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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】力覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/1627 20200101AFI20230613BHJP
【FI】
G01L5/1627
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020111196
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010550
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173795
【氏名又は名称】公益財団法人電磁材料研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小坂 雄介
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 英二
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0120809(US,A1)
【文献】特開2018-179806(JP,A)
【文献】特開2005-300465(JP,A)
【文献】特開2003-083824(JP,A)
【文献】特開2005-121603(JP,A)
【文献】特開2000-227373(JP,A)
【文献】特表2019-518215(JP,A)
【文献】特表2007-500361(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01503196(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1713386(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第110987271(CN,A)
【文献】米国特許第09404823(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0045372(US,A1)
【文献】米国特許第09869597(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/1627,3/10,3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1軸、第2軸および第3軸により設定される直交座標系の各軸方向の力および各軸周りのモーメントの内少なくとも1つを検出する力覚センサであって、
第3軸が貫通するように形成される第1構造体と、
前記第1軸および前記第2軸により形成される基準平面において前記第1軸および前記第2軸に沿って前記第1構造体から放射状にそれぞれ延出する4つの起歪部と、
前記起歪部を介して前記第1構造体に接続する第2構造体と、を有し、
前記起歪部は、
前記第1構造体と接続する第1接続部と、前記第1接続部から第2構造体に向かって2つに分岐して互いに離間する方向に延びる1組の梁状部分である第1分岐部と、前記第1分岐部との間に屈曲部を介してそれぞれ接続し、互いに近づく方向に延びる1組の梁状部分である第2分岐部と、前記第2分岐部が合流して前記第2構造体に接続する第2接続部と、を有し、
前記起歪部を前記基準平面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記第1軸および前記第2軸のいずれに対しても線対称となるように形成されており、
前記起歪部の前記基準平面上に複数の歪センサ対をさらに備え、
前記複数の歪センサ対は、前記基準平面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記第1軸および前記第2軸のいずれに対しても線対称となるように配置されており、
前記第1軸に沿って形成されている前記起歪部の前記第1分岐部または前記第2分岐部の少なくともいずれか一方に配置されている前記複数の歪センサ対を有する第1センサグループと、
前記第2軸に沿って形成されている前記起歪部の前記第1分岐部または前記第2分岐部の少なくともいずれか一方に配置されている前記複数の歪センサ対を有する第2センサグループと、
前記第1軸上または前記第2軸上の前記第1接続部および前記第2接続部に配置されている前記複数の歪センサ対を有する第3センサグループと、
前記第2軸上の前記第1接続部および前記第2接続部に配置されている前記複数の歪センサ対を有する第4センサグループと、
前記第1軸上の前記第1接続部および前記第2接続部に配置されている前記複数の歪センサ対を有する第5センサグループと、
前記第1軸上に設けられている前記第1接続部において前記第1軸を挟んで配置された前記複数の歪センサ対または、前記第2軸上に設けられている前記第1接続部において前記第2軸を挟んで配置された前記複数の歪センサ対の少なくともいずれか一方を有する第6センサグループと、
の内少なくともいずれか1つを有する、
力覚センサ。
【請求項2】
前記起歪部は、前記第3軸に対して4回対称に形成され、
前記複数の歪センサ対は、前記第3軸に対して4回対称に配置されている
請求項に記載の力覚センサ。
【請求項3】
前記第1センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第1軸方向の力を検出する第1力検出回路と、
前記第2センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第2軸方向の力を検出する第2力検出回路と、
前記第3センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第3軸方向の力を検出する第3力検出回路と、
