IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチアス株式会社の特許一覧 ▶ 新興プランテック株式会社の特許一覧

特許7295197フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置
<>
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図1
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図2
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図3
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図4
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図5
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図6
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図7
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図8
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図9
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図10
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図11
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図12
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図13
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図14
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図15
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図16
  • 特許-フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】フランジ部ボルト締結教習方法、フランジ部ボルト締結教習プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20230613BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20230613BHJP
   F16B 31/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B25B23/14 640W
B25B23/14 640E
B25B23/14 610B
B25B23/14 620C
B25B23/14 620G
B25B23/14 620J
G01L5/00 103D
F16B31/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021171400
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2022074032
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2020182158
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500466108
【氏名又は名称】レイズネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】神原 華実
(72)【発明者】
【氏名】岡本 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康治
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008585(WO,A1)
【文献】特開2017-161388(JP,A)
【文献】特開2015-217497(JP,A)
【文献】特開2009-191932(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
G01L 5/00
F16B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別し、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
最初に締結操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させ、
ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる、
フランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項2】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別し、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定し、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定し、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる、
フランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項3】
ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値と最小値とを抽出し、それらの差が所定範囲を超えた場合にばらつきが大きいと判定する、請求項1又は2に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項4】
前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値を抽出し、前記最大値が所定範囲を超えた場合に過剰締付有と判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項5】
前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最小値を抽出し、前記最小値が所定範囲を下回る場合に締付力不足有と判定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項6】
前記フランジ部ボルト締結システムは、一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部同士の間に挟まれて保持されるガスケットと、を有し、
前記コンピュータは、入力部を有し、
前記入力部に対する前記ガスケットの種別の入力を受けた前記コンピュータにより、前記所定範囲が設定される、請求項~5のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項7】
前記コンピュータにより前記所定範囲を外れたことを報知するメッセージを前記表示装置に表示させる、請求項~6のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項8】
ユーザの選択に基づき、前記コンピュータにより前記表示装置の表示機能をオフにし、前記複数のボルトの締結操作の完了後に、締結操作を行ったボルトの判別結果を時系列に沿って前記表示装置に表示する、請求項1~7のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項9】
前記コンピュータにより、前記複数のボルトの締結操作の完了後に、締結操作を行ったボルトを時系列に沿って前記表示装置に表示する、請求項1~8のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項10】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
最初に締結操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる機能と、
ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、
を実現させる、フランジ部ボルト締結教習プログラム。
【請求項11】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定する機能と、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定する機能と、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、
を実現させる、フランジ部ボルト締結教習プログラム。
【請求項12】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別し、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
最初に緩め操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが緩め操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの緩め操作毎に前記周回数を1ずつ増加させ、
ボルト緩め操作中と前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる、
フランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項13】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別し、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定し、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定し、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる、
フランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項14】
前記コンピュータは、所定の時間間隔毎に前記複数のひずみ値から前記複数の締付け強さを示す値を取得する請求項1~9、12、13のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習方法。
【請求項15】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
最初に緩め操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが緩め操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの緩め操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる機能と、
ボルト緩め操作中と前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、
を実現させる、フランジ部ボルト締結教習プログラム。
【請求項16】
一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定する機能と、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定する機能と、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、
を実現させる、フランジ部ボルト締結教習プログラム。
【請求項17】
請求項10、11、15、16のいずれか1項に記載のフランジ部ボルト締結教習プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ継手同士を接続する複数のボルトのうち、締結操作中のボルトを判別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や住居等において、配管同士の接続にフランジ継手構造を用いる場合が多い。このフランジ継手構造は、一対のフランジ部と、フランジ部同士を固定する固定手段(ボルト等)と、を有する。作業者は、フランジ部同士を突き合せた状態で、固定手段を用いてフランジ部同士を固定することで、配管同士を接続することができる。フランジ部同士の間には、ガスケットが介在される場合も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-217497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフランジ継手構造のボルトの締結作業は、通常、作業者の手作業により行われる。そして、ボルトの締結の仕方が悪いと、長期に亘ってシール性能を維持することができず、配管の内容物がフランジ部からリークしてしまう問題がある。そのため、フランジ継手構造の締結作業を行う作業者には、一定以上のスキルが要求される。このため、作業者のスキルアップのためのツールが要望されていた。
【0005】
従って、本発明の目的は、フランジ部の締結作業を行う作業者のスキル向上のためのフランジ部ボルト締結システムに用いられる方法であって、複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下により解決される。すなわち、本発明(1)のフランジ部ボルト締結教習方法は、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別し、ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、最初に締結操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させ、ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させ、前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測し、前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる。
【0007】
本発明(2)のフランジ部ボルト締結教習方法は、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別し、ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測し、締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定し、締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定し、前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる。
【0012】
本発明(3)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)又は(2)に記載の方法であって、ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値と最小値とを抽出し、それらの差が所定範囲を超えた場合にばらつきが大きいと判定する。
