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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】位置調整装置および超精密加工機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/18 20060101AFI20230613BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230613BHJP
   B23B 21/00 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
B23Q3/18 Z
B23Q3/18 D
B23Q11/00 A
B23B21/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020088289
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021016938
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019131738
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(72)【発明者】
【氏名】室田 真弘
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012168(JP,A)
【文献】実開昭60-117044(JP,U)
【文献】特開平03-055136(JP,A)
【文献】特開2002-100315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/18
B23Q 1/00 - 1/76
B24B 41/06
B25H 1/16
B23Q 11/00
B23B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持対象物の高さを調整する位置調整装置であって、
固定部と、
前記固定部に対して高さ方向に移動可能に設けられ、前記支持対象物を支持する移動部と、
前記固定部と前記移動部とに連結され、前記高さ方向に伸縮する伸縮部と、
前記固定部に対する前記移動部の前記高さ方向の位置を調整する調整機構と、
前記固定部および前記移動部に固定された板状の金属部材と、
を備え
前記固定部の側面と前記移動部の側面とが面一であり、
前記金属部材は、前記固定部の前記側面と前記移動部の前記側面とに前記金属部材の表面が接触した状態で、前記固定部および前記移動部に固定されている、位置調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置調整装置であって、
前記金属部材は材料に制振合金を含む、位置調整装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置調整装置であって、
前記金属部材には、第1貫通孔と第2貫通孔とが形成され、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との少なくとも一方は、前記高さ方向と直交する方向に貫通し且つ前記高さ方向に沿って延在する長孔であり、
前記固定部の前記側面には、前記第1貫通孔と連通する第1挿入穴が形成され、
前記移動部の前記側面には、前記第1貫通孔および前記第1挿入穴が連通するときに前記第2貫通孔と連通する第2挿入穴が形成され、
前記第1貫通孔および前記第1挿入穴に挿入されて前記固定部と前記金属部材とを締結する第1締結部材と、前記第2貫通孔および前記第2挿入穴に挿入されて前記移動部と前記金属部材とを締結する第2締結部材と、をさらに備える、位置調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置調整装置であって、
前記伸縮部は、ばねである、位置調整装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の位置調整装置であって、
前記固定部と前記移動部とは、前記高さ方向で互いに離間しており、
前記調整機構は、前記移動部と前記固定部との間に設けられ、
前記伸縮部は、前記固定部の側方に設けられている、位置調整装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の位置調整装置であって、
前記固定部と前記移動部とは、前記高さ方向で互いに離間しており、
前記調整機構は、前記移動部と前記固定部とに接触した楔状のスライド部材と、操作されることで前記スライド部材を前記高さ方向に直交するスライド方向に沿ってスライド移動させる操作部と、を有し、
前記移動部および前記固定部のいずれか一方は、前記スライド部材に接触する面であって、前記スライド方向に沿って高さが変化する傾斜面を有する、位置調整装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置調整装置であって、
前記伸縮部は、前記スライド方向における前記固定部の両側方に設けられる、位置調整装置。
【請求項8】
請求項7に記載の位置調整装置であって、
前記スライド部材は、前記スライド方向において、前記固定部の両側方に設けられた前記伸縮部同士の間に設けられる、位置調整装置。
【請求項9】
請求項6に記載の位置調整装置であって、
前記スライド部材は、前記スライド方向において互いに対称的に設けられ、且つ、前記操作部が操作されることに応じて前記スライド方向において互いに対称的にスライド移動する第1の前記スライド部材と第2の前記スライド部材とを有し、
前記傾斜面は、第1の前記スライド部材に接触する第1の前記傾斜面と、前記スライド方向において第1の前記傾斜面とは対称的に傾斜し、第2の前記スライド部材に接触する第2の前記傾斜面とを有する、位置調整装置。
