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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】外部キャビティ量子カスケード・レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20230613BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/022
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545660
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019055037
(87)【国際公開番号】W WO2019166575
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】18159180.1
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520327984
【氏名又は名称】キシュカット、ヤン エフ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】キシュカット、ヤン エフ
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544579(JP,A)
【文献】特表2014-517522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1μmから100μmの間の光範囲でレーザ光を生成する波長切り替え可能半導体レーザ(10)であって、
前記レーザ(10)は、外部キャビティ(11)と、少なくとも以下の構成要素、
前記外部キャビティ(11)の方に面するキャビティ内ファセット(121)を備える半導体光増幅器(12)と、
前記半導体光増幅器(12)の前記キャビティ内ファセット(121)に配置され、前記キャビティ内ファセット(121)を出たレーザ・ビームを平行化する第1の光学要素(13)と、
透過性波長調節可能干渉フィルタ(1)と、を備え、
前記透過性波長調節可能干渉フィルタ(1)は、
i)波長調節可能ファブリ・ペロー・フィルタ(100)並びに、
ii)第1の面(111)及び第2の面(112)を備えるエタロン(110)、を少なくとも備え、
前記エタロン(110)の前記第1の面(111)及び前記第2の面(112)は、互いに相対して面平行に配置され、エタロン・キャビティ(113)を画成し、
前記エタロン(110)及び前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)は、一列に配置され、
前記干渉フィルタ(1)は、前記第1の光学要素(13)と軸上後方反射ビーム・スプリッタ(14)との間に配置され、
前記構成要素は、選択レーザ波長を含むレーザ光が、前記外部キャビティ内で安定して共振できるように配置される、波長切り替え可能半導体レーザ(10)において、
前記ビーム・スプリッタ(14)は、前記外部キャビティ(11)の一端に配置されることを特徴とする、
波長切り替え可能半導体レーザ(10)。
【請求項2】
前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)は、
第1の反射平面層(103)を備える第1の鏡要素(101)と、
第2の反射平面層(104)を備える第2の鏡要素(102)と、
第1の作動デバイス(200)と、を備え、
前記第1の鏡要素(101)及び/又は前記第2の鏡要素(102)は、前記第1の作動デバイス(200)上に、前記第1の反射層(103)及び前記第2の反射層(104)が互いに相対して面平行であり、前記反射層(103、104)がファブリ・ペロー・キャビティ(106)を画成するように配置され、前記第1の作動デバイス(200)は、前記第1の鏡要素(101)及び/又は前記第2の鏡要素(102)を移動させて、少なくとも第1の位置及び第2の位置を取るように構成され、前記第1の位置では、前記第1の反射層(103)と前記第2の反射層(104)との間の距離(301)は、前記第2の位置における距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のレーザ。
【請求項3】
前記エタロン・キャビティ(113)は、透過性中実基体(115)を備えるか又は前記透過性中実基体(115)から成り、前記エタロン(110)の前記第1の面(111)及び前記第2の面(112)は、前記基体(115)によって構成されるか、又は前記エタロン(110)の前記第1の面(111)及び/又は前記第2の面(112)は、前記基体(115)上の反射層(114)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーザ。
【請求項4】
前記エタロン・キャビティ(113)は、ガスを充填されているか又は真空であり、前記エタロン(110)の前記第1の面(111)と前記第2の面(112)との間のエタロン・キャビティ長(302)は、調節可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーザ。
【請求項5】
前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)は、50よりも大きいフィネスを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項6】
前記エタロン(110)は、前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)の前記第1の鏡要素(101)に含まれ、前記第1の鏡要素(101)は、前記エタロン(110)の透過性中実基体(115)を備え、前記エタロン(110)の前記第1の面(111)は、前記第1の鏡要素(101)の前記第1の反射層(103)であることを特徴とする、請求項2に記載のレーザ。
【請求項7】
前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)の前記第1の作動デバイス(200)は、微小電気機械システム(MEMS)(201)を備え、前記第1の鏡要素(101)及び/又は前記第2の鏡要素(102)は、前記第1の鏡要素(101)と前記第2の鏡要素(102)との間の距離(301)を変更するように前記微小電気機械システム(201)上に配置されることを特徴とする、請求項2又は6に記載のレーザ。
【請求項8】
前記第1の光学要素(13)は、前記キャビティ内ファセット(121)において、前記第1の光学要素(13)が、前記キャビティ内ファセット(121)を出たレーザ・ビームを平行化するように配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項9】
前記ビーム・スプリッタ(14)は、キャッツアイ後方反射器であり、反射面(140R)及び焦点面(140F)を有する屈折要素(140)を備え、前記屈折要素(140)は、前記屈折要素(140)の前記焦点面(140F)が前記反射面(140R)と少なくとも部分的に一致するように構成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項10】
前記第1の光学要素(13)は、0.5以上の開口数を有する厚い平行化レンズ(130)であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項11】
前記半導体光増幅器(12)は、量子カスケード・レーザ(QCL)を備えることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項12】
前記ビーム・スプリッタ(14)は、第1の平凸レンズ(141)を備え、前記レンズ(141)のキャビティの内側に面する面(142)は、凸面外形を有し、前記レンズ(141)のキャビティ外側に面する面(143)は、平面であり、前記レンズの前記焦点平面(140F)は、前記平面(143)と一致することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項13】
前記ビーム・スプリッタ(14)は、前記キャビティの外側に面する面(144)から放出された光が、前記ビーム・スプリッタ(14)の外側で平行化又は集束されるように構成され、前記ビーム・スプリッタ(14)は、第2の平凸レンズ(145、147)を更に備え、前記第2の平凸レンズ(145、147)のキャビティの内側に面する平面(146、148)は、前記第1の平凸レンズ(141)の前記平面(143)と背中合わせに配置されることを特徴とする、請求項12に記載のレーザ。
【請求項14】
前記レーザ(10)は、前記半導体光増幅器(12)を電気的に励起する手段を備え、前記励起手段は、5nsから1000nsのパルス継続時間及び0.1%から60%の間の負荷周期を伴う短い電気パルスで前記レーザ(10)を励起する、及び/又は連続波を生成する連続電流、若しくは前記レーザ(10)のパルス・モード動作を使用して前記レーザを励起するように構成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のレーザ(10)により帯域外レーザ・モードをフィルタ処理する方法であって、
前記レーザ(10)は、パルス・モードで動作し、前記半導体光増幅器(12)の励起力を調節し、これにより、前記エタロン(110)の選択伝送(501)帯域内に含まれる選択レーザ波長(500)のみが、前記レーザ(10)が発振閾値(504)を上回って動作する程度まで励起され、
前記エタロン(110)の前記選択伝送帯域(501)外のレーザ・モード(502)、特に、前記選択レーザ波長(500)から、前記エタロン(110)の自由スペクトル領域の整数倍離れたレーザ・モードは、前記発振閾値を下回ったままであるようにし、
前記エタロン(110)の前記選択レーザ波長(500)及び前記選択伝送帯域(501)は、前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)の最大伝送(503)が前記選択レーザ波長(500)に最も近いか又は前記選択レーザ波長(500)を中心とするように、前記ファブリ・ペロー・フィルタ(100)を調節することによって選択されることを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長調節可能フィルタを備える波長調節可能レーザに関する。更に、本発明は、本発明によるレーザにより帯域外レーザ・モードをフィルタ処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子カスケード・レーザ(QCL)は、1994年[1]のその最初の実験的デモンストレーション以来、中赤外(MIR)領域において同様の技術的重要性を希求するための主要な候補である。というのは、帯域間ダイオード・レーザは、可視(VIS)範囲及び近赤外(NIR)範囲内の範囲を有するためである[2]。VIS及びNIRは、電気通信及び照明には最も適した範囲をもたらすが、MIRは、赤外線に対する大気の窓、及び多くの分子に対するいわゆる指紋領域の両方を含み[3]、例えば、様々な健康状態に対する生物指標検出のための、超高感度で手頃なMIR分光法として見込まれている。
【0003】
例えば、分布帰還型(DFB)QCL等の固定波長QCLは、現況技術で公知である[4]。生物学的事項に関する分光法のような最も複雑なタスクの場合、同調が必要である。他の設計及び概念が追求されているが、外部キャビティ(external cavity、EC)-QCLは、現在、広範囲の分光測定を実施するのに最も有望なオプションをもたらしている。
【0004】
最も一般的なEC-QCLは、波長選択要素として回折格子、例えば、機械的摂動に対して共振器をかなり高感度にするLittrow及びLittman-Metcalf構成を使用するが[5]、レーザ・チップ間で大きな往復結合損失を伴う。
【0005】
1つの理由は、数マイクロメートルのQCLの出口ファセットと、数ミリメートルの格子上の照明領域との間の横寸法の極端な差である。必要なビーム拡大により、平行光学系の位置合わせに対して極端に狭い公差が課される。
【0006】
更に、回折格子が相当にわずかな角分散であるために、回折格子は、同調軸周囲の機械的振動を減少させるために、かなり硬質で正確に制御可能なマウントを必要とする。
【0007】
更に、回折格子をベースとする設計の構造的な制約のために、レーザ光の脱結合が斜角で生じることが多く、ビームのウォークオフ及び照準に関連する問題をもたらす。このことは、ビーム特性(パワー/波長)をリアルタイムで監視することが望ましい場合に特に問題であり、第2の放出ポート又は軸外ビーム・スプリッタを必要とする。
【0008】
こうした理由のために、現在のEC-QCLの用途は、主に、保護された実験室環境に拘束されている。わずか数社の製造業者が、超硬質構造体を採用することによって可搬デバイスを製造しているが[6]、結果として、こうした超硬質構造体は、かさばり、費用がかかり、複雑な光学機械に対する費用削減には多くの可能性を有するものではない。
【0009】
非格子同調EC-QCL設計には、ベルニエ同調フィルタ・チップのバージョン(Block Engineering、US8908723)、ベルニエ同調二重エタロン熱電気バージョン(Redshift Systems、EP2700132)、及び角度同調狭フィルタEC-QCL(EP2848968)を含む。
【0010】
全てのこれらの設計は、いくつかの技術的課題を有し、(大量生産の場合でさえ)単位あたり高い費用をもたらし、寿命が短い。
【0011】
角度同調狭フィルタEC-QCLは、ファブリ・ペロー・フィルタ構成を備えるが、小型化、費用削減及び安定化の可能性がない。というのは、ファブリ・ペロー・フィルタを数十度傾斜させることができる正確な光学機械(ステッパ・モータ、検流計)は、やはり、必然的に大型でかさばるためである。
【0012】
狭波長帯域を選択する広角度同調可能フィルタは、十分な角度同調には必要である低屈折率材料が相当に高額であるため、製造にかなりの費用がかかる。
