IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スーチョワン シューホン オプトエレクトロニック テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板 図1
  • 特許-耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20230613BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C21/00 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520998
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2019075638
(87)【国際公開番号】W WO2020077925
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】201811201352.8
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519319808
【氏名又は名称】スーチョワン シューホン オプトエレクトロニック テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN XUHONG OPTOELECTRONIC TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.177, North Fubing Road Mianyang, Sichuan 621000, CN
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】沈子涵
(72)【発明者】
【氏名】劉再進
(72)【発明者】
【氏名】宮汝華
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116846(JP,A)
【文献】特開2012-148955(JP,A)
【文献】特表2013-513537(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108623147(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108314315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板であって、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:4~8.5%、B0.2~0.7%、ZrO:0%を含み、
0.3<T<2.0mm、0.5h≦t≦8hの場合、CSは、次の関係式
9.597Ln(t)+710≦CS≦-5.299t+50.28t+765を満たし、
式中、Tは前記保護ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであることを特徴とする、保護ガラス板。
【請求項2】
前記保護ガラスの厚さが0.3≦T≦1.1mm、好ましくは0.6≦T≦0.9mmであることを特徴とする、請求項1に記載の保護ガラス板。
【請求項3】
質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:12.5~14.8%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.2~0.7%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の保護ガラス板。
【請求項4】
質量百分率で、SiO :59.8~61.6%、Al :13.8~15.8%、Na O:12.8~14.5%、K O:4.5~5.8%、MgO:5.1~7.2%、B :0.4~0.6%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の保護ガラス板。
【請求項5】
前記保護ガラス板中のKO/Alの比は、0.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の保護ガラス板。
【請求項6】
前記保護ガラス板中のK O/Al の比は、0.35以下であることを特徴とする、請求項1に記載の保護ガラス板。
【請求項7】
前記保護ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~30mm、幅1~3mmであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項8】
耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板であって、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:4~8.5%、B0.2~0.7%を含み、
