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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2795 20220101AFI20230613BHJP
【FI】
H02K1/2795
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548305
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019034940
(87)【国際公開番号】W WO2020059515
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2018173510
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(72)【発明者】
【氏名】上野 友之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-306685(JP,A)
【文献】特開2011-30334(JP,A)
【文献】特開2017-41937(JP,A)
【文献】特開2016-201961(JP,A)
【文献】特開2010-93972(JP,A)
【文献】特開2009-60678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2795
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して軸方向に対向配置されたロータと、を備え、
前記ロータは、
円環状のロータヨークと、
磁極が交互に異なるように周方向に沿って所定間隔を置いて前記ロータヨークの一面に当接配置された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持する、非磁性材料からなる保持部材と、
を備え、
前記一面は、前記複数の磁石に対面し当接する複数の対面領域と、前記複数の磁石に対面しない非対面領域とを含み、
前記非対面領域は、前記複数の対面領域のうちの周方向に隣り合う一対の対面領域同士の間に位置する領域部分を含み、
前記領域部分が、当該対面領域に対して軸方向に凹む凹部とされており、
前記保持部材は、前記複数の磁石のうちの周方向に隣り合う一対の磁石同士の間に介在する柱状部を有し、
前記凹部の溝幅は、前記柱状部の幅と同じである
回転電機。
【請求項2】
前記凹部における前記一対の対面領域に亘る断面形状は、前記凹部の開口端縁と底部とを曲面で繋ぐ形状である
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記凹部は、前記一面における内周端縁から外周端縁に亘っている
請求項1または請求項に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ステータは、表面を絶縁膜で被覆した軟磁性粉末の加圧成形体により構成されたステータコアを有する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
本出願は、2018年9月18日出願の日本出願第2018-173510号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で高トルクが得られるアキシャルギャップモータが注目されている。
このアキシャルギャップモータは、ロータとステータとの間のギャップが軸方向に設けられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】渡辺麻子、他、「圧粉磁心による薄型・高トルクなアキシャルギャップモータの実現」、2018年1月・SEIテクニカルレビュー・第192号、pp.119-125
【発明の概要】
【0004】
一実施形態である回転電機は、ステータと、前記ステータに対して軸方向に対向配置されたロータと、を備え、前記ロータは、円環状のロータヨークと、磁極が交互に異なるように周方向に沿って所定間隔を置いて前記ロータヨークの一面に当接配置された複数の磁石と、を備え、前記一面は、前記複数の磁石に対面し当接する複数の対面領域と、前記複数の磁石に対面しない非対面領域とを含み、前記非対面領域は、前記複数の対面領域のうちの周方向に隣り合う一対の対面領域同士の間に位置する領域部分を含み、前記領域部分が、当該対面領域に対して軸方向に凹む凹部とされている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、一実施形態に係るアキシャルギャップモータの構成を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る本体部の外観図である。
図3図3は、第1実施形態に係るロータヨークの外観図である。
図4図4は、ロータヨークの一面を軸方向から正面視した図である。
図5図5は、アキシャルギャップモータの部分断面図である。
図6図6は、図5の要部を拡大した図である。