前記第4センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第1軸周りのモーメントを検出する第1モーメント検出回路と、
前記第5センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第2軸周りのモーメントを検出する第2モーメント検出回路と、
前記第6センサグループに含まれる前記複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、前記第3軸周りのモーメントを検出する第3モーメント検出回路と、の内少なくともいずれか1つをさらに備える
請求項1または2に記載の力覚センサ。
【請求項4】
前記第1センサグループが、前記第1分岐部および前記第2分岐部のいずれにも前記複数の歪センサ対を有していることにより、2つのブリッジ回路を有する
請求項に記載の力覚センサ。
【請求項5】
前記第2センサグループが、前記第1分岐部および前記第2分岐部のいずれにも前記複数の歪センサ対を有していることにより、2つのブリッジ回路を有する
請求項に記載の力覚センサ。
【請求項6】
前記第3センサグループが、前記第1軸上および前記第2軸上の前記第1接続部および前記第2接続部に前記複数の歪センサ対を有していることにより、2つのブリッジ回路を有する
請求項に記載の力覚センサ。
【請求項7】
前記第6センサグループが、前記第1軸上に設けられている前記第1接続部および前記第2軸上に設けられている前記第1接続部のいずれにも前記複数の歪センサ対を有していることにより、2つのブリッジ回路を有する
請求項に記載の力覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの構造体の間に架け渡された起歪部を介して一方の構造体から他方の構造体へ所定の力が伝達される場合の力やモーメントを検出する力覚センサが知られている。この力覚センサは、起歪体に生じる歪を検出することにより、所望の軸方向の力や、所望の軸周りモーメントを算出する。
【0003】
例えば、特許文献1には、1次側構造体と、2次側構造体と、の間に架け渡された金属製かつ梁状の起歪部を備え、起歪部を介して一方の構造体から他方の構造体へトルクが伝達されるトルク計測装置が記載されている。このトルク計測装置は、起歪部におけるトルク中心軸に垂直な面に配置され、起歪部の歪量を検出する薄膜型歪センサと、薄膜型歪センサによって検出された歪量に基づいて直接トルク計算を行う信号処理部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-011567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のトルク計測装置では、トルク中心軸周りのトルクを計測することに限られており、例えば3軸直交座標におけるその他の力や方向を併せて検出することができない。一方、例えば3軸直交座標系における力やモーメントを検出する6軸力覚センサも開発されている。しかしながら、このような力覚センサでは、複数の歪センサから検出される歪を非干渉化行列に入力して煩雑な演算をすることにより所望の力やモーメントを算出する必要がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、煩雑な演算が不要な力覚センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様における力覚センサは、互いに直交する第1軸、第2軸および第3軸により設定される直交座標系の各軸方向の力および各軸周りのモーメントの内少なくとも1つを検出する。上記力覚センサは、第1構造体、4つの起歪部および第2構造体を有する。第1構造体は、第3軸が貫通するように形成される。4つの起歪部は、第1軸および第2軸により形成される基準平面において第1軸および第2軸に沿って第1構造体から放射状にそれぞれ延出する。第2構造体は、起歪部を介して第1構造体に接続する。起歪部は、第1接続部、第1分岐部、第2分岐部および第2接続部を有している。第1接続部は、第1構造体と接続する部分である。第1分岐部は、第1接続部から第2構造体に向かって2つに分岐して互いに離間する方向に延びる1組の梁状部分である。第2分岐部は、第1分岐部との間に屈曲部を介してそれぞれ接続し、互いに近づく方向に延びる1組の梁状部分である。第2接続部は、第2分岐部が合流して第2構造体に接続する部分である。起歪部は、基準平面に対して垂直な方向に投影した場合に、第1軸および第2軸のいずれに対しても線対称となるように形成されている。
【0008】
このような構成により、力覚センサが有する起歪部は、各軸方向に力が印加された場合に、印加された力の方向の歪を分離することが容易となる。
【0009】
上記力覚センサは、起歪部の基準平面上に複数の歪センサ対をさらに備え、複数の歪センサ対は、基準平面に対して垂直な方向に投影した場合に、第1軸および第2軸のいずれに対しても線対称となるように配置されていることが好ましい。これにより、力覚センサは、煩雑な非干渉化演算を行うことなく、外力を検出できる。
【0010】
上記力覚センサにおいて、複数の歪センサ対は、第1センサグループ、第2センサグループ、第3センサグループ、第4センサグループ、第5センサグループおよび第6センサグループの内少なくともいずれか1つを有していてもよい。第1センサグループは、第1軸に沿って形成されている起歪部の第1分岐部または第2分岐部の少なくともいずれか一方に配置されている複数の歪センサ対を有する。第2センサグループは、第2軸に沿って形成されている起歪部の第1分岐部または第2分岐部の少なくともいずれか一方に配置されている複数の歪センサ対を有する。第3センサグループは、第1軸上または第2軸上の第1接続部および第2接続部に配置されている複数の歪センサを有する。第4センサグループは、第2軸上の第1接続部および第2接続部に配置されている複数の歪センサ対を有する。第5センサグループは、第1軸上の第1接続部および第2接続部に配置されている複数の歪センサ対を有する。第6センサグループは、第1軸上に設けられている第1接続部において第1軸を挟んで配置された複数の歪センサ対または、第2軸上に設けられている第1接続部において第2軸を挟んで配置された複数の歪センサ対の少なくともいずれか一方を有する。
