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特許7295109ばねの垂直位置調整用の電気機械式調整装置を備えた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニット
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  • 特許-ばねの垂直位置調整用の電気機械式調整装置を備えた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニット 図1
  • 特許-ばねの垂直位置調整用の電気機械式調整装置を備えた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ばねの垂直位置調整用の電気機械式調整装置を備えた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニット
(51)【国際特許分類】
   B60G 15/07 20060101AFI20230613BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60G15/07
F16F9/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020527067
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2018059025
(87)【国際公開番号】W WO2019097461
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】102017000131839
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】503336534
【氏名又は名称】マレッリ・サスペンション・システムズ・イタリー・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARELLI SUSPENSION SYSTEMS ITALY S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルテル・ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロ・アントニオ・コンティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダーノ・グレコ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・アマーティ
(72)【発明者】
【氏名】レナート・ガッルッツィ
(72)【発明者】
【氏名】サンジャルベク・ルジモフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・トノリ
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08205864(US,B2)
【文献】特開2007-237945(JP,A)
【文献】米国特許第08833775(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットであって、
第1軸(z)に沿って延びるシリンダ(14)およびロッド(16)を有するダンパ(10)と、
前記ダンパ(10)の前記シリンダ(14)の周りに配置され、前記第1軸(z)に沿って前記シリンダ(14)に対して摺動可能なスプリングプレート(18)と、
前記スプリングプレート(18)に下部が載っているばね(12)と、
連続的かつ制御して、前記ばね(12)の下端の垂直位置を変化させ、それによって地面からの車両の高さを調整できる、前記ダンパ(10)の前記シリンダ(14)と前記スプリングプレート(18)との間に介在された電気機械式の調整装置と、を備え、
前記調整装置は、回転運動を発生させるように配置された電気モータ(22)、および前記電気モータ(22)によって生じた回転運動を前記スプリングプレート(18)の並進運動へと変換するように配置されたねじ及びナット運動変換機構(24、26)を備え、
前記運動変換機構は、前記第1軸(z)と平行かつ離隔した第2軸(z’)に沿って延びる一つの単一ねじ(24)、および前記ねじ(24)とかみ合う一つの単一ナット(26)を備え、
前記ねじ(24)、または前記ナット(26)は、前記電気モータ(22)によって前記第2軸(z’)中心に回転されるように配置され、一方、前記ナット(26)、または前記ねじ(24)はそれぞれ、前記スプリングプレート(18)とともに移動するように駆動結合され、それによって前記電気モータ(22)の動作時、前記電気モータ(22)によって前記ねじ(24)、または前記ナット(26)、に伝達された回転運動はそれぞれ、前記第2軸(z’)に沿った前記ナット(26)、または前記ねじ(24)、の並進運動に変換され、したがって前記第1軸(z)に沿った前記ダンパ(10)の前記シリンダ(14)に対する前記スプリングプレート(18)の並進運動に変換され、
