(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230613BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230613BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20230613BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20230613BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 652S
H01L29/78 652F
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/58 G
H01L29/44 Y
(21)【出願番号】P 2020034118
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】可知 剛
(72)【発明者】
【氏名】西脇 達也
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-165182(JP,A)
【文献】特表2003-515952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064548(US,A1)
【文献】特開2015-115611(JP,A)
【文献】特表2016-502762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/423
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ、シリコンを含む半導体層と、
前記半導体層の上に設けられた第2電極と、
を備え、
前記半導体層は、
前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1電極から前記半導体層に向かう第1方向に垂直であり、シリコンの結晶面の[100]方向に対応する第2方向と、前記第1方向に垂直であり前記第2方向に対して傾斜した第3方向と、において複数設けられた構造体と、
前記第2方向及び前記第3方向において前記第2半導体領域と対向するゲート電極と、
を含み、
前記複数の構造体のそれぞれは、
前記第2方向及び前記第3方向において前記第1半導体領域の一部、前記第2半導体領域、及び前記第3半導体領域と並
び、酸化シリコンを含む絶縁部と、
前記絶縁部中に設けられ、前記第2方向及び前記第3方向において前記第1半導体領域と対向する部分を含み、前記第2電極と電気的に接続された導電部と、
を含み、
前記第3方向において隣り合う前記構造体同士の間の第1距離は、前記第2方向において隣り合う前記構造体同士の間の第2距離よりも短い半導体装置。
【請求項2】
前記複数の構造体の前記第3方向における第1ピッチは、前記複数の構造体の前記第2方向における第2ピッチよりも短い請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の構造体の前記第3方向における第1ピッチは、前記複数の構造体の前記第2方向における第2ピッチと同じである請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1距離の前記第2距離に対する比は、0.8以上0.95以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域は、
前記第2方向において隣り合う前記構造体同士の間に位置する第1部分と、
前記第3方向において隣り合う前記構造体同士の間に位置する第2部分と、
を含み、
前記第2部分における第1導電形の不純物濃度は、前記第1部分における第1導電形の不純物濃度よりも高い請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の構造体のそれぞれの形は、前記第1方向から見たときに、六角形状である請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の前記ゲート電極が、複数の前記絶縁部中にそれぞれ設けられた請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート電極は、前記第2方向において隣り合う前記構造体同士の間及び前記第3方向において隣り合う前記構造体同士の間に設けられた請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)などの半導体装置は、電力変換等に用いられる。半導体装置のオン抵抗は、低いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、オン抵抗を低減できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極、半導体層、及び第2電極を含む。半導体層は、第1電極の上に設けられ、シリコンを含む。前記第2電極は、前記半導体層の上に設けられている。