図7図7は、第2実施形態に係るアキシャルギャップモータの部分断面図である。
図8図8は、従来のアキシャルギャップモータに用いられるロータの斜視図である。
図9図9は、従来のアキシャルギャップモータの一部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
アキシャルギャップモータの構造には、ロータの軸方向両側にステータを配置したダブルステータ構造と、ロータの軸方向一方側にのみステータを配置したシングルステータ構造とがある。
【0007】
図8は、従来のアキシャルギャップモータに用いられるロータの斜視図である。
図8中、シングルステータ構造に用いられるロータ100は、複数の磁石102を備えた円環状の本体部101と、本体部101に同心に固定された円環状のロータヨーク103とを備えている。
複数の磁石102は、非磁性材料からなる保持部材104によって保持され、円環状の本体部101を構成している。複数の磁石102は、磁極が交互に異なるように周方向に沿って所定間隔を置いて配列されている。
ロータヨーク103は、一面103aを本体部101に当接させて固定される。
【0008】
図9は、従来のアキシャルギャップモータの一部分を示す断面図である。図9中の矢印は、各部を流れる磁束を示している。
図9に示すように、ロータ100は、ステータに突設されるとともにコイルが巻き回された鉄心であるティース部105に軸方向に対向配置される。
【0009】
ロータヨーク103の一面103aには、周方向に所定間隔をおいて配置された複数の磁石102a,102bと、複数の磁石102a,102b同士の間に介在する保持部材104とが当接している。
このため、ロータヨーク103の一面103aは、磁石102a,102bに対面し当接する対面領域106a,106bと、保持部材104に対面し当接することで磁石102a,102bに対面しない非対面領域107とを含んでいる。
【0010】
図9中、磁石102aからの磁束は、N極である磁石102aの磁極面102a1からS極である磁石102bの磁極面102b1へ向かってロータヨーク103を通じて流れている。
磁石102aから磁石102bへの磁束の流れは、ティース部105に巻き回されたコイルを貫通する磁束である鎖交磁束となる。
上記鎖交磁束は、アキシャルギャップモータの出力トルクに影響を及ぼす。すなわち、鎖交磁束がより大きければ、アキシャルギャップモータの出力トルクもより大きくなる。
【0011】
ところが、磁石102aの側面102a2と非対面領域107との間、及び、磁石102の側面102b2と非対面領域107との間が磁気的に短絡し、図9に示すように、磁極面102a1からロータヨーク103へ与えられる磁束が、磁石102b側へ到達する前に、非対面領域107から側面102a2へ流れたり、磁石102bからティース部105へ向けて流れる磁束が、側面102b2から非対面領域107へ流れたりすることがあった。
【0012】
このような磁気的な短絡が生じると、鎖交磁束を減少させてしまい、モータの出力トルクを低下させる要因となる。
【0013】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、出力を高めることができる回転電機の提供を目的とする。
【0014】
[本開示の効果]
本開示によれば、出力を高めることができる。
【0015】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)一実施形態である回転電機は、ステータと、前記ステータに対して軸方向に対向配置されたロータと、を備え、前記ロータは、円環状のロータヨークと、磁極が交互に異なるように周方向に沿って所定間隔を置いて前記ロータヨークの一面に当接配置された複数の磁石と、を備え、前記一面は、前記複数の磁石に対面し当接する複数の対面領域と、前記複数の磁石に対面しない非対面領域とを含み、前記非対面領域は、前記複数の対面領域のうちの周方向に隣り合う一対の対面領域同士の間に位置する領域部分を含み、前記領域部分が、当該対面領域に対して軸方向に凹む凹部とされている。
【0016】
上記構成の回転電機によれば、ロータヨークの一面において、非対面領域のうち、周方向に隣り合う一対の対面領域同士の間の領域部分が凹部とされているので、上記従来例のように凹部を設けない場合と比較して、非対面領域におけるロータヨーク表面を、一対の対面領域に当接する一対の磁石に対してより離間させることができ、非対面領域におけるロータヨーク表面と、一対の磁石との間の磁気抵抗を高めることができる。
よって、非対面領域におけるロータヨーク表面と、一対の磁石とが磁気的に短絡するのを抑制することができ、短絡による鎖交磁束の減少を抑制することができる。この結果、より多くの鎖交磁束を生じさせることができ、回転電機の出力を高めることができる。
【0017】
(2)上記回転電機において、前記凹部における前記一対の対面領域に亘る断面形状は、前記凹部の開口端縁と底部とを曲面で繋ぐ形状であってもよい。
