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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】液晶ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20230613BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230613BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230613BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230613BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20230613BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L67/00
C08L83/07
C08K3/013
C08K5/1515
C08K7/02
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020531112
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2018086736
(87)【国際公開番号】W WO2019109595
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/594,603
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジアヨン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-075653(JP,A)
【文献】特開平01-163257(JP,A)
【文献】特開2000-239503(JP,A)
【文献】特開平06-287421(JP,A)
【文献】特開2008-231144(JP,A)
【文献】特開2009-280710(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1854184(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー、及び前記液晶ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量の超高分子量シロキサンポリマーを含み、前記シロキサンポリマーは約200,000グラム/モル以上の数平均分子量を有し、そしてビニルメチルシロキサン単位を含む、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の約20重量%~約80重量%を構成し、前記シロキサンポリマーが前記ポリマー組成物の約0.1重量%~約8重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマーが、骨格中に、式:
SiO(4-r/2)
(式中、Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、rは、1、2、又は3である)
を有するシロキサン単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記シロキサンポリマーが、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記シロキサンポリマーが、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物がシリカ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が粒状フィラーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記粒状フィラーが、前記液晶ポリマー100部あたり約10~約95重量部の量で存在する、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記粒状フィラーが、モース硬度スケールに基づいて約2以上の硬度値を有する、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記粒状フィラーが、約3:1以上のアスペクト比、及び約5マイクロメートル~約200マイクロメートルの平均直径を有するフレーク形状の粒子を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記フレーク形状の粒子がマイカを含む、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記粒状フィラーが、約0.1~約10マイクロメートルの平均直径を有する顆粒状粒子を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記顆粒状粒子が硫酸バリウムを含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記粒状フィラーがフッ素化添加剤を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
強化繊維を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記強化繊維がガラス繊維を含む、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記耐衝撃性改良剤がエポキシ官能化オレフィンコポリマーを含む、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
帯電防止フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記帯電防止フィラーがイオン液体を含む、請求項19に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記ポリマー組成物が、ISO試験No.11443:2005にしたがって、1000秒-1の剪断速度及び前記組成物の融点よりも15℃高い温度において求めて約2~約60Pa・秒の溶融粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
前記組成物が、UL94にしたがって求めて、0.4mmの厚さにおいてV0等級を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
前記組成物が、UL94にしたがって求めて、0.8mmの厚さにおいてV0等級を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下の動摩擦係数を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれかに記載のポリマー組成物を含む成形部品。
【請求項28】
請求項27に記載の成形部品を含む電気コネクタ。
【請求項29】
請求項27に記載の成形部品を含むカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]電気コンポーネントはしばしば、液晶性の熱可塑性樹脂から形成された成形部品を含む。電子産業に対する最近の要求においては、所望の性能及び省スペースを達成するためにかかるコンポーネントの寸法を減少させることが指示されている。1つのかかるコンポーネント電気コネクタであり、これは、外部コネクタ(例えば、電力又は通信のために使用される)、又は内部コネクタ(例えば、コンピュータディスクドライブ又はサーバ、インク印刷(link printed)配線板、ワイヤ、ケーブル、及び他のEEEコンポーネントにおいて使用される)であり得る。それらを使用する方法により、殆どの電気コンポーネントは、熱源、例えば電気加熱部材又は直火上へ部品が垂れたり及び糸曳きする危険性を最小にする幾つかの燃焼性基準を満たすことが要求される。残念ながら、成形プロセスを補助するために多くの従来の配合物において使用される内部滑剤は、かかる材料は部品の表面に移動する傾向があるので、垂れの危険性を増加させる可能性がある。この問題に対する1つの解決法は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような比較的高いレベルの垂れ防止添加剤を有する製品を製造することである。かかる添加剤は組成物の燃焼特性を改善することができるが、劣った機械特性及び熱特性(例えば流動性又は耐熱性)、及び流動性が犠牲になるなどの他の問題をしばしば引き起こす。
【背景技術】
【0002】
[0002]したがって、良好な燃焼特性を有することができ、更には良好な機械特性及び熱特性並びに流動性を維持することもできるポリマー組成物に対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種類の液晶ポリマー、及び液晶ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量の超高分子量シロキサンポリマーを含むポリマー組成物が開示される。シロキサンポリマーは、約100,000グラム/モル以上の数平均分子量を有する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
[0004]下記において本発明の他の特徴及び態様をより詳細に示す。
[0005]本議論は例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定するものとは解釈されないことが当業者に理解される。
【0005】
[0006]一般的に言えば、本発明は、液晶ポリマーをシロキサンポリマーと組み合わせて含むポリマー組成物に関する。シロキサンポリマーは一般に本質的に疎水性であり、これにより、組成物を成形部品に成形する際にそれを有効な滑剤として作用させることが可能である。例えば、得られるポリマー組成物は、組成物を含む部品の使用中にスキン層が剥離する程度を最小にする低い度合いの表面摩擦を達成することができる。例えば、本ポリマー組成物は、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下、幾つかの実施形態においては約0.4以下、幾つかの実施形態においては約0.35以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約0.3の動摩擦係数を示すことができる。また、摩耗深さは、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約200マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約100マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約70マイクロメートルであり得る。シロキサンポリマーはまた、約100,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約200,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約500,000グラム/モル~約2,000,000グラム/モルの数平均分子量のような超高分子量も有する。その高い分子量のために、シロキサンポリマーは、ポリマー組成物の表面に移動又は拡散する減少した傾向を示すことができる。これにより相分離を最小にして、それにより所望の程度の潤滑を組成物に依然として与えながら、機械特性を向上させることができる。