【0011】
このような構成により、力覚センサは、それぞれのセンサグループに対応した外力を好適に検出できる。
【0012】
上記力覚センサにおいて、起歪部は、第3軸に対して4回対称に形成され、複数の歪センサ対は、第3軸に対して4回対称に配置されているものであってもよい。これにより力覚センサは、バランスよく6軸力を検出できる。
【0013】
上記力覚センサは、第1力検出回路、第2力検出回路、第3力検出回路、第1モーメント検出回路、第2モーメント検出回路および第3モーメント検出回路の内少なくともいずれか1つをさらに備えるものであってもよい。第1力検出回路は、第1センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第1軸方向の力を検出する。第2力検出回路は、第2センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第2軸方向の力を検出する。第3力検出回路は、第3センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第3軸方向の力を検出する。第1モーメント検出回路は、第4センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第1軸周りのモーメントを検出する。第2モーメント検出回路は、第5センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第2軸周りのモーメントを検出する。第3モーメント検出回路は、第6センサグループに含まれる複数の歪センサ対を含むブリッジ回路を有し、第3軸周りのモーメントを検出する。
【0014】
これにより、力覚センサは、煩雑な非干渉化演算を行うことなく外力を各軸力に分離して検出できる。
【0015】
上記力覚センサにおいて、第1力検出回路は、第1センサグループが、第1分岐部および第2分岐部のいずれにも複数の歪センサ対を有しているものであってもよい。これにより、力覚センサは第1センサグループの信頼性を向上できる。
【0016】
上記力覚センサにおいて、第2力検出回路は、第2センサグループが、第1分岐部および第2分岐部のいずれにも複数の歪センサ対を有しているものであってもよい。これにより、力覚センサは第2センサグループの信頼性を向上できる。
【0017】
上記力覚センサにおいて、第3力検出回路は、第3センサグループが、第1軸上および第2軸上の第1接続部および第2接続部に複数の歪センサ対を有しているものであってもよい。これにより、力覚センサは第3センサグループの信頼性を向上できる。
【0018】
上記力覚センサにおいて、第3モーメント検出回路は、第6センサグループが、第1軸上に設けられている第1接続部および第2軸上に設けられている第1接続部のいずれにも複数の歪センサ対を有しているものであってもよい。これにより、力覚センサは第6センサグループの信頼性を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、煩雑な演算が不要な力覚センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態にかかる力覚センサの斜視図である。
図2】力覚センサの構造体と起歪部を示した正面図である。
図3】力覚センサにおける歪センサの配置を示した正面図である。
図4】第1センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
図5】第2センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
図6】第3センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
図7】第4センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
図8】第5センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
図9】第6センサグループが有するブリッジ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0022】
<実施の形態>
実施の形態にかかる力覚センサは、2つの構造体の間に介在することにより、これら2つの構造体の間に伝達される力ないしモーメントを検出する。力覚センサは、例えばロボットの手首や足首などの関節、自動車のパワーステアリング、移動装置の駆動モータから移動面に設置する車輪までの動力伝達部または所定のコントローラのジョイスティック部分などに利用可能である。
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかる力覚センサ10の斜視図である。なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、図2以降において、直交座標系が付されている場合、図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。本実施の形態において、X軸を第1軸、Y軸を第2軸およびZ軸を第3軸と称してもよい。
【0024】
力覚センサ10は、互いに直交するX軸(第1軸)、Y軸(第2軸)およびZ軸(第3軸)により設定される直交座標系の各軸方向の力および各軸周りのモーメントを検出する。力覚センサ10は、全体の外径は略直方体である。略直方体の力覚センサ10において、XY平面に平行、且つ、Z軸プラス側の面は、平滑に加工された基準平面F10である。図1は、基準平面F10側から観察した力覚センサ10の斜視図を示している。図に示すように、基準平面F10は直交座標系のXY平面と一致している。また、直交座標系の原点は、基準平面F10の中心と一致している。