2.0mm≦T≦4.0mm、4h≦t≦150hの場合、CSは、次の関係式
0.003t-2.167t+858≦CS≦-61.4Ln(t)+1060を満たし、
式中、Tは前記保護ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであることを特徴とする、保護ガラス板。
【請求項9】
前記保護ガラスの厚さが2.5≦T≦3.5mmであることを特徴とする、請求項8に記載の保護ガラス板。
【請求項10】
質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:12.5~14.8%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.2~0.7%を含むことを特徴とする、請求項8に記載の保護ガラス板。
【請求項11】
質量百分率で、SiO :59.8~61.6%、Al :13.8~15.8%、Na O:12.8~14.5%、K O:4.5~5.8%、MgO:5.1~7.2%、B :0.4~0.6%を含むことを特徴とする、請求項8に記載の保護ガラス板。
【請求項12】
前記保護ガラス板中のKO/Alの比は、0.5以下であることを特徴とする、請求項8に記載の保護ガラス板。
【請求項13】
前記保護ガラス板中のK O/Al の比は、0.35以下であることを特徴とする、請求項8に記載の保護ガラス板。
【請求項14】
前記保護ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~30mm、幅1~3mmであることを特徴とする、請求項8~13のいずれか一項に記載の保護ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の分野、特に耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
化学強化ガラスは、イオン交換強化ガラスとも呼ばれ、その原理として、イオンの拡散メカニズム基づいてガラス表面の組成を変化させること、すなわち、ガラス表面のアルカリ金属イオンが溶融塩中の異なるアルカリ金属イオンによって置き換えられることにより、ガラス表面に圧縮応力層を形成させ、ガラスの強度を向上させる目的を達成する。ガラスの成分、イオン交換温度及び時間は、イオン交換強度に影響を与える主な要因である。他の強化法と比較して、イオン交換法は、変形がなく、強度が高く、切断可能であり、自己爆発がなく、耐衝撃性および耐表面摩耗性が向上するなどの利点を持っており、加工プロセスが簡単で歩留まりが高い。これらの利点から、イオン交換された化学強化ガラスは、モバイルスマートデバイスの保護用カバーガラス、タッチスクリーンの保護用カバーガラス、高速列車のフロントウィンドウやサイドウィンドウの保護用安全ガラスなどの分野で広く使用されている。
【0003】
近年来、モバイルスマートデバイス及びタッチスクリーンの保護用ガラスとして、大画面化の傾向がある。例えば、スマートフォンの画面は、従来の4.5インチから主流の5インチ、5.5インチ、さらには6インチ、6.5インチの超大画面になる傾向がある。同時に、スマートフォンの厚さも、従来の8.0、7.8mmから主流の7.2、7.0mm、さらには6.5、5.5mmの超薄型携帯電話になっている。さらに、車載タッチスクリーンガラスや高速列車のフロントウィンドウやサイドウィンドウの保護用安全ガラスとして、緊急時にガラスが衝撃を受けて破損した後、乗客の個人的な安全を保護するためにガラスの破片は顆粒状の粉末でなければならない。要するに、カバーガラスの強度、厚さ、及び破壊後の形態についてより厳しい要件が要求されている。
【発明の概要】
【0004】
イオン交換によってガラスの強度を高めることは、ガラス表面に顕著な強化効果がある。しかしながら、化学強化ガラス製品が破損すると、通常、破片は大きい。従来の研究者のほとんどは単に、ガラスの耐衝撃強度を改善すること、または衝撃を受けた後にガラスが破損する形態が安全要件を満たすことを如何に保証するかを考えていた。また、化学強化後にガラスの表面に表面圧縮応力(CS)が形成される。従来の研究者のほとんどは単に、表面圧縮応力(CS)と圧縮応力の深さの関係、または表面圧縮応力(CS)とガラス強度の関係のみを考えていた。
【0005】
実際の製造では、強度が高く、破裂粒子が小さい化学強化ガラスを得るために、化学強化ガラスの特性を十分に考慮する、必要がある。
【0006】
従来技術における上記の欠点を克服するために、本発明者らは、本発明のガラス板の材料配合処方を使用した上で、調製のプロセス条件を繰り返し調整することにより、ガラス板の化学強化後の表面圧縮応力(CS)、化学強化時間(t)、及びガラス板の厚さ(T)の三者間に一定の一次関数の関係があると結論づけた。また、本発明者らは、この関数をガラスの耐衝撃性およびガラスの破壊後の形態と組み合わせて、耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板を提供する。本発明のガラス板は耐衝撃性に優れ、破壊後のガラス粒子のサイズには一定の制御性がある。本発明の技術構成は以下からなる:
【0007】
第一方面において、本発明は、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:4~8.5%、B:0~1.0%、ZrO:0%を含む耐衝撃応力特性を備えたことを特徴とする保護ガラス板を提供し、
0.3<T<2.0mm、0.5h≦t≦8hの場合、CSは、次の関係式:
9.597Ln(t)+710≦CS≦-5.299t+50.28t+765を満たし、
式中、Tは前記ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであり、Lnは自然対数である。
【0008】
好ましくは、ガラスの厚さは0.3<T≦1.1mmであり、好ましくは、ガラスの厚さは0.6≦T≦0.9mmである。
【0009】
好ましくは、質量百分率で、B:0.2~0.7%を含み、より好ましくは、B:0.2~0.6%を含み、さらに好ましくは、B:0.3~0.6%を含み、最も好ましくは、B:0.4~0.6%を含む。
【0010】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%を含み、より好ましくは、SiO:59.5~62%を含み、さらに好ましくは、SiO:59.8~61.8%を含み、最も好ましくは、SiO:59.8~61.6%を含む。
【0011】
好ましくは、質量百分率で、Al:13.1~16.5%を含み、より好ましくは、Al:13.5~16.3%を含み、さらに好ましくは、Al:13.8~16%を含み、最も好ましくは、Al:13.8~15.8%を含む。
【0012】
好ましくは、質量百分率で、NaO:12.5~14.8%を含み、より好ましくは、NaO:12.5~14.5%を含み、さらに好ましくは、NaO:12.8~14.5%を含む。
【0013】
好ましくは、質量百分率で、KO:0.8~5.8%を含み、より好ましくは、KO:1.8~5.8%を含み、さらに好ましくは、KO:3.1~5.8%を含み、最も好ましくは、KO:4.5~5.8%を含む。
【0014】
好ましくは、質量百分率で、MgO:5~7.5%を含み、より好ましくは、MgO:5.1~7.4%を含み、さらに好ましくは、MgO:5.1~7.2%を含む。
【0015】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0~1.0%を含む。
【0016】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:12.5~14.8%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.2~0.7%を含む。
【0017】
より好ましくは、質量百分率で、SiO:59.8~61.6%、Al:13.8~15.8%、NaO:12.8~14.5%、KO:4.5~5.8%、MgO:5.1~7.2%、B:0.4~0.6%を含む。
【0018】
好ましくは、化学強化温度は380℃~450℃である。
【0019】
好ましくは、前記ガラス板中のKO/Alの比は、0.5以下である。より好ましくは前記ガラス板中のKO/Alの比は、0.35以下である。
【0020】
好ましくは、前記ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~30mm、幅1~3mmである。より好ましくは、前記ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~20mm、幅1~2mmである。
【0021】
第二方面において、本発明は、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:4~8.5%、B:0~1.0%、ZrO:0%を含む耐衝撃応力特性を備えたことを特徴とする保護ガラス板を提供し、
2.0mm≦T≦4.0mm、4h≦t≦150hの場合、CSは、次の関係式
0.003t-2.167t+858≦CS≦-61.4Ln(t)+1060を満たし、
式中、Tは前記ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであり、Lnは自然対数である。
【0022】
好ましくは、ガラスの厚さは2.5≦T≦3.5mmである。
【0023】
好ましくは、質量百分率で、B:0.2~0.7%を含み、より好ましくは、B:0.2~0.6%を含み、さらに好ましくは、B:0.3~0.6%を含み、最も好ましくは、B:0.4~0.6%を含む。
【0024】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%を含み、より好ましくは、SiO:59.5~62%を含み、さらに好ましくは、SiO:59.8~61.8%を含み、最も好ましくは、SiO:59.8~61.6%を含む。
【0025】
好ましくは、質量百分率で、Al:13.1~16.5%を含み、より好ましくは、Al:13.5~16.3%を含み、さらに好ましくは、Al:13.8~16%を含み、最も好ましくは、Al:13.8~15.8%を含む。