【請求項10】
支持対象物の高さを調整する位置調整装置であって、
固定部と、
前記固定部に対して高さ方向に移動可能に設けられ、前記支持対象物を支持する移動部と、
前記固定部と前記移動部とに連結され、前記高さ方向に伸縮する伸縮部と、
前記固定部に対する前記移動部の前記高さ方向の位置を調整する調整機構と、
前記固定部および前記移動部に固定された金属部材と、
を備え、
前記固定部と前記移動部とは、前記高さ方向で互いに離間しており、
前記調整機構は、前記移動部と前記固定部とに接触した楔状のスライド部材と、操作されることで前記スライド部材を前記高さ方向に直交するスライド方向に沿ってスライド移動させる操作部と、を有し、
前記移動部および前記固定部のいずれか一方は、前記スライド部材に接触する面であって、前記スライド方向に沿って高さが変化する傾斜面を有し、
前記スライド部材は、前記スライド方向において互いに対称的に設けられ、且つ、前記操作部が操作されることに応じて前記スライド方向において互いに対称的にスライド移動する第1の前記スライド部材と第2の前記スライド部材とを有し、
前記傾斜面は、第1の前記スライド部材に接触する第1の前記傾斜面と、前記スライド方向において第1の前記傾斜面とは対称的に傾斜し、第2の前記スライド部材に接触する第2の前記傾斜面とを有し、
前記伸縮部は、第1の前記スライド部材と第2の前記スライド部材との間に設けられる、位置調整装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の位置調整装置であって、
前記移動部は、支持した前記支持対象物の傾きを調整するための傾き調整機構をさらに有する、位置調整装置。
【請求項12】
100nm以下の指令にしたがって加工対象物を加工する超精密加工機であって、
請求項1~11のいずれか1項に記載の位置調整装置を備える、超精密加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象物の位置について少なくとも高さを調整する位置調整装置および超精密加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業台に載置される下半部16と、支持対象物である切断物を支持する上半部15と、下半部16と上半部15とを接続する弧形接続部17と、を備えた治具が開示されている。開示の治具は、上半部15が弧形接続部17に接続されたまま下半部16に対して位置を調整することで、上半部15に支持される支持対象物の位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3112302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持対象物の位置を調整するための装置は、一般に、複数のパーツを連結した構造を有する。この構造は、パーツ同士の連結部分に負荷が集中しやすく、剛性の観点で問題が生じやすい。例えば、特許文献1の治具について、上半部15の位置を下半部16から浮くように調整してから、支持対象物を上半部15に載せたとする。このとき、上半部15および弧形接続部17に負荷が集中することにより、上半部15および弧形接続部17が歪みやすい。その場合、特許文献1の治具によって支持対象物の位置決めを精度よく行うことは難しい。
【0005】
また、支持対象物が工具である場合、当該工具は加工の実行中に振動する。このとき、工具と当該工具を支持した装置との間に共振が引き起こされると、加工の精度が悪化するという問題も生じる。
【0006】
そこで、本発明は、剛性および振動の減衰性が良好な位置調整装置および超精密加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一つの態様は、支持対象物の高さを調整する位置調整装置であって、固定部と、前記固定部に対して前記高さ方向に移動可能に設けられ、前記支持対象物を支持する移動部と、前記固定部と前記移動部とに連結され、前記高さ方向に伸縮する伸縮部と、前記固定部に対する前記移動部の前記高さ方向の位置を調整する調整機構と、前記固定部および前記移動部に固定された金属部材と、を備える。
【0008】
発明のもう一つの態様は、100nm以下の指令にしたがって加工対象物を加工する超精密加工機であって、上記態様の位置調整装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剛性および振動の減衰性が良好な位置調整装置および超精密加工機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態の位置調整装置の斜視図である。
図2】第1の実施の形態の位置調整装置の分解図である。
図3】第1の実施の形態の位置調整装置の本体の側面図である。
図4】位置調整装置を備える超精密加工機の模式図である。
図5】変形例1-1の位置調整装置の分解図である。
図6】変形例1-1の位置調整装置の本体の側面図である。
図7】変形例1-5の位置調整装置の本体の側面図である。
図8】第2の実施の形態の位置調整装置の斜視図である。
図9】第2の実施の形態の位置調整装置の分解図である。
図10】第2の実施の形態の位置調整装置の本体の側面図である。
図11】変形例2-1の位置調整装置の本体の側面図である。
図12】変形例2-2の位置調整装置の本体の側面図である。
図13】変形例2-3の位置調整装置の本体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る位置調整装置および超精密加工機について、好適な第1の実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に記載する各方向は、各図面に示された矢印に従うものとする。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の位置調整装置10の斜視図である。図2は、第1の実施の形態の位置調整装置10の分解図である。