【0013】
本発明(4)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)~(3)のいずれか1に記載の方法であって、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値を抽出し、前記最大値が所定範囲を超えた場合に過剰締付有と判定する。
【0014】
本発明(5)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)~(4)のいずれか1に記載の方法であって、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最小値を抽出し、前記最小値が所定範囲を下回る場合に締付力不足有と判定する。
【0015】
本発明(6)のフランジ部ボルト締結教習方法は、()~(5)のいずれか1に記載の方法であって、前記フランジ部ボルト締結システムは、一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部同士の間に挟まれて保持されるガスケットと、を有し、前記コンピュータは、入力部を有し、前記入力部に対する前記ガスケットの種別の入力を受けた前記コンピュータにより、前記所定範囲が設定される。
【0016】
本発明(7)のフランジ部ボルト締結教習方法は、()~(6)のいずれか1に記載の方法であって、前記コンピュータにより前記所定範囲を外れたことを報知するメッセージを前記表示装置に表示させる。
【0020】
本発明(8)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)~(7)のいずれか1に記載の方法であって、ユーザの選択に基づき、前記コンピュータにより前記表示装置の表示機能をオフにし、前記複数のボルトの締結操作の完了後に、締結操作を行ったボルトの判別結果を時系列に沿って前記表示装置に表示する。
【0021】
本発明(9)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)~(8)のいずれか1に記載の方法であって、前記コンピュータにより、前記複数のボルトの締結操作の完了後に、締結操作を行ったボルトを時系列に沿って前記表示装置に表示する。
【0022】
本発明(10)のフランジ部ボルト締結教習プログラムは、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
最初に締結操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる機能と、
ボルト締結操作中と前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、を実現させる。
【0023】
本発明(11)のフランジ部ボルト締結教習プログラムは、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト締結操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた締結操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの締結操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定する機能と、
締結操作中であるボルトとその直前に締結操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、締結操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定する機能と、
前記複数のボルトの全ての締結操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、を実現させる。
【0029】
本発明(12)のフランジ部ボルト締結教習方法は、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別し、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
最初に緩め操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが緩め操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの緩め操作毎に前記周回数を1ずつ増加させ、
ボルト緩め操作中と前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる。
【0030】
本発明(13)のフランジ部ボルト締結教習方法は、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムを用いた、フランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別し、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させ、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測し、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定し、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定し、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる。
【0031】
本発明(14)のフランジ部ボルト締結教習方法は、(1)~(9)、(12)、(13)のいずれか1に記載のフランジ部ボルト締結教習方法であって、前記コンピュータは、所定の時間間隔毎に前記複数のひずみ値から前記複数の締付け強さを示す値を取得する。
【0032】
本発明(15)のフランジ部ボルト締結教習プログラムは、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
最初に緩め操作を行った前記ボルトを基準ボルトと認定し、前記複数のボルトのうち前記基準ボルトを含む所定数の前記ボルトが緩め操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの緩め操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる機能と、
ボルト緩め操作中と前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後との少なくとも一方に、前記周回数を前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記周回数及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、を実現させる。
本発明(16)のフランジ部ボルト締結教習プログラムは、一対のフランジ部を締結可能で、該一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んだ複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備えるフランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させるフランジ部ボルト締結教習プログラムであって、前記コンピュータにより、
前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、
前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを緩め操作中のボルトと判別する機能と、
ボルト緩め操作中、各ボルトの前記複数の締付け強さを示す値と、前記判別の結果に基づいた緩め操作中のボルトとを前記表示装置に表示させる機能と、
前記複数のボルトの緩め操作の開始から完了までの操作時間を計測する機能と、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定し、対角締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に対角段階締めと判定する機能と、
緩め操作中であるボルトとその直前に緩め操作を行ったボルトとが前記複数のボルトの並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定し、円周締めと判定された場合であって、緩め操作中のボルトと判別された前記ボルトの締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に円周段階締めと判定する機能と、
前記複数のボルトの全ての緩め操作の完了後、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無及び前記操作時間に基づいて、作業者の習熟度レベルを判定及び講評を生成し、前記対角締めの有無、前記対角ペアの総発生回数、前記対角段階締めの有無、前記円周締めの有無、前記円周ペアの総発生回数、前記円周段階締めの有無、前記操作時間、前記習熟度レベル及び前記講評を前記表示装置に表示させる機能と、を実現させる。
【0033】
本発明(17)の装置は、(10)、(11)、(15)、(16)のいずれか1に記載のフランジ部ボルト締結教習プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、フランジ部の締結作業を行う作業者のスキル向上のためのフランジ部ボルト締結システムに用いられる方法であって、複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態のフランジ部ボルト締結システムを示した模式図である。
図2図1に示すフランジ部ボルト締結システムのボルトおよびセンサを拡大して示す断面図である。
図3図1に示すシステムの測定装置で得られた1秒毎のトルク値のログを示す表である。
図4図1に示すシステムに用いられる第1実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図5図3に示す1秒毎のトルク値のログから一部抜き出したログであって、締結操作中のボルトの判別結果が付されたログを示す表である。
図6図1に示すシステムの表示装置に示された複数のボルトのイメージ(アイコン)を含む表示画面であって、第1ボルトを締結操作中と判別した結果が示された表示画像の例である。
図7図1に示すシステムの表示装置に示された複数のボルトのイメージ(アイコン)を含む表示画面であって、第5ボルトを締結操作中と判別した結果が示された表示画像の例である。
図8図1に示すシステムに用いられる第2実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図9図8に示す円周締め判定のサブルーチンを示すフローチャートである。
図10図8に示す複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法によって、対角締めと判定される具体例と対角締めと判定されない具体例を説明する図である。
図11図9に示す円周締め判定のサブルーチンによって、円周締めと判定される具体例と円周締めと判定されない具体例を説明する図である。
図12図1に示すシステムに用いられる第3実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図13図1に示すシステムに用いられる第4実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図14図1に示すシステムに用いられる第5実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図15図1に示すシステムに用いられる第6実施形態に係る複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
図16図1に示すシステムに用いられる第7実施形態に係る複数のボルトから緩め操作中のボルトを判別する方法において、ボルトの緩め操作時に見られる弾性相互作用を示すグラフである。
図17図1に示すシステムに用いられる第7実施形態に係る複数のボルトから緩め操作中のボルトを判別する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に図面を参照しつつ、フランジ部ボルト締結システムに用いられる、複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法およびそれを用いた各種応用方法の詳細について説明する。システムは、フランジ部構造の締結作業を行う作業者のスキル向上や、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定等に寄与するものである。
【0037】
[第1実施形態]
図1図7を参照して、実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法およびそれを用いた第1応用方法について説明する。
【0038】
システム11は、第1管12と、第1管12と突き合わされた第2管13と、第1管12に設けられた第1フランジ部14と、第2管13に設けられた第2フランジ部15と、第1フランジ部14と第2フランジ部15との間に介在されたシール部材19と、第1フランジ部14と第2フランジ部15とを連結する複数のボルト16および複数のナット17と、複数のボルト16の軸方向のひずみ値を検出する複数のセンサ18と、複数のセンサ18に接続されセンサ18で測定された情報(ひずみ値等)を記録する測定装置21(データロガー)と、測定装置21に接続され測定装置21からの情報(ひずみ値等)を取得するコンピュータ22と、コンピュータ22に接続された表示装置24(ディスプレイ)と、コンピュータ22で取得された情報を整理して保存するサーバ23と、を備える。第1管12および第2管13は、工場内や家庭内に設置される配管を模している。第1管12および第2管13は、支持台25上に載置されている。
【0039】
複数のボルト16は、第1フランジ部14および第2フランジ部15を貫通するとともにこれらを突き合わせるように連結できる。本実施形態において、ボルト16の本数は、8本である。すなわち、本実施形態において、複数のボルト16には、第1~第8ボルト16A~16Hが含まれている。なお、システム11に含まれるボルト16の本数は任意である。第1フランジ部14および第2フランジ部15の直径等に応じて、ボルト16の本数は、4、6、10、12、14・・・等、適宜に変更できる。
【0040】
シール部材19は、ガスケットで構成されている。シール部材19を構成するガスケットは、例えば、金属ガスケットで構成されている。
【0041】
複数のセンサ18のそれぞれは、ボルト締結時におけるボルト16の軸方向のひずみを検出可能なひずみゲージで構成されている。ひずみゲージは、商業的に入手することができる。センサ18(ひずみゲージ)は、例えば、ボルト16の中心に形成された孔に対して、接着剤等を用いて接着されている。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16に働く軸方向のひずみ値を測定できる。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16の軸の外周面に接着されてもよい。
【0042】