前記半導体層は、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、構造体と、ゲート電極と、を含む。前記第1半導体領域は、前記第1電極と電気的に接続されている。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続されている。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続されている。前記構造体は、前記第1電極から前記半導体層に向かう第1方向に垂直であり、シリコンの結晶面の[100]方向に対応する第2方向と、前記第1方向に垂直であり前記第2方向に対して傾斜した第3方向と、において複数設けられている。前記ゲート電極は、前記第2方向及び前記第3方向において前記第2半導体領域と対向する。前記複数の構造体のそれぞれは、絶縁部及び導電部を含む。前記絶縁部は、前記第2方向及び前記第3方向において前記第1半導体領域の一部、前記第2半導体領域、及び前記第3半導体領域と並ぶ。前記絶縁部は、酸化シリコンを含む。前記導電部は、前記絶縁部中に設けられ、前記第2方向及び前記第3方向において前記第1半導体領域と対向する部分を含み、前記第2電極と電気的に接続されている。前記第3方向において隣り合う前記構造体同士の間の第1距離は、前記第2方向において隣り合う前記構造体同士の間の第2距離よりも短い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を表す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を表す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を表す断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を表す断面図である。
【
図10】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を表す断面図である。
【
図11】参考例及び第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するシミュレーション結果である。
【
図12】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
【
図13】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
【
図14】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n+、n-及びp+、pの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を表す平面図である。
図2は、
図1の部分IIを表す平面図である。
図2では、ソース電極E2、絶縁層51、絶縁層52などが省略されている。
図3は、
図2のIII-III断面図である。
図4は、
図2のIV-IV断面図である。
【0009】
第1実施形態に係る半導体装置100は、MOSFETである。
図1~
図4に表したように、第1実施形態に係る半導体装置100は、半導体層SL、ドレイン電極E1(第1電極)、ソース電極E2(第2電極)、及びゲートパッドE3(第3電極)を含む。
【0010】
以下の各実施形態の説明では、第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3を用いる。ドレイン電極E1から半導体層SLに向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1に垂直な一方向を、第2方向D2とする。第1方向D1に垂直であり、第2方向D2に対して傾斜した方向を第3方向D3とする。すなわち、第3方向D3は、第2方向D2に対して垂直では無い。
また、説明のために、ドレイン電極E1から半導体層SLに向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、ドレイン電極E1と半導体層SLとの相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
図1に表したように、半導体装置100の上面には、ソース電極E2及びゲートパッドE3が設けられている。ソース電極E2とゲートパッドE3は、互いに電気的に分離されている。
【0012】
図3及び
図4に表したように、半導体装置100の下面には、ドレイン電極E1が設けられている。ドレイン電極E1の上には、半導体層SLが設けられている。半導体層SLは、単結晶シリコンを含む。第2方向D2は、シリコンの結晶面の[100]方向に対応する。ソース電極E2とゲートパッドE3は、半導体層SLの上に設けられている。
【0013】
半導体層SLは、n-形(第1導電形)ドリフト領域1(第1半導体領域)、p形(第2導電形)ベース領域2(第2半導体領域)、n+形ソース領域3(第3半導体領域)、p+形コンタクト領域4、n+形ドレイン領域5、ゲート電極10、及び構造体20を含む。
【0014】
