(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】湿気硬化性ポリオレフィン配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20230613BHJP
C08K 5/1535 20060101ALI20230613BHJP
C08L 101/10 20060101ALI20230613BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20230613BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/1535
C08L101/10
H01B3/44 F
H01B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2020563426
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 US2019031237
(87)【国際公開番号】W WO2019226346
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591123001
【氏名又は名称】ユニオン カーバイド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーチー
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ピケット、マシュー アール.
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05686546(US,A)
【文献】特開平05-302008(JP,A)
【文献】特開平06-255680(JP,A)
【文献】特表2012-525926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08K 5/1535
C08L 101/10
H01B 3/44
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性配合物であって、
(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーと、
(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルと、を含み、
【化1】
式中、Rが非置換(C
1-C
45)ヒドロカルビル基であり、
(A)が(A)と(B)との合計重量の89.0~99.9重量パーセント(重量%)であり、(B)が11.0~0.1重量%であり、
(A)が前記湿気硬化性配合物の総重量の40~99.9重量%であり、(B)が前記湿気硬化性配合物の総重量の0.1~11重量%である、湿気硬化性配合物。
【請求項2】
前記(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーが、制限(i)~(iii):(i)各加水分解性シリル基が独立して、式(II):(R
2)
m(R
3)
3-mSi-(II)の一価の基であり、式中、下付き文字mが、1、2、または3の整数であり、各R
2が独立して、H、HO-、(C
1-C
6)アルコキシ、(C
2-C
6)カルボキシ、((C
1-C
6)アルキル)
2N-、(C
1-C
6)アルキル(H)C=NO-、または((C
1-C
6)アルキル)
2C=NO-であり、各R
3が独立して、(C
1-C
6)アルキルまたはフェニルである、(ii)前記(A)のポリオレフィン部分が、ポリエチレン系、ポリ(エチレン-コ-(C
3-C
40)アルファ-オレフィン)系、またはそれらの組み合わせである、(iii)(i)および(ii)の両方である、のうちのいずれか1つを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化性配合物。
【請求項3】
前記(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルが、制限(i)~(xviii):(i)Rが(C
1-C
45)アルキル基である、(ii)Rが分岐鎖(C
1-C
45)アルキル基である、(iii)Rが直鎖(C
1-C
45)アルキル基である、(iv)Rが非置換である直鎖(C
1-C
45)アルキル基である、(v)Rが(C
1-C
35)アルキル基である、(vi)Rが(C
1-C
25)アルキル基である、(vii)Rが(C
9-C
25)アルキル基である、(viii)Rが(C
11-C
19)アルキル基である、(ix)Rが(C
12-C
18)アルキル基である、(x)Rが(C
13-C
17)アルキル基である、(xi)Rが(C
14-C
16)アルキル基である、(xii)Rが直鎖(C
14-C
16)アルキル基である、(xiii)Rが(C
14)アルキル基である、(xiv)Rが直鎖(C
14)アルキル基である、(xv)Rが(C
15)アルキル基である、(xvi)Rが直鎖(C
15)アルキル基である、(xvii)Rが(C
16)アルキル基である、(xviii)Rが直鎖(C
16)アルキル基である、のうちのいずれか1つを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化性配合物。
【請求項4】
前記(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルが制限(i)~(v):(i)Rが(C
2-C
45)アルケニル基、(C
6-C
12)アリール基、(C
1-C
25)アルキル置換(C
6-C
12)アリール基、または(C
6-C
12)アリール置換(C
1-C
25)アルキル基である、(ii)Rが(C
2-C
45)アルケニル基である、(iii)Rが(C
6-C
12)アリール基である、(iv)Rが(C
1-C
25)アルキル置換(C
6-C
12)アリール基である、(v)Rが(C
6-C
12)アリール置換(C
1-C
25)アルキル基である、のうちのいずれか1つを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化性配合物。
【請求項5】
(C)過酸化物および/または前記(C)過酸化物による前記(B)アスコルビルカルボン酸エステルの酸化の反応生成物(B
Ox)をさらに含み、前記(C)過酸化物が、(C1)ヒドロカルビルヒドロ過酸化物または(C2)有機過酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の湿気硬化性配合物。
【請求項6】