前記調整装置は、前記電気モータ(22)および前記ねじ(24)、または前記ナット(26)、を支え、前記ダンパ(10)の前記シリンダ(14)と剛結合されている第1支持アーム(28)と、それぞれ前記ナット(26)、または前記ねじ(24)、を支え、前記スプリングプレート(18)と剛結合されている第2支持アーム(34)と、片端で前記第2支持アーム(34)に、他端で前記スプリングプレート(18)に剛結合され、前記第1軸(z)に沿って摺動できるように前記ダンパ(10)の前記シリンダ(14)の周りに配置されている案内スリーブ(38)と、をさらに備える、
車両懸架装置用ダンパ及びばねユニット。
【請求項2】
前記調整装置は、前記電気モータ(22)と前記ねじ(24)または前記ナット(26)との間に介在された減速機構をさらに備える、請求項1に記載のダンパ及びばねユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ばねの垂直位置を調整する調整装置を備え、それによって地面からの車両の高さを調整する、車両懸架装置用のダンパ及びばねユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンパ及びばねユニットを備える車両懸架装置において、ダンパは、下端で車輪支持部材または懸架アームに、上端で車両の本体に結合される。ばねは、ダンパの周りに配置され、下端でばねプレートに、上端で車両の本体に当たる。ダンパのシリンダとばねプレートとの間に介在された調整装置を使用することが知られており、ばねの垂直位置を変更し、したがって、地面からの車両の本体の高さを調整することができる。
【0003】
当該目的のために使用される調整装置は、油圧、空気圧、油空圧、および電気機械式の装置など、様々な種類のものであってもよい。これらの調整装置の中で、電気機械式装置は、その他の種類の調整装置に対する、その高い信頼性、比較的低コストおよび大きさの小ささにより、ますます注目および関心を得ている。
【0004】
より具体的には、本発明は、電気機械式調整装置を用いた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットに関する。調整装置は、回転運動を発生させるように配置された電気モータ、並びに電気モータによって発生された回転運動をスプリングプレートの並進運動に変換するように配置されたねじ及びナット運動変換機構を備える。運動変換機構は、電気モータによって自身の軸中心に回転されるように配置された一つの単一ねじ、およびねじとかみ合い、スプリングプレートとともに移動するように駆動結合された一つの単一ナットを備える。それによって、電気モータの動作時、電気モータによってねじに伝達された回転運動は、ナットの並進運動、およびそれとともにスプリングプレートの並進運動に変換される。
【0005】
上記された類いの車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットの例は、米国特許第7,922,181号、米国特許第8,205,864号、および米国特許8,833,775号で知られている。
【0006】
さらに、欧州特許第2 332 756号は、電気機械式の高さ調整装置を設けられた車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットを開示する。調整装置は、少なくとも三対のねじおよびナットを備え、各対は、ダンパの軸と平行に延びかつ離間している軸に沿って延びている。明らかに、そのような解決策は、かなり複雑で高価であり、特に、非常に大きな空間を、特に径方向に、占める。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述された先行技術に対して改善された車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットを提供することである。具体的には、専用の回転防止手段を使用する必要なく、ダンパに対してスプリングプレートが回転するのを避けることができ、製造するのに容易かつ安価で、特に径方向に、小さな大きさを有する車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、少なくとも初期段階で、ダンパ本体の外径から独立して設計できる、車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットを提供することである。
【0009】
これらの、および他の目的は、添付の独立請求項1に記載された特徴を有する車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットのおかげで、本発明により十分に実現される。
【0010】