【0026】
好ましくは、質量百分率で、NaO:12.5~14.8%を含み、より好ましくは、NaO:12.5~14.5%を含み、さらに好ましくは、NaO:12.8~14.5%を含む。
【0027】
好ましくは、質量百分率で、KO:0.8~5.8%を含み、より好ましくは、KO:1.8~5.8%を含み、さらに好ましくは、KO:3.1~5.8%を含み、最も好ましくは、KO:4.5~5.8%を含む。
【0028】
好ましくは、質量百分率で、MgO:5~7.5%を含み、より好ましくは、MgO:5.1~7.4%を含み、さらに好ましくは、MgO:5.1~7.2%を含む。
【0029】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0~1.0%を含む。
【0030】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:12.5~14.8%、KO:0.8~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.2~0.7%を含む。
【0031】
好ましくは、質量百分率で、SiO:59.8~61.6%、Al:13.8~15.8%、NaO:12.8~14.5%、KO:4.5~5.8%、MgO:5.1~7.2%、B:0.4~0.6%を含む。
【0032】
好ましくは、化学強化温度は400℃~450℃であり、より好ましくは、化学強化温度は420℃である。
【0033】
好ましくは、前記ガラス板中のKO/Alの比は、0.5以下である。より好ましくは前記ガラス板中のKO/Alの比は、0.35以下である。
【0034】
好ましくは、前記ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~30mm、幅1~3mmである。より好ましくは、前記ガラス板の破壊後の最大破片サイズは、長さ10~20mm、幅1~2mmである。
【0035】
Zr4+イオンの半径が大きいため、ガラス構造においてネットワークのアウターボディ(または改変体)に属する。ケイ酸塩ガラスにおけるZrOの溶解度は小さいため、ガラスの粘度が上昇しやすくなる。本発明のガラス成分はZrOを含まないため、薄いガラス、特に極薄ガラス(厚さは通常0.3mm~0.4mmである)の引抜成形が保証できる。
【0036】
本発明に記載の厚さが0.3mmを超え2mm未満、及び厚さが2mm以上4mm以下の二つの保護ガラス板について、本発明の原料配合比を用いて得られたガラス板は、安定性に優れ、硬度が高く、耐候性が高く、均質であり、化学的強化性が高く、耐衝撃性が良く、ガラスの透明度及び光沢が高く、亀裂発生率が低く、ガラス液の粘度が低く、溶融性が良く、しかもガラスの化学的強化プロセス中のイオン交換速度が高められている。
【0037】
本発明の耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス基板において、KO/Alの質量比を制限することにより、より高い液相粘度及びより高いイオン交換性能を同時に実現することができ、さらに最適化された耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板を得ることができる。
【0038】
本発明のガラス板は、耐衝撃破壊試験の能力を有する。ガラスが破損した後の形態は、比較的均一なサイズを持つストリップまたは粉末粒子であり、破壊後のガラスストリップまたは粉末粒子のサイズは、イオン交換時間tの増加につれて減少する。破壊後の破片サイズが比較的に均一であることは、得られた保護ガラス板の表面応力の深さが十分であり、ガラス板が破壊強度に達する前に亀裂伝播が安定しており、亀裂がガラスの内部にゆっくりと伝播するに対して、ガラス表面で急速に伝播するからである。破壊後の最大破片サイズが小さいことは、本発明によって調製された保護ガラス板が高い耐亀裂性を有することを示している。
【0039】
化学強化温度を本発明の範囲内に制限すると、より大きい表面圧縮応力層の深さを得ることができるので、ガラスがよりよい強化性を有し、さらによリ優れた耐衝撃応力特性を有するようになる。
【0040】
厚さが0.3mmを超え2mm未満の保護ガラス板は、主にモバイルスマートデバイス及びタッチスクリーンの保護用ガラスとして使用されている。厚さが0.6mm以上0.9mm以下の場合、超薄性能を有すると共に優れた耐衝撃性をも有する。
【0041】
厚さが2mm以上4mm以下の保護ガラス板は、車載タッチスクリーンガラスまたは高速列車のフロントウィンドウ及びサイドウィンドウの保護用安全ガラスとして使用できる。本発明の保護ガラス板は、非常に高い安全性能を有するので、車載タッチスクリーン及び高速列車車窓に高い機械的強度及び耐衝撃強度を有させることができる。外力の衝撃を受けて破壊破損した場合、ガラス破片のサイズは小さく、比較的に均一であり、長さ10~30mm、幅1~3mmの範囲内に制御できるため、安全性が高い。高速列車の車窓ガラスとする場合、本発明のガラスの均質性が高いため、どの部分でも同じ屈折率を確保し、列車の高速運行中、乗客が眩むことや眩暈を避け、よりよい観光視野を与えることができる。
