IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許7295112油改質剤として有用なバイモーダルコポリマー組成物及びそれを含む潤滑油
<>
  • 特許-油改質剤として有用なバイモーダルコポリマー組成物及びそれを含む潤滑油 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】油改質剤として有用なバイモーダルコポリマー組成物及びそれを含む潤滑油
(51)【国際特許分類】
   C10M 143/04 20060101AFI20230613BHJP
   C10M 143/06 20060101ALI20230613BHJP
   C10M 143/08 20060101ALI20230613BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230613BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230613BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230613BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230613BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
C10M143/04
C10M143/06
C10M143/08
C10N20:02
C10N30:00 Z
C10N40:25
C10N40:04
C10N40:08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020532784
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2018058182
(87)【国際公開番号】W WO2019116117
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】62/598,184
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、イアン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】セファー、マリアム
(72)【発明者】
【氏名】チャン、サラ ユエ
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、デイビッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ツァン、マン ホン
(72)【発明者】
【氏名】ライナー、コルブ
(72)【発明者】
【氏名】ペリアガラム、ラヴィシャンカル
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0031831(US,A1)
【文献】特表2015-509131(JP,A)
【文献】特表2012-525471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油であって、
(1)前記潤滑油の重量に基づいて、少なくとも50重量%の基油、並びに
(2)コポリマー組成物であって、
(a)前記コポリマー組成物の重量に基づいて30~70重量%の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分であって、(i)前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて、50~85重量%のエチレンから誘導される単位、及び(ii)C-C20α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含み、0.5~10.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する成分、及び
(b)前記コポリマー組成物の重量に基づいて30~70重量%の第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分であって、(i)前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて40~60重量%のエチレンから誘導される単位、及び(ii)C-C20α-オレフィンコモノマーから誘導された単位を含み、0.1~2.0g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する成分
を含むコポリマー組成物を含み、
前記成分間のMFR比MFR/MFRは0.2~75.0の範囲内であり、
さらに、前記コポリマー組成物は、(i)前記コポリマー組成物の重量に基づいて、15~85重量%の範囲内の全エチレン含有量、(ii)1.0~6.0g/10分の範囲内のMFR、(iii)25~45の範囲内の補正されたメルトフローレート比(cMFRR、230℃/21.6kgのMFRを230℃/2.16kgのMFRで割ったものとして定義される、ASTM D1238、4.3g/10分(230℃/2.16kg)の参照MFRに対して補正)、及び(iv)T>3.31*E-186℃(式中Eは前記コポリマー組成物のエチレン含有量である)のそれぞれを有
前記コポリマー組成物が、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分よりも多くの前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含む、潤滑油。
【請求項2】
前記第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のそれぞれが、エチレンから誘導された単位及びプロピレンから誘導された単位を含む、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
前記コポリマー組成物が40重量%~50重量%未満の前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分及び50重量%より多く~60重量%の前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油。
【請求項4】
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が67~78重量%のエチレン誘導単位を含み、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が40~50重量%のエチレン誘導単位を含み、さらに前記コポリマー組成物は、50以上60重量%未満の全エチレン含有量を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油。
【請求項5】
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が67~78重量%のエチレン誘導単位を含み、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が50~60重量%のエチレン誘導単位を含み、
さらに、前記コポリマー組成物が、60~65重量%の範囲内の全エチレン含有量を有し、
さらに、前記コポリマー組成物が25~35の範囲内のcMFRRを有し、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーのMFRが1.5~10.0g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内である、
請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油。
【請求項6】
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマーが0.5~4.5g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)、0.5~3.5g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)、及び0.2~3.0の範囲内であるMFR/MFRを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油。
【請求項7】
前記成分間MFR比MFR/MFRが0.5~2.0の範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の潤滑油。
【請求項8】
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFRが0.7~2.5g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内であり、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFRは、0.5~3.5g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油。
【請求項9】
前記基油が、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループIV基油、グループV基油の1つ以上を含む、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項10】
前記潤滑油の重量に基づいて、0.1~12重量%の前記コポリマー組成物を含む、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項11】
流動点降下剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、清浄剤、防錆剤、及び摩擦調整剤の1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項12】
前記潤滑油が25~45の範囲の剪断安定性指数(SSI)を有する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項13】
前記潤滑油が1.9~3.5の範囲の増粘効率を有する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項14】
前記潤滑油が、クランクケース潤滑油、船舶用エンジン油、オートマチックトランスミッション流体、トラクタ流体、油圧流体、パワーステアリング流体、ギア潤滑剤、又はポンプ油である、請求項1に記載の潤滑油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー組成物、例えばα-オレフィンコポリマー組成物を含む潤滑剤、そのような組成物を製造するためのプロセス、及びそれらの使用に関する。組成物は、潤滑流体などにおいて添加剤、例えばレオロジー調整剤としての使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
潤滑流体が可動面の間に塗布されて摩擦を減らし、それによって効率を改善し、摩耗を減らす。潤滑流体はまた、多くの場合、可動面によって生じた熱を放散するように機能する。このような流体には、石油系の潤滑油、グリースなどが含まれる。例えば、石油系の潤滑油は、内燃機関で頻繁に使用される。
【0003】
潤滑流体、例えば石油系潤滑油には、この流体が所定の温度で特定の粘度になるように添加剤が含まれ得る。一般に、潤滑流体の粘度は温度に依存する。潤滑流体の温度が上昇すると粘度は一般に低下し、温度が低下すると粘度は一般に増加する。例えば、内燃機関の場合、寒冷時のエンジン始動を容易にするために低温で粘度が低く、潤滑特性が通常低下する高温の周囲温度で粘度が高くなることが望ましい。
【0004】
潤滑流体の添加剤には、レオロジー調整剤、例えば粘度指数(VI)向上剤、すなわちVIIが含まれる。VIIの多くはα-オレフィンコポリマー(例えばエチレン-α-オレフィンコポリマー、例えばエチレン-プロピレンコポリマー及び/又は他のオレフィンコポリマーなど)から誘導され、VIIは、潤滑剤のレオロジー挙動を変更して粘度を高め、潤滑剤が使用される温度範囲にわたってより一定の粘度を促進する。
【0005】
業界は、改善されたVIIを模索し続けている。例えば、望ましいVIIは、例えばVIIを含む潤滑流体が、流体測定、例えば流動点、ミニ回転粘度測定(MRV)及び低温クランキングシミュレータ(CCS)試験によって示され得るような低温で適切に低い粘度を維持するように、適切な低温粘度特性を示す。さらに、VIIの増粘効率(TE)を最大化することが望まれ、これは、潤滑流体中のポリマーの増粘能力の尺度である(例えば、TEが大きいほど、望ましい特性を達成するために添加され得るVIIの量が少なくなることを示すようになる)。ただし、TEは剪断安定性指数(SSI)と相互依存しており、様々なVIIに対するSSIのニーズは、異なる潤滑油のグレード及びターゲットの最終用途及び/又は市場によって変動する。そのため、VIIは望ましくは、所定のターゲット又は所望のSSIでより高い増粘効率(TE)を提供する(これも、異なるターゲットの用途によって異なり得る)。これは、VIIのSSIクラスごとに、そのようなVIIがそのSSIで最大TEを有するように設計されることが望ましいことを意味する。
【0006】
米国特許第9,139,794号明細書及び米国特許第9,127,151号明細書(例えば、‘151特許第5欄、21~32行を参照)で説明されているように、所定のSSIでのオレフィンコポリマーVIIの組成が主としてTEを決定し、その高いTEのために、高いエチレン含有量が好ましいと一般に考えられる。一方、‘151特許にはまた、レオロジー調整剤のエチレン含有量を増加させると改善されたTE/SSI比をもたらす一方で、オレフィンコポリマーの結晶化度の増加にもつながり、これは結晶性ポリマーが会合する傾向があるので悪影響をもたらすと考えられることが説明されている。これらの会合は、油に不均一な外観を与える高粘度の領域(例えば、「塊」)として明らかである。したがって、オレフィンコポリマーVIIを設計する際にトレードオフを受け入れる必要があるように見える(より高いTEを達成するには、より高い結晶化度を受け入れる必要があり、それにより、例えばより大きなゲル化傾向及び/又は有害な程度に高いSSIのために、低温性能を犠牲にする)。
【0007】
この認識されたトレードオフは、特定のオレフィンコポリマーVIIにおいて所望の特性を達成することを非常に困難にする可能性がある。例えば、一部の仕様では、潤滑エンジン油の流動点を非常に低くする必要があるため、粘度調整剤のゲル化傾向を最小限に抑える必要がある(したがって、例えばオレフィンコポリマーの結晶化度を最小限に抑える)。したがって、所定のSSIに関してTEを最大化し(例えばTE/SSIの比によって、又は(1)測定されたTE、(2)測定されたSSI及び(3)この測定されたSSIとは異なるターゲットSSIに基づいて所定のSSIにて予測されるTE-これは「補正されたTE」又は「TE補正」と称され得る-を決定するために幾何比(geometric ratio)を用いることによって示されるように)、同時にゲル化を回避し、又はTE/SSIを増加させるためにエチレン含有量を上げることから別の方法では遭遇すると予想される他の問題を回避する際には、改善が限られているようである。
【0008】