添加剤(D)~(I):(D)難燃剤、(E)抗酸化剤、(F)金属不活性化剤、(G)着色剤、(H)水分捕捉剤、および(I)(D)~(H)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の湿気硬化性配合物。
【請求項7】
湿気硬化性配合物を作製する方法であって、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルを混合して、
【化2】
(式中、Rが(C
1-C
45)アルキル基である)、混合物をもたらすことと、前記混合物を溶融または押し出して、前記湿気硬化性配合物を作製することと、を含む、方法。
【請求項8】
湿気硬化ポリオレフィン生成物であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の湿気硬化性配合物、または請求項7に記載の方法により作製された前記湿気硬化性配合物を湿気硬化させて、前記湿気硬化ポリオレフィン生成物をもたらすことによる生成物である、湿気硬化ポリオレフィン生成物。
【請求項9】
請求項8に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。
【請求項10】
被覆導体であって、導電性コアと、前記導電性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを含み、前記ポリマー層の少なくとも一部分が、請求項8に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。
【請求項11】
電気を伝導する方法であって、請求項10に記載の被覆導体の前記導電性コア全体に電圧を印加して、前記導電性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
湿気硬化性ポリオレフィンとアスコルビン酸カルボン酸エステルとを含む湿気硬化性配合物、それを作製および使用する方法、それから作製された硬化ポリオレフィン、ならびにそれを含有するかまたはそれから作製された物品。
【背景技術】
【0002】
本分野または本分野に関する特許出願公開には、CA2161991A1、CN105754185A、CN105949547A、EP2 889 323A1、US2003/0109494A1、US2008/0176981A1、US2010/0056809A1、US2011/0282024A1、US2015/0166708A1、US2016/0200843A1、WO2000/071094A1、およびWO2005/110123A1が含まれる。本分野における特許には、US5,686,546、US6,162,419、US6,936,655B2、およびUS9,790,307B2が含まれる。
【発明の概要】
【0003】
アスコルビルカルボン酸エステルは、湿気硬化性ポリオレフィンの硬化を促進する、金属を含まない、環境的に安全な非毒性の触媒として有用であることを発見した。当社の技術的解決策は、(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーとアスコルビルカルボン酸エステルとを含む湿気硬化性配合物を含む。技術的解決策はまた、それを作製および使用する方法、それから作製された硬化ポリオレフィン、ならびにそれを含有するかまたはそれから作製された物品を含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
概要および要約は、参照により本明細書に援用される。実施形態の例は、以下の番号付きの態様を含む。
【0005】
態様1.(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーと、(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルとを含む湿気硬化性配合物であって、
【化1】
式中、Rは非置換の(C
1-C
45)ヒドロカルビル基であり、(A)は、(A)と(B)との合計重量の89.0~99.9重量パーセント(重量%)であり、(B)は11.0~0.1重量%であり、(A)は湿気硬化性配合物の総重量の40~99.9重量%であり、(B)は湿気硬化性配合物の総重量の0.1~11重量%である、湿気硬化性配合物。「非置換」は、Rが炭素原子および水素原子からなることを意味する。Rは、(C
1-C
45)アルキル基、(C
2-C
45)アルケニル基、(C
6-C
12)アリール基、(C
1-C
25)アルキル置換(C
6-C
12)アリール基、または(C
6-C
12)アリール置換(C
1-C
25)アルキル基であり得る。
【0006】
態様2.(A)加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーが、制限(i)~(iii):(i)各加水分解性シリル基が独立して、式(II):(R2)m(R3)3-mSi-(II)の一価の基であり、式中、下付き文字mが、1、2、または3の整数であり、各R2が独立して、H、HO-、(C1-C6)アルコキシ、(C2-C6)カルボキシ、((C1-C6)アルキル)2N-、(C1-C6)アルキル(H)C=NO-、または((C1-C6)アルキル)2C=NO-であり、各R3が独立して、(C1-C6)アルキルまたはフェニルである、(ii)(A)のポリオレフィン部分が、ポリエチレン系、ポリ(エチレン-コ-(C3-C40)アルファ-オレフィン)系、またはそれらの組み合わせである、(iii)(i)および(ii)の両方である、のうちのいずれか1つを特徴とする湿気硬化性配合物。
【0007】
態様3.(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルが、制限(i)~(xviii):(i)Rが(C1-C45)アルキル基である、(ii)Rが分岐鎖(C1-C45)アルキル基である、(iii)Rが直鎖(C1-C45)アルキル基である、(iv)Rが非置換である直鎖(C1-C45)アルキル基である、(v)Rが(C1-C35)アルキル基である、(vi)Rが(C1-C25)アルキル基である、(vii)Rが(C9-C25)アルキル基である、(viii)Rが(C11-C19)アルキル基である、(ix)Rが(C12-C18)アルキル基である、(x)Rが(C13-C17)アルキル基である、(xi)Rが(C14-C16)アルキル基である、(xii)Rが直鎖(C14-C16)アルキル基である、(xiii)Rが(C14)アルキル基である、(xiv)Rが直鎖(C14)アルキル基である、(xv)Rが(C15)アルキル基である、(xvi)Rが直鎖(C15)アルキル基である、(xvii)Rが(C16)アルキル基である、(xviii)Rが直鎖(C16)アルキル基である、のうちのいずれか1つを特徴とする態様1または2に記載の湿気硬化性配合物。