【0006】
[0007]本ポリマー組成物は、例えば、約20~約500MPa、幾つかの実施形態においては約50~約400MPa、幾つかの実施形態においては約60~約350MPaの引張り強さ;約1%以上、幾つかの実施形態においては約1.5%~約15%、幾つかの実施形態においては約2%~約10%の引張破断歪み;及び/又は約5,000MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約7,000MPa~約18,000MPa、幾つかの実施形態においては約8,000MPa~約12,000MPaの引張弾性率を示すことができる。引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。また、本組成物は、約40~約500MPa、幾つかの実施形態においては約60~約400MPa、幾つかの実施形態においては約80~約250MPaの曲げ強さ;及び/又は約5,000MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約7,000MPa~約18,000MPa、幾つかの実施形態においては約8,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率を示することができる。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM D790-10と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。また、本組成物は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256、方法Bと技術的に同等)にしたがって23℃において測定して、約約3kJ/m以上、幾つかの実施形態においては約4~約50kJ/m、幾つかの実施形態においては約5~約30kJ/mのシャルピーノッチ付き衝撃強さを示すことができる。更に、本組成物は、ASTM D648-07(ISO試験No.75-2:2013と技術的に同等)にしたがって0.45又は1.8MPaの規定荷重において測定して約180℃以上、幾つかの実施形態においては約190℃~約300℃の荷重撓み温度(DTUL)を示すことができる。また、本部品のロックウェル硬さは、ASTM D785-08(スケールM)にしたがって求めて約25以上、幾つかの実施形態においては約30以上、幾つかの実施形態においては約35~約80であり得る。
【0007】
[0008]本発明者らはまた、本ポリマー組成物は、部品に成形される際に寸法的に安定なままに維持することができ、したがって、比較的低い程度の反りを示すことも見出した。反りの程度は、下記においてより詳細に記載する試験によって求めて低い「平坦度値」によって特徴付けることができる。より特には、本ポリマー組成物は、約2.0ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約1.5ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約1.0ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては0.1~約0.9ミリメートルの平坦度値を示すことができる。試験片(例えば80mm×80mm×1mm)の平坦度値は、OGP Smartscope Quest 300光学測定システムを用いて測定することができる。XYZ測定は、5、22.5、50、57.5、及び75mmに対応するX及びYの値から開始して、試験片を横切ってとることができる。Z値は、最小Z値がゼロの高さに対応するように正規化することができる。平坦度値は、25の正規化されたZ値の平均として計算することができる。
【0008】
[0009]良好な機械特性を有することに加えて、本組成物はまた、従来の難燃剤が存在しない場合であっても良好な難燃性を示すことができる。組成物の難燃性は、例えば、「プラスチック材料の燃焼性に関する試験、UL94」と題されたUnderwriter's Laboratory Bulletin 94の手順にしたがって求めることができる。下記においてより詳細に記載するように、消火までの時間(総燃焼時間)及び垂れに抵抗する能力に基づいて、幾つかの等級を適用することができる。この手順によると、例えば本発明の組成物から形成された成形部品はV0等級を達成することができ、これは、部品が、与えられた部品の厚さ(例えば、0.25mm、0.4mm、0.8mm、又は1.6mm)において求めて、50秒以下の総燃焼時間、及び0の綿を発火させる燃焼粒子の垂れの総数を有することを意味する。例えば、直火に曝した場合、本発明の組成物から形成された成形部品は、約50秒以下、幾つかの実施形態においては約45秒以下、幾つかの実施形態においては約1~約40秒の総燃焼時間を示すことができる。更に、UL94試験中に生成する燃焼粒子の垂れの総数は、3以下、幾つかの実施形態においては2以下、幾つかの実施形態においては1以下(例えば0)であり得る。かかる試験は、23℃及び50%の相対湿度において48時間コンディショニングした後に行うことができる。
【0009】
[0010]勿論、本組成物はまた、特に上記で議論したように帯電防止フィラーをポリマー組成物内に含ませた場合に、優れた帯電防止挙動を示すことができる。かかる帯電防止挙動は、IEC-60093にしたがって求めて比較的低い表面及び/又は体積抵抗率によって特徴付けることができる。例えば、本組成物は、約1×1015Ω以下、幾つかの実施形態においては約1×1014Ω以下、幾つかの実施形態においては約1×1010Ω~約9×1013Ω、幾つかの実施形態においては約1×1011~約1×1013Ωの表面抵抗率を示すことができる。更に、本成形部品はまた、約1×1015Ω・m以下、幾つかの実施形態においては約1×10Ω・m~約9×1014Ω・m、幾つかの実施形態においては約1×1010~約5×1014Ω・mの体積抵抗率を示すことができる。勿論、かかる帯電防止挙動は決して必須ではない。例えば、幾つかの実施形態においては、本組成物は、約1×1015Ω以上、幾つかの実施形態においては約1×1016Ω以上、幾つかの実施形態においては約1×1017Ω~約9×1030Ω、幾つかの実施形態においては約1×1018~約1×1026Ωのような比較的高い表面抵抗率を示し得る。
【0010】
[0011]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物:
A.液晶ポリマー:
[0012]液晶ポリマーは、通常はポリマー組成物の約20重量%~約80重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約75重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約70重量%を構成する。液晶ポリマーは、一般に、棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。このポリマーは、約250℃~約400℃、幾つかの実施形態においては約280℃~約390℃、幾つかの実施形態においては約300℃~約380℃のような比較的高い融点を有する。かかるポリマーは、当該技術において公知なように、1以上のタイプの繰り返し単位から形成することができる。液晶ポリマーには、例えば、通常はポリマーの約60モル%~約99.9モル%、幾つかの実施形態においては約70モル%~約99.5モル%、幾つかの実施形態においては約80モル%~約99モル%の量の1つ以上の芳香族エステル繰り返し単位を含ませることができる。芳香族エステル繰り返し単位は、一般に次式(I):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
環Bは、置換又は非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレン又は1,3-フェニレン)、置換又は非置換の5又は6員アリール基に縮合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、或いは置換又は非置換の5又は6員アリール基に結合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
及びYは、独立して、O、C(O)、NH、C(O)HN、又はNHC(O)である)
によって表すことができる。
【0013】
[0013]通常は、Y及びYの少なくとも1つはC(O)である。かかる芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y及びYはC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、YはOであり、YはC(O)である)、並びにこれらの種々の組み合わせを挙げることができる。
【0014】
[0014]例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族ジカルボン酸繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TA)、イソフタル酸(IA)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、及び/又はNDA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約5モル%~約45モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約35%を構成する。
【0015】
[0015]また、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸等、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を用いることもできる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。用いる場合には、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBA及び/又はHNA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約1モル%~約85モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約80モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約75%を構成する。