【0013】
位置調整装置10は、少なくとも高さ方向(上下方向)での支持対象物12の位置を調整する装置である。位置調整装置10により、オペレータは、所望する高さに支持対象物12を容易に維持することができる。支持対象物12は、限定されないが、本実施の形態では工作機械の工具12とする。
【0014】
位置調整装置10は、工具12を支持する本体14と、略矩形の板状である金属部材16と、本体14と金属部材16とを互いに固定(締結)する第1締結部材18および第2締結部材20と、を有する。
【0015】
本体14は、作業台や床などに載置される固定部22と、固定部22に対して高さ方向に移動可能に設けられ、工具12を支持する移動部24と、を備える。また、本体14は、固定部22と移動部24とに連結され、高さ方向に伸縮する伸縮部26と、固定部22に対する移動部24の高さ方向の位置を調整する調整機構28と、をさらに備える。
【0016】
固定部22は、例えば合金材料からなる。固定部22は、移動部24側(上方向側)に、高さ方向と直交する奥行方向(前後方向)に沿って傾斜した傾斜面22aを有する。傾斜面22aは、本実施の形態(図2)では前方向から後方向に向かって上方向に傾斜しているが、あくまでも一例であり、前方向から後方向に向かって下方向に傾斜してもよい。
【0017】
高さ方向および奥行方向と直交する幅方向(左右方向)での固定部22の右方向側の側面22bには、第1挿入穴30が形成される。第1挿入穴30の形状は、図2では丸穴であるが、とくに限定されない。また、第1挿入穴30の数も、図2では「2」であるが、とくに限定されない。
【0018】
図示していないが、第1挿入穴30は、固定部22の左方向側の側面にも、右方向側の側面22bと同様に形成されていることとする。
【0019】
固定部22に形成された第1挿入穴30には、後述する金属部材16の第1貫通孔42が連通する。
【0020】
移動部24は、例えば固定部22と同じ合金材料からなる。移動部24は、工具12を支持し、高さ方向で固定部22と互いに離間する。移動部24の下面24aは、本実施の形態では高さ方向に直交する平面であり、調整機構28を挟んで固定部22の傾斜面22aと向かい合う。また、移動部24は、下面24aから下方向に向かって延在するように奥行方向での両端にそれぞれ設けられた脚部32を有する。
【0021】
脚部32を含む移動部24の右方向側の側面24bは、本実施の形態では、固定部22の側面22bと略面一である。側面24bには、第2挿入穴34が形成される。第2挿入穴34の形状は、図2では丸穴であるが、とくに限定されない。また、側面24bに形成される第2挿入穴34の数も、図2では「6」であるが、とくに限定されない。
【0022】
図示していないが、脚部32を含む移動部24の左方向側の側面は、固定部22の左方向側の側面と略面一である。また、移動部24の左方向側の側面には、右方向側の側面24bと同様に第2挿入穴34が形成される。
【0023】
移動部24に形成された第2挿入穴34には、固定部22の第1挿入穴30および金属部材16の第1貫通孔42が互いに連通するときに、後述する金属部材16の第2貫通孔44が連通する。
【0024】
伸縮部26は、本実施の形態では、固定部22および移動部24と同じ合金材料からなるクランク形状の部材であり、奥行方向での固定部22の側方に固定部22を挟んで2つ設けられる。2つの伸縮部26の各々は、一方の端部が固定部22に一体的に連結(連接)し、且つ他方の端部が移動部24の脚部32に一体的に連結(連接)する。
【0025】
固定部22および移動部24に連接し、高さ方向に伸縮するクランク形状の伸縮部26は、例えば1つの合金材料を工作機械によって加工することで、固定部22および移動部24と共に容易に製造することができる。なお、伸縮部26は上記に限定されない。伸縮部26は、例えば、弾性を有するばねでもよい。ばねは、部材として調達することが比較的容易である。
【0026】
図3は、第1の実施の形態の位置調整装置10の本体14の側面図である。なお、図3は、右方向からの視点である。
【0027】
調整機構28は、本実施の形態では、固定部22と移動部24との間に位置する。調整機構28は、2つの脚部32を奥行方向で貫通したコマ式のボールねじ(操作部)36と、ボールねじ36の回転に応じて奥行方向に沿ってスライド運動するようにボールねじ36に連結されたスライド部材40と、を有する。
【0028】
ボールねじ36の奥行方向での一方の端部には、操作(回転)時にオペレータが把持することを容易とするための把持部38が設けられている。スライド部材40は、移動部24の下面24aと固定部22の傾斜面22aとに高さ方向で接触する楔状であり、2つの脚部32の間の範囲でスライド移動する。
【0029】
オペレータは、ボールねじ36を操作する(回転させる)ことにより、移動部24で支持した工具12の高さを容易に調整することができる。
【0030】
例えば、オペレータが、ボールねじ36を回転させることで、スライド部材40を前方向から後方向に向かってスライド移動させたとする。このとき、スライド部材40は、後方向に向かいつつ、固定部22の傾斜面22aに沿って、上方向にも徐々に移動する。また、固定部22と移動部24とに連結された伸縮部26は、高さ方向に伸びる。移動部24は、上方向に徐々に移動してくるスライド部材40に持ち上げられることで、上方向に移動する。逆に、スライド部材40を後方向から前方向に向かわせるときは、前方向に移動しながら徐々に下方向にも移動するスライド部材40に合わせて、移動部24は下方向に移動する。このとき、伸縮部26は高さ方向に収縮する。
【0031】