【0042】
厚さが0.3mmを超え2mm未満の保護ガラス板の場合、化学強化条件とガラス厚さが基本的に同じである条件下で、本発明の保護ガラス板は、比較例と比較して、一点落下高さ(Single point drop height)が最大5倍まで増加することができる。
【0043】
厚さが2mm以上4mm以下の保護ガラス板の場合、化学強化条件とガラス厚さが基本的に同じである条件下で、本発明の保護ガラス板は、比較例と比較して、表面圧縮応力が最大15%増加することができ、圧縮応力層の深さが最大45%大幅に増加することができる。
【0044】
本発明のガラス板は、モバイルスマートデバイスの保護用カバーガラス、タッチスクリーンの保護用カバーガラス、高速列車フロントウィンドウまたはサイドウィンドウの保護用安全ガラスに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、実施例8-1~8-6のドロップボールテストのガラス破壊効果図である。
図2図2は、実施例8-7~8-12のドロップボールテストのガラス破壊効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明における「表面圧縮応力(CS)」という用語は、ガラスの化学強化時、ガラスを溶融塩に置いて、ガラスの表層の半径の小さいカチオンと、溶融塩中の半径の大きいカチオンとを交換させ、最後にガラスの二つの外面に圧縮応力層を形成させ、通常のガラス表面に圧縮応力が形成し、強化されたガラスが外力を受ける時にまず表面の圧縮応力を相殺することで、荷重能力が向上し、風圧、冷熱、及び衝撃などに対するガラス自体の耐性が増強される。その圧縮応力層はすなわち、化学強化ガラスの「表面圧縮応力層」である。
【0047】
本発明における「圧縮応力層の深さ(DOL)」は、ガラスの化学強化の過程において、溶融塩中の半径の大きいカチオンとガラス中の半径の小さいカチオンとの交換の深さを指す。
【0048】
本発明における「化学強化時間(t)」は、ガラスが化学的強化処理される時間、すなわち、溶融塩中の半径の大きいカチオンとガラス中の半径の小さいカチオンが交換する時間を指す。
【0049】
本発明の一つの技術構成は、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:5~7.5%、B:0~1.0%、ZrO:0%を含む耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板である。その厚さTは0.3mmを超え、2.0mm未満であり、化学強化時間tは0.5時間以上8時間以下であり、化学強化温度は380~450℃であり、その化学強化後の表面圧縮応力値CSは、関係式:9.597Ln(t)+710≦CS≦-5.299t+50.28t+765を満たし、式中、Lnは自然対数である。一定時間の化学的強化の後、端点としての2つの式について、その時点での値がそれぞれ算出され、ガラス板の表面圧縮応力CSは二つの値の間にある。
【0050】
その表面圧縮応力CSは好ましくは700MPa以上850MPa以下であり、より好ましくは750MPa以上850MPa以下である。その圧縮応力層の深さDOLは好ましくは30μm以上であり、より好ましくは35μm以上である。
【0051】
好ましい技術構成として、前記ガラスの厚さは0.6mm以上0.9mm以下である。
【0052】
また、本発明の一つの技術構成として、この耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板は、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.8~15.8%、NaO:11.5~15.5%、KO:4.5~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.4~0.6%、ZrO:0%を含む。
【0053】
一つの好ましい技術構成として、ガラス板中のKOとAlの比は、0.5以下であり、ガラス破壊後の最大破片サイズは、長さ10~20mm、幅1~2mmである。
【0054】
本発明の別の一つの技術構成は、質量百分率で、SiO:59~63.5%、Al:13.1~16.5%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~6%、MgO:5~7.5%、B:0~1.0%、ZrO:0%を含む耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板である。その厚さTは2mm以上4mm以下であり、化学強化時間tは4時間以上150時間以下であり、化学強化温度は400~450℃であり、その化学強化後の表面圧縮応力値CSは、関係式:0.003t-2.167t+858≦CS≦-61.4Ln(t)+1060を満たし、式中、Lnは自然対数である。一定時間の化学的強化の後、端点としての2つの式について、その時点での値がそれぞれ算出され、ガラス板の表面圧縮応力CSは二つの値の間にある。
【0055】