【0013】
MEMS(微小電気機械システム)ファブリ・ペロー・フィルタ等、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長の調節によりMIR半導体レーザの放出波長を同調する微細加工・微細作動ファブリ・ペロー・フィルタの使用等の他の手法は、当技術分野では試みられていない。というのは、使用の妨げになるとみなされるいくつかの要因があるためである。
【0014】
例えば、4mmのチップ長さ及び30mmの合計外部キャビティ光学長を有する約9μmのレーザを放出する典型的なEC-QCLは、約0.17cm-1(1.5nm)のモード間隔を有する。したがって、妥当なモード弁別には、EC-QCLモード間隔の範囲内の帯域幅を有するフィルタを必要とする。
【0015】
約9μmでの伝送に最良に利用可能なMEMS-ファブリ・ペロー・フィルタは、12cm-1(100nm)の帯域幅を達成する。したがって、そのようなMEMS-ファブリ・ペロー・フィルタは、50を超えるレーザ・モードを含み、特にパルス電流モードで駆動する際、EC-QCL内で高度に不安定なモード変動が予期される。
【0016】
更に、MEMS-ファブリ・ペロー・フィルタのフィルタ鏡の間の非理想的な平行度が、動作中でさえ動的に変化するため、伝送ビームが、光軸をウォークオフする傾向がある。QCLのファセットの直径は数ミクロンにすぎず、そのようなビームのウォークオフは、レーザ操作を終了しない場合、共振レーザ・ビームに対するQCLのファセット結合効率がそのようなビーム変位によって減少するため、損なわれる。
【0017】
したがって、EC-QCLは長年公知であるが、光学的、機械的に安定したレーザ動作を提供できるためには、依然として相当にかさばり、複雑なデバイスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】US8908723
【文献】EP2700132
【文献】EP2848968
【非特許文献】
【0019】
【文献】J.Faist等、Quantum cascade laser.Science、264(5158)、553:556、(1994年)
【文献】C.Gmachl等、Rep.Prog.Phys.64、1533(2001年)
【文献】A.Kosterev等、Appl.Phys.B90、165(2008年)
【文献】J.Faist等、Appl.Phys.Lett.70、2670(1997年)
【文献】X.Baillard等、Opt.Commun.266、609(2006年)
【文献】P.Buerki等、「Swept sensor(TM)-a novel port-able battery-operated gas sensing solution」http://www.daylightsolutions.com/assets/003/5245.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、こうした問題を解決するデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る問題は、請求項1に記載のレーザ、及び本発明によるレーザの帯域外レーザ・モードをフィルタ処理する、請求項15に記載の方法によって解決される。
【0022】
請求項1によれば、特に、1μmから40μm又は100μmの間の範囲内の波長を含むレーザ光を生成し、外部キャビティを有する波長切り替え可能半導体レーザは、少なくとも以下の構成要素、特に外部キャビティの一部であり、外部キャビティの方に面するキャビティ内ファセットを備える半導体光増幅器(SOA)と、半導体光増幅器のキャビティ内ファセットに配置され、キャビティ内ファセットを出たレーザ・ビームを平行化する、第1の、特に、屈折又は反射光学要素と、透過性波長調節可能干渉フィルタ(IF)と、を備え、透過性波長調節可能干渉フィルタは、i.波長調節可能ファブリ・ペロー・フィルタ(FPF)及び、ii.第1の平面及び第2の平面を備えるファブリ・ペロー・エタロン(FPE)を少なくとも備え、エタロンの第1の面及び第2の面は、互いに相対して面平行に配置され、エタロン・キャビティを画成し、ファブリ・ペロー・エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタは、一列に配置され、干渉フィルタ(IF)は、第1の光学系とビーム・スプリッタとの間に配置され、構成要素は、選択レーザ波長を含むレーザ光が、外部キャビティ内で安定して共振できるように配置され、軸上後方反射ビーム・スプリッタは、外部キャビティの一端に配置される。
【0023】
軸上後方反射ビーム・スプリッタは、外部キャビティの端部鏡又は出力カプラとして働くことができる。
【0024】
本明細書ではもっぱら「エタロン」とも呼ぶファブリ・ペロー・エタロンは、特に、特に固定キャビティ長を有するファブリ・ペロー・フィルタでもある。
【0025】
したがって、干渉フィルタ(IF)は、特に、(第1の)ファブリ・ペロー・フィルタ(FPF)と、(第2の)ファブリ・ペロー・フィルタ(FPE又はエタロン)とを備える。本発明のいくつかの実施形態では、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長は、調節可能で、可変である一方で、エタロンのキャビティ長は、固定されている。更に、本発明のいくつかの実施形態によれば、ファブリ・ペロー・フィルタの自由スペクトル領域及び伝送帯域は、エタロンの自由スペクトル領域及び伝送帯域よりも大きく、ファブリ・ペロー・フィルタの伝送帯域は、エタロンの自由スペクトル領域と同様の大きさである。干渉フィルタが伝送する波長は、特に、ファブリ・ペロー・フィルタの低次伝送帯域、例えば、1次帯域、2次帯域又は3次帯域内にあり、エタロンのより高次の帯域、例えば、5次帯域又は10次帯域以上にある。
【0026】
用語「波長切り替え」とは、具体的には、ファブリ・ペロー・フィルタの低次伝送帯域中心波長と、エタロンの異なる、より高次の伝送帯域との整合を指す。
【0027】
こうした特徴を有するレーザは、強固で小型の伝送干渉フィルタを有する小型外部キャビティ・レーザを使用する、強固で波長同調可能なシングルモード・レーザ動作の提供に関する問題を有利に解決する。
【0028】
この目的で、レーザ構成要素は、以下のように配置できる:半導体光増幅器(SOA)、第1の光学要素、波長選択可能干渉フィルタ及び後方反射ビーム・スプリッタは、レーザにおいて、選択可能レーザ波長を含むSOAのキャビティ内ファセットから出現するレーザ・ビームが、キャビティ内ファセットから第1の光学要素及び干渉フィルタを通り、後方反射ビーム・スプリッタに至り、後方反射ビーム・スプリッタから戻って、キャビティ内ファセットに再度入り、半導体光学系に至ることが可能であるように配置される。
【0029】
ファブリ・ペロー・フィルタは、第1の面と第2の面とを備えることができ、第1の面及び第2の面は、互いに相対して面平行に配置され、ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティを画成する。これらの面は、ファブリ・ペロー・フィルタの鏡要素内に含めることができる。
【0030】
ファブリ・ペロー・フィルタの第1の面及び第2の面は、特に平面で、特に光学的に平坦であり、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の面及び第2の面は、互いに相対して面平行に配置され、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の面及び第2の面の表面法線に沿って延在するファブリ・ペロー・フィルタの光学的ファブリ・ペロー・キャビティを形成する。
【0031】
エタロンの第1の面及び第2の面は、平面で、特に光学的に平坦であり、エタロンの第1の面及び第2の面は、互いに相対して面平行に配置され、エタロンの第1の面及び第2の面の表面法線に沿って延在するエタロンのファブリ・ペロー・キャビティを形成する。
【0032】
エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタのキャビティは、特に、レーザ光を前後に反射させ、当技術分野では周知である多重ビーム干渉を通じて、孤立した伝送通過帯域を達成するように働く。
【0033】
エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタは、特に、互いの前に、特に選択レーザ波長を含む特に平行化光ビームがエタロン及びファブリ・ペロー・フィルタを通過するように配置される。
【0034】
干渉フィルタ(IF)は、特に、エタロンとファブリ・ペロー・フィルタとの組合せであり、以下、「波長選択可能干渉フィルタ」とも呼ぶ。
【0035】
外部キャビティとは、本文脈において、共振器が少なくとも部分的に半導体光増幅器(SOA)の外側に置かれる、レーザの特徴を指し、半導体チップ又は活性領域とも呼ばれる。SOAは、一般に、光がSOAから出ることができる2つのファセットを有する。一方のファセット、即ち、キャビティ内ファセットは、レーザの外部キャビティの内側に面し、もう一方のファセット、即ち、キャビティ外ファセットは、共振器の外側に面する。
【0036】
キャビティ内ファセットは、特に、反射防止(AR)コーティングでコーティングされる。
【0037】
端部鏡は、通常、例えば、99%を上回る範囲の高い反射率を有し、出力カプラは、低減した-典型的には5%から90%の範囲の反射率を有する。機能は同じであるが、端部鏡又は出力カプラは、共振レーザ光の少なくとも一部分を後方反射させてキャビティに至らせ、光増幅工程を維持し、キャビティを閉鎖するようにする。
【0038】
本発明による波長切り替え可能レーザは、かなり小型で小さく構築することができ、特に、唯一の移動構成要素、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の作動デバイスを備える。作動デバイス内でさえ、移動は、特に、例えば0.5μmから10μmの範囲での変位を伴う、静電気による微小位置決めに縮小される。
【0039】
本発明によるレーザは、特にMIR範囲で放出する他の波長切り替え可能レーザと比較すると、相当に費用対効果がよく製造できる。というのは、フォトリソグラフィ方法及び深掘り反応性イオン(DRIE)エッチング等、全ての構成要素を従来の微細加工方法で製造できるためである。
【0040】
今やレーザの小型化が可能であること、及びキャビティ内平行化光学系、即ち、特に、第1の光学要素のビーム拡大が、格子ベースのレーザと比較して低いこととあわせて、レーザの安定性は、設定の整合不良がほぼ不可能である点まで増大し、構造体を物理的に損傷することがない。このことは、機械的構成要素に対して、様々な種類のプラスチック・ポリマー等、かなり軽量でより安価な材料を使用することも可能にする。
【0041】
キャビティ内のビーム拡大に関し、特に10λ未満までのビーム拡大は、本発明を使用すると、些末で可能であり、平行化光学系に対するごくわずかなビーム拡大のために、結合損失の低減及びより良好なビームの質をもたらすことに留意されたい。
【0042】
波長選択可能干渉フィルタ構成要素(FPF及びエタロン)は、特に、外部キャビティ内の共振レーザ・ビームに対して、帯域外レーザ光がビーム経路から反射されるような角度で配置される。用語「帯域外」とは、波長選択可能干渉フィルタの狭伝送帯域外側の波長を有する光を指す。干渉フィルタの伝送帯域幅は、エタロンの各伝送帯域幅とほぼ同一であり、実質的に、ファブリ・ペローの伝送帯域幅よりも小さい。
【0043】
後方反射ビーム・スプリッタの1つの利点は、(完全に平行な反射層を達成することができないため)特にMEMSファブリ・ペロー・フィルタの非平行鏡要素によるビームのウォークオフが、前記、特に受動的に自己整合する後方反射ビーム・スプリッタを使用することによって無効になる一方で、同時に、例えば監視目的で、レーザの第2の出力ポートをもたらすことである。
【0044】
ファブリ・ペロー・フィルタ、特にレーザ内に広範な伝送帯域を有するMEMS-FPFの使用を容易にするため、エタロンを外部キャビティ内に統合することは、現況技術において新規である。更に、レーザ内に、エタロンを周波数標準として、及びビーム特性の監視のために使用できるようにエタロンを配置することは新規である。
【0045】
また、後方反射軸上ビーム・スプリッタの自己整合性は、現況技術で公知である格子及び鏡で終端する外部キャビティの一般的な機械的不安定さをなくすものである。
【0046】
後方反射ビーム・スプリッタに付随する機械的安定性の増大は、以下の式から導くことができる。湾曲鏡又は後方反射ビーム・スプリッタ等の任意の反射器からSOAファセットに戻る帰還FBの変化は、反射器の角度整合不良の場合、式
を有し、反射器の長尺整合不良の場合、
を有することがわかっている。上記の式において、αは、角度整合不良であり、δは、長尺整合不良であり、λは、レーザの中心波長であり、wは、反射器の反射面上のビームの焦点サイズである(後方反射ビーム・スプリッタがキャッツアイの形態の場合、反射面は後面である)。
は、2次微分演算子である。平面又は湾曲鏡を有する典型的な半導体レーザ外部キャビティの場合、焦点サイズwは、ミリメートル台であり、α=1mrad=0.06°、δ=100mmの場合、(λ=10μmの波長で)20%の帰還損失がもたらされる。キャッツアイの場合、角度変位αと長尺変位δとの間のトレードオフは、好都合に角度変位αの方にずれる。w=10μmという典型的な焦点サイズの場合、α=100mrad=6°及びδ=10μmである。6°の角度整合不良は、外部キャビティの完全性及び後方反射ビーム・スプリッタ、特にキャッツアイに物理的に損傷を与えずに達成するには非現実的に高い値であるため、後方反射ビーム・スプリッタの設定は、レーザ構造体が物理的に損傷を受けていない場合、整合不良に対し完全に安定していると言うことができる。
【0047】
