は、絶縁膜53の膜厚よりも薄い。この例では、n形ドリフト層11と抵抗素子60との間の絶縁耐圧を向上させるために、抵抗素子60の下方にp形ウエル79を設けている。なお、p形ウエル79は、他の実施例に適用しても良い。
【0061】
図6は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置3を示す模式断面図である。半導体装置3は、例えば、トレンチゲート構造のMOSトランジスタであり、抵抗素子60とダイオード素子80とを備える。ダイオード素子80は、配線33を介して抵抗素子60に直列接続される。
【0062】
図6に示すように、抵抗素子60およびダイオード素子80は、終端領域TAにおいて、半導体部10の表面を覆う絶縁膜53の上に設けられる。ダイオード素子80は、n形カソード層83と、p形アノード層85と、p形中間層87と、を含む。層間絶縁膜45は、抵抗素子60およびダイオード素子80を覆う。
【0063】
n形カソード層83、p形アノード層85およびp形中間層87は、絶縁膜53の上面に沿って配置される。p形中間層87は、n形カソード層83とp形アノード層85との間に設けられる。p形中間層87は、例えば、n形カソード層83およびp形アノード層85に接続される。n形カソード層83、p形アノード層85およびp形中間層87は、例えば、ポリシリコン層である。
【0064】
n形カソード層83は、配線33を介して、抵抗素子60に電気的に接続される。p形アノード層85は、ソース電極30に電気的に接続される。
【0065】
p形中間層87は、例えば、p形アノード層85のp形不純物の濃度よりも低濃度のp形不純物を含む。p形中間層87のp形不純物濃度は、ダイオード素子80の降伏電圧VBがドレイン電圧VDDよりも低くなるように設定される。p形中間層87のp形不純物濃度は、ダイオード素子80の降伏電圧VBが、例えば、5Vになるように設定される。また、p形中間層87に代えて、n形中間層を配置しても良い。その場合、n形中間層は、n形カソード層83のn形不純物よりも低濃度のn形不純物を含む。
【0066】
この例では、n形カソード層83とp形中間層87との間に1つのpn接合が形成される。実施形態は、この例に限定される訳ではなく、ダイオード素子80は、例えば、絶縁膜53の上面に沿って、複数のpn接合を直列接続した構造であっても良い。また、
図1に示すダイオード素子70においても、複数のpn接合を直列接続した構造を用いることができる。
【0067】
図7は、実施形態の第3変形例に係る半導体装置4を示す模式断面図である。
図7は、活性領域AAに配置されるトレンチゲートの構造を示す模式図である。
【0068】
半導体装置4は、ゲート電極40a、40bおよびFP電極50を備える。ゲート電極40a、40bおよびFP電極50は、1つのゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0069】
図7に示すように、ゲート電極40aおよび40bは、それぞれ、絶縁膜43を介してp形拡散層13に向き合うように配置される。
【0070】
FP電極50は、例えば、ドレイン電極20とゲート電極40aもしくは40bとの間の距離よりも、ドレイン電極20に近い位置に配置される。FP電極50は、ゲート電極40aとゲート電極40bとの間に延在する部分を含む。
【0071】
FP電極50は、ゲート電極40aおよびゲート電極40bから離間して配置される。FP電極50は、絶縁膜57によりゲート電極40aおよびゲート電極40bから電気的に絶縁される。FP電極50は、配線33に電気的に接続され、抵抗素子60とダイオード素子70もしくは80との間の電位が供給されるように構成される。
【0072】
この例でも、n形ドリフト層11とFP電極50との間に位置する絶縁膜53の膜厚を薄くし、オン抵抗を低減することができる。
【0073】
図8は、実施形態の第4変形例に係る半導体装置5を示す模式断面図である。
図8は、活性領域AAに配置されるトレンチゲートの構造を示す模式図である。
【0074】
半導体装置5は、ゲート電極40a、40b、FP電極50、および中間電極55を備える。ゲート電極40a、40b、FP電極50および中間電極55は、1つのゲートトレンチGTの内部に配置される。