測定装置21は、ひずみゲージとともに商業的に入手可能な一般的なデータロガーで構成されている。測定装置21は、例えば、所定時間毎にひずみゲージから、ボルト16の現在のひずみ値を取得することができる。測定装置21は、コンピュータ22にひずみ値のデータを送る。コンピュータ22は、ひずみ値から公知の方法で計算することで求められる、ボルト16に働く軸力値およびトルク値を直ちに算出するとともに内蔵するメモリに記憶できる。
【0043】
或いは、軸力値およびトルク値を測定装置21内で算出してもよい。その場合、測定装置21は、ひずみ値から公知の方法で計算することで求められる軸力値およびトルク値を直ちに算出するとともに内蔵するメモリに記憶することができる。
【0044】
測定装置21がひずみゲージからひずみ値等をログとして取得するタイミングは、任意であり、適宜に決定できる。測定装置21は、例えば、1~10秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよいし、好ましくは1~5秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよいし、さらに好ましくは1~3秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよいし、最も好ましくは0.5~1.5秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよい。
【0045】
測定装置21は、例えば、0.8~1.5秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよいし、好ましくは0.5~1.0秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよいし、さらに好ましくは0.1~0.3秒毎にひずみゲージからひずみ値を取得してもよい。
【0046】
コンピュータ22は、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)で構成されている。コンピュータ22は、コンピュータ22の本体に対して入力を行う入力部41を有する。本実施形態において、入力部41は、例えばキーボードおよびマウスで構成される。コンピュータ22に内蔵されるハードディスクドライブ31には、専用のソフトウェアがインストールされている。当該ソフトウェアのプログラムは、図4で示すフローチャートで示されるアルゴリズムに基づいている。当該ソフトウェアは、後述するように、図4で示すフローチャートに基づいて、現在締結操作中のボルト16を他のボルト16から判別できる。また、当該ソフトウェアは、教習を受けている作業者の作業経過に基づいて、作業者の習熟度レベルの評価を行って表示装置24に表示することができる。さらに、該ソフトウェアは、教習を受けている作業者の作業経過に基づいて、適切な講評を表示装置24に表示できる。また、コンピュータ22は、AIを実装したコンピュータ(ワークステーション)で構成されてもよい。この場合、コンピュータ22は、過去の作業経過およびそれに紐づいた講評を蓄積したデータ(教師データ)に基づいて、今回の作業経過を踏まえて、過去の講評の中から適切な講評をAI(ニューラルネットワーク)に基づいて表示装置24に表示してもよい。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0047】
ハードディスクドライブ31は、当該ソフトウェアのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例である。当該ソフトウェアのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ハードディスクドライブ31以外であってもよく、例えば、光ディスクや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、SSD等の不揮発性メモリであってもよい。
【0048】
専用のソフトウェアは、システム11の専用画面を表示装置24に表示するとともに、各種の計算等を行うことができる。当該ソフトウェアは、測定装置21に記憶されている複数のボルト16に対応する複数の情報(ひずみ値のログ)を、ほとんどタイムラグなく測定装置21から取得する。当該ソフトウェアは、これら複数のひずみ値のログから公知の計算式によって、ボルト16で働く軸力値(応力値)のログやトルク値のログを算出することができる。これら軸力値およびトルク値は、ボルトに対応する締付け強さを示す値の一例である。なお、トルク値と軸力値の関係(トルク係数)は、通常ボルト毎に異なることが多い。フランジ部ボルト締結システム11では、各ボルト16のトルク係数がほぼ同じであるため、トルク値および軸力値のいずれについても、締付け強さを示す値の例として活用できる。
【0049】
当該ソフトウェアは、これらのひずみ値のログ、軸力値のログ、およびトルク値のログを、必要に応じて適宜に専用画面内に表示できる。当該ソフトウェアは、上記した各種ログをサーバ23に送信して、サーバ23上に整理された状態で保存することができる。当該ソフトウェアは、ボルト16の締結操作の開始から完了までの時間を計測して表示装置24に表示するタイマーの機能を有する。
【0050】
測定装置21がひずみ値とともにそれから求められる軸力値およびトルク値を記憶している場合には、コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21に記憶されている複数のボルト16に対応する複数の情報(ひずみ値のログ、軸力値のログ、トルク値のログ)を、ほとんどタイムラグなく測定装置21から取得できる。当該ソフトウェアは、これらのひずみ値のログ、軸力値のログ、およびトルク値のログを、必要に応じて適宜に専用画面内に表示できる。当該ソフトウェアは、上記した各種ログをサーバ23に送信して、サーバ23上に整理された状態で保存することができる。
【0051】
続いて、図3図7を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第1応用方法、およびそれらを実行するプログラム(ソフトウェア)について説明する。
【0052】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11およびコンピュータ22(ソフトウェア)を起動する。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。図3に、1~3秒毎に測定されたひずみ値のログに対応するトルク値のログ(ボルト16毎のトルク値のログ)の例を示す。単位は、Nmである。図3では、下欄に行くにつれて1~3秒ずつ時間が経過している。図3の表では、小数点2位以下を四捨五入した形で表記している。コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、このようなトルク値のログとともに、1~3秒毎に測定されたひずみ値のログに対応するように計算された軸力値のログを作成することもできる。
【0053】
一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0054】
コンピュータ22は、図4のステップS11に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、図3に示すログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0055】
なお、この閾値の大きさは任意である。閾値が上記範囲よりも小さいと、締結操作中のボルト16の候補をうまく選別することができなくなる。閾値が上記範囲よりも大きくなると、実際に締結操作を行っているボルト16を検出できないことにつながる。
【0056】
ステップS11で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する(ステップS12)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。
【0057】
図5に、実際にコンピュータ22(当該ソフトウェア)が締結中のボルト16を判別した結果が付されたトルク値のログを示す。単位は、Nmである。図5で示されたログは、図3で示されるログのうちの一部であり、実際に締結操作中のボルト16が判別された際のログを図3のログから抽出したものである。判別結果は、〇印として、各ログのトルク値とともに示されている。図5から、作業者による実際のボルト16の締結作業とともに、現在締結作業が行われていると判別されるボルト16が順次入れ替わることが理解される。図5では、下欄に行くにつれて時間が経過している。
【0058】
さらにコンピュータ22(当該ソフトウェア)は、この判別結果を表示装置24に表示する(ステップS12)。判別結果を表示装置24に表示するイメージを図6図7に示す。表示装置24には、第1~第8ボルト16A~16Hのイメージ(アイコン)が示されている。第1~第8ボルト16A~16Hのイメージ(アイコン)は、実際の第1~第8ボルト16A~16Hの位置に対応して表示装置24上に表示される。
【0059】
コンピュータ22は、ステップS11、S12に従い、現在第1ボルト16Aの締結作業を行っていると判別した場合には、第1ボルト16Aのイメージ(アイコン)を四角の太枠によって囲んで強調する(図6参照)。次に、第5ボルト16Eの締結作業を行っていると判別した場合には、第5ボルト16Eのイメージ(アイコン)を四角の太枠によって囲んで強調する(図7参照)。コンピュータ22は、例えば、現在のボルト16の締付け強さを示す値であるトルク値又は軸力値を、表示装置24の第1~第8ボルト16A~16Hのイメージ(アイコン)内又はその近傍に表示することができる(ステップS12)。トルク値又は軸力値の大きさは、図6図7に示すように、イメージ中のバーの色や柄で表現してもよいし、数値等で直接的に表してもよい。
【0060】
その結果、教習を受けている作業者は、現在操作中のボルト16のトルク値又は軸力値を確認しながら、ボルト16の締結を実行することができる。作業者は、締結操作しているボルト16の番号等を表示装置24上で確認しながら、締結作業を進めることができる。
【0061】
本実施形態において、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、この締結操作中のボルト16の判別に加えて、さらに、ボルト締めの周回数を判定することができる。コンピュータ22は、作業者が最初に締結操作を行ったボルト16を基準ボルトと認定する。コンピュータ22は、複数のボルト16のうち基準ボルトを含む所定数のボルトが締結操作されたと判別された際に、周回数を1として判定する(ステップS13)。その際、所定数は、1以上で適宜な数を設定することができ、例えば、2~6、好ましくは3~5の数である。
【0062】
所定数として4を設定したとして以下に説明する。作業者が最初に第1ボルト16Aを締結操作し、次に第2ボルト16Bを締結操作し、次に第3ボルト16Cを締結操作し、次に第4ボルト16Dを締結操作し、次に第5ボルト16Eを締結操作したとする。その際、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1として判定する。なお、第2~第5ボルト16B、16Eの締結操作の順番は問わないものとし、並び順以外の順番で締結操作を行った場合でも、4個のボルト16を締結操作すれば周回数を1と判定する。
【0063】
作業者がこれに続いて第6ボルト16F、第7ボルト16G、第8ボルト16Hを締結操作した場合も、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数1を維持する。次に、作業者が再び基準ボルトである第1ボルト16Aを締結操作した場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1加算して2とする(ステップS14)。作業者が基準ボルト以外のボルト16を操作した場合には、この周回数2を維持する。以後、作業者が基準ボルトである第1ボルト16Aに対して締結操作を行った場合に、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1ずつ増加させる。コンピュータ22は、周回数をボルト16の締結操作中およびボルト16の締結操作の完了後のいずれのタイミングでも表示装置24に表示する(ステップS15)。
【0064】
作業者は、ボルト16のトルク値又は軸力値が適正値の範囲に入ったことを確認して、当該ボルト16の締付けを完了できる。完了後、作業者は、表示装置24の表示画面において、締付け完了後の各ボルト16のトルク値又は軸力値とともに、周回数を確認することができる。所定数として4以外の数が設定される場合でも、上記と同様に周回数が判定され、表示装置24に周回数が表示される。また、コンピュータ22は、周回数および締結操作時間に応じて、作業者の習熟度レベルおよび講評を判定する。コンピュータ22は、例えば、周回数2以上となった場合に、作業者が高い習熟度レベルにあることを表示装置24に表示する(ステップS16)。一方、周回数が1である場合等には、作業者が低い習熟度レベルにあることを表示装置24に表示する(ステップS16)。締結操作時間は、短い方が高評価となる。コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、締結操作時間が標準的な作業時間をオーバーしていた場合に、習熟度レベルを低く表示するとともに、以下のような講評(メッセージ)を表示装置24に表示することができる。
「慎重な施工は好ましいですが、もっと手順に慣れると作業の効率化が期待されます。」
以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第1応用方法を完了する。
【0065】
また、本実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびそれに用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、教習を受けている作業者の認定試験に活用することができる。すなわち、締結中のボルト16の判別結果およびその際のトルク値又は軸力値のログ等を用いた様々な判定基準を用いて、作業者の技術レベルを判断することができる。これによって、ボルト16の締結作業をこれから習熟しようとする作業者の技術レベルを把握できるとともに、作業者の技術レベルの向上に寄与できる。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第1応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第1応用方法を実現してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、フランジ部ボルト締結システム11を用いた。フランジ部ボルト締結システム11は、複数のボルト16のひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサ18と、複数のセンサ18で得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータ22と、複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置24と、を備える。複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、コンピュータ22により前記複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別し、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する。