この場合、凹部において、開口端縁から底部に亘る側壁部と、底部との間の距離が接近するのを抑制し、凹部の内部で磁気的な短絡が生じるのを抑制することができる。
【0018】
(3)上記回転電機において、前記一対の対面領域の端縁によって構成される前記凹部の開口端縁が、前記複数の磁石のうちの前記一対の対面領域に当接する一対の磁石の磁極面に位置していてもよい。
この場合、凹部の開口幅を、周方向に隣り合う一対の磁石同士の所定間隔よりも大きくでき、周方向において非対面領域を確実に含むように凹部を設けることができる。
【0019】
(4)上記回転電機において、前記凹部は、前記一面における内周端縁から外周端縁に亘っていてもよい。
この場合、凹部を設ける際に、少なくとも径方向の位置については調整等が不要となり、凹部を設けることが容易となる。
【0020】
(5)上記回転電機において、前記ステータは、表面を絶縁膜で被覆した軟磁性粉末の加圧成形体により構成されたステータコアを有していてもよい。
【0021】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0022】
〔アキシャルギャップモータの構成〕
図1は、一実施形態に係るアキシャルギャップモータの構成を示す斜視図である。なお、図1では、内部の構成を示すために構成の一部を除いて示している。
【0023】
図1中、アキシャルギャップモータ1は、ロータとステータとの間のギャップが軸方向に設けられるモータであり、円板状のロータ2と、ステータ4と、これらを収容するハウジング6とを備えており、シングルステータ構造とされている。
なお、図1では、ハウジング6の孔部6aに挿通されハウジング6に対して相対回転可能に設けられる回転軸を省略して示している。なお、軸方向とは前記回転軸の軸心Sに平行な方向をいう。
【0024】
ロータ2は、円環状であり、前記回転軸(図示省略)に一体回転可能に固定される。
ロータ2は、複数の磁石8を備えた円環状の本体部7と、本体部7に同心に固定された円環状のロータヨーク9とを含んで構成されている。
なお、ロータ2については、後に詳述する。
【0025】
ステータ4は、ロータ2の一面2aに対して軸方向にギャップを置いて対向配置されている。ステータ4は、円環状であり、ロータ2に対して同心に配置される。ステータ4は、ハウジング6の蓋部10に固定されている。これにより、ロータ2とステータ4とは相対回転可能とされている。
【0026】
ステータ4は、ステータコア20と、ステータコア20が有する複数のティース部22に巻き回された複数のコイル24とを含んで構成される。
ステータコア20は、圧粉磁心により構成されている。圧粉磁心とは、表面を絶縁膜で被覆した軟磁性粉末の加圧成形体である。
コイル24が巻き回された複数のティース部22の先端面22aは、ロータ2の一面2aに対向している。前記ギャップは、複数のティース部22の先端面22aと、ロータ2の一面2aとの間で構成される。
【0027】
〔第1実施形態に係るロータについて〕
上述のように、ロータ2は、本体部7と、ロータヨーク9とを含んで構成されている。
図2は、本体部7の外観図である。
図2に示すように、本体部7は、前記回転軸が挿通される孔部7cを有する円環板状とされている。複数の磁石8は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材料により形成された保持部材11によって保持されている。
【0028】
複数の磁石8としては、ネオジムボンド磁石や、ネオジム焼結磁石等が用いられる。なお、磁石8として使用される材料の条件として、残留磁束密度(Br)=0.7T(テスラ)以上であるという条件を満たすことが好ましい。
複数の磁石8は、板状に形成されている。複数の磁石8の一面8a及び他面8bは、本体部の一面7a及び他面7bに露出している。複数の磁石8の外形は、小径円弧及び大径円弧を有する扇形に形成されている。
複数の磁石8は、周方向に沿って環状に配列されている。
複数の磁石8の一面8a及び他面8bは磁極面である。複数の磁石8のうち互いに隣り合って並ぶ磁石8同士は、一面8a(他面8b)の磁極が互いに異なるように配列されている。つまり、複数の磁石8の一面8a(他面8b)の磁極は、周方向に沿って交互に異なっている。
【0029】
保持部材11は、環状部11aと、環状部11aから径方向外側へ向かって放射状に延びる複数の柱状部11bと、複数の柱状部11bの先端に設けられた外周保持部11cとを有する。
環状部11aは、複数の磁石8の内周面に当接する。柱状部11bは、周方向に隣り合う磁石8同士の間に介在し複数の磁石8の径方向側面に当接する。外周保持部11cは、複数の磁石8の外周面に当接する。
このように保持部材11は、複数の磁石8の周囲に当接することで複数の磁石8を円環状に保持する。
【0030】
本体部7の他面7bには、上述のようにロータヨーク9が固定される。
図3は、ロータヨーク9の外観図である。
ロータヨーク9は、例えば、機械構造用鋼板等を用いて円環板状に形成されている。ロータヨーク9として使用される材料の条件として、比透磁率が100以上の磁性体材料であるという条件を満たすことが好ましい。
