(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】NC旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 3/30 20060101AFI20230613BHJP
B23B 3/16 20060101ALI20230613BHJP
B23B 25/00 20060101ALI20230613BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20230613BHJP
B23B 21/00 20060101ALI20230613BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B23B3/30
B23B3/16 Z
B23B25/00 A
B23B23/00 Z
B23B21/00 Z
B23Q11/00 Q
(21)【出願番号】P 2020193132
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】橋場 勝英
(72)【発明者】
【氏名】北村 朱穂
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00059013(EP,A1)
【文献】国際公開第1998/046385(WO,A1)
【文献】特開2005-096002(JP,A)
【文献】特開2005-335026(JP,A)
【文献】実開平04-023203(JP,U)
【文献】特開2000-317702(JP,A)
【文献】特開昭60-141402(JP,A)
【文献】実開昭63-004201(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/00 - 11/00
B23B 19/00 - 19/02
B23B 23/00 - 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド本体と、前記ベッド本体の横方向の片側に設けられた主軸部と、前記ベッド本体の前記横方向の他側に設けられた取付部と、前記ベッド本体の前記横方向の中間に設けられた加工工具保持部と、を備え、前記ベッド本体の前記取付部に背面主軸ユニット及びテールストックユニットが取付け可能に構成
され、また前記背面主軸ユニットに代えて前記テールストックユニットが取付け可能であるNC旋盤において、
前記ベッド本体の前記取付部は、前記ベッド本体の前記他側の前面部に設けられ、前記ベッド本体の前面側にて支持する前面支持部と、前記ベッド本体の上面側にて支持する上面支持部とを有しており、
前記背面主軸ユニットを取り付けるときは、前記背面主軸ユニットの前部側が前記取付部の前記前面支持部に手前側スライド支持機構を介して、またその後部側が前記取付部の前記上面支持部に奥側スライド支持機構を介して前記横方向に往復移動自在に支持され、また
前記背面主軸ユニットに代えて前記テールストックユニットを取り付けるときには、前記テールストックユニットが前記取付部の前記前面支持部及び前記上面支持部に取り付けられることを特徴とするNC旋盤。
【請求項2】
前記背面主軸ユニットは、前記手前側スライド支持機構及び前記奥側スライド支持機構を介して前記ベッド本体の前記取付部に移動自在に支持される背面主軸ユニット本体と、前記背面主軸ユニット本体に取り付けられた背面主軸部とを備え、前記背面主軸ユニットを前記取付部に取り付けるときには、切削切粉を前記ベッド本体の切粉排出空間に導くための切粉流しカバー
は、前記背面主軸ユニット本体に取り付けられ、前カバーの内側から切粉排出域まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のNC旋盤。
【請求項3】
前記加工工具保持部は、加工工具が取り付けられるタレット部を備え、前記タレット部は、前記ベッド本体に対して、第1タレット支持機構を介して前記横方向に移動自在に且つ第2タレット支持機構を介して前後方向前方に向けて下方に傾斜する方向に移動自在に支持され、また、前記背面主軸部は、前記背面主軸ユニット本体の上面に前記前後方向前方に向けて下方に傾斜するように取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のNC旋盤。
【請求項4】
前記テールストックユニットは、前記ベッド本体の前記取付部に取り付けられるテールベースと、前記テールベースの上面にスライド機構を介して前記横方向に移動自在に支持されたセンターユニットとを備え、