【0067】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フランジ部ボルト締結システムに、以下の機能を実現させる。フランジ部ボルト締結システムは、一対のフランジ部を締結可能な複数のボルトのひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサと、前記複数のセンサで得られた複数のひずみ値から得られ前記複数のボルトに対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータと、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置と、を備える。プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記コンピュータにより前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、前記コンピュータにより前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応する前記ボルトを締結操作中のボルトと判別する機能と、を実現させる。
【0068】
これらの構成によれば、コンピュータ22は、作業者が現在締結しているボルト16を正確に判別することができる。これによって、コンピュータ22上に正確なログをとることができ、システム11を用いたその後の解析(段階的な締付けができているか、締めすぎはないか、等)に有効に活用できる。
【0069】
また、上記構成によれば、ボルト締結を行う作業者は、実際に締めているボルト16の番号、位置を表示装置24の画面上で確認しながら、締結作業を進めることができる。その結果、作業者は、締結対象のボルト16が正しく締められていることを画面上で確認しつつ、ボルトの締結作業を教習できる。コンピュータ22が現在締結操作を行っているボルト16の現在の複数の締付け強さを示す値を表示装置24に表示するようにしている場合には、作業者は、現在の複数の締付け強さを示す値を確認しながら作業を進めることができる。これによって、適正な締付け量を実際の作業を行いながら教習を進めることができる。また、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定にも用いることができる。
【0070】
コンピュータ22は、所定の時間間隔毎に前記複数のひずみ値から前記複数の締付け強さを示す値を取得する。そして、取得した複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。この構成によれば、操作中のボルト16の検出漏れを防止しつつ、データ量が膨大にならないように情報をある程度間引くように複数のトルク値を取得できる。これによって、締結操作中のボルト16を精度よく判別することができる。
【0071】
フランジ部ボルト締結システム11は、環状で離散的に並んだ複数のボルト16のひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサ18と、複数のセンサ18で得られた複数のひずみ値から得られ複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータ22と、複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置24と、を備える。当該フランジ部ボルト締結システム11を用いた、複数のボルト16から締結操作中のボルトを判別する方法は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、コンピュータ22により、最初に締結操作を行ったボルト16を基準ボルトと認定し、複数のボルト16のうち前記基準ボルトを含む所定数のボルト16が締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる。
【0072】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、環状で離散的に並んだ複数のボルト16のひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサ18と、複数のセンサ18で得られた複数のひずみ値から得られ複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータ22と、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置24と、を備えるフランジ部ボルト締結システム11に、以下の機能を実現させる。プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する機能と、コンピュータ22により、最初に締結操作を行ったボルト16を基準ボルトと認定し、複数のボルト16のうち前記基準ボルトを含む所定数のボルト16が締結操作されたと判別された際に周回数を1として判定し、それ以後、前記基準ボルトの締結操作毎に前記周回数を1ずつ増加させる、複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する機能と、を実現させる。
【0073】
これらの構成によれば、作業者は、締結操作中のボルト16の判別結果とともにボルト締結の周回数を把握することができる。これによって、ボルト16の締結作業が適切にできているかを正確に把握できるとともに、ボルト16の締結作業の経過を把握することで作業者が締結作業の教習を受けることができる。
【0074】
この場合、コンピュータ22により前記締結操作中のボルト16の判別結果を表示装置24に表示させる。
【0075】
この構成によれば、作業者に向けて、締結操作中のボルト16の情報を表示装置24を介して報知することができる。これにより、作業者は、表示装置24上で現在締結操作中のボルト16の情報を確認しながら、ボルト16の締結作業を進めることができる。これによって、より精度の高いボルト16の締結作業を可能にするとともに、作業者に対してより高精度な締結作業の教習を行うことができる。また、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定にも用いることができる。
【0076】
この場合、コンピュータ22により複数のボルト16の締結操作の開始から完了までの時間を測定して測定結果を表示装置24に表示させる。この構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに、作業時間を作業者に報知することができる。これによって、短時間で作業を終えるようにすることを作業者に促すことができ、作業効率の向上をしつつボルト16の締結作業の教習を行うことができる。また、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定にも用いることができる。
【0077】
この場合、コンピュータ22により複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を表示装置24に表示させる。この構成によれば、教習を受けている作業者は、現在の締付け強さを示す値を表示装置24の画面上で確認しながら、ボルト16の締結作業を行うことができる。これによって、実際の手で締付を行っている力量と、締付け強さを示す値の数値と、を作業中に照らし合わせることができ、高精度かつ効率的なボルト締結作業の教習を受けることができる。
【0078】
この場合、コンピュータ22により習熟度レベルを表示装置24に表示する。この構成によれば、教習を受けている作業者に対して、技能向上に向けたモチベーションを喚起することができる。これによって、教習を受けている作業者に、技能取得のためのさらなるトレーニングを促すことができる。
【0079】
この場合、コンピュータ22により作業者の締結操作に対する講評を表示装置24に表示する。この構成によれば、教習を受けている作業者に対して、適切に改善すべき点を指摘することができる。これによって、より効率的に作業者に技能を取得させることができる。
【0080】
以下の実施形態では、主として上記第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
【0081】
[第2実施形態]
図8図11を参照して、第2実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた第2応用方法について説明する。本実施形態では、コンピュータ22は、上記第1実施形態で説明した事項に加えて、対角締め、対角段階締め、円周締め、および円周段階締めを判定することができる。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図8で示すフローチャートで示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0082】
図8図9を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第2応用方法について説明する。
【0083】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11を起動する。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0084】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、図8のステップS21に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、上記ログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0085】
ステップS21で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、表示装置に表示する(ステップS22)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。
【0086】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、順番に締結操作がなされたボルト16が対角締めされているか否かを判定する(ステップS23~S30)。すなわち、順番に締結操作がなされたボルト16同士が対角位置にあるか否かを判定する(ステップS23)。コンピュータ22は、例えばボルト16の総数が8である場合に、ボルト16同士のボルト番号の差が4である場合に、それらが対角位置にあるとして対角ペアとして認定する(ステップS24)。対角ペアが認定されない場合には、対角締めでないと判定する(ステップS29)。
【0087】
さらに、コンピュータ22は、異なる対角ペアが2以上あるか否かを判定する(ステップS25)。異なる対角ペアが2以上ある場合には、コンピュータ22は、対角締めと判定する(ステップS26)。異なる対角ペアが1以下である場合には、コンピュータ22は、対角締めでない判定する(ステップS30)。
【0088】
より具体的には、例えば図10に示す例1のように、第1ボルト16A、第5ボルト16E、第3ボルト16C、第7ボルト16G、第1ボルト16Aの順番に締結操作がされた場合には、四角で囲んで示す第1ボルト16Aおよび第5ボルト16Eが対角ペアとなり、四角で囲んで示す第3ボルト16Cおよび第7ボルト16Gが対角ペアとなる。したがって、異なる2以上対角ペアが認定され、コンピュータ22は、対角締めと判定する。
【0089】
同様に、図10に示す例2のように、四角で囲んで示す対角ペアが4以上認定された場合も同様に、コンピュータ22は、対角締めと判定する。図10に示す例3のように、対角ペアの第2ボルト16Bおよび第6ボルト16Fと、対角ペアの第4ボルト16Dおよび第8ボルト16Hと、の間に対角ペアとなっていない第2ボルト16Bが締結操作された場合も、コンピュータ22は、対角締めと判定する。
【0090】
一方、図10に示す例4のように、四角で囲んで示す対角ペアが1個である場合には、コンピュータ22は、対角締めでないと判定する。
【0091】
さらに、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ボルト16の締付トルクを段階的に増加させているか否かを判定する(図8のステップS27)。その際、コンピュータ22は、JISB2251「フランジ継手締付け方法」で推奨している、締付トルクを段階的に増加させる手順に沿っているか否かを判定する。すなわち、JISB2251では、例えば目標締結トルクの10%→20%→60%→100%の順に、段階的に締付トルクを増大させることを推奨している。
【0092】
したがって、コンピュータ22は、第1の対角ペアが目標締結トルクの概ね10%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の対角ペア等が目標締結トルクの概ね10%で順番に締結されるか否かを判定する(対角ペアの数は問わないものとする)。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの5~15%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0093】
次に、コンピュータ22は、第1の対角ペアが目標締結トルクの概ね20%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の対角ペア等が目標締結トルクの概ね20%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの15~25%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0094】
次に、コンピュータ22は、第1の対角ペアが目標締結トルクの概ね60%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の対角ペア等が目標締結トルクの概ね60%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの55~65%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0095】
次に、コンピュータ22は、第1の対角ペアが目標締結トルクの概ね100%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の対角ペア等が目標締結トルクの概ね100%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの95~105%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0096】
上記基準を満たしている場合には、コンピュータ22は、対角段階締めと判定する(ステップS28)。上記基準を見たさない場合には、対角締めではあるが、対角段階締めではないと判定する(ステップS31)。
【0097】
次に、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、円周締めに該当するか否かを判定する(ステップS32、図9に示す円周締め判定)。図9に示すように、コンピュータ22は、それ以前の対角締め判定において、対角締め又は対角段階締めと判定されたか否かを判定する(ステップS41)。対角締め又は対角段階締めと判定されていない場合には、円周締めに該当するか否かを判定する。先のステップにおいて、すでに対角締め又は対角段階締めと判定された場合には、直ちに円周締めでないと判定される(ステップS48)。
