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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】末梢血管組織改変システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021545927
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2020051407
(87)【国際公開番号】W WO2020170176
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/807,574
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オガタ ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー スティーヴン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04998933(US,A)
【文献】特表2016-509942(JP,A)
【文献】特開平10-024049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢血管組織改変システムであって、
高周波エネルギー源と、
患者の末梢血管に進入するように構成され、前記高周波エネルギー源に連結し、第1近位端と第1遠位端との間で第1長さ方向に沿って延びる第1長尺部材であって、前記第1長さ方向に沿って延びるルーメンと、前記第1遠位端に近接し前記第1長尺部材の外表面に配置され前記高周波エネルギー源に電気的に連結された遠位電極と、を含む第1長尺部材と、
前記第1長尺部材の前記ルーメンを通って前記末梢血管内に挿入するように構成され、前記高周波エネルギー源に連結し、第2近位端とチップ電極を備える第2遠位端との間で第2長さ方向に沿って延びる第2長尺部材であって、前記第1長尺部材に対して移動可能であり、高周波エネルギーを送達するために前記遠位電極と前記チップ電極との間にバイポーラ配列を形成する第2長尺部材と、を備え、
前記高周波エネルギー源による高周波活性化中においては、この高周波活性化中に発生したプラズマおよび前記プラズマにより生じた衝撃波エネルギーが、前記第1長尺部材の前記第1遠位端から外に向けられるように、前記チップ電極は、前記第1長尺部材の内部に配置されるか、又は前記第1長尺部材の前記第1遠位端に配置されるか、のいずれかである末梢血管組織改変システム。
【請求項2】
前記第1長尺部材の外径は0.035インチである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1長尺部材の内径は0.014インチである請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1長尺部材は、編組状もしくはコイル状線芯、又はハイポチューブ芯を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2長尺部材の外径は0.014インチである請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記チップ電極は、凹状、テーパ状、又はボール状の形状を有する請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月19日出願の米国仮特許出願第62/807,574号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本技術は末梢血管組織改変装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性完全閉塞(CTO)とは血管の完全な閉鎖であり、適時に治療を行わないと重篤な結果を招く可能性がある。アテローム性プラークや古い血栓が閉鎖の原因と成り得る。慢性完全閉塞の治療は、特に末梢動脈では困難である。CTOの治療には、高周波エネルギーによる解決手段が採用されている。しかし、このような解決手段は、末梢動脈を扱う場合には適用範囲が限定的である。