n+形ドレイン領域5は、ドレイン電極E1の上に設けられ、ドレイン電極E1と電気的に接続されている。n-形ドリフト領域1は、n+形ドレイン領域5の上に設けられ、n+形ドレイン領域5を介してドレイン電極E1と電気的に接続されている。p形ベース領域2は、n-形ドリフト領域1の上に設けられている。n+形ソース領域3及びp+形コンタクト領域4は、p形ベース領域2の上に設けられている。
【0015】
構造体20は、絶縁部21及び導電部22を含む。絶縁部21は、第2方向D2及び第3方向D3において、n-形ドリフト領域1の一部、p形ベース領域2、及びn+形ソース領域3と並んでいる。導電部22は、絶縁部21中に設けられている。導電部22の少なくとも一部は、第2方向D2及び第3方向D3においてn-形ドリフト領域1の一部と並んでいる。
【0016】
半導体装置100では、ゲート電極10も絶縁部21中に設けられている。ゲート電極10は、第2方向D2及び第3方向D3に沿って導電部22上部の周りに設けられている。ゲート電極10と導電部22との間には、絶縁部21の一部が設けられている。これにより、ゲート電極10と導電部22は、互いに電気的に分離されている。
【0017】
ゲート電極10は、第2方向D2及び第3方向D3において、ゲート絶縁層11を介してp形ベース領域2と対向している。ゲート電極10は、ゲート絶縁層11を介して、n-形ドリフト領域1及びn+形ソース領域3とさらに対向しても良い。半導体装置100では、絶縁部21の一部が、ゲート絶縁層11として機能する。
【0018】
図2に表したように、ゲート電極10及び構造体20のそれぞれは、第2方向D2及び第3方向D3に沿って複数設けられている。例えば、複数のゲート電極10の周りに、1つの連続したp形ベース領域2が設けられている。複数のゲート電極10の周りに、複数のn
+形ソース領域3がそれぞれ設けられている。
【0019】
図3及び
図4に表したように、p形ベース領域2、複数のn
+形ソース領域3、複数のゲート電極10、及び複数の構造体20の上には、絶縁層51が設けられている。絶縁層51の上に、ゲート配線30が設けられている。ゲート配線30及び絶縁層51の上に、絶縁層52が設けられている。ソース電極E2及びゲートパッドE3は、絶縁層52の上に設けられている。
【0020】
ソース電極E2は、p形ベース領域2、複数のn+形ソース領域3、複数のゲート電極10、及び複数の構造体20の上に位置する。n+形ソース領域3及びp+形コンタクト領域4は、接続部41を介してソース電極E2と電気的に接続されている。また、ソース電極E2は、接続部42を介して導電部22と電気的に接続されている。p形ベース領域2は、p+形コンタクト領域4及び接続部41を介してソース電極E2と電気的に接続されている。半導体装置100では、接続部41の一部が、n+形ソース領域3同士の間に設けられている。p+形コンタクト領域4は、n+形ソース領域3よりも下方に位置している。
【0021】
ゲート電極10は、ソース電極E2とは電気的に分離されている。ゲート電極10は、接続部43を介してゲート配線30と電気的に接続されている。ゲート配線30は、ゲートパッドE3と電気的に接続されている。
図2に表したように、ゲート配線30は、第3方向D3において複数設けられる。1つのゲート配線30は、複数の接続部43を介して、第2方向D2に並ぶ複数のゲート電極10とそれぞれ電気的に接続される。
【0022】
図5及び
図6は、第1実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
図5及び
図6は、
図3及び
図4のV-V断面図の一部を表す。
図5に表したように、第2方向D2に垂直な第1面S1と、第2方向D2に対して傾斜した第2面S2と、を有する。換言すると、構造体20は、シリコンの結晶面の[100]方向に垂直な面と、[100]方向に対して傾斜した面と、を有する。
【0023】
第3方向D3において隣り合う構造体20同士の間の第1距離Di1は、第2方向D2において隣り合う構造体20同士の間の第2距離Di2よりも短い。複数の構造体20の第3方向D3における第1ピッチP1が、複数の構造体20の第2方向D2における第2ピッチP2よりも短い。第1ピッチP1及び第2ピッチP2は、構造体20の第2方向D2及び第3方向D3における中心同士の間の距離に対応する。
【0024】
具体的な一例として、複数の構造体20は、第1構造体20a、第2構造体20b、及び第3構造体20cを含む。
図5において、第1中心C1は、第1構造体20aの第2方向D2及び第3方向D3における中心を表す。第2中心C2は、第2構造体20bの第2方向D2及び第3方向D3における中心を表す。第3中心C3は、第3構造体20cの第2方向D2及び第3方向D3における中心を表す。第1ピッチP1は、第1中心C1と第3中心C3との間の第3方向D3における距離に対応する。第2ピッチP2は、第1中心C1と第2中心C2との間の第2方向D2における距離に対応する。
【0025】
図6に表したように、n