【0025】
力覚センサ10は、主な構成として、第1構造体11、第2構造体12および起歪部13を有している。第1構造体11、第2構造体12および起歪部13は、1個の金属部材(例えばステンレスやアルミニウム合金)を切削加工することにより形成される。
【0026】
第1構造体11は、Z軸周りに形成された中空円筒状の構造体である。第1構造体11は、Z軸に平行に開けられた、基準孔110、第1位置決め孔111および第1ネジ孔112を有している。基準孔110は、第1構造体11の中心部に設けられた丸孔であって、基準孔110の中心軸は、Z軸と一致している。第1位置決め孔111は、Z軸を中心軸とした径方向において等距離、且つ、Z軸を中心軸とした円周方向において等間隔の位置に、4か所設けられている。第1ネジ孔112は、第1位置決め孔111の外周側(Z軸から離れる側)において、4か所の第1位置決め孔111にそれぞれ対応して設けられている。第1構造体11は、X軸プラス側、X軸マイナス側、Y軸プラス側およびY軸マイナス側で、Z軸を中心として基準平面F10に沿ってそれぞれ放射状に延びる起歪部13に接続している。
【0027】
第2構造体12は、起歪部13を介して第1構造体11に接続する。第2構造体12は、Z軸を中心として、第1構造体11を囲むように形成されている。第2構造体12は、第2位置決め孔120および第2ネジ孔121を有している。第2位置決め孔120は、Z軸を中心軸とした径方向において等距離、且つ、Z軸を中心軸とした円周方向において等間隔の位置であって、矩形の外形における四隅近傍それぞれに設けられている。第2ネジ孔121は、第2位置決め孔120の外周側において、4か所の第2位置決め孔120にそれぞれ対応して設けられている。第2構造体12は、X軸上およびY軸上において、それぞれ第1構造体11から延びている4つの起歪部13に接続している。
【0028】
起歪部13は、基準平面F10においてX軸およびY軸に沿って第1構造体11から放射状にそれぞれ延出する梁状の部分である。力覚センサ10は、起歪部13を4つ有している。力覚センサ10が4個有する起歪部13は、X軸プラス側、X軸マイナス側、Y軸プラス側およびY軸マイナス側で第1構造体11と第2構造体12とをそれぞれ接続する。
【0029】
力覚センサ10は、基準平面F10上において、歪センサ14、配線部15および電極16をさらに有している。歪センサ14は、起歪部13における基準平面F10上に複数配置されている。歪センサ14は、電圧が印加されると所定の抵抗値を示すとともに、歪を検出した場合には抵抗値が変化するように設定される。例えば歪センサ14は、伸ばされることにより抵抗値が増加し、縮められることにより抵抗値が低下するように構成される。
【0030】
歪センサ14は、それぞれが生成する電気信号が配線部15を介して電極16に伝送されるように構成されている。配線部15は、歪センサ14が生成する信号が電極16に伝送されるように歪センサ14と電極16とを接続している。電極16は、電気信号の送受信を行うためのインタフェースであって、配線部15を介して歪センサ14に接続し、歪センサ14が生成した信号を外部へ供給する。
【0031】
上述の歪センサ14、配線部15および電極16は、例えば以下のような工程により基準平面F10上に設けることができる。まず、第1構造体11、第2構造体12および起歪部13を構成するステンレスの基材に対して絶縁膜をスパッタリングにより形成する。絶縁膜は例えば二酸化ケイ素(SiO)である。次に、形成した絶縁膜上に、歪センサ14、配線部15および電極16の導電部として、例えば窒化クロム(Cr-N)をスパッタリングにより成膜する。続いて、配線部15および電極16に相当する部分に対して金(Au)をスパッタリングにより成膜する。さらに、保護膜として二酸化ケイ素(SiO)を歪センサ14および配線部15に相当する部分に成膜する。このような方法により歪センサ14、配線部15および電極16を製造することにより、力覚センサ10は、省スペースで所望の構成を実現できる。なお、上述の製法は、既に当業者に知られたものであり、ここではマスキングプロセス等の詳細な説明を省略している。
【0032】
歪センサ14、配線部15および電極16は、上述の工程に限らず、他の方法によっても構成可能である。例えば、配線部15や電極16は、ワイヤボンディングや半田付け等を利用して、導通する部材を接続することができる。また、歪センサ14は、半導体歪みゲージやその他の一般的な歪みゲージを接続することによって実現してもよい。また、絶縁膜や保護膜は、上述のスパッタリング工程に代えて、塗装やディップなどにより形成されてもよい。
【0033】
なお、以降の説明において、力覚センサ10に外力が加わる場合には、第1構造体11が受力部であり、第1構造体11が受けた外力は起歪部13を介して第2構造体12に伝達されるものとする。第1構造体11を1次側あるいは入力側の構造体と称し、第2構造体12を2次側あるいは出力側の構造体と称してもよい。
【0034】
次に、図2を参照して起歪部13の形状について説明する。図2は、力覚センサの構造体と起歪部を示した正面図である。図2に示す力覚センサ10は、起歪部13の形状を説明するために、適宜構成を省略して模式的に示したものである。
【0035】
第1構造体11と第2構造体12とは、4つの起歪部13により接続されている。起歪部13は第1構造体11のX軸プラス側、X軸マイナス側、Y軸プラス側およびY軸マイナス側の4か所から各軸に沿って放射状に延出し、各軸と第2構造体12とが交差する位置で、それぞれ第2構造体12に接続している。
【0036】
以降の説明において、4つの起歪部13の内、X軸プラス側に位置するものを起歪部13A、Y軸マイナス側に位置するものを起歪部13B、X軸マイナス側に位置するものを起歪部13CそしてY軸プラス側に位置するものを起歪部13Dと称する。また以降の説明において起歪部13A~13Dを総称して起歪部13と表現する場合がある。