その表面圧縮応力CSは好ましくは800MPa以上950MPa以下であり、より好ましくは850MPa以上950MPa以下である。その圧縮応力層の深さDOLは好ましくは55μm以上であり、より好ましくは80μm以上である。
【0056】
好ましい技術構成として、前記ガラスの厚さは2.5mm以上3.5mm以下である。
【0057】
また、本発明の一つの技術構成として、耐衝撃応力特性を備えた保護ガラス板は、質量百分率で、SiO:59.5~62.5%、Al:13.8~15.8%、NaO:11.5~15.5%、KO:4.5~5.8%、MgO:5~7.5%、B:0.4~0.6%、ZrO:0%を含む。
【0058】
一つの好ましい技術構成として、ガラス板中のKOとAlの比は、0.5以下であり、ガラス破壊後の最大破片サイズは、長さ10~20mm、幅1~2mmである。
【0059】
本発明のガラス板は、様々な原料を配合比に応じて混合して調製した板ガラスを化学強化したガラス板である。
【0060】
本発明の板ガラスの製造方法は次の通りである。まず、原料配合処方における各成分の比率に応じて調合し、混合した原料を高温下で加熱溶融し、溶融温度を1500℃~1650℃にして、最後にガラス液を形成させる。溶融したガラス液を、550℃~700℃に予熱した金型に流し込み、ガラスを金型と一緒に焼鈍炉に入れて焼鈍・冷却し、焼鈍温度は630℃~650℃であり、この温度で30~60分間保温した後、自然に120℃~80℃に冷却させて本発明の板ガラスが得られる。
【0061】
化学強化の方法として、ガラス板表層のNaOと溶融塩中のKOをイオン交換できる限り、特に限定されない。例えば、ガラス板を、加熱した硝酸カリウム(KNO)溶融塩に浸す方法が挙げられる。
【0062】
ガラス成分、イオン交換温度及び時間は、イオン交換の強度に影響を与える主な要因であり、ガラスの成分及び各成分の含有量は、イオン交換に異なる影響を与える。次に、本発明のガラスの組成について説明し、各成分の含有量を質量百分率で表す。
【0063】
SiOはガラス骨格を構成する成分であり、必須である。SiOの含有量が58%未満の場合、ガラスの安定性および硬度が低いか、耐候性が低いため、59%以上が好ましく、59.5%以上がより好ましく、59.8%以上が最も好ましい。SiOの含有量が65%を超えると、ガラスの粘度が高くなり、溶融性が低下するので、63.5%以下が好ましく、62.5%以下がより好ましく、61.6%以下が最も好ましい。
【0064】
Alはイオン交換速度を高める成分であり、必須である。11.5%未満の場合、イオン交換速度が低いため、11.5%以上が好ましく、13.1%以上がより好ましく、13.8%以上が最も好ましい。Alの含有量が18%を超えると、ガラスの粘度が高くなり、均一な溶融が難しくなるので、16.5%以下が好ましく、15.8%以下が最も好ましい。
【0065】
NaOは、イオン交換により表面圧縮応力層を形成し、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。10%未満の場合、イオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することは困難であるため、11.5%以上が好ましく、12.5%以上がより好ましく、12.8%以上が典型的である。NaOが16%を超えると、Tg(ガラス転移温度)と共に歪み点が低下するか、耐候性が低くなるので、15.5%以下が好ましく、14.8%以下がより好ましく、14.5%以下が典型的である。
【0066】
Oは、ガラスの透明度と光沢を高め、ガラスの溶融性を向上させることができる成分であり、必要なCSとDOLを得るために化学強化におけるイオン交換速度を高める成分でもあり、必須である。0.5%未満の場合、溶融性が低いか、イオン交換速度が低いので、0.8%以上が好ましく、4.5%以上が典型的である。KOが7%を超えると、耐候性が低くなるので、6%以下が好ましく、5.8%以下が典型的である。
【0067】
MgOは、イオン交換速度を低下させる効果の弱い成分であり、少なくとも2%以上のMgOを含まなければならない。MgOが2%未満の場合、溶融性が低下するので、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、5.1%以上が典型的である。MgOが10%を超えると、イオン交換速度が低くなるので、8.5%以下が好ましく、7.5%以下がより好ましく、7.2%以下が典型的である。
【0068】
は、高温での溶融性またはガラス強度を向上させるために、1%以下で含まれる場合がある。1%を超えると、均質なガラスが得られ難くなり、ガラスの成形が困難になる場合があるので、0.7%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましく、かつ0.2%以上が好ましく、0.4%以上がより好ましい。
【0069】