金属部材16は、少なくとも金属を材料に含み、減衰性および剛性を補強するために本体14に締結される部材である。シンプルな略矩形の板状としたことにより、金属部材16は製造が容易である。
【0032】
金属部材16は、限定されないが、制振合金を材料に含むことが好ましい。「制振合金」とは、振動の減衰性能に優れた合金のことを指し、例えばマンガンをベースとした「M2056合金」が知られている。
【0033】
本実施の形態の金属部材16は、鉄をベースとした制振合金からなることとする。鉄は、調達が容易であり、且つマンガンと比較して剛性に優れる材料である。
【0034】
金属部材16には、幅方向に金属部材16を貫通した第1貫通孔42および第2貫通孔44が形成されている。本実施の形態の第1貫通孔42は、高さ方向に沿って延在する長孔である。第1貫通孔42の高さ方向での長さは、少なくとも、スライド部材40のスライド移動によって移動部24が固定部22に対して移動するときの、高さ方向での最大の長さとする。また、本実施の形態の第2貫通孔44は、丸孔である。
【0035】
本実施の形態では、右方向側において固定部22の側面22bと移動部24の側面24bとが略面一であり、且つ金属部材16が板状である。したがって、金属部材16は、固定部22および移動部24に対し、一様に密着することができる。左方向側においても同様である。
【0036】
このとき、第1貫通孔42は、上記したように固定部22の第1挿入穴30に連通する。本実施の形態のように第1挿入穴30が複数あるときは、第1貫通孔42も複数の第1挿入穴30と同じ数が形成され、複数の第1貫通孔42の各々が複数の第1挿入穴30の各々と連通する。
【0037】
連通した第1貫通孔42および第1挿入穴30には、第1締結部材18が挿入される。第1締結部材18は、例えばボルトやねじである。これにより、金属部材16と固定部22とが締結される。
【0038】
第2貫通孔44は、上記したように、第1挿入穴30および第1貫通孔42が連通したときに第2挿入穴34に連通する。また、第2貫通孔44は、第1貫通孔42と同様に、第2挿入穴34が複数あるときは、第2貫通孔44も複数の第2挿入穴34と同じ数が形成され、複数の第2貫通孔44の各々が複数の第2挿入穴34の各々と連通する。
【0039】
連通した第2貫通孔44および第2挿入穴34には、第2締結部材20が挿入される。第2締結部材20は、第1締結部材18と同様に、例えばボルトやねじである。これにより、金属部材16と移動部24とが締結される。
【0040】
本実施の形態では、第1貫通孔42が高さ方向に延在した長孔である。これにより、固定部22と移動部24との相対的な位置関係が高さ方向で変化しても、第1貫通孔42と第1挿入穴30とが連通し、且つ第2貫通孔44と第2挿入穴34とが連通した状態が維持される。したがって、本実施の形態では、高さ方向での固定部22と移動部24との相対的な位置関係に依らず、固定部22と金属部材16とを締結し、且つ移動部24と金属部材16とを締結することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、金属部材16が高さ方向以外の方向で本体14に接して締結される。これにより、工具12の高さを調整した後で金属部材16を本体14に締結するときに、締結の軸力による歪みが高さ方向には発生せず、調整した工具12の高さが意図せず変化してしまうことが防止される。このように、本実施の形態の位置調整装置10は、オペレータにとって扱いやすい。
【0042】
本体14に金属部材16が締結されることで、剛性が補強され、移動部24に発生する振動が減衰される。とくに、本実施の形態では金属部材16に制振合金が含まれているため、移動部24に発生する振動がより好適に減衰される。移動部24に発生する振動とは、例えば、移動部24で工具12を支持した状態で、当該工具12により加工を行った際に発生する振動である。
【0043】
このように、本実施の形態の位置調整装置10は、剛性および振動の減衰性が良好である。
【0044】
なお、本実施の形態は上記に限定されない。例えば、操作部36は、スライド部材40を奥行方向にスライド移動させる機能と、スライド移動の後にスライド部材40を固定する機能と、を有していれば、操作部36の形態はボールねじに限定されない。
【0045】
固定部22の側面22bと、移動部24の側面24bとは、略面一でなくてもよい。本実施の形態では図示していない左方向側の固定部22の側面と移動部24の側面とについても同様である。また、金属部材16の形状は、移動部24と固定部22とに締結できる形状であれば、板状でなくてもよい。
【0046】
金属部材16は、幅方向での本体14の側面(22b、24b)ではなく、本体14の奥行方向での側面に締結されてもよい。
【0047】
固定部22、移動部24、および伸縮部26の各々の材料は、同一の合金材料に限定されない。例えば、固定部22の材料と伸縮部26の材料とが異なってもよい。
【0048】
上記では、位置調整装置10の支持対象が工作機械の工具12に限定されないことを説明した。位置調整装置10は、例えば、工作機械が工具12により加工する加工対象物を支持してもよい。加工中は、工具12により加工される加工対象物も振動することがある。位置調整装置10により加工対象物を支持することで、当該加工対象物の高さが容易に調整可能になるのみならず、加工中の加工対象物の振動が良好に減衰されるようになる。
【0049】
(適用例)
図4は、位置調整装置10を備える超精密加工機Mの模式図である。
【0050】
超精密加工機Mは、100nm(ナノメートル)以下の指令にしたがって、非常に高い加工精度で加工対象物を加工するための工作機械である。超精密加工機Mは、加工対象物を加工する工具12と、工具12を高さ調整可能に支持する位置調整装置10と、を備える。なお、図4では省略されているが、超精密加工機Mは、工具12を駆動させるための駆動装置(例えばモータ)、駆動装置を制御する制御装置、およびセンサなどをさらに備える。