【0008】
態様4.(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルが、制限(i)~(v):(i)Rが(C2-C45)アルケニル基、(C6-C12)アリール基、(C1-C25)アルキル置換(C6-C12)アリール基、または(C6-C12)アリール置換(C1-C25)アルキル基である、(ii)Rが(C2-C45)アルケニル基である、(iii)Rが(C6-C12)アリール基である、(iv)Rが(C1-C25)アルキル置換(C6-C12)アリール基である、(v)Rが(C6-C12)アリール置換(C1-C25)アルキル基である、のうちのいずれか1つを特徴とする態様1または2に記載の湿気硬化性配合物。
【0009】
態様5.(C)過酸化物および/または(C)過酸化物による(B)アスコルビルカルボン酸エステルの酸化の反応生成物(BOx)をさらに含み、(C)過酸化物は、(C1)ヒドロカルビルヒドロ過酸化物または(C2)有機過酸化物である、態様1~4のいずれか1つに記載の湿気硬化性配合物。いくつかの態様では、(C)過酸化物は(C1)であり、および(C1)はクミルヒドロ過酸化物である。
【0010】
態様6.添加剤(D)~(I):(D)難燃剤、(E)抗酸化剤、(F)金属不活性化剤(例えば、オキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジド(OABH))、(G)着色剤、(H)水分捕捉剤、および(I)(D)~(H)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、態様1~5のいずれか1つに記載の湿気硬化性配合物。
【0011】
態様7.湿気硬化性配合物を作製する方法であって、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルを混合して、
【化2】
(式中、Rは(C
1-C
45)アルキル基である)混合物をもたらすことと、混合物を溶融または押し出して、湿気硬化性配合物を作製することと、を含む、方法。本方法により作製される湿気硬化性配合物は、態様1~6のいずれか1つに記載のものであり得る。
【0012】
態様8.湿気硬化ポリオレフィン生成物であって、態様1~6のいずれか1つに記載の湿気硬化性配合物、または態様7に記載の方法により作製された湿気硬化性配合物を湿気硬化させて、湿気硬化ポリオレフィン生成物をもたらすことによる生成物である、湿気硬化ポリオレフィン生成物。
【0013】
態様9.態様8に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物の成形形態を含む、製造物品。
【0014】
態様10.被覆導体であって、導電性コアと、導電性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを含み、ポリマー層の少なくとも一部分が、態様8に記載の湿気硬化ポリオレフィン生成物を含む、被覆導体。
【0015】
態様11.電気を伝導する方法であって、態様10に記載の被覆導体の導電性コア全体に電圧を印加して、導電性コアを通る電気の流れを発生させることを含む、方法。
【0016】
湿気硬化性配合物。湿気硬化性配合物中の全ての構成成分の総重量は100.00重量%である。湿気硬化性配合物は、水をさらに含み得る。
【0017】
湿気硬化性ポリオレフィン組成物は、一部配合物、あるいは複数部配合物、例えば、二部配合物であり得る。二部配合物は、第1および第2の部分を含むことができ、第1の部分は本質的に、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーおよび(B)アスコルビルカルボン酸エステルからなり、第2の部分は本質的に、(A)および任意に構成成分(C)~(H)のうちのいずれか1つ以上の追加部分からなる。
【0018】
湿気硬化性配合物は、連続的(モノリシック)または分割された固体形態であり得る。湿気硬化性配合物は、顆粒および/またはペレットを含み得る。湿気硬化性配合物を調製するために使用される混合ステップの前に、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマーはまた、分割された固体形態(例えば、顆粒またはペレット)であり得る。
【0019】
いくつかの態様では、湿気硬化性配合物は、式R-CO2Hのカルボン酸またはその塩(例えば、アミンまたは金属塩)を含まない。
【0020】
構成成分(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー(「(A)プレポリマー」)。(A)プレポリマーのポリオレフィン部分は、ポリエチレン系であってもよく、これは、(A)プレポリマーがエチレンの重合により形成された主鎖を有することを意味する。あるいは、(A)プレポリマーは、ポリ(エチレン-コ-(C3-C40)アルファ-オレフィン)系であってもよく、これは、(A)プレポリマーがエチレンと少なくとも1つのアルファ-オレフィンとの共重合により形成された主鎖を有することを意味する。
【0021】
(A)プレポリマーは、エチレンおよびアルケニル-官能性加水分解性シランの反応器コポリマーであり得る。アルケニル-官能性加水分解性シランは、式(III)(R2)m(R3)3-mSi-(C2-C6)アルケニル(III)のものであり得、式中、m、R2、およびR3は、式(II)について上で定義したとおりである。(C2-C6)アルケニルは、ビニル、アリル、3-ブテニル、または5-ヘキセニルであり得る。いくつかの態様では、(A)プレポリマーは、エチレンおよびビニルトリメトキシシランの反応器コポリマーである。ビニルトリメトキシシランは、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランの例であり、式中、下付き文字mは3であり、各R2は(C1-C6)アルコキシ、特にメトキシであり、(C2-C6)アルケニルはビニル(-C(H)=CH2)である。
【0022】
あるいは、(A)プレポリマーは、US6,936,671などの、エチレンと、アルファ-オレフィンと、アルケニル-官能性加水分解性シランとの反応器コポリマーであり得る。
【0023】