後方反射ビーム・スプリッタは、基本的に、現況技術のレーザ共振器内で使用される湾曲鏡と比較して、異なる目的の役割を果たすことに留意されたい。湾曲鏡の使用に対する理論、及び共振器の「光学的安定基準」を生じさせる鏡と共振器の長さとの関係は、当技術分野で周知である。しかし、これら周知の光学的安定基準は、機械的安定基準をもたらすには修正を必要とし、また、活性媒質、例えば、SOAの有限寸法を考慮する必要がある。このことは、外部キャビティ内の半導体レーザの場合(マイクロメータのファセット直径、対ミリメートルの曲率半径)のように、SOAファセットの寸法が、鏡の曲率半径よりもかなり小さい場合に特に当てはまる。この場合、湾曲鏡は、非平行化ガウス・ビームの湾曲波前面のみを補償する役割を果たし、これにより、前記非平行化ビームの収集角度を増大させる。したがって、(鏡の表面上にある枢動点周囲での)湾曲鏡のわずかな角度整合不良は、平面鏡が平行化ビームを変位させるように、反射ビームを直接的に変位させ、これにより、SOAファセットへの帰還を低減する。
【0048】
この結果、湾曲鏡の使用は、1番に、半導体外部キャビティの機械的安定性を増大させるものではない。小さなSOAファセットの場合、湾曲鏡は、湾曲鏡自体の焦点周囲での角度整合不良に対して安定するにすぎない。したがって、現実的な枢動点に対するわずかな修正を達成できるにすぎない。
【0049】
十分に規定された不変のビーム特性を有する外部キャビティの両端部には、2つの利用可能な軸上出力ポートが-1つはSOAの外部キャビティ・ファセットに、もう1つは後方反射ビーム・スプリッタに-あるため、これらのビームの一方は、レーザ性能をリアルタイムで監視するために使用できる。というのは、2つの出力ポートの放出パワーが固定比率であるためである。
【0050】
軸上出力ポートの両方が十分に規定された焦点から光を放出すると、光は、容易に赤外光ファイバに結合できる。
【0051】
軸外ビーム・スプリッタは、損失を必ずもたらし、設定をより大型にし、不安定にするものであるが、監視目的で、この軸外ビーム・スプリッタを使用せずに、両方の出力ポートに対し軸上ビームを利用することは、本発明によるレーザの別の有利な特徴である。
【0052】
エタロンは、特に、レーザ内で周波数標準としても機能するため、ファブリ・ペロー・フィルタを同調する際にレーザの出力パワー・ピークを計数することによって、レーザを選択レーザ波長に同調できる。したがって、出力レーザ波長は、多大な信頼度で選択できる。
【0053】
更に、レーザは、パルス・モードでさえ、SOAと波長選択可能干渉フィルタとを組み合わせることによって、かなり狭いスペクトル線幅並びにかなり高い周波数の正確さ及び繰返し性を達成できる。このことは、特に、放出レーザ波長がエタロンの伝送幅に制限されることによる。典型的には、シングルモード放出でさえ、パルス内にSOAの加熱による波長チャープ、並びに対応する屈折率及び有効光学キャビティ長の変化がある。本発明によるレーザにおいて、チャープがエタロンの伝送ピーク幅を超えると、レーザは、特に、強制的に、伝送内のモードに跳び、こうして、時間平均線幅を効果的に低減させる。
【0054】
レーザの出力パワーを単に最大化することによって、ファブリ・ペロー・フィルタの伝送は、エタロンのモード、したがって、十分に規定されたレーザ波長を中心とし、タスクを閉ループで実施できる。
【0055】
したがって、本発明によるレーザは、唯一の監視検出器を使用して閉ループを促進し、同時に、出力及び波長を制御する。
【0056】
別々に放出した、同じ種類のレーザ波長をデバイス間で再現可能にすることは、外部キャビティの光軸に対し、エタロンの傾斜角を調節することによって達成できる。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、波長調節可能ファブリ・ペロー・フィルタは、特に、以下の構成要素、a)第1の反射平面、特に、光学的に平坦な層を備える第1の鏡要素と、b)第2の反射平面、特に、光学的に平坦な層を備える第2の鏡要素と、c)作動デバイスと、を備え、第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素は、作動デバイス上に、第1の鏡要素の第1の反射層及び第2の鏡要素の第2の反射層が、互いに相対して面平行で、面と向かって配置され、第1の層及び第2の層が、第1の層及び第2の層の表面法線に沿って延在するガス充填又は真空キャビティを形成するように配置され、作動デバイスは、第1の層及び第2の層の表面法線に沿って第1の鏡要素を第2の鏡要素に対して移動させるように構成される。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、エタロンの第1の面と第2の面との間の光学距離は、少なくとも、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の層と第2の層との間の光学距離、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタの相対的な同調範囲によって除算したファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長と同じくらいの大きさであり、せいぜい、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長×キャビティのフィネスと同じ大きさである。このことは、ファブリ・ペロー・フィルタが、少なくとも2つのエタロン伝送帯域のうち1つを選択し、もう一方を十分に拒絶できることを特に保証する。
【0059】
光学距離とは、特に光路長であり、光路長は、特に、形状距離×前記光路長の屈折率によって与えられる。
【0060】
エタロンのキャビティ長は、特に、エタロンの第1の面及び第2の面の光学距離と同一である。ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長は、特に、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の面及び第2の面の光学距離と同一である。
【0061】
ファブリ・ペロー・フィルタが選択する波長は、特に、SOAが誘導放出を発する波長範囲(利得スペクトル)内にある伝送次数内で、ファブリ・ペロー・フィルタの伝送帯域の中心波長として規定される。波長は、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長の調節により、ファブリ・ペロー・フィルタが選択できる。
【0062】
ファブリ・ペロー・フィルタの絶対同調範囲は、特に、ファブリ・ペロー・フィルタが選択できる最大波長と最小波長との間の差、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタの制限波長として規定される。
【0063】
ファブリ・ペロー・フィルタが選択する制限波長は、特に、作動デバイスの移動距離が決定する、最小及び最大のファブリ・ペロー・キャビティ長によって規定される。
【0064】
「ファブリ・ペロー・フィルタの中心波長」は、特に、制限波長の算術平均として規定される。
【0065】
ファブリ・ペロー・フィルタの相対同調範囲は、特に、中心波長によって除算したファブリ・ペロー・フィルタの絶対同調範囲である。例えば20%の相対同調範囲は、中心波長よりも最大10%小さい又は大きい全ての波長を含む。
【0066】
例えば、ファブリ・ペロー・フィルタが中心波長周囲に20%の相対同調範囲を有する場合、(光学的)エタロン・キャビティ長の下位境界は、ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティ長の5倍であり、(光学的)エタロン・キャビティ長の上位境界は、ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティ長×ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティのフィネスである。このことは、特に、エタロン伝送コームが、ファブリ・ペロー・フィルタの同調範囲内に少なくとも2つの伝送ピークがあるようなものであること、及び前記伝送ピークは、ファブリ・ペロー・フィルタのピーク幅の半分からほど遠く離間していることを保証する(それ以外の場合、ファブリ・ペロー・フィルタは伝送ピーク間を弁別することができない)。
【0067】
エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタは、互いに対する角度を含み得ることに留意されたい。
【0068】
波長選択可能干渉フィルタ構成要素の組合せ、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタ及びエタロンは、特に、キャビティ長に特定の差を有する場合、光に対する波長調節可能フィルタ処理を可能にし、選択レーザ波長で相当にわずかな帯域幅を達成する。
【0069】
エタロンは、モード・スプレッダ又は周波数標準とも呼ばれる。本明細書の文脈における光とは、特に近赤外、中赤外及び/又は遠赤外波長範囲内、より詳細には、電磁スペクトルのテラヘルツ領域内での電磁波を指す。したがって、光は、人間の目に見える必要はない。
【0070】
赤外スペクトルは、特に、真空波長10-3mから7.8×10-7mの間の範囲(1mmから780nm)に及び、これは、3×1011Hzから約4×1014Hz(300GHzから400THz)の周波数範囲に相当する。
【0071】
近赤外(NIR)領域は、特に、0.78μmから3μmの範囲に及ぶ。
【0072】
中赤外(MIR)領域は、特に、3μmから50μmの範囲に及ぶ。
【0073】
遠赤外(FIR)領域は、特に、50μmから1000μmの範囲に及ぶ。
【0074】
2つの干渉フィルタ構成要素、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタ及びエタロンは、干渉に基づき効果的にフィルタ処理する一方で、特に、伝送帯域幅及び自由スペクトル領域(FSR)等の異なるフィルタ特性を有し、特に、ファブリ・ペロー・フィルタ及びエタロンのキャビティ長は異なる。
【0075】
それぞれのフィルタ構成要素の伝送ピーク幅及び自由スペクトル領域は、とりわけ、それぞれのフィルタ構成要素のキャビティ長によって規定される。
【0076】
しかし、ファブリ・ペロー・フィルタ及びエタロンの表面の反射率等の他の要因も、上述のフィルタ特性に影響を与える。
【0077】
作動デバイスは、第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素を移動させるように構成されるため、第1の層及び第2の層は、共に近づかせるか、又は互いから遠ざけることができる。したがって、作動デバイスは、少なくとも2つの異なる位置、即ち、第1の位置及び第2の位置を取るように構成される。作動デバイスは、複数の位置、特に、連続する複数の位置を取るように構成することができ、特に、ファブリ・ペロー・フィルタの連続する複数のキャビティ長を達成できるようにする。このキャビティ長のファブリ・ペロー・フィルタは、ガス、特に空気を充填されるか、又は真空にする。
【0078】
ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長は、特に、第1の鏡要素の第1の反射層と第2の鏡要素の第2の反射層との間の距離に対応する。
【0079】
用語「反射」とは、それぞれの構成要素が、少なくとも、特に、選択レーザ波長、即ち、伝送のために選択した波長を含む波長範囲内で反射性である性質を指す。
【0080】
更に、本明細書及び特許請求の範囲において、ある屈折率を有する材料から、異なる屈折率を有する材料まで通過する光が生じさせる反射を弁別できる。この反射をフレネル反射と呼ぶ。フレネル反射は、例えば、光が構成要素から出る又は構成要素に入る際に-空気界面であれ、表面真空界面であれ-構成要素の全ての表面上で生じる。明示的に述べていない場合であっても、そのような表面は反射性とみなされる。
【0081】
一方、反射は、物質自体の特性に基づき達成できる。例えば、反射は、専用の反射向上薄膜コーティング構造によって増大させることができる。表面反射の向上は、いわゆる分散ブラッグ反射器(DBR)によっても達成することができ、分散ブラッグ反射器(DBR)は、高屈折率材料及び低屈折率材料の一対又は複数対の薄膜を備え、一対又は複数対の薄膜は、所望の波長範囲で透過性であり、適切な厚さ及び積層順序を有する。
【0082】
代替的に、表面反射率を向上させるため、サブ波長構造格子を使用することもできる。
【0083】
反射向上コーティング又は構造とは対照的に、反射防止(AR)コーティングは、フレネル反射を低減するために特に設計される。ARコーティングは、増透コーティングとも呼ばれる。ARコーティングを有する表面は、特に5%よりも低い、より詳細には4%よりも低い反射率を呈する。
【0084】
したがって、エタロンの表面は、ARコーティングがエタロンの機能を損なうため、特にARコーティングを有さない。
【0085】
用語「反射率変更」とは、表面反射率を増大又は低減させる、表面上に配置した層又は構造を指す。
【0086】
用語「透過性」(及び用語「反射性」)は、選択レーザ波長に関連すると理解されたい。即ち、「透過性」とは、それぞれのスペクトル領域において透過性である性質を指す。したがって、用語「透過性」は、電磁気スペクトルの可視領域を特に指すものではなく、特に、近赤外、中赤外から遠赤外領域、及びテラヘルツ領域までも指す。
【0087】
用語「光学的に平坦」とは、λ/4以上の光学平坦度を含む材料の性質を指し、λは、選択レーザ波長である。
【0088】
用語「高開口数」とは、0.5よりも大きい、特に、0.7以上の、レンズ等の光学要素の開口数を指す。開口数は、特に、光学要素の開放絞りによって形成される円錐半角の正弦及び光軸上のその焦点を、周囲媒質の屈折率、空気又は真空の場合はn=1で乗算したものである。したがって、開口数は、焦点に高いビーム広がりを有する点状源が放出した光に対する、レンズの収集効率の尺度である。
【0089】
ファブリ・ペロー・フィルタの第1の反射層及び第2の反射層は、層構造体からなるか又は層構造体を備えることができる。
【0090】