【0051】
本実施の形態の位置調整装置10は、超精密加工機Mのような、高い加工精度が要求される工作機械に適用される場合に、とくに有効である。すなわち、超精密加工機Mが加工を実行する際は、工具12に振動が発生する。この振動は、例え微弱な振動であったとしても、100nm以下の指令にしたがう加工においては、加工精度に大きな悪影響を及ぼす。しかしながら、剛性および減衰性が良好な位置調整装置10を備えることにより、超精密加工機Mは、高い加工精度を容易に維持することができる。
【0052】
なお、上記の適用例はあくまでも一例である。位置調整装置10は、工具12を備える機械であれば、100nm以下の指令にしたがう工作機械に限らず適用することができる。また、上記したように、位置調整装置10により超精密加工機Mの加工対象物を支持してもよい。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の一例として第1の実施の形態が説明されたが、上記第1の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0054】
(変形例1-1)
図5は、変形例1-1の位置調整装置10の分解図である。図6は、変形例1-1の位置調整装置10の本体14の側面図である。なお、図6は、右方向からの視点である。
【0055】
移動部24は、支持した前記工具12の傾きを調整するための傾き調整機構46をさらに有してもよい。これにより、オペレータは、工具12の高さ調整のみならず、工具12の傾き調整をすることもできる。
【0056】
本変形例の傾き調整機構46は、高さ方向で工具12の下方になるように移動部24に形成された溝(以下、溝46)である。本変形例においては、図6のように、溝46を境とする移動部24の上方と下方とは、移動部24の前方向側の端部によってのみ連接する。
【0057】
オペレータは、移動部24の前方向側の端部を軸として移動部24の溝46よりも上方の傾きを調整することにより、工具12の傾き調整を容易に行うことができる。また、移動部24には、高さ方向で溝46に連通する孔48が形成されている。孔48に締結部材50を挿入して締結することで、傾き調整された状態が維持される。
【0058】
なお、上記では、前後方向での傾きを調整する傾き調整機構46を説明したが、本変形例をさらに変形することで、左右方向での傾きを調整できるように構成してもよい。
【0059】
(変形例1-2)
第1の実施の形態では、第1貫通孔42が、高さ方向に延在した長孔とした。位置調整装置10は、これに限定されず、第2貫通孔44を高さ方向に延在した長孔としてもよい。また、第1貫通孔42と第2貫通孔44との両方を、高さ方向に延在した長孔としてもよい。すなわち、位置調整装置10においては、第1貫通孔42と第2貫通孔44との少なくとも一方を、高さ方向に沿って延在する長孔としてもよい。
【0060】
これにより、高さ方向での移動部24と固定部22との位置関係が変化しても、金属部材16を移動部24と固定部22とに容易に締結することができる。
【0061】
(変形例1-3)
第1の実施の形態では、本体14の幅方向での両側に金属部材16を固定した。位置調整装置10の構成はこれに限定されず、本体14の幅方向での一方側のみに金属部材16が固定される構成でもよい。
【0062】
本体14の幅方向での一方側のみに金属部材16を締結する場合であっても、その金属部材16により、移動部24に発生する振動を減衰させることは可能である。したがって、本変形例によれば、部品点数を削減することができる。
【0063】
(変形例1-4)
第1の実施の形態では、金属部材16が本体14に締結された構成を説明した。本体14に金属部材16を固定する手段は、締結に限定されない。例えば、金属部材16を本体14に押し付けることにより、本体14に金属部材16を固定してもよい。
【0064】
金属部材16を本体14に押し付ける手段はとくに限定されない。例えば、ピエゾ素子を用いて、金属部材16に本体14の方向への圧力を加えてもよい。ピエゾ素子に代えて油圧式のプレス装置を用いてもよい。このとき、本体14の幅方向での位置ずれを防止するために、本体14の幅方向での両側から圧力を加えてもよいし、その他の固定手段によって本体14の位置を固定してもよい。
【0065】
これにより、第1の実施の形態と同様に、剛性および振動の減衰性が良好な工具12の位置調整装置10を得ることができる。
【0066】
(変形例1-5)
第1の実施の形態では、固定部22が傾斜面22aを有する本体14の構成を説明した(図3参照)。本体14の構成は、これに限定されない。
【0067】
図7は、変形例1-5の位置調整装置10の本体14の側面図である。
【0068】
図7に示すように、固定部22が前後左右方向に平行な上面22a’を傾斜面22aに代えて有することとし、移動部24が前後方向に対して傾斜した傾斜面24a’を有することとしてもよい。
【0069】
スライド部材40は、本変形例においては傾斜面24a’に沿いつつ、前後方向にスライド移動する。このスライド移動は、第1の実施の形態と同様に、操作部36を操作することにより行われる。また、スライド部材40のスライド移動に伴って移動部24を上下方向に移動させることができる点も第1の実施の形態と同様である。
【0070】
したがって、本体14が本変形例の構成を有する場合においても、オペレータは、移動部24で支持した工具12の高さを容易に調整することができる。
【0071】
(変形例1-6)
上記第1の実施の形態および各変形例は、矛盾の生じない範囲内で適宜組み合わされてもよい。
【0072】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態の位置調整装置について説明する。ただし、第1の実施の形態で説明した要素には同名同符号を付し、その説明を割愛することがある。