-形ドリフト領域1は、複数の第1部分1a及び複数の第2部分1bを含む。1つの第1部分1aは、第2方向D2において隣り合う構造体20同士の間に位置する。1つの第2部分1bは、第3方向D3において隣り合う構造体20同士の間に位置する。第2部分1bにおけるn形不純物濃度は、第1部分1aにおけるn形不純物濃度よりも高い。
【0026】
n-形ドリフト領域1と導電部22との間の第3方向D3における絶縁部21の厚さT1は、n-形ドリフト領域1と導電部22との間の第2方向D2における絶縁部21の厚さT2よりも大きい。導電部22の第3方向D3における長さL1は、導電部22の第2方向D2における長さL2よりも短い。
【0027】
半導体装置100の動作について説明する。
ソース電極E2に対してドレイン電極E1に正電圧が印加された状態で、ゲート電極10に閾値以上の電圧を印加する。これにより、p形ベース領域2にチャネル(反転層)が形成され、半導体装置100がオン状態となる。電子は、チャネルを通ってソース電極E2からドレイン電極E1へ流れる。その後、ゲート電極10に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形ベース領域2におけるチャネルが消滅し、半導体装置100がオフ状態になる。
【0028】
半導体装置100がオフ状態に切り替わると、ソース電極E2に対してドレイン電極E1に印加される正電圧が増大する。すなわち、n-形ドリフト領域1と導電部22との間の電位差が増大する。電位差の増大により、絶縁部21とn-形ドリフト領域1との界面からn-形ドリフト領域1に向けて、空乏層が広がる。すなわち、構造体20は、フィールドプレートとして機能する。この空乏層の広がりにより、半導体装置100の耐圧を高めることができる。又は、半導体装置100の耐圧を維持したまま、n-形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
【0029】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
n-形ドリフト領域1、p形ベース領域2、n+形ソース領域3、p+形コンタクト領域4、及びn+形ドレイン領域5は、半導体材料として、シリコンを含む。具体的には、これらの半導体領域は、ダイヤモンド構造を有するシリコンの単結晶を含む。
ゲート電極10及び導電部22は、ポリシリコンなどの導電材料を含む。導電材料には、不純物が添加されていても良い。絶縁部21、絶縁層51、及び絶縁層52は、絶縁材料を含む。例えば、絶縁部21、絶縁層51、及び絶縁層52は、酸化シリコン又は窒化シリコンを含む。ドレイン電極E1、ソース電極E2、及びゲートパッドE3は、アルミニウム又は銅などの金属を含む。接続部41~43は、タングステン、アルミニウム、又は銅などの金属を含む。
【0030】
第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。
図7~
図10は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を表す断面図である。
図7~
図10は、第2方向D2に垂直な断面における製造工程を表す。
【0031】
n
+形半導体層5s及びn
-形半導体層1sを含む半導体基板Sを用意する。n
-形半導体層1sは、n
+形半導体層5sの上に設けられている。半導体基板Sは、単結晶シリコンを含む。n
-形半導体層1sの一部を除去し、
図7(a)に表したように開口OP1を形成する。開口OP1は、第2方向D2及び第3方向D3において複数形成される。n
-形半導体層1sの一部は、第3方向D3において隣り合う開口OP1同士の間に位置する。n
-形半導体層1sの別の一部は、第2方向D2において隣り合う開口OP1同士の間に位置する。
【0032】
熱酸化により、複数の開口OP1の内面及びn-形半導体層1sの上面に沿って、絶縁層IL1を形成する。このとき、シリコンの結晶方位ごとに、酸化速度の違いが生じる。具体的には、シリコンの結晶面の[100]方向に垂直な面の酸化速度は、[100]方向に対して傾斜した面の酸化速度よりも遅い。なお、単結晶シリコンでは、[010]方向は、[100]方向と等価である。このため、[100]方向に垂直な面及び[010]方向に垂直な面において、酸化速度が低下する。以降の説明では、[100]方向及び[010]方向をまとめて、[100]方向と呼ぶ。
【0033】
酸化速度の違いにより、開口OP1の内面に沿って形成された絶縁層IL1について、第3方向D3における絶縁層IL1の厚みが、第2方向D2における絶縁層IL1の厚みよりも大きくなる。これにより、開口OP1の第3方向D3における寸法が、開口OP1の第2方向D2における寸法よりも短くなる。また、酸化時には、酸化したシリコンからn-形半導体層1sへ、不純物が移動する。結晶方位ごとの酸化速度の違いにより、n-形半導体層1sの前記一部には、n-形半導体層1sの前記別の一部よりも、多くの不純物が移動する。この結果、n-形半導体層1sの前記一部におけるn形不純物濃度は、n-形半導体層1sの前記別の一部におけるn形不純物濃度よりも高くなる。
【0034】
絶縁層IL1の上に、複数の開口OP1を埋め込む導電層を形成する。例えば、導電層は、不純物が添加されたポリシリコンを含む。導電層の上面を後退させ、