【0004】
最も難易度の高い末梢動脈のCTOに対して満足のいく結果を出せる利用可能な戦略はこれまでにはない。硬質の石灰化した閉塞の場合、血管再建術は面倒で時間の掛かる手技となる。そのため、末梢動脈の閉塞物質を切除又は破壊するための、安全で効果的かつ迅速な改良システム及び方法が必要とされている。現在の技術の欠点がなく、動脈などの末梢血管のCTOを再開通する代替的な技術及び装置があれば有益である。
【発明の概要】
【0005】
末梢血管組織改変システムは高周波エネルギー源を備える。第1長尺部材は患者の末梢血管に進入するように構成されており、高周波エネルギー源に連結し、第1近位端と第1遠位端との間で第1長さに沿って延びる。第1長尺部材は、第1長さに沿って延びる内側ルーメン、及び第1遠位端に近接し第1長尺部材の外表面に配置して高周波エネルギー源に電気的に連結した遠位電極を備える。第2長尺部材は、第1長尺部材のルーメンを通って末梢血管内に挿入するように構成され、高周波エネルギー源に連結されている。第2長尺部材は、第2近位端と、チップ電極を備える第2遠位端との間で第2長さに沿って延びる。第2長尺部材は、第1長尺部材に対して移動可能であり、高周波エネルギーを送達するために、遠位電極とチップ電極との間にバイポーラ配列を形成する。
【0006】
患者の末梢血管内組織を改変する方法には第1長尺部材を提供する工程が含まれ、第1長尺部材は第1近位端と、その外表面上において遠位電極が近接して配置された第1遠位端との間で第1長さに沿って延びる。第2長尺部材は、第1長尺部材の内側ルーメンに挿入され、第2長尺部材は、第2近位端とチップ電極を備える第2遠位端との間で第2長さに沿って延び、第1遠位端と第2遠位端とがほぼ揃えられる。第1長尺部材及び第2長尺部材は末梢血管内の位置まで進められる。第1長尺部材及び第2長尺部材はエネルギー源に連結され、遠位電極とチップ電極とが高周波エネルギー源に電気的に連結される。遠位電極及びチップ電極に高周波エネルギーを印加し、末梢血管内の組織を改変する。
【0007】
末梢血管組織改変システムは高周波エネルギー源を備える。長尺部材は、末梢血管に進入するように構成され、高周波エネルギー源に連結されている。長尺部材は近位端と遠位端の間で長さ方向に沿って延びる。長尺部材は、その長さ方向に沿って延びる内側ルーメンを備える。少なくとも2つの電極はエネルギー源に電気的に連結され、内側ルーメンの長さに沿って延びる。前記少なくとも2つの電極は、第1遠位端に近接した長尺部材の遠位端の外表面に配置したチップを有する。前記少なくとも2つの電極は、高周波エネルギーを送達するために、長尺部材の遠位端においてバイポーラ配列で構成されている。
【0008】
末梢血管内組織を改変する方法には、長尺部材を末梢血管内に進入させる工程が含まれる。長尺部材は近位端と遠位端の間で長さ方向に沿って延びる。長尺部材は、長さ方向に沿って延びる内側ルーメン、及び内側ルーメンの長さ方向に沿って延びる少なくとも2つの電極を備える。前記少なくとも2つの電極は、遠位端に近接し長尺部材の遠位端の外表面に配置したチップを有する。前記少なくとも2つの電極は、高周波エネルギーを送達するために、長尺部材の遠位端においてバイポーラ配列で構成されている。長尺部材は高周波エネルギー源に連結され、前記少なくとも2つの電極が高周波エネルギー源に電気的に連結される。前記少なくとも2つの電極に高周波エネルギーを印加し、末梢血管内の組織を改変する。
【0009】
この技術により、動脈などの末梢血管を治療するための、より効率的かつ効果的な装置及び方法が提供できるといった、多くの利点が得られる。例を挙げると、本技術の例示的な装置は以下のために使用してもよい:(1)局所カテーテル吸引の有無に関わらず、軟らかい血栓又は成熟した血栓を気化し、除去する;(2)深部静脈の動脈血化(DVA)を行い、遠位末梢動脈と隣接静脈との接続を容易にし、静脈網(例えば、足内)への動脈血のシャントを行う;(3)内膜下の空間から遠位真腔への再進入を行う;及び/又は(4)血管内で内膜組織並びに/又は内膜及び/もしくは内側カルシウムを改変し、衝撃波エネルギーを介して経皮的経腔的血管形成術(PTA)バルーン拡張及び/又は薬剤コートバルーン(DCB)/薬剤溶出ステント(DES)薬剤浸透/取り込みを促進する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】末梢血管組織改変システムの1例を示す部分上面図及び部分ブロック図である。