【0073】
図8は、第2の実施の形態の位置調整装置52の斜視図である。図9は、第2の実施の形態の位置調整装置52の分解図である。
【0074】
本実施の形態の位置調整装置52は、本体54と、金属部材16と、第1締結部材18と、第2締結部材20と、を有する。これらのうち、金属部材16、第1締結部材18および第2締結部材20は、第1の実施の形態あるいは変形例1-1~変形例1-6で説明した同名同符号の要素と同様である。
【0075】
図10は、第2の実施の形態の位置調整装置52の本体54の側面図である。
【0076】
本体54の構成について説明する。本体54は、工具12を支持するものである。本体54は、固定部56と、移動部58と、伸縮部60と、調整機構62と、を備える。固定部56と移動部58とは高さ方向で互いに離間して設けられ、伸縮部60と調整機構62とは固定部56と移動部58との間に設けられる。
【0077】
固定部56は、作業台や床などに載置されるものであって、移動部58に対しては下方向側に設けられる。固定部56は、例えば合金材料からなる。
【0078】
固定部56の幅方向(左右方向)での両側面には、金属部材16の第1貫通孔42と連通する第1挿入穴30が形成される。互いに連通した第1貫通孔42および第1挿入穴30には、第1締結部材18が挿入される。これにより、固定部56と金属部材16とが連結される。
【0079】
固定部56は、後で説明する第1のスライド部材40Fと第2のスライド部材40Bとの間で移動部58側に突出する突出部64を有する。また、固定部56は、前後方向で突出部64の両側で延在する上面56aを有する。上面56aは、本実施の形態では前後左右方向に対して平行に延在する。
【0080】
移動部58は、固定部56に対して高さ方向に移動可能に設けられると共に、工具12を支持するものである。移動部58は、例えば固定部56と同じ合金材料からなる。
【0081】
移動部58の幅方向での両側面には、金属部材16の第2貫通孔44と連通する第2挿入穴34が形成される。互いに連通した第2貫通孔44および第2挿入穴34には、第2締結部材20が挿入される。これにより、移動部58と金属部材16とが連結される。
【0082】
移動部58は、固定部56側の面であって、前後方向にかけて高さが変化する傾斜面58a(58a1、58a2)を有する。傾斜面58aは、前後方向で互いに対称的に設けられる第1の傾斜面58a1と第2の傾斜面58a2とを有する。
【0083】
第1の傾斜面58a1は第2の傾斜面58a2よりも前方向側に設けられ、本実施の形態では前方向側から後方向側にかけて低くなる移動部58の面である。また、第2の傾斜面58a2は、後方向側から前方向側にかけて低くなる移動部58の面である。
【0084】
伸縮部60は、固定部56と移動部58とを連結すると共に、高さ方向で伸縮する部材である。本実施の形態の伸縮部60は、固定部56および移動部58と同じ材料からなり、自己の伸縮を許容するクランク形状を有する。ただし、第1の実施の形態で説明した同名の伸縮部26と同様に、弾性を有するばねであってもよい。
【0085】
伸縮部60は、前後方向では第1の傾斜面58a1と第2の傾斜面58a2との間に設けられる。また、本実施の形態では、固定部56に対しては突出部64に連結されるものとする。
【0086】
調整機構62は、固定部56に対する移動部58の高さ方向での位置をオペレータが適宜調整することを可能とする機構である。調整機構62は、操作部66と、スライド部材40と、を有する。
【0087】
これらのうち、スライド部材40は、第1の実施の形態でも説明した楔状の部材である。ただし、図10に示すように、本実施の形態ではスライド部材40の数を2とし、それぞれを前後方向で対称的に設ける。
【0088】
以下、2つのスライド部材40のうち、前方向側を第1のスライド部材40Fとし、後方向側を第2のスライド部材40Bとする。第1のスライド部材40Fは、固定部56の上面56aと移動部58の第1の傾斜面58a1との間に、これらに接触するように設けられる。また、第2のスライド部材40Bは、固定部56の上面56aと移動部58の第2の傾斜面58a2との間に、これらに接触するよう設けられる。
【0089】
操作部66は、オペレータに操作されることで第1のスライド部材40Fと第2のスライド部材40Bとを同時且つ前後方向に対称的にスライド移動させるものである。本実施の形態の操作部66は、ねじ軸68と、ねじ軸68に螺合するナット70と、を有するコマ式のボールねじ機構である。
【0090】
ねじ軸68は、前後方向を軸方向とし、第1のスライド部材40F、固定部56の突出部64、および第2のスライド部材40Bを挿通する棒状部材である。ねじ軸68は突出部64に設けられる軸受72によって支持される。軸受72は、ねじ軸68の軸方向の移動(位置ずれ)を規制しつつ、ねじ軸68が回転することを許容する。
【0091】
ねじ軸68には、突出部64を挿通した状態で突出部64よりも前方向側の第1の溝部74Fと、突出部64よりも後方向側の第2の溝部74Bとが形成される。第1の溝部74Fおよび第2の溝部74Bは、いずれもナット70をねじ軸68に螺合するために形成されるねじ溝(ねじ山)であるが、ねじ方向が互いに異なる。例えば、第1の溝部74Fが右ねじのねじ溝である場合、第2の溝部74Bは逆ねじ(左ねじ)のねじ溝である。
【0092】
ナット70は、第1のナット70Fと第2のナット70Bとを有する。これらのうち、第1のナット70Fは、ねじ軸68の第1の溝部74Fに螺合するナット70である。第2のナット70Bは、ねじ軸68の第2の溝部74Bに螺合するナット70である。
【0093】