一つの具体的な実施形態では、表1の1番目の組成比に示すように、SiO:59~63.5%、Al:13.8~15.8%、NaO:11.5~15.5%、KO:3.1~5.8%、MgO:4~8.5%、B:0~0.8%、ZrO:0%が含まれている。その中で、Alの含有量は13.8~15.8%であり、最も好ましい。Alは、イオン交換速度を高めることができ、この含有量範囲内である場合、ガラスの粘度は適切であり、均質な溶融に寄与する。この実施形態で調製された強化ガラスは、一点落下高さが大きく、ガラスの耐衝撃強度が大きい。
【0070】
一つの具体的な実施形態では、表1の3番目の組成比に示すように、SiO:59~63.5%、Al:11.5~16.5%、NaO:12.8~14.5%、KO:3.1~5.8%、MgO:4~8.5%、B:0~0.8%、ZrO:0%が含まれている。その中で、NaOの含有量は12.8~14.5%であり、最も好ましい。NaOは、強化ガラスの表面圧縮応力層を形成することができる。このNaOの含有量範囲内である場合、ガラスの溶融性および耐候性が高く、Tg(ガラス転移温度)と共に歪み点が低下することはない。この実施形態で調製された強化ガラスは、表面圧縮応力が大きく、圧縮応力層の深さが大きく、一点落下高さが大きく、ガラスの耐衝撃強度が大きい。
【0071】
一つの具体的な実施形態では、表1の9番目の組成比に示すように、SiO:59.5~62.5%、Al:13.5~16.3%、NaO:11.5~15.5%、KO:0.8~5.8%、MgO:5.1~7.2%、B:0~1%、ZrO:0%が含まれている。その中で、MgOの含有量は5.1~7.2%であり、最も好ましい。MgOは、イオン交換速度を低下させる効果が弱く、このMgOの含有量範囲内である場合、ガラスの溶融性が高く、イオン交換速度の低下が遅い。この実施形態で調製された強化ガラスは、焼き戻し性能が良く、表面圧縮応力及び圧縮応力層の深さが大きく、一点落下高さが大きく、ガラスの耐衝撃強度が良い。
【実施例
【0072】
次は、実施例を組み合わせて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0073】
表1の実施例1~7の成分比に応じて調合し、成分含有量の異なるガラス板が得られた。また、比較例1~5の各成分比も示されている。
【0074】
【表1】
【0075】
1、一組の実施例及び比較例のガラス板の具体的な調製プロセスは次の通りである。上記の表1の成分比に応じて調合した。同時に、混合した原料を密封袋に入れて密封袋内で均一に混合してから、プラチナるつぼに入れて溶融した。次に、プラチナるつぼを型番GWL-1600TS高温サンプル溶融炉に入れ、熔融温度1620℃で溶融した。溶融ガラスを金型に流し込み、ガラスを金型と一緒に焼鈍炉に入れて精密な焼鈍・冷却を行い、焼鈍温度は630℃であり、この温度で30分間保温した後、自然に40℃に冷却させ、表2の厚さを有するガラスが得られた。そして、ガラス板を切断して研磨し、50mm×50mm及び100mm×80mmのサンプルを作製した。各ガラスについて、二つの仕様のサンプルでそれぞれ20枚を作製した。最後に、表2の化学強化条件に従って、硝酸カリウム溶解塩中でそれぞれ化学強化して、実施例A1~A10及び比較例A11~A21を得た。
【0076】
【表2】
【0077】
0.3<T<2.0mm、0.5h≦t≦8hの場合、CSは、次の関係式(1):
9.597Ln(t)+710≦CS≦-5.299t+50.28t+765を満たし、
式中、Tは前記ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであり、Lnは自然対数である。
【0078】
表3は、関係式(1)に従って計算された上記の厚さ範囲内のガラスの、次の時間の化学強化後の表面圧縮応力CSの範囲の両端値を示す。
【0079】
【表3】
【0080】
サイズが50mm×50mmである各実施例及び比較例を化学強化した後、表面圧縮応力(CS)を型番FSM-6000化学応力試験機で測定した。具体的な試験結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
表4から分かるように、化学強化条件及びガラス厚さが基本的に同じであるという条件下で、比較例と比較して、本発明の実施例のガラス板は、表面圧縮応力が最大5.5%増加することができ、圧縮応力層の深さが最大18%大幅に増加することができる。
【0083】
サイズが100mm×80mmである各実施例及び比較例を化学強化した後、型番MK-9968ドロップボールテストマシンを使用して一点ドロップボールテストを行った。一点複数回ドロップボールは130gの鋼球を使用し、ベース高さが15cmであり、ガラスが割れるまでセンターポイントで3回落下し、毎回5cmずつ上昇した。テストサンプルは20枚であった。具体的な試験結果を表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5から分かるように、化学強化条件及びガラス厚さが基本的に同じであるという条件下で、比較例と比較して、本発明の実施例のガラス板は、一点落下高さが50%~250%と増加した。
【0086】