【0016】
[0016]また、ポリマー中において他の繰り返し単位を用いることもできる。例えば幾つかの実施形態においては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(又は4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジオールとしては、例えばヒドロキノン(HQ)及び4,4’-ビフェノール(BP)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジオール(例えばHQ及び/又はBP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約5モル%~約45モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約35%を構成する。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(APAP))、及び/又は芳香族アミン(例えば4-アミノフェノール(AP)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導されるもののような繰り返し単位を用いることもできる。用いる場合には、芳香族アミド(例えばAPAP)及び/又は芳香族アミン(例えばAP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態においては約0.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態においては約1モル%~約10%を構成する。また、種々の他のモノマー繰り返し単位をポリマー中に導入することができることも理解すべきである。例えば幾つかの実施形態においては、脂肪族又は脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどのような非芳香族モノマーから誘導される1以上の繰り返し単位をポリマーに含ませることができる。勿論、他の実施形態においては、ポリマーは、非芳香族(例えば脂肪族又は脂環式)モノマーから誘導される繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってよい。
【0017】
[0017]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及びナフテン系ジカルボン酸、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(NDA)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を最小含量で含む限りにおいて、「低ナフテン系」ポリマーであり得る。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、又はHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の総量は、通常はポリマーの30モル%以下、幾つかの実施形態においては約15モル%以下、幾つかの実施形態においては約10モル%以下、幾つかの実施形態においては約8モル%以下、幾つかの実施形態においては0モル%~約5モル%(例えば0モル%)である。高いレベルの従来のナフテン酸が存在しないにもかかわらず、得られる「低ナフテン系」ポリマーは、依然として良好な熱特性及び機械特性を示すことができると考えられる。
【0018】
[0018]1つの特定の実施形態においては、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)、並びにテレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)、並びに種々の他の随意的な成分から誘導される繰り返し単位から形成することができる。4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約1モル%~約80モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約75モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約70%を構成することができる。更に、テレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約5モル%~約45モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約35%を構成することができる。また、ポリマーの約5モル%~約45モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約35%の量の4,4’-ビフェノール(BP)及び/又はヒドロキノン(HQ)から誘導される繰り返し単位を使用することもできる。他の可能な繰り返し単位としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)、及び/又はアセトアミノフェン(APAP)から誘導されるものを挙げることができる。例えば幾つかの実施形態においては、HNA、NDA、及び/又はAPAPから誘導される繰り返し単位は、用いる場合には、それぞれ約1モル%~約55モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約50モル%、幾つかの実施形態においては約3モル%~約35モル%を構成することができる。
【0019】
B.超高分子量シロキサンポリマー:
[0019]超高分子量シロキサンポリマーは、通常は組成物中において使用される1種類又は複数の液晶ポリマー100部あたり約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.5~約10部、幾つかの実施形態においては約1~約5部を構成する。例えば、かかるポリマーは、組成物の約0.1重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約6重量%、幾つかの実施形態においては約1重量%~約5重量%を構成することができる。シロキサンポリマーは、通常は、約10,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約30,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約50,000~約500,000センチストークスのような比較的高い動粘度を有していてよい。
【0020】
[0020]一般に、任意の種々のシロキサンポリマーをポリマー組成物中において使用することができる。シロキサンポリマーは、例えば、骨格中に、式:
SiO(4-r/2)
(式中、
Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、
rは、0、1、2又は3である)
を有するシロキサン単位を含む任意のポリマー、コポリマー、又はオリゴマーを包含し得る。
【0021】
[0021]好適な基Rの幾つかの例としては、例えば、場合によって置換されているアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニル、或いはシクロアルキル基が挙げられ、これらはヘテロ原子が介在していてもよく、すなわち炭素鎖又は環中に1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。好適なアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチル基、ヘキシル基(例えばn-ヘキシル)、ヘプチル基(例えばn-ヘプチル)、オクチル基(例えばn-オクチル)、イソオクチル基(例えば2,2,4-トリメチルペンチル基)、ノニル基(例えばn-ノニル)、デシル基(例えばn-デシル)、ドデシル基(例えばn-ドデシル)、オクタデシル基(例えばn-オクタデシル)などを挙げることができる。更に、好適なシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などを挙げることができ;好適なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基を挙げることができ;好適なアルキルアリール基としては、はo-、m-、又はp-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などを挙げることができ;好適なアルケニル又はアルキニル基としては、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニルなどを挙げることができる。置換炭化水素基の例は、ハロゲン化アルキル基(例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、及びペルフルオロヘキシルエチル)、及びハロゲン化アリール基(例えば、p-クロロフェニル、及びp-クロロベンジル)である。1つの特定の実施形態においては、シロキサンポリマーは、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基(例えばメチル基)、及び場合によってはSi原子の0.001~30モル%に結合したビニル及び/又はフェニル基を含む。シロキサンポリマーはまた、好ましくは主としてジオルガノシロキサン単位から構成される。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基、又はジメチルビニルシロキシ基であってよい。しかしながら、これらのアルキル基の1つ以上が、メトキシ又はエトキシ基のように、ヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されていることもあり得る。シロキサンポリマーの特に好適な例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、及びトリフルオロプロピルポリシロキサンが挙げられる。
【0022】
[0022]シロキサンポリマーはまた、ポリマーのシロキサンモノマー単位の少なくとも一部の上に、ビニル基、ヒドロキシル基、ヒドリド、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、及びオクタノイルオキシ)、ケトキシメート基(例えば、ジメチルケトキシム、メチルケトキシム、及びメチルエチルケトキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、及びブチルアミノ)、アミド基(例えば、N-メチルアセトアミド、及びN-エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノ-オキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシ、及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、及びメトキシプロポキシ)、アミノオキシ基(例えば、ジメチルアミノオキシ、及びジエチルアミノオキシ)、メルカプト基などの1以上のような反応性官能基を含んでいてもよい。