【0037】
起歪部13は、第1接続部131、第1分岐部132、第2分岐部133および第2接続部134を有している。第1接続部131は、第1構造体11と接続する部分である。第1接続部131は、X軸上またはY軸上に位置している。第1分岐部132は、第1接続部131から第2構造体12に向かって2つに分岐して互いに離間する方向に延びる1組の梁状部分である。第2分岐部133は、第1分岐部132との間に屈曲部を介してそれぞれ接続し、互いに近づく方向に延びる1組の梁状部分である。第2接続部134は、第2分岐部133が合流して第2構造体12に接続する部分である。第2接続部134は、第1接続部131が位置する軸と同じ軸上に位置している。
【0038】
力覚センサ10は、基準平面F10(XY平面)に対して垂直な方向すなわちZ軸方向に投影した場合に、起歪部13がX軸およびY軸のいずれに対しても線対称となるように形成されている。例えば、起歪部13Aと起歪部13CとはY軸に対して線対称であると同時に、起歪部13Aおよび起歪部13Cは、いずれもX軸に対して線対称である。
【0039】
また、本実施の形態における起歪部13は、Z軸に対して4回対称に形成されている。つまり、起歪部13は、力覚センサ10をZ軸周りに90度回転させる前と90度回転させた後とが同じ形状になるように形成されている。例えば、起歪部13AをXY面に投影した形状は、Z軸を中心として時計回りに90度回転した場合に、起歪部13Bの形状と一致する。
【0040】
力覚センサ10は、上述の形状を有していることにより、外力である各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、次に示すような面内歪および面外歪を生じる。
【0041】
面内歪とは、力覚センサ10に外力が印加された場合に、起歪部の歪が基準平面F10内で生じる歪である。面内歪は、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力FyおよびZ軸周りのモーメントMzにより生じる。力覚センサ10にFxが印加された場合には、起歪部13A~起歪部13Dに好適に歪が生じ、第1構造体11はX軸に平行に変位する。力覚センサ10に力Fyが印加された場合には、起歪部13A~起歪部13Dに好適に歪が生じ、第1構造体11はY軸に平行に変位する。力覚センサ10にモーメントMzが印加された場合には、起歪部13A~13Dのそれぞれに均等に歪が生じ、第1構造体11がZ軸周りに回転する。
【0042】
面外歪とは、力覚センサ10に外力が印加された場合に、起歪部の歪が基準平面F10外に生じる歪である。面外歪は、Z軸方向の力Fz、X軸周りのモーメントMxおよびY軸周りのモーメントMyにより生じる。力覚センサ10にFzが印加された場合には、起歪部13A~13Dのそれぞれに均等に歪が生じ、第1構造体11は、Z軸に平行に変位する。力覚センサ10にMxが印加された場合には、起歪部13A~起歪部13Dに好適に歪が生じ、第1構造体11は、X軸周りに回転する。力覚センサ10にモーメントMyが印加された場合には、起歪部13A~起歪部13Dに好適に歪が生じ、第1構造体11は、Y軸周りに回転する。
【0043】
上述のように、起歪部13の形状が対称性を有することにより、起歪部13の歪量は、外力が印加された場合に対称性を有する。これにより、力覚センサ10は、煩雑な非干渉化演算を行うことなく外力を検出するように歪センサを配置することが可能となる。
【0044】
なお、第1分岐部132および第2分岐部133は、直線状に延伸している必要はなく、湾曲していてもよいし、幅や厚さが変化していてもよい。また、第1接続部131と第1分岐部132とは緩やかに変化しており、明確に画定されるものではなく、その境界部分は第1接続部131および第1分岐部132のどちらに属するものであってもよい。第1分岐部132と第2分岐部133との境界および第2分岐部133と第2接続部134との境界も同様である。また第1構造体11と起歪部13との境界および起歪部13と第2構造体との境界も同様に緩やかに変化しており明確に確定されるものではない。
【0045】
次に、図3を参照して歪センサ14の配置について説明する。図3は、力覚センサ10における歪センサの配置を示した正面図である。
【0046】
起歪部13A~13Dはそれぞれ10個ずつの歪センサ14を有している。また起歪部13A~13Dがそれぞれ有する10個の歪センサ14は、それぞれの起歪部13A~13Dにおいて、Z軸に対して相対的に4回対称となる位置に配置されている。以下に、代表例として、起歪部13Aが有する歪センサ14の配置について説明する。
【0047】
起歪部13Aは、10個の歪センサ14として、センサA01~A10を有している。センサA01は、第1接続部131においてX軸上に設けられている。センサA02は、第2接続部134においてX軸上に設けられている。センサA03は、第1接続部131においてX軸上のセンサA01と重ならない位置に設けられている。センサA04は、第2接続部134においてX軸上のセンサA02と重ならない位置に設けられている。センサA05およびセンサA06は、第1接続部131において、X軸を跨いでX軸に対して対称となる位置にそれぞれ設けられている。センサA07およびセンサA08は、第1分岐部132において、X軸を跨いでX軸に対して対称となる位置にそれぞれ設けられている。センサA09およびセンサA10は、第2分岐部133において、X軸を跨いでX軸に対して対称となる位置にそれぞれ設けられている。
【0048】
センサA07~A10は、起歪部13が面内歪を生じた場合の中立面から遠い位置に配置されることが好ましい。さらに、センサA07およびセンサA08は、それぞれが配置されている梁の面内歪における中立面を挟むように配置されることが好ましい。同様に、センサA09およびセンサA10は、それぞれが配置されている梁の面内歪における中立面を挟むように配置されることが好ましい。これにより力覚センサ10は面内歪を感度よく検出できる。