ファブリ・ペロー・フィルタの第1の反射層及び第2の反射層は、反射向上コーティングからなるか又は反射向上コーティングを備えることができる。鏡要素は、特に、透過性、特に光学的に平坦な基体を備え、基体上に前記反射層が配置される。反射層は、周知のフォトリソグラフィ技法、膜蒸着、及びウエハ接合を使用して、基体上にコーティングできる。
【0091】
第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素の基体は、特に、表面法線に沿って0.1mmを超えて、それぞれの反射層を延在させ、特に、コーティングに引き起こされる応力にもかかわらず、反射層に必要な光学的平坦さを実現、保証する。
【0092】
第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素の基体は、反射層の反対表面上にARコーティングを備えることができる。
【0093】
本発明による波長選択可能干渉フィルタは、入射光が波長選択可能干渉フィルタを通過する際にフィルタ処理されるような伝送構成で動作する。したがって、反射回折格子等の反射フィルタとは対照的に、本発明による波長選択可能干渉フィルタは、透過性フィルタである。
【0094】
本発明による波長選択可能干渉フィルタは、レーザ波長のデジタル同調を可能にする。用語「デジタル」とは、波長選択可能干渉フィルタを調節し、離散的な非連続波長のセットに含まれるレーザ波長を実現できることを指す。
【0095】
間隔、即ち、前記セット内に含まれる波長の間の自由スペクトル領域は、波長切り替え可能レーザが分光法等の多くの用途に適しているように、相当に狭くてよい。
【0096】
更に、いくつかの実施形態で扱うように、個別の波長セットを、あるオフセット波長だけ本質的にずらすことによって、レーザ波長を個別の波長間で任意の波長に調節することが可能であり、この結果、波長選択可能干渉フィルタの本質的に連続的な同調が達成される。
【0097】
エタロンは、特に、少なくともフレネル反射のために反射性である2つの表面を備えるファブリ・ペロー干渉計である。ファブリ・ペロー・フィルタのように、エタロンは、干渉に基づく光学的フィルタ処理をもたらす。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、エタロン・キャビティは、透過性、特に光学的に平坦な、中実基体を備えるか又はこの中実基体から成り、エタロンの第1の面及び第2の面は、基体によって構成されるか、又はエタロンの第1の面及び/又は第2の面は、基体上の反射層である。
【0099】
エタロンの反射層の上部に保護層を提供することは、有利であり得る。この保護層は、反射層がエタロン上の最外層ではないにもかかわらず、エタロンの表面とみなすことができない。
【0100】
エタロンの表面は、特に、フレネル反射を呈する。
【0101】
本実施形態の利点は、エタロンが、波長選択可能干渉フィルタの、強固な、特に非移動部品であることである。エタロン基体表面の間の光学距離、即ち、エタロン基体の光学的厚さは、エタロンのキャビティ長に対応する一方で、基体は、エタロン・キャビティである。光学距離は、光路、即ち、特に、光線が横断する物理的距離に媒質の屈折率を乗算したものに対応する。
【0102】
熱膨張を除き、エタロン・キャビティ長は、固定されており、したがって、波長選択可能干渉フィルタの特性は、ファブリ・ペロー・フィルタの同調低下に対して強固である。
【0103】
更に、エタロンの波長の同調及び/又は安定化は、エタロン温度を調節又は制御することによって達成できる。
【0104】
本発明の別の実施形態によれば、エタロンの基体は、中赤外スペクトル内、特に、3μmから20μm、より詳細には、9μmから12μmの間の波長領域で透過性であり、特に、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、GaAs、InP又はカルコゲナイド・ガラスを含むか又はこれらからなる。
【0105】
この実施形態により、エタロンに対する、中赤外範囲での費用対効果のよい実装を可能にする。
【0106】
本発明の代替形態によれば、エタロン・キャビティは、ガス充填、特に、空気充填されるか、又は真空であり、エタロンの第1の面と第2の面との間のエタロン・キャビティ長は、特に第2の作動デバイスによって調節可能である。
【0107】
本実施形態によれば、エタロンは、あるレーザ波長に機械的に同調可能である。このことにより、波長選択可能干渉フィルタの連続的な波長同調を可能にする。同調可能なエタロンは、第2のファブリ・ペロー・フィルタとみなすことができる。
【0108】
更に、第2の作動デバイスは、第1の作動デバイスと同じ種類の、同一又は同様のものであってよい。
【0109】
本発明の別の実施形態によれば、エタロン・キャビティは、5mm未満、特に、1mm未満、特に、0.4mm未満、より詳細には、0.1mm未満の長さを有する。
【0110】
これらのキャビティ長により、エタロンの相当に狭い伝送ピーク幅を可能にし、波長選択可能干渉フィルタに狭伝送ピークをもたらす。
【0111】
本発明の別の実施形態によれば、エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタは、特に3μmから20μmの間、より詳細には8μmから12μmの間の選択レーザ波長を含む入射光ビームに対し、エタロンの自由スペクトル領域が、ファブリ・ペロー・フィルタの自由スペクトル領域の少なくとも5分の1、特に、10分の1、より詳細には、100分の1であるように配置され、エタロンの選択レーザ波長の伝送帯域の全幅半値は、ファブリ・ペロー・フィルタの伝送帯域の全幅半値の少なくとも5分の1、特に、10分の1、より詳細には、100分の1である。
【0112】
本発明の別の実施形態によれば、ファブリ・ペロー・フィルタは、50よりも大きい、特に70よりも大きい、より詳細には、100よりも大きいフィネスを有する。
【0113】
自由スペクトル領域FSR又はΔλ、即ち、(ファブリ・ペロー・フィルタ及びエタロンのための)ファブリ・ペロー干渉計の伝送ピーク間の間隔は、
として規定され、伝送ピーク幅δλは、いわゆるフィネスF:
によって自由スペクトル領域Δλに関連付けられ、式中、λは、最も近い伝送ピークの中心波長であり、nは、屈折率であり、lは、キャビティ長である。
【0114】
本実施形態は、エタロン特性を、ファブリ・ペロー・フィルタとの組合せにおいて、従来の干渉フィルタと比較して有利な干渉フィルタを可能にする範囲に制限するものである。
【0115】
本発明の別の実施形態によれば、ファブリ・ペロー・フィルタは、55%よりも大きい、特に70%よりも大きい、より詳細には、85%よりも大きいピーク伝送を有する。
【0116】
本実施形態は、特に良好な伝送特性を有するフィルタを構成する。
【0117】
本発明の別の実施形態によれば、エタロンの表面及びファブリ・ペロー・フィルタの反射面のそれぞれは、互いに平行である。
【0118】
この文脈において、平行とは、ファブリ・ペロー・フィルタとエタロンとの間に展開される光路を指し、したがって、ファブリ・ペロー・フィルタとエタロンとの間の折返し鏡は、表面を非平行化するものとはみなされない。というのは、展開される光路は、表面を平行化するためである。
【0119】
本発明の別の実施形態によれば、エタロンは、特に、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の鏡要素に一体に含まれ、第1の鏡要素は、エタロンの透過性基体を備え、エタロンの第1の面は、第1の鏡要素の反射層である。
【0120】
本実施形態は、波長選択可能干渉フィルタのより小型な統合を可能にするため、特に有利である。
【0121】
エタロンが第1の鏡要素に含まれるため、波長選択可能干渉フィルタは、個別要素をあまり備えない。このことにより、より安定した干渉フィルタをもたらす。
【0122】
同様に、エタロンは、代替的に、第2の鏡要素に含んでよい。
【0123】
本発明の別の実施形態によれば、第1の鏡要素は、特に、ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティから離れて面する第2の面を備え、第1の鏡要素の第2の面は、エタロンの第2の面であり、前記第2の面は、特に、ARコーティングされず、前記第2の面は、特に、反射向上層又は反射向上構造でコーティングされる。
【0124】
そのようなフィルタは、個別要素をあまり有さず、したがって、より安定する。
【0125】
同様に、本実施形態は、代替的に、第2の鏡要素内でも同様に実現できる。
【0126】
特に、エタロンの第1の面及び第2の面が、第1の鏡要素内に含まれる場合、代替的に、前記実施形態を以下のように構築することが可能である。
【0127】
本発明の別の実施形態によれば、第1の鏡要素の第1の反射層は、エタロン基体の第1の反射層表面又は第2の反射層表面である。
【0128】
本発明の代替実施形態によれば、エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタは、波長選択可能干渉フィルタの2つの独立構成要素である。
【0129】
このモジュール式実施形態は、例えば、ファブリ・ペロー・フィルタをエタロンとは個別に向けることができるため、有利である。特に、エタロンをファブリ・ペロー・フィルタとは異なる角度で傾斜させることが可能であり、これにより、波長選択可能干渉フィルタのより正確な較正又は同調を可能にする。
【0130】
本発明の別の実施形態によれば、ファブリ・ペロー・フィルタの第1の作動デバイスは、微小電気機械システム(MEMS)を備え、第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素は、第1の鏡要素と第2の鏡要素との間の距離を変更するように微小電気機械システム上に配置される。
【0131】
本実施形態は、MEMS-ファブリ・ペロー・フィルタの作製が相当に費用対効果がよい方法であるため、特に有利である。したがって、MEMS-ファブリ・ペロー・フィルタを組み込んだ干渉フィルタは、例えば、他の同調可能格子ベースのフィルタほど高額ではない。
【0132】
MEMSデバイスは、良好に制御可能であり、安定している。したがって、MEMS-ファブリ・ペロー・フィルタは、正確に同調できる。即ち、第1の反射層と第2の反射層との間の距離は、特に50nmより良好な、高い精度で調節できる。
【0133】
更に、MEMS-ファブリ・ペロー・フィルタは、格子ベースのフィルタよりも小さく、したがって、フィルタ全体をより小さく構築できる。MEMSは、非常に強固でもある。
【0134】
本発明の別の実施形態によれば、エタロンの第2の作動デバイスは、微小電気機械システム(MEMS)を備え、エタロンの第1の面及び/又は第2の面は、第1の面と第2の面との間の距離を変更するように微小電気機械システム上に配置される。
【0135】
本発明の別の実施形態によれば、第1の作動デバイス及び/又は第2の作動デバイスは、静電的に微細作動する、特に、微細加工された作動器を備える。そのような作動器は、例えば、MEMSであり、前記作動器は、MEMSに印加し得る電界に基づきファブリ・ペロー・フィルタの鏡要素(複数可)又はエタロンの表面(複数可)を作動する。
【0136】
本発明の別の実施形態によれば、第1の作動デバイス及び/又は第2の作動デバイスは、複数の個々に動作可能な対の作動電極を備え、ファブリ・ペロー・フィルタの反射面の向き及び/又はエタロンの表面の向きを制御する。
【0137】
このことは、エタロンの表面の相対的な向き、及びファブリ・ペロー・フィルタの反射層の相対的な向きは、かなり正確に制御すべきであり、これにより波長選択可能干渉フィルタの質を決定するため、特に有利である。
【0138】
対の作動電極を使用すると、このタスクが達成される。
【0139】
本発明の別の実施形態によれば、ファブリ・ペロー・フィルタは、特に、第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素上に個別の電極を有し、反射層のx-距離及びy-距離を調節し、傾斜の補償を可能にする。このことは、静電容量式距離測定、及び能動的な電子距離調節を使用して、閉ループ傾斜補償によって促進できる。
【0140】
本発明の別の実施形態によれば、第1の作動デバイス及び/又は第2の作動デバイスは、磁気的に作動する、特に、微細加工された作動器を備える。
【0141】
作動が誘導磁界に基づく作動器も、波長選択可能干渉フィルタに適した作動をもたらし得る。
【0142】
本発明の別の実施形態によれば、第1の作動デバイスは、第1の鏡要素が、特に固定した第2の鏡要素に対して移動可能であるか、若しくは第2の鏡要素が、特に固定した第1の鏡要素に対して移動可能であるように構成されるか、又は第1の鏡要素及び第2の鏡要素は、移動可能であり、第1の鏡要素及び第2の鏡要素は、特に、同一の質量及び懸架具を有する。
【0143】
同様又は同一の質量という後者の特徴は、外部の加速度、及び重力等の力を補償するのに有用である。
【0144】
用語「移動可能」とは、本文脈において、反射層の間の距離を変更するための鏡要素の平行移動を指す。しかし、平行な層構成を得て、維持するために第1の反射層及び第2の反射層の相対的な向きを調節する等、回転性の移動もこの概念に含まれる。
【0145】
本発明の別の実施形態によれば、第2の作動デバイスは、エタロンの第1の面が、特に固定した第2の面に対して移動可能であるか、若しくは第2の面が、特に固定したエタロンの第1の面に対して移動可能であるように構成されるか、又は第1の面及び第2の面は、移動可能であり、第1の面及び第2の面は、特に、同一の質量及び懸架具を有し、特に、外部の加速度、及び重力等の力を補償するようにする。
【0146】
本実施形態は、ガス充填又は真空のエタロン・キャビティの背景においてのみであることは理解されよう。
【0147】
本実施形態の利点は、表面の間の距離の調節が、各用途に対してふさわしい実施形態を発見できるように、様々な様式で達成できることである。同じことは、以前の実施形態で開示した、鏡要素が様々に移動可能である実施形態にも当てはまる。
【0148】
本発明の別の実施形態によれば、第1の光学要素は、キャビティ内ファセットにおいて、第1の光学要素が、キャビティ内ファセットから出たレーザ・ビームを平行化するように配置される。