関連する可能性のあるいくつかの参考文献には、例えば、米国特許出願公開第2015/0031831号明細書、WIPO公開番号WO2012/15572、WO2012/15573、及びWO2013/115912、米国特許第5,391,617号明細書、米国特許第6,525,007号明細書、米国特許第6,589,920号明細書、米国特許第6,525,007号明細書、米国特許第7,022,766号明細書、米国特許第7,053,153号明細書、米国特許第7,402,235号明細書、米国特許第7,526,642号明細書、米国特許第7,622,433号明細書、米国特許第8,378,042号明細書、米国特許第8,378,048号明細書、米国特許第8,389,452号明細書、米国特許第8,618,033号明細書、米国特許第9,006,161号明細書及び米国特許第9,127,151号明細書、並びに欧州特許第0638611号明細書、欧州特許第1148115号明細書、欧州特許第1262498号明細書、欧州特許第1309656号明細書及び欧州特許第1561798号明細書が含まれる。
【0009】
したがって、本明細書に記載のバイモーダルコポリマー組成物を含む潤滑油が提供され、これは高い増粘効率及び有益な低温溶液レオロジー特性を示す。
【発明の概要】
【0010】
従来の知識に反して、驚くべきことに、コポリマー組成物の主要なパラメータを比較的一定に有利に維持しながら(例えば、全エチレン含有量、個々の成分のエチレン含有量及びコポリマー組成物中の各成分の相対量)、所望の剪断安定性指数(SSI)でレオロジー調整剤オレフィンコポリマー組成物の増粘効率(TE)を調整できることを見出したが、これによりまた、TEを改善しながらSSIを維持でき、及び/又はポリマー製造キャンペーンを調整して、異なるターゲットSSI値を満たすことができると同時に、適切なTEを確実にすることが、ポリマー製造キャンペーン中に製造される調整された生成物から結果として得られる。なおさらなる実施形態によれば、ポリマー組成物のより容易に測定される特性を調整することにより、ターゲットSSI及び/又はTEを達成でき、様々なターゲットSSI及び/又はTE値を達成するポリマー製造キャンペーンの正確及び迅速な制御を可能にする。
【0011】
特に、第1及び第2の成分又は画分(例えば、ポリマーブレンド中の成分又は画分)を有するエチレンコポリマー組成物では、(1)コポリマー組成物のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定された)、(2)コポリマー組成物の補正メルトフローレート比(cMFRR)(これは、(i)230℃及び21.6kgでASTM D1238に従って測定されたMFRを(ii)230℃及び2.16kgでASTM D1238に従って測定されたMFRで割った比である)、(3)画分間メルトフローレート比(略して「MFR/MFR」と称され又は「IFMFRR」と略されることもあり、これは、第1のポリマー成分又は画分のMFRを、第2のポリマー又は画分のMFRで割った比である(両方とも230℃及び2.16kgでASTM D1238によって測定されたMFR値)及び(4)組成物中のエチレン誘導単位の重量%の1つ以上を制御できる。TE及び/又はSSIを調整するために、これらの特性のいずれか1つ以上を調整し得ることを見出した。これは、従来の知識とは対照的に、組成物(及び/又は組成物の画分)のエチレン含有量を一定に保つことができ、組成物の他の特性に変更を加えて、組成物が潤滑油組成物中の添加剤として使用される場合に現れるTE及び/又はSSIを調整することができることを意味する。代替的に、エチレン含有量は、MFR、cMFRR、及び/又はIFMFRRへの他の変更と組み合わせて減少させて、エチレン含有量が減少した同様のTE及び/又はSSIを示す組成物を製造することができる。一般に、本開示は、オンラインで容易に測定できる特性(例えば、MFR及びcMFRR)を使用して、ターゲットTE及び/又はSSI値への商業用製造キャンペーンを制御する有利な制御戦略をさらに提供する(これに対して、結果として生じるTE及び/又はSSIを測定することは、通常、オフラインブレンド化及び個別の測定を必要とする)。
【0012】
特定の実施形態によれば、ポリマー画分A及びBのMFR及び/又はMFRは、上記のポリマー組成物特性の1つ以上を変更するように制御することができる。これらの実施形態では特に、MFR/MFRは、MFR/MFRが1又はほぼ1(又はおそらくそれ未満)、例えば0.5~1.5、又は0.5~3.0の範囲内であるバイモーダルエチレンコポリマー組成物を得るように制御され得る。一方、いくつかの実施形態によれば、増加したMFR(したがって増加したMFR/MFR)は、特定の産業及びモータ用途において潤滑油組成物がゲル化する傾向が低いなどの利点を提供し得る。さらに、非常に高いMFR(したがって非常に高いMFR/MFR)は、潤滑油組成物が使用される特定の例においてフィルタの目詰まりを引き起こす可能性が低いなどの追加の利点を提供し得る。したがって、特定の実施形態は、0.5~75.0、例えば1.5~6.0、1.75~5.0、又は10~75、例えば15~60の範囲内のMFR/MFRを含み、任意の下限から任意の上限までの範囲も企図される。これらの実施形態は、特にMFR(第1のポリマー画分のMFR)が10g/10分以上の場合(ASTM D1238、230℃、2.16kg)に、とりわけ、(1)高いTEと、(2)望ましくないゲル化及びフィルタの目詰まりの低下した傾向との間の有利なバランスを提供し得る。中間MFR/MFR値は、低MFR/MFR値によって達成されるより大きなTEの利点を実現するためにフィルタの目詰まりのいくらかのリスクを受け入れながら、ゲル化を回避するのにさらに有用であり得る。
【0013】
したがって、本発明は、いくつかの態様では、オレフィンコポリマー組成物、及び特定の実施形態では、第1のα-オレフィンコポリマー成分又は画分(本明細書では「成分A」又は「画分A」と称されることもあり得、さらに成分と画分とは交換可能に使用され得ることに留意する)及び第2のα-オレフィンコポリマー成分(本明細書では「成分B」又は「画分B」と称されることもある)を含むバイモーダルエチレンコポリマー組成物を含む。各α-オレフィンコポリマー成分は、2つ以上のα-オレフィン誘導単位、好ましくはエチレンとC-C20α-オレフィン(好ましくはプロピレン、1-ヘキセン、及び/又は1-オクテン)とで構成されるが、2つ以上のC-C20α-オレフィンモノマーの任意の組み合わせを使用して、第1及び第2のα-オレフィンコポリマー成分のいずれか又は両方を製造し得る。いくつかの実施形態によれば、ポリマー組成物は、40~60重量%の第1のα-オレフィンコポリマー成分、及び40~60重量%の第2のα-オレフィンコポリマー成分を含む。さらに、特定の実施形態では、α-オレフィンコポリマー成分の少なくとも1つ、好ましくは両方が、エチレン誘導単位を含む。特定の実施形態では、成分Aは成分Bよりも高いエチレン含有量を有し、例えば、成分Aは、60~80重量%のエチレン誘導単位を含み得、成分Bは、40~60重量%のエチレン誘導単位を含み得る。そのようなコポリマー組成物の全エチレン含有量は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、50~70重量%の範囲内であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、コポリマー組成物は、潤滑油組成物、グリース組成物などにおける添加剤としての用途がある。例えば、ポリマー組成物は、そのような組成物における粘度調整剤として使用されてもよい。そのような組成物は、優れた低温品質(例えば、低い流動点)を依然として示し、ゲル化を回避しながら、高い比のTE/SSIを有利に示し得る。
【0015】
いくつかのさらなる態様では、本開示は、そのようなコポリマー組成物を製造する方法、例えば、直列、並列、又は単一反応器重合反応を提供する。いくつかの実施形態の重合プロセスは、有利には、例えば、前述のポリマー組成物特性のいずれか1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、そのような重合を制御することを含む。そのようなプロセスは、初期のコポリマー組成物を最初に形成し、続いて、初期のコポリマー組成物と比較して変更された以下の特性、(1)コポリマー組成物のMFR、(2)コポリマー組成物のcMFRR、(3)及びMFR/MFRの1つ以上を有する調整されたコポリマー組成物を得るために重合条件を調整することを含み得る。調整されたコポリマー組成物のエチレン含有量は、初期のコポリマー組成物のエチレン含有量と実質的に同じ(例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下)であり得る。調整されたコポリマー組成物を粘度調整剤として使用する潤滑油組成物は、初期コポリマー組成物を含む未調整の潤滑油組成物とは異なるTE及び/又はSSIを示し得るが、その他の点では調整された潤滑油組成物と同一である。このようなプロセスは、特に異なるSSI及び/又はTEが必要な場合に、類似のポリマー生成物間で生成物キャンペーンをシフトする際に有利に使用できる。
【0016】
他の態様では、(1)潤滑油の重量に基づいて、少なくとも50重量%の基油、及び(2)本明細書に記載されるバイモーダルコポリマー組成物を含む潤滑油を提供する。
【0017】
潤滑油は、クランクケース潤滑油、船舶用エンジン油、オートマチックトランスミッション流体、トラクタ流体、油圧流体、パワーステアリング流体、ギア潤滑剤、又はポンプ油であってよい。
【0018】
本開示のさらに他の目的及び利点は、以下の詳細な記載から当業者により容易に明らかになり、それは、単に最良の形態の例示として、好ましい実施形態においてのみ示され、記載される。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本開示から逸脱することなく、様々な明白な点で修正が可能である。したがって、この記載は本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
なお、下記[1]から[16]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
潤滑油であって、
(1)前記潤滑油の重量に基づいて、少なくとも50重量%の基油、並びに
(2)コポリマー組成物であって、
(a)前記コポリマー組成物の重量に基づいて30~70重量%の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分であって、(i)前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて、50~85重量%のエチレンから誘導される単位、及び(ii)C -C 20 α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含み、0.5~25g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR (ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する成分、及び
(b)前記コポリマー組成物の重量に基づいて30~70重量%の第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分であって、(i)前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて40~60重量%のエチレンから誘導される単位、及び(ii)C -C 20 α-オレフィンコモノマーから誘導された単位を含み、0.1~10.0g/10分の範囲内のMFR (ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する成分
を含むコポリマー組成物を含み、
前記成分間のMFR比MFR /MFR は0.2~75.0の範囲内であり、
さらに、前記コポリマー組成物は、(i)前記コポリマー組成物の重量に基づいて、15~85重量%の範囲内の全エチレン含有量、(ii)1.0~6.0g/10分の範囲内のMFR、(iii)25~45の範囲内の補正されたメルトフローレート比(cMFRR、230℃/21.6kgのMFRを230℃/2.16kgのMFRで割ったものとして定義される、ASTM D1238、4.3g/10分(230℃/2.16kg)の参照MFRに対して補正)、及び(iv)T >3.31*E-186℃(式中Eは前記コポリマー組成物のエチレン含有量である)のそれぞれを有する、潤滑油。
[2]
前記第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のそれぞれが、エチレンから誘導された単位及びプロピレンから誘導された単位を含む、[1]に記載の潤滑油。
[3]
前記コポリマー組成物が、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分よりも多くの前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含む、[1]又は[2]に記載の潤滑油。
[4]
前記コポリマー組成物が40重量%~50重量%未満の前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分及び50重量%より多く~60重量%の前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含む、[3]に記載の潤滑油。
[5]
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が67~78重量%のエチレン誘導単位を含み、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が40~50重量%のエチレン誘導単位を含み、さらに前記コポリマー組成物は、50以上60重量%未満の全エチレン含有量を有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の潤滑油。
[6]
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が67~78重量%のエチレン誘導単位を含み、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が50~60重量%のエチレン誘導単位を含み、
さらに、前記コポリマー組成物が、60~65重量%の範囲内の全エチレン含有量を有し、
さらに、前記コポリマー組成物が25~35の範囲内のcMFRRを有し、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーのMFR が1.5~10.0g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内である、
[1]から[4]のいずれか一項に記載の潤滑油。
[7]
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマーが10~25g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有し、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、0.1~0.99g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有し、MFR /MFR は10.0~50.0の範囲内である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の潤滑油。
[8]
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマーが0.5~4.5g/10分の範囲内のMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)、0.5~3.5g/10分の範囲内のMFR (ASTM D1238、230℃/2.16kg)、及び0.2~3.0の範囲内であるMFR /MFR を有する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の潤滑油。
[9]
前記成分間MFR比MFR /MFR が0.5~2.0の範囲内である、[1から[6]又は[8のいずれか一項に記載の潤滑油。
[10]