【0098】
コンピュータ22は、締結操作中のボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが、ボルト16の並び方向に沿って隣接位置にあるか否かを判定する。この場合、並び方向に沿って隣接位置にあるとは、ボルト16の番号が増加する正方向(第1ボルト16A→第2ボルト16B→第3ボルト16Cに向かう方向)に隣接していてもよいし、正方向とは逆の逆方向(第1ボルト16A→第8ボルト16H→第7ボルト16Gに向かう方向)に隣接していてもよい。また、隣接しているとは、ボルト番号の差の絶対値が1であることをいう。なお、第1ボルト16Aの次に第8ボルト16Hを操作した場合、第8ボルト16Hの次に第1ボルト16Aを操作した場合も、ボルト番号の差の絶対値が1であるとする。締結操作中のボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが、ボルト16の並び方向に沿って隣接位置にある場合には、それらを円周ペアと認定する(ステップS43)。
【0099】
コンピュータ22は、当該円周ペアに加えて、当該円周ペアと同方向(正方向、逆方向)の並び方向に沿って隣接位置にあるボルト16が締結操作された場合には、これらを第2の円周ペアとして認定する。コンピュータ22は、異なる円周ペアが2以上あるか否かを判定する(ステップS44)。異なる円周ペアが2以上あると認定された場合には、コンピュータ22は、円周締めと判定する(ステップS45)。異なる円周ペアが2以上あると認定されない場合には、コンピュータ22は、円周締めでないと判定する(ステップS49)。
【0100】
より具体的には、例えば図11に示す例1のように、第1ボルト16A、第2ボルト16B、第3ボルト16C、第4ボルト16D、第5ボルト16E、第6ボルト16F、第7ボルト16G、第8ボルト16H、第1ボルト16Aの順番に締結操作がされた場合には、四角で囲んで示す第1ボルト16Aおよび第2ボルト16Bが円周ペアとなり、同様に、四角で囲んで示す第2、第3ボルト16B、16Cが円周ペアとなり、第3、第4ボルト16C、16Dが円周ペアとなり、第4、第5ボルト16D、16Eが円周ペアとなり、第5、第6ボルト16E、16Fが円周ペアとなり、第6、第7ボルト16F、16Gが円周ペアとなり、第7、第8ボルト16G、16Hが円周ペアとなる。したがって、異なる2以上円周ペアが認定され、コンピュータ22は、円周締めと判定する。
【0101】
同様に、図11に示す例2のように、四角で囲んで示す円周ペアが3以上認定され、且つ円周ペア同士の間でボルトの並び方向に沿って隣接していない場合も同様に、コンピュータ22は、円周締めと判定する。図11に示す例3のように、四角で囲んで示す円周ペアが2以上認定され、且つ円周ペアの第1ボルト16Aおよび第2ボルト16Bと、円周ペアの第5ボルト16Eおよび第6ボルト16Fと、の間に大きく間隔が空いている場合も、コンピュータ22は、円周締めと判定する。
【0102】
一方、図11に示す例4のように、四角で囲んで示す円周ペアが1個である場合には、コンピュータ22は、円周締めでないと判定する。
【0103】
図9に示すように、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、さらに、操作中のボルト16のトルク値が段階的に増加しているか否かを判定する(ステップS46)。
【0104】
その際、コンピュータ22は、JISB2251「フランジ継手締付け方法」で推奨している、締付トルクを段階的に増加させる手順に沿っているか否かを判定する。すなわち、JISB2251では、例えば、目標締結トルクの10%→20%→60%→100%の順に、段階的に締付トルクを増大させることを推奨している。
【0105】
したがって、コンピュータ22は、第1の円周ペアが目標締結トルクの概ね10%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の円周ペア等が目標締結トルクの概ね10%で順番に締結されるか否かを判定する(円周ペアの数は問わないものとする)。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの5~15%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0106】
次に、コンピュータ22は、第1の円周ペアが目標締結トルクの概ね20%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の円周ペア等が目標締結トルクの概ね20%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの15~25%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0107】
次に、コンピュータ22は、第1の円周ペアが目標締結トルクの概ね60%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の円周ペア等が目標締結トルクの概ね60%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの55~65%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0108】
次に、コンピュータ22は、第1の円周ペアが目標締結トルクの概ね100%で締結され、それらに続いて、第2、第3、第4の円周ペア等が目標締結トルクの概ね100%で順番に締結されるか否かを判定する。その際、コンピュータ22は、目標締結トルクの95~105%で締結された場合に、この基準を満たしていると判定する(例えば、締結誤差として上下5%を許容する)。
【0109】
上記基準を満たしている場合には、コンピュータ22は、円周段階締めと判定する(ステップS47)。上記基準を見たさない場合には、円周締めではあるが、円周段階締めではないと判定する(ステップS50)。
【0110】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、図8のステップS33に示すように、ボルト16の締結操作が完了したか否かを確認する。確認は、例えば、締結作業の完了後にコンピュータ22に対して作業者からの作業完了の入力を受けることで行ってもよいし、所定時間ボルトの操作がない場合にコンピュータ22が完了と判定してもよい。締結作業が完了している場合には、次のステップS34に進む。締結作業が完了していない場合には、ステップS21に戻る。
【0111】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、対角締めの有無、対角ペアの総発生回数、対角段階締めの有無、円周締めの有無、円周ペア総発生回数、円周段階締めの有無、締結操作時間等から、作業者の習熟度レベルを判定する(ステップS34)。対角締めの場合には、対角ペアの総発生回数が所定の数を上回った場合には、高評価となる。また、対角締めよりも対角段階締めの方が高評価となる。円周締めの場合には、円周ペアの総発生回数が所定の数を上回った場合には、高評価となる。また、円周締めよりも円周段階締めの方が高評価となる。締結操作時間が短い方が高評価となる。締結操作時間は、標準的な作業時間をオーバーした場合には、低い評価となる。
【0112】
コンピュータ22は、締結操作の完了後の各ボルトの締結トルク、軸力、締結操作時間等の各種結果、作業者の習熟度レベル、および講評を表示装置に表示する(ステップS35)。
【0113】
コンピュータ22は、例えば円周締めができていなかった場合に、以下のような講評(メッセージ)を表示装置24に表示することができる。
「円周締めを行うと、ボルトの締結トルクのばらつきが抑制されることが期待されます。ボルト(ナット)を回すのではなく、同じ力感をボルト(ナット)に伝えて、回らなくなるまで繰り返すことがポイントです。」
コンピュータ22は、例えば段階締めができていなかった場合に、以下のような講評(メッセージ)を表示装置24に表示することができる。
【0114】
「軸力の増加がやや大きい傾向でした。1回の締付け量をもう少し小さくすることで、段階的な締付けができるようになります。」
コンピュータ22は、例えば、前回に比べて、締結操作時間が標準的な作業時間の範囲内に改善する一方、前回できていた段階締めが不完全になった場合に、以下のような講評(メッセージ)を表示装置24に表示することができる。
「前回よりスピーディーに締付けられるようになっています。さらに、1目に小さなトルクで締付けることを意識し、段階的な締付を行うように心掛けてみましょう。」
【0115】
以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第2応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第2応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第2応用方法を実現してもよい。
【0116】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。フランジ部ボルト締結システム11において、複数のボルト16が一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んでいる。複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、コンピュータ22により締結操作中であるボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定する。
【0117】
フランジ部ボルト締結システム11において、複数のボルト16が一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んでいる。プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する機能と、コンピュータ22により締結操作中であるボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが対角位置にある場合に対角ペアと認定し、2以上の対角ペアが認定された際に対角締めと判定する機能と、を実現させる。
【0118】
これらの構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに対角締めか否かを把握することができる。これによって、作業者の習熟度レベルをより正確に把握することができる。そして、この結果を用いて作業者の教習に用いることができる。
【0119】
フランジ部ボルト締結システム11において、複数のボルト16が一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んでいる。複数のボルトから締結操作中のボルトを判別する方法は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、コンピュータ22により締結操作中であるボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが複数のボルト16の並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定する。
【0120】
フランジ部ボルト締結システム11において、複数のボルト16が一対のフランジ部に対して環状に離散的に並んでいる。プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、コンピュータ22により前記増大する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する機能と、コンピュータ22により締結操作中であるボルト16とその直前に締結操作を行ったボルト16とが複数のボルト16の並び方向に沿って隣接している場合に円周ペアと認定し、2以上の円周ペアが認定された際に円周締めと判定する機能と、を実現させる。
【0121】
これらの構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに円周締めか否かを把握することができる。これによって、作業者の習熟度レベルをより正確に把握することができる。そして、この結果を用いて作業者の教習に用いることができる。
【0122】
複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、コンピュータ22により、締結操作中のボルト16と判別されたボルト16の締付け強さを示す値が、目標値に向けて段階的に増加している場合に段階締めと判定する。この構成によれば、JISB2251に準拠して、ボルト16の締結トルクを徐々に増加させることを作業者に推奨することができる。
【0123】
この場合、コンピュータ22により複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を表示装置24に表示させる。この構成によれば、作業者は、現在のボルト16の締結トルクを表示装置24上で確認しながら、締結作業の教習を受けることができる。これによって、ボルト16の締結力を視覚的に把握しながら締結作業を行うことができ、より高精度な教習を作業者に施すことができる。
【0124】
[第3実施形態]
図12を参照して、第3実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた第3応用方法について説明する。本実施形態では、コンピュータ22は、上記第1実施形態で説明した事項に加えて、締結されている複数のボルト16の締付け強さを示す値から、例えば最大値と最小値との差や統計的な手法により、ばらつきを判定することができる。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図12で示すフローチャートで示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0125】
コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲および所定範囲を記憶している。この複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲は、ガスケット種別(ガスケットの大きさ、材質、用途等)毎に異なっている。このため、ハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、当該範囲を記憶している。例えば、ガスケットAに対する望ましいトルク値の範囲は、58.8Nmを中心とする、50.0~67.6Nmの範囲である。したがって、ガスケットAに対する望ましいトルク値の所定範囲は、複数のボルトにそれぞれ対応する複数のトルク値の最大値と最小値との差が17.6Nm以下の範囲である。
【0126】
ガスケットAとは種別の異なるガスケットBに対する望ましいトルク値の範囲は、84.3Nmを中心とする、71.65~96.95Nmの範囲である。したがって、ガスケットBに対する望ましいトルク値の所定範囲は、複数のボルトにそれぞれ対応する複数のトルク値の最大値と最小値との差が25.3Nm以下の範囲である。
【0127】
ガスケットA、Bとは種別の異なるガスケットCに対する望ましいトルク値の範囲は、68.4Nmを中心とする、58.15~78.65Nmである。したがって、ガスケットCに対する望ましいトルク値の所定範囲は、複数のボルトにそれぞれ対応する複数のトルク値の最大値と最小値との差が20.5Nm以下の範囲である。コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、上記のような望ましい範囲(所定範囲)を記憶している。