【0149】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、温度安定化手段、特に、加熱又は冷却要素を備え、前記手段は、エタロンの温度を安定化できるように、レーザ内に配置される。
【0150】
本発明によるレーザにより、全てが微細加工された半導体構成要素の使用を可能にし、この構成要素は、ほぼ任意の小型化と共に、かなり高い機械及びスペクトルの安定性を有し、偶発的な共振器の損失はかなり低い(即ち、外部キャビティ結合が高い)。
【0151】
更に、本発明によるレーザは、以下の相乗効果から利益を得る。安定性及び結合効率のために使用されるビーム・スプリッタは、透過性干渉フィルタと組み合わせて使用するように構成される。透過性干渉フィルタは、ビーム・スプリッタからの強化した結合と組み合わせると、最良の性能をもたらす(というのは、例えば、散乱又は吸収によるやむを得ない接続中のフィルタ損失は、2回通過のために2倍になるためである)。
【0152】
本発明の別の実施形態によれば、ビーム・スプリッタは、キャッツアイ後方反射器であり、反射面及び焦点面を有する屈折光学要素を備え、屈折光学要素は、屈折要素の焦点面が少なくとも部分的に、特に光軸上で反射面と一致するように構成される。
【0153】
キャッツアイ・ビーム・スプリッタは、自己整合する受動的後方反射ビーム・スプリッタの全ての特徴をもたらす一方で、低い構造複雑さしか呈さない。キャッツアイ・ビーム・スプリッタは、モノリシック・デバイスとすることができる。
【0154】
ビーム・スプリッタの側のレーザ出力ポートは、放出したレーザ光を容易に処理するのに良好に規定された焦点をもたらす。例えば、特に、ファイバ結合デバイス以外の更なる構成要素を伴わずに、放出光をファイバに結合することが可能である。
【0155】
出力ポートの1つが反射面の側にあるため、後方反射ビーム・スプリッタの反射面は、特に、100%未満、より詳細には、95%未満、より詳細には、80%未満、より詳細には、20%以上の反射率を呈する。
【0156】
本発明の別の実施形態によれば、第1の光学要素は、厚い、特に0.5よりも大きい高開口数の平行化レンズであり、レンズは、特に、非球面平凸レンズであり、レンズは、特に、2mm以下の開放絞りを有する。
【0157】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、量子カスケード・レーザ(QCL)である。
【0158】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、(帯域間)ダイオード・レーザである。
【0159】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、量子井戸レーザである。
【0160】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、帯域間カスケード・レーザである。
【0161】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、量子ドット・レーザである。
【0162】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)である。
【0163】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、NIR範囲内で放出するように構成される。
【0164】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、MIR範囲内で放出するように構成される。
【0165】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、FIR範囲内で放出するように構成される。
【0166】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、THz範囲内で放出するように構成される。
【0167】
本発明によるレーザは、SOAがQCLである場合、MIR内で特に良好に機能する。
【0168】
QCLは、ビーム・スプリッタに面する出力ファセット(キャビティ内ファセット)を有し、前記ファセットは、特に、増透コーティング構造でコーティングされる。QCLのもう一方のファセット(キャビティ外ファセット)は、反射変更コーティング、特に、キャビティ外ファセットを部分的に、特に20%から70%の範囲、更には最大100%で反射性のままにするコーティングを有する。
【0169】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、パルス・モードで動作するように構成される。このことは、有利には、SOA上の熱負荷(加熱)がcw動作よりも少ないことを伴い、レーザを同調する際のモード膠着状態を防止し、高パルス・パワー及び低平均電力を可能にし、このことは、繊細なサンプルの照明又は光音響測定の際に特に有利である。
【0170】
レーザは、特に、SOAのパルス励起手段を備える。
【0171】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、外部レーザ・キャビティの外側に面するキャビティ外ファセットを有し、特に、キャビティ外ファセットの前面には、レンズ等の平行化又は集束光学系が配置され、特に、キャビティ外ファセットは、反射コーティング又は増透コーティングを備える。
【0172】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、光ファイバ、特に、MIR範囲用光ファイバを備え、前記ファイバは、後方反射ビーム・スプリッタに面する出力ポートに結合され、特に、平行化、集束レンズは、ビーム・スプリッタとファイバとの間に配置される、即ち、屈折要素は、ビーム・スプリッタとファイバとの間に配置されない(突き合わせ結合される)。
【0173】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、光ファイバ、特に、MIR領域用光ファイバを備え、前記ファイバは、SOAのキャビティ外ファセットに面する出力ポートに結合され、特に、平行化、集束レンズは、キャビティ外ファセットとファイバとの間に配置される、即ち、屈折要素は、キャビティ外ファセットとファイバとの間に配置されない(突き合わせ結合される)。
【0174】
本発明の別の実施形態によれば、ファイバ結合デバイスは、キャビティ外ファセット又はビーム・スプリッタに配置され、ファイバをレーザに取り付けできるようにする。
【0175】
本発明の別の実施形態によれば、キャビティ外ファセットに配置されるビーム・スプリッタ又は平行化レンズは、平行化出力ビームが、出力ポートで3mmよりも小さいビーム・ウエスト径を有するように構成され、このウエスト径は、特に、1/eのビーム強度によって規定される。
【0176】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、特にMIR範囲用の、ビーム・スプリッタの出力ポートに結合された光検出器又はパワー・メータを備える。
【0177】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、特にMIR範囲用の、キャビティ外ファセットの出力ポートに結合された光検出器又はパワー・メータを備える。
【0178】
本発明の別の実施形態によれば、波長選択可能干渉フィルタの開口部の直径は、選択レーザ波長の2000分の1である。
【0179】
測定したレーザの出力パワーは、リアルタイムで処理し、レーザにフィードバックし、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長及び/又はSOAの励起電流及び/又はレーザの冷却電流を閉ループで調節し、レーザ放出を安定化するようにする。出力ポートの目的は、かなり明らかに、交換できる。
【0180】
本発明の別の実施形態によれば、エタロン表面の表面法線及び/又はファブリ・ペロー・フィルタの反射層は、レーザのキャビティの光軸に対してある角度で配置され、前記角度は、特に、0.5°より大きく、60°よりも小さい。
【0181】
この実施形態は、外部キャビティ内の寄生レーザ光の低減を可能にする。
【0182】
エタロンは、光軸に対して傾斜可能であることが特に可能である。
【0183】
本発明の別の実施形態によれば、レーザの外部キャビティ長は、20mm未満であり、特に、10mm未満であり、より詳細には、8mm未満である。
【0184】
本実施形態は、小型レーザを可能にする。キャビティ長は、特に、レーザ光が1回通過する間のキャビティの光学的長さである。
【0185】
本発明の別の実施形態によれば、ビーム・スプリッタは、第1の平凸、特に、厚いレンズを備え、レンズのキャビティの内側に面する面、即ち、キャビティの内側を向く面、したがって、波長選択可能干渉フィルタの方を向く面は、凸形、特に非球面外形を有し、レンズのキャビティの外側に面する面は、平面であり、特に、キャビティの外側に面する面の法線は、レンズの凸面の回転軸に平行であるか又はこれと一致し、レンズの焦点平面は、少なくともレンズの光軸で平面上にあり、この平面は、特に、反射層でコーティングされ、凸面は、特に、増透層でコーティングされる。
【0186】
このビーム・スプリッタは、軸上後方反射入射光を有利で強固な様式で可能にする。
【0187】
本発明の別の実施形態によれば、ビーム・スプリッタは、キャビティの外側に面するビーム・スプリッタの表面から放出された光がビーム・スプリッタの外側で平行化又は集束されるように構成され、ビーム・スプリッタは、特に、本発明の以前の実施形態による第1の凸レンズを備え、特に、ビーム・スプリッタは、第2の平凸レンズを更に備え、第2の平凸レンズの平面のキャビティの内側に面する面は、第1の平凸レンズの平面と背中合わせに、特に接触して配置され、特に、第1の平凸レンズ及び第2の平凸レンズは、同軸に配置され、第2の平凸レンズの凸形のキャビティの外側に面する面は、特に、非球面である、及び/又は増透層でコーティングされ、ビーム・スプリッタが、放出光を平行化するように構成した場合、特に、第2の平凸レンズの焦点平面は、少なくともレンズの光軸で、第2の平凸レンズの平面上にあり、ビーム・スプリッタが、放出光を集束するように構成された場合、第2のレンズの焦点平面は、特に、第2の凸レンズの内側にあり、第2の凸レンズの平面に面平行である。
【0188】
本実施形態は、ビーム・スプリッタにおける出力ポート外側での焦点の生成、及び前記出力ポートでの光の平行化を可能にする。
【0189】
本発明の別の実施形態によれば、レーザは、SOAを電気的に励起する手段を備え、励起手段は、5nsから1000nsのパルス継続時間及び0.1%から60%の間の負荷周期を伴う短い電気パルスでレーザを励起する、及び/又は連続波を生成する連続、特に変調電流、若しくはレーザのパルス・モード動作を使用してレーザを励起するように構成される。
【0190】
本発明の別の実施形態によれば、SOAファセットの少なくとも1つ、即ち、キャビティ内ファセット又はキャビティ外ファセットは、特に単層又は多層薄膜構造体から作製した反射変更光学コーティングを有する。
【0191】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、SOAの中心波長の±3%超、特に、±5%超、より詳細には、±10%超に及ぶスペクトル利得領域を有する。
【0192】
波長選択可能干渉フィルタの中心波長と同一である必要はないSOAの中心波長は、利得スペクトルの上限と下限との算術平均、即ち、外部キャビティ構成内の同調範囲である。利得スペクトルは、SOAの活性領域内の電子遷移の遷移エネルギーによって与えられ、遷移エネルギーは、光子によって誘導され、更なる光子を生成し、これにより、利得を光子にもたらす。
【0193】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、波長4.1μm、4.6μm、5.7μm、8μm、9μm、10μm、11μm及び/又は12μmを含むスペクトル利得領域を有し、特に、前記波長は、特に、中心波長である。
【0194】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、THz領域を含むスペクトル利得領域を有する。
【0195】
本発明の別の実施形態によれば、SOAは、以下の構成要素:2つの出力ファセット、即ち、キャビティ内ファセット及びキャビティ外ファセット、導波路系、電流路、基体のうち少なくとも1つを備える。
【0196】
2つの出力ファセットは、特に、特にSOAの長尺延在部、特にSOAの活性領域に対して直交に配置される平面を有する。
【0197】
別の実施形態では、出力ファセットの少なくとも1つは、SOA導波路に対して傾斜させることができ、SOA導波路は、ファセットの表面法線であり、SOA導波路の軸は、非ゼロ角度を形成する。この構成は、増透がファセットで必要である場合、特に有利である。傾斜ファセットは、性能を強化するように増透(AR-)コーティングと組み合わせることができる。1つのファセットの傾斜は、典型的には、当技術分野で公知のJ型導波路で達成され、2つのファセットの傾斜は、S型導波路で達成される。J型導波路は、シングル・アングル・ファセット(SAF)として当技術分野で公知であり、S型導波路は、ダブル・アングル・ファセット(DAF)又は2アングル・ファセット(TAF)として公知である。
【0198】
量子井戸積層半導体構造の周囲に形成された導波路系は、特に、光学的に伝導性である活性層、及び光学的に伝導性である不活性材料内に埋め込まれた不活性層から構成される。電流路は、特に、電流を通すことができる直列電気回路を形成するように構成した複数の導電性要素を備える。前記基体は、特に、整合結晶構造を有するバルク結晶材料層であるか、又は前記量子井戸積層半導体に対してひずみを有するバルク結晶材料層であり、前記量子井戸積層は、基体の結晶格子定数を整合する平均結晶格子定数を有するように、ひずみに対して補償される。ひずみを補償する方法は、当技術分野において周知であり、QCLの性能に対して利点を有し得る。