【0023】
[0023]所望であれば、シリカ粒子(例えばヒュームドシリカ)をシロキサンポリマーと組み合わせて用いて、組成物中に分散するその能力の向上を助けることもできる。かかるシリカ粒子は、例えば、約5ナノメートル~約50ナノメートルの粒径、約50平方メートル/グラム(m/g)~約600m/gの表面積、及び/又は約160キログラム/立方メートル(kg/m)~約190kg/mの密度を有していてよい。使用する場合には、シリカ粒子は、通常はシロキサンポリマー100重量部を基準とする重量基準で約1~約100部、幾つかの実施形態においては約20~約60部を構成する。一実施形態においては、シリカ粒子は、シロキサンポリマーと混合した後に、この混合物をポリマー組成物に加えることができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサン及びヒュームドシリカを含む混合物をポリマー組成物中に含ませることができる。かかる予め形成された混合物は、Wacker Chemie, AGからGenioplast(登録商標)ペレットSとして入手できる。
【0024】
C.粒状フィラー:
[0024]所望であれば、ポリマー組成物の特定の特性を向上させるために粒状フィラーを使用することができる。粒状フィラーは、ポリマー組成物中において使用される1種類又は複数の液晶ポリマー100部あたりの重量基準で約10~約95部、幾つかの実施形態においては約15~約90部、幾つかの実施形態においては約20~約85部の量でポリマー組成物中において使用することができる。例えば、粒状フィラーは、ポリマー組成物の約5重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約12重量%~約50重量%を構成し得る。
【0025】
[0025]幾つかの実施形態においては、特定の硬度値を有する粒子を使用して、組成物の表面特性を改良するのを助けることができる。例えば、硬度値は、モース硬度スケールに基づいて、約2以上、幾つかの実施形態においては約2.5以上、幾つかの実施形態においては約3~約11、幾つかの実施形態においては約3.5~約11、幾つかの実施形態においては約4.5~約6.5であってよい。かかる粒子の例としては、例えば、マイカ(例えば約3のモース硬度);炭酸カルシウム(CaCO;3.0のモース硬度)、又は炭酸水酸化銅(CuCO(OH);4.0のモース硬度)のような炭酸塩;フッ化カルシウム(CaFI;4.0のモース硬度)のようなフッ化物;ピロリン酸カルシウム(Ca;5.0のモース硬度)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO;3.5のモース硬度)、又は水和リン酸アルミニウム(AlPO・2HO;4.5のモース硬度)のようなリン酸塩;ホウケイ酸水酸化カルシウム(CaSiO(OH);3.5のモース硬度)のようなホウ酸塩;アルミナ(AlO;10.0のモース硬度);硫酸カルシウム(CaSO;3.5のモース硬度)、又は硫酸バリウム(BaSO;3~3.5のモース硬度)のような硫酸塩など、並びにこれらの組合せを挙げることができる。
【0026】
[0026]粒子の形状は、所望に応じて変化させることができる。例えば、幾つかの実施形態においては、約3:1以上、幾つかの実施形態においては約10:1以上、幾つかの実施形態においては約20:1以上、幾つかの実施形態においては約40:1~約200:1のような比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで割ったもの)を有するフレーク形状の粒子を使用することができる。粒子の平均直径は、例えばISO-13320:2009にしたがうレーザー回折技術を用いて(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)求めて約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約30マイクロメートル~約150マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約50マイクロ~約120マイクロメートルの範囲であってよい。好適なフレーク形状の粒子は、マイカ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪灰石などのような天然及び/又は合成シリケート鉱物から形成することができる。例えば、マイカが特に好適である。一般に、例えば、モスコバイト(KAl(AlSi)O10(OH))、バイオタイト(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、フロゴパイト(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2~3(AlSi)O10(OH))、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))などをはじめとする任意の形態のマイカを使用することができる。顆粒状粒子を使用することもできる。通常は、かかる粒子は、ISO-13320:2009にしたがうレーザー回折技術を用いて(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)求めて約0.1~約10マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.2~約4マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.5~約2マイクロメートルの平均直径を有する。特に好適な顆粒状フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0027】
[0027]粒状フィラーは、主としてか又は完全に、フレーク形状の粒子(例えばマイカ)又は顆粒状粒子(例えば硫酸バリウム)のような1つのタイプの粒子から形成することができる。すなわち、かかるフレーク状又は顆粒状の粒子は、粒状フィラーの約50重量%以上、幾つかの実施形態においては約75重量%以上(例えば100重量%)を構成することができる。勿論、他の実施形態においては、フレーク形状の粒子と顆粒状の粒子を組み合わせて使用することもできる。かかる実施形態においては、例えば、フレーク形状の粒子は、粒状フィラーの約0.5重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約1重量%~約10重量%を構成することができ、一方、顆粒状粒子は、粒状フィラーの約80重量%~約99.5重量%、幾つかの実施形態においては約90重量%~約99重量%を構成する。
【0028】
[0028]所望であれば、粒子はまた、フッ素化添加剤で被覆して、より良好な金型充填、内部潤滑、離型などを与えることなどによって、組成物の加工を向上させるのを助けることもできる。フッ素化添加剤としては、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭化水素骨格ポリマーを含むフルオロポリマーを挙げることができる。骨格ポリマーはポリオレフィン性であって、フッ素置換の不飽和オレフィンモノマーから形成することができる。フルオロポリマーは、かかるフッ素置換モノマーのホモポリマー、或いは複数のフッ素置換モノマー又はフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物のコポリマーであってよい。フッ素原子と共に、フルオロポリマーはまた、塩素及び臭素原子のような他のハロゲン原子で置換されていてもよい。本発明において使用するためのフルオロポリマーを形成するのに好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルなど、並びにそれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
D.強化繊維:
[0029]一般に、ポリマー繊維、金属繊維、炭素質繊維(例えば、黒鉛、炭化物など)、無機繊維など、及びそれらの組み合わせのような任意の種々の異なるタイプの強化繊維を本発明のポリマー組成物中において使用することができる。ガラスから誘導されるもの;チタネート(例えば、チタン酸カリウム);ネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケートのようなシリケート(例えば、珪灰石のようなカルシウムイノシリケート;トレモライトのようなカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトのようなカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトのようなマグネシウム鉄イノシリケート;など)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトのようなアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムのような硫酸塩(例えば、脱水又は無水石膏);ミネラルウール(例えば、ロックウール又はスラグウール);などのような無機繊維が特に好適であり得る。E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラスなど、及びこれらの混合物から形成されるもののようなガラス繊維が、本発明において用いるのに特に好適であり得る。所望ならば、強化繊維に、当該技術において公知のサイジング剤又は他の被覆を与えることができる。選択される特定のタイプにかかわらず、繊維は、得られるポリマー組成物の加工性を増大させるために比較的低い弾性率を有していてよい。繊維は、例えば、ASTM C1557-14にしたがって求めて約76GPa未満、幾つかの実施形態においては約75GPa未満、幾つかの実施形態においては約10~約74GPaのヤング弾性率を有していてよい。
【0030】