【0011】
図2図1に示した末梢血管組織改変システムの例で採用し得る第1長尺部材の断面図である。
【0012】
図3A図1に示した末梢血管組織改変システムの例で採用し得る第1長尺部材の長手方向の図である。
図3B図1に示した末梢血管組織改変システムの例で採用し得る第1長尺部材の長手方向の図である。
【0013】
図4A図1に示した末梢血管組織改変システムの例で代替的に採用し得る2つのバイポーラ電極を有する第1長尺部材の別の例の遠位チップの斜視図である。
図4B図1に示した末梢血管組織改変システムの例で代替的に採用し得る2つのバイポーラ電極を有する第1長尺部材の別の例の遠位チップの斜視図である。
図4C図1に示した末梢血管組織改変システムの例で代替的に採用し得る2つのバイポーラ電極を有する第1長尺部材の別の例の遠位チップの斜視図である。
図4D図1に示した末梢血管組織改変システムの例で代替的に採用し得る2つのバイポーラ電極を有する第1長尺部材の別の例の遠位チップの斜視図である。
【0014】
図5図1に示した末梢血管組織改変システムの例で採用し得る第1長尺部材の更に別の例の斜視図である。
【0015】
図6図1に示した末梢血管組織改変システムで使用し得るルアー/コネクタの斜視透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
患者において組織を改変し、動脈、静脈、又は他の脈管などの末梢血管を治療するための末梢血管組織改変システム10の1例を図1に示す。例を挙げると、末梢血管組織改変システム10は、患者の大腿動脈、膝窩動脈、腸骨動脈、脛骨動脈、静脈、又は他の脈管を治療するために利用できる。1例では、末梢血管組織改変システム10は、バイポーラ高周波(RF)エネルギーのショートバーストにより、慢性完全閉塞(CTO)などの膝下(BTK)病変を治療するために利用される。高周波エネルギーについて説明しているが、例を挙げると、超音波、レーザ、マイクロ波エネルギーなどの他のエネルギー様式を利用してもよい。末梢血管組織改変システム10は、第1長尺部材12、第2長尺部材14、連結器16、及び高周波エネルギー源18を備えるが、組織改変システム10は、本明細書に記載の追加例により示されるような他のタイプ及び/又は個数の要素、部品、及び/又は装置を他の構成で備えることも可能である。例を挙げると、第2長尺部材14が必要ないように、図4に示すような第1長尺部材112を利用できる。別の例として、従来のカテーテル設計を用いて形成した第1長尺部材212を使用できる。また、このシステムには他の改変も期待できる。
【0017】
この例示的な技術は、患者の末梢動脈、静脈、又は脈管を治療するために、より効率的かつ効果的な組織改変を行い、末梢慢性完全閉塞を超えた側まで従来のガイドワイヤを腔内に配置し易くするといった、多くの利点がある。本技術の装置は、例えば直径0.035インチのガイドワイヤとの併用を意図した市販カテーテル及び装置と互換性があり、患者の左右の大腿骨、橈骨、尺骨、又は足の血管アクセス技術と互換性がある。
【0018】
図1~3をより具体的に参照すると、この例では、末梢血管組織改変システム10は第1長尺部材12を備え、この第1長尺部材12は、患者の体内に、例を挙げると大腿動脈、膝窩動脈、脛骨動脈、腸骨動脈、又は静脈などの末梢血管内に進入するように構成されているが、患者の他の末梢血管に挿入してもよい。1例では、末梢血管には、治療が必要な閉塞や病変が含まれる場合もある。
【0019】