表4及び表5から明らかに、本発明の実施例A1~A10に示される各成分のガラス板は、化学強化条件及びガラス厚さが基本的に同じであるという条件下で、その表面圧縮応力CS、応力層の深さDOL、一点落下高さがいずれも比較例より高い。比較例A11~A21は、異なる化学強化条件で強化されたが、表面圧縮応力(CS)は依然として本発明によって与えられた応力関係式を満たし、これは、関係式の合理性を直接に証明している。さらに、比較例A11~A21は応力関係式を満たしているが、それらの成分は本発明によって与えられた範囲値から外れており、ドロップボール試験から、その耐衝撃性が劣ることが分かる。
【0087】
2、別の組の実施例及び比較例のガラス板の具体的な調製プロセスは次の通りである。上記の表1の成分比に応じて調合した。同時に、混合した原料を密封袋に入れて密封袋内で均一に混合してから、プラチナるつぼに入れて溶融した。次に、プラチナるつぼを型番GWL-1600TS高温サンプル溶融炉に入れ、熔融温度1620℃で溶融した。溶融ガラスを金型に流し込み、ガラスを金型と一緒に焼鈍炉に入れて精密な焼鈍・冷却を行い、焼鈍温度は630℃であり、この温度で30分間保温した後、自然に40℃に冷却させ、表2の厚さを有するガラスが得られた。そして、ガラス板を切断して研磨し、50mm×50mmのサンプルを作製した。各ガラスについて20枚を作製した。最後に、表6の化学強化条件に従って、硝酸カリウム溶解塩中でそれぞれ化学強化して、実施例B1~B10及び比較例B11~B21を得た。
【0088】
【表6】
【0089】
2.0mm≦T≦4.0mm、4h≦t≦150hの場合、CSは、次の関係式(2):
0.003t-2.167t+858≦CS≦-61.4Ln(t)+1060を満たし、
式中、Tは前記ガラス板の厚さを表し、単位はmmであり、tは化学強化時間を表し、単位はhであり、CSは化学強化作用によって生成された表面圧縮応力を表し、単位はMPaであり、Lnは自然対数である。
【0090】
表7は、関係式(2)に従って計算された上記の厚さ範囲内のガラスの、次の時間の化学強化後の表面圧縮応力(CS)の範囲の両端値を示す。
【0091】
【表7】
【0092】
サイズが50mm×50mmである各実施例及び比較例を化学強化した後、表面圧縮応力(CS)を型番FSM-6000化学応力試験機で測定した。具体的な試験結果を表8に示す。
【0093】
【表8】
【0094】
表8から分かるように、化学強化条件及びガラス厚さが基本的に同じであるという条件下で、比較例と比較して、本発明の実施例B1~B10に示される各成分のガラス板は、表面圧縮応力CSが最大8.5%増加することができ、圧縮応力層の深さDOLが最大32%増加することができる。比較例B11~B21は異なる化学強化条件で強化されたが、その表面圧縮応力(CS)が依然として本発明によって与えられた応力関係式を満たしている。
【0095】
表8の中の実施例と比較例を比較してさらに分かるように、化学強化温度及び時間はガラスの強度に影響を与える重要な要素であり、化学強化温度が高く、強化時間が長いほど、ガラスの強度が高く、耐衝撃性がより優れる。実際の製造では、優れた性能を有する化学強化ガラスを得るには、時間コストとプロセスコストを考慮に入れる上で最適な化学強化条件を選択する必要がある。
【0096】
3、上記の表1の8番目の成分比に応じて調合した。同時に、混合した原料を密封袋に入れて密封袋内で均一に混合してから、プラチナるつぼに入れて溶融し、溶融したガラス液を金型に流し込み、ガラスを金型と一緒に焼鈍炉に入れて精密な焼鈍・冷却を行い、表9の厚さを有するガラスが得られた。そして、ガラス板を切断して研磨し、50mm×50mm及び145m×80mmのサンプルを作製した。その中で、50mm×50mmサイズの各実施例について20枚ずつ作製し、145m×80mmサイズの各実施例について5枚ずつ作製した。最後に、表9の化学強化条件に従って、硝酸カリウム溶解塩中でそれぞれ化学強化した。
【0097】
【表9】
【0098】
表10は、上記関係式(2)に従って計算された上記の厚さ範囲内のガラスの、次の時間の化学強化後の表面圧縮応力CSの範囲の両端値を示す。
【0099】
【表10】
【0100】
サイズが50mm×50mmである実施例8-1~8-12を化学強化した後、表面圧縮応力(CS)を型番FSM-6000化学応力試験機で測定した。具体的な試験結果を表11に示す。
【0101】
【表11】
【0102】
サイズが145mm×80mmである各実施例を化学強化した後、型番MK-9968ドロップボールテストマシンを使用して一点ドロップボールテストを行った。一点複数回ドロップボールは512gの鋼球を使用し、ベース高さが60cmであり、ガラスが割れるまでセンターポイントで3回落下した。テストサンプルは5枚であった。最後にガラスの形態及び最大破片サイズを記録した。具体的な試験結果を表12、および図1図2に示す。
【0103】
【表12】
【0104】
表12及び図1図2から分かるように、本発明の成分でのガラスの破壊後、ガラスストリップまたは粉末粒子のサイズは、イオン交換時間tの増加につれて減少し、ガラス破片のサイズを、長さ10~30mm、幅1~3mmの範囲内に制御することができる。
図1
図2