(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】付加製造用重合体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230613BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230613BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20230613BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20230613BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20230613BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
D01F6/62 302E
D01F6/92 307C
D01F6/92 308C
D06M10/02 B
C08J9/26 101
C08J9/26 CFD
(21)【出願番号】P 2020512486
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018049250
(87)【国際公開番号】W WO2019046808
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505208363
【氏名又は名称】ポリ-メド インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】51 Technology Drive, Anderson,South Carolina 29625 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スコット・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムス・ハイド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ガエルケ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・ジョンズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アーロン・ボーン
(72)【発明者】
【氏名】セス・ディラン・マカレン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・グラベット
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0015826(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 3/40
D01F 6/00 - 6/96
D06M 10/00 - 10/10
C08J 9/00 - 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体相に添加剤を含む組成物であって、
(a)前記添加剤が溶媒に可溶であり、
(b)前記重合体相が有機重合体を含み、かつ、本質的に溶媒に不溶であり、
(c)前記組成物が25℃未満の温度では固体であり、かつ、
50℃~450℃では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり、及び
(d)前記組成物が前記組成物の重量に基づいて前記添加剤の所定の重量パーセント及び前記組成物の重量に基づいて前記重合体相の所定の重量パーセントを有し、前記添加剤の重量パーセント及び前記重合体相の重量パーセントの合計が90%よりも大き
く、
(e)前記組成物がモノフィラメントの形態にある、前記組成物。
【請求項2】
前記モノフィラメントが非延伸モノフィラメントであり、又は前記モノフィラメントが50%未満の配向因子を有し、又は前記モノフィラメントが1~5mmの直径を有し、特に前記モノフィラメントが1.75±0.05mmの直径を有し、及び/又は前記モノフィラメントが少なくとも1ニュートンのカラム座屈抵抗性を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記添加剤が無機塩を含み、又は前記添加剤が水溶性有機化合物を含
む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水溶性有機化合物がポリエチレングリコールである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合体相が
ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート及びポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)から選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を
含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記重合体相
がポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記添加剤の重量パーセントが1~60%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒が水であり、前記添加剤が水に可溶であり、前記重合体相が水に不溶である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
モノフィラメントの形態の請求項1に記載の組成物を含み、スプールをさらに含むアセンブリであって、前記モノフィラメントが前記スプールに巻き付けら
れている、アセンブリ。
【請求項10】
前記スプール上の前記モノフィラメントが気密性容器内に封入されている、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
請求項
1に記載の組成物の形成方法であって、次の工程:
(a)添加剤と重合体相とを組み合わせて組成物を形成し;
(b)前記組成物を加熱して溶融組成物を形成し;
(c)前記溶融組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成し;及び
(d)前記非延伸モノフィラメントを滅菌すること
を含む方法。
【請求項12】
請求項
9又は10に記載のアセンブリの形成方法であって、次の工程:
(a)請求項1に記載の組成物を溶融状態で得、
(b)前記溶融状態の組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成し;
(c)前記非延伸モノフィラメントをスプールに巻き付け;
(d)前記モノフィラメントが巻かれた前記スプールを包装すること
を含む方法。
【請求項13】
付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
(a)固体組成物を溶融して溶融組成物を得、ここで、前記溶融組成物は、請求項1~
8のいずれかに記載の添加剤及び重合体相を含み;
(b)付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し;
(c)前記物品と溶媒とを、前記添加剤を少なくとも部分的に溶解するが前記重合体相を溶解しない条件下で接触させて、前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶で
ある。
【請求項14】
前記溶媒が前記添加剤の少なくとも50%を溶解する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固体組成物を50~450℃の温度で溶融して前記溶融組成物を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記付加製造方法が溶融フィラメント製造(FFF)である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記物品の多孔質体が、前記付加製造工程中に生成された溶融組成物の繊維形態の長手方向に対して長手方向に、前記物品の表面に沿って走る複数のチャネルを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
酸化エチレン処理、ガンマ処理、電子ビーム処理、乾熱処理及び蒸気処理から選択される方法で前記物品を滅菌することをさらに含み、又は残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量%未満となるように、前記物品から前記溶媒を除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
(a
)重合体相中に添加剤を含む
、請求項1~8のいずれかに記載の組成物を得;
(b)前記組成物を押し出してモノフィラメント繊維にし;
(c)前記モノフィラメント繊維を溶融して溶融組成物を得;
(d)付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し;及び
(e)前記物品と溶媒とを、前記添加剤を少なくとも部分的に溶解させるが前記重合体相は溶解させない条件下で接触させて前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶であり、
(f)残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量%未満となるように、前記物品の多孔質体から前記溶媒を除去すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で2017年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/553377号の利益を主張する。この出願は、全ての目的についてその全体が参照により本明細書において援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、付加製造、それに使用するための重合体組成物及びそれによって作製された製品に関し、医療用途の生体吸収性重合体を含む。
【背景技術】
【0003】
3D印刷としても知られている付加製造は、産業プロセスに対する好奇心から、主として機器及びコンピュータソフトウェアの進歩を通して過去20年間にわたって開発されてきた。高度な構造を作製する能力は向上したが、この成長しつつある技術をサポートするために、多機能材料の改善が必要とされている。
【0004】
付加製造の一般的方法の一つは、融合フィラメント製造(FFF)である。FFFによる付加製造の大部分は、単相熱可塑性重合体モノフィラメントを使用して、溶融押出によって印刷ラインを生成する。高度なシナリオでは、複数のモノフィラメントを使用して特定のデザインの領域を作製する。最も一般的には、第2モノフィラメントを使用してサポートを生成し、その際、第2モノフィラメント材料は、印刷完了後に簡単に除去するために水溶性である。これは極めて有用であるが、この手法の相構成は、印刷装置の許容範囲に制限される。
【0005】
このように、当該技術分野には、依然として付加製造、特に生物医薬製品の製造において使用することができる改善された材料に対する要望がある。本発明は、この要望に対処するものである。
【0006】
背景技術の項で説明した主題の全ては、必ずしも従来技術ではなく、単に背景技術の項における説明の結果として、従来技術とみなされるべきではない。このように、「背景技術」の項で説明した又は当該主題に関連する従来技術の課題の認識は、重合体技術であると明示的に述べられていない限り、従来技術として扱うべきではない。その代わりに、「背景技術」の項における主題の説明は、それ自体も発明性のある特定の課題に対する発明者のアプローチの一部として扱う必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要するに、本発明は、付加製造に有用な組成物、本発明の組成物を使用する付加製造の実施方法、及び付加製造方法によって製造された製品、並びに関連する主題を提供する。
【0008】
例えば、一実施形態では、本発明は、重合体相中に添加剤を含む組成物を提供し、(a)添加剤は溶媒に可溶であり、(b)重合体相は、有機重合体を含み、かつ、本質的に溶媒に不溶であり、(C)組成物は、25℃未満の温度では固体であり、かつ、前記組成物の溶融温度を超える温度では2.5~30グラム/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり、(d)組成物は、組成物の重量に基づいて所定の添加剤の重量パーセント及び組成物の重量に基づいて所定の重合体相の重量パーセントを有し、ここで、添加剤の重量パーセントと重合体相の重量パーセントの合計は90%を超える。
【0009】
一実施形態では、添加剤は分散相を提供し、重合体相は連続相である。この実施形態では、本発明は、連続相中に分散相を含む組成物を提供し、ここで、分散相は溶媒に可溶である。連続相は有機重合体を含み、本質的に溶媒に不溶である。組成物は、25℃未満の温度で固体であり、組成物の溶融温度を超える温度でメルトフローインデックスが2.5~30g/10分である粘性流体。そして、組成物は、組成物の重量に基づく分散相の重量パーセント及び組成物の重量に基づく連続相の重量パーセントを有し、ここで、分散相の重量パーセント及び重量パーセントの合計は、連続相は90%を超える。
【0010】
任意に、これらの組成物は、次の特徴のうち1つ以上(例えば、2又は3又は4等)以上によって特徴付けることができる:溶媒が水であること、組成物が付加製造方法で使用できる形態であること、例えば、フィラメント又はフィラメントのスプールの形態(ここで、フィラメントは1~5mmの直径を有していてよい)であること又は組成物が顆粒を含む粉末の形態であること、組成物中の添加剤又は分散相の重量パーセントが1~60%であること、添加剤又は分散相が20~400μmの平均粒度を有すること、添加剤又は分散相が無機塩、例えば、陽イオン及び陰イオンを含む無機塩を含み(ここで、陽イオンは、ナトリウム、カリウム及びマグネシウムから選択され、陰イオンは塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選択される)、添加剤又は分散相が水溶性有機化合物、例えば、糖若しくは有機カルボン酸又はその塩を含み、重合体又は連続相が生体吸収性重合体、例えば、ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシブチレート)及びポリエーテルから選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を含み、重合体又は連続相は、非生体吸収性重合体、例えば、ポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体含み、組成物は、残留単量体がほとんど又は全くなく、例えば、残留単量体を<2重量%の濃度(ゼロの残留単量体を含む)で有し、組成物は残留スズがほとんど又は全くなく、例えば、<200ppmのスズ濃度(ゼロのスズを含む)を有し、組成物は非スズ重金属をほとんど又は全く含まず、例えば、<50ppmの非スズ金属濃度(ゼロの非スズ重金属を含む)を有する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、付加製造方法であって、次の工程を含む方法を提供する:(a)ここで説明した固体組成物を溶融させて、添加剤相及び重合体相又は分散相及び連続相のいずれかを含む溶融組成物を得、(b)付加製造を実施して、前記溶融組成物から物品を形成し、及び(c)前記物品と溶媒とを、前記添加剤相又は分散層を少なくとも部分的に溶解するが、ただし前記重合体相又は連続相を溶解しない条件下で接触させて前記物品の多孔質体を形成させ、ここで、前記添加剤相又は分散相は前記溶媒に可溶である。
【0012】
任意に、この方法は、次の特徴の1以上(例えば、2、3、4等)によってさらに特徴付けられる:溶媒が水を含み、溶媒が水であり、溶媒が添加剤又は分散相の少なくとも30%を溶解し、溶媒が添加剤又は分散相の少なくとも80%を溶解し、固体組成物を50~450℃の範囲内の温度で溶融し、付加製造プロセスを相対湿度が10%未満の雰囲気下で実施し、付加製造方法が溶融フィラメント製造(FFF)であり、物品の多孔質体が0.5~50mmの最大断面積の複数の穴を含み。組成物が所定の密度を有し、物品が所定の密度を有し、物品が組成物の密度の85%未満の密度を有し、条件が20℃を超える温度を含み、多孔質物品が20~400μmの最大断面の細孔を含み、この方法は、例えば、エチレンオキシド、ガンマ線、電子ビーム、乾熱及び蒸気プロセスにより処理から選択される方法によって、物品を滅菌することをさらに含む。この方法は、例えば、残留溶媒が物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように、物品から残留溶媒を除去することをさらに含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、付加製造方法であって、次の工程を含む方法を提供する:(a)本明細書に記載されるような組成物、例えば、本明細書に記載されるように連続相中に分散相を含む又は本明細書に記載される重合体相中に添加剤相を含むものを準備し、(b)前記組成物を押し出して繊維にし、(c)前記繊維を溶融して、分散相及び連続相又は添加剤相及び重合体相のいずれかを含む溶融組成物を得、(d)付加製造を行って、前記溶融組成物から物品を形成し、(d)前記物品と溶媒とを、添加剤相又は分散相が少なくとも部分的に溶解するが、ただし連続相又は重合体を溶解しない条件下で接触させて前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤相及び分散相は前記溶媒に可溶であり、(e)残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように前記物品の多孔質体から残留溶媒を除去する。
【0014】
任意に、この方法は、次の特徴の1以上(例えば、2、3、4等)によって特徴づけられる:溶媒が水を含み、溶媒が水であり、溶媒が添加剤相又は分散相の少なくとも30%を溶解し、溶媒が添加剤相又は分散相の少なくとも80%を溶解し、固体組成物を50~450℃の範囲内の温度で溶融し、付加製造プロセスを相対湿度が10%未満の雰囲気下で実施し、付加製造方法が溶融フィラメント製造(FFF)であり、製品の多孔質体が0.5~50mmの最大断面積の複数の穴を含み、組成物が所定の密度を有し、物品が所定の密度を有し、物品が組成物の密度の85%未満の密度を有し、条件は、20℃を超える温度を含み、多孔質物品が20~400μmの最大断面の細孔を含み、この方法は、例えば、エチレンオキシド、ガンマ線、電子ビーム、乾熱及び蒸気プロセスにより処理から選択される方法によって、物品を滅菌することをさらに含み、この方法は、例えば、残留溶媒が物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように、物品から残留溶媒を除去することをさらに含む。