前記第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFR が0.7~2.5g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内であり、前記第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFR は、0.5~3.5g/10分(ASTM D1238、230℃/2.16kg)の範囲内である、[1]から[6]又は[8]から[9]のいずれか一項に記載の潤滑油。
[11]
前記基油が、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループIV基油、グループV基油の1つ以上を含む、[1]に記載の潤滑油。
[12]
前記潤滑油の重量に基づいて、0.1~12重量%の前記コポリマー組成物を含む、[1]に記載の潤滑油。
[13]
流動点降下剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、清浄剤、防錆剤、及び摩擦調整剤の1つ以上をさらに含む、[1]に記載の潤滑油。
[14]
前記潤滑油が25~45の範囲の剪断安定性指数(SSI)を有する、[1]に記載の潤滑油。
[15]
前記潤滑油が1.9~3.5の範囲の増粘効率を有する、[1]に記載の潤滑油。
[16]
前記潤滑油が、クランクケース潤滑油、船舶用エンジン油、オートマチックトランスミッション流体、トラクタ流体、油圧流体、パワーステアリング流体、ギア潤滑剤、又はポンプ油である、[1]に記載の潤滑油。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例1に関連するコポリマー組成物のTE対MFR/MFR値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記のように、いくつかの実施形態における本開示は、第1のα-オレフィンコポリマー成分(A)及び第2のα-オレフィンコポリマー成分(B)を含むα-オレフィンコポリマー組成物に関する。第1及び第2のα-オレフィンコポリマー成分は、特定の実施形態では、MFR/MFR(又は「IFMFRR」)が一般に0.2~75、例えば0.5~50又は1.5~40の範囲内(任意の下限から任意の上限までが様々な実施形態で企図される)であるように、それぞれMFR及びMFRを有し得る。これらの一般的な範囲内で、特定の実施形態は、(1)高MFR/MFR、例えば10.0以上、例えば10、12、15、17、又は20の低値から25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75の高値までの範囲内(前述の低値のいずれかから前述の高値のいずれかまでの範囲が企図される)、(2)低MFR/MFR、例えば約1.0又は0.2、0.5、0.7、又は0.9の低値から1.1、1.2、1.5、3.0、又は6.0の高値の範囲内(前述の低値のいずれかから前述の高値のいずれかまでの範囲が企図される)、及び(3)中間MFR/MFR、例えば0.5、1.0、又は1.5の低値から3、4、5、又は6の高値までの範囲内(前述の低値のいずれかから前述の高値のいずれかまでの範囲が企図される)を含む。高MFR/MFRの実施形態は、コポリマー組成物が潤滑油組成物の粘度調整剤として使用される場合、フィルタの目詰まりとゲル化との両方を回避するのに特に適している場合がある。一方、低MFR/MFRの実施形態は、最大化されたTEを達成する。中間MFR/MFRの実施形態は、比較的高いTEの利点を得るためにフィルタの目詰まりのいくらかのリスクを許容しながら、ゲル化を回避する潤滑油組成物を提供し得る。
【0021】
ポリマーは、メタロセン触媒重合反応によって形成されてもよく、これは、各コポリマーを製造するために使用される2つ以上のタイプのモノマーが、1つ以上の活性化メタロセン触媒の存在下で重合されることを意味する。
【0022】
最も好ましくは、ポリマー組成物は、直列反応器ブレンドであり、これは、第1のα-オレフィンコポリマー成分が第1の直列重合反応ゾーンで製造され、第1のα-オレフィンコポリマー成分を含む重合流出物が第2の重合反応ゾーンに提供されることを意味し、ここで第2のα-オレフィンコポリマー成分が製造される。第1の重合反応ゾーンは、(その活性化形態の)第1のメタロセン触媒を含む。第2の重合反応ゾーンは、第2のメタロセン触媒(これも活性化形態である)を含むことが好ましく、これは第1のメタロセン触媒と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、第1の重合ゾーンからの第1のメタロセン触媒が、第1の反応ゾーンからの流出物中において第2の重合反応ゾーンに提供され得ることもまた企図され、追加の触媒は、第2の重合反応ゾーンに提供されてもよく、又はされなくてもよい。
【0023】
さらに、2つのα-オレフィンコポリマー成分は、例えば(ポスト反応ブレンド化を伴う)並列重合反応により、及び/又は(例えば少なくとも2つのメタロセン触媒系の存在下)単一の重合反応ゾーンにおける重合により製造できることも企図される。
【0024】
ポリマー組成物は、潤滑油組成物、グリースなどの添加剤として特に適している。特定の実施形態によれば、ポリマー組成物は、潤滑油組成物などにおいて、粘度調整剤(粘度指数向上剤、すなわちVIIとも称され、及び/又はレオロジー調整剤とも称される)、特定のサブタイプの添加剤として使用され得る。
【0025】
ポリマー組成物及びそれらを製造するための方法を以下でより詳細に記載し、その後、そのような重合方法を実施するのに特に有用な制御戦略の記載、並びにそのような組成物が特に適切であり得る潤滑油組成物の記載を続ける。
【0026】
定義及び測定方法
この開示及び本明細書の特許請求の範囲の目的のために、以下に示される定義が使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「コポリマー」は、2つ以上のモノマーを有する任意のポリマーを含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「エチレン系」コポリマーは、モノマー単位としてエチレンを意図的に含むコポリマー(例えば、少なくとも1重量%のエチレン誘導単位などの微量よりも多い)を指す。この用語は、本明細書の文脈において別段に明示的に述べられている場合を除いて、コポリマーの過半数がエチレンであることを示唆することを意図していない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「MWD」という用語は、分子量分布、又は数平均分子量(M)に対する重量平均分子量(M)の比を意味する。他の測定技術が指定されていない限り、Mは、弁護士参照番号(attorney reference number)2016EM008の2016年12月15日に出願されたPCT出願番号PCT/US16/66803の段落-[0038]~[0042]に記載されている光散乱(LS)技術に従って測定されるべきであり、Mは、参照により本明細書に組み込まれる、その出願の同じ段落に記載されているDRI技術に従って測定されるべきである。
【0030】
多くの実施形態は、様々なコポリマーのエチレン含有量に言及している。エチレン含有量は任意の適切な方法で決定され得るが、複数の方法が矛盾する結果を提供する場合は、ASTM D3900に従ってFTIRを使用して決定された結果を適用すべきである。
【0031】
特に指定のない限り、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238条件L(230℃/2.16kg)に従って測定され、g/10分(又はdg/分)単位で報告されるべきである。一部の例(例えばメルトフローレート比、MFRRの決定など)では、MFRはASTM D1238手順に従って、230℃/21.6kgで測定されたものとして指定され得る。
【0032】
前述の「MFRR」は、メルトフローレート比である。これは、(1)230℃、2.16kg(g/10分単位)で決定されたMFRと(2)230℃、21.6kg(g/10分単位)で測定されたMFRとの比を指す。その他の点ではこの比の各MFRは、ASTM D1238に従って測定される。「補正されたMFRR」、すなわち「cMFRR」も報告され得る。これは、MFRR値がMFRに依存する傾向があるためである(例えばMFRRが異なるMFR(230℃/2.16kg)値で変化するように)。補正により、MFRの依存関係が除去され、様々なMFR値にわたって、所定のポリマー組成物の予想されるMFRRをより適切に把握できる。本明細書での目的のために、MFRRは4.3g/10分(230℃/2.16kg)の参照MFRに正規化されており、次の式で計算され得る、cMFRR=MFRR(4.3/MFR)-0.198(式中、MFRR及びMFRは上記のように決定された測定MFRR値及びMFR値である)。
【0033】
本明細書で使用される場合、成分(例えば、「第1水素」又は「第2水素」)に関する「第1」及び「第2」という用語は、単に識別子として意図され、成分が異なることを示唆又は要求することを意図しない(明示的に別段の定めがない限り)。さらに、第1及び第2の成分(例えば、第1のエチレン-α-オレフィン成分及び第2のエチレン-α-オレフィン成分)を有するコポリマー組成物への本明細書における言及は、コポリマー組成物がバイモーダルであることを意味する。本明細書で使用される「バイモーダル」という用語は、組成物が異なるコモノマー含有量を有する画分から構成されることを意味する組成のバイモーダル性を指し、又は、言い換えれば、ポリマー組成物はバイモーダルコモノマー分布を有する。そのようなバイモーダルは、CRYSTAFを使用することなどの既知の従来の手段によって決定され得る。例えば、CRYSTAFピーク温度決定は、PolymerChar(Valencia,Spain)から入手可能なCRYSTAF機器を使用して行われ得る。コポリマーサンプルは、トリクロロベンゼンに150℃で0.1重量%の濃度で溶解される。コポリマーをこの温度で45分間溶解する。次に溶液を100℃で30分間保持し、その後0.2℃/分の速度で30℃に冷却する。冷却中の定期的な間隔で(例えば好ましくは少なくとも15分に1回、例えば1分に1回、5分に1回、又は10分に1回-間隔が短いほど精度が高くなる)、赤外線検出器は溶液中のポリマーの濃度を測定する。これらの測定から、温度の関数としてのポリマー濃度の曲線が得られる。この曲線の導関数はコモノマー分布である。コモノマー含有量の高い種は低温ピークに対応し、コモノマー含有量の低い種は高温ピークで表される。以下に記載されるように調製された本開示のコポリマーは、(少なくとも)2つの異なるピークを示し、バイモーダルコモノマー分布を示す。コポリマー組成物が直列反応器ブレンドであるように、直列反応器重合プロセスによってポリマー組成物が製造される実施形態の特定の場合(以下により詳細に記載される)、第1のポリマー成分は、第1の直列重合反応のポリマー生成物としてさらに識別され得る。
【0034】
本明細書及びそれに添付の特許請求の範囲の目的のために、ポリマー又はコポリマーが、エチレン、プロピレン、及び1-ブテンを含むがこれらに限定されないアルファ-オレフィン(又はα-オレフィン)を含むと言及される場合、このようなポリマー又はこのようなコポリマーに存在するオレフィンは、オレフィンの重合形態である。例えば、コポリマーが60~80重量%の「エチレン」含有量を有する、又は60~80重量%で「エチレン誘導単位」を含む場合、コポリマーの単量体単位は重合反応におけるエチレンから、及び誘導された単位は、コポリマーの重量に基づいて、60~80重量%で存在する。
【0035】
増粘効率は、油中のポリマーの増粘能力の尺度であり、TE=2/c×ln((kv(ポリマー+油))/kv)/ln(2)として定義され、式中、cはポリマー濃度(油100gあたりのg単位の多量ポリマーに関して)及びkvは、ASTM D445に従って決定された100℃での動粘度である。剪断安定性指数(SSI)は、エンジンの永久的な機械的剪断劣化に対するポリマーの耐性の指標である。SSIは、ASTM D6278の手順に従って、ポリマー-油溶液を高剪断Kurt Orbahnディーゼル噴射装置に30サイクル通すことによって決定できる。ポリマーのSSIは、ポリマーを含まない油の粘度と、ポリマー-油溶液の初期粘度及び剪断粘度とから次の式を使用して計算できる、SSI=100×(kv(ポリマー+油),新鮮-kv(ポリマー+油),剪断)/(kv(ポリマー+油),新鮮-kv油,新鮮)。一般に、SSIが低いと、高剪断に供される場合にポリマーの劣化が少なくなることを意味する。ただし、世界中の様々な地域では、潤滑油の組成物に関して及び異なる用途に関して異なるSSI値が指定されており、様々なSSIターゲットが所望され得ることを意味する。
【0036】
省略形「MRV」を使用して参照されるMRV(ミニ回転粘度計)試験は、ASTM D4684に従って行われる。
【0037】
低温ランキングシミュレータ(CCS)試験は、ASTM D2602の改訂版であるASTM D5293に従って行われる。CCS粘度は、異なるSAE(Society of Automotive Engineer)粘度グレードごとに異なる温度で試験され得る。例えば、0Wグレードは-35℃、5Wグレードは-30℃、10Wグレードは-25℃、15Wグレードは-20℃、20Wグレードは-15℃、25Wグレードは-10℃で試験される。CCS粘度はmPa・sで報告される。
【0038】
コポリマー組成物
上記のように、様々な実施形態のコポリマー組成物は、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の両方を含む。コポリマー組成物の全エチレン含有量は、15~85重量%、例えば、20、25、30、35、40、45、50、及び55重量%のいずれか1つの低値から50、55、60、65、70、75、及び80重量%のいずれか1つの高値までの範囲内で変化し得るが、範囲の上限は下限よりも大きい。したがって、例えば、エチレン含有量は、40~60、65、又は70重量%、又は50~60重量%、又は20~50重量%などの範囲内であり得る。さらに、特定の実施形態において、コポリマー組成物は、50、53、又は55重量%~60重量%、又は50、53、又は55重量%~60重量%未満の範囲内のエチレン含有量を有し得る。さらに他の実施形態では、コポリマー組成物は、例えば60~80重量%、60~69重量%、又は60~65重量%の範囲内など、より高い上限でのエチレン含有量を有し得る。そのような実施形態はより良好なTEを提供し得るが、流動点及びMRV性能は付随的に低下し得、そのため、多量エチレンの実施形態のより良好なTEを用いても、エチレン含有量を60重量%未満に保つことが好ましい場合がある。
【0039】
コポリマー組成物は、以下の特性の1つ以上、好ましくは2つ以上、最も好ましくは3つ、4つ、又はさらにはすべてを示す、
・25~45、例えば29~43g/10分の範囲内である、230℃/21.6kg及び230℃/2.16kgで測定されたMFRの比として定義された補正メルトフローレート比(cMFRR)(上記のように補正)。一部の実施形態は、好ましくは、より高いMFRR、例えば、34、35、36、37、又は38~43、44、又は45g/10分の範囲内を有する。他の実施形態(及び特に、より高いエチレン含有量、例えば、60~65又は69重量%の範囲内のもの)は、より低いMFRR(例えば、25、28、又は29~35g/10分の範囲内)を有し得る。
・1.0~6.0、5.0、4.0、又は3.0g/10分の範囲内の、ASTM D1238条件L(230℃/2.16kg)で測定されたメルトフローレート(MFR)。いくつかの実施形態では、コポリマー組成物のMFRは、1.0~2.0g/10分の範囲内であり得る。さらに他の実施形態、特により高いエチレン含有量(例えば、60~65重量%)を有するもののMFRは、1.5、2.0、又は2.5g/10分~5.0又は5.5g/10分のより高い範囲内であり得る。