この例では、第1長尺部材12は約0.035インチ以下の外径20を有する中空ワイヤであるが、他の寸法であってもよい。本開示の目的上、用語「約」は、記載した値を補正するために使用する場合、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%を意味する。第1長尺部材12の外径20は、患者の末梢血管、例えば末梢動脈に挿入するように構成されている。より具体的に、図2及び図3を参照すると、第1長尺部材12は、第1長尺部材12の近位端24と遠位端26との間に延びるルーメン22を備える。1例では、第1長尺部材12は、近位端24と遠位端26との間に延びる長さが約90~150cmであるが、用途に応じて他の長さであってもよい。
【0020】
ルーメン22は、第1長尺部材12の内径28を構成する。内径28は、例を挙げると、第2長尺部材14の挿入を可能にするサイズであるが、ルーメン22は、他の種類及び/又は個数の他の要素、例えば他のカテーテル、ガイドワイヤ、マイクロカテーテル、又はプローブを受け入れるようにしてもよい。この例では、内径28は、直径が約0.014インチの要素を通過させるように構成されているが、他の寸法であってもよい。
【0021】
次に、より具体的に、図2を参照すると、この例では、第1長尺部材12は、コイル状及び/又は編組状芯30を用いて構成されているが、他の例では、第1長尺部材12は、例示に過ぎないが、レーザカットしたハイポチューブなどの他の材料から構成してもよい。芯30に編組状素線又はハイポチューブを使用すると、有利にも、第1長尺部材12を患者の末梢動脈に配置するために必要な剛性、トルク、耐キンク性、及び柔軟性が得られる。芯30は、有利にも、第1長尺部材12の押進、操縦性、及び追従を十分にし、そして、組織を治療するために使用し得る互換性のあるカテーテル又は他の装置を第1長尺部材12に沿わせて引き続いて送達することを可能にする。
【0022】
1例では、芯30は、例えば、16本のフラットな304ステンレス素線から構成した編組状素線であり、近位端24近傍では、より高い剛性及びより高い押進特性を得るために1インチ当たりの交差(PIC)数は40~80個であり、遠位端26では、より高い柔軟性を得るためにPIC数はより多い130~180個に推移している。しかし芯30は、他の材料を用いて、他の構成の他のタイプ及び/又は個数の編組状素線から形成してもよい。別の例では、芯30はピッチが変化するコイル状素線を有する。あるいは、別の例では、芯30は、第1長尺部材12の長さに沿って柔軟性特性を可変にするためにコイル状又は「ギザギザ状」パターンでレーザカットしたハイポチューブを備える。
【0023】
この例では、第1長尺部材12の芯30は1つ以上の誘電層32に包囲される。誘電層32は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリイミドなどの高強度誘電材料から構成しているが、他の高強度誘電材料を誘電層32に採用してもよい。また、第1長尺部材12は第1長尺部材12の外径20を構成する外側管材料34も備える。この例では、外側管材料34はポリエーテルブロックアミドPEBAX(登録商標)などの熱可塑性プラスチックから成るが、他の同様の材料を外側管材料34に利用してもよい。いくつかの例では、外側管材料34は第1長尺部材12全体を被覆していない。外側管材料34により、チップ36は図3Aに示すように第1長尺部材12の端部上に成形され、数例では編組状素線である芯30の端部が被覆される。1例では、チップ36は、例えば図3Bに示すようにテーパ状又は放射状である。チップ36は編組の端部を被覆し、第1長尺部材12の端部が非侵襲的になる。
【0024】
図2に戻って参照すると、第1長尺部材12は任意に、ルーメン22の内径28を構成する内層38を備えることも可能である。任意選択の内層38は、例示に過ぎないが、PTFE、シリコーン、親水性被膜などの潤滑性材料から形成し、摩擦を最小限に抑え、以下で更に詳細に説明するように、第1長尺部材12のルーメン22に対する第2長尺部材14の移動を最適化する。数例では、外側管材料34も、シリコーン、PTFE、親水性被膜などの潤滑性材料で被覆し、第1長尺部材12を、カテーテルを介して患者の末梢動脈に導入するときに摩擦を低減する。