ねじ軸68に螺合した第1のナット70Fおよび第2のナット70Bは、いずれもねじ軸68の回転に応じて前後方向に移動する。ただし、ねじ軸68の回転時における第1のナット70Fおよび第2のナット70Bの各々の移動方向は、第1の溝部74Fのねじ方向と第2の溝部74Bのねじ方向とが互いに異なっているために、互いに対称的となる。例えば、第1のナット70Fが前方向に移動するとき、それと同時に、第2のナット70Bは後方向に移動する。
【0094】
第1のナット70Fは、第1のスライド部材40Fに連結される。これにより、第1のスライド部材40Fは、第1のナット70Fの前後移動に伴ってスライド移動するようになる。また、第2のナット70Bは、第2のスライド部材40Bに連結される。これにより、第2のスライド部材40Bは、第2のナット70Bの前後移動に伴って、第1のスライド部材40Fとは対称的にスライド移動するようになる。
【0095】
オペレータは、操作部66を操作することにより、第1のスライド部材40Fおよび第2のスライド部材40Bを同時且つ対称的にスライド移動させ、移動部58の高さ方向での位置を容易に調整することができる。ここで言う操作とは、操作部66のねじ軸68を回転させる作業のことを指す。
【0096】
ねじ軸68には、図10に示すように、把持部38を取り付けてもよい。あるいは、図示は割愛するが手回し式のハンドルをねじ軸68に取り付けてもよい。これにより、オペレータは、操作部66の操作を容易に行うことができる。
【0097】
以上が、本実施の形態の位置調整装置52の構成例である。以上の位置調整装置52によれば、第1の実施の形態の位置調整装置10と同様に、オペレータは工具12の高さ方向での位置を容易に調整することができる。
【0098】
また、工具12を支持する本体54に対しては、金属部材16が固定される。したがって、本実施の形態の位置調整装置52は、第1の実施の形態の位置調整装置10と同様に、剛性および振動の減衰性が良好である。
【0099】
さらに、本実施の形態では、第1のスライド部材40Fと第2のスライド部材40Bとが互いに前後方向で対称的にスライド移動するように構成される。この構成によれば、第1のスライド部材40Fと第1の傾斜面58a1との間に生じる摩擦力と、第2のスライド部材40Bと第2の傾斜面58a2との間に生じる摩擦力とが互いに対向してキャンセルされる。その結果として、上記の摩擦力を原因とする移動部58の意図しない姿勢変化や変形、延いては移動部58に支持された工具12の意図しない姿勢変化を抑制することができる。
【0100】
位置調整装置52は、100nm以下の指令にしたがって加工を行う超精密加工機Mの工具12を支持させる場合に、特に有効である。すなわち、100nm以下という非常に細かな加工精度が要求される超精密加工機Mにおいては、工具12の姿勢がわずかに変化するだけで、出来上がる加工品の品質が大きく異なってしまう。その点、位置調整装置52によれば、超精密加工機Mの工具12の姿勢変化が好適に抑制される。したがって、超精密加工機Mの加工品質を安定的且つ良好なものにすることができる。
【0101】
なお、位置調整装置10と同様に、位置調整装置52の構成は、以上の説明の趣旨から逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。以下に、その具体的な例をいくつか説明する。
【0102】
(変形例2-1)
図11は、変形例2-1の位置調整装置52の本体54の側面図である。
【0103】
図11に示すように、固定部56が、移動部58側であって突出部64の前後側に、前後方向に対して互いに対称的に傾斜した傾斜面56a’を有してもよい。この場合、移動部58は、例えば前後左右方向に平行に延在する下面58a’を、第1のスライド部材40Fおよび第2のスライド部材40Bに接触する固定部56側の面として有する。
【0104】
以下、第1の傾斜面58a1および第2の傾斜面58a2との区別のために、本変形例の固定部56が有する2つの傾斜面56a’を、第3の傾斜面56a’1および第4の傾斜面56a’2と呼ぶ。第3の傾斜面56a’1は突出部64よりも前方向側であり、第4の傾斜面56a’2は突出部64よりも後方向側である。
【0105】
第3の傾斜面56a’1および第4の傾斜面56a’2は、前後方向で互いに対称的に設けられる。本変形例では、第3の傾斜面56a’1は前方向から後方向にかけて低くなるものとする。また、第4の傾斜面56a’2は後方向から前方向にかけて低くなるものとする。
【0106】
以上の構成を有する位置調整装置52においても、オペレータは、操作部66を操作することにより、移動部58の高さ方向での位置を容易に調整することが可能である。
【0107】
(変形例2-2)
図12は、変形例2-2の位置調整装置52の本体54の側面図である。
【0108】
図12に示すように、第1の傾斜面58a1を後方向側から前方向側にかけて低くなるものとし、第2の傾斜面58a2を前方向側から後方向側にかけて低くなるものとしてもよい。
【0109】
(変形例2-3)
図13は、変形例2-3の位置調整装置52の本体54の側面図である。
【0110】
図13に示すように、第3の傾斜面56a’1を後方向側から前方向側にかけて低くなるものとし、第4の傾斜面56a’2を前方向側から後方向側にかけて低くなるものとしてもよい。
【0111】
(変形例2-4)
移動部58は、移動部24と同様に、傾き調整機構46をさらに有してもよい。
【0112】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0113】
<第1の発明>
支持した支持対象物(12)の高さを調整する位置調整装置(10、52)であって、固定部(22、56)と、前記固定部(22、56)に対して前記高さ方向に移動可能に設けられ、前記支持対象物(12)を支持する移動部(24、58)と、前記固定部(22、56)と前記移動部(24、58)とに連結され、前記高さ方向に伸縮する伸縮部(26、60)と、前記固定部(22、56)に対する前記移動部(24、58)の前記高さ方向の位置を調整する調整機構(28、62)と、前記固定部(22、56)および前記移動部(24、58)に固定された金属部材(16)と、を備える。