・95,000~200,000g/molの範囲内、例えば98,000~165,000、又は100,000~150,000、例えば105,000又は110,000~130,000、又は145,000の範囲内の重量平均分子量(M)(前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲も、様々な実施形態で企図される)。
・46,000、48,000、又は50,000g/mol~60,000、62,000、64,000、65,000、70,000又は75,000g/molの範囲内の数平均分子量(M)(前述の低値のいずれかから前述の高値のいずれかまでの範囲が企図される)。
・3.31*E-186(℃単位)より大きい示差走査熱量測定(DSC)で決定された融点(T)(式中、Eは、エチレン含有量が60重量%未満のコポリマー組成物に関するコポリマー組成物のエチレン含有量である)。このような実施形態のTは、コポリマー組成物が、10℃、20℃、又は25℃のうちのいずれか1つの低値から40℃、45℃、50℃、60℃、70℃、又は80℃のいずれか1つの高値までの範囲内、例えば20℃~45℃、20℃~70℃、25℃~50℃などの範囲内)の、DSC(以下で記載される)によるピーク融点を有するようなものであり得る。
・コポリマー組成物のエチレン含有量が60重量%以上である代替の実施形態(例えば、上記のように60~65重量%のエチレンを有するもの)では、コポリマー組成物は、3.31*E-186(℃単位)よりも高い、及び/又は20℃、25℃、30℃、又は35℃のいずれか1つの下限から40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、70℃、80℃又は90℃のいずれか1つの上限までの範囲内(例えば25℃~50℃の範囲内など)であるDSCによる融点を示し得る。
【0040】
エチレンコポリマーの融点TのDSC測定は、Perkin Elmer Diamond DSC(熱補償型炉)を使用して決定される。10~15mgのポリマーを密閉蓋付きのパンに密封し、機器に装填する。窒素環境では、まずサンプルを約100℃/分で150℃に加熱する。次に、サンプルを150℃で5分間平衡化(保持)して、熱履歴を消去する。結晶化データ(第1の冷却)は、サンプルを溶融物から-70℃まで10℃/分で冷却することによって得られる。最後に、サンプルを再度10℃/分で150℃に加熱して、追加の溶融データ(第2の加熱)を得る。吸熱溶融転移(第2の加熱)及び発熱結晶化転移(第1の冷却)は、ピーク温度について分析される。本明細書で使用される「溶融ピーク」という用語は、上記で記載の第2の溶融中にDSCによって決定される主要及び二次溶融ピークの中で最も高いピークである。融点は、サンプルの溶融範囲内で最大の熱吸収の温度として記録される。
【0041】
さらに、特定の実施形態では、コポリマー組成物のMFR/MFRは、(今述べた1つ以上の特性を有することに加えて)前述の様々な実施形態のMFR/MFRの所望の範囲に一致する。
【0042】
エチレン-α-オレフィンコポリマー成分
様々な実施形態のコポリマー組成物は、30~70重量%、例えば40~60重量%の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分、又はさらに40~50重量%、又はさらに42~48重量%の第1の成分を含む。第2のエチレン-α-オレフィン成分は、コポリマー組成物の総重量に基づいて、30~70重量%、例えば40~60重量%、50~60重量%、又はさらに52~58重量%の範囲内で存在する。いくつかの実施形態のコポリマー組成物は、第1のエチレン-α-オレフィン成分よりも多くの第2のエチレン-α-オレフィン成分を含む。さらに、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分は、好ましくは、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分よりも高いエチレン含有量を有する。いくつかの実施形態では、第1の成分は、第2の成分よりも少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20重量%多いエチレン含有量を有し得る(第1の成分のエチレン重量%と第2の成分のエチレン重量%との間の差として測定され、すなわち65重量%のエチレンを含む第1の成分は、50重量%のエチレン含有量を含む第2成分よりも15重量%多いエチレン含有量を有し、それぞれのエチレン含有量は個々の成分の総重量に基づく)。
【0043】
第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーはそれぞれ、エチレン及び1つ以上のα-オレフィンコモノマーを含む。α-オレフィンコモノマーは、C-C20のα-オレフィン及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、各コポリマー中のコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン又はそれらの混合物である。
【0044】
第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分は、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて、50~85重量%、例えば60~80重量%、67~78重量%、又は65~75重量%の範囲内のエチレン含有量を有し、前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲も、様々な実施形態で企図される。
【0045】
MFRとも称され得る第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFR(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))は、0.5~25g/10分の範囲内であってもよい。特定の実施形態では、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFR(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))は、0.5、0.6、0.7、又は0.8のうちのいずれか1つの下限から1.5、1.7、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0、又は10.0g/10分のいずれか1つの上限の範囲内であってもよい。
【0046】
さらに他の実施形態では、前述のように、(例えば、ゲル化傾向を最小化するために)第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のより高いMFRを選択し得るが、これは、より高いMFRがより高いMFR/MFR又はIFMFRR値をもたらす場合にTEを低下させ得る。そのような実施形態によれば、MFRは、10、12、又は14のうちのいずれか1つの低値から16、18、20、又は25g/10分のいずれか1つの高値までの範囲内であってもよい(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))。
【0047】
前述のように、高MFRの第1の画分の実施形態は、ポリマー組成物が粘度調整剤として使用される特定の例(例えば、潤滑油組成物)でゲル化及び/又はフィルタ目の詰まりを回避するのに特に有用であり得る。第1のより高いエチレンの画分は、そのようなより高いMFR値に制御されることが好ましいことが見出された。これは、この成分のMFRを正確に制御するために、一連の2つの重合反応ゾーンにおいて第1の成分が最初に製造される直列反応重合で特に重要である。さらに、高エチレン成分は、その高エチレン含有量のために、ゲル化及び/又はフィルタの目詰まりに大きく寄与する可能性が高くなる。理論に拘束されることは望まないが、第1の(エチレン含有量が高い)成分で特に高いMFR(すなわち、平均ポリマー鎖が短い)を利用し、低エチレン成分とブレンドすることにより、粘度調整剤として使用される場合、高エチレン画分がゲルを形成するのが困難である。第2の(より低いエチレン)成分は、第1の成分に対してより低いか又は同様のMFRを任意に有し得る、ゲル化防止及び/又はフィルタの目詰まり防止効果はどちらの方法でも達成できると考えられる。
【0048】
第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分は、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の重量に基づいて、20~70重量%、例えば30~60重量%、又はさらに40~55重量%、又はさらには40~50重量%の範囲内のエチレン含有量を有し、前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲がまた様々な実施形態で企図される。さらに他の実施形態(特に、コポリマー組成物全体が60~65又は69重量%の範囲内のエチレン含有量を有するもの)では、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のエチレン含有量は、50~60重量%、例えば52~57重量%の範囲内である。
【0049】
第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFR(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))は、0.1、0.5、1.0、又は1.5の低値から0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、0.99、1.0未満、1.0、1.5、1.75、2.0、2.5、3.0、又は3.5の高値の範囲内である。特定の実施形態(コポリマー組成物が60~65重量%の高いエチレン含有量を有するものなど)では、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーのMFRは、より高い、例えば0.5、1.0、又は1.5~10.0の範囲内である。
【0050】
高MFRの実施形態(例えば、10以上の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFRを有するもの)では、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマーのMFR(MFR)が1.0以下、好ましくは1.0未満であるのが好ましく、結果としてポリマーブレンド全体のMFRは1.5~2.5の範囲内であり、これは粘度調整剤として使用した場合に約32~約40のSSIを示すポリマーブレンドに適していることが分かった。そのような実施形態におけるMFRは、約0.1又は0.5の低値から約0.5、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、0.99、1.0未満、又は1.0の高値までの範囲内であり得、前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲が企図される。
【0051】
特定の実施形態において、ポリマー組成物は、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分が第1の直列重合反応器の生成物に対応するように、直列反応器ブレンド、特に2つの直列重合反応器の反応器ブレンドである。第1の直列重合反応器の流出物は、第2の直列重合反応器に提供され、任意に追加のモノマー及び/又は触媒が同様に第2の反応器に提供される。したがって、そのような実施形態の第2の重合反応器の流出物は、(1)前述のように、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分に対応する第1の反応器流出物からの未反応ポリマー、及び(2)第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分にさらに対応する第2の反応器で形成された追加のポリマー(これは、第2の反応器でさらに重合された第1の反応器からのポリマーを含み得る)の両方を含む。第1の重合反応器流出物が第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含み、第2の重合反応器流出物が第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分を含むような実施形態では、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のモノマー含有量及びMFRの直接測定は、不可能ではないにしても難しい。これは、そのような実施形態では、第1のコポリマー成分は含まないが、第2のコポリマー成分を含む生成物流がないためである。しかしながら、第2の成分のモノマー含有量及びMFRは、それぞれ、(1)モノマー含有量及び(2)第1の成分のMFR及びコポリマー組成物全体から計算されてもよい。
【0052】
したがって、コポリマー組成物が直列反応器ブレンドである実施形態では、反応器ブレンドの第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分中の所与のモノマーXから誘導された単位の量は、以下の関係を使用して決定され得る、
ブレンド=n+n(1)
式中、Xブレンドは、2つのポリマーA及びBのブレンドにおけるモノマーXから誘導された単位の含有量(重量%)であり、それぞれX及びXのモノマーXから誘導された単位の個々の含有量(重量%)をそれぞれ有し、n及びnは、ブレンド中の成分A及びBの重量分率を表す。ブレンド及び第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分(例えば、式(1)の成分A)に関する既知のモノマー含有量、及び既知のポリスプリット(すなわち、ブレンド中の第1及び第2のエチレン-α-オレフィン成分の重量%)、第2のエチレン-α-オレフィン成分(例えば、式(1)の成分B)のモノマー含有量は、容易に計算され得る。
【0053】
同様に、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のMFRは、同様の様式で計算され得る。特に、第2のコポリマー成分のMFRは、次の関係を使用して計算され得る、
logMFR=nlogMFR+nlogMFR(2)
式中、MFRは、それぞれ個別のMFR値MFR及びMFRを有する2つのポリマーA及びBのブレンドのMFR(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))であり、n及びnは、ブレンド中の成分A及びBの重量分率を表す。したがって、成分Aの既知のポリスプリット及び既知の(測定された)MFR(ASTM D1238に従ってMFRについて回収及び測定され得る第1の直列重合の生成物)、並びに最終生成物の測定されたMFR、成分BのMFRは式(2)に従って計算され得る。
【0054】
結晶化度
特定の実施形態では、X線回折(XRD)を使用して、(a)コポリマー組成物、及び/又はコポリマー組成物の第1又は第2の画分のいずれかの結晶化度を決定し得る。XRDを使用して%結晶化度を決定する方法は、米国特許出願公開第2015/0031831号明細書の段落[0130]~[0132]に記載された記載に従い、その記載は参照により本明細書に組み込まれる。この方法には、ポリマーサンプルのX線回折パターンを取得し、次に各サンプルの透過係数を計算し(25℃で(i)サンプルの初期画像Iを空のサンプルホルダの初期画像Iで除算することにより)、及び結晶性ピークの散乱強度を総散乱強度と比較することにより、%結晶化度を計算することを含む。本明細書の目的のために、特に明記しない限り、25℃で行われた測定は、コポリマー組成物及び/又はその画分の%結晶化度を決定するために使用されるべきである。
【0055】