図7(b)に表したように、それぞれの開口OP1の内側に導電部22を形成する。
【0035】
導電部22の上部の周り及びn
-形半導体層1sの上面に設けられた絶縁層IL1を除去する。これにより、導電部22の上部及びn
-形半導体層1sの上面が露出する。熱酸化により、
図8(a)に表したように、露出した部分に沿って絶縁層IL2を形成する。
【0036】
ポリシリコンを含む導電層を絶縁層IL2の上に形成し、導電層の上面を後退させる。これにより、各導電部22の上部の周りに、ゲート電極10がそれぞれ形成される。n
-形半導体層1sの表面にp形不純物をイオン注入し、p形ベース領域2を形成する。p形ベース領域2の表面にn形不純物をイオン注入し、
図8(b)に表したように、n
+形ソース領域3を形成する。
【0037】
絶縁層IL2及び複数のゲート電極10の上に絶縁層IL3を形成し、絶縁層IL3の上面を平坦化する。絶縁層IL3を貫通し、ゲート電極10に達する複数の開口を形成する。タングステンを含む金属層を形成し、各開口を埋め込む。金属層の上面を後退させ、複数のゲート電極10にそれぞれ接続された複数の接続部43を形成する。絶縁層IL3及び複数の接続部43の上に、アルミニウムを含む金属層を形成し、金属層をパターニングする。これにより、
図9(a)に表したように、接続部43と接続されたゲート配線30が形成される。
【0038】
絶縁層IL3の上に、複数のゲート配線30を覆う絶縁層IL4を形成し、絶縁層IL4の上面を平坦化する。絶縁層IL3、絶縁層IL4、p形ベース領域2、及びn
+形ソース領域3のそれぞれの一部を除去する。これにより、p形ベース領域2に達する開口OP2と、導電部22に達する開口OP3と、が形成される。これらの開口は、ゲート配線30が設けられていない位置に形成される。開口OP2を通してp形ベース領域2にp形不純物をイオン注入し、
図9(b)に表したようにp
+形コンタクト領域4を形成する。
【0039】
タングステンを含む金属層を形成し、各開口を埋め込む。金属層の上面を後退させ、p
+形コンタクト領域4及び導電部22とそれぞれ電気的に接続された接続部41及び接続部42を形成する。絶縁層IL4の上にアルミニウムを含む金属層を形成し、金属層をパターニングする。これにより、
図10(a)に表したように、ソース電極E2と、不図示のゲートパッドE3と、が形成される。ソース電極E2は、複数の接続部41及び複数の接続部42と電気的に接続される。
【0040】
n
+形半導体層5sが所定の厚みになるまで、n
+形半導体層5sの裏面を研削する。その後、
図10(b)に表したように、n
+形半導体層5sの裏面にドレイン電極E1を形成することで、
図1~
図6に表した半導体装置100が製造される。
【0041】
上述した製造工程において、各構成要素の形成には、化学気相堆積(CVD)又はスパッタリングを用いることができる。各構成要素の一部の除去には、ウェットエッチング、ケミカルドライエッチング(CDE)、又は反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。各構成要素の上面の後退又は平坦化には、ウェットエッチング、CDE、又は化学機械研磨(CMP)を用いることができる。
【0042】
第1実施形態の効果を説明する。
半導体装置100では、フィールドプレートとして機能する構造体20が、第2方向D2及び第3方向D3において複数設けられている。この構造によれば、構造体20が一方向に連続的に延びている場合に比べて、電流経路となるn-形ドリフト領域1の体積を増大させることができる。これにより、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
また、半導体装置100では、ゲート電極10も、第2方向D2及び第3方向D3において複数設けられている。この構造によれば、ゲート電極10が一方向に連続的に延びている場合に比べて、より多くの領域にチャネルが形成される。チャネル密度が向上し、半導体装置100のオン抵抗がさらに低下する。
例えば、半導体装置100のオン抵抗が低下すると、半導体装置100を流れる電流密度を向上できる。電流密度の向上により、半導体装置100の小型化が可能となる。又は、所定の電流を流すために必要な半導体装置100の数を減らすことができる。
【0043】
一方で、製造方法において説明した通り、結晶方位ごとに、シリコンの酸化速度の違いが生じる。具体的には、シリコンの結晶面の[100]方向における酸化速度は、[100]方向に対して傾斜した方向における酸化速度よりも遅い。酸化速度の違いにより、例えば
図6に表したように、n
-形ドリフト領域1にn形不純物濃度の分布が生じる。すなわち、構造体20と第3方向D3で並ぶ第2部分1bにおけるn形不純物濃度は、構造体20と第2方向D2で並ぶ第1部分1aにおけるn形不純物濃度よりも高い。さらに、上述した通り、シリコン結晶面の方位に応じた酸化速度の違いにより、第3方向D3における絶縁部21の厚さT1は、第2方向D2における絶縁部21の厚さT2よりも大きい。絶縁部21の厚さ及びn形不純物濃度の分布により、半導体装置100がオフ状態でドレイン電極に正電圧を印加したとき、空乏層が第3方向D3へ広がり難くなる。