【0199】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの帰還要素は、利得媒質と統合される。
【0200】
前記帰還要素は、特に、利得媒質と周囲の媒質(真空又はガス)との間のフレネル反射を特徴とする。
【0201】
代替的に、本発明によるレーザは、波長選択可能干渉フィルタを備えるレーザと同じ構成要素を備えるが、波長選択可能干渉フィルタは、調節可能ファブリ・ペロー・フィルタのみと取り替えられるという差がある。本発明によるレーザのこの代替実施形態は、特に外部キャビティと、少なくとも以下の構成要素、
特に外部キャビティの一部であり、外部キャビティの方を向くキャビティ内ファセットを備える半導体光増幅器(SOA)と、
半導体光増幅器のキャビティ内ファセットに配置された、キャビティ内ファセットから出たレーザ・ビームを平行化する、第1の、特に、屈折又は反射光学要素と、
少なくとも1つの波長調節可能ファブリ・ペロー・フィルタ(FPF)を備える透過性波長調節可能干渉フィルタ(IF)と、を有し、
干渉フィルタは、第1の光学要素とビーム・スプリッタとの間に配置され、構成要素は、選択レーザ波長を含むレーザ光が、外部キャビティ内で安定して共振できるように配置され、軸上後方反射ビーム・スプリッタは、外部キャビティの一端に配置され、ファブリ・ペロー・フィルタは、特に、MEMSファブリ・ペロー・フィルタである。
【0202】
エタロンを備えるレーザの全ての以前の実施形態は、実施形態がエタロンを備えない限り、この代替レーザ構成に適用できることに留意されたい。全ての定義及び利点は、同様に適用される。
【0203】
本発明に係る問題は、本発明によるレーザを備える赤外分光計によって更に解決され、赤外分光計は、特に、吸光、散乱光、伝送光又は反射光を検出する手段、光音響検出器、光検出器、焦電検出器又はボロメータ等を備える。
【0204】
更に、本発明に係る問題は、本発明によるレーザにより帯域外レーザ・モードをフィルタ処理する方法によって解決され、レーザは、パルス・モード又は連続波モード(cw)で動作し、SOAの励起力は、干渉フィルタ伝送ピークの全幅半値内に含まれる波長帯域内のレーザ・モードのみが、レーザが発振閾値を上回って動作し、選択エタロン伝送帯域外の全てのレーザ・モード、特に、選択レーザ波長から、エタロンの自由スペクトル領域の整数倍離間するレーザ・モードが発振閾値を依然として下回る程度まで励起されるように調節され(即ち、エタロンの伝送帯域は、ファブリ・ペロー・フィルタによって選択される)、ファブリ・ペロー・フィルタは、特に、ファブリ・ペロー・フィルタ伝送の中心波長及び前記エタロン伝送ピークの中心波長が、特に2%以内で同一であるように同調される。
【0205】
この方法は、特に、エタロンを備える、本発明によるレーザのために設計される。
【0206】
この方法は、単色、特に、シングルモードのパルス・レーザ出力を可能にし、レーザは、依然として波長切り替え可能である。
【0207】
本発明に係る問題は、本発明によるレーザによりレーザ波長を調節する方法によって更に解決され、方法は、
a)選択レーザ波長を含む入射光ビームに対して予め規定した角度の下、エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタを配置するステップと、
b)選択波長がファブリ・ペロー・フィルタを通って伝送されるように、ファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティの距離を調節するステップと、
c)波長選択可能干渉フィルタの伝送光の強度を決定するステップと、
d)伝送光の強度を最大化するように、ファブリ・ペロー・フィルタのキャビティ長を変更するステップと
を含む。
【0208】
別の実施形態によれば、方法は、特に、エタロンを加熱することによって、エタロンの光学キャビティ長を変更するステップと、選択レーザ波長を調節するため、方法のステップb)及びc)を実施するステップと、を更に含む。
【0209】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面を参照しながら、実施形態の詳細な説明により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0210】
図1a】第1の作動デバイスを有するファブリ・ペロー・フィルタの図である。
図1b】第1の作動デバイスを有するファブリ・ペロー・フィルタの図である。
図1c】第1の作動デバイスを有するファブリ・ペロー・フィルタの図である。
図1d】第1の作動デバイスを有するファブリ・ペロー・フィルタの図である。
図2a】本発明による、エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタを備えるレーザの波長選択可能干渉フィルタの図である。
図2b】本発明による、エタロン及びファブリ・ペロー・フィルタを備えるレーザの波長選択可能干渉フィルタの図である。
図3a】波長選択可能干渉フィルタの伝送スペクトルのグラフである。
図3b】波長選択可能干渉フィルタの伝送スペクトルのグラフである。
図4】波長選択可能干渉フィルタのモノリシック・バージョンの図である。
図5a】本発明によるレーザの図である。
図5b】本発明によるレーザの図である。
図6a】ファイバと検出器とを突き合わせ結合したレーザの一実施形態の図である。
図6b】ファイバと検出器とを突き合わせ結合したレーザの一実施形態の図である。
図7a】ファイバと検出器とを逆にした図6のレーザの一実施形態の図である。
図7b】ファイバと検出器とを逆にした図6のレーザの一実施形態の図である。
図8a】更なる結合光学系を有する、図7のレーザの一実施形態の図である。
図8b】更なる結合光学系を有する、図7のレーザの一実施形態の図である。
図9a】自由空間結合光学系を有する、図5のレーザの一実施形態の図である。
図9b】自由空間結合光学系を有する、図5のレーザの一実施形態の図である。
図10a】後方反射ビーム・スプリッタの実施形態の図である。
図10b】後方反射ビーム・スプリッタの実施形態の図である。
図10c】後方反射ビーム・スプリッタの実施形態の図である。
図10d】後方反射ビーム・スプリッタの実施形態の図である。
図10e】後方反射ビーム・スプリッタの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0211】
図1は、本発明による波長選択可能干渉フィルタ1の一部であるファブリ・ペロー・フィルタ100を示す。図1aは、ファブリ・ペロー・フィルタ100の上面図を示し、図1bは、等角図を示し、図1cは、断面図を示す。図1dは、鏡要素101及び102の対称懸架具を有するファブリ・ペロー・フィルタ100の断面図を示す。
【0212】
ファブリ・ペロー・フィルタ100は、小型の、微細加工された、好ましくは静電的に同調された、中赤外ファブリ・ペロー型帯域干渉フィルタ100であり、シリコン又はゲルマニウム等の適切なMIR透過性基体107上に第1の高反射層103を有する第1の鏡要素101と、第2の高反射層104を有する第2の鏡要素102とを備え、第1の鏡要素101及び第2の鏡要素102は、互いに対向し、ガス充填間隙又は真空間隙(キャビティ)106は、第1の鏡要素101と第2の鏡要素102との間にあり、間隙106は、第1の作動デバイス200によって0.1μmから10μmまでの範囲の距離301に調節できる。
【0213】
用語「高反射」とは、特に、98%よりも大きい反射率を指す。
【0214】
反射層103、104は、物理蒸着(PVD)若しくは化学蒸着(CVD)、又は適切な事前処理若しくは後処理、例えば、熱焼鈍若しくは化学的焼鈍、プラズマ酸化及び研磨等による、当技術分野で公知のあらゆる他の適切な技法を使用して堆積できる。
【0215】
ファブリ・ペロー・フィルタ100は、2つの光学的に平坦な基体107から作製することができ、基体107は、フォトリソグラフィ技法、薄膜蒸着、及びその後、ウエハ接合を使用して構成、コーティングされる。
【0216】
少なくとも1つの、特に、両方の鏡要素101及び102は、反射層103、104の表面法線116に平行な方向で移動可能である。
【0217】
鏡要素101、102は、懸架具202に取り付けられ、懸架具202は、基体材料107から微細加工した中実撓み接合部として設計されている。代替的に、懸架具202は、圧電性結晶、磁力又は静電力を含む作動手段を含むことが可能である。
【0218】
本実施形態は、反射層103、104に隣接する対の電極パネル又はリング203及び204を用いる静電力による作動に基づく。
【0219】
代替的に(図示せず)、反射層の間隔を複数の点で個々に制御し、相対的な傾斜(面平行からの相対的な偏り)を低減する個々に動作可能な対の作動電極は、第1の鏡要素及び/又は第2の鏡要素に配置される。
【0220】
距離301(ファブリ・ペロー・フィルタ100のキャビティ長)は、静電容量式に測定され、1回限りの較正若しくは繰り返しの較正を通じて、又はリアルタイムの較正で調節でき、閉ループでの位置決めを可能にする。
【0221】
ファブリ・ペロー・フィルタ100の可動部品の最小変位及び最大変位は、機械式ストッパ205の使用により制限され、反射面の衝突をもたらし得る大きな作動電圧における電極の機械的衝撃及びプルイン現象に対して構成要素を保護する。
【0222】
別の実施形態によれば、2つの可動鏡要素は、例えば、ほぼ同一の質量及び懸架具により対称的に設計され、特に、加速度及び重力等の外力に対する間隔を補償する。図1dを参照。
【0223】
懸架具は、平行運動のみを可能にする押出成形した平行四辺形体(図示せず)として設計できる。
【0224】
鏡要素101及び102は、10マイクロメートルよりも厚く、それぞれの反射層103、104に対するコーティング応力による湾曲を効果的に低減する。
【0225】
ファブリ・ペロー・キャビティ106の外側に面する鏡要素101及び102の表面108及び109は、増透光学薄膜コーティング構造によりコーティングされる。
【0226】
代替的に、ブルースター角での波長選択可能干渉フィルタの物理的サブ波長構造化又は実装等、他の増透手段を使用できる。
【0227】
ファブリ・ペロー・フィルタ100の開口部は、10mm2未満、特に、4mm2未満である。
【0228】
ファブリ・ペロー・フィルタ100構造全体は、10mm×10mm×1mm未満である。
【0229】
図2aは、本発明によるフィルタを示し、ファブリ・ペロー・フィルタ100及びエタロン110は、波長選択可能干渉フィルタ1に含まれる個別の構成要素である。
【0230】
ファブリ・ペロー・フィルタの基体107及びエタロンの基体115は、シリコン製である。エタロン110は、2つの面平行面111、112を有し、2つの面平行面111、112は、MIR範囲用反射向上層114でコーティングされるか、又はフレネル反射を呈するように空のままにしておく。
【0231】
エタロンの表面111、112は、ファブリ・ペロー・フィルタ100の第1の反射層103及び第2の反射層104とも平行であるか、又は非ゼロ角度で取り付けられる。
【0232】
ファブリ・ペロー・フィルタ100は、MEMS201上に配置される第1の鏡要素101と第2の鏡要素102とを備える。第1の鏡要素101は、第1の反射層103を備え、第2の鏡要素102は、第2の反射層104を備え、第1の反射層103及び第2の反射層104は、互いに面平行である。
【0233】
鏡要素101、102の裏側108、109は、ARコーティングされている。
【0234】
入射光ビームに対し、反射層103、104及び表面111、112は、これらの表面法線に対して数度だけ傾斜する。
【0235】
エタロン110とファブリ・ペロー・フィルタ100との間には、間隙がある。
【0236】
ファブリ・ペロー・フィルタ100のキャビティ長301は、MEMS201によって調節することができ、エタロンのキャビティ長302は、固定されている。
【0237】
図2bは、本発明によるフィルタの別の実施形態を示し、ファブリ・ペロー・フィルタ100及びエタロン110は、波長選択可能干渉フィルタ1に含まれる個別の構成要素である。
【0238】
ファブリ・ペロー・フィルタ100のキャビティ長301及びエタロン110のキャビティ長302は、MEMSによって調節できる。
【0239】
図3aは、2つの異なる位置(実線及び破線)に同調した、エタロン(点線)及びファブリ・ペロー・フィルタの典型的な伝送特性を示す。
【0240】
図3bは、本発明による外部キャビティに挿入した際の、波長選択可能干渉フィルタの伝送、即ち、ファブリ・ペロー・フィルタ100とエタロン110との複合伝送を示し、複合伝送は、波長選択可能干渉フィルタを2回通過する間の、ファブリ・ペロー・フィルタの2つの異なる波長設定に関する、ファブリ・ペロー・フィルタの伝送特性とエタロンの伝送特性との積である。図示の状況は、ファブリ・ペロー・フィルタが、全ての他の伝送ピークを遮断する一方で、第1の設定(破線)の1111cm-1、及び第2の設定の1148cm-1のエタロンの伝送ピークをどのように選択するかを示す。
【0241】
図3bは、波長選択可能干渉フィルタを通る伝送全体が、どのように帯域幅を有するかを示し、波長選択可能干渉フィルタの帯域幅は、各エタロンの伝送ピークの帯域幅に等しく、ファブリ・ペロー伝送の帯域幅よりもかなり小さい。エタロン110の隣接する伝送ピークに対する抑制502(横モード抑制)は、エタロン110のFSRの増大、及びファブリ・ペロー・フィルタ帯域幅の減少と共に増大する。横モードに対する抑制502は、波長選択可能干渉フィルタ1の通過数と共にも増大する。
【0242】
本発明のいくつかの実施形態では、SOAは、抑制横モード502の共振器の損失が、横モードの発振(レーザ作用)を維持しないようにする程度まで励起される一方で、選択伝送ピーク501は、発振閾値(レーザ作用)を上回る。したがって、レーザの放出は、ファブリ・ペロー・フィルタ100が選択したエタロン110の伝送ピーク501に制限される。
【0243】
ファブリ・ペロー・フィルタ100のキャビティ長301を調節することによって、レーザ波長をエタロン110の別の伝送ピークにデジタルに同調できる(例えば、図3を参照)。