特定の実施形態によれば、第1及び第2の画分のそれぞれは、XRD分析によって決定されるように、25℃で0%の結晶化度を示す(したがって、コポリマー組成物も0%の結晶化度を示す)。より高いエチレン画分は、より低いエチレン画分よりも高い結晶化度(もしあれば)を示す傾向があると予想でき、さらに、より低い試験温度では、XRD分析はより高い結晶化度を示し得る。したがって、いくつかの実施形態では、コポリマー組成物は、5℃でのXRD分析によって決定されるように、10%未満の結晶化度、例えば1%~5%の範囲内の結晶化度を示し得る。そのような実施形態では、第1の画分(例えば、より高エチレンの画分)は、15%未満の結晶化度(4%~14%、又は4%~10%の範囲内)を示し得る。
【0056】
重合反応
前述の記載に従ってバイモーダルポリマー組成物を製造するための任意の適切な重合プロセスが利用されてもよい。各個別のエチレン-α-オレフィンコポリマー(例えば、単一反応ゾーンの実施形態におけるコポリマー組成物、又はいくつかのマルチ反応ゾーンの実施形態における第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分のそれぞれ)は溶液中でよく撹拌された単一槽型反応器において重合できる。適切な溶媒には、典型的な炭化水素溶媒が含まれる。好ましくは、溶媒は、混合ヘキサン(イソヘキサン、シクロヘキサン、及び/又はヘキサン)、又はより好ましくはイソヘキサンなどの炭化水素溶媒である。しかしながら、溶液重合プロセスのための任意の他の適切な炭化水素溶媒(特に、同様の沸点、例えばイソヘキサンの25℃以内、好ましくは20℃以内、より好ましくは15℃以内の沸点を有する任意の他の炭化水素溶媒)を使用してもよい。重合中の溶液の粘度は、10000cPs未満、又は7000cPs未満、好ましくは500cPs未満であることができる。
【0057】
いくつかの実施形態による適切な反応器は、ランダムコポリマー製造のための完全逆混合を提供する、液体が充填された連続流の撹拌槽型反応器を含む。溶媒、モノマー、及び触媒が反応ゾーンに供給される。2つ以上の反応ゾーンが利用される場合、溶媒、モノマー、及び/又は触媒は、第1の反応ゾーン又は1つ以上の追加の反応ゾーンに供給される。単一の反応ゾーンは、実質的に同様の条件で動作する複数の反応器を含み得る、又は、いくつかの実施形態では、複数の反応ゾーンが使用されてもよい。例えば、直列又は並列の反応ゾーン構成を利用してもよい。直列反応では、第1の反応器の流出物(溶媒、ポリマー生成物、及び潜在的に未反応のモノマー及び/又は未使用の触媒も含む)を第2の直列反応器に供給してもよい。追加のモノマー、溶媒、及び/又は触媒をさらに第2の直列反応器に供給してもよい。
【0058】
さらに、WIPO公開番号WO2013/115912の段落[0065]~[0069]の記載に従って、水素を反応器(又は、マルチ反応ゾーン構成の第1及び/又は第2の直列又は並列反応ゾーン)に添加してもよく、この記載は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態によれば、水素は、第1の反応器に供給されなくてもよい(すなわち、反応器1へのフィードが0重量%の水素を含むように)。水素が第1の反応器に供給される実施形態では、水素は、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6重量%~0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、又は1.5重量%の範囲内の量で、第1の反応器に供給されてもよく、重量パーセンテージは、モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、及び/又は他の適切なα-オレフィン)、水素、及び第1の反応器に供給される溶媒(任意の下限から任意の上限までの範囲が様々な実施形態で企図される)の総質量に基づく。同様に、水素は第2の反応器に供給されてもよく又はされなくてもよく、水素が第2の反応器に供給される場合、水素は、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、又は0.15重量%~0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%の範囲内の量で供給され、重量パーセンテージは、第2の反応器に供給されるモノマー、水素、及び溶媒の総質量に基づく(任意の下限から任意の上限までの範囲が様々な実施形態で企図される)。
【0059】
さらに他の実施形態では、溶液相重合の代わりに、スラリー相又はバルク相重合を、任意の又はすべての所与の反応ゾーンで利用してもよい。
【0060】
好ましい触媒にはメタロセン触媒が含まれる。本明細書に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマーを製造するのに適した任意のメタロセン触媒を使用してもよい(いくつかの実施形態による特に好ましい触媒は、本明細書で以下により詳細に記載されている)。
【0061】
各重合反応ゾーンの温度は、例えば反応器冷却ジャケット、冷却コイル、自動冷却予冷フィードの使用、及び/又は発熱重合反応の熱を吸収するためのそれらの組み合わせを介して、任意の適切な手段によって制御され得る。自動冷却反応器の冷却には、反応器内に気相が存在する必要がある。いくつかの実施形態によれば、予冷フィードを備えた断熱反応器が好ましく、そこでは、重合液体の温度上昇を可能にすることによって重合発熱が吸収される。
【0062】
反応器温度及び/又は水素供給速度は、所与の反応ゾーンで製造されるポリマー生成物の分子量(例えば、M、M、及びMFRを含む他の関連する特性)を制御するために使用され得る。例えば、水素は連鎖移動剤として作用し、成長しているポリマー鎖へのモノマーの組み込みを停止し得る(例えば、より多くの水素フィードがより小さなポリマー鎖、すなわちより高いMFRと相関し得るように)。温度は触媒を失活させる可能性がある。MFRを制御するためのそのような方法は、以下でより詳細に記載される。
【0063】
しかし、一般に、重合温度は、所定の重合反応ゾーンにおいて、0℃、80℃、又は100℃のいずれか1つから150℃、180℃、又は200℃のいずれか1つの範囲内に適切にあり得、特定の実施形態では、温度が100℃~150℃又は110℃~150℃の範囲内である。1つ以上の追加の重合反応ゾーンを使用する場合、追加の反応ゾーン温度は、約40℃~約200℃まで変化し、約50℃~約150℃が好ましく、より好ましくは約100℃~約150℃である。さらに、特に直列反応の実施形態における2つの反応ゾーン間の温度差は、40℃未満、好ましくは30℃、20℃、10℃未満、又はさらに5℃又は3℃未満であり得る。さらに、直列重合反応では、第2の反応ゾーンの触媒活性が低すぎて適切な量の第2のコポリマー成分を製造できないレベルまで第1の反応ゾーンの触媒を失活させないように温度を選択することが好ましく、代替的に、又はさらに、追加の触媒を第2の反応ゾーンに供給して、適切なレベルの重合を維持して、第2の反応ゾーンで製造される所望の量の第2のコポリマー成分を達成してもよい。
【0064】
反応圧力は、触媒系の詳細によって決定される。一般に、単一の反応器又は一連の各反応器であるにもかかわらず、反応器は、2500ポンド/平方インチ(psi)(17.23MPa)未満、又は2200psi(15.16MPa)未満又は2000psi(13.78MPa)未満の反応器圧力で操作される。好ましくは、反応器圧力は、ほぼ大気圧から約2000psi(13.78MPa)、又は約200psi(1.38MPa)~約2000psi(13.78MPa)、又は約300psi(2.07MPa)~約1800psi(12.40MPa)である。列挙された下限のいずれかから列挙された上限のいずれかの範囲が企図され、本記載の範囲内である。
【0065】
本明細書に記載されるプロセスでの使用に適した特定の反応器構成及び操作は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,319,998号明細書及び2000年10月25日に出願されたシリアル番号60/243,192の米国仮特許出願に詳細に記載されている。分岐は、重合触媒又はプロセスの選択によって導入できる。
【0066】
触媒及び活性剤
上記のように、本明細書に記載されるようなエチレン-α-オレフィンコポリマーを製造するのに適した任意のメタロセン触媒が使用されてもよい。当業者が理解するように、メタロセン触媒は、前駆体又はプレ触媒の形態で存在し(このセクションで記載)、触媒前駆体は一般的に中性の錯体であるが、適切な助触媒(活性剤とも称される)で活性化される場合、活性メタロセン触媒を生成し、これが一般に、オレフィンを配位、挿入、及び重合できる空の配位部位を有する有機金属錯体を指す。
【0067】
「触媒」への言及は、文脈がこれを明らかにする(例えば、このセクションに記載されるような所望の触媒構造への言及による)予備活性化形態の触媒を意味するものとする。一方、本明細書のプロセス(例えば、触媒を重合反応ゾーンに供給する)における「触媒」の議論において、そのような触媒は、重合を行うために活性化を必要とすることが理解されるべきである。したがって、重合反応ゾーンに触媒を供給することへの言及は、(i)触媒が予備活性化され、したがってその活性化ゾーンに供給されること、(ii)触媒はインサイチュでの活性化のために活性剤と一緒に供給されること、及び/又は(iii)触媒及び活性剤は、重合反応ゾーンに別々に供給され、インサイチュでの活性化のための代替方法を提供することを意味すると理解されるべきである。メタロセン触媒の活性化はよく知られており、十分に立証されている。例えば、米国特許第5,324,800号明細書、米国特許第5,198,401号明細書、米国特許第5,278,119号明細書、米国特許第5,387,568号明細書、米国特許第5,120,867号明細書、米国特許第5,017,714号明細書、米国特許第4,871,705号明細書、米国特許第4,542,199号明細書、米国特許第4,752,597号明細書、米国特許第5,132,262号明細書、米国特許第5,391,629号明細書、米国特許第5,243,001号明細書、米国特許第5,278,264号明細書、米国特許第5,296,434号明細書、米国特許第5,334,677号明細書、米国特許第5,416,228号明細書、米国特許第5,449,651号明細書、及び米国特許第5,304,614号明細書を参照のこと。
【0068】
特に好ましい触媒は、WIPO公開番号WO2013/115912号の段落[0046]~[0056]に記載されたモノ-シクロペンタジエニル(モノ-Cp)及び/又はビス-Cp触媒(対称及び非対称ビス-Cp触媒を含む)を含み、この記載は、参照により本明細書に組み込まれる。そこに記述されているように(例えば、段落「0046]において、そのような触媒のCp環配位子は、Cp環配位子が、より詳細には、飽和又は不飽和環系、例えばテトラヒドロインデニル、インデニル、又はフルオレニル環系の別の形態であるように、縮合置換を含んでいてもよい。実際、いくつかの実施形態では、適切な触媒には、WO2013/115912の段落[0053]~[0056]に記載されている架橋ビスインデニルメタロセン触媒が含まれる。
【0069】
適切な活性剤には、参照によりその記載も本明細書に組み込まれる、WO2013/115912の段落[0057]~[0060]、及び/又は米国特許出願公開第2015/0025209号明細書の段落[0110]~[0133]に記載されている非配位アニオンが含まれる。WO2013/115912の段落[0061]~[0062]に記載されている非イオン性活性剤も適切であり得、そのような記載は参照により本明細書にさらに組み込まれる。いくつかの実施形態において特に有用な活性剤には、非配位アニオン(NCA)活性剤、例えば参照により組み込まれる米国特許第2015/0025209号明細書の段落[0124]にあるもの、及び米国特許第8,658,556号明細書の第7及び20~21欄にあるものが含まれる。適切なNCA活性剤の特定の例には、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、ビス(C-C20アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、MeNHテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、MeNHテトラキス(ヘプタフルオロ-2-ナフチル)ボレート、及びビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが含まれる。
【0070】
直列又は並列重合でのポリマー特性の調整
特定の実施形態において、好ましいプロセスは、2つの重合反応ゾーンを用いる直列又は並列重合を含む(それぞれが単一の重合反応器、フィードを受け取り、ほぼ同一の温度、圧力、及び他の反応条件下で並行して動作する複数の反応器、又は異なる領域の重合反応を可能にするように操作された単一の反応器内の個別の重合ゾーンを構成し得る)。直列反応重合の実施形態に従って製造されたコポリマー組成物は、直列反応器ブレンドと呼ばれることがあり、並列重合によって製造されたコポリマー組成物は、重合後にブレンドされてもよく、したがって、ポスト反応、ポスト反応器、又はポスト重合ブレンドと呼ばれる。
【0071】
さらに、前述のように、好ましい重合反応は、溶液重合、特に溶液メタロセン重合(例えば、メタロセン触媒、特に上記の記載に従って1つ以上のメタロセン触媒を使用して行われる溶液重合反応)を利用する。そのような実施形態では、溶媒は、好ましくは、1又は複数の重合流出物(例えば、直列又は並列マルチ反応器構成の第1流出物及び/又は第2流出物)から除去されて、固体ポリマー生成物が得られる。これを達成するための適切な揮発分除去プロセスは周知であり、任意の適切な揮発分除去プロセスは、本明細書に記載される溶液重合プロセスに適用され得る。
【0072】
したがって、特定の実施形態による反応器ブレンドバイモーダルコポリマー組成物を形成するためのプロセスは、第1の重合反応ゾーンに、(i)エチレン及び第1のC-C20α-オレフィンコモノマーを含む複数のモノマー、(ii)溶媒、(iii)第1のメタロセン触媒、及び(iv)任意の水素を供給することを含む。第1のポリマー反応生成物(例えば、第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の前述の記載によるエチレン-α-オレフィンコポリマー)は、第1の重合反応ゾーンで形成され、第1の重合反応流出物(少なくとも第1のポリマー反応生成物の一部及び溶媒の少なくとも一部)は、第1の重合反応ゾーンから取り出される。いくつかの実施形態では、この流出物は、第1の反応ゾーンからのいくつかの未反応のモノマー及び/又はコモノマーをさらに含み得る。
【0073】
直列ブレンドの実施形態では、次に、流出物は、エチレン及び/又は第2のC-C20α-オレフィンコモノマーを含む追加の複数のモノマーと共に、第2の重合反応ゾーンに供給される。任意に、以下の1つ以上を第2の重合反応ゾーンに供給されてもよい、追加の溶媒、追加の水素、及び第2のメタロセン触媒。ポスト重合(並列反応器)ブレンドの実施形態では、第1の流出物は、第2の重合反応ゾーンで形成された第2の重合流出物と組み合わされ、追加のモノマー、コモノマー、触媒、溶媒、及び任意に水素が、第2の重合反応ゾーンに直接供給される。
【0074】
第2の重合反応ゾーンでは、第2のポリマー反応生成物が形成され(これは、例えば、第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分の前述の記載によるエチレン-α-オレフィンコポリマーであり得る)、第2の生成物を含む第2の流出物は、第2の反応ゾーンから取り出される。直列反応器構成では、第2の流出物は、(i)第2の反応ゾーンに提供される未反応の第1のポリマー反応生成物及び(ii)第2の反応ゾーンで形成される第2のポリマー反応生成物の緊密なブレンドである。並列構成では、第2のポリマー反応生成物を含む第2の流出物が、次いで第1の重合流出物(第1のポリマー反応生成物を含む)とブレンド(溶融混合又はその他の方法で物理的にブレンド)され、緊密にブレンドされたバイモーダルコポリマー組成物を形成する。