[0030]繊維の断面積は、所望に応じて変化させることができる。例えば幾つかの実施形態においては、繊維は、本質的に概して対称(例えば、正方形、円形など)で、アスペクト比が約0.8~約10、幾つかの実施形態においては約2~約8、及び幾つかの実施形態においては約3~約5であってよい。アスペクト比は、繊維の断面幅(すなわち、長軸方向)を繊維の断面厚さ(すなわち、短軸方向)で割ることによって求められる。しかしながら、他の実施形態においては、約1.5~約10、幾つかの実施形態においては約2~約8、幾つかの実施形態においては約3~約5のアスペクト比を有するという点で、比較的平坦な断面寸法を有する繊維を使用することが望ましい場合がある。かかる繊維の形状は、楕円形、長方形、1以上の丸みを帯びた角部を有する長方形などの形態であってよい。特定の形状にかかわらず、繊維の断面幅は、約1~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約5~約45マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約35マイクロメートルであってよい。繊維はまた、約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートルの厚さを有していてよい。断面の厚さ及び/又は幅は、断面全体にわたって均一である必要はないことを理解すべきである。かかる状況においては、断面幅は繊維の長軸に沿った最大寸法とみなされ、断面厚さは短軸に沿った最大寸法とみなされる。例えば、楕円形の繊維に関する断面厚さは、楕円の短径である。
【0031】
[0031]強化繊維はまた、狭い寸法分布を有していてもよい。すなわち、繊維の少なくとも約60体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約80体積%が、上記の範囲内の幅及び/又は厚さを有していてよい。繊維は、約1~約15ミリメートル、幾つかの実施形態においては約2~約6ミリメートルの長さを有するもののようなエンドレスファイバー又はチョップドファイバーであってよい。他の実施形態においては、約10~約500マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約50~約300マイクロメートルの長さを有するもののようなミルドファイバーを使用することができる。繊維の寸法(例えば、長さ、幅、及び厚さ)は、公知の光学顕微鏡技術を使用して求めることができる。
【0032】
[0032]使用する場合、強化繊維の量は、流動性と良好な機械特性の所望の組み合わせを達成するように選択的に制御することができる。強化繊維は、例えば、ポリマー組成物中において使用される1種類又は複数の液晶ポリマー100重量部あたり約10~約80部、幾つかの実施形態においては約20~約70部、幾つかの実施形態においては約30~約60部の量で使用することができる。強化繊維は、例えば、ポリマー組成物の約5重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約15重量%~約40重量%を構成することができる。
【0033】
E.流動性調整剤:
[0033]本組成物は、組成物の他の特性を犠牲にすることなく低い溶融粘度を達成するのを助ける流動性調整剤の存在下で、液晶ポリマー及び/又はシロキサンポリマーを溶融加工することによって形成することができる。かかる流動性調整剤は、通常は1種類又は複数の液晶ポリマー100重量部に対する重量基準で約0.05~約5部、幾つかの実施形態においては約0.1~約1部、幾つかの実施形態においては約0.2~約1部の量で存在する。例えば、流動性調整剤は、ポリマー組成物の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約3重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約1重量%を構成することができる。
【0034】
[0034]流動性調整剤は、通常は1以上の官能基(例えば、ヒドロキシル、カルボキシルなど)を含む化合物である。「官能性」という用語は、一般に、化合物が少なくとも1つの官能基(例えば、カルボキシル、ヒドロキシルなど)を含むか、又は溶媒の存在下でかかる官能基を有することができることを意味する。本発明において使用される官能性化合物は、単官能性、二官能性、三官能性などであってもよい。化合物の総分子量は、ポリマー組成物のための流動性調整剤として効果的に機能することができるように、比較的低い。化合物は、通常は約2,000グラム/モル以下、幾つかの実施形態においては約25~約1,000グラム/モル、幾つかの実施形態においては約50~約500グラム/モル、幾つかの実施形態においては約100~約400グラム/モルの分子量を有する。
【0035】
[0035]一般に、任意の種々の官能性化合物を使用することができる。幾つかの実施形態においては、一般式;M(OH)s(式中、sは酸化状態(通常は1~3)であり、Mは、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は典型金属のような金属である)を有する金属水酸化物化合物を使用することができる。理論によって限定されることは意図しないが、かかる化合物は、プロセス条件(例えば高温)下で水を効果的に「失う」ことができ、これが溶融粘度の低下を助けることができると考えられる。好適な金属水酸化物の例としては、水酸化銅(II)(Cu(OH))、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))などを挙げることができる。水のような溶媒の存在下でヒドロキシル官能基を形成することができる金属アルコキシド化合物も好適である。かかる化合物は、一般式:M(OR)s(式中、sは酸化状態(通常は1~3)であり、Mは金属であり、Rはアルキルである)を有していてよい。かかる金属アルコキシドの例としては、銅(II)エトキシド(Cu2+(CHCH)、カリウムエトキシド(K(CHCH))、ナトリウムエトキシド(Na(CHCH))、マグネシウムエトキシド(Mg2+(CHCH)、カルシウムエトキシド(Ca2+(CHCH)など;アルミニウムエトキシド(Al3+(CHCH)などを挙げることができる。金属水酸化物の他に、通常は式:MA・xHO(式中、Mは金属カチオンであり、Aはアニオンであり、xは1~20、幾つかの実施形態においては2~10である)によって表される金属塩水和物を使用することもできる。かかる水和物の具体例としては、例えば、CaCl・HO、ZnCl・4HO、CoCl・6HO、CaSO・2HO、MgSO・7HO、CuSO・5HO、NaSO・10HO、NaCO・10HO、Na・10HO、及びBa(OH)・8HOを挙げることができる。
【0036】
F.耐衝撃性改良剤:
[0036]所望であれば、ポリマー組成物中において耐衝撃性改良剤を使用して、ポリマー組成物の衝撃強さ及び柔軟性を向上させるのを助けることもできる。実際、耐衝撃性改良剤は実際に成形部品の表面をより滑らかにし、使用中にスキン層がそれから剥離する可能性を最小にすることができる。使用する場合には、耐衝撃性改良剤は、通常はポリマー組成物中において使用される1種類又は複数の液晶ポリマー100部あたりの重量基準で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.2~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。例えば、耐衝撃性改良剤は、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約4重量%を構成し得る。
【0037】
[0037]1つの特に好適なタイプの耐衝撃性改良剤としては、例えば、平均で分子あたり2以上のエポキシ官能基を含むという点で「エポキシ官能化されている」オレフィンコポリマーを挙げることができる。コポリマーは、一般に、1種類以上のα-オレフィンから誘導されるオレフィンモノマー単位を含む。かかるモノマーの例としては、例えば、2~20個の炭素原子、通常は2~8個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝α-オレフィンが挙げられる。具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、又はジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。特に望ましいα-オレフィンモノマーは、エチレン及びプロピレンである。コポリマーはまた、エポキシ官能性モノマー単位を含んでいてもよい。かかる単位の一例は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分である。本明細書において使用する「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩又はエステル、例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマーを包含する。例えば、好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのような1,2-エポキシ基を含むものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート、及びグリシジルイタコネート(itoconate)が挙げられる。また、他の好適なモノマーを用いて、所望の分子量を達成するのを助けることもできる。
【0038】
[0038]もちろん、コポリマーは当該技術において公知の他のモノマー単位を含んでいてもよい。例えば、他の好適なモノマーとしては、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。かかる(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、i-アミルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、i-アミルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリル酸など、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば1つの特定の実施形態においては、コポリマーは、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分、α-オレフィンモノマー成分、及び非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分から形成されるターポリマーであってよい。コポリマーは、例えば、下記の構造:
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、x、y、及びzは1以上である)
を有するポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)であってよい。
【0041】