前記背面主軸ユニットに代えて前記テールストックユニットを前記取付部に取り付けるときには、切削切粉を前記ベッド本体の切粉排出空間に導くための切粉流しカバーは、前カバーに取り付けられ、前記センターユニットの下側において前記前カバーから切粉排出域まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のNC旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物を切削加工するために用いるNC旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤として、ベッド本体の横方向片側に設けられた主軸部と、その横方向他側に設けられた背面主軸部と、このベッド本体の横方向中間に設けられたタレット(加工工具保持部)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このNC旋盤においては、主軸部の主軸チャックに加工物が取り付けられ、この加工物の一端側がタレットに取り付けた加工工具により切削加工が行われる。そして、例えば、一端側を加工した加工物を移し替えてその他端側を加工する場合、この加工物の一端側が背面チャック手段に取り付けられ、この加工物の他端側がタレットに取り付けられた加工工具により切削加工され、このように主軸部及び背面主軸部を用いることにより効率の高い加工が可能となる。
【0003】
このようなNC旋盤においては、オプションとして背面主軸部に代えてテールストックを選択できるようにしたものがある。この場合、テールストックがベッド本体の横方向他側の取付部に背面主軸部に代えて取り付けられ、このテールストックを用いることにより、主軸部の主軸チャックに保持された加工物の先端部を支持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このNC旋盤では、背面主軸部を取り付けることを主目的とし、このベッド本体の取付部の上面側に一対のスライド支持機構を介して背面主軸部が往復移動自在に支持され、このような構造では、ベッド本体の前後方向の長さが長くなり、これによって、旋盤装置本体の前後方向のサイズが大きくなり、大きな設置面積が必要となる問題がある。
【0006】
特に、オプションとしてテールストックを選択した場合、テールストックの構造自体が簡単であるにもかかわらず、このテールストックをベッド本体の取付部の上面(背面主軸部が取り付けられる部位)に取り付けるために、ベッド本体の横方向他側において無駄なスペースが生じるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、ベッド本体の前後方向の長さを小さくし、テールストックを選択して取り付けた場合においても無駄なスペースを小さくすることができるNC旋盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のNC旋盤は、ベッド本体と、前記ベッド本体の横方向の片側に設けられた主軸部と、前記ベッド本体の前記横方向の他側に設けられた取付部と、前記ベッド本体の前記横方向の中間に設けられた加工工具保持部と、を備え、前記ベッド本体の前記取付部に背面主軸ユニット及びテールストックユニットが取付け可能に構成され、また前記背面主軸ユニットに代えて前記テールストックユニットが取付け可能であるNC旋盤において、
前記ベッド本体の前記取付部は、前記ベッド本体の前記他側の前面部に設けられ、前記ベッド本体の前面側にて支持する前面支持部と、前記ベッド本体の上面側にて支持する上面支持部とを有しており、
前記背面主軸ユニットを取り付けるときは、前記背面主軸ユニットの前部側が前記取付部の前記前面支持部に手前側スライド支持機構を介して、またその後部側が前記取付部の前記上面支持部に奥側スライド支持機構を介して前記横方向に往復移動自在に支持され、また前記背面主軸ユニットに代えて前記テールストックユニットを取り付けるときには、前記テールストックユニットが前記取付部の前記前面支持部及び前記上面支持部に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
このようなNC旋盤では、ベッド本体の取付部に移動自在に支持される背面主軸ユニット本体に切粉流しカバーを取り付け、この切粉流しカバーを前カバーからベッド本体の切粉排出域まで延びるように配置するのが好ましく、このような構成により、主軸部に保持された加工物(及び/又は背面主軸部に保持された加工物)を加工する際に生じる切削切粉などを切粉排出域に流すことができる。