【0049】
起歪部13B、13Cおよび13Dは、上述の起歪部13Aと同様に歪センサ14を10個ずつ有している。図3に示すように、それぞれの起歪部が有するセンサには、アルファベットと数字を組み合わせた符号が付されており、アルファベットA~Dは、起歪部13A~13Dに対応し、数字01~10は、センサの配置に対応している。
【0050】
続いて図4図9を参照して歪センサ対およびセンサグループについて説明する。力覚センサ10が有する歪センサ14は、それぞれが歪センサ対を構成している。歪センサ対は、それぞれが1組のブリッジ回路を構成するための要素である。センサグループは、複数の歪センサ対を有し、1つのセンサグループは、対応する軸方向の力または対応する軸周りのモーメントを検出するためのブリッジ回路を有している。力覚センサ10は、第1センサグループSG1~第6センサグループSG6を有している。
【0051】
本実施の形態にかかるブリッジ回路は、2つの歪センサが並列接続された並列回路の一端に入力電圧Viが印加され、他端が接地され、並列回路の中間部の出力電圧Voが出力される。起歪部13が歪むことにより、ブリッジ回路を構成する歪センサが伸縮すると、伸縮した歪センサ14の抵抗値は変化する。そのため、歪センサ14が歪を検出すると出力電圧Voの値がそれに応じて変化する。
【0052】
図4は、第1センサグループSG1の回路図である。力覚センサ10は、力Fxを検出する第1センサグループSG1を有している。図に示した回路図において、それぞれの抵抗は、歪センサ14を示している。第1センサグループSG1は、ブリッジ回路BFx1およびブリッジ回路BFx2を有している。
【0053】
ブリッジ回路BFx1は、4つの歪センサ14として、センサA07、A08、C07およびC08を有している。センサA07とA08とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサC07とC08とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0054】
ブリッジ回路BFx2は、センサA09、A10、C09およびC10を有している。センサA09とA10とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサC09とC10とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0055】
第1センサグループSG1は、以下に示す式(1)により力Fxを検出する。
【数1】
ここで、式(1)の右辺における各項は、それぞれが示すセンサの抵抗値の変化を示すものである。例えば、起歪部13が歪むことにより、センサA07の抵抗値が上がった場合には、RA07には「(+)」が当てはめられる。あるいは、センサA07の抵抗値が下がった場合には、RA07には「(-)」が当てはめられる。また、センサA07の抵抗値に変化がなかった場合には、「(0)」が当てはめられる。なお、以降に示す力またはモーメントの式についても同様である。
【0056】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第1センサグループSG1の出力について説明する。第1センサグループSG1は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数2】
ここで、Fx+はX軸プラス方向の力、Fy+はY軸プラス方向の力、Fz+はZ軸プラス方向の力、Mx+はX軸周りのプラス方向のモーメント、My+はY軸周りのプラス方向のモーメントそしてMz+はZ軸周りのプラス方向のモーメントである。なお本実施の形態において、モーメントのプラス方向は、対応する軸のマイナス側からプラス側を見た時に時計回りに回転する方向である。
【0057】
このように、第1センサグループSG1は、X軸プラス方向の力Fx+が印加された場合に、8(+)となる。したがって、Fx検出回路は、高い感度によりFxを検出する。一方、第1センサグループSG1は、その他の方向の外力が印加された場合には、センサグループの歪センサ14の抵抗値の変化はそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的にゼロになる。換言すると、第1センサグループSG1の出力は、力Fxではない外力に対しては、平衡状態となっている。
【0058】
図5は、第2センサグループSG2の回路図である。力覚センサ10は、力Fyを検出する第2センサグループSG2を有している。第2センサグループSG2は、ブリッジ回路BFy1およびブリッジ回路BFy2を有している。
【0059】
ブリッジ回路BFy1は、センサD07、D08、B07およびB08を有している。センサD07とD08とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサB07とB08とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0060】
センサD09とD10とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサB09とB10とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0061】
第2センサグループSG2は、以下に示す式(2)により力Fyを検出する。
【数3】
【0062】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第2センサグループSG2の出力について説明する。第2センサグループSG2は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数4】
【0063】