【0015】
ここで述べた本発明の特徴及び追加の特徴並びにそれらを得る方法が明らかになり、そして本発明は、次の詳細な説明を参照することによってさらによく理解されるであろう。本明細書に開示される全ての参考文献は、あたかもそれぞれが個別に組み込まれたかのように、その全体が参照により本明細書において援用される。
【0016】
この簡単な概要は、詳細な説明において以下にさらに詳しく記載する単純化した形で、特定の概念を紹介するために提供される。特に明記されている場合を除き、この簡単な概要は、特許請求された主題の主要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求された主題の範囲を限定することも意図するものではない。
【0017】
また、この簡単な概要では、番号が振られたいくつかの例示的な本発明の実施形態を提供する。これらの番号が振られた実施形態に関する詳細を詳細な説明で提供する。
1.重合体相に添加剤を含む組成物であって、
a.前記添加剤が溶媒に可溶であり、
b.前記重合体相が有機重合体を含み、かつ、本質的に溶媒に不溶であり、
c.前記組成物が25℃未満の温度では固体であり、かつ、前記組成物の溶融温度を超える温度では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり、及び
d.前記組成物が前記組成物の重量に基づいて前記添加剤の所定の重量パーセント及び前記組成物の重量に基づいて前記重合体相の所定の重量パーセントを有し、前記添加剤の重量パーセント及び前記重合体相の重量パーセントの合計が90%より大きい、前記組成物。
2.前記溶媒が水である、実施形態1に記載の組成物。
3.粉末又は繊維などの、付加製造プロセス、例えばFFFで使用できる形態にある、実施形態1に記載の組成物。
4.フィラメントの形態にある、実施形態1に記載の組成物。
5.前記フィラメントが1~5mmの直径を有する、実施形態4に記載の組成物。
6.顆粒の形態にある、実施形態1に記載の組成物。
7.前記組成物中の添加剤の重量パーセントが1~60%である、実施形態1に記載の組成物。
8.前記添加剤が20~400μmの平均粒度を有する、実施形態1に記載の組成物。
9.前記添加剤が無機塩を含む、実施形態1に記載の組成物。
10.前記添加剤が陽イオン及び陰イオンを含む無機塩を含み、前記陽イオンがナトリウム、カリウム及びマグネシウムから選択され、前記陰イオンが塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選択される、実施形態1に記載の組成物。
11.前記添加剤が水溶性有機化合物を含む、実施形態1に記載の組成物。
12.前記水溶性有機化合物が糖である、実施形態11に記載の組成物。
13.前記水溶性有機化合物が有機カルボン酸又はその塩である、実施形態11に記載の組成物。
14.前記重合体相が生体吸収性重合体を含む、実施形態1に記載の組成物。
15.前記重合体相が、ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリエーテルから選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を含む、実施形態1に記載の組成物。
16.前記重合体相が非生体吸収性重合体を含む、実施形態1に記載の組成物。
17.前記重合体相が、ポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含む、実施形態16に記載の組成物。
18.残留単量体を2重量%未満の濃度で含む、実施形態1に記載の組成物。
19.スズを200ppm未満の濃度で含む、実施形態1に記載の組成物。
20.スズを除く1種以上の重金属を50ppm未満の濃度で含む、実施形態1に記載の組成物。
21.付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
a.固体組成物を溶融して、実施形態1~20のいずれかに記載の添加剤及び重合体相を含む溶融組成物を得、
b.付加製造を実施して、前記溶融組成物から物品を形成し、及び
c.前記物品と溶媒とを、前記添加剤を少なくとも部分的に溶解するが、ただし前記重合体相を溶解しない条件下で接触させて、前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶である。
22.前記溶媒が水を含む、実施形態21に記載の方法。
23.前記溶媒が水である、実施形態21に記載の方法。
24.前記溶媒が、添加された添加剤の少なくとも30%を溶解する、実施形態21に記載の方法。
25.前記溶媒が、添加された添加剤の少なくとも80%を溶解する、実施形態21に記載の方法。
26.前記固体組成物を50~450℃の温度で溶融する、実施形態21に記載の方法。
27.前記付加製造プロセスを<10%の相対湿度の雰囲気下で実施する、実施形態21に記載の方法。
28.前記付加製造方法が溶融フィラメント製造(FFF)である、実施形態21に記載の方法。
29.前記物品の多孔質体が0.5~50mmの最大断面の複数の穴を含む、実施形態21に記載の方法。
30.前記組成物が所定の密度を有し、前記物品が所定の密度を有し、前記物品が前記組成物の密度の85%未満の密度を有する、実施形態21に記載の方法。
31.前記条件が20℃を超える温度を含む、実施形態21に記載の方法。
32.前記多孔質物品が20~400μmの最大断面の細孔を含む、実施形態21に記載の方法。
33.エチレンオキシド、ガンマ線、電子ビーム、乾熱及び蒸気プロセスによる処理から選択される方法によって前記物品を滅菌することをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
34.残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように前記物品から残留溶媒を除去することをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
35.付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
a.実施形態1~20のいずれかに記載された重合体相中に添加剤を含む組成物を準備し、
b.前記組成物を押し出して繊維にし、
c.前記繊維を溶融して、添加剤及び重合体相を含む溶融組成物を得、
d.付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し、
e.前記物品と溶媒とを、前記添加剤を少なくとも部分的に溶解するが、だだし前記重合体相を溶解しない条件下でさせて、前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶であり、及び
f.残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように、前記物品の多孔質体から残留溶媒を除去すること。
【0018】
一の以上の実施形態の詳細を以下の説明に記載する。一例示実施形態に関連して図示又は説明する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。したがって、本明細書で説明する様々な実施形態のいずれかを組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で明示する様々な特許、出願及び刊行物の概念を採用する必要がある場合には、実施形態の態様を改変して、さらに別の実施形態を提供することができる。他の特徴、目的、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0019】
本発明の例示的な特徴は、その性質及び様々な利点は、添付図面及び次の様々な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。非限定的かつ非網羅的な実施形態を添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、重合体相内の添加剤、例えば、連続相内の分散相についての5つの異なる例示相形態を示す。
【
図3A】
図3Aは、溶媒抽出前の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図3B】
図3Bは、溶媒抽出後の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図4A】
図4Aは、溶媒抽出前の印刷物品の細孔方向性のヒストグラムを示す。
【
図4B】
図4Bは、溶媒抽出後の印刷物品の細孔方向性のヒストグラムを示す。
【
図5A】
図5Aは、溶媒抽出後の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図5B】
図5Bは、溶媒抽出後の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図5C】
図5Cは、溶媒抽出後の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図5D】
図5Dは、溶媒抽出後の印刷物品のSEM画像を提供する。
【
図6】
図6は、それぞれがPDO/PEG(60/40)で印刷された2個の部品のウィッキング性能を示す写真である。
【
図7】
図7は、2個の部品の吸上性能を示す写真であり、一方の部品はPDO/PEG(60/40)で印刷され、他方の部品はHDPE/PCL(45/55)で印刷されたものである。
【
図8】
図8は、劣化状態にさらされた3D印刷部品のSEM画像を提供する。
【
図9】
図9は、様々な組成を有する3D印刷部品についての、試験管内での推定加速時間(日)対分解量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の次の詳細な説明及びここに含まれる実施例を参照することによって、さらに容易に理解できる。
【0022】
簡単にいうと、本発明は、付加製造、それに使用するための重合体組成物、及びそれによって作製された製品、例えば多孔性又はミクロ多孔性、すなわち、付加印刷プロセス自体で作製されるよりも大きな多孔性を有する製品を提供する。このように、本発明は、付加製造に有用な組成物、本発明の組成物を使用する付加製造の実施方法、及び付加製造プロセスによって作製された製品、並びに関連する主題を提供する。
【0023】
本明細書に開示されるような付加製造によって製造される多孔質及びミクロ多孔質部品は、医療及び非医療用途に有用である。これらの部品は、溶媒可溶性成分と溶媒不溶性成分の両方を含む組成物から製造される。部品を付加製造プロセスによって印刷した後に、この部品を溶媒にさらして印刷部品から溶媒可溶成分を抽出することで、表面形態が変化した部品が得られる。
【0024】
一つの例示的な用途として、組成物及び関連する方法は、患者の身体と内部又は外部で接触する機器などの医療機器の製造に有用である。本発明は、精密さの増した設計でカスタマイズされた患者固有のインプラントを作製する能力を促進する組成物及び方法を提供する。本発明の組成物及び方法は、高度な足場、人工の部分的な又は完全な器官、標的化された医薬送達、及び他の多くの用途の創作をサポートする。
【0025】
本発明は、付加製造プロセスによって部品を形成するために有用な組成物を提供する。この組成物は少なくとも2つの成分を含み、一方の成分は選択された溶媒に本質的に不溶であり、他方の成分は選択された溶媒に実質的に可溶である。したがって、組成物が選択された溶媒に対して一定期間にわたって浸漬又はそうでなければ曝露されると、成分の一方は溶媒に溶解するのに対し、他方の成分は溶媒には溶解しない。組成物が選択された溶媒にさらされるプロセスを、本明細書では抽出工程又は抽出プロセスという。
【0026】
比較的不溶性の成分が溶媒に完全に不溶である必要はないが、この成分は、抽出プロセス中において溶媒に本質的に不溶であることが必要である。本明細書で使用するときに、本質的に不溶とは、溶媒曝露の期間中に5重量%以下の不溶性成分が溶媒に溶解することを意味し、実施形態では、4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下の比較的不溶性の成分が、抽出工程中に溶媒に溶解することを意味する。
【0027】
同様に、抽出プロセス中に、組成物の比較的可溶性の成分の全てが選択された溶媒に溶解する必要はない。しかしながら、可溶性成分は、不溶性成分よりもはるかに容易に溶媒に溶解するはずであり、その結果、可溶性成分が溶媒に溶解している間、不溶性成分は溶媒にほとんど又は全く溶解しない。
【0028】
本明細書において、可溶性成分を、添加剤、又は添加成分、又は添加材相ということがある。本明細書において、不溶性成分をマトリックス又はマトリックス相ということがある。一実施形態では、可溶性成分は組成物の微量成分(<50重量%)であり、不溶性成分は主成分(>50重量%)である。したがって、本明細書において、不溶性成分を、連続相を与えるもの又は連続相であるということがあり、不溶性成分を、不連続相を与えるもの又は不連続相であるということがある。
【0029】
一実施形態では、選択された溶媒に比較的不溶性である成分は重合体、例えば、有機重合体である。この成分は、単一の重合体、例えば、ポリエチレン又はポリラクチドとすることができ、あるいは重合体のブレンド、例えば、ポリエチレン及びポリラクチドを含むブレンドとすることができる。一実施形態では、不溶性成分は単一の重合体組成物である。したがって、本発明は、重合体相に添加剤を含む組成物を開示し、ここで、この添加剤は組成物の可溶性成分であり、かつ、溶媒に可溶であるのに対し、重合体相は組成物の不溶性成分であり、有機重合体を含み、しかも本質的に溶媒に不溶である。
【0030】
本発明の組成物は、選択された溶媒に可溶である成分を含み、この成分を添加剤相ということがある。添加剤相を構成する材料の例としては、有機小分子、有機重合体、及び無機粒子が挙げられる。好適な有機小分子としは、糖類及びカルボン酸(その塩を含む)が挙げられる。好適な有機重合体としては、ポリエステル及びポリ無水物が挙げられる。好適な無機粒子としては、塩化ナトリウム及びヒドロキシアパタイトなどの無機塩が挙げられる。
【0031】
一実施形態では、選択された溶媒に可溶の成分は、重合体、例えば、有機重合体である。別の実施形態では、選択された溶媒に可溶な成分は塩である。いずれの場合にも、この可溶性成分を、組成物の添加剤成分又は添加剤相ということがある。
【0032】
任意に、選択された溶媒に比較的可溶な成分は重合体、例えば、有機高分子重合体である。この可溶性成分は、単一の重合体、例えば、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールとすることができ、又は重合体のブレンド、例えば、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールを含むブレンドであることができる。一実施形態では、可溶性成分は単一の重合体である。一実施形態では、可溶性成分は、2種以上の重合体のブレンドである。一実施形態では、可溶性成分は、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ダウデュポン(米国ミシガン州ミッドランド)社製のPLURONICS重合体に見出されるようなPEGとポリプロピレングリコール(PPG)とのブレンド、又はメタノールなどのアルコール溶媒に可溶であってよく、不溶成分である重合体相が生分解性重合体、例えば、ポリエステル及び/又は多価アルコールセグメント、例えばグリコリド(ポリグリコリド、PGA)、ラクチド(ポリラクチド、PLA)、ジオキサノン(ポリジオキサノン、PDO)、トリメチレンカーボネート(ポリトリメチレンカーボネート、TMC)、カプロラクトン(ポリカプロラクトン、PCL)、ヒドロキシブチレート(ポリヒドロキシアルカノエート、例えばPHB)などのヒドロキシアルカノエート、又はポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)などのそれらの混合物から生成されるセグメントを含む重合体であるPPGであり、又はこれらを含む。
【0033】
添加剤相は、水への溶解度をほとんど又は全く有しない有機重合体から形成されていてもよい。このような添加剤相の例は、0.1g/L未満の水への溶解度を有するポリラクチドである。一実施形態では、添加剤相は、水に不溶性であるか、又は本質的に水に不溶であり、1g/L未満、又は0.5g/L未満、又は0.1g/L未満の溶解度を有する。
【0034】
組成物中の重合体相は、可溶性成分若しくは不溶性成分として存在するか又は両者に存在するかどうかを問わず、全体的に生分解性成分であってよく、又は生分解性成分を含むことができる。しかしながら、重合体相は必ずしも生分解性である必要はなく、別の実施形態では、重合体相は非生分解性である。一実施形態では、重合体相は、生分解性材料と非生分解性材料との混合物を含む。例示的な生分解性重合体としては、ポリエステル及びポリ無水物が挙げられる。一実施形態では、生分解性重合体は、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、クエン酸、ヒドロキシアルカノエートから誘導されるものなどのポリエステルセグメントを含む。
【0035】
一実施形態では、組成物の不溶性成分は、全体的に形成された重合体相、又は非分解性重合体を含む。好適な非分解性重合体の例としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0036】
任意に、重合体相がポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含むときに、添加剤は、クロロホルムなどの有機溶媒に可溶である一方で、重合体相は、有機溶媒、例えばクロロホルムに可溶ではなく、添加剤は、ポリエステル及び/又はポリ無水物セグメント、例えばグリコリド(ポリグリコリド、PGA)、ラクチド(ポリラクチド、PLA)、ジオキサノン(ポリジオキサノン、PDO)、トリメチレンカーボネート(ポリトリメチレンカーボネート、TMC)、カプロラクトン(ポリカプロラクトン、PCL)、ヒドロキシブチレート(ポリヒドロキシアルカノエート、例えばPHB)などのヒドロキシアルカノエート、又はポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)などのそれらの混合物から生成されるセグメントを含む重合体である。
【0037】
任意に、選択された溶媒に比較的可溶の成分は重合体ではない。例えば、可溶性成分は塩であってもよい。
【0038】
一実施形態では、重合体相内に分散していてよい又は添加剤相内に分散重合体相を含有していてもよい添加剤相は水溶性無機塩を含む。無機塩は、好ましくは、塩化ナトリウムなどの生体適合性無機塩である。塩化ナトリウムは、室温において359g/Lのレベルで水に溶解する。一実施形態では、無機塩は、少なくとも100g/L、又は少なくとも200g/L、又は少なくとも300g/Lの程度まで、室温で水に可溶である。
【0039】