ロータヨーク9の内周径及び外周径は、本体部7の内周径及び外周径とほぼ一致している。
よって、ロータヨーク9が本体部7に固定されたとき、ロータヨーク9の内周面及び外周面と、本体部7の内周面及び外周面とは、ほぼ面一となる。
【0031】
ロータヨーク9は、一面9aを本体部7の他面7bに当接させて固定される。
図3に示すように、ロータヨーク9の一面9aは、当該一面9aにおける内周端縁9a1から外周端縁9a2に亘って延びる複数の凹部30と、隣り合う凹部30同士の間を繋ぐ複数の平面部32とを含んでいる。
【0032】
複数の凹部30は、平面部32に対して軸方向に凹んだ溝であり、保持部材11の柱状部11bに対応して内周端縁9a1から外周端縁9a2へ向かって放射状に延びている。
凹部30の溝幅寸法は、柱状部11bの幅寸法と同じである。また、凹部30の周方向の角度間隔は、柱状部11bの周方向の角度間隔と同じである。
ロータヨーク9は、複数の凹部30と、複数の柱状部11bとが互いに径方向全域に亘って一致した状態で本体部7の他面7bに固定される。
【0033】
図4は、ロータヨーク9の一面9aを軸方向から正面視した図である。
複数の凹部30と、複数の柱状部11bとは、互いに径方向全域に亘って一致した状態とされる。よって、本体部7の各磁石8の他面8bは、各平面部32に対面し当接する。
【0034】
各磁石8の他面8bは、各平面部32において破線のハッチングで示した複数の領域40に一致している。よって、この領域40は、複数の磁石8の他面8bに対面し当接する複数の対面領域40を構成する。
一方、一面9aにおいて対面領域40以外の領域は、複数の磁石8の他面8bに対面しない非対面領域41である。
【0035】
図4に示すように、非対面領域41は、凹部30の全域、及び平面部32の内周側端縁近傍及び外周側端縁近傍に存在する。
つまり、非対面領域41は、複数の対面領域40のうちの周方向に隣り合う一対の対面領域40同士の間に位置する領域部分を含む。
凹部30は、非対面領域41のうち周方向に隣り合う一対の対面領域40同士の間に位置する領域部分に設けられている。
【0036】
図5は、アキシャルギャップモータ1の部分断面図であり、一の柱状部11bに直交する断面を示している。図5に示す断面は、図5中の中央の柱状部11bに直交する断面である。
図5に示すように、ロータヨーク9が本体部7に固定された状態において、ロータヨーク9の一面9aに設けられた複数の凹部30は複数の柱状部11bと一致している。
【0037】
ロータ2は、上述のように、ステータ4に対して軸方向にギャップを置いて対向配置されている。
より具体的に、本体部7の一面7aと(ロータ2の一面2a)、複数のティース部22の先端面22aとが互い対向している。
これにより、磁石8による磁束は、ティース部22に巻き回されたコイル24を貫通し、鎖交磁束となる。
【0038】
図6は、図5の要部を拡大した図である。図6中の矢印は、各部を流れる磁束を示している。また、図6では、紙面左側の磁石8を磁石81と表し、紙面右側の磁石8を磁石82と表す。
【0039】
上述のように、凹部30の溝幅寸法は、柱状部11bの幅寸法と同じである。よって、凹部30の開口端縁30aの一方は柱状部11bと磁石81との境界に一致し、他方は柱状部11bと磁石82との境界に一致している。
なお、凹部30の深さ寸法は、ロータヨーク9の厚み寸法に対して50%以下に設定されることが好ましい。
【0040】
ロータヨーク9の平面部32aは、磁石81における磁極面(N極)である他面81bに当接している。平面部32bは、磁石82における磁極面(S極)である他面82bに当接している。
図6中、磁石81からの磁束は、磁石81の他面81bから、磁石82の他面82bへ向かってロータヨーク9を通じて流れる。
磁石81から磁石82への磁束の流れは、ティース部22に巻き回されたコイル24を貫通する磁束である鎖交磁束となる。
【0041】
本実施形態では、ロータヨーク9の一面9aにおいて、非対面領域41のうち、周方向に隣り合う一対の対面領域40(平面部32a,32b)同士の間の領域部分が凹部30とされているので、上記従来例のように凹部を設けない場合と比較して、非対面領域41におけるロータヨーク9表面(凹部30の内側面)を、磁石81の側面81cおよび磁石82の側面82cに対してより離間させることができる。これにより、非対面領域41におけるロータヨーク9表面(凹部30の内側面)と、磁石81の側面81c(磁石82の側面82c)との間の磁気抵抗を高めることができる。
【0042】
よって、非対面領域41におけるロータヨーク9表面(凹部30の内側面)と、磁石81の側面81c(磁石82の側面82c)と、磁石とが磁気的に短絡するのを抑制することができ、短絡による鎖交磁束の減少を抑制することができる。この結果、より多くの鎖交磁束を生じさせることができ、アキシャルギャップモータ1の出力トルクを高めることができる。
【0043】
また、図6に示すように、凹部30における一対の対面領域40(平面部32a,32b)間に亘る断面形状は、凹部30の開口端縁30aと底部30bとを曲面で繋ぐ形状とされている。