【0010】
また、加工工具保持部としてのタレット部をベッド本体に対して前記横方向に移動自在に且つ前後方向前方に向けて下方に傾斜する方向に移動自在に構成し、更に背面主軸部も主軸ユニット本体の上面に前後方向前方に向けて下方に傾斜するように取り付けるのが好ましく、このように構成することにより、背面主軸部に関連してもベッド本体の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0011】
更に、このNC旋盤においては、ベッド本体の取付部に背面主軸ユニットに代えてテールベースを取り付け、このテールベースの上面にセンターユニットを横方向に移動自在に支持し、このセンターユニットの下側にて切粉流しカバーを配設し、この切粉流しカバーを前カバーから切粉排出域まで延びるように配置するのが好ましく、このような構成により、主軸部に保持された加工物を加工する際に生じる切削切粉などを切粉排出域に流すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載のNC旋盤によれば、ベッド本体の取付部は、その他側の前面部に設けられ、ベッド本体の前面側にて支持する前面支持部と、ベッド本体の上面側にて支持する上面支持部とを有し、背面主軸ユニットを取り付けるときは、背面主軸ユニットの前部側が取付部の前面支持部に手前側スライド支持機構を介して、またその後部側が取付部の上面支持部に奥側スライド支持機構を介して往復移動自在に支持されるので、ベッド本体の前後方向のサイズを抑えながら背面主軸ユニットを確実に支持することができ、またこの背面主軸ユニットに代えてテールストックユニットを取り付けるときには、テールストックユニットが取付部の前面支持部及び上面支持部に取り付けられるので、ベッド本体の前後方向のサイズを更に抑えながらテールストックユニットを確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従うNC旋盤の一実施形態を簡略的に示す正面図。
【
図3】
図1におけるIIIーIII線による断面図。
【
図4】
図1のNC旋盤において、ベッド本体の取付部に何も装着していない状態を簡略的に示す断面図。
【
図5】
図4に示す状態からベッド本体の取付部にスライド支持機構を取り付けた状態を示す断面図。
【
図6】
図1のNC旋盤におけるベッド本体の取付部にテールストックユニットを取り付けた状態を示す断面図。
【
図7】
図1のNC旋盤において、ベッド本体の取付部にテールストックユニットのテールベースを取り付けた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に従うNC旋盤の一実施形態について説明する。
図1及び
図2において、図示のNC旋盤は、工場などの床面に設置されるベッド本体2を備え、このベッド本体2の前面側(
図1において紙面に対して手前側、
図2において下側、
図3において右側)における横方向(
図1及び
図2において左右方向)片側(
図1及び
図2において左側)に主軸部4が配設されている。この主軸部4には主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この主軸に一体的に回動するように主軸チャック6が取り付けられ、加工すべき加工物(図示せず)は、この主軸チャック6に着脱自在に保持される。主軸部4の主軸及び主軸チャック6は、主軸モータ(図示せず)により回転駆動される。
【0015】
図3をも参照して、このベッド本体2の前面側における横方向他側(
図1及び
図2において右側)に取付部8が設けられ、
図1及び
図2に示す状態においては、この取付部8に加工物を着脱自在に保持するための背面主軸ユニット10が取り付けられている。このベッド本体2の取付部8には、
図6に示すように、背面主軸ユニット10に代えて、主軸チャック6に保持された加工物の先端を保持するためのテールストックユニット12を取り付けることができる。ベッド本体2の取付部8への背面主軸ユニット10及びテールストックユニット12の取付けについては、後述する。
【0016】