【0025】
次に、図1を参照すると、第1長尺部材12は、遠位端26に近接して配置した電極40を備える。電極40は、編組状素線又はハイポチューブである芯30と電気的に連絡している。電極40は、例えば、X線透視下で第1長尺部材12の遠位端26を識別するための放射線不透過性マーカとして機能できる。また、第1長尺部材12は近位端24に配置した近位接触部42も備える。近位接触部42は芯30および電極40に電気的に接続する。第1長尺部材12の近位端24は、連結器16を介して高周波エネルギー源18に連結できる。例を挙げると、図6に示すように、第1長尺部材12の近位端24は、脱着可能なルアー/コネクタ43により連結器16に接続できる。
【0026】
第2長尺部材14は、当技術分野で公知の標準的なガイドワイヤとして構成される。この例では、第2長尺部材14は、第1長尺部材12のルーメンに挿入するように構成されている。1例では、第1長尺部材のルーメン22に挿入できるように、第2長尺部材14の外径は約0.014インチである。
【0027】
第2長尺部材14は、中実のテーパ研磨したステンレス鋼の芯線を有する。第2長尺部材14は近位端44と遠位端46との間で長さ方向に沿って延びる。第2長尺部材14の近位端44は、連結器16を介して高周波エネルギー源18に連結するように構成されているが、他のタイプの連結システムを使用してもよい。1例では、第2長尺部材14は、その遠位端46に柔軟なコイルを備える。遠位端は、第2長尺部材14の凹部又はテーパ部として構成できるチップ48、又は動作中にチップ48でより高い電流密度を生成するように構成した縮小面積を有するボールチップで終端する。
【0028】
第2長尺部材14の外表面には、芯線を電気的に絶縁するポリイミドやPTFEなどの高絶縁耐力材料が塗布又は被覆されている。第2長尺部材14の近位端44及び遠位端46は、連結器16を介した高周波エネルギー源18への電気的接続を可能にして遠位電極に高周波エネルギーを供給するための芯線の露出領域である。
【0029】
図1に戻って参照すると、この例では、第1長尺部材12及び第2長尺部材14の両方が、連結器16により高周波エネルギー源18に連結するように構成されている。この例では、連結器16は、第1及び第2長尺部材12及び14の両方に連結するための入力部を備える標準的なコネクタケーブルである。1例では、電気的に接触し、連結器16と第1長尺部材12との間の連結を可能にする脱着可能なルアー/コネクタを用いて、中空の第1長尺部材12を連結器16の一方の入力部に連結する。第2長尺部材14は、連結器16の入力部に直接挿入できる。連結器16により、高周波エネルギー源18の出力信号は第1長尺部材12及び第2長尺部材14に電気的に連結される。
【0030】
この例では、高周波エネルギー源18は、動作中に第1長尺部材12及び第2長尺部材14に供給されるRFエネルギーの供給源として機能する高周波発生器である。場合により、1例では、高周波エネルギー源18は携帯式の電池動作式装置であるが、他のタイプのRF発生器を利用してもよい。本明細書では、切除を目的として高周波エネルギー源18からのRFエネルギーの使用を説明しているが、例えば超音波など、他のエネルギー様式も使用できることに留意されたい。1例では、本技術の例示的な末梢動脈組織改変システム10の第1長尺部材12及び第2長尺部材14の一方又は両方は、以下に記載のRF電極の代わりに、又はRF電極に加えて、1つ以上の超音波振動子を備える。超音波振動子は、閉塞部を切除するための超音波エネルギーを供給する。他のエネルギー様式としては、マイクロ波やレーザが挙げられるが、当技術分野で公知の追加的なエネルギー様式を採用してもよい。
【0031】
次に、高周波エネルギーを利用した末梢血管組織改変方法の1例を、図1を参照して説明する。初めに、近位端24で第1長尺部材12を脱着可能なルアー/コネクタ43(図6に示す)に接続する。その後、第1長尺部材12を生理食塩水で洗い流し、ルーメン22から空気を除去する。
【0032】