発明の好適な実施形態は、従属請求項で定められ、その発明特定事項は、下記記載の不可分な部分を形成していると考えられる。
【0011】
つまり、本発明は、上記の類いの車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットを提供する着想に基づく。調整装置の運動変換機構のねじ及びナットダンパの軸に対して偏心して配置され、ねじの軸およびナットの軸は、ダンパの軸と同軸上にはないが特定の距離をあけて延びている。ダンパおよびスプリングプレートに対するねじ及びナットのそのような配置にすると、スプリングプレートがダンパに対して回転するのを本質的に防ぎ、したがって、専用の回転防止手段の使用を必要とすることなく、回転防止手段を提供する。専用の回転防止手段は、通常、懸架装置の性能に悪影響を及ぼす。さらに、ねじ及びナットがダンパの軸に対して偏心して配置されているため、それらの大きさは、少なくとも初期段階では、ダンパ本体の外寸に依存しない。したがって、同じ大きさのねじ及びナットを、ダンパ本体の外径が異なる複数の解決策に適用できる。
【0012】
本発明によると、調整装置は、ダンパの軸に沿って摺動できるようにダンパのシリンダの周りに配置され、スプリングプレートに剛結合され、運動変換機構のナットまたはねじを支える支持アームを導くように機能する、案内スリーブをさらに備える。当該案内スリーブのおかげで、ダンパの軸に対して偏心して配置された一つの単一ねじ及びナットの対を使用して、同時に、垂直荷重および横荷重を確実に適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して単なる非限定的な例として与えられている、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態による車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットの軸断面図である。
図2図2は、図1のダンパ及びばねユニットの調整装置の分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の明細書および特許請求の範囲において、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「垂直(vertical)」および「水平(horizontal)」などのような用語は、車両へのダンパ及びばねユニットの取付状態を言及するものとして意図されている。
【0016】
図面を参照すると、車両懸架装置用ダンパ及びばねユニットは、ダンパ10及びばね12を備える。ダンパとばねは両方とも、よく知られた部品であり、したがって、本明細書では詳細に記載および図示しない。本発明の記載に有用であるそのような部品の、特にダンパの、要素および一部のみが、本明細書で言及されるだろう。
【0017】
ダンパ10は、車輪支持部材(図示せず)または懸架アーム(図示せず)に結合されるように意図されたシリンダ14、およびシリンダ14内を摺動可能、かつシリンダ14の上端から突出し同軸上に延びるロッド16を有するピストン(図示せず)を備える。シリンダ14と、ロッド16を備えるピストンの両方は、周知の類いの部品である。シリンダ14の軸は、zで示され、シリンダ14に対するロッド16の伸縮運動の方向と一致する。軸zは、典型的には、垂直に、または垂直方向に対してわずかに傾いて向けられている。ロッド16は、上端で車両の本体(図示せず)に固定するように意図されている。
【0018】
ばね12は、円筒形状のコイルばねとして作られ、下端で、ダンパ10のシリンダ14の周囲に配置されたスプリングプレート18に置かれている。
【0019】
ダンパ及びばねユニットは、概して符号20で示す電気機械式調整装置をさらに備える。当該調整装置は、ダンパ10のシリンダ14に対するスプリングプレート18の垂直位置を、したがって、ばね12の下端の垂直位置を、制御して調整するように配置されている。調整装置20は、軸zに沿ってシリンダ14に対してばね12の下端の位置の調整ができるように、ダンパ10のシリンダ14とスプリングプレート18との間に介在されている。したがって、ばね12の下端の垂直位置を調整することで、例えば地面からの車両本体の高さを変更するために、または地面からの車両本体の高さを一定に保つために、車両荷重の変化に起因する高さの変化を相殺できる。
【0020】
調整装置20は、回転運動を生成するように配置された電気モータ22(図2にのみ示されている)と、電気モータ22によって発生した回転運動をスプリングプレート18の並進運動に変換するように配置されたねじ及びナット運動変換機構を基本的に備える。運動変換機構は、ねじ24、およびねじ24と係合するナット26を備える。説明されている実施形態において、ねじ24は、電気モータ22によって自身の回転軸(図1においてz’で示され、シリンダ14の軸と平行に延びている。)で回転されるように配置されている。一方、ナット26は、スプリングプレート18とともに移動するように駆動結合されている。それによって、電気モータ22の動作時、電気モータ22によってねじ24へと伝達された回転運動が、ナット26の並進運動、およびそれとともにスプリングプレート18の並進運動に変換される。