あるいは、(A)プレポリマーは、典型的には、ジアキル過酸化物などのフリーラジカル開始剤により促進される、重合後の調合または押し出しステップでの、加水分解性不飽和シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を反応させてグラフト化することと、得られたシラングラフト化ポリマーを単離することとを含むプロセス(例えば、SIOPLAS(商標)プロセス)により作製されたポリマーなどの、それにグラフト化された加水分解性シリル基を有する炭素原子主鎖を有する、エチレンのホモポリマーであり得る。グラフト化ポリマーは、後の加工ステップで使用するためのものであり得る。
【0024】
あるいは、(A)プレポリマーは、エチレン、ならびに(C3-C40)アルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステル(例えば、(メタ)アクリレートアルキルエステル)のうちの1つ以上とのコポリマーであってもよく、ここで、そのコポリマーは、SIOPLAS(商標)プロセスにより作製されるような、それにグラフト化された加水分解性シリル基を有する主鎖を有する。
【0025】
あるいは、(A)プレポリマーは、典型的には、ジアキル過酸化物などのフリーラジカル開始剤により促進される、重合後の調合または押し出しステップでの、加水分解性不飽和シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を反応させてグラフト化することと、得られたシラングラフト化ポリマーを後の製造ステップで直ちに(単離することなく)使用することとを含むプロセス(例えば、MONOSIL(商標)プロセス)での使用に好適な、エチレンと、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランなどの加水分解性シランと、過酸化物との混合物であり得る。
【0026】
あるいは、(A)プレポリマーは、SIOPLAS(商標)またはMONOSIL(商標)プロセスでの使用に好適な、エチレンと(C3-C40)アルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルのうちの1つ以上とのコポリマーと、式(III)のアルケニル-官能性加水分解性シランなどの加水分解性シランと、過酸化物との混合物であり得る。アルファ-オレフィンは、(C3-C40)アルファ-オレフィン、代替として(C3-C20)アルファ-オレフィン、代替として(C3-C10)アルファ-オレフィンであり得る。アルファ-オレフィンは、少なくとも4つの炭素原子を有し得る(すなわち、(C4)アルファ-オレフィン以上であり得る)。(C3-C10)アルファ-オレフィンの例は、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および1-デセンである。過酸化物は、WO2015/149634A1の5頁6行目~6頁2行目に記載されているか、(C1)有機過酸化物に関して下に記載されているような有機過酸化物であり得る。
【0027】
あるいは、(A)(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー((A)プレポリマー)は、(i)エチレンと加水分解性シランとの反応器コポリマー、(ii)エチレンと、加水分解性シランと、1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルとの反応器コポリマー(例えば、US6,936,671)、(iii)炭素主鎖および炭素主鎖にグラフト化された加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー(例えば、SILOPAS(商標)プロセスにより作製された)、(iv)エチレンと、主鎖を有する1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルと、その主鎖にグラフト化された加水分解性シランとのコポリマー(例えば、SILOPAS(商標)プロセスにより作製された)、(v)エチレンと、加水分解性シランと、有機過酸化物との混合物から形成されたコポリマー(例えば、MONOSIL(商標)プロセスにより作製された)、または(vi)エチレンと、1つ以上のアルファ-オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルと、加水分解性シランと、有機過酸化物との混合物から形成されたコポリマー(例えば、MONOSIL(商標)プロセスにより作製された)であり得る。
【0028】
(A)プレポリマーは、(A)、(B)、および任意で(C)の合計重量の89.0~99.95重量パーセント(重量%)、あるいは94.0~99.95重量%、あるいは97.0~99.90重量%である。
【0029】
(A)プレポリマーは、湿気硬化性配合物中に、湿気硬化性配合物の総重量に全て基づいて、40~99.9重量%、あるいは少なくとも50重量%、あるいは少なくとも60重量%、かつあるいは最大99重量%、あるいは最大95重量%、あるいは最大80重量%の濃度で存在し得る。
【0030】
構成成分(B)アスコルビルカルボン酸エステル。(B)は、式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルであり、
【化3】
式中、Rは非置換(C
1-C
45)ヒドロカルビル基である。
【0031】
「非置換」は、Rが炭素原子および水素原子からなることを意味する。Rは、(C1-C45)アルキル基、(C2-C45)アルケニル基、(C6-C12)アリール基、(C1-C25)アルキル置換(C6-C12)アリール基、または(C6-C12)アリール置換(C1-C25)アルキル基であり得る。いくつかの態様では、Rは、上記のように定義されたとおりである。いくつかの態様では、(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルは、パルミチン酸アスコルビルまたはステアリン酸アスコルビルである。
【0032】
(B)のアスコルビル部分は、式(1)の一価構造であり、
【化4】
、式中、O-は、右端のOのラジカルを示す。いくつかの態様では、(B)のアスコルビル部分は、ラセミである。他の態様では、(B)のアスコルビル部分は、特定の立体異性が立体化学的に豊富である。いくつかの態様では、(B)のアスコルビル部分は、D-アスコルビン酸に由来する。いくつかの態様では、(B)のアスコルビル部分は、L-アスコルビン酸に由来する。いくつかの態様では、(B)のアスコルビル部分はL-アスコルビン酸に由来し、式(I)のR基はパルミチン酸に由来するため、(B)は式(I-a)の化合物である:
【化5】
。式(I-a)の化合物はまた、以下の名称のうちのいずれか1つで既知である:6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸6-ヘキサデカノエート、L-アスコルビルパルミテート、およびアスコルビン酸6-パルミエート。