【0075】
このようなプロセスでは、第2の重合反応ゾーンに供給される第2のメタロセン触媒は、第1のメタロセン触媒と同じ又は異なっていてもよいが、同じであることが望ましいため、このような実施形態によるプロセスは、追加のメタロセン触媒の第2の重合反応ゾーンへの供給を含むものとして特徴付けられ得る。もちろん、いくつかの直列反応器の実施形態は、第1の重合反応ゾーンにのみへの触媒フィードを利用し、第2の重合反応ゾーンに供給される第1の流出物中に存在する触媒を頼りに第2の反応ゾーンで重合を継続するが、他の直列反応器の実施形態ではまた、第2の反応ゾーンへの触媒フィードを利用する。さらに、前述のように、メタロセン触媒を重合反応ゾーンに供給することは、触媒をその活性化形態で供給すること、又は触媒を活性剤と一緒に同時供給して、触媒がフィードにおいて及び/又は所与の重合反応ゾーンにおいてインサイチュで活性化されるようにすることを含む。
【0076】
これも以前に議論したように、水素は、重合反応ゾーンの一方又は両方に供給されてもよい。溶媒は、第1の反応ゾーンにのみ、又は両方の反応ゾーンに供給され得る。
【0077】
溶媒識別、反応器動作条件、メタロセン触媒及び活性剤組成などはすべて、様々な実施形態によるプロセスの以前の一般的な記載に従う。
【0078】
さらに、いくつかの実施形態は、ポリマーのTE及び/又はSSIを変更する様式で粘度調整ポリマーの製造を制御するのに適した重合プロセスを提供し(粘度調整剤として使用される場合)、他の主要な特性をおおよそ一定に維持することを有利に可能にする。このような制御方法によりさらに、TE及び/又はSSIの測定では通常、ポリマーを使用して潤滑油組成物を配合し、配合された潤滑剤を測定する必要があるとしても、所定の商業用製造キャンペーン中にポリマー組成物のTE及び/又はSSIをシフトする即時のオンライン制御が可能になる。
【0079】
そのような実施形態に従うプロセスは、初期のコポリマー組成物を最初に形成し、続いて、初期のコポリマー組成物と比較して変更された以下の特性、(1)コポリマー組成物のMFR、(2)コポリマー組成物のcMFRR、(3)及びMFR/MFRの1つ以上を有する調整されたコポリマー組成物を得るために重合条件を調整することを含み得る。調整されたコポリマー組成物のエチレン含有量は、初期のコポリマー組成物のエチレン含有量と実質的に同じ(例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下)である。調整されたコポリマー組成物を粘度調整剤として使用する潤滑油組成物は、初期コポリマー組成物を含む未調整の潤滑油組成物とは異なるTE及び/又はSSIを示し得るが、その他の点では調整された潤滑油組成物と同一である。このようなプロセスは、特に異なるSSI及び/又はTEが必要である又は所望される場合に、類似のポリマー生成物間で生成物キャンペーンをシフトする際に有利に使用できる。上記の特性(1)~(3)、及び(4)ポリマー組成物のエチレン重量%を使用して、ポリマーが潤滑油組成物に与えるTE及びSSIを予測でき、従ってこのような特性を制御することで、所望のTE及び/又はSSIを制御できる。したがって、特定の実施形態は、潤滑油組成物に使用した場合コポリマー組成物がターゲットTE及び/又はSSIを満たすことを確実にするために、プロセスによって製造されたコポリマー組成物の測定された(1)MFR、(2)cMFRR、及び/又は(3)IFMFRRに少なくとも部分的に基づいて重合反応を制御することを含む。そのような制御プロセスは、潤滑油中のコポリマー組成物を個別に試験する必要性を有利に排除し、代わりに、オンライン及びオンサイトで実施できる有用な制御メカニズムを提供する。
【0080】
例えば、いくつかの実施形態では、プロセスは、例えば、それぞれが同じ(±5重量%以内、好ましくは±2重量%以内)エチレン含有量を有するが、潤滑油組成物に使用した場合、SSIが異なる少なくとも2つの異なるバイモーダルエチレンコポリマー組成物を生成するために重合製造キャンペーンにおいて使用されてもよい。例えば、そのような実施形態によるプロセスは、以下を含み得る、(a)重合反応システムを使用して、最初に、第1の画分A及び第2の画分Bを含む第1のバイモーダルエチレンコポリマー組成物を製造することであって、この第1のバイモーダルエチレンコポリマー組成物は、(i)MFRに等しいMFR、(ii)cMFRRに等しいcMFRR、(iii)(MFR/MFRに等しいMFR/MFR、及び(iv)E重量%のエチレン含有量を有すること、(b)第2のエチレンコポリマー組成物のターゲットTE及び/又はSSI性能を決定すること、(c)決定されたターゲットTE及び/又はSSIに少なくとも部分的に基づいて、調整されたMFR、調整されたcMFRR、及び調整されたMFR/MFRの1つ以上がMFR、cMFRR、及び/又は(MFR/MFRとそれぞれ異なるように、この調整されたMFR、cMFRR、及びMFR/MFRを決定すること、並びに(d)重合反応システムを使用して、この1回目の後の2回目に、第1の画分A’及び第2の画分B’を含む第2のバイモーダルエチレンコポリマー組成物を製造し、第2のエチレンコポリマー組成物は、調整されたMFR、調整されたcMFRR、及び調整されたMFR/MFRにそれぞれ等しいMFR、cMFRR、及びMFR/MFRを有すること。
【0081】
コポリマー組成物のターゲットMFR(及び/又は他のターゲット値)を決定することは、各(又は両方の)画分の対応するターゲット値を決定することを含み得る。例えば、ターゲットMFRを決定することは、第1の画分のターゲットMFR、第2の画分のターゲットMFR、又はその両方を決定することを含み得る。したがって、調整された第1の画分は、ターゲットMFRと同等(若しくは10%、5%、又は1%以内、以下を参照)に調整されたMFRを有し得、調整された第2の画分は、ターゲットMFRと同等(若しくはその10%、5%、又は1%以内)に調整されたMFRを有し得、又は両方である。
【0082】
第1の画分(A)のMFRは、いくつかの実施形態によるそのような制御戦略を実施するために使用するのに便利な変数である。これはIFMFRRとcMFRRとの両方に影響し、重合反応システムの1つ以上の重合反応条件の調整を含む既知の技術によって制御され得る。当業者は、重合反応システムが、例えば、本明細書の他の場所に記載されるような直列又は並列反応構成(例えば、直列又は並列構成で設定された第1及び第2の重合反応ゾーンを含む)を含み得ることを認識する。「重合反応システム」における重合反応条件の調整への言及は、そのようなシステム内の1つ以上の重合反応ゾーンにおける条件の調整(例えば、第1の画分を製造するための第1反応ゾーンにおける条件の調整、第2の画分を製造するための第2反応ゾーンにおける条件の調整又は両方)を含む。
【0083】
例えば、水素(及び/又は追加の水素)は、第1及び/又は第2の画分が形成されている重合反応システムに供給され得る(すなわち、重合反応システムへの水素供給速度が調整され得る)。重合反応システムは、1つ以上の重合反応ゾーンを含み得、例えば、直列反応システムにおいて、反応システムは、第1及び第2の重合反応ゾーンを含み得、水素は、第1(第1の画分MFRを調整するため)、第2(第2の画分MFRを調整するため)、又は両方に供給され得る。メタロセン重合におけるポリマー鎖の成長を停止させる水素の既知の効果により、モノマー及び触媒の流量に比べて水素の流量が多いと、ポリマー鎖が短くなる(MFRが高くなる)傾向がある。別の例として、触媒供給速度及び/又はモノマー供給速度は、重合反応システムにおいて調整されてもよい。同様に、重合温度は調整されてもよい。重合反応プロセスにおけるMFR(すなわち、ポリマー鎖長)の調整は周知の技術であり、本開示の恩恵を受ける当業者は、一方又は両方のポリマー画分のMFRを調整できる多くの方法のいずれかを容易に理解する。
【0084】
ポリスプリット(polysplit、コポリマー組成物全体の一部としての第1の画分の相対量)も容易に制御され得、コポリマー組成物のすべての望ましい特性(MFR、cMFRR、IFMFRR)に影響を与える。これもまた、既知の重合技術によって容易に制御される。例えば、直列反応器構成では、第1の直列反応器から第2の反応器への相対流量は、ポリスプリットを増加させるために増加され、又はポリスプリットを減少させるために減少され得る。同様に、並列重合プロセスによって製造されたコポリマー組成物のポリスプリット(例えば、第1及び第2の画分は、並列反応器で製造され、溶融混合などのポスト反応器技術を介して組み合わされる)は、第2の画分と組み合わせて第1の画分の相対量を調整するだけで容易に制御され得る。触媒供給速度並びに重合反応温度及び/又は圧力は、同様に既知の重合技術に従って、MFR、cMFRR、及び/又はIFMFRR特性を調整するために使用され得るさらなる条件である。
【0085】
特定の実施形態では、調整は、好ましくは、いくつかの実施形態のポリマー組成物について、前述のMFR/MFRの範囲(例えば、高、低、及び/又は中間)に従って、ターゲットの10%、5%又はさらに1%以内(例えば、ターゲットMFR比が1.2の場合、調整の誤差10%には、1.2ターゲットの±0.12以内のMFR比が含まれるため、調整された成分間MFR比は1.08~1.32の範囲内である)で、ターゲット成分間MFR比を達成する。いくつかの実施形態では、調整は、初期の成分間MFR比よりも1に近い成分間MFR比を達成することが好ましいが、さらに他の実施形態では、所望の成分間MFR比は、例えば、所望のTE及び/又はSSI性能に基づく、任意の所望の値であり得る。
【0086】
そのような調整に適した重合プロセスは、例えば、(1)複数のモノマー(好ましくはエチレン及び1つ以上のC-C20α-オレフィンコモノマーを含む)、(2)溶媒、(3)触媒、及び任意に(4)1つ以上の重合反応ゾーンへの水素を供給することにより、初期マルチモーダルコポリマー組成物(好ましくはバイモーダルエチレンコポリマー組成物)を形成することを含み得る。複数の重合反応ゾーンでは、そのようなフィードの1つ以上を、各重合反応ゾーンに、又は1つだけに、又はそれらの任意の組み合わせに提供し得る。調整に適した重合プロセスは、上記で記載の直列又は並列重合によるプロセスを含み得る。
【0087】
この調整の効果には、それが潤滑油組成物に使用される場合のコポリマー組成物のTE及び/又はSSIの修正が含まれる。他の点では、調整されたコポリマー組成物は、第1のコポリマー組成物と比較して、一定のエチレン含有量、及び/又は2つのコポリマー成分画分のそれぞれの相対量を有する。
【0088】
述べたように、直列又は並列重合プロセスは、直列又は並列反応の各重合反応ゾーンにわたって提供される制御、したがって、製造されるポリマー組成物中のポリマー画分のMFRに対する制御のため、そのような調整手順に特に有利である。
【0089】
例えば、いくつかのより詳細な実施形態による重合プロセスは、以下を含み得る、
(a)第1の重合反応ゾーンへ、(i)第1のモノマー供給速度での第1のエチレンモノマー、(ii)第1のコモノマー供給速度での第1のC-C20α-オレフィンコモノマー、(iii)第1の触媒供給速度での第1のメタロセン触媒、及び(iv)任意に、第1の水素供給速度での第1の水素を供給して、MFRA1のMFR(ASTM D1238、230℃及び2.16kg)を有する初期の第1エチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(A1)が、第1の重合反応ゾーンにて形成されるようにすること、
(b)第2の重合反応ゾーンへ、少なくとも(i)第2のモノマー供給速度での第2のエチレンモノマー、(ii)第2のコモノマー供給速度での第2のC-C20α-オレフィンコモノマー、(iii)任意に、第2の触媒供給速度での第2のメタロセン触媒、及び(iv)任意に第2の水素供給速度での第2の水素を供給することであって、MFRB1のMFRを有する初期の第2エチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(B1)が、第2の重合反応ゾーンにて形成されるようにすること、
(c)初期の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(A1)と初期の第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(B1)とのブレンド(例えば、緊密直列反応器ブレンド又はポスト重合ブレンドのいずれか)を含む初期のエチレンコポリマー組成物を形成することであって、この初期のエチレンコポリマー組成物が(1)MFRのMFR、(2)CMFRRのcMFRR、及び(3)MFRA1/MFRB1のIFMFRRを有すること、
(d)MFRA2のMFRを有する調整された第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(A2)及び(ii)MFRB2のMFRを有する調整された第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(B2)を形成するために、1つ以上の重合反応条件を調整すること(例えば、(a-i)第1のモノマー供給速度、(a-ii)第1のコモノマー供給速度、(a-iii)第1の触媒供給速度、(a-iv)第1の水素供給速度、(b-i)第2のモノマー供給速度、(b-ii)第2のコモノマー供給速度、(b-iii)第2の触媒供給速度、及び(b-iv)第2の水素供給速度の1つ以上)、並びに
(e)調整された第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(A2)と調整された第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(B2)とのブレンドを含む調整されたエチレンコポリマー組成物を形成し、調整されたエチレンコポリマー組成物はMFRのMFR、cMFRRのcMFRR、及びMFRA2/MFRB2のIFMFRRを有し、こうして以下の条件の1つ以上を満たす、
(e-i)MFRはMFRとは異なる、
(e-ii)cMFRRはcMFRRとは異なる、及び
(e-iii)MFRA2/MFRB2はMFRA1/MFRB1とは異なる。
【0090】
条件(e-iii)が満たされる(つまり、MFRA2/MFRB2がMFRA1/MFRB1と異なる)実施形態では、調整された第1及び調整された第2エチレン-α-オレフィンコポリマー生成物の両方が初期(例えば、MFRA2はMFRA1とは異なり、MFRB2はMFRB1とは異なる場合がある)、又はMFR/MFRの比が初期のコポリマー組成物から調整されたコポリマー組成物に変化する限り、2成分のMFRのうち1つだけが変化し得る(例えば、MFRA1がMFRA2に等しい、又はMFRB1がMFRB2に等しい場合がある)。
【0091】
直列重合プロセスでは、(c)初期のエチレンコポリマー組成物の形成は、初期の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物の少なくとも一部を第1の重合反応ゾーンから第2の重合反応ゾーンに供給して、第2重合反応ゾーンの流出物が、未反応(第2反応ゾーンにおいて)の初期の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(A)と、第2の重合反応ゾーンにおいて形成される初期の第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物(B)を含む初期ブレンドとして初期エチレンコポリマー組成物を含む。調整されたエチレンコポリマー組成物は同様の方法で形成され、未反応の調整された第1のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物及び第2の重合反応ゾーンで形成された調整された第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物を含む。