本発明の組成物は、溶媒可溶性成分と溶媒不溶性成分とを含む。まとめると、これらの2つの成分は、組成物の100重量%を占めることができる。しかしながら、他の実施形態では、これらの2つの成分は、組成物の大部分、すなわち、組成物の50重量%超、又は本発明の組成物の総重量の少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%を占める。したがって、一実施形態では、本発明は、重合体相に添加剤を含む組成物を提供し、添加剤は溶媒に可溶であり、重合体相は有機重合体を含み、かつ、本質的に溶媒に不溶であり、組成物は、組成物の重量に基づいて添加剤の所定の重量パーセント及び組成物の重量に基づいて重合体相の所定の重量パーセントを有し、ここで、添加剤の重量パーセント及び重合体相の重量パーセントの合計は90%より大きい。上記のように、添加剤は重合体若しくは重合体ブレンドであってもよく、又は塩であってもよい。
【0040】
ここで言及したように、一態様では、本発明は、分散相(例えば、可溶性相又は可溶性成分ともいう)と連続相(例えば、不溶性相又は不溶性成分ともいう)とを含む組成物である。この組成物は、室温では固体であるため、顆粒又はフィラメントなどの公的な形状に成形保持できる。しかしながら、高温では、組成物は溶けて流動可能になる。冷却すると、組成物は固体状態に戻る。冷却された材料は、付加製造で使用される場合、所望の印刷材料の形状を与える。したがって、組成物は熱可塑性であると説明できる。連続相又は分散相の一方又は両方は熱可塑性を有すると説明できる。
【0041】
FFF印刷及び他の類似の溶融押出付加製造プロセスなどの付加製造のために本明細書で提供される熱可塑性組成物は、成分の相溶性及び溶解性並びに目的の製造プロセスに依存して、一相又は複数の相から構成できる。特定の場合において、付加製造に有用な本発明の組成物は、1以上の連続相、及び/又は1以上の分散相を含むことができる。例えば、組成物は、互いに混和しない2種の異なる材料から形成された2つの連続相を有することができる。同様に、組成物は、互いに非混和性である2種の異なる材料から形成された2つの分散相を有することができる。別の実施形態では、組成物は、互いに混和性である2種以上の材料から形成された単一の連続相を有する。同様に、別の実施形態では、組成物は、互いに混和性であっても混和性でなくてもよい2種以上の材料から形成される分散相を有する。
【0042】
連続相は、所定の長さにわたる相の結合性によって識別できる。例えば、連続相が導電性である重合体を含む場合、連続相は、電流が連続相の長さに流れることを可能にする。
【0043】
連続相は非構造化形状を有することができ、その際、連続相はランダムな形状を有する。連続相は、ロッド構造、フォーム構造、微粒子が互いに接触している微粒子、フィルム構造、ラメラ構造、繊維状構造、ラミネート構造など、いくつかの形態をとることができる。
【0044】
先に述べたように、連続相は、重合体、例えば、熱可塑性重合体であることができ、又はそれを含むことができる。重合体連続相を含む組成物は、重合体と混合されているが重合体連続相とは別の相を維持するポロゲンその他の添加剤を含む分散相も含む。比較的大量の添加剤を重合体と混合した場合には、添加剤は、それが連続相を形成するほど大量に存在することがあり、それと混合された重合体は、連続相内に分散相を形成する。
【0045】
いくつかの実施形態において、組成物は、複数の連続相を含む。複数の連続相は、連続被膜内の連続繊維、共連続発泡体様構造、ラメラ構造、並んだ相、及び他の形態をとることがある。例示実施形態において、組成物は、2つの連続重合体相を含み、ここで、組成物は任意に単一のモノフィラメントの形態であり、そして2つの連続重合体相はポリグリコリド及びポリカプロラクトン製であってよく、1以上のポリカプロラクトンフィラメントを取り囲む連続ポリグリコリド被膜の形態をとる。モノフィラメントを、FFFプロセスなどの付加製造プロセスを使用して部品、例えば、中間インプラントに印刷するところ、これはプロセス重合体の状態で存在する相分離を保持する。移植後、ポリグリコリドは2か月以内に加水分解を経て分解し、小さなポリカプロラクトン繊維の収集によって当たられる同一の正味形状を持ち、元の部品重量の50%の残留構造が残る。これは、新たに形成する組織の内部成長をサポートする低密度、高表面積のインプラントに移行する、高強度及び高密度の初期部品を提供することに有用である。
【0046】
本発明の組成物は、室温で固体であり、流体溶融状態に到達するように加熱でき、冷却時に固体状態に戻る点で熱可塑性である。
【0047】
一実施形態では、本発明の組成物は、周囲温度、例えば20~25℃では固体であるが、付加製造プロセスの動作温度である高温では流体である。様々な付加製造プロセスでは、様々な動作温度が使用される。これは通常、50~450℃の範囲内である。様々な実施形態において、本発明の組成物は、組成物の融点ということができる温度では流体となり、組成物に応じて、その融点は約50℃、又は約75℃、又は約100℃、又は約125℃、又は約150℃、又は約175℃、又は約200℃、又は約225℃、又は約250℃、又は約275℃、又は約300℃、又は約325℃、又は約350℃、又は約375℃、又は約400℃、又は約425℃、又は約450℃であり、及びそれらの範囲を含む。例えば、一実施形態では、本発明の組成物は、約50℃よりも高い、例えば、約50~100℃、又は約50~150℃、又は約50~200℃の融点を有する。別の実施形態では、本発明の組成物は、約75℃よりも高い、例えば、約75~125℃、又は約75~150℃、又は約75~175℃、又は約75℃~200℃、又は約75~225℃の融点を有する。本明細書で使用するときに、「約X」の温度(ここで、Xは上記の温度である)とは、上記温度X±温度Xの5℃、すなわち、上記の温度の上記の温度±5℃をいう。
【0048】
本発明の組成物の融点は、ASTM又はISO標準手順に従って測定することができる。例えば、ASTM D7138-16を使用して、合成繊維の溶融温度を決定できる。別の例として、ASTM D3418は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して融点を測定することを記載する。
【0049】
組成物が溶融状態にある場合、例えば、その融点を超える場合、これは、そのメルトフロー特性、例えば、そのメルトフローインデックス(MFI)又はメルトフローレート(MFR)により特徴付けることができる。材料が流動する能力を測定するのに有用な試験がメルトフローインデックス(MFI)である。この試験を結晶性、半結晶性、又は非晶質の熱可塑性材料を含む粘性流体に適用して、温度及び圧力の所定の条件下で材料の流量を決定することができ、典型的には、所定の組成物が所定のオリフィスサイズで流れる時間(分)当たりの重量(グラム)として与えられる。この試験は、材料の流動能力の非特異的分析であり、組成に及ぼす温度又は圧力の影響を決定するのに有用である。FFF及びFDMについて、10分当たり約2.5~30グラムの間のMFI値を生成するのに適した温度範囲を決定することが望ましく、これは、所定の組成物のための好ましいFFF又はFDMプロセス温度に変換する。
【0050】
ASTM及びISOは、メルトフローを測定するための標準手順を公開する。一般的な方法としては、例えば、ISO 1133、JIS K 7210、ASTM D1238を参照されたい。一実施形態では、メルトフローは、ISO-1112-1手順Aに従って測定される。別の実施形態では、メルトフローは、ASTM A1238手順Aに従って測定される。別の実施形態では、メルトフローは、ISO1122-2に従って測定される。別の実施形態では、メルトフローは、ASTM D1238に従って測定される。Instron Company(米国マサチューセッツ州ノーウッド)は、CEASTメルトフローテスターMF10、MF20、MF30モデルなど、これらの手順に従ってメルトフローを測定するために使用できる機器を販売する。Zwick Roell AG(ドイツ国ウルム)は、公的なメルトフローテスターを製造及び販売する別の会社である。
【0051】
したがって、本発明の組成物は、必要に応じてそれらのMFIにより特徴付けることができる。MFIは一般に、流体組成物がどの程度の粘稠かに相当し、この場合、MFIが高いほど、組成物の粘度は低くなる。付加製造では、広範囲の組成物粘度を使用できるが、所定のMFI値が特に好適であり、かつ、本発明の組成物によって得られる。一実施形態では、本発明の組成物は、組成物の溶融温度を超え、かつ、添加剤製造プロセス、例えば、FFFの動作温度内の温度で、約2.5~30g/10分のMFIを有する。様々な実施形態において、本発明の組成物は、10分間にわたって測定されたときに、約2.5~30、又は約2.5~25、又は約2.5~20、又は約2.5~15、又は約2.5~10、又は約5~30、又は約5~25、又は約5~20、又は約5~15、又は約10~30、又は約10~25、又は約10~15、又は約15~30、又は約15~25、又は約15~20、又は約20~30、又は約25~30のグラム単位のMFIによって特徴付けられる。本明細書で使用するときに、約XYグラムとは、X及びY±10%のそれぞれをいい、例えば、約2.5は、2.25~2.75をいうと共に、約30は、27~33グラムをいう。
【0052】
組成物中の固体分散相の増加(%)に伴い、材料が流れる能力が低下し、同じ温度でのMFI値の低下に反映される。油のような可塑剤、界面活性剤、水などの有機溶媒、単量体、低分子量重合体、及びオリゴマーを含めた様々な成分が組成物の粘性流動を高めるのに役立つ。後者の3つについては、これらを未反応の残留物として重合体に残すことは任意であり、それらの存在は、押出又はFFF印刷などの下流の処理に役立つ。
【0053】
したがって、一実施形態では、本発明は、重合体相に添加剤を含む組成物であって、(a)添加剤が溶媒に可溶性であり、(b)重合体相が有機重合体を含みかつ本質的に溶媒に不溶であり、組成物が25℃未満の温度では固体であり、組成物の溶融温度よりも高い温度では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体である。任意に、組成物は、組成物の重量に基づいて添加剤の所定の重量パーセント及び組成物の重量に基づいて重合体相の所定の重量パーセントを有し、ここで、添加剤の重量パーセントと重合体相の重量パーセントの合計は90%を超える。
【0054】
添加剤相は、一般に球状ではない微粒子を含むことができる。例えば、立方形の塩化ナトリウム塩などの非球状結晶が組成物中に存在することができる。したがって、添加剤相は、1:1よりも大きいアスペクト比を有する構造を含むことができる。場合によっては、細断されたフィラメントから生成されたより長いアスペクト比を、強度又は弾性率を高めたり、耐疲労性を向上させる補強要素として機能する濃度で追加できる。例えば、直径が5~50μm、例えば12μmで、アスペクト比が1001:0~10:1の間、例えば、約100:1のチョップドフィラメントを使用して繊維強化フィラメントを生じさせることができる。処理中に、これらのフィラメントを含む添加剤相は、フィラメントをプロセス方向に本質的に整列させる負荷を生成し、それによってその方向に沿った機械的性能が向上する。
【0055】
微粒子は、約50nm~0.5mmのサイズで変動することができる。いずれかの実施形態では、平均粒度は20~400μmとすることができる。別の実施形態では、平均粒度は400~800μmとすることができる。任意に、微粒子は広いサイズ分布を有し、平均粒度の標準偏差は±30%を超える。あるいは、粒子のサイズ分布は狭く、平均粒度の標準偏差は±30%未満である。
【0056】
一実施形態では、粒子は、標準偏差が10%以下の粒度分布を有する。分散相は、様々な直径の微粒子を含むことができる。分散相は、明確に異なる粒度範囲を有する微粒子の組み合わせを含むことができる。一実施形態では、20~400μmの平均粒度を有する微粒子と、400~800μmの平均粒度を有する微粒子とが組み合わされる。
【0057】
所望の平均粒度及び粒度分布の微粒子は、様々な技術によって生成することができる。使用される粒度範囲は、結晶化プロセス、沈殿プロセス、篩い分けプロセス、機械的粉砕又はミリングプロセス、切断又は細断プロセス、及び押出プロセス又はこれらのプロセスの組み合わせによって調製できる。
【0058】
一実施形態では、添加剤又は分散相は、無機塩、例えば陽イオン及び陽イオンを含む無機塩を含み、ここで、陽イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及び陰イオンから選択され、陰イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選択される。一実施形態では、添加剤相又は分散相は、水溶性有機化合物、例えば、糖若しくは有機カルボン酸又はその塩を含む。
【0059】
一実施形態では、連続相は、生体吸収性重合体、例えば、ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリエーテルから選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を含む。一実施形態では、連続相は、非生体吸収性重合体、例えば、ポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含む。
【0060】
表Aは、様々な重合体の様々な溶媒への溶解度を示す。本発明は、分散相及び連続相を含む、付加製造に適した形態の二相組成物を提供する。分散相は、重合体を含む連続相を溶解しない溶媒に可溶な添加剤を含むことができる。あるいは、添加剤相は組成物の大部分を構成してもよく、重合体相は連続的な添加剤相内に分配される。表中、PGAはポリ(グリコール酸)又はポリ(グリコリド)を表し、PLAはポリ(乳酸)又はポリ(ラクチド)を表し、PCLはポリ(ε-カプロラクトン)を表し、PVAはポリ(ビニルアルコール)を表し、PEGはポリ(エチレングリコール)を表す。
【0061】
【0062】
一実施形態において、フィラメント又は粒状形態であってよく、重合体相としてポリ乳酸及び添加剤相としてポリビニルアルコールを含む組成物が製造される。任意に、重合体相は連続相である。別の選択肢では、重合体相は分散相である。ポリビニルアルコールに対するポリラクチドの重量比は、所望量の多孔性を得るために変更可能である。一実施形態では、重量ベースでの組成物の大部分は連続相である。別の実施形態では、分散相は、組成物の重量の10~50%、又は10~40%、又は10~30%、又は10~20%、又は20~50%、又は20~40%、又は20~30%、又は組成物の重量の30~50%、又は30~40%、又は40~50%を与え、残部は連続相及び添加剤である。例えば、組織の足場を創り出すために、連続相としてのポリラクチドと分散相としてのポリビニルアルコールから60:40の比率で部品を準備することができる。印刷された部品内にマイクロ多孔質を生成するために、部品を撹拌室温水浴に一晩浸漬して、ポリビニルアルコールを抽出することができる。
【0063】
任意に、本発明の組成物中に存在する重合体、例えば、不溶性の成分としての重合体は、1種以上の非重合体成分を含有する。例示的な非重合体成分としては、酸化防止剤、安定剤、粘度調整剤、押出助剤、潤滑剤、可塑剤、着色剤及び顔料、ならびに活性医薬成分が挙げられる。所定の場合において、このような非重合体成分は、上記の機能の2以上に寄与する。様々な実施形態では、連続相の総重量に基づく重量パーセントベースの非重合体成分の合計は、10未満、又は9未満、又は8未満、又は7未満、又は6未満、又は5未満、又は4未満、又は3未満、又は2未満、又は1重量%未満である。
【0064】
プロセス及び熱誘導酸化を最小限に抑えるために使用できる好適な酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノールなどの一次酸化防止剤、及びチオエーテルなどの二次酸化防止剤が挙げられる。好適な抗酸化剤は、組成物中で使用される量では生体適合性である。医療用途では、生体適合性のある抗酸化剤、例えばビタミンEが好ましい。
【0065】
製造部品に色を付与する好適な着色剤は、組成物中で使用される量では、任意に生体適合性である。医療用途では、生体適合性のある着色剤が好ましい。例示的な生体適合性着色剤としては、D&Cバイオレット#2、D&Cブルー#6、D&Cグリーン#6、(フタロシアニナト(2-))銅、及びFDA 21のCFR第73及び74部に記載されている他のものが挙げられる。着色剤は、所望の外観を達成するために効果的な量で使用する必要があり、例えば、約0.05重量%のD&Cバイオレット#2を使用して紫色のデバイスを作製することができる。一実施形態では、着色剤は、0.1~0.5重量%の濃度で組成物中に存在するFDA承認着色剤であり、他の実施形態では、着色剤濃度は、0.2~0.5重量%、又は0.3~0.5重量%、又は0.4~0.5重量%である。一実施形態では、着色剤の濃度は、約0.5重量%を超えない。
【0066】
典型的には組成物の溶融体の粘度を低下させる好適な粘度調整剤としては、オイル、低分子量重合体及びオリゴマー、単量体、及び溶媒が挙げられる。粘度調整剤を使用すると、組成物を溶かすのに必要なエネルギーが減少し、印刷プロセス中の流動性及び層の密着性が向上する。一実施形態では、約1,000の分子量を有するPEGは、連続相に0.5重量%で含まれる。連続相の主成分がポリ(ラクチド)である場合には、分子量1,000のPEGを0.5重量%添加することにより、粘度調整剤を使用せずに対応するモノフィラメントよりも低い15℃でFFFプロセスを介して処理できる組成物が得られる。一実施形態では、本発明の組成物は、5,000未満の分子量を有するポリエチレングリコールである粘度調整剤を含み、ここで、粘度調整剤は、組成物の1重量%未満の濃度で組成物中に存在する。
【0067】
一態様において、本発明は、連続相中に分散相を含む組成物を提供する。分散相は溶媒に可溶であってよい。連続相は、任意に有機重合体を含み、かつ、溶媒に不溶又は実質的に不溶である。任意に、組成物は、25℃未満の温度では固体であり、かつ、その溶融温度よりも上では粘性流体である。例えば、溶融すると、組成物は、組成物の溶融温度より高い温度では約2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する。任意に、組成物は、25℃未満の温度では固体であり、かつ、高温では粘性の液体である。例えば、高温では、組成物は約2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する。高温は、FFF付加製造に一般的に使用される50~450℃の範囲とすることができる。任意に、組成物は、組成物の重量に基づいて分散相の所定の重量パーセント及び組成物の重量に基づいて連続相の所定重量パーセントを有し、分散相の重量パーセントと連続相の重量パーセントの合計は90%以上である。組成物のこれら及び他の態様を以下に記載する。
【0068】