【0033】
(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルは、それが(A)プレポリマーと組み合わされる前は実質的に純粋であることを特徴とし得る。「実質的に純粋」(B)は、(B)の総重量の90~100重量%、あるいは95~100重量%、あるいは98~100重量%、あるいは90、95、または98~99.99重量%であることを特徴とする。
【0034】
(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルは、アスコルビン酸の6-ヒドロキシル基(すなわち、HOCH2-)を、従来のエステル化方法および条件を使用して式RCO2Hのカルボン酸、式RC(O)-O-C(O)Rのカルボン酸無水物、または式RC(O)Clの酸塩化物とカップリングして、式(I)の化合物およびその対応するカルボン酸エステル基(すなわち、RC(O)-OCH2-)をもたらすことにより合成され得る。
【0035】
(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルは、(A)、(B)、および任意に(C)の合計重量の総重量(100.00重量%)の11.0~0.1重量%である。
【0036】
(B)式(I)のアスコルビルカルボン酸エステルは、湿気硬化性配合物の総重量の総重量(100.00重量%)の11.0~0.05重量%、あるいは6.0~0.05重量%、あるいは3.0~0.10重量%である。
【0037】
アスコルビン酸自体は、(A)プレポリマーを含む湿気硬化性配合物の触媒として不活性であることが後で示されているが、(B)アスコルビルカルボン酸エステルは活性である。アスコルビン酸自体の6-ヒドロキシル基をカルボン酸エステル基に形式的に変換すると、式(I)の活性触媒が予期せずにもたらされる。
【0038】
理論に拘束されるつもりはないが、(B)の式(I)で特定のR基を選択しても、(B)が湿気硬化性配合物の湿気硬化を触媒する能力を完全に中和する効果を有さないと考えられる。むしろ、Rの選択は、(A)プレポリマーにおける(B)の溶解度に主に影響すると考えられ、ここで、Rの炭素原子数が多いほど、(A)プレポリマーにおける(B)の予想される溶解度(最大負荷)が大きくなる。別の言い方をすると、アスコルビン酸自体の6-ヒドロキシル基を式(I)の化合物のカルボン酸エステル基(すなわち、RC(O)-OCH2-)に変換することにより、得られた(B)の(A)における溶解度は、(A)のアスコルビン酸自体の溶解度に対して実質的に強化される。したがって、(A)プレポリマー中の酢酸アスコルビル(式(I)の化合物(式中、Rはメチルである))の負荷は、技術的解決策を達成するのに十分であると予想される。
【0039】
任意の構成成分(C)過酸化物:炭素原子、水素原子、および2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有するが、但し2つ以上の-O-O-基があるとき、各-O-O-基が、1つ以上の炭素原子を介して別の-O-O-基に間接的に結合していることを条件とする分子、またはそのような分子の集合体。(C)過酸化物は、構成成分(A)、(B)、および(C)を含む湿気硬化性配合物を、(C)過酸化物の分解温度以上の温度に加熱することを含む硬化のために湿気硬化性配合物に添加され得る。
【0040】
(C)過酸化物は、(C1)ヒドロカルビルヒドロ過酸化物であり得る。(C1)は、式RO-O-O-Hの化合物であり得、式中、ROは独立して、(C1-C20)アルキル基または(C6-C20)アリール基である。各(C1-C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、または1もしくは2つの(C6-C12)アリール基で置換されている。各(C6-C20)アリール基は、非置換であるかまたは1~4つの(C1-C10)アルキル基で置換されている。(C1)ヒドロ過酸化物は、1,1-ジメチルエチルヒドロ過酸化物、1,1-ジメチルプロピルヒドロ過酸化物、ベンゾイルヒドロ過酸化物、tert-ブチルヒドロ過酸化物、tert-アミルヒドロ過酸化物、またはクミルヒドロ過酸化物であり得る。クミルヒドロ過酸化物は、イソプロピルクミルヒドロ過酸化物、t-ブチルクミルヒドロ過酸化物、またはクミルヒドロ過酸化物、あるいはクミルヒドロ過酸化物(クメンヒドロ過酸化物、アルファ、アルファ-ジメチルベンジルヒドロ過酸化物、CAS番号80-15-9としても既知である)であり得る。
【0041】
(C)過酸化物は、(C2)有機過酸化物であり得る。(C2)は、式RO-O-O-ROのモノ過酸化物であり得、式中、各ROは独立して、上で定義されるとおりである。あるいは、(C2)は、式RO-O-O-Ra-O-O-ROのジ過酸化物であり得、式中、Raは、(C2-C10)アルキレン、(C3-C10)シクロアルキレン、またはフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROは独立して、上で定義されるとおりである。(C2)有機過酸化物は、ビス(1,1-ジメチルエチル)過酸化物、ビス(1,1-ジメチルプロピル)過酸化物、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイル過酸化物、過安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミル過酸化物(「DTAP」)、ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチル過酸化物、t-ブチルクミル過酸化物、ジ-t-ブチル過酸化物、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミル過酸化物、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、またはジ(イソプロピルクミル)過酸化物、またはジクミル過酸化物であり得る。有機過酸化物は、ジクミル過酸化物であり得る。
【0042】
いくつかの態様では、2つ以上の(C)過酸化物のブレンドのみが使用される。
【0043】
いくつかの態様では、少なくとも1つの、あるいは各(C)過酸化物は、1つの-O-O-基を含有する。いくつかの態様では、湿気硬化性配合物は、一切の(C)過酸化物を含有しない。他の態様では、湿気硬化性配合物は、湿気硬化性配合物の0.01~4.5重量%、あるいは0.05~2重量%、あるいは0.10~2.0重量%、あるいは0.2~0.8重量%の濃度で(C)過酸化物を含有する。湿気硬化性配合物中に存在する場合、(C)過酸化物は、(A)、(B)、および(C)の合計重量の総重量(100.00重量%)の0.01~1.0重量%、あるいは0.05~0.5重量%、あるいは0.08~0.20重量%である。