図示の背面主軸ユニット10は、ベッド本体2の取付部8に取り付けられる背面主軸ユニット本体14と、この背面主軸ユニット本体14に取り付けられた背面主軸部16とを備えている。背面主軸ユニット本体14は、ベッド本体2に取り付けられる移動部材18と、この移動部材18に取り付けられた背面主軸部支持部材20とを有し、この背面主軸部支持部材20の上面に背面主軸部16が取り付けられる。背面主軸部16には背面主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この背面主軸と一体的に回動するように背面主軸チャック22が取り付けられ、加工すべき加工物はこの背面主軸チャック22に着脱自在に保持される。この背面主軸部支持部材20には背面主軸モータ21が取り付けられ、背面主軸部16の背面主軸(図示せず)及び背面主軸チャック22は背面主軸モータ21により回転駆動される。
【0017】
この実施形態では、ベッド本体2の前面側の上端部に矩形状凹部23が設けられ、この矩形状凹部23により取付部8が形成され、この取付部8は、ベッド本体2の横方向に延びている。この取付部8の前面側(換言すると、矩形状凹部23の底面側)には前面支持部24が設けられているとともに、その上面側には上面支持部26が設けられ(特に、
図4参照)、背面主軸ユニット10及びテールストックユニット12は、この取付部8の前面支持部24及び上面支持部26に後述するように取り付けられる。
【0018】
このベッド本体2の後部側(
図1において紙面に対して奥側、
図2において上側、
図3において左側)における横方向の中間に加工工具保持部28が設けられている。図示の加工工具保持部28は、ベッド本体2に移動自在に装着される移動支持部材30と、この移動支持部材30の上面に取り付けられたタレット部32とを備え、このタレット部32にタレット34が所定角度毎に回動自在に取り付けられ、このタレット34の周囲の工具取付部36に、加工物を切削加工する加工工具(図示せず)が取り付けられる。
【0019】
移動支持部材30とベッド本体2との間には横方向(主軸及び背面主軸の軸方向であって、
図1及び
図2において左右方向、
図3~
図7において紙面に対して垂直な方向)に延びる第1タレット支持機構38が設けられ、この第1タレット支持機構38は、例えばベッド本体2の上面に設けられた案内突条40と、移動支持部材30の底面に設けられた案内凹条42とから構成され、移動支持部材30側の案内凹条42がベッド本体2側の案内突条40に横方向に移動自在に支持されている。
【0020】
また、移動支持部材30とタレット部32との間には、前後方向前方に向けて斜め下方に延びる第2タレット支持機構43(
図2参照)が設けられている。第2タレット支持機構43は、例えば上述の第1タレット支持機構38と同様の構成でよく、移動支持部材30の前方に向けて斜め下方に傾斜して(例えば、30度傾斜して)延びる傾斜上面に設けられた案内突条45と、タレット部32の底面に設けられた案内凹条(図示せず)とから構成され、タレット部32側の案内凹条が移動支持部材30側の案内突条45に前方に向けて斜め下方に移動自在に支持される。
【0021】
このNC旋盤では、ベッド本体2の略中央部には切粉排出域50が設けられ、この切粉排出域50からベッド本体2の背面まで切粉排出空間52が延びており、主軸部4側の主軸チャック6に保持された加工物(図示せず)の加工の際に生じる切削切粉など、また背面主軸ユニット10側の背面主軸チャック22に保持された加工物(図示せず)の加工の際に生じる切削切粉などは、ベッド本体2の切粉排出域50に落下し、落下した切削切粉などは切粉排出空間52を通してベッド本体2の背面側に排出される。
【0022】
次に、ベッド本体2に背面主軸ユニット10を取り付ける場合について説明する。主として
図3~
図5を参照して、この場合、ベッド本体2の取付部8に手前側スライド支持機構62及び奥側スライド支持機構64を介して背面主軸ユニット10が横方向に移動自在に装着される。この取付部8の前面支持部24には手前側スライド支持機構62が設けられ、その上面支持部26には奥側スライド支持機構64が設けられ、手前側スライド支持機構62及び奥側スライド支持機構64が横方向(
図3~
図5において紙面に対して垂直な方向)に延びている。
【0023】
この実施形態では、手前側スライド支持機構62は、取付部8の前面支持部24に取り付けられた手前側レール66と、移動部材18の前部背面に取り付けられた手前側受け部材68とから構成され、取付部8側の手前側レール66が移動部材18側の手前側受け部材68に移動自在に受け入れられている。また、奥側スライド支持機構64は、取付部8の上面支持部26に取り付けられた奥側レール70と、移動部材18の上部下面に取り付けられた奥側受け部材72とから構成され、取付部材8側の奥側レール70が移動部材18側の奥側受け部材72に移動自在に受け入れられている。