【0244】
図4aでは、本発明によるフィルタ1を示し、エタロン110は、ファブリ・ペロー・フィルタ100の一体部分である。
【0245】
ファブリ・ペロー・フィルタ100の第1の鏡要素101は、反射第1の層103(111)と、面平行な反射第2の層108(112)とを有し、反射第1の層103(111)及び面平行な反射第2の層108(112)は両方とも高反射性である。第1の反射層103(111)は、空気キャビティ内側の光反射をエタロン・キャビティ内側の反射に位相整合する手段を含む。
【0246】
第1の鏡要素101(110)の基体107(115)は、透過性であり、10μmから1000μmの間の厚さを有する。このように、第1の鏡要素101は、エタロン110が備える全ての特性を備え、括弧内の番号で示される。したがって、第1の鏡要素101は、エタロン110を備えるか又はエタロン110である。
【0247】
本実施形態は、エタロン110とファブリ・ペロー・フィルタ100との整合不良に対して特に強固である。しかし、温度安定化は、わずかにより複雑である。
【0248】
エタロン110の伝送モード間隔は、数cm-1である。したがって、モードは、ファブリ・ペロー・フィルタ100がそのキャビティ長301に対して達成する精度によって十分に弁別可能である。
【0249】
(温度制御された)エタロン110は、ファブリ・ペロー・フィルタ100が選択し、数cm-1で離間するいくつかの狭い十分に規定された放出モードまで許容共振周波数を広げる。このことにより、より少ないデジタル同調モードを可能にする明瞭な費用で、ビームの質及び波長精度を改善し、電子的及び計算的な処理を促進する。
【0250】
図5から図9は、本発明によるレーザ10の様々な実施形態を示す。図5aから図9aは、レーザ10を上面図で示し、図5bから図9bは、レーザ10を等角図で示す。
【0251】
レーザ10は、QCL等のMIR領域用SOA12を備える。
【0252】
SOA12は、高熱伝導率サブマウント2上にエピアップ(epi-side up)又はエピダウン(epi-side down)ではんだ付けされ、高熱伝導率サブマウント2は、特に、アルミニウム窒化物、AIN又は同様の高熱伝導率材料から作製される。サブマウント2は、基礎構造体3上に組み付けられる。基礎構造体3は、金めっき研磨銅等、高熱伝導率で熱接触可能な材料から作製される。良好な熱接触は、高熱伝導率の接着剤、はんだ、サーマル・ペースト等の使用を通じて保証される。基礎構造体3は、同時に、全ての光学構成要素が確実に固定される小型高剛性機械式構造体として働き、並びにその高熱伝導率及び高熱質量のために熱拡散器及びヒートシンクとして働く、2つの機能を有する。
【0253】
基礎構造体3は、熱電気冷却器(TEC)4上に組み付けられ、熱電気冷却器(TEC)4は、筐体構造体(図示せず)の内側と熱接触できる。
【0254】
熱電気冷却器4は、適切に置かれた温度センサ及び制御電子機器と共に、レーザ10及び光学構成要素の温度を室温(又はあらゆる他の周囲温度)付近で安定化するように構成される。
【0255】
レーザ10は、超小型筐体(図示せず)内に組み込み可能であり、超小型筐体は、密閉封止され、キャビティ内の吸収を抑制するように不活性ガス、空気又は真空を含むか、又はレーザをより低い温度まで冷却する場合、光学系のいずれかに対する水蒸気凝縮物を含む。筐体全体は、極端なケースにおいて、同調及び冷却に必要な構成要素全てを含めて、6mm×6mm×6mmよりも小さい寸法で作製し得ることが本発明の特定の特徴である。
【0256】
SOA12は、パルス・モードで駆動する際、比較的わずかな熱負荷を表し、設定温度と周囲温度との間の温度差はわずかであるため、冷却水又はファンによる外部の意図的な熱除去は、もはや使用せず、熱除去は、筐体(図示せず)の本体を通じて受動的に実施できる。
【0257】
SOA12は、制御器電子機器(図示せず)を使用して、好ましくは5ns~1000nsという短いパルス継続時間で電気的に接触、励起され、モードを「膠着させる」ことなく高速波長切り替え機能を保証する。パルス・モード動作は、わずかな電力消費及び高レーザ発振効率を更に保証する。というのは、パルス・モードにおける動作温度は、ヒートシンク温度にほぼ等しいためである。このこと以外に、パルス・モード動作は、より広い同調範囲を与える。
【0258】
SOA12は、2つの放出ファセット、即ち、キャビティ外ファセット122及びキャビティ内ファセット121を有する。キャビティ外ファセット122は、放出に有利な(2%から100%の範囲の)任意の反射率を有し、この反射率は、適切な光学コーティングを通じて、又は約28%の劈開結晶フレネル反射率の使用を通じて達成される。反射率がより高いと、キャビティ外ファセット122を通じてもたらされるレーザ共振器損失はより低いが、レーザ放出もより低くなる。
【0259】
キャビティ内ファセット121は、低い反射率を有し、この低い反射率は、キャビティ内ファセット121の適切な反射防止コーティングを通じて達成される。
【0260】
キャビティ外ファセット122は、レーザ共振器の第1の端部鏡(反射器)である。
【0261】
伝送光は、キャビティ外ファセット122が光の波長と同等の寸法を有するため、キャビティ外ファセット122を通じて単一の十分に規定された焦点から共振器を離れる。このことにより、平行化、ファイバ結合又は再集束等の更なる処理を容易にする。出た光は、1次ビーム(例えば図7又は図8を参照)又は検出器5の方に向けられる2次ビーム(例えば図6を参照)のいずれかとすることが可能である。2次出力が不要であり、後方反射器を1次出力ポートとして選択する場合、キャビティ外ファセットを高反射コーティングでコーティングできる。
【0262】
キャビティ内ファセット121から放出された光は、厚い非球面平凸平行化レンズ130を使用して平行化される。レンズ130の集束力は、レンズの厚さ、及びシリコン等の高屈折率材料のために低減する。高屈折率材料は、製造及び整合公差を増大させる一方で、平行化ビームのビーム幅を最小化する。レンズ130は、ARコーティングをレンズの平面131上に有し、レンズの凸面132上にARコーティングを有する。
【0263】
レンズ130の後、ファブリ・ペロー・フィルタ100を外部キャビティ11内に配置し、ファブリ・ペロー・フィルタ100の反射層の表面法線は、外部キャビティ11の光軸300に対してある角度にある。波長選択可能干渉フィルタの通過帯域内の波長は伝送される一方で、帯域外波長は、レーザ共振器から鏡面反射される。
【0264】
ファブリ・ペロー・フィルタ100の次に、エタロン110が配置される。エタロン110が伝送するビームの波長範囲は、狭伝送ピークに制限される一方で、全ての他の波長は、鏡面反射される。当然、ファブリ・ペロー・フィルタ100及びエタロン110の配置順序は、逆にできる。
【0265】
エタロン110の厚さは、単一伝送ピークのみが波長選択可能干渉フィルタの伝送最大値の近くにあるように選択される一方で、全ての他の伝送ピークは、強く抑制され、波長選択可能干渉フィルタ1に対し単一の非常に狭い伝送線がもたらされる。
【0266】
外部キャビティ11の終端において、軸上後方反射ビーム・スプリッタ14が配置される。ビーム・スプリッタ14は、凸面142を有し、凸面142は、衝突光をビーム・スプリッタ14の焦点平面140F上の平面143上に集束するように構成される。凸面142は、ARコーティングでコーティングされる一方で、平面143は、反射率増大コーティング、又はフレネル反射率の非コーティング面を有する高反射率のための媒質を有する。
【0267】
衝突光の一部は、外部キャビティ11を完結するビーム・スプリッタ14の反射面143、140Rによって反射される。反射部分は、平行に、軸上で衝突ビームの方向に沿って反射されるため、レーザ設計は、整合不良に対してそれほど影響を受けない。
【0268】
衝突光の別の部分は、ビーム・スプリッタ14によって伝送され、狭帯域レーザ光として、好ましくはシングル・レーザ・モードで外部キャビティ11を離れる。伝送光は、ビーム・スプリッタ14の平面143上の単一の十分に規定された焦点から外部キャビティ11を離れる。更なる構成要素は、平行化(例えば図9を参照)、ファイバ結合(例えば図6を参照)、検出(例えば図7を参照)、又は再集束(例えば図8を参照)等の更なる処理を促進するように、ビーム・スプリッタ14の平面143に配置できる。伝送光は、1次レーザ・ビーム(例えば図5図6若しくは図9を参照)、又は監視目的で検出器5の方に向けられる2次レーザ・ビーム(例えば図7若しくは図8を参照)のいずれかが可能である。2次出力が不要であり、外部キャビティ・ファセットを1次出力ポートとして選択する場合、ビーム・スプリッタを高反射コーティングでコーティングできる。
【0269】
ビーム・スプリッタ14は、カルコゲナイド・ガラス、ZnSe、Si、Ge、GaAs、InP等の高屈折率材料から作製されるが、やはり、製造公差を低減する。ビーム・スプリッタ14の高屈折率は、(機械的な衝撃による意図的でない整合不良を通じて、又は操作中動的に)入口角が変動する状態にもかかわらず、焦点が非常にわずかにしか移動せず、これにより、赤外ファイバ等、後続の静止光学系への結合を強めるという利点も有する。
【0270】
したがって、本発明の特定の利点は、レーザ10に結合されるファイバ6のコア直径は、典型的な直径が100μmから1000μmの間の範囲で十分に大きく選択した場合、ファイバ6への光の結合は、動的なキャビティ内整合不良にかかわらず一定であり、大いに簡略化された初期の整合を可能にする。
【0271】
いくつかの用途は、温度の安定を必要とする波長精度は求めないことを明示的に指摘する。エタロン110の熱光学係数が小さいため、温度の安定がない場合でさえ、高度の波長精度を達成できる。この場合、熱電冷却器4、熱センサ及びTEC制御電子機器を省くことができ、更にデバイスの複雑さを低減する。
【0272】
レンズ130、ファブリ・ペロー・フィルタ100、エタロン110及びビーム・スプリッタ14は、UV硬化接着剤を使用して所定の位置に固定できる。基礎構造体3の十分に狭い製造公差を仮定すると、設計は、整合にあまり影響を受けないことが明示的に指摘され、光学的構成要素は、マイクロポジショナを使用する正確な整合を必要とせず、1つの例外は、キャビティ内ファセット121とレンズ130との間の距離であり、この距離は、レーザ10からの放出パワーを最大化することによって所定の位置に容易に摺動できる。
【0273】
図6a及び図6bは、レーザ10の出力ポートの両方を使用する本発明の一実施形態を示し、両方の出力ポートが十分に規定された焦点に集束されることを示す。レーザ10に加え、図6a及び図6bにおいて、ファイバ6は、後方反射ビーム・スプリッタ14の焦点に直接突き合わせ結合されている。もう一方の出力ポート上には、赤外検出器5が外部キャビティ・ファセット122の前に直接配置されている。ファイバ6は、SMAコネクタを使用して取り付けられる。
【0274】
図7a及び図7bは、図6a及び図6bによるものと同様の本発明の一実施形態を示し、ファイバ6及び検出器5の場所が交換されていることが異なる。このことは、キャビティ外ファセット122及びビーム・スプリッタ14の平面143の反射率の調節を仮定すると、レーザ10の1次出力ポート及び2次出力ポートを交換し得ることを強調する。2つのファイバをレーザに結合し、それぞれのファイバを各出力ポート(図示せず)に結合することも可能である。
【0275】
図8a及び図8bは、再集束光学系18及び147、155を使用する、本発明の別の実施形態を示す。レンズ18は、キャビティ外ファセット122からファイバ6に放出されたビームを再集束させる。このことは、ファイバ・ポート20の正確な調節が可能ではない場合、極薄ファイバへの結合を増大させるのに有利である。この場合、レンズ18は、マイクロポジショナを使用して整合し、設定の間、更なる自由度を可能にする所定の位置に固定できる。レンズ18は、平行化レンズ130と同様又は同一であってよい。
【0276】
再集束光学系147、155は、ビーム・スプリッタ14の図6eに対応する実施形態、及び図10cに対応する実施形態、及び図10eに対応する実施形態で説明する。再集束光学系147、155は、検出器ポート21が正確な調節を可能にしない場合、検出器領域を完全に照明するように調節できる。
【0277】
明らかに、ファイバ6及び検出器5は、交換できる。再集束光学系147、155が厚いレンズである場合、この厚いレンズは、平行化レンズ130と同様又は同一であり得る。
【0278】
要約すると、図6から図8の実施形態は、半導体レーザ内で見いだされる典型的なサイズを複雑に最適利用する。SOAキャビティ内ファセット121に対する集束は、軸上後方反射ビーム・スプリッタ14を通じて安定化する一方で、ファイバ6に対する集束は、安定化させる必要はない。というのは、ファイバは、典型的には、ビーム・スプリッタ14又はキャビティ外ファセット122それぞれの焦点よりも15~150倍大きい直径を有するためである。特に、小型キャビティ内光学系を使用すると、典型的には約300μm~1000μmのファイバ6の直径は、比較的大きくなり、ファイバの結合を取るに足らないものにする。
【0279】
図9a及び図9bは、平行化光学系22及び145、150を使用する、本発明の一実施形態を示す。
【0280】
レンズ22は、キャビティ外ファセット122から放出されたビームを平行化する。レンズ22は、平行化レンズ130と同様又は同一であり得る。
【0281】
平行化光学系145、150は、ビーム・スプリッタ14の図10dに対応する実施形態、及び図10bに対応する実施形態で説明する。平行化光学系145、150が厚いレンズである場合、このレンズは、平行化レンズ130と同様又は同一であり得る。
【0282】
かなり明らかであるが、出力ポートのいずれかから出た結合光の全ての異なる組合せが本発明によって意図される。
【0283】
以下、図5から図9に示すレーザ構成要素の更なる詳細を詳述する。
【0284】