このように、第2センサグループSG2は、Y軸プラス方向の力Fy+が印加された場合に、8(+)となる。したがって、Fy検出回路は、高い感度によりFyを検出する。一方、第2センサグループSG2は、その他の方向の外力が印加された場合には、センサグループの歪センサ14の抵抗値の変化はそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的にゼロになる。
【0064】
図6は、第3センサグループSG3の回路図である。力覚センサ10は、力Fzを検出する第3センサグループSG3を有している。第3センサグループSG3は、ブリッジ回路BFz1およびブリッジ回路BFz2を有している。
【0065】
ブリッジ回路BFz1は、センサA01、C01、A02およびC02を有している。センサA01とセンサC01とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサA02とセンサC02とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0066】
ブリッジ回路BFz2は、センサB01、D01、B02およびD02を有している。センサB01とセンサD01とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサB02とセンサD02とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0067】
第3センサグループSG3は、以下に示す式(3)により力Fzを検出する。
【数5】
【0068】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第3センサグループSG3の出力について説明する。第3センサグループSG3は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数6】
このように、第3センサグループSG3は、Z軸プラス方向の力Fz+が印加された場合に、8(+)となる。したがって、Fz検出回路は、高い感度によりFzを検出する。一方、第3センサグループSG3は、その他の方向の外力が印加された場合には、センサグループの歪センサ14の抵抗値は殆どの場合に(不感であり)変化せず(0)である。Mx+およびMy+が印加された場合に、一部の歪センサ14がそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的に第3センサグループSG3の出力はゼロになる。
【0069】
図7は、第4センサグループSG4の回路図である。力覚センサ10は、モーメントMxを検出する第4センサグループSG4を有している。第4センサグループSG4は、ブリッジ回路BMx1を有している。
【0070】
ブリッジ回路BMx1は、センサB03、D03、B04およびD04を有している。センサB03とセンサD03とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。センサB04センサD04とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0071】
第4センサグループSG4は、以下に示す式(4)によりモーメントMxを検出する。
【数7】
【0072】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第4センサグループSG4の出力について説明する。第4センサグループSG4は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数8】
このように、第4センサグループSG4は、X軸周りのプラス方向のモーメントMx+が印加された場合に、4(+)となる。したがって、Mx検出回路は、高い感度によりMxを検出する。一方、第4センサグループSG4は、その他の方向の外力が印加された場合には、センサグループの歪センサ14の抵抗値は殆どの場合に変化せず(0)である。Fz+が印加された場合に、一部の歪センサ14がそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的に第4センサグループSG4の出力はゼロになる。
【0073】
図8は、第5センサグループSG5の回路図である。力覚センサ10は、モーメントMyを検出する第5センサグループSG5を有している。第5センサグループSG5は、ブリッジ回路BMy1を有している。
【0074】
ブリッジ回路BMy1は、センサA03、C03、A04およびC04を有している。センサA03とセンサC03とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。センサA04センサC04とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0075】
第5センサグループSG5は、以下に示す式(5)によりモーメントMyを検出する。
【数9】
【0076】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第5センサグループSG5の出力について説明する。第5センサグループSG5は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数10】
このように、第5センサグループSG5は、Y軸周りのプラス方向のモーメントMy+が印加された場合に、4(+)となる。したがって、My検出回路は、高い感度によりMyを検出する。一方、第5センサグループSG5は、その他の方向の外力が印加された場合には、センサグループの歪センサ14の抵抗値は殆どの場合に変化せず(0)である。Fz+が印加された場合に、一部の歪センサ14がそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的に第5センサグループSG5の出力はゼロになる。
【0077】
図9は、第6センサグループSG6の回路図である。力覚センサ10は、モーメントMzを検出する第6センサグループSG6を有している。第6センサグループSG6は、ブリッジ回路BMz1およびブリッジ回路BMz2を有している。