[0039]1つ又は複数のモノマー成分の相対割合は、エポキシ反応性とメルトフローレートの間のバランスを達成するように選択することができる。より詳しくは、高いエポキシモノマー含量はマトリクスポリマーとの良好な反応性をもたらすことができるが、含量が過度に高いと、コポリマーがポリマーブレンドの溶融強度に悪影響を与える程度までメルトフローレートが減少する可能性がある。したがって、殆どの実施形態において、1種類又は複数のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、コポリマーの約1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約15重量%、幾つかの実施形態においては約3重量%~約10重量%を構成する。また、1種類又は複数のα-オレフィンモノマーは、コポリマーの約55重量%~約95重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約65重量%~約85重量%を構成し得る。用いる場合には、他のモノマー成分(例えば非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)は、コポリマーの約5重量%~約35重量%、幾つかの実施形態においては約8重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約25重量%を構成し得る。得られるメルトフローレートは、通常は、ASTM D1238-13にしたがって2.16kgの荷重及び190℃の温度において求めて、約1~約30グラム/10分(g/10分)、幾つかの実施形態においては約2~約20g/10分、幾つかの実施形態においては約3~約15g/10分である。
【0042】
[0040]本発明において用いることができる好適なエポキシ官能化コポリマーの1つの例は、ArkemaからLOTADER(登録商標)AX8840の名称で商業的に入手できる。LOTADER(登録商標)AX8840は、例えば5g/10分のメルトフローレートを有し、8重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。他の好適なコポリマーは、DuPontからELVALOY(登録商標)PTWの名称で商業的に入手でき、これはエチレン、ブチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10分のメルトフローレート、及び4重量%~5重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。
【0043】
G.帯電防止フィラー:
[0041]また、ポリマー組成物中において帯電防止フィラーを用いて、成形操作、輸送、回収、組立などの間において静電荷を生成する傾向の減少を助けることもできる。かかるフィラーは、用いる場合には、通常はポリマー組成物中において用いる1種類又は複数の液晶ポリマー100部あたりの重量基準で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.2~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。例えば、帯電防止フィラーは、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.4重量%~約3重量%を構成し得る。
【0044】
[0042]一般に、任意の種々の帯電防止フィラーをポリマー組成物中において用いて、その帯電防止特性の向上を助けることができる。好適な帯電防止フィラーの例としては、例えば、金属粒子(例えばアルミニウムフレーク)、金属繊維、炭素粒子(例えば、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラックなど)、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを挙げることができる。炭素繊維及び炭素粒子(例えば黒鉛)が特に好適である。用いる場合には、好適な炭素繊維としては、ピッチベースの炭素(例えばタールピッチ)、ポリアクリロニトリルベースの炭素、金属被覆炭素などを挙げることができる。望ましくは、炭素繊維は、それらが比較的高い炭素含量、例えば約85重量%以上、幾つかの実施形態においては約90重量%以上、幾つかの実施形態においては約93重量%以上の炭素含量を有するという点で高い純度を有する。例えば、炭素含量は、少なくとも約94重量%、例えば少なくとも約95%重量%、例えば少なくとも約96重量%、例えば少なくとも約97重量%、例えば更には少なくとも約98重量%であってよい。炭素純度は、一般に100重量%未満、例えば約99重量%未満である。炭素繊維の密度は、通常は約0.5~約3.0g/cm、幾つかの実施形態においては約1.0~約2.5g/cm、幾つかの実施形態においては約1.5~約2.0g/cmである。
【0045】
[0043]一実施形態においては、炭素繊維は繊維の破断を最小にしてマトリクス中に導入する。成形後の繊維の体積平均長さは、一般に、約3mmの初期長さを有する繊維を用いる場合であっても約0.1mm~約1mmにすることができる。また、炭素繊維の平均長さ及び分布も、液晶ポリマーマトリクス内においてより良好な接続及び電気流路を達成するように、最終ポリマー組成物中において選択的に制御することができる。繊維の平均直径は、約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートルであってよい。
【0046】
[0044]ポリマーマトリクス内における分散を向上させるために、炭素繊維は、炭素繊維と液晶ポリマーとの適合性を増加させるサイジング剤で少なくとも部分的に被覆することができる。サイジング剤は、安定で、液晶ポリマーを成形する温度において熱分解しないものであってよい。一実施形態においては、サイジング剤に芳香族ポリマーのようなポリマーを含ませることができる。例えば、芳香族ポリマーは、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高い熱分解温度を有していてよい。本明細書において用いる材料の熱分解温度とは、ASTM試験E-1131(又はISO試験11358)にしたがって求めて、材料が熱重量分析中にその質量の5%を損失する温度である。サイジング剤はまた、比較的高いガラス転移温度も有していてよい。例えば、サイジング剤のガラス転移温度は、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高くてよい。サイジング剤の特定の例としては、ポリイミドポリマー、全芳香族ポリエステルポリマーなどの芳香族ポリエステルポリマー、及び高温エポキシポリマーが挙げられる。一実施形態においては、サイジング剤に液晶ポリマーを含ませることができる。サイジング剤は、少なくとも約0.1重量%の量、例えば少なくとも0.2重量%の量、例えば少なくとも約0.1重量%の量で繊維上に存在させることができる。サイジング剤は、一般に約5重量%未満の量、例えば約3重量%未満の量で存在する。
【0047】
[0045]他の好適な帯電防止フィラーはイオン液体である。かかる材料の1つの利益は、イオン液体はまた、帯電防止剤であることに加えて溶融加工中に液体形態で存在することができ、これによりポリマーマトリクス内により均一にブレンドすることが可能であることである。これにより導電性が向上し、それによって組成物がその表面から静電荷を速やかに消散させる能力が増大する。
【0048】
[0046]イオン液体は、一般に、液晶ポリマーと一緒に溶融加工する際に液体の形態であることができるのに十分に低い融点を有する塩である。例えば、イオン液体の融点は、約400℃以下、幾つかの実施形態においては約350℃以下、幾つかの実施形態においては約1℃~約100℃、幾つかの実施形態においては約5℃~約50℃であってよい。塩は、カチオン種及び対イオンを含む。カチオン種は、「カチオン中心」として少なくとも1つのヘテロ原子(例えば窒素又はリン)を有する化合物を含む。かかるヘテロ原子化合物の例としては、例えば次の構造:
【0049】
【化3】
【0050】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素;置換又は非置換のC~C10アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルなど);置換又は非置換のC~C14シクロアルキル基(例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘキセニルなど);置換又は非置換のC~C10アルケニル基(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレンなど);置換又は非置換のC~C10アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニルなど);置換又は非置換のC~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなど);置換又は非置換のアシルオキシ基(例えば、メタクリロキシ、メタクリロキシエチルなど);置換又は非置換のアリール基(例えばフェニル);置換又は非置換のヘテロアリール基(例えば、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、キノリルなど);などからなる群から選択される)
を有する第4級オニウムが挙げられる。例えば1つの特定の実施形態においては、カチオン種は、構造:N(式中、R、R、及び/又はRは、独立してC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、ブチルなど)であり、Rは、水素又はC~Cアルキル基(例えばメチル又はエチル)である)を有するアンモニウム化合物であってよい。例えば、カチオン成分は、トリブチルメチルアンモニウム(R、R、及びRはブチルであり、Rはメチルである)であってよい。
【0051】
[0047]カチオン種に対する好適な対イオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素など);スルフェート又はスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、ハイドロジェンスルフェート、メタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルスルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルエトキシスルフェートなど);スルホスクシネート;アミド(例えばジシアンアミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミドなど);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレートなど);ホスフェート又はホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェートなど);アンチモネート(例えばヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えばテトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエートなど);シアネート;アセテート;など、並びに上記の任意のものの組み合わせを挙げることができる。液晶ポリマーとの相溶性の向上を助けるために、イミド、脂肪酸カルボキシレートなどのような実質的に概して疎水性の対イオンを選択することが望ましい可能性がある。特に好適な疎水性対イオンとしては、例えば、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメチル)イミドを挙げることができる。