一実施形態では、連続相又は分散相のいずれであってもよい重合体相は複数の重合体を含む。別の実施形態では、重合体相の重合体は相分離していない。別の実施形態では、重合体相の重合体は相分離できる。重合体相が複数の重合体を含む場合には、2種以上の重合体は、組成物に対して異なる機能を与えることができ、ここで、重合体は、酸化防止剤の性能、組成物の安定性の向上、粘度調整、組成物の押し出しに対する補助、潤滑剤の性能、可塑剤の性能、着色、及び生物学的活性を与えることができる。
【0069】
連続相の他に、付加製造に有用な本発明の組成物は分散相を含む。分散相は、非連続的な材料が組成物全体に含有されるものとして識別され、1つ又は様々な形状を含むことができる。連続相における分散相の分布の例示を
図1のボックスに示す。上記のように、分散相は非重合体連続相に分散された重合体であることができる。別の選択肢として、分散相は、連続相を構成する重合体相と組み合わされるポロゲンその他の添加剤であってもよい。したがって、重合体相は連続相であることができ、その場合、添加剤が分散相であり、又は、添加剤は連続相であることができ、その場合、重合体が分散相である。
【0070】
任意に、添加剤相は、粒子の形態であってもよい。例えば、いくつかの変形例では、微粒子は規則的で滑らかな壁面を持つ微小球として同定される。これらの微小球は、例えば、乳化プロセスによって又はマイクロスフェアを作製するために使用される他の様々な技術によって作製できる。あるいは、微粒子は、不規則な形状の粒子の集合体を含むことができる。不規則な形状の微粒子は、滑らかな表面、粗い表面、又はそれらの組み合わせを有する粒子を含むことができる。微粒子は、ギザギザの縁を有する粒子を含む。不規則形状の粒子は、微粒子サイズを用途に適した直径に減少させるために、ジェットミリング、低温ミリング又はボールミルなどの粉砕技術により生成できる。
【0071】
組成物の連続相又は分散相のいずれであってもよい添加剤相は、ここでは、少なくとも種の溶媒へのその溶解度によって定義される。一実施形態では、添加剤相は、重合体相が限定された溶解度を有する溶媒又は溶媒系に可溶である。この溶解度の差異は、溶解及びその後の重合体相からの添加剤相の分離に基づいて、即時又は時間遅延の多孔性又はミクロ多孔性の構造を作製するのに役立つ。
【0072】
いくつかの実施形態において、連続相は水に実質的に不溶であると共に、分散相は水に溶解又は分離する。この特性により、形成された部品を患者に埋め込む前に、分散相を選択的に溶解することにより、微孔性部品を生成することができる。逆に、可溶性分散相を含む形成部品を埋め込むことが有益な場合があり、その際、分散相は、部品が患者に埋め込まれた後にインプラントから放出される。1以上の分散相及び1以上の連続相は、分散相が溶媒に可溶である一方で、連続相の成分が本質的に同じ溶媒に不溶であるように選択することができる。
【0073】
別の実施形態では、添加剤相は、有機溶媒に可溶である有機重合体を含むと共に、重合体相は、同じ有機溶媒に可溶ではない有機重合体である。このような組成物の例は、添加剤相がポリカプロラクトン(PCL)である場合である。PCLは、室温で、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサノン及び2-ニトロプロパンに可溶であり、かつ、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルへの溶解度は低いが、有意である。PCLはエタノール、石油エーテル、ジエチルエーテルに不溶である。組成物は、列挙された溶媒の1つ以上に溶解しない重合体相を有することができる。例えば、PCLはアセトンへの溶解度が低いが、ポリ(グリコリド-ブロック-トリメチレンカーボネート)は本質的にアセトンに不溶である。したがって、連続相としてのポリ(グリコリド-ブロック-トリメチレンカーボネート)中の分散相としてのPCLの組成物は、本発明の組成物となる。別の例として、分散相としてのポリ(グリコリド-ブロック-トリメチレンカーボネート)中の連続相としてのPCLの組成物は本発明の組成物となる。
【0074】
好ましい実施形態において、分散相は、フィラメント形成プロセス中に、少なくとも1つの分散相を少なくとも1つの連続相に取り入れることができるように、連続相内で安定である。固体形態の連続相と分散相との相分離は、貯蔵中、及び相が最終部品まで分離されたままになるように、後の付加製造プロセス全体で安定したままである必要がある。最終部品が形成された後に、溶媒を使用して可溶性分散相を除去するか、又は部品を埋め込んで、その場での溶解による多孔性生成の遅延を可能にすることができる。
【0075】
分散相は、好ましくは、連続相と化学的に相溶性である。例えば、保管中に、分散相は連鎖開裂又は酸化を含む連続相の劣化を引き起こしてはならず、分散相は連続相への架橋又は他の連鎖修飾を開始してはならない。医療用途を目的とする部品について、連続相及び分散相のそれぞれは生体適合性とすべきであり、溶解により生じるイオン又は分散層の一部としての埋め込み部品共に供給される副生成物若しくは加工助剤を含めた分散相の存在に対する細胞応答は、本発明の付加製造インプラントを受ける患者に対して物理的又は医学的に有害であってはならない。
【0076】
分散相及び連続相を含む組成物は、組成物内の別個の相の分離によって特徴付けられる。一実施形態では、分散相は組成物全体にわたって均一に分散されるが、場合によっては、組成物の1以上の領域に優先的に位置する分散相を有することが有利な場合がある。さらに、分散相は、好ましくは粒子の凝集を示さないが、その代わりに、個々の分散単位が連続相由来の材料によって取り囲まれる。これらの特性は、相対表面自由エネルギー、電荷、疎水性、密度、形状、サイズ、その他、連続相に対する分散相の凝集力を適切に選択することによって取得できる。
【0077】
様々な実施形態では、分散相は、溶融ブレンドによって連続相中に導入される。分散相を溶融連続相に添加してもよく、又は溶融連続相を分散相に添加してもよく、適切に混合すると、均質な組成物が形成される。あるいは、分散相は、連続相を形成するために使用される反応物、すなわち、重合時に連続相を形成する単量体に添加されてもよい。この後者の選択肢は、分散相が連続相の形成に使用される反応混合物に溶解せず、その代わりにその反応混合物全体を通して分散する限り好適である。
【0078】
他の実施形態では、添加剤相は、溶融ブレンドによって重合体相に導入される。添加剤相を溶融重合体相に添加してもよく、又は溶融重合体相を添加剤相に添加してもよく、適切に混合すると、均質な組成物が形成される。あるいは、添加剤相は、重合体相を形成するために使用される反応物、すなわち、重合すると重合体相を形成する単量体に添加されてもよい。この後者の選択肢は、添加剤相が重合体相を形成するために使用される反応混合物に溶解しないが、その代わりにその反応混合物全体にわたって分散する限りにおいて好適である。
【0079】
連続相と分散相とを組み合わせる方法に応じて、得られた組成物は、連続相全体に均一に配置分散相を有していてもよく、又は分散相は、連続相の特定の領域に優先的に配置できる。例えば、分散相は、主として又はもっぱら、連続及び分散相から形成されたフィラメントの最も外側の部分に存在することができる。
【0080】
本発明は、付加製造プロセスによって物品を形成するのに有用なモノフィラメントを提供する。これらのモノフィラメントは、形状、重量、物理的特性など、様々な方法で説明できる。
【0081】
一実施形態では、モノフィラメントは円形の断面を有する、すなわち、モノフィラメントは円形である。したがって、モノフィラメントは、所定の直径を有するものと説明することができる。一実施形態では、モノフィラメントの直径は、1.5~3.5mmの範囲内である。一実施形態では、直径は1.75mmである。別の実施形態では、直径は3.0mmである。一実施形態では、直径は、フィラメントの長さに沿ってあまり変化しない。例えば、直径は、1.5~3.5mmの範囲内の値から選択することができ、直径の変動は、モノフィラメントの長さに沿って±0.1mm以下であることを特徴とする。一実施形態では、直径は、0.1mmを超えて変動しない、例えば、直径は、3.0±0.1mmと説明できる。別の実施形態では、直径は、0.05mmを超えて変動しない、例えば、直径は、1.75±0.05mmと記載できる。
【0082】
本発明のモノフィラメントは、付加製造に有用である。一実施形態では、モノフィラメントは有用な長さに切断され、有用な長さは有用な質量に相当する。本発明のモノフィラメントの有用な質量は、付加製造については約200~1500グラムである。付加製造で印刷された部品には様々な質量があるが、モノフィラメントの長さは部品全体を生成するのに十分な質量を与えるのに便利であるが、モノフィラメントが完全に消費される前に印刷機内に長時間にわたって保持されるほど長くはない。印刷機内のモノフィラメントは、例えば、酸化及び加水分解によって劣化しやすいので、安定性の観点から、モノフィラメントは、かなりの量の劣化が生じるほど長い間、印刷機内にないことが好ましい。これらの考慮事項に照らして、本発明は、約200~1500の重量の単一(切れ目なし)の長さのモノフィラメントを提供するが、他の実施形態では、質量は約800~1200グラム、又は約1,000グラム、すなわち950~1050グラムである。本発明は、モノフィラメントをそれぞれ約1,000グラムの質量を与える長さに切断することを含む、モノフィラメントの形成方法を提供する。
【0083】
本発明のモノフィラメントは、その長さによって特徴付けることができる。一実施形態では、モノフィラメントの長さは500メートル未満である。一実施形態では、モノフィラメントの長さは400メートル未満である。一実施形態では、モノフィラメントの長さは10~500メートルの範囲内であり、別の実施形態では、モノフィラメントの長さは10~400メートルの範囲内である。一実施形態では、モノフィラメントの長さは、250~350メートルである。これらの長さのモノフィラメントをスプールに巻き付けて、付加製造で使用することができる。約300~400メートルの長さは、約1kgのモノフィラメントの質量を与える。一実施形態では、本発明の組成物、すなわちモノフィラメントは、約1.4g/cm3の密度を有し、それに応じて約250~350メートルのモノフィラメント長がスプールに配置するのに有用であり、本発明の一実施形態に従って提供される。
【0084】
本発明のモノフィラメントは、その引張弾性率によって特徴付けることができる。好適なヤング率は、少なくとも3MPaから4GPa以上までである。下限は、弾性及びコンプライアンスが高い部品を製造するのに好適であり、これは、多くのインターフェースと組織接触構造にとって望ましい。高強度材料の構造性能のために、高弾性材料が選択される。
【0085】
本発明のモノフィラメントは、その結晶化度によって特徴付けることができる。様々な総材料結晶化度が様々な製品で有用なことがあり、結晶化度の低い材料は、典型的には、エラストマーなどの柔らかくコンプライアンスの高い材料に関連する。これらの材料は、<5%の総結晶化度を示すことがある。PLLAやPEEKなどの結晶性の高い材料は、構造的強度及び機械的強度が重要な剛性支持構造の生成に有用な場合がある。
【0086】
結晶性の別の有用な特徴付けは、繊維軸に沿った結晶配向の存在に関連する。最も一般的には、構造及びテキスタイルモノフィラメントは、特定のモノフィラメントの設計及び実用性にとって重要な考慮事項である引張強度を最大化するために配向糸として使用される。配向は、単繊維押出の後に、結晶子をフィラメント軸に沿って整列させるための一連の加熱及び引っ張りプロセス(「延伸」ともいう)によって形成され、それによって、その方向での繊維の強度及び剛性を高めると共に、フィラメントの横方向の機械的特性を低減するという付随する効果を有する。一実施形態では、本発明のモノフィラメントは、延伸プロセスを経ておらず、そのため延伸プロセスによって生じる向上した結晶化度を有しないという点で、「延伸されていない」又は「非延伸である」と特徴付けることができる。結晶の配向を測定するために、広角X線回折、複屈折、線形二色性などのいくつかの手法があり、特に繊維で有用な手法には、音速などがある。
【0087】
音響速度は、延伸度を、フィラメントを通る音の相対速度と相関させ、配向因子(OF)として報告される。OFは、「0」~「1」のスケールで測定できる。「0」は配向がないことを示し、「1」は完全な結晶配向を示す。場合によっては、OFはパーセンテージ、すなわち0~1ではなく、0~100%として報告される。場合によっては、OFは非配向サンプルの倍数、例えば、非配向対照の速度の1.5倍として報告される。ただし、一般的に、OFは繊維又はフィラメントにおける重合体鎖の分子配向又は整列の度合いの尺度であり、数値が高いほど又はパーセンテージが高いほど、整列の度合いが高いことを示す。
【0088】
多くのテキスタイルフィラメントは、配向因子は、0.75、0.85、0.90を超え、場合によっては0.95を超えることができ、望ましくはこれを超える。逆に、本発明に係る付加製造プロセスで使用されるモノフィラメントは、同一の引張り要件を有さず、その代わりに、典型的には非延伸フィラメントを溶融するのに必要な典型的に低いエネルギーと共に、機械的等方性の利益を有する。本発明のモノフィラメントでは、押出プロセスの結果として、ある程度低い配向度があってもよいが、モノフィラメントは非延伸であるため、モノフィラメントの配向因子は比較的低く、例えば、0.50未満、0.40未満、0.30未満、0.20未満、又は0.10未満である。
【0089】
比較的低いOFは、本発明のフィラメントがFFFなどの溶融押出しプロセスに好適である場合に有利である。というのは、一般的に配向性が低いことは結晶化度が低いことを意味し、このことは、モノフィラメントを液体状態に変換するのに必要な熱がより少ないことを意味し、モノフィラメントに加えられる熱は、固体フィラメントを3Dプリントに適した液体状態により迅速かつ効率的に変換することができることを意味するからである。したがって、一実施形態では、本発明のモノフィラメントは、50%未満の配向因子を有するが、別の実施形態では、モノフィラメントは、40%未満の配向因子を有し、別の実施形態では、モノフィラメントは、より少ない配向因子を有する。さらに別の実施形態では、モノフィラメントは20%未満の配向因子を有し、さらに別の実施形態では、モノフィラメントは30%未満の配向因子を有しさらに別の実施形態では、モノフィラメントは10%未満の配向因子を有する。これらの実施形態のそれぞれにおいて、モノフィラメントは、延伸されていないモノフィラメントであることをさらに特徴とすることができる。
【0090】
本発明のモノフィラメントは、その可撓性によって特徴付けることができる。モノフィラメントは、スプールに巻き付けられたときに壊れたり、壊れたり破断する程度に硬い(柔軟性がない)ものとすべきでない。逆に、モノフィラメントは、モノフィラメントのトレーリング部分が前方に押されたときに前方に移動しないほど柔軟であってはならない。つまり、ある長さのモノフィラメントを平面上に直線に置き、モノフィラメントの近位端をモノフィラメントの遠位端の方向に押すと、近位端が前方に押されるにつれてモノフィラメントの遠位端が同じ距離だけ前方に移動すべきである。固体モノフィラメントが柔軟すぎると、溶融モノフィラメントを加熱チャンバーから押し出すための強度を有しなくなる。
【0091】
モノフィラメントが自身をプリンタを通して押すことができる能力の尺度として、カラム座屈試験を実施することができ、ここで、この試験は、軸方向の圧縮に対応するモノフィラメントの測定座屈抵抗(座屈強度と呼ばれることもある)を測定する。
【0092】
フィラメント状の材料について行われる座屈試験では、材料を垂直方向に配置し、座屈強度を試験するフィラメントの領域の上下にクランプする。本発明のモノフィラメントは、単一の長手方向軸に沿って走りかつその長手方向軸を共有する2本のボーデン管を使用して適所に保持でき、その際、一方のボーデン管の端部と他方のボーデン管の端部との間に1cmのギャップがある。1本のモノフィラメントは、2個のボーデン管内に配置され、2個の管の間にある1cmの間質モノフィラメントが支持されておらずかつ周囲の条件に曝されるような間質モノフィラメントを提供する。ボーデン管は、多くのFFF印刷装置に見出され、約2.0mmの内径を有する円筒であり、ここで、約1.75mmの幅を有するモノフィラメントは、印刷プロセス中にボーデン管を通って移動する必要がある。機械的な試験フレームを採用して、ボーデン管の2つの部分をより近くに移動させ、それによって、試験中に荷重及び変位情報を捕捉しながら、間質フィラメントに及ぼす軸方向圧縮の効果を観察することができる。
【0093】
様々なモノフィラメントで行われる座屈試験の間に、抵抗(荷重)がピークに達するまで繊維方向に増加し、その時点で、モノフィラメントが曲がり、ヒンジのような挙動をするように座屈が非常に顕著になり、その時点で荷重が減少し始める。この抵抗から座屈への移行は、典型的には、軸方向圧縮の最初の5mm以内に生じる。このピーク抵抗に達した後、フィラメントは、加えられた圧縮力に抗して押すのではなく、よじれ/屈曲が容易になる。
【0094】
カラム座屈試験を使用して、3D印刷プロセスでの印刷性が良好なモノフィラメント並びにボーデン管を採用する又はダイレクトドライブプリンタとして動作する既存のプリンタでは印刷不良となる又は印刷できないサンプル材料を使用して検討を行った。この試験では、「印刷可能な」モノフィラメントと相関する好ましい最小荷重が特定され、その値は少なくとも1ニュートンである。ボーデン管の両端が一緒に移動することに対してほとんど又は全く抵抗を示さないモノフィラメント、すなわち、このコラム座屈試験で約1ニュートン未満の値を測定したモノフィラメントは、ダイレクトドライブプリンタだけでなく、ボーデン管を使用したプリンタでも使用することに問題があった。適切に実施できなかった理由は、フィラメントの剛性が低く、カラム座屈及びフィラメントのミスフィードが発生したためである。
【0095】
したがって、一実施形態では、本発明のモノフィラメントは、カラム座屈試験によって試験されたときに、少なくとも1ニュートンの抵抗を示す。本発明のモノフィラメントは、少なくとも1ニュートンの座屈強さを有することを特徴とすることができる。別の実施形態では、本発明のモノフィラメントは、1cmの長さのモノフィラメントの長手方向軸に沿って力が加えられたときに、少なくとも1ニュートンの抵抗を示す。一実施形態では、1.5~3.0mm、例えば1.75±0.05mmの幅又は直径を有する本発明のモノフィラメントの1cmの長さは、この柱座屈試験によって試験されたときに、少なくとも1ニュートンの抵抗を示す。別の実施形態では、1.5~3.0mm、例えば1.75±0.05mmの幅又は直径を有する本発明の1cmの長さのモノフィラメントは、このコラム座屈試験で試験されたときに、少なくとも1ニュートンの抵抗を示す。別の実施形態では、1.5~3.0mm、例えば1.75±0.05mmの幅又は直径を有する本発明の1cmの長さのモノフィラメントは、3cm以上の長さのモノフィラメントの長手方向軸に沿って力が加えられたときに、少なくとも1ニュートンの抵抗を示し、ここで、1cmの長さのモノフィラメントは、拘束されておらず、拘束されていない1cmのモノフィラメントのいずれかの端部に少なくとも1cmのモノフィラメントがあり、ここで、拘束されていない1cmのモノフィラメントは、その長手方向軸に沿って圧縮に抵抗する。