【0024】
この背面主軸ユニット10(具体的には、移動部材18)に関連してボールねじ機構76が配設され、例えばボールねじ機構76のねじ軸(図示せず)が前面支持部24に回転自在に支持され、そのナット部(図示せず)が移動部材18に取り付けられ、このねじ軸が駆動源(図示せず)(例えば、駆動モータ)に駆動連結される。従って、駆動源によってねじ軸が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動されると、ボールねじ機構76のナット部を介して移動部材18(即ち、背面主軸ユニット10が横方向左側(又は横方向右側)に、即ち主軸部4に近接する方向(又は主軸部4から離隔する方向)に移動される。
【0025】
尚、このような構成と反対に、手前側スライド支持機構62については、手前側レール66を移動部材18に取り付け、手前側受け部材68を前面支持部24に取り付けるようにしてもよく、また奥側スライド支持機構64についても、奥側レール70を移動部材18に取り付け、奥側受け部材72を上面支持部26に取り付けるようにしてもよい。
【0026】
背面主軸ユニット10の前面側は手前側スライド支持機構62により支持され、その背面側は奥側スライド支持機構64により支持されているので、移動部材18の前後方向のサイズを小さくすることができ、これにより、この背面主軸ユニット10をベッド本体2の取付部8にコンパクトに且つ確実に移動自在に支持することができる。また、
図3及び
図4に示すように、ベッド本体2の前面側の上端部に矩形状凹部23が設けられ、この矩形状凹部23内に背面主軸ユニット10の移動部材18の前部が収容され、背面主軸ユニット10の前面部が移動部材18(換言すると、ベッド本体2)から前方に大きく突出しないように構成しているので、旋盤本体の前カバー78を背面主軸ユニット10の前面部に近づけることによって、
図3から理解される如く、旋盤本体の前後方向のサイズを小さくすることができ、設置スペースの小さいNC旋盤を提供することができる。
【0027】
このNC旋盤においては、タレット部32が第2タレット支持機構43を介して下方に所定角度(例えば30度)傾斜して移動されるように構成しているが、このことに関連して、背面主軸ユニット本体14(この例では、背面主軸支持部材20)の上面をこのタレット部32の前下方への移動方向と実質上平行となるように、前方に向けて所定角度(例えば、30度)下方に傾斜して拡がるように構成し、このように前下方に傾斜する背面主軸ユニット本体14の上面に背面主軸部16を取り付けるようにするのが好ましく、このように構成することによって、加工工具保持部28及び背面主軸ユニット10の前後方向の長さを小さくすることができ、このように構成することにより、旋盤本体の前後方向のサイズを一層小さくすることができる。
【0028】
背面主軸ユニット10をベッド本体2に取り付けた場合、旋盤本体の前カバー78と切粉排出域50との間に空間が生じ、この空間を通して切削切粉など(所謂、切粉など)が下方に落下する恐れがあり、この切削切粉の落下を防止するために切粉流しカバー80が設けられている。この場合、切粉流しカバー80は、例えば背面主軸ユニット10の背面主軸部支持部材20の端面部に取り付けられ、背面主軸ユニット10とともに横方向に移動される。
【0029】
この切粉流しカバー80の前端側は、図示していないが、前カバー78の内面に設けられた案内部材(図示せず)の案内凹部に移動自在に受け入れられ、またその後端側は、切粉排出域50にて切粉排出空間52の開口内に位置付けられ、この切粉流しカバー80は案内部材の案内凹部及び切粉排出空間52の開口に沿って横方向に移動される。
【0030】
このように構成されているので、主軸部4の主軸チャック6に保持された加工物を切削加工する際に生じる切削切粉など、また背面主軸部16の背面主軸チャック22に保持された加工物を加工する際に生じる切削切粉などは、この切粉流しカバー80上に落下し、その表面に沿って下方に流れて切粉排出空間52に導かれ、この切粉排出空間52を通して背面側に排出される。
【0031】
次に、このベッド本体2にテールストックユニット12を取り付ける場合について説明する。主として
図6~
図7を参照して、テールストックユニット12は、テールベース82と、このテールベース82にスライド機構84を介して横方向に移動自在に支持されるセンターユニット86とを備え、このセンターユニット86に、主軸部4の主軸チャック6(