【0128】
図12を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第3応用方法について説明する。
【0129】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11を起動する。システム11は、ガスケット(シール部材19)の種別を入力することを要請するメッセージを表示装置24に表示して、入力部41を介してガスケット種別を入力するように作業者に促す(ステップS51)。ガスケット種別の入力の完了後、教習が開始する。なお、本実施形態では、トルク値の検出によって締結操作の開始を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTARTボタンを作業者が操作することで締結操作の開始をコンピュータ22が把握してもよい。
【0130】
センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0131】
コンピュータ22は、図12のステップS52に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、上記ログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0132】
ステップS52で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、表示装置24に表示する(ステップS53)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。
【0133】
さらに、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ボルト16の締結操作が完了したか否かを判定する(ステップS54)。すなわち、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できる場合には、ボルト16の締結操作が完了していないと判定する。その場合には、締結操作中のボルト16と判別を継続する(ステップS52、S53)。一方、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できない場合には、ボルト16の締結操作が完了したと判定する。なお、本実施形態では、トルク値の検出がないことによって締結操作の完了を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTOPボタンを作業者が操作することで締結操作の完了をコンピュータ22が把握してもよい。
【0134】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、最大値と最小値とを抽出する(ステップS55)。さらに、コンピュータ22は、最大値と最小値との差を算出し、当該差がガスケット種別に対応する上記所定範囲を超えたか否かを判定する(ステップS68)。当該差がガスケット種別に対応する上記所定範囲を超えた場合には、コンピュータ22は、ばらつきが大きいと判定し、その旨およびそれに該当するボルト16を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS57)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして低い評価を表示装置24に表示する。
【0135】
一方、当該差がガスケット種別に対応する上記所定範囲内にある場合には、コンピュータ22は、ばらつきが小さいと判定し、その旨を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS58)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして高い評価を表示装置24に表示する。
【0136】
以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第3応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第3応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第3応用方法を実現してもよい。
【0137】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複数のボルトの締結状態を判別する方法は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値と最小値とを抽出し、それらの差が所定範囲を超えた場合にばらつきが大きいと判定する。
【0138】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値と最小値とを抽出し、それらの差が所定範囲を超えた場合にばらつきが大きいと判定する機能を実現させる。
【0139】
これらの構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに締付強さを示す値のばらつきがあるか否かを把握することができる。これによって、作業者の習熟度レベルをより正確に把握することができる。そして、この結果を用いて作業者の教習に用いることができる。
【0140】
フランジ部ボルト締結システム11は、一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部同士の間に挟まれて保持されるガスケット(シール部材19)と、を有し、複数のボルトの締結状態を判別する方法において、前記コンピュータは、入力部を有し、前記入力部に対する前記ガスケット(シール部材19)の種別の入力を受けた前記コンピュータにより、前記所定範囲が設定される。
【0141】
一般に、適正な締付け強さを示す値(トルク値、軸力値)は、ガスケット(シール部材19)の種別毎に異なる。この構成によれば、そのガスケット種別に適した適正な締付け強さを示す値の所定範囲が設定されるため、より高精度な教習を行うことができる。
【0142】
複数のボルトの締結状態を判別する方法は、コンピュータ22により前記所定範囲を外れたことを報知するメッセージを表示装置24に表示させる。この構成によれば、教習を受ける作業者が締付強さを示す値が適正範囲から外れたことを簡単に認識することができる。その結果、作業者に対する高い教習効果を得ることができる。
【0143】
[第4実施形態]
図13を参照して、第4実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた第4応用方法について説明する。本実施形態では、コンピュータ22は、上記第1実施形態で説明した事項に加えて、締結されている複数のボルト16の締付け強さを示す値から、例えば最大値を取得したり統計的な手法を採用したりすることにより、過剰締付のボルト16の有無を判定することができる。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図13で示すフローチャートで示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0144】
コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲および所定範囲を記憶している。この複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲は、ガスケット(シール部材19)の種別(ガスケットの大きさ、材質、用途等)毎に異なっている。このため、ハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、当該範囲を記憶している。例えば、ガスケットAに対する望ましいトルク値の範囲は、58.8Nmを中心とする、50.0~67.6Nmの範囲である。また、ガスケットAに対する望ましいトルク値の所定範囲は、最も望ましいトルク値58.8Nmの1.5倍である88.2Nm以下の範囲である。
【0145】
ガスケットAとは種別の異なるガスケットBに対する望ましいトルク値の範囲は、84.3Nmを中心とする、71.65~96.95Nmの範囲である。また、ガスケットBに対する望ましいトルク値の所定範囲は、最も望ましいトルク値84.3Nmの1.5倍である126.4Nm以下の範囲である。
【0146】
ガスケットA、Bとは種別の異なるガスケットCに対する望ましいトルク値の範囲は、68.4Nmを中心とする、58.15~78.65Nmである。また、ガスケットCに対する望ましいトルク値の所定範囲は、最も望ましいトルク値68.4Nmの1.5倍である102.6Nm以下の範囲である。コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、上記のような望ましい範囲(所定範囲)を記憶している。
【0147】
図13を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第4応用方法について説明する。
【0148】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11を起動する。システム11は、ガスケットの種別を入力することを要請するメッセージを表示装置24に表示して、入力部41を介してガスケット種別を入力するように作業者に促す(ステップS61)。ガスケット種別の入力の完了後、教習が開始する。なお、本実施形態では、トルク値の検出によって締結操作の開始を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTARTボタンを作業者が操作することで締結操作の開始をコンピュータ22が把握してもよい。
【0149】
センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0150】
コンピュータ22は、図13のステップS62に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、上記ログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0151】
ステップS62で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、表示装置24に表示する(ステップS63)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。
【0152】
さらに、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ボルト16の締結操作が完了したか否かを判定する(ステップS64)。すなわち、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できる場合には、ボルト16の締結操作が完了していないと判定する。その場合には、締結操作中のボルト16と判別を継続する(ステップS62、S63)。一方、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できない場合には、ボルト16の締結操作が完了したと判定する。なお、本実施形態では、トルク値の検出がないことによって締結操作の完了を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTOPボタンを作業者が操作することで締結操作の完了をコンピュータ22が把握してもよい。
【0153】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、最大値を抽出する(ステップS65)。さらに、コンピュータ22は、最大値がガスケット種別に対応する上記所定範囲を超えたか否かを判定する(ステップS66)。当該最大値がガスケット種別に対応する上記所定範囲を超えた場合には、コンピュータ22は、過剰締付があると判定し、その旨およびそれに該当するボルト16を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS67)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして低い評価を表示装置24に表示する。
【0154】
一方、当該差がガスケット種別に対応する上記所定範囲内にある場合には、コンピュータ22は、過剰締付がないと判定し、その旨を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS68)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして高い評価を表示装置24に表示する。なお、本実施形態では、締結操作の完了後に過剰締付の有無の判定をしているが、この判定は締結操作の完了後に限られるものではない。当該判定は、作業者が締結操作を行っているリアルタイムで行っても当然によい。
【0155】
以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第4応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第4応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第4応用方法を実現してもよい。
【0156】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複数のボルトの締結状態を判別する方法は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値を抽出し、前記最大値が所定範囲を超えた場合に過剰締付有と判定する。
【0157】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最大値を抽出し、前記最大値が所定範囲を超えた場合に過剰締付有と判定する機能を実現させる。
【0158】
これらの構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに過剰締付があるか否かを把握することができる。これによって、作業者の習熟度レベルをより正確に把握することができる。そして、この結果を用いて作業者の教習に用いることができる。
【0159】
[第5実施形態]
図14を参照して、第5実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた第5応用方法について説明する。本実施形態では、コンピュータ22は、上記第1実施形態で説明した事項に加えて、締結されている複数のボルト16の締付け強さを示す値から、例えば最小値を取得したり統計的な手法を採用したりすることにより、締付力不足のボルト16の有無を判定することができる。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図14で示すフローチャートで示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0160】
コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲および所定範囲を記憶している。この複数のボルトの望ましいトルク値に対応する範囲は、ガスケット(シール部材19)の種別(ガスケットの大きさ、材質、用途等)毎に異なっている。このため、ハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、当該範囲を記憶している。例えば、ガスケットAに対する望ましいトルク値の範囲は、58.8Nmを中心とする、50.0~67.6Nmの範囲である。また、ガスケットAに対する望ましいトルク値の所定範囲は、締付力が不足しない45.2Nm以上の範囲である。