【0114】
これにより、剛性および振動の減衰性が良好な位置調整装置(10、52)が提供される。支持対象物(12)は、とくに限定されず、例えば工作機械の工具や加工対象物でもよい。
【0115】
前記金属部材(16)は、材料に制振合金を含んでもよい。これにより、移動部(24、58)に発生する振動がより好適に減衰される。
【0116】
前記金属部材(16)には、第1貫通孔(42)と第2貫通孔(44)とが形成され、前記第1貫通孔(42)と前記第2貫通孔(44)との少なくとも一方は、前記高さ方向と直交する方向に貫通し且つ前記高さ方向に沿って延在する長孔であり、前記固定部(22、56)には、前記第1貫通孔(42)と連通する第1挿入穴(30)が形成され、前記移動部(24、58)には、前記第1貫通孔(42)および前記第1挿入穴(30)が連通するときに前記第2貫通孔(44)と連通する第2挿入穴(34)が形成され、前記第1貫通孔(42)および前記第1挿入穴(30)に挿入されて前記固定部(22、56)と前記金属部材(16)とを締結する第1締結部材(18)と、前記第2貫通孔(44)および前記第2挿入穴(34)に挿入されて前記移動部(24、58)と前記金属部材(16)とを締結する第2締結部材(20)と、をさらに備えてもよい。これにより、高さ方向での移動部(24、58)と固定部(22、56)との位置関係が変化しても、金属部材(16)を移動部(24、58)と固定部(22、56)とに容易に締結することができる。
【0117】
前記伸縮部(26、60)は、ばねでもよい。これにより、剛性および振動の減衰性が良好な位置調整装置(10、52)が提供される。
【0118】
前記固定部(22、56)と前記移動部(24、58)とは、前記高さ方向で互いに離間しており、前記調整機構(28、62)は、前記移動部(24、58)と前記固定部(22、56)との間に設けられ、前記伸縮部(26、60)は、前記固定部(22、56)の側方に設けられてもよい。これにより、剛性および振動の減衰性が良好な位置調整装置(10、52)が提供される。
【0119】
前記固定部(22、56)と前記移動部(24、58)とは、前記高さ方向で互いに離間しており、前記調整機構(28、62)は、前記移動部(24、58)と前記固定部(22、56)とに接触した楔状のスライド部材(40)と、操作されることで前記スライド部材(40)を前記高さ方向に直交するスライド方向に沿ってスライド移動させる操作部(36)と、を有し、前記移動部(24、58)および前記固定部(22、56)のいずれか一方は、前記スライド部材(40)に接触する面であって、前記スライド方向に沿って高さが変化する傾斜面(22a、24a’、56a’、58a)を有してもよい。これにより、操作部(36)を操作することで、移動部(24、58)の固定部(22、56)に対する高さを容易に調整することができる。
【0120】
前記伸縮部(26)は、前記スライド方向における前記固定部(22)の両側方に設けられてもよい。これにより、スライド部材(40)のスライド移動に伴って2つの伸縮部(26)が高さ方向で均等に伸縮するので、移動部(24)の姿勢がより安定する。
【0121】
前記スライド部材(40)は、前記スライド方向において、前記固定部(22)の両側方に設けられた前記伸縮部(26)同士の間に設けられてもよい。これにより、例えば、位置調整装置(10)をコンパクトに構成できる。
【0122】
前記スライド部材(40)は、前記スライド方向において互いに対称的に設けられ、且つ、前記操作部(66)が操作されることに応じて前記スライド方向において互いに対称的にスライド移動する第1の前記スライド部材(40F)と第2の前記スライド部材(40B)とを有し、前記傾斜面(56a’、58a)は、第1の前記スライド部材(40F)に接触する第1の前記傾斜面(56a’1、58a1)と、前記スライド方向において第1の前記傾斜面(56a’1、58a1)とは対称的に傾斜し、第2の前記スライド部材(40B)に接触する第2の前記傾斜面(56a’2、58a2)とを有してもよい。これにより、第1のスライド部材(40F)と第2のスライド部材(40B)とが互いに対称的にスライド移動するので、移動部(58)の姿勢がより安定する。
【0123】
前記伸縮部(60)は、第1の前記スライド部材(40F)と第2の前記スライド部材(40B)との間に設けられてもよい。これにより、例えば、位置調整装置(52)をコンパクトに構成できる。
【0124】
前記移動部(24、58)は、支持した前記支持対象物(12)の傾き調整をするための傾き調整機構(46)をさらに有してもよい。これにより、支持対象物(12)の高さ調整のみならず、支持対象物(12)の傾き調整をすることもできる。
【0125】
<第2の発明>
100nm以下の指令にしたがって加工対象物を加工する超精密加工機(M)であって、上記<第1の発明>の位置調整装置(10、52)を備える。
【0126】
これにより、剛性および振動の減衰性が良好な超精密加工機(M)が提供される。また、このような超精密加工機(M)においては、良好な加工精度を容易に維持することができる。
【符号の説明】
【0127】
10、52…位置調整装置 12…支持対象物(工具)
16…金属部材 18…第1締結部材
20…第2締結部材 22、56…固定部
22a、24a’、56a’、58a…傾斜面
24、58…移動部 26、60…伸縮部
28、62…調整機構 30…第1挿入穴
34…第2挿入穴 36、66…操作部
40…スライド部材 42…第1貫通孔
44…第2貫通孔 46…傾き調整機構
M…超精密加工機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13