【0075】
図8に示すように、ゲート電極40aおよび40bは、それぞれ、絶縁膜43を介してp形拡散層13に向き合うように配置される。中間電極55は、ゲート電極40aとゲート電極40bとの間に位置し、ドレイン電極20の方向に延出する延出部55exを含む。FP電極50は、ドレイン電極20と中間電極55との間に位置する。
【0076】
半導体装置5では、FP電極50は、ソース電極30に電気的に接続され、中間電極55は、配線33に電気的に接続される。すなわち、この例では、抵抗素子60とダイオード素子70もしくは80との間の中間の電圧VFPは、中間電極55に供給される。
【0077】
例えば、電圧VFPを中間電極55に供給することにより、n形ドリフト層11と延出部55exとの間の絶縁膜53における電界強度を変化させることができる。これにより、n形ドリフト層11と絶縁膜53との境界に沿った電界分布を変化させ、半導体装置5のオフ時における耐圧を高くすることができる。
【0078】
図9(a)~(d)は、実施形態の変形例に係る半導体装置のダイオード素子90を示す模式図である。
図9(a)は、半導体部10の表面上のソース電極30および配線33の配置を示す模式平面図である。
図9(b)は、
図9(a)中に示すC-C線に沿った断面図である。
図9(c)は、
図9(a)中に示すD-D線に沿った断面図である。
図9(d)は、
図9(a)中に示すE-E線に沿った断面図である。
【0079】
図9(a)に示すように、配線33は、ソース電極30から離間して配置され、ソース電極30に沿ってX方向に延在する。配線33は、FP電極50の接続部50cの上方に位置し、コンタクトホール33cpを介して、FP電極50の接続部50cに電気的に接続される(
図3参照)。また、配線33は、図示しない部分に位置する抵抗素子60に電気的に接続される。
【0080】
図9(b)に示すように、ダイオード素子90は、p形拡散層13の一部と、p形コンタクト層17の一部と、n形カソード層93と、p形中間層97と、を含む。ダイオード素子90は、
図9(b)中の二点鎖線で囲まれた領域に設けられる。
【0081】
n形カソード層93は、p形拡散層13と配線33との間に設けられる。p形中間層97は、p形拡散層13とn形カソード層93との間に設けられる。p形中間層97は、p形拡散層13のp形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。p形コンタクト層17の一部は、p形アノード層として機能する。
【0082】
ダイオード素子90は、p形拡散層13およびp形コンタクト層17を介してソース電極30に電気的に接続される。ダイオード素子90では、p形コンタクト層17の一部がアノード層として機能する。
【0083】
図9(c)に示すように、ダイオード素子90は、例えば、X方向において隣合うゲートトレンチGTの間に設けられる。配線33は、コンタクトホール33ca(
図9(a)参照)を介して、n形カソード層93に電気的に接続される。また、配線33は、コンタクトホール33cpを介して、FP電極50の接続部50cに接続される。
【0084】
図9(d)に示すように、p形拡散層13は、p形コンタクト層17を介して、ソース電極30に電気的に接続される。ゲートトレンチGTのダイオード素子90に隣接する部分には、ゲート電極40は設けられない。また、半導体部10のダイオード素子90が設けられる部分には、n形ソース層15も設けられない。
【0085】
図10は、実施形態に係るダイオード素子70、80および90のダイオード特性を例示するグラフである(参考文献:小長井誠、「半導体物性」培風館)。縦軸は、降伏電圧V
Bを示し、横軸は、p形中間層77、87および97のp形不純物濃度N
Aを示している。
【0086】
図10に示すように、降伏電圧V
Bは、p形不純物濃度「N
A」が高くなるにつれて低下する。例えば、半導体部10がシリコンである場合、N
A=2×10
17~4×10
17cm
-3の濃度範囲を境界として、ダイオードの降伏モードが変化する。例えば、N
Aが2×10
17cm
-3未満であれば、アバランシェ降伏が支配的となり、N
Aが4×10
17cm
-3よりも高ければ、ツェナー降伏が支配的となる。
【0087】
例えば、アバランシェ降伏による降伏電圧V