この場合、凹部30において、開口端縁30aから底部30bに亘る側壁部と、底部30bとの間の距離が接近するのを抑制し、凹部30の内部で磁気的な短絡が生じるのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、凹部30が、ロータヨーク9の一面9aにおける内周端縁9a1から外周端縁9a2に亘る溝状とされているので、凹部30を設ける際に、少なくとも径方向の位置については調整等が不要となり、凹部30を設けることが容易となる。
【0045】
〔第2実施形態に係るロータについて〕
図7は、第2実施形態に係るアキシャルギャップモータ1の部分断面図である。
本実施形態は、凹部30の開口端縁30aの一方が、磁石81における磁極面である他面81bに位置し、他方が、磁石82における磁極面である他面82bに位置している点において、第1実施形態と相違する。
【0046】
本実施形態の場合においても、凹部30の内側面を、磁石81(磁石82)に対してより離間させることができ、凹部30の内側面と、磁石81(磁石82)との間の磁気抵抗を高めることができる。
【0047】
また、この場合、凹部30の開口幅を、周方向に隣り合う一対の磁石8同士の所定間隔よりも大きくでき、周方向において非対面領域41を確実に含むように凹部30を設けることができる。
例えば、凹部30の開口幅を、周方向に隣り合う一対の磁石8同士の所定間隔とほぼ同じ寸法とした場合、部品誤差や組み立て誤差等により、凹部30の開口端縁30aが柱状部11bに位置するおそれが生じ、磁気的な短絡の原因を生じさせるおそれが生じる。
これに対して、本実施形態では、周方向において非対面領域41を確実に含むように凹部30を設けることができるので、上記のような磁気的な短絡の発生を抑制でき、凹部30の内側面と、磁石81(磁石82)との間の磁気抵抗を高めることができる。
【0048】
〔評価試験について〕
以下、本実施形態に係るアキシャルギャップモータ1の出力トルクについて行った評価試験の結果について説明する。
評価試験の方法としては、第1実施形態のアキシャルギャップモータ1を実施例品とし、ロータヨークに溝部が設けられていない点のみ実施例品と相違するアキシャルギャップモータを比較例品とし、CAEによるシミュレーションによって実施例品及び比較例品の出力トルクを求め、両者を比較した。
【0049】
実施例品について得られた出力トルクは4.96Nm、比較例品について得られた出力トルクは4.80Nmであった。
この結果から、本実施形態のアキシャルギャップモータによれば出力トルクを高めることができることが明らかとなった。
【0050】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記各実施形態では回転電機としてのアキシャルギャップモータ1のロータヨーク9に凹部30を設けた場合について例示したが、アキシャルギャップ型の発電機のロータヨークに同様の凹部を設けてもよい。この場合、発電機の出力を高めることができる。
【0051】
また、上記各実施形態では、非対面領域41のうち周方向に隣り合う一対の対面領域40同士の間に位置する領域部分に凹部30を溝状に設けた場合を例示したが、非対面領域41のうち周方向に隣り合う一対の対面領域40同士の間の領域部分に、多数の凹部を並べて形成してもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、凹部30を、ロータヨーク9の一面9aにおける内周端縁9a1から外周端縁9a2に亘って設けた場合を例示したが、非対面領域41のうち周方向に隣り合う一対の対面領域40同士の間の領域部分以外の領域にまで凹部30を延ばす必要はない。よって、ロータヨーク9の一面9aにおいて内周端縁9a1近傍及び外周端縁9a2近傍に存在する、一対の対面領域40同士の間の領域以外の領域にまで凹部30を延ばさなくてもよい。
【0053】
また、上記各実施形態では、凹部30における一対の対面領域に亘る断面形状を、凹部30の開口端縁30aと底部30bとを曲面で繋ぐ形状とした場合を例示したが、凹部30は軸方向に凹んでいれば断面矩形状や多角形状等、他の形状であってもよい。
【0054】
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 アキシャルギャップモータ
2 ロータ
2a 一面
4 ステータ
6 ハウジング
6a 孔部
7 本体部
7a 一面
7b 他面
7c 孔部
8 磁石
8a 一面
8b 他面
9 ロータヨーク
9a 一面
9a1 内周端縁
9a2 外周端縁
10 蓋部
11 保持部材
11a 環状部
11b 柱状部
11c 外周保持部
20 ステータコア
22 ティース部
22a 先端面
24 コイル
30 凹部
30a 開口端縁
30b 底部
32,32a,32b 平面部
40 対面領域
41 非対面領域
81 磁石
81b 他面
81c 側面
82 磁石
82b 他面
82c 側面
S 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9