【0044】
任意の構成成分(C)過酸化物は、湿気硬化性配合物を調製するために使用され、この湿気硬化性配合物は、(C)過酸化物および/または(B)アスコルビルカルボン酸エステルの(C)過酸化物酸化の(BOx)反応生成物を含み得る。(B)アスコルビルカルボン酸エステルの(C)過酸化物酸化の(BOx)反応生成物は、(A)、(B)、および(C)を含む湿気硬化性配合物の前駆体形態からその場で形成され得る。理論に拘束されるつもりはないが、(BOx)反応生成物は、(B)アスコルビルカルボン酸エステル自体よりも、湿気硬化性配合物の湿気硬化を触媒するためのより効果的な触媒であると考えられる。つまり、(A)および(B)を含むが(C)は欠如している湿気硬化性配合物の第1の実施形態が等しい重量部に分割され、第1の重量部((C)が欠如している)がそのまま湿気硬化条件に供され、第2の重量部分を(C)の量とさらに組み合わせて(例えば、(C)を60℃で第2の重量部分に16時間浸漬するなどして)、(A)、(B)、および(C)を含む湿気硬化性配合物の第2の実施形態をもたらし、第2の実施形態が同じ湿気硬化条件に供される場合、湿気硬化性配合物の第2の実施形態は、湿気硬化性配合物の第1の実施形態の第1の重量部の速度よりも速い速度で硬化することが期待される。
【0045】
任意の構成成分(添加剤)(D)難燃剤。難燃剤(D)は、火炎中の化学反応を抑制することにより火の広がりを抑制または遅延させる化合物である。いくつかの態様では、難燃剤(D)は、鉱物(D1)、有機ハロゲン化合物(D2)、(有機)リン化合物(D3)、ハロゲン化シリコーン(D4)、または(D1)~(D4)の任意の2つ以上の組み合わせ(D5)である。典型的には、ハロゲン化(D)難燃剤は、相乗剤と併用して効率を高めるために使用される。相乗剤は、三酸化アンチモンであってもよい。ハロゲンを含まない(D)難燃剤の例は、無機鉱物、有機窒素膨張性化合物、およびリン系膨張性化合物である。無機鉱物の例には、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが含まれる。リン系膨張性化合物の例には、有機ホスホン酸、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキシド、ホスフィン、ホスファイト、リン酸塩、窒化塩化リン三量体、アミドリン酸エステル、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、メラミン、ならびにメラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェートおよびメラミンシアヌレートを含むそれらのメラミン誘導体、ならびにこれらの材料のうちの2つ以上の混合物が含まれる。例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチレンリン酸水素、フェニルビス-3,5,5’リン酸トリメチルヘキシル)、エチルジフェニルホスフェート、2エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ジフェニルリン酸水素、ビス(2-エチル-ヘキシル)パラ-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)-フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルメチルリン酸水素、ジ(ドデシル)p-トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、およびジフェニルリン酸水素が含まれる。米国特許第6,404,971号において説明されるリン酸エステルの種類は、リン系難燃剤の例である。追加の例には、ビスフェノールAジホスフェート(BAPP)(Adeka Palmarole)および/またはレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(Fyroflex RDP)(Supresta、ICI)などの液体ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム(APP)、ピペラジンピロホスフェート、およびピペラジンポリホスフェートなどの固体リンが含まれる。ポリリン酸アンモニウムは、しばしば、メラミン誘導体などの難燃性共添加剤とともに使用される。Melafine(DSM)(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、微粉砕メラミン)も有用である。いくつかの態様では、(D)は、本発明の配合物および/または生成物には存在しない。いくつかの態様では、(D)は、本発明の配合物および/または生成物中に、その総重量に全て基づいて、0.1~20重量%、あるいは1~10重量%、あるいは、5~20重量%の濃度で存在する。
【0046】
任意の構成成分(添加剤)(E)酸化防止剤:酸化を阻害する有機分子、またはそのような分子の集合体。(E)酸化防止剤は、湿気硬化性配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物に酸化防止特性を提供するように機能する。好適な(E)の例には、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾールとしても既知である)、CAS番号96-69-5、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4、6-トリオン(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイルエステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、ジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS800)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェニル(IRGANOX1726)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520)、および2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]pプロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024)が含まれる。