【0044】
参考例として、第2方向D2における構造体同士の間の距離が、第3方向D3における構造体同士の間の距離と同じ半導体装置が挙げられる。この参考例に係る半導体装置では、耐圧の低下を抑制するためには、n-形ドリフト領域1における不純物濃度を低下させる必要がある。n-形ドリフト領域1における不純物濃度を低下させることで、第3方向D3において空乏層の広がりが改善される。しかし、この場合、半導体装置のオン抵抗が増大する。
【0045】
第1実施形態に係る半導体装置100では、
図5に表したように、第3方向D3において隣り合う構造体20同士の間の第1距離Di1が、第2方向D2において隣り合う構造体20同士の間の第2距離Di2よりも短い。第1距離Di1が第2距離Di2よりも短いと、第3方向D3において構造体20同士の間に位置するn
-形ドリフト領域1が空乏化し易くなる。第2方向D2と第3方向D3における空乏層の広がりの差による、耐圧の低下を抑制できる。
また、第1距離Di1と第2距離Di2の調整により耐圧を維持できるため、n
-形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度を低下させる必要が無い。このため、第1実施形態によれば、参考例に比べて、n
-形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
【0046】
図11は、参考例及び第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するシミュレーション結果である。
図11(a)は、参考例に係る半導体装置の特性を表す。
図11(b)は、第1実施形態に係る半導体装置100の特性を表す。
図11(a)及び
図11(b)は、構造体20同士の間に位置するn
-形ドリフト領域1の各点における電界強度を表す。参考例に係る半導体装置では、
図11(a)に表したように、n
-形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度の分布に起因して、電界強度にも分布が生じている。第1実施形態に係る半導体装置100では、第1距離Di1を第2距離Di2よりも短くすることで、構造体20同士の間のn
-形ドリフト領域1が空乏化し易くなる。この結果、
図11(b)に表したように、電界強度の分布が改善される。
【0047】
第1距離Di1を第2距離Di2よりも短くするために、例えば
図5に表したように、第1ピッチP1が第2ピッチP2よりも短縮される。第1ピッチP1を第2ピッチP2よりも短縮することで、第3方向D3における構造体20の密度を向上できる。すなわち、チャネル密度を向上できる。これにより、半導体装置100のオン抵抗をさらに低減できる。
【0048】
例えば、第1部分1aにおけるn形不純物濃度に対する、第2部分1bにおけるn形不純物濃度の比は、0.7以上0.95以下である。耐圧及びオン抵抗の観点から好ましい一例として、第2距離Di2に対する第1距離Di1の比は、0.5以上0.95以下である。第1ピッチP1に対する第2ピッチP2の比は、0.7以上0.98以下である。
【0049】
半導体装置100では、第1方向D1から見たときの構造体20の形は、六角形状である。複数の構造体20は、第1方向D1に垂直な面において、最も密となるようにハニカム状に配列されている。六角形状の構造体20が最も密になるように配列されることで、構造体20同士の間に位置するn-形ドリフト領域1の幅をより均一にできる。これにより、半導体装置100の耐圧をさらに向上できる。又は、半導体装置100の耐圧を維持したまま、n-形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
また、半導体装置100では、ゲート電極10が、絶縁部21中に設けられている。構造体20の密度が向上することで、チャネル密度も向上する。これにより、半導体装置100のオン抵抗をさらに低減できる。
【0050】
(第1変形例)
図12及び
図13は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
図12に表した半導体装置111では、構造体20の形が、第1方向D1から見たときに円状である。
図13に表した半導体装置112では、構造体20の形が、第1方向D1から見たときに八角形状である。これらの変形例に係る半導体装置についても、製造過程において、[100]方向における酸化速度は、[100]方向に対して傾斜した方向における酸化速度よりも遅い。この結果、n
-形ドリフト領域1にn形不純物濃度の分布が生じる。
【0051】
半導体装置111及び112では、半導体装置100と同様に、第1距離Di1が第2距離Di2よりも短い。第1距離Di1を第2距離Di2よりも短くすることで、半導体装置111及び112の耐圧を維持しつつ、半導体装置111及び112のオン抵抗を低減できる。
【0052】
半導体装置111及び112のその他の構造は、半導体装置100と同様の構造を適用できる。例えば
図12及び