【0096】
本発明は、市販できるかつ購入者に対して付加製造プロセスでの使用に有用な組成物への便利なアクセスを与える物品を提供する。これらの物品をアセンブリということもある。
【0097】
一実施形態では、本発明のモノフィラメントは、スプールの周りに巻かれる。スプールは、モノフィラメントを支持するコアと、コア上にモノフィラメントを保持するように機能する2個のフランジとを備える種類のものであってもよい。本明細書に記載されているように、本発明のモノフィラメントは、約1kgのモノフィラメントを与える長さに切断されてもよく、ここで、本発明は、この量のモノフィラメントを収容するスプールを提供する。他の実施形態では、スプールは、本明細書で論じられているように、他の切断量のモノフィラメントのうち任意のものを含む。
【0098】
一実施形態では、本発明のモノフィラメントは、非分解性環境下で包装され、保管される。これは、空気又は水分による分解の影響を受けやすい成分を含むモノフィラメントにとって特に重要である。このようなモノフィラメントとしては、生体吸収性モノフィラメント、すなわち、特に水分誘発性の劣化に影響を受けやすい生体吸収性材料から作られたモノフィラメントが挙げられる。モノフィラメントが生物吸収性であるか否かにかかわらず、不活性雰囲気中で保管することに利益がある。したがって、非分解性環境は、制御された含水率及び制御された酸素含有量の一方又は両方を有することができる。一実施形態では、保管条件としては、制御された含水率を有する乾燥環境が挙げられ、様々な実施形態では、含水率は、1000ppm未満、又は800ppm未満、又は600ppm未満、又は400ppm未満となるように制御されている。不活性環境は、周囲の空気を窒素富化雰囲気に置換することによって達成されてもよい。別の選択肢として、不活性環境は、モノフィラメントを酸素不透過性パッケージ内に配置し、その後、減圧下でパッケージを封止することによって達成されてもよい。この方法も、モノフィラメントが保管中に曝されるであろう水分の量を減少させる。選択肢として、モノフィラメントと共にシリカのパケットのような乾燥剤をパッケージ内に配置することができる。
【0099】
一実施形態において、本発明は、パッケージ化モノフィラメントを提供する。パッケージ化モノフィラメントはスプールに巻き付けられ、モノフィラメントを備えたスプールはホイルポーチ内に配置される。ホイルポーチは、減圧下で、又は周囲雰囲気を不活性雰囲気(例えば、窒素又は乾燥空気)で置換した後に密封される。したがって、本発明は、スプールに巻き付けたモノフィラメントを収容し、周囲条件に対して水分及び/又は酸素の量が低減されたホイルポーチなどの密封パッケージを提供する。任意に、ポーチは単一のスプールを収容する。任意に、単一のスプールに巻き付けられた、約1kgの1本のモノフィラメントが存在する。
【0100】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される組成物をモノフィラメントの形態に形成する方法、及び本明細書に開示されるモノフィラメントからアセンブリを形成する方法を提供する。本明細書に開示される組成物をモノフィラメント形態に形成する方法は、溶媒に可溶な成分と溶媒に可溶でない成分とを組み合わせ、組成物を溶融して溶融組成物を得、溶融組成物を1~5mm、例えば1.75±0.05mmの直径を有する非延伸モノフィラメント形態に押し出し、次いで、任意に非延伸モノフィラメントを非延伸形態に維持し、及び/又は非延伸モノフィラメントを滅菌することを含む。本明細書に開示されるモノフィラメントからアセンブリを形成する方法は、溶媒に可溶な成分と溶媒に可溶でない成分とを含む組成物を準備し、組成物を溶融して溶融組成物を得、溶融組成物を、直径1~5mm、例えば1.75±0.05mmを有する非延伸モノフィラメントの形態に押し出し、非延伸モノフィラメントを滅菌し、非延伸モノフィラメントをスプールに巻き付け、スプール及びモノフィラメントを気密性容器に包装し、任意に乾燥剤を容器に入れることを含む。
【0101】
したがって、一実施形態では、本発明は、モノフィラメント状の組成物を形成する方法を提供し、ここで、この方法は、添加剤相と重合体相とを組み合わせて組成物を形成し、あるいは本明細書に記載されている可溶性成分と不溶性成分とを組み合わせて組成物を形成し、組成物を加熱して溶融組成物を形成し、及び溶融組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成することを含む。次いで、非延伸モノフィラメントを、本明細書に記載される付加製造プロセスで使用できる。任意に、非延伸モノフィラメントを、医療用途の部品を形成する際の使用を容易にするために滅菌してもよい。任意に、非延伸モノフィラメントを市販のために包装してもよい。例えば、非延伸モノフィラメントを、本明細書に記載されているようにスプールに巻き付け、その後、モノフィラメントが使用可能になるまで保管するためのパッケージに入れることができる。パッケージは、モノフィラメントが大気からの湿気又は酸化状態にさらされないように、気密であってもよい。パッケージは、例えば、ホイルパウチであってもよく、この場合、パッケージは、モノフィラメントをホイルパウチに入れることを含む。モノフィラメントは、例えば、組成、直径、長さ、色、配向因子、座屈強さなど、本明細書に記載されている特性のいずれかを有していてもよい。例えば、モノフィラメントは、PEG(ポリエチレングリコール、添加剤)のような水溶性成分と、それから部品を形成した後に添加剤が水に溶解する時間の間に実質的に水に不溶であるPDOなどの生体吸収性重合体相とを含む組成物から形成できる。
【0102】
また、一実施形態では、本発明は、アセンブリを形成する方法を提供し、ここで、この方法は、本明細書に記載される添加剤相及び重合体相を含む組成物を提供して組成物を形成し、あるいは本明細書に記載される可溶性成分及び不溶性成分を含む組成物を準備し、組成物を溶融状態で得、溶融状態の組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成し、非延伸モノフィラメントをスプールに巻き付け、及びモノフィラメントを巻き付けた状態でスプールを、例えばホイルパウチ内に包装することを含む。パッケージは、モノフィラメントが周囲の大気からの湿気又は酸化状態にさらされないように気密であってもよい。パッケージは、例えば、ホイルパウチであってもよく、この場合、パッケージは、モノフィラメントをホイルパウチに入れることを含む。モノフィラメントは、例えば、組成、直径、長さ、色、配向係数、座屈強さなど、本明細書に記載されているような特性のいずれかを有していてもよい。例えば、モノフィラメントは、スプール上に配置されたときに、400メートル未満の長さに切断されてもよい。別の例として、モノフィラメントは、PEG(ポリエチレングリコール、添加剤)のような水溶性成分と、部品を形成した後に水に溶解する時間の間に実質的に水に不溶であるPDOのような生体吸収性重合体相とを含む組成物から形成されていてもよい。
【0103】
本発明は、本明細書に開示される組成物及び/又はモノフィラメント及び/又はアセンブリを使用した付加製造方法を提供する。
【0104】
一実施形態では、本発明は、添加剤製造方法であって、次の工程を含む方法を提供する:(a)固形組成物を溶融して溶融組成物を得、ここで、この溶融組成物は、本明細書に記載される添加剤相及び重合体相を含み;(b)付加製造を実施して溶融組成物から物品を形成し;及びc)物品と溶媒とを、添加剤相を少なくとも部分的に溶解するが重合体相を溶解しない条件下で接触させて物品の多孔質又はミクロ多孔質体を形成し、ここで、添加剤相は溶媒に可溶である。
【0105】
本明細書で使用されるときに、用語「多孔質」及び「ミクロ多孔質」とは、印刷部品を可溶性相が可溶の溶媒に曝したときに、可溶性成分の溶解に起因して印刷部品内に生じる開放空間をいう。可溶性相が印刷部品から完全に除去されると、気孔は不溶性成分中に存在することになる。多孔質は、開いたセル又は閉じたセルの形態をとってもよい。多孔質、物品中にチャネルが存在する繊維状の形態をとってもよく、これはマイクロファイバー状ともいう。あるいは、多孔質を空洞又は空隙ということもある。
【0106】
付加製造方法において、固体組成物は、本明細書に記載されるモノフィラメントであってもよい。選択肢として、固相は、本明細書に記載される粉末又は顆粒であってもよい。組成物は、添加剤相及び重合体相を含むものとして説明されるのではなく、溶媒可溶性相又は溶媒可溶性成分、及び溶媒不溶性相又は溶媒不溶性成分を含むものとして説明でき、ここで、溶媒不溶性成分は、有機重合体又は有機重合体のブレンドである。添加剤(不溶性)成分は、2つの例として、本明細書で議論されるような有機重合体又は有機重合体のブレンドであってもよく、又は本明細書でも議論されるような塩であってもよい。
【0107】
付加製造方法において、固体組成物を溶融して溶融組成物を得、この溶融組成物は添加剤相及び重合体相を含む。溶融組成物を得るために、固体組成物は、組成物を溶融するのに十分な温度に加熱される。本明細書で使用するときに、組成物を溶融するとは、組成物が流動するのに十分な高温に組成物を加熱することを意味する。例えば、組成物は、組成物を流動させる状態にまで組成物を溶融させるために、必要に応じて50~450℃の温度に加熱できる。また、組成物は、組成物を溶融させるのに必要な温度を超える温度に加熱しもよい。なお、組成物の全ての成分が高温で液体である必要はない。しかしながら、組成物全体は、昇温(すなわち、室温を超える温度、例えば、50℃を超える温度)で流動することが好ましく、それによって昇温では液体の性質を有する。
【0108】
組成物がモノフィラメントの形態である場合、モノフィラメントの全体が一度に溶融状態に置かれることはない。むしろ、モノフィラメントの一端が加熱された環境に置かれ、溶融して組成物が形成される。例えば、付加製造プロセスの間に、モノフィラメントの端部は、中空の金属シリンダー、例えばプリントヘッドにねじ込まれてもよく、シリンダーの壁は、シリンダー内のフィラメントを溶融させる温度に加熱される。モノフィラメントの隣接する部分、すなわち、まだ溶融形態に変換していない隣接する部分は、中空シリンダー内に押し込まれてもよく、これにより、シリンダー内に既に存在する溶融状態の組成物がシリンダーから出て、部品が形成される空間に堆積する。本発明のモノフィラメントは、中空円筒又は同様の加熱チャンバに押し込むことができる程度に十分な強度を有する。多くのタイプのモノフィラメントとは異なり、本発明のモノフィラメントは、引っ張ったり引き出したりすることができる必要はない。本発明のモノフィラメントは、モノフィラメントが固体状態から溶融状態への相変化を受ける高温チャンバ内に押される、又はそうでなければ強制的に押し込まれる付加製造プロセス用である。モノフィラメントは、この加熱チャンバ内に押し込まれることが可能であることが好ましく、また、溶融した組成物をチャンバから押し出すことが可能であることが好ましい。
【0109】
付加製造方法において、溶融した組成物は、印刷された部品に変換され、これは、印刷物品又は単に物品と命名してもよい。この工程は、当該技術分野において知られており、FFF3Dプリンティングと呼ばれることもある溶融フィラメント作製方法によって達成できる。この工程は、当該技術分野において知られており、FDM3D印刷ということもある溶融堆積モデリング方法によって達成されてもよい。
【0110】
本発明は、付加製造、例えば3Dプリンティングのプロセスを提供する。融合フィラメント作製(FFF)による付加製造は、重合体溶融促進プロセスであり、その際、重合体フィラメントを加熱されたノズルに供給し、ノズルは、材料が変形し流動することを可能にするのに十分なエネルギーをフィラメントに伝達する。このプロセスは、重合体を完全に溶融させる場合があるが、ノズルから強制的に出ることができるレベルまで材料の軟化をもたらす場合もある。重要なプロセスパラメータは、材料がノズルを通って移送され、移送中に、ノズルが表面にわたって移動するにつれて実質的に平坦な形状に変形することができることである。
【0111】
好ましくは、フィラメントは約1.75~約3.0mmの直径を有し、ノズルは約0.35~約0.40mmの直径を有する。フィラメントは、典型的には、約0.1mm~約0.3mmの間の層の高さで塗布される。用途及び要求される部品の力学及び精度に応じて、フィラメント及びノズルについて別の直径を使用することができ、直径が小さいほど、製造サイクル時間の増加を犠牲にして、より高い精度の部品が得られる。一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているような連続相及び分散相の組成物を、フィラメントの形態で、例えば、FFFプロセスでの使用に適したフィラメントのスプールの形態で提供する。
【0112】
連続相及び分散相を含む組成物は、軟化又は溶融した組成物がノズルを通って流れることができる限りにおいて、FFFで処理することができる。処理温度で固体である分散相を含む組成物の場合、分散相の寸法は、少なくとも一方向においてノズル直径よりも小さくなければならない。例えば、0.35mmのノズル直径を使用するFFFシステムでは、本質的に球状である微粒子は、追加の連続相材料が分散相と共に流れて印刷物品の連続性を維持することを可能にするために、0.35mm未満の直径を有していなければならず、より好ましくは0.30mm未満の直径を有していなければならない。さらに、固体分散相の寸法を評価する際には、層厚目標も考慮すべきである。0.20mmの目標層厚については、固体分散相は、追加の連続相材料が、印刷物品中の粒子の少なくとも大部分の周りに連続した層を形成することを可能にするために、少なくとも0.20mm未満の寸法を有するべきであり、好ましくは0.15mm未満の寸法を有するべきである。0.20mm未満の印刷層の厚さについては、固体分散相を同時に減少させることが必要である。
【0113】
固体分散相がチョップドファイバーのような細長い構造体である場合には、FFFプロセスは、典型的には、印刷方向に沿った分散相の整列をもたらす。これは、特に、より長いアスペクト比のフィラメント、又は層厚の10%を超える分散相の直径を有する場合に当てはまる。
【0114】
溶融フィラメント製造(FFF)による付加製造は、様々な材料、プロセス、及び環境パラメータの調整によって可能になる。これらのパラメータの適切性は、主として使用される繊維を通して、そして副次的には製造される部品によって定義される。FFF技術を使用した付加製造は、インフィルパターンの実施を通じてマクロ多孔質構造を形成することができる。このタイプの機能はソフトウェア内に埋め込まれ、三角形、正方形、六角形などの幾何学的に規則的な気孔パターンを形成する。これらのソフトウェアで生成されたインフィルパターンは、一般的に2次元であり、部品の製造方向を横切る単一の孔パターンを形成する。他のソフトウェアでは、幾何学的構造又は不規則なパターンに基づいて、より複雑な3次元の多孔性を生成することができる。このようにして生成された多孔性は、FFFフィラメントの堆積を介して印刷部品に物理的に変換され、かつ、プリンタの精度及びプリンタの約0.1mm以上の層厚に依存する。FFF部品は、約0.5mm以上のマクロ孔サイズを含むことができる。本発明は、部品を形成するために2相材料を利用しており、ここで、部品は、孔を含むように作製されてもよいし、作製されていなくてもよい。
【0115】
本発明は、FFFのような付加製造技術を利用して、2相材料から部品を形成する。一実施形態では、本発明は、そうでなければ多孔質でない部品に気孔を付与する、すなわち、製造された部品は気孔を含まないが、気孔は、部品から添加剤相を除去することによって、形成後の部品に追加される。あるいは、その部分は、気孔を含むように製造され、本発明は、製造された完成した部分に、追加の、典型的にはより小さい気孔を付与する。
【0116】
付加製造において、印刷温度、供給速度、及び環境条件の使用は、製造部品の品質に影響を与えることがある。熱可塑性樹脂の場合、温度はノズルから押し出される流体を形成するように制御される。FFF印刷では、フィラメントの融点を超える設定温度で単一の加熱ゾーンが使用され、適切な温度範囲が各印刷材料に対して決定される。温度範囲の下限では、流体の粘度が高くなり、より高い精度で部品を作成するのに有用であるが、堆積したフィラメント間の付着力が弱くなる可能性がある。高温では、流体により付着力が向上するが、体積後及び冷却中に溶融プラスチックが流動する能力が高まるため、部品の精度に影響を与える可能性がある。
【0117】
供給速度は、重合体の溶融粘度ならびに固体モノフィラメント入力の剛性によって影響を受ける二次制御パラメータである。FFFシステムを介してフィラメントを駆動する駆動メカニズムを介して、重合体メルトに圧力が発生するところ、これは「供給速度」によって識別される。この単純な機構は、モノフィラメントをプリンタの加熱セグメントに押し込み、その際、モノフィラメントが溶融し、ノズルを通って流れることに対する溶融材料の抵抗を介して押出圧力が生成される。供給速度を上げると、押出圧力が直接上昇し、特定のモノフィラメント固有のレベルを超える圧力では、フィラメントの座屈や駆動機構エラーが発生する。
【0118】
融合フィラメント製造(FFF)によって3Dプリントをサポートするために、フィラメントは、特定の最小要件を満たさなければならない。一組の駆動ギアを使用して、フィラメントを正確な速度でノズルに送り、この駆動力により、重合体をプリンターノズルから強制的に流す圧力が発生する。FFFプリンタには、駆動位置に基づいて2つのタイプがある。「ダイレクトドライブ」プリンタは、ノズルと共に移動して印刷物を形成する駆動機構を印刷ノズルの真上に配置する。この場合、移動する質量は重くなり、印刷速度は遅くなる可能性があるが、駆動機構とノズルとの間の距離が短くなり、軟質材料にメリットがある。これに対し、「ボーデンチューブ」プリンタは、駆動機構を遠隔地に配置し、2つを印刷フィラメントよりも直径がわずかに大きいフレキシブルチューブに接続する。印刷ヘッドで移動する質量は少なくなるが、駆動機構とノズルとの間の距離により、より軟質のフィラメントではよじれる可能性がある。
【0119】
駆動機構を促進させるために、フィラメントは、プリンタを介して正確な供給を可能にする最小のカラム剛性を示す。オイラーのカラム剛性方程式からのカラム剛性は、ヤング率の増加とフィラメント直径の増加に伴って増大し、長さが増加するにつれて減少する。さらに、組成物の堆積速度は、駆動機構を介したフィラメントの供給速度に直接関連する。これは、プリンタシステムを介して材料を計量するための唯一の機構だからである。供給の規則性は、一貫したフィラメント直径に依存する。これは、印刷ノズルを介して一貫した圧力を維持し、指定された堆積速度を維持するためである。
【0120】
標準的な産業用プリンタは、約1.75~3.0mmのフィラメント径を使用し、直径公差は±0.05mmを目標とする。別のフィラメント径が使用されてきたが、これは材料をシステムに供給する能力(適切な剛性)に基づいた実用性があるからである。生体吸収性重合体の場合、フィラメントサイズが小さければ小さいほど重合体が溶融する時間を短縮し、それによって重合体の劣化のリスクが低減されるが、これは、微細な特徴を持つ高精度の印刷物を対象とする場合に有用である。