いくつかの態様では、(E)は、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても既知である、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート、またはジラウリルチオジプロピオネート、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。組み合わせは、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンとジステアリルチオジプロピオネートであってもよい。いくつかの態様では、湿気硬化性配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物は、(E)を含まない。存在する場合、(E)酸化防止剤は、湿気硬化性配合物および/または架橋ポリオレフィン生成物の総重量の0.01~1.5重量%、あるいは0.05~1.2重量%、あるいは0.1~1.0重量%であり得る。
【0047】
任意の構成成分(添加剤)(F)金属不活性化剤。(F)金属不活性化剤は、遷移金属イオン(例えば、オレフィン重合触媒の残留物)とキレート化して、それらを酸化触媒として不活性にするように機能する。(F)の例は、N′1,N′12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド(CAS番号63245-38-5)、およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(OABH)である。いくつかの態様では、(F)は、本発明の配合物および/または生成物には存在しない。いくつかの態様では、(F)は、本発明の配合物および/または生成物中に、その総重量に全て基づいて、0.001~0.2重量%、あるいは0.01~0.15重量%、あるいは0.01~0.10重量%の濃度で存在する。
【0048】
任意の構成成分(添加剤)(G)着色剤。例えば、顔料または染料。例えば、カーボンブラックまたは二酸化チタン。カーボンブラックは、ポリ(1-ブテン-コ-エチレン)コポリマー(マスターバッチの総重量の95重量%以上~100重量%未満)、およびカーボンブラック(マスターバッチの総重量の0重量%超~5重量%以下の配合物であるカーボンブラックマスターバッチとして提供され得る。カーボンブラックは、表面積対体積比が高いが、活性炭のそれよりも低い、微結晶化形態の準結晶炭素である。カーボンブラックの例は、ファーネスカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、導電性カーボン(例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、および膨張グラファイト小板)である。いくつかの態様では、(G)は、本発明の配合物および/または生成物には存在しない。いくつかの態様では、(G)は、本発明の配合物および/または生成物中に、その総重量に基づいて、0.1~35重量%、あるいは1~10重量%の濃度で存在する。
【0049】
任意の構成成分(添加剤)(H)水分捕捉剤。(H)水分捕捉剤は、湿気硬化性配合物の時期尚早の湿気硬化を阻害するように機能し、ここで、時期尚早の湿気硬化は、湿気硬化性配合物が周囲空気に時期尚早にまたは長期にさらされることから生じる。(H)の例は、オクチルトリエトキシシランおよびオクチルトリメトキシシランである。いくつかの態様では、(H)は、本発明の配合物および/または生成物には存在しない。いくつかの態様では、(H)は、本発明の配合物および/または生成物中に、その総重量に全て基づいて、0.001~0.2重量%、あるいは0.01~0.15重量%、あるいは0.01~0.10重量%の濃度で存在する。
【0050】
その他の任意の構成成分。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は、任意の構成成分を含まない。いくつかの態様では、本発明の配合物および生成物は、構成成分(C)~(H)以外のいずれかの任意の構成成分も含有しない。いくつかの態様では、本発明の配合物および/または生成物は、潤滑剤、鉱油、ブロッキング防止剤、トリーイング遅延剤(水トリーイングおよび/または電気トリーイング遅延剤)、補助薬剤、核剤、スコーチ遅延剤、ヒンダードアミン光安定剤、および加工助剤である少なくとも1つの任意の構成成分(添加剤)をさらに含有する。
【0051】
いずれの任意の構成成分も、少なくとも1つの特徴または特性を、それを必要とする本発明の配合物および/または生成物に付与するのに有用であり得る。特徴または特性は、本発明の配合物および/または生成物が高い動作温度にさらされる操作または用途における本発明の配合物および/または生成物の性能を改善するのに有用であり得る。そのような操作または用途には、溶融混合、押出、成形、温水パイプ、および電力ケーブルの絶縁層が含まれる。
【0052】
本明細書中のいずれかの化合物は、天然存在形態および/または同位体濃縮形態を含むその同位体形態の全てを含む。同位体濃縮形態は、医療用途または偽造防止用途などのさらなる用途を有し得る。
【0053】
特に示されない限り、以下を適用する。代替的に、異なる実施形態に先行する。ASTMとは、標準化機構である、ASTM International,West Conshohocken,Pennsylvania,USAを意味する。IECは、スイス、ジュネーブの国際電気標準会議の標準化機構を意味する。いずれの比較実施例も説明目的でのみ使用されており、先行技術ではない。含まないまたは欠いているは、完全に存在しないこと、あるいは、検出不可能であることを意味する。IUPACは、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat,Research Triangle Park,North Carolina,USA)である。してもよい(may)は、必須ではなく、選択の許容を与える。機能的とは、機能的に可能または有効なことを意味する。任意選択(的に)は、存在しない(または含まない)、あるいは存在する(または含まれる)ことを意味する。PPMは、重量ベースである。特性は、標準試験方法および測定するための条件(例えば、粘度:23℃および101.3kPa)を使用して測定される。範囲は、端点、部分範囲、およびその中に包含される整数値および/または小数値を含むが、整数の範囲が小数値を含まない場合を除く。室温は23℃±1℃である。化合物に言及する場合、置換されるとは、置換ごとに、水素の代わりに、1つ以上の置換基を有することを意味する。