QCLは、約5μmから50μmの幅の狭い線形縞の「隆起部」から形成され、これらの隆起部は、光学的に不活性であるが導電性の半導体基板にエッチングされる。活性領域は、約2μmから10μmの高さである。SOA12は、典型的には0.2mmから10mmの長さの間の1つ又は複数のそのような隆起部を備え、QCLは、劈開又はエッチング面で終端し、表面法線に平行であるか、又は隆起部と表面法線との間に、特に有利に反射を低減する角度を有する。活性領域の体積部と劈開又はエッチング結晶平面との交点である領域を、QCLの「ファセット」121、122と呼ぶ。ファセット121、122の部分的な(フレネル)反射率により、内部に発生した光を活性領域を通じて共振させ、この活性領域は、光を閉じ込める導波路として働く一方で、光の一部は、放出レーザ光の形態でファセットを通じて連続的に失われる。
【0285】
SOAをQCLから生成するには、内部共振を抑制すべきである。このことは、例えばARコーティングによりファセットの少なくとも1つの反射を低減し、レーザ発振閾値を下回って活性領域を励起させることによって行われる。
【0286】
光は、寸法が放出光の波長と同等であるか又はそれよりも小さい寸法のファセット121、122を通じてSOA12の活性領域を出るため、放出光は、最大約90°の高速発散軸内の開き角でかなり発散する。
【0287】
SOA12は、光学的に励起できるが、本例示的実施形態では、SOA12は、5ns~1000ns継続時間の短いパルス、及び約0.1%~60%の負荷周期で電気的に励起されるか、CW(持続波)動作として公知の連続DC電流を使用する。CW動作は、CW動作に重畳されるあらゆる変調を有し得る(明らかに、かなり短いオンオフ・パルスによる変調は、パルス・モードと呼ばれ、CWとは呼ばない)。
【0288】
SOA12は、短パルスの間、平均パワー数μWから数Wまで、又は数Wから数十Wまでの出力光パワーを有し得る。
【0289】
第1の光学要素13/平行化レンズ130
平行化レンズ130は、小型の厚い高開口数の非球面平凸レンズ130であり、赤外透過性材料(Si、Ge、カルコゲナイド・ガラス、ZnSe、ZnS等)から作製され、平面側131上に短い焦点距離を有する。
【0290】
平行化レンズ130は、同じ曲率の薄いレンズと比較して屈折力を低減するという利点を有し、これにより、製造及び整合公差を増大させる。
【0291】
平行化レンズ130は、高開口数を有し、SOA12のキャビティ内ファセット121から放出された光の大部分を収集するように設計される。更に、レンズ130は、小型化及び共振器結合の改善のため、1から100の波長範囲内で小さな平行化ビーム直径をもたらすように設計される。
【0292】
より小さな絞りは、平行化ビームに対してより大きな角度の広がりをもたらすが、外部キャビティ11において、このことは、自由空間キャビティ11の相当に短い長さ、即ち、1mmから20mmの長さのために、比較的大きな程度まで許容できる。
【0293】
実際、外部キャビティ11の自由空間部分は、例外的に短く、光が進行する最大距離は、平行化レンズ130及びビーム・スプリッタ14内に含まれる。両構成要素は、平行化光の角度の広がりをかなり低減する高屈折率材料から作製される。
【0294】
特に、平行化レンズ130は、その平面131に対して0.3mm未満の作動距離、空気中で0.7よりも大きい開口数、3mm未満の開口部、3mm未満の厚さを有し、両面、即ち、平面131及び凸面132をARコーティングでコーティングされる。
【0295】
代替的に、平行化レンズ130は、2mmの開口部、3mmの厚さ、及び9μmの波長で10分の残留半発散角を有する。
【0296】
平行化レンズ130の湾曲外形は、式
を特徴とする回転対称凸形非球面によって説明でき、式中、zは垂下距離であり、rは光軸からの距離であり、パラメータR=-2.450は、曲率であり、k=-1742は円錐定数である。
【0297】
エタロン110
エタロン110は、モード・スプレッダ又は周波数標準とも呼ばれ、Si、Ge、カルコゲナイド・ガラス、ZnSe、ZnS等のMIR透過性材料の均質な固体基体115から作製され、面平行で光学的に平坦な(ラムダ/20より良好な)表面、即ち、第1の面111及び第2の面112を有する。基体115は、エタロン・キャビティ113として働き、エタロン110の第1の面111及び第2の面112上の反射層114からの反射により、干渉をもたらし、エタロン110を通じた波長依存伝送をもたらす。
【0298】
反射層114の形態の反射向上コーティングがエタロン110の表面111、112上に配置されない場合、基体115は、エタロン・キャビティ113としても働き、エタロン110の第1の面111及び第2の面112上のフレネル反射は、干渉をもたらし、エタロン110を通じた波長依存伝送をもたらす。更なる反射層114がないエタロン110は、高屈折率(典型的には2から4.2の間)を有し、表面-周囲境界で高フレネル反射係数をもたらす。
【0299】
この例では、エタロン110の第1の面111及び第2の面112は、これらの上に蒸着した反射層114、薄膜分散ブラッグ反射器又はサブ波長構造格子等を有する。
【0300】
対応して、基体の屈折率を低くする(例えば2を下回る)こともできる。
【0301】
エタロン110は、周波数(又は逆波長)空間内に周期的に繰り返す伝送帯域を呈し、伝送帯域に番号を付ける、即ち、伝送次数を付けることを可能にする。帯域間の周波数空間(又は波長範囲)を自由スペクトル領域(FSR)と称する。
【0302】
伝送帯域は、FSR/Fの線幅を有する共振形状を有する。ここで、Fとは、フィネスであり、表面反射率Rに対して均質に増加する関数である。反射率Rが100%に近づくと、フィネスFに100から10,000程度の大きな値、及び対応して、相当な狭帯域幅(数ナノメートル)を有する伝送帯域をもたらす。
【0303】
エタロン110は、波長標準として使用するため、熱安定化でき、伝送帯域に対してかなり良好な波長安定性をもたらす。
【0304】
外部キャビティ11の光路において、エタロン110は、光軸300に対して傾斜様式で配置され、エタロン110の第1の面111及び第2の面112の表面法線が、共振器の光軸300に平行ではないようにする。この構成により、レーザ共振器に入る、後方反射される帯域外の光の量を低減し、寄生発振をなくす。
【0305】
本発明の好ましい実施形態では、エタロンは、微細加工フィルタ内に統合される。このことは、特に、鏡要素の少なくとも1つ、例えば第1の鏡要素の(ファブリ・ペロー・キャビティから離れて面する)裏側の反射防止コーティングを、反射増大コーティングに取り替えることによって行うことができる。それぞれの鏡要素のファブリ・ペロー・フィルタ・キャビティに面する側の反射面層、例えば、DBR層構造体は、当技術分野で公知であるように、空気キャビティと基体キャビティとの間の正確な位相整合を考慮し、基体キャビティを対称にするように変更できる。
【0306】
別の実施形態では、鏡要素の少なくとも1つ、例えば、第1の鏡要素の裏側の反射防止コーティングを単に省き、代わりに、フレネル反射を使用する。この場合、それぞれの鏡要素のキャビティに面する側の反射面層、例えば、DBR層構造体は、空気キャビティと基体キャビティとの間の正確な位相整合を考慮するように変更できる。
【0307】
別の実施形態では、エタロンは、上記で説明したもののような、微細作動されるエアギャップ・ファブリ・ペロー・フィルタから作製できるが、他の実施形態では、エタロンのように高いキャビティ次数で動作される。このことにより、十分に規定された周波数標準を失うことを犠牲にして、連続的な高速同調を再導入する。この場合、波長の繰返し性は、波長選択可能干渉フィルタの中心波長の繰返し性によって制限される。
【0308】
エタロン110は、熱光学効果を通じて基体115の屈折率を変更する加熱器(図示せず)を備えることが可能である。このことにより、各伝送ピークの位置及びFSRの位置も変更する。熱光学係数は、相当に小さい、例えば、シリコンの場合、室温で2×10-4/Kであるが、各個の伝送ピークの同調範囲は、より厚い基体115の選択により、隣接するモードを近くに置くことによって重複させることができる。
【0309】
例えば、50Kの温度範囲内で、光学的厚さは約1%変化し、>100程度のフィルタを必要とし、9μmでは、約130μmのシリコン・エタロン110の厚さに対応する。このことは、主に、連続同調機能を可能にするが、大きな温度範囲及び高速熱変動を必要とし、コーティングに大きな応力を生じさせる。温度範囲を低減すると、必要な厚さを増大させ、より大きな同調時定数をもたらす。
【0310】
図10a~図10eは、最大の堅牢さのために単一構成要素から作製した後方反射ビーム・スプリッタ14、又は柔軟性を追加するために2つの構成要素から作製した後方反射ビーム・スプリッタ14のいくつかの実施形態を示す。破線は、ビーム・スプリッタ14の中を進行する光を示す。
【0311】
図10aは、モノリシック・ビーム・スプリッタ14を示し、モノリシック・ビーム・スプリッタ14は、MIR範囲で透過性であり、例えば、Si、Ge、カルコゲナイド・ガラス、ZnSe、ZnSを含む。図示のビーム・スプリッタ14は、キャッツアイ型ビーム・スプリッタであり、非球面凸形前面142、即ち、キャビティの内側に面する面と、後方平面143、即ち、キャビティの外側に面する面とを有する。後方表面法線は、凸形前面142の回転軸に平行であり、前面142の焦点に交差する。したがって、十分な近軸光線が、光軸300に対して十分に小さな傾斜にある場合、後方面は、焦点平面140Fと同一である。光線が近軸要件を満たさない場合、焦点平面140F及び後方面143のわずかな逸脱が予期される。
【0312】
ビーム・スプリッタ14の非球面142は、特に、小さなペツヴァル曲率を有するように設計される。非球面142は、赤外透過性材料(Si、Ge、カルコゲナイド・ガラス、ZnSe、ZnS等)の(平行化レンズ130と同様の)厚い、高開口数の非球面平凸レンズ141によってもたらされ、平凸レンズ141の平面143は、上記で詳述した非球面凸面142の焦点平面140Fと同一である。ビーム・スプリッタ14の凸前面142は、ARコーティングを備え、ビーム・スプリッタの平面143は、28%から100%の間の反射率を有する反射層140Rを有する。
【0313】
ビーム・スプリッタ14の伝送光は、十分に規定された後方面143上の焦点を通過するため、ファイバ結合は、単純な突き合わせ結合を通じて達成することができ、ビーム・スプリッタ14を部分的に透過性の後方反射ファイバ・カプラにもする。
【0314】
ビーム・スプリッタの材料の高い屈折率のため、動作中、機械的な衝撃による意図的でない整合不良により入口ビーム角が変動する状態にもかかわらず、ビーム・スプリッタ14の焦点が、わずかな距離しか移動しないことがビーム・スプリッタ14の特定の特徴である。
【0315】
図10aのビーム・スプリッタ14は、3.919mmの厚さを有し、式
を特徴とする、回転対称の凸前面142の外形を有し、式中、zは垂下距離であり、rは光軸からの距離であり、パラメータR=-2.450は、曲率であり、k=-1742は円錐定数である。
【0316】
図10bは、出力で平行化光を生成するように構成した、後方反射ビーム・スプリッタ14の一実施形態を示す。ビーム・スプリッタ14は、2つの構成要素141、145から作製され、それぞれは、図6aのビーム・スプリッタ14と同様である。2つの構成要素141は、既に説明したそれぞれの焦点平面140Fと同一であるそれぞれの平面143、146で接合される。2つの構成要素141、145は、同一である必要はないが、異なる厚さ及び表面曲率を有し、両側に異なるビーム直径をもたらし得る。20%から90%の間の反射率を有する反射層140Rは、2つの構成要素141、145の一致する焦点平面140Fで、構成要素141と145との間に位置する。層は、DBR、サブ波長構造反射器又は単に金属薄膜等、当技術分野で公知のあらゆる形態を有し得る。
【0317】
図10cは、例えば、ファイバ結合目的で、ビーム・スプリッタ14の外側に伝送光を集束するように構成した、後方反射軸上ビーム・スプリッタ14の一実施形態を示す。ビーム・スプリッタ14は、2つの構成要素141、147を備え、それぞれは、図10aのビーム・スプリッタ14と同様であり、それぞれの平面143、148で接合される。第2の再集束構成要素147は、非球面144の焦点距離149よりも厚い。したがって、焦点平面は、再集束構成要素147内にあり、平行化ではなく、再集束構成要素147の外側の点までの集束をもたらす。言い換えれば、第1の構成要素141の焦点平面は、第2の構成要素147の対物平面と同一である。20%から900%の間の反射率を有する反射層140Rは、第1の構成要素及び/又は第2の構成要素147の平面143、148に位置する。層140Rは、DBR、サブ波長構造反射器又は単純な金属薄膜等、当技術分野で公知のあらゆる形態を有し得る。
【0318】
図10dは、図6bの実施形態と同様のビーム・スプリッタの一実施形態を示すが、間隙152が、2つの構成要素141、150の平面143と151との間にある、即ち、平面143、151が接触しないという差を有する。第2の構成要素150、即ち、出た光ビームを平行化する構成要素は、厚い高開口数の非球面平行化レンズであり、その焦点平面が第1の構成要素141の焦点平面140Fと同一であるように配置される。このレンズは、レンズ130と同一又は同様であり得る。レンズは、適切な反射防止コーティングでコーティングされる。
【0319】
図10eは、図10cの実施形態と同様のビーム・スプリッタ14の一実施形態を示すが、間隙153が、2つの構成要素141、155の平面143と154との間に位置する、即ち、平面が接触しないという差を有する。第2の構成要素155、即ち、厚い高開口数の非球面集束レンズは、その対物平面が第1の構成要素141の焦点平面140Fと同一であるように配置される。この再集束レンズは、レンズ130と同一又は同様であり得る。波面誤差を回避するため、凸面156は、所望の対物及び像平面にモデル化できる。レンズは、適切な反射防止コーティングでコーティングされる。本実施形態は、ビーム・スプリッタ14に対してより短時間の設計を可能にする。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e