【0121】
標準的なFFFフィラメントは、典型的には滑らかな表面を有するが、これは、印刷プロセスを容易にするために必須ではない。所定の場合には、材料、特に通常よりもはるかに硬質又は軟質の材料を供給するための駆動機構を補助するために、粗い表面を有することが印刷用フィラメントにとって有益である場合がある。また、粗い表面は、フィラメント調製プロセスの化粧効果であってもよく、二次相又は二次成分の含有を反映してもよい。しかしながら、FFF印刷システムを介して一貫した供給をサポートするために、フィラメントが平均直径を維持することは依然として重要である。
【0122】
フィラメント印刷は、典型的には室温条件で行われるので、フィラメントは、ノズル点又はその付近で加熱点に至るまでの駆動機構で剛性の要件を満たすことが好ましい。フィラメントは、典型的には、20~25℃の温度で駆動機構に導入される。「ボーデンチューブ」FFFプリンタの場合、印刷をサポートするための材料要件に応じて、材料が供給ノズルに近づくにつれて、室温から約100℃までの高温に移行する可能性がある。
【0123】
本発明は、任意にフィラメント又は顆粒状の形態の、付加製造において使用できる組成物を提供する。特に、組成物が生体吸収性成分を含む場合には、印刷プロセス中に特別な環境制御を実施してもよい。例えば、生体吸収性重合体及びそれから製造された部品を早期に劣化させないように、湿度を低レベルに維持してもよい。また、環境温度も、冷却及び結晶化の速度を制御することによって印刷プロセス中に部品に影響を与え、温度が高いと冷却速度が遅くなり、結晶化速度が遅くなる。温度が低いと、部品の冷却が早くなり、反りや層の密着性が悪くなることがある。例えば、20℃では冷却時の結晶化が早いため、PLAを用いたFFFはできない場合があるが、環境温度を30℃に上げると高品質な印刷部品が得られる。一般的には、印刷サイクル中に部品が完全に結晶化しないように環境温度を設定する必要がある。同様に、印刷ベッドを重合体のガラス転移温度に近い温度に設定して、ビルド表面への部品の良好な接着を可能にし、ビルドサイクル中に部品を安定させることが必要である。
【0124】
付加製造方法では、印刷部品と溶媒とを接触させ、その際、添加剤相は溶媒に可溶である。この接触により、印刷部品から添加剤を完全に又は部分的に抽出できる。
【0125】
本発明の後形成工程は、重合体相を形成する材料にほとんど又は全く影響を与えずに、添加剤相を溶解し、抽出し又は劣化を引き起こす溶媒に印刷部品をさらすことである。このプロセスにより、印刷部品は、いくつかの医療用インプラントに有利なミクロ多孔質構造を獲得する。一実施形態では、添加剤相は組成物の分散相であり、重合体相は組成物の連続相である。別の実施形態では、添加剤相は組成物の連続相であり、重合体相は組成物の分散相である。
【0126】
様々な実施形態では、添加剤相の少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%が印刷部品から抽出される。一実施形態では、溶媒は水であるため、印刷部品の可溶性成分は水に可溶であるが、印刷部品の不溶性成分は水に可溶ではない。一実施形態では、溶媒は、水を含むとともに、任意に、水と混和性を有する1種以上の他の溶媒、例えば、メタノール又はジメチルスルホキシド(DMSO)又はアセトンを含む。
【0127】
一実施形態では、抽出は室温、すなわち約23℃で行われる。しかしながら、一実施形態では、抽出は、高温で行われる。例えば、抽出は、約25~50℃の温度で実施できる。一実施形態では、抽出は、約25~30℃、又は約30~35℃、又は約35~40℃、又は約45~50℃、又は約50~55℃、又は約60~65℃、又は約65~70℃、又は約70~75℃の範囲内の温度で実施される。抽出は、組成物の融解温度よりも低い温度、例えば、組成物の融解温度よりも少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃低い温度で実施される。
【0128】
任意に、印刷部品の全体が溶媒と接触する。しかしながら、一実施形態では、印刷部品の一部のみ、又は複数の異なる部分が溶媒と接触する。例えば、印刷部品は、生分解性ステントであってもよく、ここで、ステントの遠位端は溶媒に曝されてステントの遠位端に多孔性又はミクロ多孔性を生じさせるが、ステントの近位端は溶媒に曝されないため、遠位端と同じ多孔性又はミクロ多孔性を有さない。この手法により、ステントの遠位端は、ステントの近位端よりも生体内でより迅速に分解されることが期待できる。したがって、本発明のプロセスは、3D印刷された生分解性医療インプラントに対して選択的かつ制御された生体内分解を付与する機構を提供する。
【0129】
抽出後の印刷部品は、抽出前の印刷部品の密度よりも低い密度を持つことになる。これは、抽出プロセスの間に部品の全体の体積が一定又は本質的に一定のままであるが、可溶性成分の抽出は、印刷部品の総質量を減少させるからである。一実施形態では、抽出プロセスは、印刷部品の密度の少なくとも5%の減少を達成するのに対し、他の実施形態では、抽出プロセスは、印刷部品の密度の少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%の減少を達成する。
【0130】
同様に、抽出後の印刷部品は、その部分を印刷した組成物の密度よりも小さい密度を有することになる。これは、印刷部品が、その部分を印刷した組成物の体積とほぼ等しい体積を有することになるが、その部分が印刷組成物中に存在する可溶性成分の一部又は全部を失うことになるからである。一実施形態では、印刷用組成物は所定の密度を有し、物品は所定の密度を有し、物品は組成物の密度の85%未満の密度を有する。他の実施形態では、物品は、印刷部品の密度の80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満、又は50%未満の密度を有し、物品は、印刷部品の密度の80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満、又は50%未満の密度を有する。
【0131】
抽出プロセスは、可溶性成分の一部又は全部(本明細書では添加剤ともいう)を、印刷部品から遠ざけるように溶解する。抽出後の印刷部品は、その表面に空洞を有することになるが、これは可溶性相の溶解によって形成される。この空洞は、本明細書では細孔又は微小孔といい、印刷部品は、多孔性又はミクロ多孔性を有するものとして説明する。
【0132】
微小孔は、印刷部品から添加剤相を除去することによって生じる。そのミクロ多孔性は、閉じたセル、すなわち、互いに接続しない細孔の形態であってもよい。しかしながら、高濃度の添加剤相が本発明の組成物中に存在する場合には、添加剤相のそれらの領域は、いくつかの実施形態では、互いに接触してもよく、それによって添加剤相の除去後により大きな細孔が形成される。したがって、いくつかの実施形態では、印刷部品は、幾分相互接続された多孔質構造を有していてもよい。
【0133】
抽出後の印刷部品の表面を、例えばSEMによって見ると、空洞が見えるであろう。空洞のサイズを記載する場合があるが、ここでは、一実施形態において、空洞は、0.5mm~50mmの間の最大断面積を有する。別の実施形態では、空洞は、SEMによって見て、20~400ミクロンの最大断面積を有するであろう。空洞は、必ずしも円形の外観ではなく、不規則な形状であってもよい。例えば、0.5~50mmの断面積とは、空洞を横切る最大距離をいい、必ずしも厳密な直径ではない
【0134】
空洞は、円形又は一般的に不規則な形状ではなくてもよいが、それぞれが印刷された糸の長手方向軸に沿って走る一連のチャネルの形態をとることができる。印刷部品の表面にチャネルが存在することにより、溶媒がチャネル内にチャネルに沿って流れることが可能になる。
【0135】
好適な溶媒の存在下で添加剤相を除去することは、除去プロセスの間に超音波処理を適用することによって支援することができる。例えば、印刷部品は、添加剤相を溶解するが重合体相を溶解しない好適な溶媒と共に超音波浴に配置できる。このようにして、ミクロ多孔性を有する印刷部品を製造することができる。付加製造方法の一実施形態では、超音波処理しながら印刷部品と溶媒とを接触させ、その際、添加剤相は溶媒に可溶である。この接触により、印刷部品から添加剤を完全に又は部分的に抽出できる。
【0136】
溶媒にさらされた後に、残りの部品を乾燥させて無溶媒条件を達成することができる。例えば、残りの部品を減圧下に置いて、残留溶媒を蒸発させることができる。本発明の付加製造方法は、印刷抽出部品から過剰な溶媒を除去するための乾燥操作を含んでいてよい。一実施形態では、乾燥操作は、残留溶媒が物品の多孔質体の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように、物品から残留溶媒を除去する。
【0137】
溶媒にさらされた後に、残りの部品を滅菌条件に暴露してもよい。すなわち、本発明の付加製造方法は、エチレンオキシド、ガンマ線、電子ビーム、乾熱及び蒸気プロセスによる処理から選択される方法によって抽出後物品を滅菌するための滅菌操作を含んでいてよい。この操作は、印刷部品から生細菌を死滅させ又は除去し、それによって、無菌環境が重要な場合、例えば印刷部品の外科的移植中に、印刷部品を使用できるようにする。
【0138】
印刷部品は、形成後加工を介してさらに強化することができる。例示的な形成後加工としては、焼鈍、溶剤平滑化、サンディング、研削、及び最終的な形状を変更するための切断が挙げられる。
【0139】
また、本発明は、次の工程を含む方法を提供する:
(a)顆粒の形態であってよい、重合体相に添加剤を含む組成物(本明細書に記載の溶媒可溶性成分(添加剤)及び溶媒不溶性成分(重合体相)を含む組成物ともいう)を準備し;
(b)組成物を押し出して繊維にし;
(c)繊維を溶融して溶融組成物を得;
(d)付加製造を実施して、溶融組成物から物品(部品又は印刷部品ともいう)を形成し;
(e)物品と溶媒とを、添加剤を少なくとも部分的に溶解するが重合体相を溶解しない条件下で接触させて多孔質体の物品を形成し、ここで、該添加剤は該溶媒に可溶であり;
(f)依然として物品に付随する残留溶媒が多孔質体の物品の重量に基づいて1重量パーセント未満になるように多孔質体の物品から溶媒を除去すること。
【0140】
本発明示は、本明細書に開示されているように、付加製造プロセスによって印刷され、印刷後処理プロセスによって処理された部品を提供する。
【0141】
一実施形態では、本発明は、ミクロ多孔性を有する物品、特に、付加製造及び関連する後処理によって製造される物品を提供する。これは、特に医療用途において注目すべきものであり、ここで、精密さの増した設計でカスタマイズされた患者固有のインプラントを作製する能力が、高度な足場、人工の部分器官又は完全な器官、標的化された医薬送達、及び他の多くの用途の創作を支援する可能性がある。一実施形態では、微小孔は、印刷された糸の長手方向軸に沿って走る一連のチャネルの形態をとる。
【0142】
抽出可能な材料を含むフィラメントは、組織工学、医薬品送達、選択的濾過を含めて、及び追加の表面改質のための前駆体として様々な用途に有用であり得る。抽出可能な二次材料を取り入れることにより、典型的な印刷プロセスでは不可能な表面の質感及び多孔性を生成することができる。この技術は、溶媒の使用によって可能になってもよく、ここで、溶媒は、印刷部品の少なくとも1種の成分を溶解するのに対し、少なくとも1種の他の成分は本質的に不溶である。成分が異なる相を形成し、好ましくは選択的抽出を可能にするために十分に相互接続された相を形成することが望ましい。
【0143】
ほんの一例として、実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるように、分解性重合体、例えばラクチドから形成される分解性重合体から作製できる多孔質構造体を提供し、分解性重合体の70重量%以上、又は75重量%以上、又は80重量%以上、又は85重量%以上、又は90重量%以上がラクチドから形成されている。多孔質構造体は、印刷された構造体が20%以上のボイド空間及び80%までのボイド空間を有するように、例えば、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%までのボイド空間を有し、かつ30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%までのボイド空間を有するように、溶融堆積モデリングによって印刷できる(すなわち、FDM印刷できる)。構造体又は物品は、構造体内に相互に連結された細孔が存在するように印刷できる。一実施形態では、50μm~500μmの範囲の細孔サイズを有する開放細孔があり、例えば、細孔サイズは、少なくとも50μm、又は少なくとも100μm、又は少なくとも200μm、又は少なくとも300μm、又は少なくとも400μmであり、500μm、又は400μm、又は300μm、又は200μm、又は150μm、又は100μm程度の大きさであってもよい。
【0144】
印刷された構造体の表面は、任意に、親水性を増加させる又は表面適合性若しくは第2材料との結合を改善するために、反応性官能基を含有することができる。例えば、構造の表面は、プラズマ処理、塩基若しくは酸表面処理又は照射(UV、ガンマ線、電子ビーム)などの処理を使用することによって変更してもよい。処理された表面は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)[PVA]、キトサン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、成長因子などの様々な材料を足場の表面にグラフトすることによってさらに機能化できる。
【0145】
多孔質構造体は、任意に、成長因子、MSCその他の細胞型を含むヒドロゲルマトリックスを装填してもよく、ここでヒドロゲルは、任意に、印刷された足場に密接に近似し、印刷された足場と相互作用し、印刷された足場とイオン結合し、又は印刷された足場と共有結合できる群から選択できる。ヒドロゲルマトリックスと印刷された足場との相互作用は、印刷された足場との細胞の近似性を改善し、印刷された足場マトリックス内でのヒドロゲルの安定性を増加させることになる場合がある。ヒドロゲルマトリックスは、例えば、ヒアルロン酸、アルブミン、キトサン、ポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。ヒドロゲルを多孔質足場に取り入れた後に、多孔質構造は、望ましい形状を生じさせて安定化させ、初期の細胞増殖の間にヒドロゲル足場を保護するように機能する。一実施形態では、構造体/ヒドロゲル/細胞複合足場は、所望の組織構築物の機械的特性に近似する。一実施形態では、細胞複合体が成熟するにつれて、1種以上の分解性重合体を使用して印刷された多孔質構造体、及びヒドロゲルは、細胞成分及び細胞によって生成された細胞外マトリックスのみを残して分解することがある。任意に、足場が1種以上の非分解性重合体から印刷された場合、構造体の全部又は一部が残って永久的な支持体となる。これは、本発明の組成物及び物品の例示的な用途である。
【0146】
医療用途を含めた多くの用途では、装置のみの制御が可能にするよりも小さな規模で、機能性を変化させつつ離散相を生成することが有用であろう。本明細書に記載されているように、本発明の手法は、重合体相中に添加剤を含む組成物、例えば、連続重合体相中に分散している添加剤を含む分散相を利用するか、又は十分な添加剤が組成物中に存在する場合には、添加剤が連続相を構成してもよく、重合体相が分散相となってもよい。組成物は、付加製造プロセスに特に適した形態、例えば、粉末を構成する顆粒の形態、又はフィラメント若しくは繊維の形態であってもよい。次いで、この形態は処理され、その後印刷部品を使用して、調整された位相変調構造を生成する。
【0147】
組成物が粉末又は顆粒の形態である場合、目的の物品又は部品を形成するために、直接スクリュー押出3D印刷プロセスで使用することができる。このようなプロセスでは、搭載されたミニ押出機を3Dプリンタと組み合わせて配置することころ、これは、熱を利用して粉体又は顆粒材料を溶融させる。その代わりに、直接プランジャー抽出3D印刷プロセスを使用して目的の部品の物品を形成してもよい。このようなプロセスでは、搭載された加熱シリンダーが熱及び圧力を利用して流動床を形成し、これをノズルから強制的に取り出す。このタイプの印刷は、加熱シリンダーを使用して溶融組成物を形成し、これをプリンタのベッド内に排出して目的の物品を形成しているように見える。組成物がモノフィラメントの形態である場合には、FFF3D印刷プロセスを使用して目的の物品又は部品を形成してもよい。
【0148】
医療用途については、装置のみの制御を可能にするよりも小さな規模で、機能が変化する離散相を形成することが有用であろう。本明細書に完全に記載されているように、これらの離散相を得るための手法は、モノフィラメント又は粉末の組成及び処理ならびに後の印刷部品の後処理を利用して、調整された位相変調構造を生成する。
【0149】
本明細書に開示された組成物を用いて印刷された物品は、医療用途に有用なことがある。例えば、移植後に、物品は、本明細書の他の箇所に記載されているように組織の足場として機能することができる。物品は、局所装置として、すなわち、被験体の皮膚表面に配置される装置として使用できる。物品は、真皮用途で使用できる。物品は、組織又は結合の欠陥を埋めるために使用できる。物品は外傷治療に使用できる。物品は、ミクロ多孔性を有する医療用インプラントが有用な場合の例である。
【0150】
本発明は、本明細書において広くかつ一般的に記載されている。一般的な開示に含まれるより狭い種及び亜属の分類のそれぞれも、本発明の一部を構成する。これには、本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、属から任意の主題を削除するという但し書き又は否定的な限定を伴う本発明の一般的な説明が含まれる。
【0151】
本発明の例示実施形態は、重合体相中に添加剤を含む組成物であって、(a)前記添加剤は溶媒に可溶であり;(b)前記重合体相は、有機重合体を含み、かつ、前記溶媒には本質的に不溶であり;(c)前記組成物は、25℃未満の温度では固体であり、前記組成物の溶融温度を超える温度では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり;及び(d)前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて前記添加剤の所定の重量パーセントと、前記組成物の重量に基づいて前記重合体相の所定重量パーセントとを有し、前記添加剤の重量パーセントと前記重合体相の重量パーセントとの合計が90%よりも大きい組成物を包含する。本発明の別の例示実施形態は、連続相中に分散相を含む組成物であって、前記分散相は溶媒に可溶であり;前記連続相は、有機重合体を含み、かつ、前記溶媒には実質的に不溶であり;前記組成物は、25℃以下の温度では固体であり、前記組成物の溶融温度を超える温度では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり;及び、前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて前記分散相の所定の重量パーセントと、前記組成物の重量に基づいて前記連続相の所定の重量パーセントとを有し、前記分散相の重量パーセントと前記連続相の重量パーセントとの合計が90%よりも大きい組成物である。