【0092】
並列重合反応プロセスでは、初期のエチレンコポリマー組成物は、例えば初期の第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物を混合することにより(溶液中又は揮発分除去後のいずれか、例えば溶融混合プロセスなどによる)ポスト反応器又はポスト重合ブレンドとして形成され得る。調整されたコポリマー組成物は、調整された第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物を混合することによって同様に形成される。
【0093】
さらに、いくつかの実施形態では、調整されたコポリマー組成物のターゲット特性(MFR、cMFRR、IFMFRR)は、調整に先立って決定される。これらのターゲット特性は、(レオロジー調整剤として使用される場合の)バイモーダルコポリマー組成物の所望の又はターゲットTE及び/又はSSI(好ましくは両方)性能に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。したがって、いくつかのそのような実施形態によるプロセスは、(c-1)ターゲットMFR、ターゲットcMFRR、及び/又はターゲットIFMFRRを決定することを含み、調整(d)が行われ、結果としてMFR、cMFRR、及び/又はIFMFRRが、決定されたターゲット成分間MFR、ターゲットcMFRR、及び/又はターゲットIFMFRRを満たす(好ましくは10%、5%、又は1%以内、より好ましくは等しい)ように変更される。
【0094】
好ましくは、調整された第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物のそれぞれのエチレン含有量(重量%)は、それぞれ、初期の第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物のそれぞれのエチレン含有量と比較して一定である(したがって、初期対調整されたエチレンコポリマー組成物の全エチレン含有量は一定のままである)。この文脈で使用される「一定」とは、エチレン重量%が初期から調整されたエチレンコポリマー組成物(及び/又はいずれかの画分)まで5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満変化することを意味する。このようなパーセンテージは、大きいエチレン含有量(初期又は調整された)を小さいエチレン含有量(初期又は調整されたもう一方)で除算し、1を引いてパーセンテージに変換する(例えば、1.04の結果が4%変化を意味する)ことによって決定される。特定の実施形態において、ポリスプリット(コポリマー組成物の第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー生成物の相対量)は、初期のエチレンコポリマー組成物と比較して一定のままであり、こうして、調整された第1のエチレン-α-オレフィンコポリマーの相対量は、初期の第1のエチレン-α-オレフィンコポリマーの5%、好ましくは3%、より好ましくは1%以内である(この量は、コポリマー組成物全体の総重量に基づいた重量%である)。
【0095】
これらの調整プロセスは、幅広い範囲の(i)全エチレン含有量、(ii)各コポリマー画分の相対量、及び(iii)各画分のエチレン含有量を有するバイモーダルエチレンコポリマー組成物のTE及び/又はSSI性能の調整に、このような特性(i)~(iii)が調整プロセスを通じて一定である限り、適している。例えば、いくつかの実施形態の初期及び調整された全エチレン含有量は、1~99重量%の範囲内、例えば20~80、30~70、又は40~60重量%の範囲内にあり得、前述の低値のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲も、様々な実施形態で企図される。同様に、第1のコポリマー画分(例えば、第1のエチレン-α-オレフィン成分)及び第2のコポリマー画分(例えば、第2のエチレン-α-オレフィン成分)の初期及び調整相対量は、それぞれ独立して5~95重量%、例えば10~90、20~80、30~70、40~60、40~50、50~60、又は45~55重量%の範囲内であり得、前述の下限のいずれかから前述の下限のいずれかまでの範囲も企図される。特定の実施形態では、初期の及び調整されたコポリマー組成物は、第1のものより多くの第2のコポリマー画分を含む。
【0096】
さらに、このプロセスは、広範囲の初期成分間MFR比(及び幅広い範囲内のMFRを有する成分又は画分)を有するバイモーダルコポリマー組成物を調整するのに適している。例えば初期の成分間MFR比は0.01~100の範囲内であり得る。また、第1及び第2のエチレンコポリマー画分のそれぞれのMFRは、独立して0.3~50、例えば0.5~40、1.0~30、5.0~20、又は5.0~10g/10分(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))の範囲内であり得、前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲も、様々な実施形態で企図される。
【0097】
調整された成分間MFR比は、バイモーダルコポリマー組成物を含む粘度調整剤によって潤滑油組成物に付与される所望のTE、及び/又はこうした潤滑油組成物の意図する最終用途においてゲル化及び/又はフィルタの目詰まり傾向を最小限にする必要性に応じて、広い範囲内であり得る。例えば、TEを最大化することが所望されるいくつかの実施形態によれば、調整された成分間MFR比又は調整されたIMFRR(MFR/MFR)は、低いか又は中間、例えば0.2~6、又は0.5~3、又は1,5~6、例えば1.75~5.0、又は1.5~3.0、又は0.5~1.5のいずれか1つの下限からの範囲内であってもよく、様々な実施形態において、前述の任意の下限から任意の前述の上限までの範囲も企図される。そのような成分間MFR比は、g/10分(ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg))として決定された個々の画分のMFR、及び/又は計算されたMFR(例えば、以前の記載に従って直列反応器ブレンドの場合)に基づいて計算される。これらの実施形態のいくつかでは、調整された成分間MFR比は、初期成分間MFR比よりも1.0に近い。しかしながら、述べたように、いくつかの実施形態によれば、ターゲットMFR比は必ずしも1.0ではなく、代わりに、コポリマー組成物の所望のTE性能に依存し得る。例えば、そのような実施形態の調整されたMFR/MFRは、0.5~1.5g/10分の範囲内であり得る。さらに、そのような調整は、例えば、MFRを調整することによって(例えば、1.8~2.5g/10分の初期範囲から、1.3~1.7g/10分の範囲内の調整されたMFRまで)達成され得る。
【0098】
MFR(例えば、10.0g/10分以上)を増加させることにより、ゲル化及び/又はフィルタの目詰まりを回避する(TEが低下する可能性がある場合でも)必要がある実施形態では、調整されたIMFRR(MFR/MFR)は、代わりに10.0以上、例えば10、12、15、17、又は20の低値から25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75の高値までの範囲内であり得、前述の低値のいずれかから前述の高値のいずれかまでの範囲が企図される。これらの実施形態のいくつかでは、そのような調整は、例えば、MFRを(i)1~3g/10分の範囲内から(ii)0.2~0.8g/10分の範囲内(例えば、初期MFRが1~3g/10分の範囲内で、調整されたMFRが0.2~0.8g/10分の範囲内であるように)に低下させることによって達成され得る。さらに、これらの実施形態のいくつかでは、全体的なMFRは、3~7g/10分の範囲から1~2g/10分の範囲内になるように調整されてもよい。
【0099】
初期及び調整されたコポリマーのMFRは、それぞれ0.5~30g/10分の範囲内(ASTM D1238、230℃/2.16kg)、例えば範囲の上限が範囲の下限よりも大きい限り、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、及び3.0のいずれか1つの低値から2.5、3.0、3.5、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、及び30g/10分のいずれか1つの高値の範囲内であり得る。
【0100】
初期cMFRR及び調整されたcMFRRは、範囲の上限が下限よりも大きい限り、それぞれ15、20、25、30及び35のいずれか1つの下限から25、30、35、40、45、50、55、60及び65のいずれか1つの上限までの範囲であることができる。
【0101】
特定の実施形態では、調整されたコポリマー組成物(及び調整された第1のエチレン-α-オレフィン生成物及び調整された第2のエチレン-α-オレフィン生成物のそれぞれ)は、上記の「コポリマー組成物」及び/又は「エチレン-α-オレフィンコポリマー成分」のセクションで記載したコポリマー組成物に従って、MFR、cMFRR、IFMFRR、エチレン含有量、及び任意に、他の任意の特性を示す。したがって、そのような実施形態では、調整されたMFR及びMFR、並びに調整(d)後の調整された成分間MFR比(MFR/MFR)は、第1及び第2のエチレン-α-オレフィンコポリマー成分について前述したものと一致し、調整されたcMFRRは、様々な実施形態のコポリマー組成物などについて前述したものと一致する。
【0102】
潤滑油
前述のように、様々な実施形態のバイモーダルコポリマー組成物の1つの適切な用途は、潤滑油組成物中の粘度又はレオロジー調整剤としてである。粘度調整剤を含む潤滑油組成物、及びそのような油組成物中の他の適切な成分は、その記載が参照により本明細書に組み込まれるWIPO公開番号WO2013/115912の段落[0086]~[00102]に記載されている。その記載による例示的な潤滑油組成物は、WO2013/115912の段落[0087]に記載されるように、PAO-20又はPAO-30油未満の粘度を有するポリアルファオレフィン(PAO)として特徴付けられ得る、バイモーダルコポリマー組成物と基油又はベースストックとのブレンドを含む。代替的に、ベースストックは、任意の米国石油協会(API)のグループI、II、III、IV、又はVの油、又はそれらの任意の組み合わせとして記載され得る。適切な油には、石油から誘導された炭化水素油及び合成潤滑油の両方が含まれる。これら及び他のベースストックは当該技術分野でよく知られており、本開示のコポリマー組成物は、潤滑用途に適した任意のそのようなベースストックとブレンドされ得る。基油は、ASTM D445で測定される場合、100℃で1.5~100cStの範囲の動粘度を有することができる。
【0103】
潤滑油は、潤滑油組成物の重量に基づいて、少なくとも50重量%の基油を含み得る。例えば、基油は、潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の重量に基づいて、少なくとも60%(例えば、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%)の量で存在し得る。
【0104】
適切な基油には、火花点火及び圧縮点火内燃エンジン、例えば自動車及びトラックエンジン、船舶用及び鉄道用ディーゼルエンジンなどのクランクケース潤滑油として従来から使用されているものが含まれる。オートマチックトランスミッション流体、トラクタ流体、ユニバーサルトラクタ流体及び油圧流体、高耐荷重油圧流体、パワーステアリング流体などの動力伝達流体としての用途に従来通り使用及び/又は適合された基油にバイモーダルコポリマーを使用することでも、有利な結果が得られる。ギア潤滑剤、工業用油、ポンプ油及び他の潤滑油組成物も、本バイモーダルコポリマーの組み込みから利益を得ることができる。
【0105】
さらに、バイモーダルコポリマー組成物を含む適切な潤滑油組成物は、WO2013/115912の段落[0092]~[00102]に記載されている、流動点降下剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食抑制剤、消泡剤、清浄剤、防錆剤、摩擦調整剤などの潤滑油組成物に含めるのに適していることが知られている他の様々な成分のいずれかを含み得る。潤滑油組成物が上記で議論された成分の1つ以上を含有する場合、添加剤は、その意図された機能を実行するのに十分な量で組成物にブレンドされる。本開示において有用なそのような添加剤の典型的な量は、以下の表Aに示されている。
【表1】
【0106】
清浄剤及び金属防錆剤には、スルホン酸の金属塩、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチレート、ナフテネート及び他の油溶性モノ及びジカルボン酸が含まれる。高塩基性アルカリ土類金属スルホネート(特にCa及びMg塩)などの高塩基性(すなわち、過塩基性)金属塩は、清浄剤として頻繁に使用される。
【0107】
分散剤は、使用中の酸化から生じる油不溶性物質を流体に懸濁させて維持するため、スラッジの凝集、金属部品への沈殿又は堆積を防止する。適切な分散剤には、高分子量のN置換アルケニルスクシンイミド、油溶性ポリイソブチレンコハク酸無水物とテトラアミンペンタミンなどのエチレンアミンとの反応生成物及びそれらのホウ酸塩が含まれる。高分子量エステル(一価又は多価脂肪族アルコールによるオレフィン置換コハク酸のエステル化から生じる)又は高分子量アルキル化フェノールからのマンニッヒ塩基(高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合から生じる)も分散剤として有用である。
【0108】
耐摩耗剤は、その名前が示すように、金属部品の摩耗を減らす。従来の耐摩耗剤の代表は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びジアリールジチオリン酸(diaryldithiosphate)亜鉛である。
【0109】
摩擦調整剤は、そのような材料を含む任意の潤滑剤又は流体によって潤滑される表面の摩擦係数を変えることができる任意の材料である。適切な摩擦調整剤、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪エステル、又は長鎖脂肪エポキシドの誘導体、脂肪イミダゾリン、及びアルキルリン酸のアミン塩。本明細書で使用される場合、「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には直鎖炭素鎖を意味する。他の既知の摩擦調整剤には、油溶性有機モリブデン化合物、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートが含まれる。
【0110】
酸化防止剤は、使用中に鉱油が劣化する傾向を減らす。酸化防止剤の例には、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン)、フェニル-α-ナフチルアミン(PANA)、及びヒンダードフェノールが含まれる。ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として第2級ブチル及び/又は第3級ブチル基を含むことが多い。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には直鎖又は分岐アルキル)及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されてもよい。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、及び4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。他の有用なヒンダードフェノール酸化防止剤には、2,6-ジアルキルフェノールプロピオン酸エステル誘導体、例えばIRGANOX(登録商標)L-135(BASFから入手可能)、及びビスフェノール酸化防止剤、例えば4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)が含まれる。