図13に表したように、半導体装置111及び112において、第1ピッチP1は第2ピッチP2よりも短い。n
-形ドリフト領域1は、第1部分1a及び第2部分1bを含む。第2部分1bにおけるn形不純物濃度は、第1部分1aにおけるn形不純物濃度よりも高い。
【0053】
ただし、より好ましくは、第1方向D1から見たときの構造体20の形は、六角形状である。構造体20の形を六角形状にすることで、複数の構造体20を最も密に配列できるためである。
【0054】
(第2変形例)
図14は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
第2変形例に係る半導体装置120では、半導体装置100と同様に、第1距離Di1は第2距離Di2よりも短い。ただし、第1ピッチP1は、第2ピッチP2と同じである。構造体20の第3方向D3における長さL3は、構造体20の第2方向D2における長さL4よりも長い。
【0055】
第2変形例によれば、半導体装置100と同様に、半導体装置120の耐圧を維持しつつ、半導体装置120のオン抵抗を低減できる。ただし、より好ましくは、半導体装置100のように、第1ピッチP1は第2ピッチP2よりも短い。第1ピッチP1を第2ピッチP2よりも短くすることで、構造体20の密度を向上できる。この結果、チャネル密度が向上し、半導体装置のオン抵抗をさらに低減できる。
【0056】
半導体装置120のその他の構造は、半導体装置100と同様の構造を適用できる。例えば、n-形ドリフト領域1は、複数の第1部分1a及び複数の第2部分1bを含む。第2部分1bにおけるn形不純物濃度は、第1部分1aにおけるn形不純物濃度よりも高い。
【0057】
変形例に示したように、構造体20の形及び配列は、適宜変更可能である。いずれの形態においても、第1距離Di1を第2距離Di2よりも短くすることで、半導体装置の耐圧を維持しつつ、半導体装置のオン抵抗を低減できる。
【0058】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係る半導体装置の一部を表す平面図である。
図15では、ソース電極E2、絶縁層51、絶縁層52などが省略されている。
図16は、
図15のXVI-XVI断面図である。
図17は、
図16のXVII-XVII断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置200では、
図15及び
図16に表したように、ゲート電極10が構造体20から離れている。
【0059】
図15に表したように、ゲート電極10は、各構造体20の周りに設けられている。
図16に表したように、第2方向D2及び第3方向D3において、ゲート電極10と複数の構造体20との間には、複数のp形ベース領域2がそれぞれ設けられている。n
+形ソース領域3及びp
+形コンタクト領域4は、それぞれのp形ベース領域2の上に設けられている。ゲート電極10は、第2方向D2及び第3方向D3において、ゲート絶縁層11を介してp形ベース領域2と対向している。
【0060】
ソース電極E2は、複数のp形ベース領域2、複数のn+形ソース領域3、複数のp+形コンタクト領域4、ゲート電極10、及び複数の構造体20の上に設けられ、複数のp形ベース領域2、複数のn+形ソース領域3、複数のp+形コンタクト領域4、及び複数の導電部22と電気的に接続されている。
【0061】
図17に表したように、第2実施形態に係る半導体装置200においても、第1距離Di1は第2距離Di2よりも短い。これにより、半導体装置200の耐圧を維持しつつ、半導体装置200のオン抵抗を低減できる。
【0062】
また、半導体装置200においても、第1ピッチP1は第2ピッチP2よりも短い。これにより、半導体装置200のオン抵抗をさらに低減できる。n-形ドリフト領域1は、第1部分1a及び第2部分1bを含む。第2部分1bにおけるn形不純物濃度は、第1部分1aにおけるn形不純物濃度よりも高い。
【0063】
その他、第2実施形態に係る半導体装置200の構造と、第1実施形態の各変形例に係る半導体装置の構造と、を適宜組み合わせても良い。例えば、半導体装置200において、構造体20の形が、第1方向D1から見たときに円状又は八角形状であっても良い。第1ピッチP1と第2ピッチP2が同じであっても良い。
【0064】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 n-形ドリフト領域、 1a 第1部分、 1b 第2部分、 2 p形ベース領域、 3 n+形ソース領域、 4 p+形コンタクト領域、 5 n+形ドレイン領域、 10 ゲート電極、 11 ゲート絶縁層、 20 構造体、 20a 第1構造体、 20b 第2構造体、 20c 第3構造体、 21 絶縁部、 22 導電部、 30 ゲート配線、 41~43 接続部、 51,52 絶縁層、 100,111,112 ,120,200 半導体装置、 D1 第1方向、 D2 第2方向、 D3 第3方向、 Di1 第1距離、 Di2 第2距離、 E1 ドレイン電極、 E2 ソース電極、 E3 ゲートパッド、 P1 第1ピッチ、 P2 第2ピッチ、 S1 第1面、 S2 第2面、 SL 半導体層