【0152】
任意に、これらの組成物のいずれかは、次の特徴のうちの1つ以上(例えば、2つ、又は3つ、又は4つなど)によってさらに特徴づけられ得る:溶媒が水である又は水を含み、組成物が、付加製造プロセスで使用可能な形態、例えば、フィラメント、又はスプールに巻かれたフィラメントの形態であり、ここで、フィラメントは、任意に約0.5~5mm、又は約1~5mm、又は約1.5~5mm、又は約2~5mm、又は約2.5~5mm、又は約0.5~4mm、又は約1~4mm、又は約1.5~4mmの直径を有し、又は組成物が顆粒の形態であり、組成物中の分散相又は添加剤相の重量パーセントが1~60%、又は1~50%、又は1~40%、又は1~30%、又は1~20%、又は5~60%、又は5~50%、又は5~40%、又は5~30%、又は5~20%、又は10~60%、又は10~50%、又は10~40%、又は約10~30%、又は約20~60%、又は約20~50%、又は約20~40%、又は約30~60%、又は約30~50%であり、ここで、これらのパーセンテージの範囲は、添加剤相又は分散相の重量を組成物の総重量で割ったものを100倍したものり、分散相が約20~400ミクロン、又は約20~300ミクロン、又は約20~100ミクロン、又は約40~400ミクロン、又は約40~300ミクロン、又は約40~200ミクロン、又は約60~400ミクロン、又は約60~300ミクロン、又は約60~200ミクロン、又は約100~400ミクロン、又は約100~300ミクロン、又は約100~200ミクロンの平均粒子径を有し、ここで、これらのミクロン値は、複数の分散相を通る平均的な最長距離を意味し、添加剤相又は分散相が無機塩、例えば、陽イオン及び陰イオンを含む無機塩を含み、ここで、陽イオンはナトリウム、カリウム及びマグネシウムから選択され、陰イオンは塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩から選択され、添加剤相又は分散相が水溶性有機化合物、例えば、砂糖又は有機カルボン酸塩を含み、重合体相又は連続相が生体吸収性重合体、例えば、ポリエステル、多無水物、ポリヒドロキシ酪酸、ポリエーテルから選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を含み、重合体相又は連続相が非生体吸収性重合体、例えば、ポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含み、組成物残留単量体をほとんど又は全く有さず、例えば、2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満の濃度の残留重合体を有し、組成物が残留スズをほとんど又は全く有さず、例えば、スズ濃度が200ppm未満であり、組成物がスズ以外の重金属をほとんど又は全く有さず、例えば、スズ以外の金属濃度が50ppm未満である。
【0153】
他の実施形態では、本発明は、付加製造方法であって、次の工程を含む方法を提供する:(a)固体組成物を溶融して溶融組成物を得、前記溶融組成物は、本明細書に記載されるような添加剤相及び重合体相を含み;(b)付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し;(c)前記成形品と溶媒とを、前記添加剤相を少なくとも部分的に溶解するが前記重合体相は溶解しない条件下で接触させて、多孔質又はミクロ多孔質の形態の物品を形成し、ここで、前記添加剤相は前記溶媒に可溶である。
【0154】
本発明は、以下の番号が振られた実施形態を提供するが、これらは例示であり、本発明によって提供される実施形態を限定するものではない。
1.重合体相に添加剤を含む組成物であって、
a.前記添加剤が溶媒に可溶であり、
b.前記重合体相が有機重合体を含み、かつ、本質的に溶媒に不溶であり、
c.前記組成物が25℃未満の温度では固体であり、かつ、50℃を超える温度では2.5~30g/10分のメルトフローインデックスを有する粘性流体であり、及び
d.前記組成物が前記組成物の重量に基づいて前記添加剤の所定の重量パーセント及び前記組成物の重量に基づいて前記重合体相の所定の重量パーセントを有し、前記添加剤の重量パーセント及び前記重合体相の重量パーセントの合計が90%よりも大きい、前記組成物。
2.モノフィラメントの形態にある、実施形態1の組成物。
3.前記モノフィラメントが非延伸モノフィラメントである、実施形態2の組成物。
4.前記モノフィラメントが50%未満の配向因子を有する、実施形態2の組成物。
5.前記モノフィラメントが1~5mmの直径を有する、実施形態2の組成物。
6.前記モノフィラメントが1.75±0.05mmの直径を有する、実施形態5の組成物。
7.前記モノフィラメントが少なくとも1ニュートンのカラム座屈抵抗性を有する、実施形態6の組成物。
8.粉末又は顆粒の形態にある、実施形態1の組成物。
9.前記添加剤が無機塩を含む、実施形態1の組成物。
10.前記添加剤が水溶性有機化合物を含む、実施形態1の組成物。
11.前記水溶性有機化合物がポリエチレングリコールである、実施形態10の組成物。
12.前記重合体相が生体吸収性重合体を含む、実施形態1の組成物。
13.前記重合体相は、ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシブチレート)及びポリエーテルから選択されるセグメントを含む生体吸収性重合体を含み、一例では、添加剤は、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)、又はエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体であってもよく又はこれらを挙げることができると共に、前記重合体相は、ポリエステル及び/又はポリ無水物のセグメント、例えば、グリコリド(ポリグリコリド、PGA)、ラクチド(ポリラクチド、PLA)、ジオキサノン(ポリジオキサノン、PDO)、トリメチレンカーボネート(ポリトリメチレンカーボネート、TMC)、カプロラクトン(ポリカプロラクトン、PCL)、ヒドロキシブチレート(ポリヒドロキシアルカノエート、例えば、PHB)などのヒドロキシアルカノエート、又はポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)などのそれらの混合物から製造されるセグメントを含む重合体などの生体吸収性重合体を含む生体吸収性重合体を含む、実施形態12の組成物。
14.前記重合体相が非生体吸収性重合体を含む、実施形態1の組成物。
15.前記重合体相がポリエチレン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエチレンテレフタレートから選択される非生体吸収性重合体を含み、一例では、前記重合体相は、有機溶媒、例えばクロロホルムに可溶ではないのに対し、前記添加剤はクロロホルムなどの有機溶媒には可溶であり、前記重合体相は有機溶媒、例えばクロロホルムには可溶でなく、前記添加剤は、ポリエステル及び/又は多価アルコールセグメント、例えば、グリコリド(ポリグリコリド、PGA)、ラクチド(ポリラクチド、PLA)、ジオキサノン(ポリジオキサノン、PDO)、トリメチレンカーボネート(ポリトリメチレンカーボネート、TMC)、カプロラクトン(ポリカプロラクトン、PCL)、ヒドロキシブチレート(ポリヒドロキシアルカノエート、例えばPHB)などのヒドロキシアルカノエート、又はポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)などのそれらの混合物から製造されるセグメントを含む重合体である、実施形態14の組成物。
16.前記組成物中の前記添加剤の重量パーセントが1~60%である実施形態1の組成物。
17.前記溶媒が水であり、前記添加剤が水に可溶であり、前記重合体相が水に不溶である、実施形態1の組成物。
18.実施形態2のモノフィラメントを含み、スプールをさらに含むアセンブリであって、前記モノフィラメントが前記スプールに巻き付けられているアセンブリ。
19.前記スプール上の前記モノフィラメントが気密性容器内に封入されている。実施形態18のアセンブリ。
20.実施形態2の組成物の形成方法であって、次の工程:
a.添加剤と重合体相とを組み合わせて組成物を形成し;
b.前記組成物を加熱して溶融組成物を形成し;
c.前記溶融組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成し;及び
d.前記非延伸モノフィラメントを滅菌すること
を含む方法。
21.実施形態18のアセンブリの形成方法であって、次の工程:
a.実施形態1に記載の組成物を溶融状態で得、
b.前記溶融状態の組成物を押し出して非延伸モノフィラメントを形成し;
c.前記非延伸モノフィラメントをスプールに巻き付け;
d.前記モノフィラメントが巻かれた前記スプールを包装すること
を含む方法。
22.付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
a.固体組成物を溶融して溶融組成物を得、ここで、前記溶融組成物は、実施形態1~17のいずれかに記載の添加剤及び重合体相を含み;
b.付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し;
c.前記物品と溶媒とを、前記添加剤を少なくとも部分的に溶解するが前記重合体相を溶解しない条件下で接触させて、前記物品の多孔質体を形成し、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶である。
23.前記溶媒が前記添加剤の少なくとも50%を溶解する、実施形態22の方法。
24.前記固体組成物を50~450℃の温度で溶融して前記溶融組成物を形成する、実施形態22の方法。
25.前記付加製造方法が溶融フィラメント製造(FFF)である、実施形態22の方法。
26.前記物品の多孔質体が、前記付加製造プロセス中に生成された溶融組成物の繊維形態の長手方向に対して長手方向に、前記物品の表面に沿って走る複数のチャネルを備える、実施形態22の方法。
27.酸化エチレン処理、ガンマ処理、電子ビーム処理、乾熱処理及び蒸気処理から選択される方法で前記物品を滅菌することをさらに含む、実施形態22の方法。
28.残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量%未満となるように、前記物品から前記溶媒を除去することをさらに含む、実施形態22の方法。
29.付加製造方法であって、次の工程を含む方法:
a.実施形態1~17のいずれかに記載の重合体相中に添加剤を含む組成物を得;
b.前記組成物を押し出してモノフィラメント繊維にし;
c.前記モノフィラメント繊維を溶融して溶融組成物を得;
d.付加製造を実施して前記溶融組成物から物品を形成し;
e.前記物品と溶媒とを接触させ、ここで、前記添加剤は前記溶媒に可溶であり、及び
f.残留溶媒が前記物品の多孔質体の重量に基づいて1重量%未満となるように、前記物品から前記溶媒を除去すること。
【実施例】
【0155】
以下の実施例は例示のために提供するものであり、限定ではない。
【0156】
例1
ポリジオキサノン及びPEGから作製された微細繊維状製品
付加製造に適したフィラメントを、ポリジオキサノン(PDO)及びポリエチレングリコール(PEG)から製造した。フィラメントのそれぞれに存在するPDO及びPEGの量を表1に示す。選択された量のPDO及びPEGをジャーに入れた。PDO(米国サウスカロライナ州Poly-Med社)は、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)への希釈溶液が0.1mg重合体/mL溶媒の濃度で1.7dL/gの固有粘度を有するような分子量を有していた。PEGは20kDaの平均分子量を有し、Dow duPont Chemical社から入手した。2種の粉末を含むジャーを室温で振盪して均質な外観を得た(約1時間を要した)。混合物を減圧下で乾燥させた。
【0157】
この混合物を、0.584cc/revの定量ポンプを装備したカスタム3/4インチバレル径の押出機に供給し、ダイを通して押し出した。得られた繊維を、押出機の出口に取り付けられたプーラーを使用して搬送し、同時に繊維を水浴中に引っ張ってモノフィラメント繊維を形成した。これらの条件で、平均フィラメント径1.75mmのモノフィラメント繊維を得た。このプロセスを使用して、付加製造に適したフィラメント、例えば1.5~3.0mmの直径を有するフィラメントを製造できる。フィラメントをスプール上に集め、使用時まで乾燥不活性環境(窒素雰囲気)下で保管した。本明細書では、このフィラメントを印刷用フィラメントという。
【0158】
【0159】
FDM印刷を、1mmのノズルを備えたモジュール式ダイレクトドライブプリントヘッドを有するHYDRA640プリンタ(米国ジョージア州アトランタHyrell 3D)を使用して、ノズル温度165℃、ベッド温度45℃で、15mm/sの供給速度に設定して実施した。各印刷フィラメントを使用して、2層の印刷フィラメントからなるディスク状の物品を印刷した。ディスクは、第1層を形成する第1シリーズの平行な糸と、第1層上に印刷された第2層を形成する第2シリーズの平行な糸とからなり、ここで、第2シリーズの平行な糸は、第1シリーズの糸の長手方向と直交する長手方向に続いた。この形状は、
図2で見ることができる。印刷フィラメントは約1100℃の溶融温度を有し、165℃で印刷されたため、溶融印刷フィラメントを印刷して第2層を形成させたときに、第1層がわずかに溶融し、第1層と第2層とが互いに付着した。
【0160】
印刷部品では、各糸は約0.8mmの幅を有していた。このように、このFDM印刷プロセスでは、2つの層を有するディスクが得られ、各層は0.5mmの層厚を有する。各層及び全体としてのディスクは、80%の直線的なインフィルパターンを有していた。ディスクの直径は50mmであった。印刷物品のSEM画像を
図2に示す。
【0161】
表1に記載の組成を有する印刷フィラメント及びそれから作製された印刷ディスクを、37℃の脱イオン水に15時間浸漬した後、水浴から慎重に取り出し、一定重量まで乾燥させ、そして再秤量して抽出された含有量を決定した。サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で画像化して形態を評価し、画像について、ImageJ(National Institutes of Health)を用いてさらに特性評価した。
【0162】
表2は、試験した材料及びフォーマットのそれぞれについて、抽出された含有量(サンプルの元の重量に基づく重量%)及び抽出効率(抽出された元のフォーマットに存在する可溶性重合体(PEG)の%)をリストアップしたものである。
【0163】
【0164】
表2は、PDO100の印刷フィラメントを用いて印刷された部品が、浸漬工程後にその重量の1.2%を失ったことを示している。これは対照として機能する。60重量%のPDOと40重量%のPEGとを含む印刷フィラメントを用いて部品を印刷した場合には、出発フィラメントは浸漬工程でそのPEG成分の重量の78%を失い、この印刷フィラメントから印刷した部品は浸漬工程でそのPEG成分の重量の100%を失った。また、50重量%のPDOと50重量%のPEGとを含む印刷用フィラメントを用いて部品を印刷した場合、出発フィラメントは、浸漬工程中にそのPEG成分の重量の88%を失う一方、この印刷用フィラメントから印刷された部品は、浸漬工程中にそのPEG成分の重量の92%を失った。
【0165】
図3Aは、PDO60印刷フィラメントで印刷された部品のSEM画像を提供する。
図3Aに示す部品は、抽出プロセスを受けていない。
図3Bは、PEO60印刷フィラメントで印刷された部品のSEM画像を提供するが、
図3Aに示された部品とは対照的に、
図3Bに示された部品は、抽出溶媒に曝されている。
図3Bに示すように、印刷された糸からのPEGの溶解は、それぞれが印刷された糸の長手方向軸に沿って走る一連のチャネルを残した。これらのチャネルは、
図3Aに示された部品では見られない。この方向性を、NIH社製のImageJソフトウェアを使用して定量化したところ、
図4Aのヒストグラム(
図3Aの部分に対応)及び
図4Bのヒストグラム(
図3Bの部分に対応)が得られた。同様の結果が、PDO50由来の部品の浸漬から見られた。
図3A及び3Bに示された部品は、
図2の画像に示された糸よりも広い糸を有するように見えるが、その理由は、
図3A及び3Bにおいて、印刷された糸が、糸間に隙間なく、互いにすぐ隣り合っているように見えるため、実際には1本の糸のように見えるものに2本の糸がある場合に、より広い糸の外観が得られるからである。
【0166】
FDM印刷部品は、水抽出後に、主として連続した整列フィラメントとして示された。PDO50とPDO60の両方の材料において、フィラメントの整列はノズル経路の方向、すなわち印刷軸に沿った方向であった。印刷部品は高効率で抽出されたが、これは、抽出後に印刷部品中に残存する可溶性PEGがほとんど又は全く存在せず、抽出は、フィラメント前駆体からのPEGの抽出性と比較して改善されたことを意味する。
【0167】
例2
高密度ポリエチレン及びポリカプロラクトンから作製された微細繊維状製品
高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリカプロラクトン(PCL)をそれぞれ不溶性材料及び可溶性材料として使用して、実施例1に記載されたとおりにフィラメントを製造した。HDPE(Dow Chemical)及びPCL(米国サウスカロライナ州アンダーソンPoly-Med)(後者はCHCl3中で固有粘度(IV)=1.8g/mLを有する)をいずれもそのまま使用した。1.75mm径の印刷フィラメントを、表3に記載の組成比で採取した。印刷フィラメントは、使用時まで乾燥した不活性環境下で保存した。
【0168】
【0169】
0.4mm又は1.0mmのノズルを備えたモジュール式ダイレクトドライブプリントヘッドを有するHYDRA640プリンタ(米国ジョージア州アトランタHyrel 3D)を使用してFDM印刷を行った。ノズル温度の影響を185℃、205℃、225℃で評価した。各印刷フィラメントを、ノズルの直径に対する層の厚さの比率が50%で設計されたディスク状に印刷した。すなわち、各層の厚さがノズル径の大きさの1/2になるように印刷した(0.4mmのノズルでは0.2mmの厚さの層が形成された)。各部品は、80%に設定された直線的なインフィルパターンを有していた。
【0170】
印刷されたディスクを印刷フィラメントと共に室温で一晩クロロホルムに浸し、次いで慎重に溶媒から取り出し、クロロホルムで洗浄し、一定重量まで乾燥させ、抽出された含有量を測定した。HDPEはクロロホルムに不溶であり、PCLはクロロホルムに可溶である。サンプルを、部品の形態を特徴付けるために走査型電子顕微鏡(SEM)で画像化し、画像をImageJ(国立衛生研究所)で特性分析した。