次に、第2長尺部材14を第1長尺部材14のルーメン22に挿入する。第2長尺部材14の遠位チップ48が第1長尺部材12の遠位端26とほぼ揃うように第2長尺部材14の挿入を行う。1例では、第1長尺部材12の内層38は、ルーメン22を通る第2長尺部材14の挿入を容易にする潤滑性の層である。
【0033】
次いで、第1長尺部材12及び第2長尺部材14を共に患者の体内に進入させ、例を挙げると、表在性大腿動脈、膝窩動脈、腸骨動脈、脛骨動脈などの末梢血管に進入させるが、第1長尺部材12及び第2長尺部材14は静脈や脈管などの他の末梢血管に進入させることも可能である。第1長尺部材12及び第2長尺部材14は、第1長尺部材12の外径20に適合する任意選択の支持カテーテル又は経皮経管血管形成術(PTA)バルーンカテーテルに挿入できる。例を挙げると、支持カテーテル又はPTAバルーンカテーテルは、外径20が約0.035インチである第1長尺部材12を受け入れるように構成してもよい。支持カテーテルは、以下に記載するように、高周波エネルギーの送達前及び送達中の両方において、第1長尺部材12及び第2長尺部材14を支持及び安定化するために使用される。
【0034】
支持カテーテルを備えた第1長尺部材12及び第2長尺部材14は、シース又はガイドカテーテルを介して、治療する末梢血管などの身体領域に挿入できる。1例では、第1長尺部材12及び第2長尺部材14は、治療を必要とする閉塞又は病変を含む動脈などの末梢血管内に進入させる。例えば、X線透視法及び/又は血管内超音波法で第1長尺部材12の遠位端26を特定するための放射線不透過性マーカとして遠位電極40を用い、第1長尺部材12の位置を追跡することが可能である。この例では、内部に第2長尺部材14を備える第1長尺部材12を追跡し、末梢血管の閉塞又は病変の部位に向けることが可能である。
【0035】
第1長尺部材12及び第2長尺部材14を治療部位(例えば、末梢血管の閉塞部又は病変部)に近接して配置する場合、第1長尺部材12は、任意選択的な支持カテーテル又はPTAバルーンカテーテルから延ばされる。1例では、第1長尺部材12は支持カテーテルから少なくとも約5~10mm延ばされる。この構成では、第2長尺部材14の遠位チップ48は、第1長尺部材12の遠位端26にほぼ揃ったままである。
【0036】
次に、第1長尺部材12を支持カテーテルから延ばした状態で、第2長尺部材14をルーメン22内で進め、第1長尺部材12から延ばす。1例では、第2長尺部材14の遠位チップ48は、第1長尺部材12の遠位端26から約5~50mm延ばされる。別の例では、第2長尺部材14は任意に、第1長尺部材12内に配置されたり、又は第1長尺部材12の遠位端26若しくはその近傍に配置でき、それにより、以下に記載するように、高周波活性化中、発生したプラズマ及び結果として生じた衝撃波エネルギーは、第1長尺部材12の遠位端26から外に向けられる。1例では、末梢動脈組織改変システム10は、PTAバルーンカテーテルと共に使用され、例を挙げると、末梢動脈の血管壁に衝撃波エネルギーを送達することでバルーンの膨張効果を促進するために使用される。
【0037】
第2長尺部材14の位置は、X線透視法及び/又は血管内超音波を用いて追跡できる。第2長尺部材14が望ましい位置にあることを確認すると、(図6に示すように)脱着可能なルアー/コネクタ43を第2長尺部材14の近位端44と係合させる。脱着可能なルアー/コネクタ43は、内側ルーメン22の洗浄を可能にし、第1長尺部材12の近位接触部42への電気的接続を可能にし、また、例えば、第1長尺部材12の近位端24から延びる第2長尺部材14の部分付近で第1長尺部材12の近位端24を圧迫することにより、第1長尺部材12と第2長尺部材14との相対的な位置を機械的に固定することを可能にする。
【0038】
次に、第1長尺部材12は、連結器16の入力部に直接、又は脱着可能なルアー/コネクタ43上の電気系リード(図示せず)を介して連結する。第2長尺部材14の近位端44を連結器16の別の入力部に挿入する。この構成では、第1長尺部材12及び第2長尺部材14は高周波エネルギー源18に電気的に連結している。
【0039】