【0052】
H.他の添加剤:
[0048]滑剤、熱伝導性フィラー、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止剤、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料のような広範囲の更なる添加剤をポリマー組成物中に含ませることもできる。
【0053】
II.形成:
[0049]液晶ポリマー、シロキサンポリマー、及び他の随意的な添加剤は、一緒に溶融加工又はブレンドすることができる。これらの成分は、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って、供給セクション及び供給セクションの下流に配置される溶融セクションを画定することができる押出機に、別々か又は組み合わせて供給することができる。押出機は一軸又は二軸押出機であってよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、約50~約800の毎分回転数(rpm)、幾つかの実施形態においては約70~約150rpm、幾つかの実施形態においては約80~約120rpmの範囲にすることができる。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態においては約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態においては約800秒-1~約1200秒-1の範囲にすることができる。みかけ剪断速度は、4Q/πR(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(m/秒)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(m)である)に等しい。
【0054】
[0050]それを形成する特定の方法には関係なく、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有することができる。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、1000秒-1の剪断速度、及び組成物の融点(例えば350℃)よりも15℃高い温度において求めて約0.5~約200Pa・秒、幾つかの実施形態においては約1~約100Pa・秒、幾つかの実施形態においては約20~約60Pa・秒、幾つかの実施形態においては約3~約40Pa・秒の溶融粘度を有し得る。
【0055】
III.成形部品:
[0051]約10ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約5ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約1~約4ミリメートル(例えば3ミリメートル)のような広範囲の厚さを有する成形部品を、ポリマー組成物から形成することができる。成形部品は、種々の異なる技術を使用して形成することができる。好適な技術としては、例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、フォーム射出成形、低圧ガス射出成形、低圧フォーム射出成形、ガス押出圧縮成形、フォーム押出圧縮成形、押出成形、フォーム押出成形、圧縮成形、フォーム圧縮成形、ガス圧縮成形などを挙げることができる。例えば、その中にポリマー組成物を射出することができる金型を含む射出成形システムを使用することができる。射出機内部の時間は、ポリマーマトリクスが早期に固化しないように制御及び最適化することができる。サイクル時間に達して、バレルが排出のために満杯になった時点で、ピストンを使用して組成物を金型キャビティに射出することができる。圧縮成形システムを使用することもできる。射出成形と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は任意の公知の技術を使用して、例えば自動化ロボットアームによって取り上げることによって圧縮金型中に配置することができる。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間、ポリマーマトリクスの固化温度以上に維持することができる。次に、成形品を融点より低い温度にすることによって、成形品を固化させることができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形プロセスのサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合するように、十分な結合を達成するように、及びプロセス全体の生産性を高めるように調整することができる。
【0056】
[0052]また、本発明のポリマー組成物から広範囲のタイプの部品を形成することもできる。例えば、電気コネクタ又はカメラモジュールのような電子コンポーネントに部品を含ませることができる。かかる電子コンポーネント(例えば、コネクタ、カメラモジュールなど)を含ませることができる製品の例としては、例えば、携帯電話、ラップトップコンピューター、小型ポータブルコンピューター(例えば超軽量型コンピューター、ネットブックコンピューター、及びタブレットコンピューター)、腕時計型機器、ペンダント型機器、ヘッドホン又はイヤホン型機器、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、携帯型コンピューター(時には携帯情報端末とも呼ばれる)、リモートコントローラー、全地球測位システム(GPS)機器、携帯ゲーム機器、バッテリーカバー、スピーカー、カメラモジュール、集積回路(例えばSIMカード)、電子機器用のハウジング、電気制御装置、回路遮断器、スイッチ、パワーエレクトロニクス、プリンター部品などを挙げることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、無線通信機器(例えば携帯電話)において通常的に用いられているもののようなカメラモジュールにおいて用いることができる。例えば、カメラモジュールは、ベース、ベース上に載置された支持材アセンブリ、支持材アセンブリ上に載置されたカバーなどを用いることができる。ベースは、約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約20~約400マイクロメートルの厚さを有していてよい。更に、支持材アセンブリは、約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約20~約400マイクロメートルの壁厚を有していてよい。
【実施例
【0057】
[0053]本発明は以下の実施例を参照することにより、より良く理解することができる。
試験方法:
[0054]UL94:試験片を垂直位置に支持し、試験片の底部から炎を接炎する。炎を10秒間接炎した後、燃焼が止まるまで取り外し、その時点において炎を更に10秒間接炎した後に取り外す。5個の試験片の2つの組を試験する。試料寸法は、125mmの長さ、13mmの幅、及び4又は0.8mmの厚さである。23℃及び50%の相対湿度において48時間コンディショニングした後に、それぞれの厚さを試験する。
【0058】
【表1-1】
【0059】
[0055]摩擦及び摩耗:
摩擦及び摩耗: SSP-03機を使用し、VDA 230-206:2007(スティックスリップ試験)にしたがって求める平均動摩擦係数(無次元)によって、試料によって発生する摩擦の程度を特徴付けることができる。また、VDA 230-206:2007にしたがって、試験試料の摩耗の程度を求めることもできる。より詳しくは、ポリマー生成物を使用して、射出成形プロセスによってボール形状の試験片及びプレート形状の試験片を調製する。ボール試験片は直径0.5インチである。プレート試験片は、引張棒材の2つの端部領域を切断することによって、ISO引張棒材の中央部から得られる。プレート試験片を試料ホルダー上に固定し、ボール試験片を、150mm/秒及び15Nの力でプレート試験片と接触させて移動させる。1000サイクル後、動摩擦係数が得られる。摩耗の深さは、摩耗したボール領域の直径を測定することによって、ボール試験片から得られる。磨耗領域の直径に基づいて、ボール試験片の磨耗深さを計算して求める。
【0060】
[0056]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443:2005にしたがい、Dynisco LCR 7001毛細管流量計を用いて、1000秒-1の剪断速度、及び融点よりも15℃高い温度(例えば350℃)において求めることができる。流量計のオリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0061】
[0057]融点:融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11357-2:2013によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0062】
[0058]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が0.45又は1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させることができ、そこで0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させる。
【0063】
[0059]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0064】
[0060]曲げ弾性率及び曲げ応力:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM D790-10と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0065】
[0061]ノッチ無し及びノッチ付きシャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10,方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。ノッチ付き衝撃強さを試験する場合には、ノッチはタイプAのノッチ(0.25mmの底半径)であってよい。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0066】
[0062]ロックウェル硬さ:ロックウェル硬さは材料の押し込み抵抗性の指標であり、ASTM D785-08(スケールM)にしたがって求めることができる。試験は、まず規定の小荷重を用いて鋼球圧子を材料の表面中に押し込むことによって行う。次に、荷重を規定の大荷重に増加させ、減少させて元の小荷重に戻す。ロックウェル硬さは、圧子の深さの正味の増加分の指標であり、貫入量を目盛分割で割った値を130から減じることによって計算される。