【0161】
ガスケットAとは種別の異なるガスケットBに対する望ましいトルク値の範囲は、84.3Nmを中心とする、71.65~96.95Nmの範囲である。また、ガスケットBに対する望ましいトルク値の所定範囲は、締付力が不足しない64.3Nm以上の範囲である。
【0162】
ガスケットA、Bとは種別の異なるガスケットCに対する望ましいトルク値の範囲は、68.4Nmを中心とする、58.15~78.65Nmである。また、ガスケットCに対する望ましいトルク値の所定範囲は、締付力が不足しない52.6Nm以上の範囲である。コンピュータ22のハードディスクドライブ31は、ガスケット種別に紐づいた形で、上記のような望ましい範囲(所定範囲)を記憶している。
【0163】
図14を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第3応用方法について説明する。
【0164】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11を起動する。システム11は、ガスケットの種別を入力することを要請するメッセージを表示装置24に表示して、入力部41を介してガスケット種別を入力するように作業者に促す(ステップS71)。ガスケット種別の入力の完了後、教習が開始する。なお、本実施形態では、トルク値の検出によって締結操作の開始を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTARTボタンを作業者が操作することで締結操作の開始をコンピュータ22が把握してもよい。
【0165】
センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0166】
コンピュータ22は、図14のステップS72に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、上記ログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0167】
ステップS72で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別し、表示装置24に表示する(ステップS73)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。
【0168】
さらに、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ボルト16の締結操作が完了したか否かを判定する(ステップS74)。すなわち、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できる場合には、ボルト16の締結操作が完了していないと判定する。その場合には、締結操作中のボルト16と判別を継続する(ステップS72、S73)。一方、コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を検出できない場合には、ボルト16の締結操作が完了したと判定する。なお、本実施形態では、トルク値の検出がないことによって締結操作の完了を判断しているが、この判断手法は一例であり、例えば、表示装置24に表示された表示画面中に設けられたSTOPボタンを作業者が操作することで締結操作の完了をコンピュータ22が把握してもよい。
【0169】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、最小値を抽出する(ステップS75)。さらに、コンピュータ22は、最小値がガスケット種別に対応する上記所定範囲を下回るか否かを判定する(ステップS76)。当該最小値がガスケット種別に対応する上記所定範囲を下回る場合には、コンピュータ22は、締付力不足があると判定し、その旨およびそれに該当するボルト16を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS77)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして低い評価を表示装置24に表示する。
【0170】
一方、当該差がガスケット種別に対応する上記所定範囲内にある場合には、コンピュータ22は、締付力不足がないと判定し、その旨を示すメッセージを表示装置24に表示する(ステップS78)。この場合、コンピュータ22は、習熟度レベルとして高い評価を表示装置24に表示する。なお、本実施形態では、締結操作の完了後に締付力不足の有無の判定をしているが、この判定は締結操作の完了後に限られるものではない。当該判定は、作業者が締結操作を行っているリアルタイムで行っても当然によい。
【0171】
以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第5応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第5応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第5応用方法を実現してもよい。
【0172】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複数のボルトの締結状態を判別する方法は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最小値を抽出し、前記最小値が所定範囲を下回る場合に締付力不足有と判定する。
【0173】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記コンピュータにより前記複数のボルトのそれぞれに対応する前記複数の締付け強さを示す値のうち、最小値を抽出し、前記最小値が所定範囲を下回る場合に締付力不足有と判定する機能を実現させる。
【0174】
これらの構成によれば、締結操作中のボルト16の判別結果とともに締付力不足があるか否かを把握することができる。これによって、作業者の習熟度レベルをより正確に把握することができる。そして、この結果を用いて作業者の教習に用いることができる。
【0175】
[第6実施形態]
図15を参照して、第6実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた第6応用方法について説明する。本実施形態は、第1実施形態を一部変形した変形例である。本実施形態では、コンピュータ22は、例えば、教習を受ける作業者による上級者モードの選択に基づき、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別した判別結果を、あえてリアルタイムで表示装置24に表示しない処理をすることができる。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図15で示すフローチャートで示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。
【0176】
続いて、図15を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第1応用方法について説明する。
【0177】
ボルト締結の作業者への教習に先立ち、システム11を起動する。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。一方、ひずみ値のログに基づき測定装置21において軸力値のログやトルク値のログを算出している場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ひずみ値のログとともに軸力値のログおよびトルク値のログを取得することができる。
【0178】
コンピュータ22は、図15のステップS81に示すように、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて増大する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、上記ログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0179】
ステップS81で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を締結操作中のボルト16と判別する(ステップS82)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に操作中のボルト16を判別することができる。なお、本実施形態において、コンピュータ22は、作業者がボルト16の締結操作を行っている間に、表示装置24の表示機能をオフとしている。このため、コンピュータ22は、締結操作中のボルトの判別結果をリアルタイムで表示装置24に表示することはない。
【0180】
本実施形態において、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、この締結操作中のボルト16の判別に加えて、さらに、ボルト締めの周回数を判定することができる。コンピュータ22は、作業者が最初に締結操作を行ったボルト16を基準ボルトと認定する。コンピュータ22は、複数のボルト16のうち基準ボルトを含む所定数のボルト16が締結操作されたと判別された際に、周回数を1として判定する(ステップS83)。その際、所定数は、1以上で適宜な数を設定することができ、例えば、2~6、好ましくは3~5の数である。
【0181】
所定数として4を設定したとして以下に説明する。作業者が最初に第1ボルト16Aを締結操作し、第2ボルト16Bを締結操作し、次に第3ボルト16Cを締結操作し、第4ボルト16Dを締結操作し、第5ボルト16Eを締結操作したとする。その際、コンピュータ22は、周回数を1として判定する。なお、第2~第5ボルト16B~16Eの締結操作の順番は問わないものとし、並び順以外の順番で締結操作を行った場合でも、4個のボルト16を締結操作すれば周回数を1と判定する。
【0182】
作業者がこれに続いて第6ボルト16F、第7ボルト16G、第8ボルト16Hを締結操作した場合も、周回数1を維持する。次に、作業者が再び基準ボルトである第1ボルト16Aを締結操作した場合には、周回数を1加算して2とする(ステップS84)。作業者が基準ボルト以外のボルト16を操作した場合には、この周回数2を維持する。以後、作業者が基準ボルトである第1ボルト16Aに対して締結操作を行った場合に、周回数を1ずつ増加させる。
【0183】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、図15のステップS85に示すように、ボルト16の締結操作が完了したか否かを確認する。確認は、例えば、締結作業の完了後にコンピュータ22に対して作業者からの作業完了の入力を受けることで行ってもよいし、所定時間ボルトの操作がない場合にコンピュータ22が完了と判定してもよい。締結作業が完了している場合には、次のステップS86に進む。締結作業が完了していない場合には、ステップS81に戻る。
【0184】
コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、ステップS86において、締結操作を行ったボルト16の時系列に沿った表示を表示装置24にすることができる。この締結操作を行ったボルト16の時系列に沿った表示は、締結操作を行ったボルト16のログをまとめた表(例えば、図5に示すような表)の提示であってもよいし、図6図7に示すようなボルト16のイメージを示す画像中で、どのボルト16が締結されたかを太枠で囲んで示し、その時点のボルト16の締付け強さを示す値(トルク値、軸力値等)を表示しつつ、それを時系列に沿って順番に示すアニメーションの再生であってもよい。
【0185】
コンピュータ22は、周回数および締結操作時間に応じて、作業者の習熟度レベルを判定する。コンピュータ22は、例えば、周回数2以上となった場合に、作業者が高い習熟度レベルであることを表示装置24に表示する(ステップS87)。一方、周回数が1であったり、周回数が過剰に多かったりする場合(例えば、5以上)には、作業者が低い習熟度レベルであることを表示装置24に表示する(ステップS87)。以上で、複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第6応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に締結操作中のボルト16を判別する方法およびその第6応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその第6応用方法を実現してもよい。
【0186】
なお、本実施形態は、第1実施形態の変形例として、締結操作を行ったボルト16の判別結果、および締結操作の周回数を、締結操作が完了するまで非表示としているが、変形の態様としてはこれに限られるものではない。
【0187】
例えば、上記した第2実施形態において、ユーザの選択に基づき、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、締結操作を行ったボルト16の判別結果、対角締めの有無、対角ペア総発生回数、対角段階締めの有無、円周締めの有無、円周ペアの総発生回数、円周段階締めの有無、および締結操作時間を、締結操作が完了するまで非表示とし、締結操作が完了した後に表示装置24に表示してもよい。そのうち、締結操作を行ったボルト16の判別結果は、時系列に沿って表示装置24に表示してもよい。
【0188】
同様に、例えば、上記した第3~5実施形態において、ユーザの選択に基づき、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、各種結果を締結操作が完了するまで非表示とし、締結操作が完了した後に表示装置24に表示してもよい。そのうち、締結操作を行ったボルト16の判別結果は、時系列に沿って表示装置24に表示してもよい。
【0189】
本実施形態および上記変形によれば、以下のことがいえる。複数のボルト16から締結操作中のボルト16を判別する方法は、ユーザの選択に基づき、コンピュータ22により表示装置24の表示機能をオフにし、複数のボルト16の締結操作の完了後に、締結操作を行ったボルト16の判別結果を時系列に沿って表示装置24に表示する。
【0190】
この構成によれば、教習を受ける作業者が上級者である場合に、締結操作中のボルト16を表示装置24にあえて表示させることなく、締結作業の教習を受けることができる。これによって、表示装置24の画面に依存することなく、より高度な教習を受けたり、スキル(習熟度レベル)の判定を受けたりできる。また、上記の構成によれば、ボルト16の締結操作が完了した後に、表示装置24に締結操作を行ったボルト16の判別結果を時系列に沿って表示できる。これによって、教習等を受ける作業者は、作業の完了後にボルト16の締結の手順が適切であったか否かを確認することができる。
【0191】
[第7実施形態]
図16図17を参照して、第7実施形態のフランジ部ボルト締結システム11およびこれを用いた複数のボルト16から緩め操作中のボルト16を判別する方法およびそれを用いた応用方法について説明する。本実施形態は、第1実施形態を一部変形した変形例である。本実施形態では、上記実施形態とは異なり、締結操作中のボルト16を判別するのではなく、作業者が緩め操作を行っている緩め操作中のボルト16を判別する。コンピュータ22のハードディスクドライブ31には、図17で示すフローチャート等で示すアルゴリズムに基づいて作成されたソフトウェア(プログラム)がインストールされている。システム11は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を有する装置の一例である。