【0171】
抽出の詳細及び画像を、表4並びに
図5A、5B、5C及び5Dに提供する。表4において、N.D.は、決定されなかったことを意味する。
【0172】
【0173】
原料フィラメント(抽出後)は、繊維状の構造と配向性の少ない不連続なセグメントとの組み合わせを示した。クロロホルム抽出後のHDPE45(抽出可能含量55%)からの3D印刷部品は、印刷パラメータに応じて異なる形態を示した。
【0174】
1.0mmノズル(
図5A及び5B)を介して印刷すると、原料フィラメントと同様の形態が得られ、プロセス温度を上昇させると(
図5Aの185℃;
図5Bの205℃)、より微細な特徴が得られた。
【0175】
0.40mmのノズル(
図5C及び5D)を介して印刷すると、驚くべきことに、最終的な形態は、主に連続した整列フィラメント構造に変化した。この場合、20℃のプロセス温度上昇(
図5Cの205℃;
図5Dの225℃)により、フィラメント構造の均質性が改善した。
【0176】
全ての場合において、3D印刷物品からのPCLの抽出性は、原料印刷フィラメントからの抽出性と比較して改善された。このことから、せん断(1.8mmのフィラメントを1.0mm又は0.4mmのノズルを通して押し出した)を介して相分離及び微細構造の変種が生成され、温度と共に均質化される。このとこは、このプロセスが全ての条件について溶融温度を超える温度で実施され、温度が相分離の主要なドライバーであると考えられるため、予想外のことである。
【0177】
印刷用フィラメント及びそれに対応するHDPE20から作製された3D印刷部品は、抽出後に安定ではなかった。抽出可能な含有量が高いことにより、不溶性のHDPE部分の不連続な形態が生じ、その結果、高密度ポリエチレンの粒子への構造の崩壊が生じた。表4は、この観察を反映するためにN.D.(決定しなかった)を示す。
【0178】
例3
微細繊維状3D印刷物品から作製されたウィッキング物品
例1及び2で製造した抽出前及び抽出後のディスクから、矩形形状を単離した。矩形形状の寸法は、長さ50mm×幅4mm×厚さ1mmであった。得られた矩形形状体を、フェノールレッド指示薬を水に溶解してなる溶液中に部品を浸漬し、そして着色溶液が部品内を移動する様子を観察することによって、ウィッキング特性を評価した。結果を表5及び
図6にまとめる。
【0179】
【0180】
図6は、PDO60から印刷された抽出前の部品と抽出後の部品との間の水性ウィッキング性能の相違を示す。PDO60の部品を通したフェノールレッド指示薬水溶液のウィッキングは、抽出前の部品(右)と抽出後の部品(左)について、浸漬後約1分でのウィッキング反応を示している。この1分間の時間枠内では、水性指示薬溶液は、抽出後のPDO60部品(左)の全体に沿ってウィッキングされていたのに対し、抽出前のPDO60部品(右)に沿って指示薬溶液は本質的にウィッキングされていなかった。
【0181】
図7は、2種の異なる抽出後の印刷部品間のウィッキング性能の比較を示す。
図7には、滴下適用後5分後のHDPE45(下)とPDO60(上)との間の水性フェノールレッド指示薬溶液のウィッキングの比較が示されている。5分間の時間枠内では、HDPE45の印刷部品(下)では指示薬溶液のウィッキングは発生しなかったが、PDO60の印刷部品(上)の全長にわたって指示薬溶液がウィッキングしていた。
【0182】
3D印刷部品のウィッキング挙動は、部品の表面エネルギー、すなわち溶液相溶性に影響を受ける。ウィッキング挙動は、本明細書に開示されているような配合、印刷、及び抽出プロセスの結果として生成された微細構造によって大幅に強化される。整列マイクロフィラメント構造の形成には、整列マイクロフィラメント特徴を欠いた部品よりも大きなウィッキングの利点がある。
【0183】
例4
グリコプレンとラクトプレン重合体とのブレンド組成物
グリコプレン(商標)6829重合体(米国サウスカロライナ州アンダーソンPoly-Med社製のグリコリド68%、カプロラクトン29%、及び炭酸トリメチレン3%を含むグリコリド系共重合体)及びラクトプレン(商標)8411(米国サウスカロライナ州アンダーソンPoly-Med社製の、l-ラクチド84%、カプロラクトン11%、及び炭酸トリメチレン5%を含むラクチド系共重合体)を使用して、例1に記載されたようにフィラメントを製造した。グリコプレン(商標)6829重合体は、生体内での分解が比較的速い重合体であるのに対し、ラクトプレン(商標)8411重合体は、生体内での分解が比較的遅い重合体である。モノフィラメントは、表6に示す組成を有し、それぞれ1.75mmの直径を有していた。形成後、フィラメントを使用時まで乾燥した不活性環境下で保存した。
【0184】
【0185】
FDM印刷を、0.40mmのノズルを備えたBowdenチューブプリントヘッドを有するF360プリンタ(米国ノースカロライナ州グリーンズボロFusion3)を用いて行った。各フィラメント材料を、層厚対ノズル直径比50%と80%に設定された直線的なインフィルパターンとで設計された、例1に記載されているような50mmx1mmのディスクに印刷した。
【0186】
分解プロファイル及び試験管内形態変化を検討するために、印刷されたディスクを50℃でpH12のリン酸緩衝液に入れることによって加速分解研究を行った。この加速モデルは、生体吸収性重合体の分解プロセスを大幅に高速化し、評価時間を数ヶ月から数日に短縮した。
【0187】
表7は、「印刷されたまま」のディスク形状と比較した全体的な部品構造の保持を詳細に示すものである。表7において、Rは良好な「印刷されたまま」の形状保持、すなわち、劣化試験中に印刷された形状が全く変化しなかったことを意味し、Dは「印刷されたまま」の構造を失った部品の兆候を意味し、NRはその部品が印刷された構造を失ったことを意味し、ここで、NR1はフィラメントの非接着が発生したことを意味し、NR2は脆性破壊が発生したことを意味する。
【0188】
【0189】
検討されている様々なブレンド間の性能の相違を理解するために、サンプルを試験管内研究前及びその期間中に、SEM及び組成についてNMRで分析した。分解画像及び質量損失の詳細を
図8及び9に示す。
図8において、SEM画像は、150倍の倍率で示されている。
図8において、表7で採用された命名法を使用して、Aはラック(Lac)100から作製された部品をいい、Bはラック75から作製された部品をいい、Cはラック60から作製された部品をいい、Dはラック50から作製された部品をいい、Eはラック0から作製された部品をいう。
図9は、pH12、50℃での試験管内劣化サイクルを経た3D印刷部品の質量損失プロファイルを示すグラフである。パーセンテージ値は、全体のパーセンテージである。
【0190】
ラクトプレン8411ブレンド材料からの3D印刷部品は、単成分フィラメントと比較して著しく異なる劣化形態を示した。ブレンド材料の組成は、3D印刷部品内での相分離を変化させる。グリコプレン6829との50/50ブレンドでは、いくつかの整列繊維と短いセグメントとを含む混合形態が得られる。60/40ブレンドでは、部分的に分解すると整列フィラメント構造が得られる。75/25ブレンドでは、部分的に劣化すると最初にリボン状構造体が得られ、その後さらに劣化するとフィラメント状の構造体が得られる。
【0191】
各ブレンドは、劣化サイクルを通じた印刷形状保持において、異なる能力を発揮した。ラクトプレン8411の配合率が低いほど、予想外に「印刷されたまま」の形状を保持する能力が高くなった。ブレンド中におけるラクトプレンの配合比率が高いほど、試験管内での分解中にフィラメントの非接着が生じ、構造の「ほぐれ」が明らかになった。全てのブレンド部品は、分解中に物理的形態が変化したが、グリコプレン6829及びラクトプレン8411のみから作製された部品は、試験管内評価期間中に表面割れ及び脆化を示した。
【0192】
例5
無機塩が分散したポリカプロラクトンの3D印刷による多孔質物品
ポリカプロラクトン(PCL)単独重合体とNaCl(Sigma Aldrich)をブレンドすることによって、例1に記載されたとおりにフィラメントを製造した。前者は水に不溶であり、後者は20℃の水に1Mの溶解度を有する。これらの材料を押出機内でブレンドして、表8に記載された材料比で直径1.75mmのモノフィラメントを形成し、使用時まで乾燥した不活性環境下で保存した。
【0193】
【0194】
FDM印刷を、HYDRA(商標)640プリンタ(米国ジョージア州アトランタHyrel 3D)で、1.0mmノズルを使用して165℃で直径50mmのディスクにディスク厚0.5mm及び80%で直線状インフィルで実施した。フィラメント及び3D印刷物品を室温で15時間脱イオン水に浸漬させた後に、一定重量まで乾燥させ、抽出可能な含有量を測定した。物品をSEMによって画像化して物品の形態を特定した。結果を表9に示す。表9は、生体成分材料の初期組成及びその後の抽出試験の結果を示す。
【0195】
【0196】
水抽出では、負荷塩を完全に除去することはできなかったが、部分的に除去することができた。注目すべきことは、出発材料のフィラメントと比較して、3D印刷部品から抽出効率の有意な向上が観察されたことである。SEM分析では、塩の溶出によって形成された細孔が分離されているように見えた。形成された細孔の外観は、負荷塩の微粒子のサイズ及び形状と一致する。塩の負荷をさらに多く(例えば、50重量%以上)することで、オープンセル多孔質構造が形成されることが期待される。
【0197】
本明細書において、本発明を広くかつ一般的に記載してきた。一般的な開示に含まれるより狭い種及び亜属の分類のそれぞれも、本発明の一部を構成する。これには、本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、属から任意の主題を削除するという条件付き又は否定的な限定を伴う本発明の一般的な説明が含まれる。
【0198】
また、本明細書及び特許請求の範囲において使用するときに、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数形を含み、用語「X及び/又はY」は、「X」若しくは「Y」、又は「X」と「Y」の両方を意味し、名詞の後に続く文字「s」は、その名詞の複数形及び単数形の両方を意味するものとする。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群の用語で記載されている場合には、本発明は、マーカッシュ群の任意の個々の部材及び任意のサブグループの部材を包含し、それによってマーカッシュ群の任意の個々の部材及び任意のサブグループの部材に関して記載されることを意図し、当業者であればこれを認識するであろう。出願人は、マーカッシュ群の任意の個々の部材又は任意のサブグループの部材を具体的に参照するために、本願又は請求の範囲を修正する権利を留保する。
【0199】
特許文献及び非特許文献を含めて、ここに開示されている全ての文献は、それぞれが個別に援用されたかのように、参照によりその全体が援用される。
【0200】
なお、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用する用語は、関連する技術分野において知られている伝統的な意味を与えられるものとする。
【0201】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」及びその変形例に対する言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」又は「実施形態において」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特徴は、1以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせてもよい。
【0202】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するときに、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容及び文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数形(すなわち1以上)を包含する。また、接続詞である「and」及び「or」は、内容や文脈が明らかに包含性又は排他性を規定しない限り、「及び/又は」を含むように、一般的に最も広い意味で使用されることにも留意すべきである。したがって、選択肢(例えば、「又は」)の使用は、選択肢のいずれか一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせを意味すると解すべきである。さらに、「及び/又は」として本明細書に記載される場合の「及び」及び「又は」の構成は、関連する用語又は技術思想の全てを含む実施形態と、関連する用語又は技術思想の全てよりも少ない数を含む1以上の他の代替実施形態とを包含することが意図される。
【0203】
文脈が他に要求しない限り、明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、用語「備える」並びに「有する」及び「含む」などの同義語及びその変種は、例えば「あげられるが、これらに限定されない」などの開放的な包括的な意味で解釈すべきである。用語「から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定の材料若しくは工程、又は特許請求された発明の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。
【0204】
本明細書内で使用されるいかなる見出しも、読者による再検討を促進するために利用されているに過ぎず、いかなる方法でも本発明又は特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。したがって、本明細書で提供される見出し及び開示の概要は、便宜上のものであり、実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0205】
値の範囲が本明細書で提供される場合、文脈が明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間にある、下限の単位の10分の1までの間の値並びにその記載された範囲内にある任意の他の記載された又は間の値も、本発明に包含されるものとする。これらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、記載された範囲内で特に除外された限界を条件として、本発明の範囲内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界の一方又は両方を除外した範囲も本発明の範囲内に包含される。
【0206】
例えば、本明細書に記載されている任意の濃度範囲、割合範囲、比率範囲、又は整数範囲は、別段の指示がない限り、記載されている範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合には、その端数(例えば、整数の10分の1及び100分の1など)を含むものと解される。また、重合体サブユニット、サイズ又は厚さなどの物理的特徴に関連して本明細書で言及されている任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、言及されている範囲内の任意の整数を含むものと解される。本明細書で使用するときに、用語「約」は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0207】
本明細書で言及される及び/又は出願データシートに記載される米国特許、米国特許出願の公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物の全ては、参照によりの全体が本明細書において援用される。このような文献は、例えば、本明細書に記載された本発明に関連して使用される可能性のある、刊行物に記載された材料及び方法を記載及び開示する目的のために、参照により援用される場合がある。本明細書及び本文全体で議論した刊行物は、もっぱら本願の出願日前の開示のために提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明者が先行発明を理由に参照された出版物に対して先願の権利がないことを認めたものと解釈すべきではない。
【0208】
本明細書で参照又は言及される全ての特許、出版物、科学論文、ウェブサイト並びに他の文書及び資料は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者の熟練度を示すものであり、それぞれの参照文書及び資料は、その全体が個別に参照により援用され、又はその全体が本明細書に記載されている場合と同様の範囲で参照により援用される。出願人は、このような特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、及び他の参照された資料又は文書からのあらゆる資料及び情報を本明細書において物理的に組み込む権利を留保する。
【0209】
一般に、特許請求の範囲において、使用する用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈すべきではなく、特許請求の範囲の権利を有する完全な均等の範囲と共に、全ての可能な実施形態を含むように解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本明細書によって限定されるものではない。
【0210】
さらに、本願明細書の記載部分には、全ての請求項が含まれる。さらに、全ての元の請求項及び全ての優先権書類からの全ての請求項を含めて、全ての請求項は、参照によりその全体が本明細書の記載部分に組み込まれ、出願人は、このような全ての請求項を記載部分又は出願の他の部分に物理的に組み込む権利を留保する。したがって、いかなる状況下でも、特許は、例えば、請求項の正確な文言が特許明細書の記載部分にこれらの言葉で記載されていないという主張に基づいて、請求項のための明細書を提供していないと主張されると解釈されない。
【0211】
特許請求の範囲は法律に従って解釈される。しかしながら、いかなる請求項又はその一部の解釈の容易さ又は困難さが申し立てられている又は認識されているかにかかわらず、いかなる状況においても、本特許につながる一の出願又は複数の出願の審査中の請求項又はその一部の調整又は補正は、先行技術の一部を構成していない全ての均等物に対する権利を喪失したものと解釈されることはない。
【0212】
他の非限定的な実施形態は、特許請求の範囲内にある。本特許は、本明細書に具体的及び/又は明示的に開示された特定の例又は非限定的な実施形態又は方法に限定されるものと解釈してはならない。いかなる状況においても、本特許は、審査官又は特許商標庁の他の役人若しくは職員によってなされた声明によって限定されると解釈してはならないが、ただし、そのような声明が具体的であり、かつ、出願人による応答書面で明示的に採用された資格又は留保のない場合を除く。