【0078】
ブリッジ回路BMz1は、センサA05、C06、C05およびA06を有している。センサA05とC06とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサC05とA06とはY軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0079】
ブリッジ回路BMz2は、センサB05、D06、D05およびB06を有している。センサB05とD06とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。同様に、センサD05とB06とはX軸に対して対称となる位置に配置されており、1組の歪センサ対を構成する。
【0080】
第6センサグループSG6は、以下に示す式(6)によりモーメントMzを検出する。
【数11】
【0081】
次に、力覚センサ10に対して所定の外力を印加した場合における第6センサグループSG6の出力について説明する。第6センサグループSG6は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントが印加された場合に、以下のように表される。
【数12】
このように、第6センサグループSG6は、Z軸周りのプラス方向のモーメントMz+が印加された場合に、8(+)となる。したがって、Mz検出回路は、高い感度によりMzを検出する。一方、第6センサグループSG6は、その他の方向の外力が印加された場合には、歪センサ14がそれぞれが伸縮することにより(+)や(-)にはなるものの、それぞれのセンサの伸縮が対称性を有しているため、結果的に第6センサグループSG6の出力はゼロになる。
【0082】
上述の通り、力覚センサ10は、起歪部13の形状がX軸およびY軸に対して対称であり、且つ、Z軸に対して4回対称となっており、歪センサがX軸およびY軸に対して対称であり、且つ、Z軸に対して4回対称となる位置に配置されている。そのため、力覚センサ10は、各軸方向の力および各軸周りのモーメントを検出する場合に、煩雑な非干渉化演算を行うことなく、それぞれの方向の外力を分離して検出できる。
【0083】
次に、実施の形態にかかる力覚センサ10が採用している多重化構成について説明する。種々のアクチュエータに搭載される力覚センサは、高い信頼性が期待される場合がある。そこで、実施の形態にかかる力覚センサ10は、所定の方向の外力を検出する場合に、複数の歪センサを利用している。
【0084】
より具体的には、図4に示すように、力覚センサ10は、Fxを検出する際にブリッジ回路BFx1およびブリッジ回路BFx2を利用している。このように、力覚センサ10は、1方向の外力を検出する場合に、2つのブリッジ回路からの出力を検出している。このような構成により、力覚センサ10は、信頼性の低下を抑制している。
【0085】
図5に示すFy検出回路、図6に示すFz検出回路および図9に示すMz検出回路についても、同様に、2つのブリッジ回路からの信号を検出することにより、実施の形態にかかる力覚センサ10は、検出回路の多重化を実現している。
【0086】
なお、図7に示すモーメントMxおよび図8に示すモーメントMyは、多重化されていない例を示しているが、これらを多重化することは可能である。具体的には、例えばMx検出回路を多重化する場合、起歪部13BのY軸上に、1組の歪センサ対を配置するとともに、起歪部13DのY軸上に、もう1組の歪センサ対を、X軸に対して対称な位置に配置すればよい。
【0087】
実施の形態にかかる力覚センサ10は、複数のブリッジ回路を利用した多重化を採用した例を示したが、実施の形態にかかる力覚センサ10は、これに限られず、多重化を採用しない構成としてもよい。その場合、力覚センサ10は、例えば、第1センサグループSG1において、ブリッジ回路BFx1を有し、ブリッジ回路BFx2を有さない構成であってもよい。このように、多重化を行う場合であっても多重化を行わない場合であっても、力覚センサ10は、X軸およびY軸に対して対称形状となるように歪センサ対を配置することにより、非干渉化演算を行うことなく、外力を検出できる。
【0088】
また、力覚センサ10は、6軸力覚センサの例を示したが、力覚センサ10は、6軸のうち、1以上の外力を検出するものであってもよい。例えば、力覚センサ10は、第1センサグループSG1のみを有している場合、Fxのみを検出することができる。
【0089】
また、上述の力覚センサ10において、起歪部13の形状は、4回対称の例を示したが、力覚センサ10は、X軸およびY軸に対して対称形状であって、4回対称ではない形状であってもよい。同様に、歪センサ14の配置は、X軸およびY軸に対して対称であって、4回対称ではないものであってもよい。すなわち、例えば、力覚センサは楕円形であって、同じ軸上に延出する起歪部は、対称形状であり、4回対称でないものであってもよい。
【0090】
以上、実施の形態について説明した。実施の形態によれば、煩雑な演算が不要な力覚センサを提供することができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 力覚センサ
11 第1構造体
12 第2構造体
13 起歪部
14 歪センサ
15 配線部
16 電極
110 基準孔
131 第1接続部
132 第1分岐部
133 第2分岐部
134 第2接続部
A01~A10 センサ
B01~B10 センサ
C01~C10 センサ
D01~D10 センサ
BFx1、BFx2、 ブリッジ回路
BFy1、BFy2 ブリッジ回路
BFz1、BFz2 ブリッジ回路
BMx1 ブリッジ回路
BMy1 ブリッジ回路
BMz1、BMz2 ブリッジ回路
F10 基準平面
Fx、Fy、Fz 力
Mx、My、Mz モーメント
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9