Bは、正の温度依存性を有する。すなわち、降伏電圧V
Bは、温度上昇と共に上昇する。一方、ツエナー降伏による降伏電圧V
Bは、負の温度依存性を有し、温度上昇と共に低下する。したがって、p形中間層77、87および97のp形不純物濃度「N
A」を、アバランシェ降伏が支配的となる濃度領域と、ツェナー降伏が支配的となる濃度領域と、の中間の領域に設定することにより、降伏電圧V
Bの温度依存性を抑制することができる。これにより、FP電極50に印加される電圧V
FP(
図4参照)を安定化することができる。半導体部10がシリコンの場合、p形中間層77、87および97のp形不純物濃度「N
A」は、例えば、2×10
17~4×10
17cm
-3の濃度範囲に設定される。
【0088】
図11(a)~(c)は、実施形態の変形例に係る半導体装置の抵抗素子95を示す模式図である。
図11(a)は、抵抗素子95を示す模式平面図である。
図11(b)は、抵抗素子60に代えて抵抗素子95を配置した断面を示す模式図である。
図11(c)は、抵抗素子95の温度特性を示すグラフである。
【0089】
図11(a)に示すように、抵抗素子95は、第1抵抗部95aと、第2抵抗部95bと、を含む。第1抵抗部95aおよび第2抵抗部95b一方の端部は、それぞれ配線33に電気的に接続され、他方の端部は、それぞれ配線35に電気的に接続される。第1抵抗部95aおよび第2抵抗部95bは、配線33と配線35との間に並列配置される。
【0090】
第1抵抗部95aは、例えば、高抵抗のポリシリコン層にボロン(B)を選択的にイオン注入することにより形成され、p形の導電性を有する。第1抵抗部95aの抵抗率は、例えば、400Ωcm-2である。
【0091】
第2抵抗部95bは、例えば、高抵抗のポリシリコン層にリン(P)を拡散することにより形成され、n形の導電性を有する。第2抵抗部95bの抵抗率は、例えば、10Ωcm-2である。
【0092】
第1抵抗部95aのY方向の幅WAは、第2抵抗部95bのY方向の幅WBよりも広い。例えば、第1抵抗部95aおよび第2抵抗部95bは、配線33と配線35との間において、同程度の抵抗を有するように設けられる。
【0093】
図11(b)に示すように、抵抗素子95は、例えば、層間絶縁膜53の上面に沿ってX方向に延在する。抵抗素子95は、例えば、層間絶縁膜53上の高抵抗のポリシリコン層中に、第1抵抗部95aおよび第2抵抗部95bを選択的に設けた構造を有する。
【0094】
図11(c)には、第1抵抗部95a、第2抵抗部95bおよび抵抗素子95の温度特性を示している。横軸は、温度であり、縦軸は、抵抗変化率である。
【0095】
図11(c)に示すように、第1抵抗部95aは、負の温度依存性を有し、第2抵抗部95bは、正の温度依存性を有する。第1抵抗部95aおよび第2抵抗部95bを並列配置することにより、抵抗素子95は、双方の温度依存性をキャンセルした温度特性を有する。すなわち、抵抗素子95では、抵抗率の温度変化が抑制される。したがって、抵抗素子60に代えて、抵抗素子95を用いることにより、FP電極50に印加される電圧V
FP(
図4参照)の温度変化を抑制することができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1、2、3、4、5…半導体装置、 10…半導体部、 11…n形ドリフト層、 13…p形拡散層、 15…n形ソース層、 17…p形コンタクト層、 20…ドレイン電極、 21…n形ドレイン層、 30…ソース電極、 30c、33ca、33cb、33cp、35ca、35cb、37c…コンタクトホール、 31…n形コンタクト層、 33、35…配線、 33ep…延在部、 37…ゲート配線、 40、40a、40b…ゲート電極、 40f、50f…上面、 43、53、57…絶縁膜、 45…層間絶縁膜、 50、50p…フィールドプレート(FP)電極、 50c…接続部、 55…中間電極、 55ex…延出部、 60…抵抗素子、 70、80、90…ダイオード素子、 71、79…p形ウエル、 73、83、93…n形カソード層、 75、85…p形アノード層、 77、87、97…p形中間層、 95…抵抗素子、 95a…第1抵抗部、 95b…第2抵抗部、 GT…ゲートトレンチ、 AA…活性領域、 TA…終端領域