【0192】
作業者が行う緩め操作は、ボルト16のトルク値がゼロになるように一気に緩めることは望ましくない。
【0193】
すなわち、図2に示すように、第1フランジ部14および第2フランジ部15に対して第1~第8ボルト16A~16Hが適正なトルク値で締結されている場合に、第7ボルト16Gをトルク値が減少するように緩めたとする。その場合には、図16のグラフに示すように、第7ボルト16Gをトルク値が減少し、それによって第1フランジ部14と第2フランジ部15との間で発生する反発力が開放されることで、第7ボルト16Gの周囲に位置する第6ボルト16Fと第8ボルト16Hのトルク値(軸力値)が上昇する。これをボルトの弾性相互作用という。例えば、図16に示すように、仮に第7ボルト16Gのトルク値をゼロにするように一気に緩めた場合には、第6ボルト16Fおよび第8ボルト16Hは、弾性相互作用によってトルク値が約26%上昇することとなる(図16に、第7ボルト16Gの緩め開始時点と緩め終了時点を2点鎖線で示した。)。なお、図16のグラフでは、弾性相互作用を説明するための例として、第7ボルト16Gに続いて、第6ボルト16F、第8ボルト16Hの順に、トルク値がゼロになるように一気に緩めた場合を示している。
【0194】
このように、1個のボルト16を緩めると、ボルトの弾性相互作用によって周囲に隣接するボルト16のトルク値が上昇するため、仮に周方向に順番に徐々に緩める円周緩めによって、ボルト16を並び順に沿って周方向に順番に緩めていくと、1個のボルト16を緩める毎に、その周方向の前側に位置するボルト16のトルク値が上昇する。その結果、最後のボルト16を緩め終える前に、弾性相互作用によってトルク値が高くなり過ぎて、最終的に作業者がボルト17を回すことができなくなる事態を生じる。したがって、本実施形態のように、すでに締結された状態にあるボルト16を緩める際には、一気に緩めず、徐々に緩めることが望ましい。
【0195】
続いて、図17等を参照して、本実施形態のシステム11に用いられる複数のボルト16から緩め操作中のボルト16を判別する方法およびその応用方法、およびそれらを実行するプログラム(ソフトウェア)について説明する。
【0196】
本実施形態では、上記実施形態とは異なり、教習の開始前において、複数のボルト16のすべては、第1フランジ部14および第2フランジ部15に対して、適正なトルク値で締結されている。
【0197】
ボルト緩め作業の作業者への教習に先立ち、システム11およびコンピュータ22(ソフトウェア)を起動する。センサ18(ひずみゲージ)は、ボルト16のひずみ値を常時測定している。測定装置21は、例えば、1~3秒毎にセンサ18からひずみ値を取得する。測定装置21は、このように得られたひずみ値をログとして1~3秒毎に記憶する。測定装置21は、ボルト16毎にこれらひずみ値のログを記憶する。コンピュータ22の当該ソフトウェアは、測定装置21からひずみ値のログを取得するとともに、これらひずみ値のログに対応する軸力値のログやトルク値のログを算出する。
【0198】
コンピュータ22は、得られた複数のボルト16にそれぞれ対応する複数のトルク値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数のトルク値を判別する。本実施形態において、コンピュータ22は、閾値として例えば1~5Nmを記憶しているが、この閾値は、ボルト16の総数、直径、長さ等に応じてユーザが適宜に設定できる。コンピュータ22は、コンピュータ22で取得されるログから、第1~第8ボルト16A~16Hのうち候補になるボルト16に対応するトルク値を判別する。候補となるボルト16の数は、1~8個の任意の数であってよい。
【0199】
なお、この閾値の大きさは任意である。閾値が上記範囲よりも小さいと、緩め操作中のボルト16の候補をうまく選別することができなくなる。閾値が上記範囲よりも大きくなると、実際に緩め操作を行っているボルト16を検出できないことにつながる。
【0200】
ステップS91で例えば2~4個のトルク値が判別された場合には、コンピュータ22は、それら2~4個のトルク値のうち、最も大きく変動したトルク値に対応するボルト16を緩め操作中のボルト16と判別する(ステップS92)。このような判別手法をとることによって、コンピュータ22が確実に緩め操作中のボルト16を判別することができる。
【0201】
さらにコンピュータ22(当該ソフトウェア)は、この判別結果を表示装置24に表示する(ステップS92)。判別結果を表示装置24に表示するイメージは、図6図7とほぼ同様である。
【0202】
コンピュータ22は、ステップS91、S92に従い、現在第1ボルト16Aの緩め作業を行っていると判別した場合には、第1ボルト16Aのイメージ(アイコン)を四角の太枠によって囲んで強調する(図6参照)。次に、第5ボルト16Eの緩め作業を行っていると判別した場合には、第5ボルト16Eのイメージ(アイコン)を四角の太枠によって囲んで強調する(図7参照)。コンピュータ22は、例えば、現在のボルト16の締付け強さを示す値であるトルク値又は軸力値を、表示装置24の第1~第8ボルト16A~16Hのイメージ(アイコン)内又はその近傍に表示することができる(ステップS92)。トルク値又は軸力値の大きさは、図6図7に示すように、イメージ中のバーの色や柄で表現してもよいし、数値等で直接的に表してもよい。
【0203】
その結果、教習を受けている作業者は、現在操作中のボルト16のトルク値又は軸力値を確認しながら、ボルト16の緩め操作を実行することができる。作業者は、緩め操作しているボルト16の番号等を表示装置24上で確認しながら、緩め作業を進めることができる。
【0204】
本実施形態において、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、この締結操作中のボルト16の判別に加えて、さらに、ボルト締めの周回数を判定してもよい。コンピュータ22は、作業者が最初に締結操作を行ったボルト16を基準ボルトと認定する。コンピュータ22は、複数のボルト16のうち基準ボルトを含む所定数のボルトが緩め操作されたと判別された際に、周回数を1として判定する(ステップS13)。その際、所定数は、1以上で適宜な数を設定することができる。
【0205】
所定数として4を設定したとして以下に説明する。作業者が最初に第1ボルト16Aを緩め操作し、次に第5ボルト16Eを緩め操作し、次に第2ボルト16Bを緩め操作し、次に第6ボルト16Fを緩め操作し、次に第3ボルト16Cを緩め操作したとする。その際、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1として判定する。なお、第1~第3ボルト16A~16C、第5ボルト16E、第6ボルト16Fの締結操作の順番は問わないものとし、並び順以外の順番で締結操作を行った場合でも、4個のボルト16を締結操作すれば周回数を1と判定する。
【0206】
作業者がこれに続いて第7ボルト16G、第4ボルト16D、第8ボルト16Hを緩め操作した場合も、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数1を維持する。次に、作業者が再び基準ボルトである第1ボルト16Aを緩め操作した場合には、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1加算して2とする(ステップS94)。作業者が基準ボルト以外のボルト16を操作した場合には、この周回数2を維持する。以後、作業者が基準ボルトである第1ボルト16Aに対して緩め操作を行った場合に、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、周回数を1ずつ増加させる。コンピュータ22は、周回数をボルト16の緩め操作中およびボルト16の緩め操作の完了後のいずれのタイミングでも表示装置24に表示する(ステップS95)。このステップS95は、任意工程であり、行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0207】
作業者は、ボルト16のトルク値又は軸力値が適正値の範囲に入ったことを確認して、当該ボルト16の締付けを完了できる。完了後、作業者は、表示装置24の表示画面において、締付け完了後の各ボルト16のトルク値又は軸力値とともに、周回数を確認することができる。所定数として4以外の数が設定される場合でも、上記と同様に周回数が判定され、表示装置24に周回数が表示される。また、コンピュータ22は、周回数および締結操作時間に応じて、作業者の習熟度レベルおよび講評を判定する。コンピュータ22は、例えば、周回数2以上となった場合に、作業者が高い習熟度レベルにあることを表示装置24に表示する(ステップS96)。一方、周回数が1である場合等には、作業者が低い習熟度レベルにあることを表示装置24に表示する(ステップS96)。緩め操作時間は、短い方が高評価となる。コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、緩め操作時間が標準的な作業時間をオーバーしていた場合に、習熟度レベルを低く表示するとともに、以下のような講評(メッセージ)を表示装置24に表示することができる。
「慎重な施工は好ましいですが、もっと手順に慣れると作業の効率化が期待されます。」
【0208】
なお、このステップS96は、任意工程であり、行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0209】
さらに、コンピュータ22(当該ソフトウェア)は、順番に緩め操作がなされたボルト16が徐々に(段階的に)対角に緩められていること、すなわち対角緩めがなされているか否かを判定してもよい。すなわち、順番に緩め操作がなされたボルト16同士が対角位置にあるか否かを判定してもよい。
コンピュータ22は、例えばボルト16の総数が8である場合に、ボルト16同士のボルト番号の差が4である場合に、それらが対角位置にあるとして対角ペアとして認定する。対角ペアが認定されない場合には、対角緩めでないと判定する。
さらに、コンピュータ22は、異なる対角ペアが2以上あるか否かを判定する。異なる対角ペアが2以上ある場合には、コンピュータ22は、対角緩めと判定する。異なる対角ペアが1以下である場合には、コンピュータ22は、対角緩めでない判定することができる。なお、この対角緩めがなされているか否かを判定は、任意工程であり、行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0210】
以上で、複数のボルト16から緩め操作中のボルト16を判別する方法およびその応用方法を完了する。なお、本実施形態では、主としてトルク値を基準に緩め操作中のボルト16を判別する方法およびその応用方法を実現しているが、ボルト16に対応する締付け強さを示す値の他の例である軸力値を基準にボルト16を判別する方法およびその応用方法を実現してもよい。
【0211】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複数のボルトから緩め操作中のボルトを判別する方法は、フランジ部ボルト締結システム11を用いた。フランジ部ボルト締結システム11は、一対のフランジ部を締結可能な複数のボルト16のひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサ18と、複数のセンサ18で得られた複数のひずみ値から得られ複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータ22と、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置24と、を備える。複数のボルトから緩め操作中のボルトを判別する方法は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別し、コンピュータ22により前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を緩め操作中のボルト16と判別する。
【0212】
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フランジ部ボルト締結システム11に、以下の機能を実現させる。フランジ部ボルト締結システム11は、一対のフランジ部を締結可能な複数のボルト16のひずみ値をそれぞれ測定する複数のセンサ18と、複数のセンサ18で得られた複数のひずみ値から得られ複数のボルト16に対応する複数の締付け強さを示す値を取得するコンピュータ22と、前記複数の締付け強さを示す値を表示する表示装置24と、を備える。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータ22により前記複数の締付け強さを示す値のうち、所定の閾値を超えて減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値を判別する機能と、コンピュータ22により前記減少する方向に変動した複数の締付け強さを示す値のうち、最も大きく変動した締付け強さを示す値に対応するボルト16を緩め操作中のボルト16と判別する機能と、を実現させるプログラムを記録した。
【0213】
これらの構成によれば、コンピュータ22は、作業者が現在緩め操作しているボルト16を正確に判別することができる。これによって、コンピュータ22上に正確なログをとることができ、システム11を用いたその後の解析(段階的な緩め操作ができているか等)に有効に活用できる。
【0214】
また、上記構成によれば、ボルト緩め操作を行う作業者は、実際に緩めているボルト16の番号、位置を表示装置24の画面上で確認しながら、緩め作業を進めることができる。その結果、作業者は、緩め対象のボルト16が正しく緩められていることを画面上で確認しつつ、ボルト16の緩め作業を教習できる。コンピュータ22が現在緩め操作を行っているボルト16の現在の複数の締付け強さを示す値を表示装置24に表示するようにしている場合には、作業者は、現在の複数の締付け強さを示す値を確認しながら作業を進めることができる。また、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定にも用いることができる。
【0215】
コンピュータ22は、所定の時間間隔毎に前記複数のひずみ値から前記複数の締付け強さを示す値を取得する。この構成によれば、緩め操作中のボルト16の判別結果とともに、作業時間を作業者に報知することができる。これによって、短時間で作業を終えるようにすることを作業者に促すことができ、作業効率の向上をしつつボルト16の緩め作業の教習を行うことができる。また、作業者の現在のスキル(習熟度)の判定にも用いることができる。
【0216】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、上記実施形態同士を適宜に組み合わせて1つの発明を実現することもできるし、上記実施形態のすべてを組み合わせて1つの発明を実現することも当然にできる。
【符号の説明】
【0217】
11 システム
12 第1管
13 第2管
14 第1フランジ部
15 第2フランジ部
16 ボルト
17 ナット
18 センサ
19 シール部材
21 測定装置
22 コンピュータ
23 サーバ
24 表示装置
31 ハードディスクドライブ
41 入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17