【実施例】
【0054】
(加水分解性シリル基)-官能性プレポリマー(A1):98.5重量%のエチレンと1.5重量%のビニルトリメトキシシランとの反応器コポリマー。フリーラジカル開始剤を用いて、管状高圧ポリエチレン反応器中でエチレンおよびビニルトリメトキシシランを共重合することにより調製される。The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)DFDA-5451として入手可能。
【0055】
(加水分解性シリル基)-官能性ポリオレフィンプレポリマー(A2):99.5重量%の(加水分解性シリル基)-官能性プレポリマー(A1)プラス0.5重量%の水分捕捉剤(H1)(下)。水分捕捉剤(H1)を(加水分解性シリル基)-官能性プレポリマー(A1)に浸漬することにより作製される。
【0056】
アスコルビルカルボン酸エステル(B1):パルミチン酸アスコルビル。Sigma-Aldrich Corporation,St.Louis,Missouri,USAから入手可能。
【0057】
構成成分(C1-1):クミルヒドロ過酸化物。Sigma-Aldrich Corporationからクメンヒドロ過酸化物として入手可能。
【0058】
アスコルビン酸(「AscrbA」):Sigma-Aldrich Corporationから入手可能。
【0059】
パルミチン酸メチル(「MePalm」):式CH3(CH2)14C(O)OCH3の化合物。Sigma-Aldrich Corporationから入手可能。
【0060】
湿気硬化性配合物試料調製方法:表1および2で後述する比較例CE1~CE8および発明の実施例IE1~IE10の配合物のうちのいずれか1つで使用される構成成分の全てを、構成成分(C1-1)がある場合はそれを除いて、バッチミキサーで145℃(プレポリマー(A1)の融点より約20℃高い目標温度)で5分間40回転/分(rpm)で混合して、構成成分(A1)と、(B1)と、構成成分(C1-1)を含まないことを除く表1および2に示されている任意の他の構成成分とを含有する湿気硬化性配合物をもたらした。混合後、試料を125~140℃の温度プロファイルで単一ストランドに押し出し、ストランドを空気中でペレット化して、場合によっては、比較配合物または本発明の湿気硬化性配合物をペレットの形態でもたらした。構成成分(C1-1)を使用する場合、ペレットに60℃で一晩浸漬し、構成成分(A)と、(B)と、任意に表2に示されているいずれかの任意の構成成分とを含有する湿気硬化性配合物をもたらした。
【0061】
プラーク調製試験方法:湿気硬化性配合物試料調製方法により作製した浸漬ペレットを、二重圧縮手順によりプラークに圧縮した。第1の圧縮を、120℃で3分間3.45メガパスカル(MPa、500psi)、さらに3分間172MPa(25,000psi)で行った。第2のステップでは、プラークを4つに切断し、120℃で3分間、3.45MPa(500psi)、さらに180~185℃、または210~215℃で両方とも172MPa(25,000psi)未満で15分間再圧縮し、1.27ミリメートル(mm、50ミル)の厚さを有する第2のプラークをもたらした。
【0062】
熱クリープ試験方法。下の湿気硬化試験方法により調製した湿気硬化性配合物の試験試料における架橋の程度、ひいては硬化の程度を測定する。ICEA T-28-562に従って、熱クリープ測定を、平方センチメートルあたり20ニュートン(N/cm2)および150℃で行った。15分後、荷重下で最終的な長さを測定した。試験した試料の長さを冷却して測定する。伸長量を初期長さで割ると、熱クリープの測定値が割合で提供される。試験試料の伸びの程度を、熱クリープ条件前の試験試料の初期長さに対する、熱クリープ条件後の試験試料の長さのパーセント(%)として表す。熱クリープパーセントが低いほど、試験試料の荷重下での伸びの程度が低くなり、ひいては架橋の程度が大きくなり、ひいては硬化の程度が大きくなる。熱クリープ値が低いほど、架橋度が高いことを示唆する。
【0063】
湿気硬化試験方法。湿気硬化および硬化速度測定試験方法。第2のプラークを90℃の水浴に66時間浸すことにより硬化し、182℃でのML(低トルク値)を、可動ダイレオメーター(MDR)を介して測定した。以下の手順を使用して、試験試料のトルクを測定する。180℃の可動ダイレオメーター(MDR)機器MDR2000(Alpha Technologies)で、試験試料を20分間加熱しながら、100cpmで0.5弧度の振動変形のトルクの変化を監視する。測定した最小トルク値をデシニュートンメートル(dN-m)で表される「ML」として指定する。硬化または架橋が進行すると、測定トルク値が増加し、最終的に最大トルク値に達する。最大または最高の測定トルク値をdN-mで表される「MH」として指定する。他の全てが等しい場合、MHトルク値が大きいほど、架橋の程度が大きくなる。他の全ての条件が等しい場合、トルク値MLが1ポンドインチ(1.1dN-m)に達するのが早いほど、試験試料の硬化速度が速くなる。逆に、トルク値MLが1ポンドインチ(1.1dN-m)に達するまでが長いほど、試験試料の硬化速度は遅くなる。MLは硬化プロセスのレオロジー変化を示し、値が高いほど架橋度が高いことを示す。ML=1.0lbf.in(1.1デシニュートンメートル)に達するのに必要な硬化時間を記録した。
【0064】
比較例1~8(CE1~CE8):比較配合物を上記の方法に従って調製および試験した。後で表1に記載する結果を参照されたい。
【0065】
発明の実施例1~10(IE1~IE10):発明の湿気硬化性配合物を上記の方法に従って調製および試験した。後で表2に記載する結果を参照されたい。
【0066】
【0067】
【0068】
表1および2のトルク値ML=1.1dN-mに達するまでの時間は、比較配合物でアスコルビン酸を触媒として使用した場合の硬化速度が許容できないほど遅いことを示す。本発明の湿気硬化性配合物においてパルミチン酸アスコルビルを使用した場合の硬化速度は、実質的に速い。
【0069】
表1および2の熱クリープデータは、1つの発明実施例IE1は合格しなかったが、発明実施例IE2~IE10が全て熱クリープ試験に合格する一方で、比較例CE1~CE8のいずれも熱クリープ試験に合格しなかったことを示す。これは、本発明の湿気硬化性配合物が、比較配合物よりも大きい架橋の程度を有利に有する湿気硬化ポリオレフィン生成物に硬化され得ることを示す。熱クリープ%が低いほど、架橋の程度が大きく、架橋の程度が大きいほど、湿気硬化ポリオレフィン生成物は、電力ケーブルの被覆層として使用するのにより好適となる。