【0067】
[0063]表面/体積抵抗率:表面及び体積抵抗率の値は、一般にIEC-60093(ASTM D257-07と同等)にしたがって求められる。この手順によると、標準試験片(例えば1メートル立方)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)と単位電極長さあたりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するので、商において長さは約分されて表面抵抗率はΩで報告されるが、Ω/スクエアのより説明的な単位を見ることも通常的である。体積抵抗率もまた、電流密度に対する材料において電流に平行な電位勾配の比として求められる。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面の間の直流抵抗(Ω・m)に数値的に等しい。
【0068】
実施例1:
[0064]下表1に示す種々の割合の液晶ポリマー、ガラス繊維、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)、タルク、マイカ(Suzuorite 200HK)、黒色マスターバッチ、及びアルミニウム三水和物から、試料1~6を形成する。液晶ポリマーはLeeらの米国特許第5,508,374号に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成する。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0069】
【表1-2】
【0070】
[0065]試料1~6を、熱特性、機械特性、及び摩耗特性について試験した。結果を下表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例2:
[0066]下表3に示す種々の割合の液晶ポリマー、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)、マイカ(Thor FPz)、硫酸バリウム、耐衝撃性改良剤(Lotader(登録商標)8840)、黒色マスターバッチ、及び帯電防止フィラーから、試料7~12を形成する。試料7~10における液晶ポリマー(LCP-1)は、Leeらの米国特許5,508,374に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成し、一方で試料11~12における液晶ポリマー(LCP-2)は、HBA、HNA、及びTAから形成する。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。帯電防止フィラーは、イオン液体、すなわち、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)-イミド(3MからのFC-4400)である。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0073】
【表3】
【0074】
[0067]試料7~8及び9~12を、熱特性、機械特性、及び摩耗特性について試験した。結果を下表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例3:
[0068]下表5に示す種々の割合の液晶ポリマー、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)、マイカ、硫酸バリウム、耐衝撃性改良剤(Lotader(登録商標)8840)、PTFE(KT 300M)、及び黒色マスターバッチから、試料13~18を形成する。試料16~18における液晶ポリマー(LCP-1)は、Leeらの米国特許5,508,374に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成し、一方で試料13~15における液晶ポリマー(LCP-2)は、HBA、HNA、及びTAから形成する。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0077】
【表5】
【0078】
[0069]試料13~18を、熱特性、機械特性、及び摩耗特性について試験した。結果を下表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
実施例4:
[0070]下表7に示す種々の割合の液晶ポリマー、ガラス繊維、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)、タルク、マイカ(Suzuorite 200HK)、黒色マスターバッチ、及びアルミニウム三水和物から、試料19~23を形成する。液晶ポリマーは、HBA、HNA、TA、及びBPから形成する。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0081】
【表7】
【0082】
[0071]試料19~23を、熱特性、機械特性、及び摩耗特性について試験した。結果を下表8に示す。
【0083】
【表8】
【0084】
[0072]本発明のこれら及び他の修正及び変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲に更に記載される本発明を限定することは意図しないことを理解する。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ポリマー組成物であって、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー、及び前記液晶ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量の超高分子量シロキサンポリマーを含み、前記シロキサンポリマーは約100,000グラム/モル以上の数平均分子量を有する、前記ポリマー組成物。
[請求項2]
前記シロキサンポリマーが約10,000センチストークス以上の動粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項3]
前記液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の約20重量%~約80重量%を構成し、前記シロキサンポリマーが前記ポリマー組成物の約0.1重量%~約8重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項4]
前記シロキサンポリマーが、骨格中に、式:
SiO(4-r/2)
(式中、Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、rは、0、1、2、又は3である)
を有するシロキサン単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項5]
前記シロキサンポリマーが、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基を含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
[請求項6]
前記シロキサンポリマーが、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項7]
前記ポリマー組成物がシリカ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項8]
前記ポリマー組成物が粒状フィラーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項9]
前記粒状フィラーが、前記液晶ポリマー100部あたり約10~約95重量部の量で存在する、請求項8に記載のポリマー組成物。
[請求項10]
前記粒状フィラーが、モース硬度スケールに基づいて約2以上の硬度値を有する、請求項8に記載のポリマー組成物。
[請求項11]
前記粒状フィラーが、約3:1以上のアスペクト比、及び約5マイクロメートル~約200マイクロメートルの平均直径を有するフレーク形状の粒子を含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
[請求項12]
前記フレーク形状の粒子がマイカを含む、請求項11に記載のポリマー組成物。
[請求項13]
前記粒状フィラーが、約0.1~約10マイクロメートルの平均直径を有する顆粒状粒子を含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
[請求項14]
前記顆粒状粒子が硫酸バリウムを含む、請求項13に記載のポリマー組成物。
[請求項15]
前記粒状フィラーがフッ素化添加剤を含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
[請求項16]
強化繊維を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項17]
前記強化繊維がガラス繊維を含む、請求項16に記載のポリマー組成物。
[請求項18]
耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項19]
前記耐衝撃性改良剤がエポキシ官能化オレフィンコポリマーを含む、請求項18に記載のポリマー組成物。
[請求項20]
帯電防止フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項21]
前記帯電防止フィラーがイオン液体を含む、請求項20に記載のポリマー組成物。
[請求項22]
前記ポリマー組成物が、ISO試験No.11443:2005にしたがって、1000秒-1の剪断速度及び前記組成物の融点よりも15℃高い温度において求めて約2~約60Pa・秒の溶融粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項23]
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項24]
前記組成物が、UL94にしたがって求めて、0.4mmの厚さにおいてV0等級を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項25]
前記組成物が、UL94にしたがって求めて、0.8mmの厚さにおいてV0等級を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項26]
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下の動摩擦係数を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項27]
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項28]
請求項1~27のいずれかに記載のポリマー組成物を含む成形部品。
[請求項29]
請求項28に記載の成形部品を含む電気コネクタ。
[請求項30]
請求項28に記載の成形部品を含むカメラモジュール。