【0111】
流動点降下剤は、潤滑油の流動性向上剤とも呼ばれ、流体が流れる温度又は注ぐことができる温度を低下させる。例には、C-C18のジアルキルフマレートビニルアセテートコポリマー、ポリメタクリレート及びワックスナフタレンが含まれる。
【0112】
泡の制御は、ポリシロキサンタイプの消泡剤(例えば、シリコーン油及びポリジメチルシロキサン)によって提供することができる。
【0113】
腐食抑制剤は、水又はその他の汚染物質による化学的攻撃から潤滑金属表面を保護する。適切な腐食抑制剤には、ポリオキシアルキレンポリオール及びそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、チアジアゾール及びアニオン性アルキルスルホン酸が含まれる。
【0114】
添加剤の多くは製造元から出荷され、配合物に一定量の基油溶媒と共に使用されることに留意する。したがって、上記の表の重量、及び本書で言及されている他の量は、特に指定のない限り、有効成分(つまり、成分の非溶媒部分)の量を対象とする。上記で示す重量%は、潤滑油組成物の総重量に基づく。
【0115】
ポリマーレオロジー調整剤を潤滑油組成物にコンパウンドする適切な方法は、その参考文献の段落[00103]~[00104]に記載されており、その記載も本明細書に組み込まれる。
【0116】
場合によっては、バイモーダルコポリマー組成物は、「添加剤パッケージ」(潤滑油組成物にブレンドするのに適した添加剤の配合物)における適切な成分であり得る。
【0117】
多くの実施形態のバイモーダルコポリマー組成物は、約0.1、0.5、1、1.5、又は2重量%の低値から1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5.0、7.0、10.0又はさらに12.0重量%の高値までの範囲内で潤滑油組成物に使用されてもよいが、ただし範囲の上限は、その下限よりも大きく、こうした重量%は、潤滑油組成物(バイモーダルコポリマー組成物及び任意の他の成分、例えば本明細書に参照されるような成分を含む)の総重量に基づく。いくつかの実施形態では、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、又は2.5重量%のレベルでのコポリマー組成物の配置が好ましい場合がある。また、いくつかの実施形態によれば、コポリマー組成物は、基油又はベースストックにおけるコポリマー組成物の5~15重量%の範囲内で濃縮物を形成する(例えば、他の成分と後でブレンドして、例えば添加剤パッケージで潤滑油組成物を形成する)のに適している場合がある。
【0118】
前述のように、多くの実施形態のバイモーダルコポリマー組成物は、潤滑油組成物において望ましい増粘効率(TE)及び剪断安定性指数(SSI)性能を達成する。例えば、いくつかの実施形態によるバイモーダルコポリマーは、少なくとも1.9、2.15、2.2、2.25、2.3、又は2.4、例えば2.15~3.0の範囲内、より好ましくは2.15、2.2、2.25、2.3、又は2.4のいずれか1つの低値から、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、又は3.5の高値までの、潤滑油組成物において配置及び試験される場合のTEを示し得る。TEは、前述の手順に従って測定される。同様に、様々な実施形態によるプロセスのターゲットTE値には、同じ範囲のTEが適している。
【0119】
バイモーダルコポリマー組成物を含む潤滑油のSSI値もまた、前述の記載に従って決定される。いくつかの実施形態のコポリマー組成物は、潤滑油で使用される場合、29~41、好ましくは30~40、より好ましくは32、33、又は34のいずれか1つから38、39又は40のいずれか1つの範囲内のSSIを有するそのような油をもたらす。様々な実施形態のプロセスのターゲットSSIは、10~50、好ましくは25~45、又はさらに20~40の範囲内、例えば20~30、25~35、30~40、及び/又は32~37の範囲内であり得、前述の下限のいずれかから前述の上限のいずれかまでの範囲も、様々な実施形態で企図される。
【0120】
上記のTE測定値は、任意で、所定のSSIに期待される値に対して補正又は正規化され得る。例えば、所定のポリマーは、TE及び例えば、40のSSIを示し得る。35 SSIに調整された場合にそのようなポリマーが示す推定TEは、35 SSIについての補正TE、又はTE補正若しくは正規化である。正規化は、様々なポリマーの予想される挙動のモデルから作成できる。例えば、本開示のバイモーダルエチレン-α-オレフィンコポリマーの場合、有用なTE補正計算は、TE補正=TE実際*(SSI所望/SSI実際0.59516であることが見出された。TE実際及びSSI実際はそれぞれ、ポリマーに対して決定された実際のTE及びSSI値を表し、SSI所望は、所望のSSI値であり、それに対してTEが補正される(例えば、上記の例では35)。したがって、2.4TE及び38 SSIを示すポリマーは、35 SSIで2.285の予測されたTE補正であると計算できる。この方法論は、わずかに異なるSSIを有するポリマーを比較する際に役立ち、異なるポリマーを比較するための正規化された基準を提供できる。いくつかの実施形態のコポリマー組成物によって潤滑油組成物に付与される優れたTEは、コポリマー組成物のより少ない装填を可能にして、同等に望ましいレオロジー調整効果を達成すると考えられる。この少ない装填は、次に、例えば、少量の望ましくない副生成物(例えば、エンジンの使用中に形成される分解されたポリマー)などの潤滑油組成物に有益な効果を提供し、次にすすの形成及び堆積物の減少につながり得る。コポリマー組成物を含む潤滑油組成物はまた、低温クランキングシミュレータ(CCS)試験及びミニ回転粘度計(MRV)において、有利には低い粘度を示す。CCS試験の粘度は、ASTM D5293で決定できる。潤滑剤が自由に流動可能である必要がある(冷)エンジン始動時の油の流れをシミュレートする。MRVは、ASTM D4684を使用して決定できる。粘度は、車両でのマルチグレード油のポンプ能力を示す。これらの値はどちらも通常周知の最大許容値に関して合格/不合格であり、本発明の様々な実施形態のコポリマー組成物を含む潤滑油組成物はすべて、許容可能なCCS及びMRVの結果を示す。
【0121】
さらに、潤滑油は、(ASTM D97に従って測定できるように)望ましくは低い流動点を有する。流動点は、いくつかの実施形態では-36℃以下、例えば-38℃以下、-40℃以下、-42℃以下、又は他の実施形態ではさらに-45℃以下であってもよい。
【0122】
バイモーダルポリマー組成物を含む潤滑油は、40℃及び100℃での動粘度から粘度指数を計算するためのASTM D2270法によって計算されるように、少なくとも100(例えば、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも150、又は少なくとも160)の粘度指数を有し得る。同様に、潤滑油は、240以下(例えば、220以下、又はさらに200以下)の粘度指数を有し得る。
【0123】
バイモーダルコポリマー組成物を含む潤滑油は、ASTM D445によって測定された、100℃で少なくとも2cSt(例えば、少なくとも3cSt、少なくとも4cSt、少なくとも6cSt、少なくとも8cSt、少なくとも10cSt、少なくとも12cSt、又は少なくとも15cSt)の動粘度を有し得る。同様に、バイモーダルコポリマー組成物を含む潤滑油は、ASTM D445によって測定される場合、100℃で200cSt以下(例えば、150cSt以下、100cSt以下、50cSt以下、40cSt以下、30cSt以下、又はさらに20cSt以下)の動粘度を有することができる。
【0124】
本開示の潤滑油組成物は、自動車用潤滑剤に関する自動車技術者協会(SAE)の粘度基準により特定され得る。一例として、潤滑組成物は、エンジン油の粘度分類であるSAE J300規格によって識別される。この開示のJ300粘度グレードは、表Bに要約されている。
【表2】
【0125】

バイモーダルコポリマー組成物の調製
上記で記載のコポリマー組成物は、以下のように合成した。コポリマー組成物は、直列に接続された2つの連続撹拌槽型反応器で合成された。第1のコポリマー成分、未反応のモノマー、溶媒、及び触媒を含む第1の反応器からの流出物は、追加のモノマーと共に第2の反応器に供給され、そこで異なるプロセス条件下で重合が続けられて第2のコポリマー成分を製造した。重合は、溶媒としてイソヘキサンを使用して溶液中で行われた。重合プロセス中、水素添加及び温度制御を使用して、各成分の所望のメルトフローレートを達成した。反応器の外部で活性化された触媒を、必要に応じて、ターゲット重合温度を維持するのに有効な量で加えた。
【0126】
第1の反応器では、第1のコポリマー成分(画分Aとも称される)を、エチレン、プロピレン、及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート活性剤及び1,1’-ビス(4-トリエチルシリルフェニル)メチレン-(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル触媒前駆体の反応生成物を含む触媒の存在下で製造した。
【0127】
第2の反応器では、第2のコポリマー成分(画分Bとも称される)を、エチレン、プロピレン、及び第1の反応器触媒で使用したのと同じ組成の活性剤及び触媒の反応生成物を含む触媒の存在下で製造した。
【0128】
反応器圧力は約1600psiであった。これらの反応プロセスのさらなる詳細は以下の表1-Aに記載され、エチレン(C2)フィード、プロピレン(C3)フィード、ヘキサン(溶媒)フィード、水素(H)フィード、及び直列重合における第1及び第2反応器のそれぞれの温度を報告する。C2、C3、ヘキサン、及びHフィードは、反応器1と反応器2との両方への合計フィードに基づいて、各フィードの重量%として報告され、これらの数値は、所望により、対象の反応器(反応器1又は反応器2)へのフィード入力のみと比較して、各反応器のフィードの重量%に容易に変換され得る。
【0129】
反応器から出てきたポリマー含有重合混合物を急冷して重合反応を停止させ、次いで加熱(及び減圧)して、ポリマーリッチ相及びポリマーリーン相の2つの相を得た。濃縮されたポリマーリッチ相を低圧セパレータに通し、残りの溶媒及びモノマーの大部分をポリマーリッチ相から分離した。得られたポリマーを揮発分除去ユニットに供給し、そこで残留モノマー及び溶媒を真空及び加熱下で除去して、最終的に溶媒及び他の揮発性物質を0.5重量%未満で含む溶融ポリマー組成物を得た。溶融ポリマー組成物をスクリューによりペレタイザに前進させ、そこからポリマー組成物ペレットを水中に沈め、固体になるまで冷却した。
【表3】
【0130】
以下の表1-Bには、追加のサンプル(サンプル23~30)に関してコポリマー組成物特性に加えて、上記のプロセスに従って製造されたコポリマー組成物(サンプル1~22)の特性をまとめる。表1-Bにおいて、「ペレット」値は、画分A(第1の反応器で製造された)及び画分B(第2の反応器で製造された)の両方を含むポリマー組成物を示す。各画分のC2重量%値は、その画分に基づいて報告され、画分Aの量(重量%単位)は、ポリマー組成物中の画分A+画分Bの総質量に基づく。表1-BのMFR値は、特に指定のない限り、ASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg)で決定された。MFRR値は、MFR(230℃/21.6kg)とMFR(230℃/2.16kg)との比である。また、表1-Bは、6.06cSt(ASTM D445)の100℃での動粘度を有するグループI基油に1.5重量%のコポリマー組成物を含む潤滑油組成物の粘度調整剤特性(TE、35SSIに対して補正されたTE及びSSI値)を示す。
【0131】
サンプル3、6、及び26~29は、非常に高いMFR、したがって、より高いMFR/MFR値を有する第1のコポリマー成分(画分A)を有する実施形態に対応する。前述のように、これらの実施形態は、特定の潤滑油用途でのゲル化及びフィルタの目詰まりを回避する傾向があるが、増粘効率を犠牲にする。
【0132】
さらに、表1-Cは、前述のDSC法に従って、様々なサンプルのT、H、Tを含むDSCデータを報告する。
【0133】
さらに、図1は、サンプル1~30の組成物についてのTE(35 SSIに対する補正)対MFR/MFRのプロットである。プロットは、TEの減少につながるMFR/MFRの明確な増加傾向を示しており、実行可能な場合にはMFR/MFRを最小限に抑えるという要望が認められる(例えば、ゲル化回避の懸念が高MFR画分Aの選択に影響しない場合)。
【表4】

【表5】
【0134】
潤滑油の性能試験
表2に記載されるように、SAE J300 5W-40仕様を満たすように従来の添加剤パッケージと粘度指数向上剤(VII)とを含む潤滑油組成物をブレンドし、それらの低温特性を試験した。配合物で使用される添加剤パッケージは、従来の量で従来の添加剤(例えば、分散剤、清浄剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、及び他の任意の性能添加剤の1つ以上)を含んでいた。比較例1~5の潤滑油のそれぞれは従来のオレフィンコポリマーVIIを含んでいたが、例A~Cの潤滑油のそれぞれはここで記述されているバイモーダルコポリマー組成物をVIIとして含んでいた。
【表6】
【0135】
表2の結果は、エチレン含有量が約55重量%を超える従来のオレフィンコポリマーVIIを含む潤滑油が、MRV粘度及び流動点の点で劣った性能を示したことを示す。対照的に、本開示のバイモーダルコポリマーVIIを含む潤滑油は、同等又はより高いエチレン含有量での低温性能の課題を克服する。
【0136】
表3に示すように、SAE J300 5W-40仕様を満たすように従来の添加剤パッケージ及び粘度指数向上剤(VII)を含む潤滑油組成物をブレンドし、経年油の低温性能を試験した。採用された試験方法では、各潤滑油はベンチ試験で経年され、次にMRV粘度が測定される。高エチレンポリマーは、いったん油が使用又は酸化されると、油の増粘に大きく寄与することが知られている。配合物で使用される添加剤パッケージは、従来の量で従来の添加剤(例えば、分散剤、清浄剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、及び他の任意の性能添加剤の1つ以上)を含んでいた。比較例6の潤滑油は従来の高エチレンオレフィンコポリマーVIIを含み、例Dの潤滑油は現在記述されているバイモーダルコポリマー組成物をVIIとして含んでいた。
【表7】
【0137】
表3の結果は、ここで記載されているバイモーダルオレフィンコポリマーVIIを含む潤滑油が、従来の高エチレンVIIを含む潤滑油よりも優れた経年油低温性能を示したことを示す。
【0138】
本発明を特定の実施形態を参照して記載及び図示してきたが、当業者は、本発明が本明細書で必ずしも示されていない変形に役立つことを理解する。このため、本発明の真の範囲を決定する目的で、添付の特許請求の範囲のみを参照する必要がある。本明細書に記載されているすべての文書は、優先度の高い文書及び/又は試験手順を含め、本書と矛盾しない範囲で参照により本書に組み込まれる。同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義と見なされる。組成、要素、又は要素のグループの前に「含む」という移行句が付いている場合は常に、文脈が明確にそうではないと示していない限り、移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」が、組成物、要素、又は複数の要素の列挙の前にある同じ構成又は要素のグループも企図されており、逆もまた同様であると理解される。
図1