図1及び
図2参照)に保持された加工物の先端面を支持するためのセンター部材88が取り付けられている。スライド機構84は、凹溝が設けられた固定部材90と、突条が設けられた可動部材92とから構成され、可動部材92の突条が固定部材82の凹溝に移動自在に受け入れられる。
【0032】
この実施形態では、スライド機構84の固定部材90がテールベース82の上面に取り付けられ、その可動部材92がセンターユニット86の下面に取り付けられ、テールベース82に対してセンターユニット86(即ち、センター部材88)が横方向に移動自在に支持される。このセンターユニット86に関連して、例えば、シリンダ機構(例えば、油圧シリンダ機構)(図示せず)が設けられ、このシリンダ機構の本体部が例えばテールベース82に取り付けられ、その出力部が例えばセンターユニット86に取り付けられ、このように構成することによって、シリンダ機構(図示せず)が例えば伸張(又は収縮)すると、センターユニット86(即ち、センター部材88)が主軸部4の主軸チャック6に近接(又は離隔)する方向に移動される。尚、シリンダ機構を用いることなく、センターユニット86をテールベース82に対して手動でもって移動させるようにしてもよい。
【0033】
このテールストックユニット12を取り付ける場合、
図6及び
図7に示すように、テールベース82の前部背面がベッド本体2の取付部8の前面支持部24に取り付けられ、その後部下面がこの取付部8の上面支持部26に取り付けられるので、テールベース82の前後方向のサイズを小さくすることができ、これにより、このテールベース82をコンパクトに且つ確実に取付部に取り付けることができる。
【0034】
また、ベッド本体2の前面側の上端部に矩形状凹部23が設けられ、この矩形状凹部23内にテールベース82の前部が収容され、更にテールストックユニット12全体の前端部がこのテールベース82の前端部とほぼ同じ位置に位置し、このテールベース82から前方にほとんど突出していないので、旋盤本体の前カバー78をテールストックユニット12全体の前面部に近づけることができ、このように構成することによって、
図6及び
図7から理解される如く、旋盤本体の前後方向のサイズを更に小さくすることができ、設置スペースの更なる省スペース化を図ることができるとともに、作業者が主軸部4に近づいて位置することが可能となり、これにより、作業者とこの主軸部4との間の距離が短くなり、作業性の向上を図ることができる。
【0035】
テールストックユニット12をベッド本体2に取り付けた場合、切粉流しカバー94は、
図6に示すように取り付けられる。この切粉流しカバー94の前端側は、旋盤本体の前カバー78の内面に取り付けられ、またその後端側は、切粉排出域50にて切粉排出空間52の開口内に位置付けられ、このように取り付けることによって、主軸部4の主軸チャック6に保持された加工物を切削加工する際に生じる切削切粉などは、この切粉流しカバー94上に落下し、その表面に沿って下方に流れて切粉排出空間52に導かれる。
【0036】
このNC旋盤では、ベッド本体2の取付部8に背面主軸ユニット10及びテールストックユニット12を取り付けることができ、例えば背面主軸ユニット10を取り付けた場合、上述した構造を採用することにより、NC旋盤(換言すると、ベッド本体2)の前後方向の大きさを従来に比して小さくすることができ、また例えばテールストックユニット12を取り付けた場合、上述した構造を採用することにより、NC旋盤の前後方向の大きさを背面主軸ユニット10を取り付けた場合に比して更に小さくすることができ、これによって、作業性の一層の向上を図ることができる。
【0037】
尚、この実施形態では、ベッド本体2の取付部8に背面主軸ユニット10又はテールストックユニット12を取り付けているが、ベッド本体2にこれらを取り付けずに用いることもでき、この場合、図示していないが、この取付部8を覆うように切粉流しカバーが取り付けられる。
【0038】
以上、本発明に従うNC旋盤の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0039】
2 ベッド本体
4 主軸部
8 取付部
10 背面主軸ユニット
12 テールストックユニット
14 背面主軸ユニット本体
16 背面主軸部
24 前面支持部
26 上面支持部
28 加工工具保持部
50 切粉排出域
60,62 スライド支持機構
78 前カバー
80,94 切粉流しカバー
82 テールベース
86 センターユニット