【0021】
しかしながら、代替的な解決策として、ねじの代わりに、ナットが電気モータによって駆動され、スプリングプレートがナットではなくねじとともに移動するように駆動結合されてもよい。
【0022】
電気モータ22は、ダンパ10のシリンダ14と駆動結合されている。具体的には、提案されている実施形態において、電気モータ22は、例えば溶接によってシリンダ14に固定されている下側支持アーム28によって支えられている。上述したように、電気モータ22によって発生した回転運動は、(直接または間接的に)運動変換機構のねじ24に伝達され、自身の回転軸z’中心にねじ24の回転を行う。提案されている実施形態のように、減速機構(示されていないが、周知の類いのものである)が電気モータ22とねじ24との間に配置されると好ましい。
【0023】
運動変換機構のねじ24は、その回転軸z’をダンパ10のシリンダ14の軸zと平行に配置されるが、軸zから所定の距離Dで離間される(図1参照)。つまり、ねじ24は、シリンダ14に、並びにばね12およびスプリングプレート18に偏心して配置されている。提案されている実施形態において、ねじ24は、アダプタ31によって支えられている。アダプタ31は、例えば摩擦軸受として作られたラジアル軸受30、および例えば転がり軸受として(具体的にはニードル軸受として)作られたアキシャル軸受32を通じて下側支持アーム28によって支持されている。アダプタ31は、電気モータ22からの回転運動を受けるように配置され、ねじ24とともに回転するために剛結合されている。
【0024】
運動変換機構のナット26は、上側支持アーム34によって支えられ、回転防止部材36によって当該アーム34に対して回転しないようにされている。本明細書に示されていない実施形態によると、ナット26は、上側支持アーム34とワンピース(一部品)で作られ、この場合、ナットは、任意の付加的な回転防止部材を必要とすることなく、本質的に上側支持アームに対して回転しないようにされている。
【0025】
スプリングプレート18は、上側支持アーム34と剛結合され、ねじ24が回転軸z’中心に回転されると、スプリングプレート18がダンパ10のシリンダ14の軸zに沿って上側支持アーム34とともに、したがって、ナット26とともに、動くことができる。
【0026】
スプリングプレート18は、例えば溶接によって、案内スリーブ38の上端に固定される。案内スリーブ38は、シリンダ14の周りに同軸上に配置され、シリンダ14に対して軸zに沿って摺動可能である。一方、上側支持アーム34は、案内スリーブ38の下端に固定される。案内スリーブ38および/または上側支持アーム34は、案内スリーブ38および上側支持アーム34が軸zに沿ってシリンダ14に対して移動したとき、案内スリーブ38および/または上側支持アーム34とシリンダ14との間の摺動摩擦を軽減するための耐摩擦ブッシュ40を設けられている。
【0027】
調整装置は、以下のように動作する。
【0028】
いずれかの方向への電気モータ22の回転がねじ24へ伝達されると、場合によっては減速機構を介して(存在する場合)、軸z’に沿ってナット26を上向きまたは下向きに移動させる。したがって、上側支持アーム34を通じて、ダンパ10のシリンダ14に対して軸zに沿って案内スリーブ38およびスプリングプレート18を上向きまたは下向きに移動させる。シリンダ14に対するばね12の下端の垂直位置は、したがって、変化する。
【0029】
適切な設計により、ねじ24とナット26の対の効率は、機構を不可逆的にするために、十分に低い値にされてもよい。この場合、したがって、電気モータ22に任意の制動トルクを与えることなく、例えば摩擦機構のような、調整装置の回転を妨げる付加的な装置を用いることなく、スプリングプレート18を任意の中間垂直位置に固定し続けることができる。
【0030】
上述されたもののような調整装置を使用すると、第一に、シリンダおよびスプリングプレートに対するねじおよびナットの偏心配置のおかげで、ダンパのシリンダに対するスプリングプレートの回転を妨げる、回転防止手段の使用を避けることができる。さらに、ねじ及びナット運動変換機構を使用すると、その不可逆性のおかげで、調整装置がその位置で動かないようにする付加的な機構の使用を避けることができる。最後に、調整装置は、非常にわずかな修正で、従来のダンパ及びばねユニットに容易に設置することができ、ねじ及びナット運動変換機構の大きさは、基本的にダンパのシリンダの外径とは無関係である。
【0031】
当然、本発明の原理を変化させず、添付の特許請求の範囲で定められているような発明の範囲から逸脱することなく、実施形態および構造的な詳細は、単なる非限定的な例によって記載され、説明されたものから大きく変化し得る。
図1
図2