次いで、高周波エネルギーを高周波エネルギー源18から第1長尺部材12及び第2長尺部材14の両方へ印加する。第2長尺部材14が第1長尺部材12の遠位端26近接して、又はその遠位端26の位置に、又はその遠位端26から延在して配置されている状態では、第1長尺部材12の遠位電極40と第2長尺部材14の遠位チップ48との間でバイポーラ配列が構成される。1例では、遠位チップ48の表面領域の面積が第1長尺部材12の遠位電極40と比較して小さくなるように、第2長尺部材14の遠位チップ48はテーパチップ又はボールチップ状に構成される。その結果、高周波活性化中に遠位チップ48で電流密度がより高くなる。遠位チップ48での電流密度が高いため、送達されたエネルギーに基づいて、組織改変効果の大部分が遠位チップ48で得られ、閉塞部又は病変部などの治療部位にエネルギーをより正確に送達できるようになる。
【0040】
1例では、高周波エネルギーは多数のサイクルで高周波エネルギー源18から送達される。第1長尺部材12及び/又は第2長尺部材14は、組織を改変するときに任意に進めることが可能である。1例では、第1長尺部材12及び/又は第2長尺部材14を進めて、末梢動脈などの末梢血管の遠位真腔にアクセスすることが可能である。
【0041】
例えば、末梢動脈の遠位真腔にアクセスすると、互換性のある(例えば、直径約0.035インチのカテーテルで動作可能な)PTAバルーンカテーテル及び/又はDCB/DES送達カテーテルを第1長尺部材12に沿わせ、閉塞又は病変を治療する。あるいは、互換性のある(例えば、直径約0.014インチのカテーテルで動作可能な)カテーテルを第2長尺部材14に沿わせて治療部位へ進めるために、第2長尺部材14が定位置に残しながら第1長尺部材12を取り外すことが可能である。
【0042】
更に別の例では、例えばBTK手技などにおいて、第1長尺部材12を取り外し、第2長尺部材14を更に遠位方向に進め、より小さく、より蛇行状になった血管の病変部に対処することが可能である。第2長尺部材14を病変部位に向かって順行方向に進める。次に、逆行アプローチ(例えば、足の動脈アクセスを利用する)により、第2長尺部材14と同様に構成した追加のワイヤを対象となる末梢動脈又は他の血管内に進入させることが可能である。逆行/順行アプローチを組み合わせることにより、この2本のワイヤを一緒に追跡し、バイポーラ配列を形成することが可能である。次いで、例を挙げると、高周波エネルギーをワイヤ間に印加し、2つの遠位チップの間の組織を改変し、病変部位を通る真腔血流を復旧することが可能である。
【0043】
図4A~Dは、末梢血管組織改変システム10で採用し得る別の例示的な第1長尺部材112の遠位端126を示す。この例では、第2長尺部材14は必要ない。末梢血管組織改変システム10の構造及び動作は、第1長尺部材112を用いた場合、後述する点を除いて、図1を参照して説明したものと同様である。
【0044】
この例では、第1長尺部材112では、その遠位端126に2つのバイポーラ電極140を有している。この例では、第1長尺部材112は外径約0.035インチのワイヤであるが、第1長尺部材112は他の寸法であってもよい。第1長尺部材112の外径は、患者の動脈や静脈などの末梢血管に挿入するように構成されている。この例では、第1長尺部材112は、レーザカットしたハイポチューブ又は素線で補強した(例えば、編組状及び/又はコイル状の)管材料から形成されており、その中で2つの電極を収容している。別の例では、第1長尺部材112は柔軟なコイルのワイヤとして形成され、各電極140はコイル内で別個の誘電体絶縁されたワイヤとして形成される。この例では、様々な機械的性能特性を実現するために、第1長尺部材112には、より標準的で中実のテーパ状に研磨されたワイヤを利用できる。このとき、コイルは柔軟性特性を提供すると共に電極140として作用し、遠位チップ148は露出して固定され、各近位端は2つの電気的接触部で終端する。第1長尺部材112は、ガイドワイヤと同様の柔軟性及び操作性を有するように構成されている。
【0045】
第1長尺部材112は固定した近位ルアー又は電気系リードを持たず、第1長尺部材112に沿って互換性のあるPTAバルーンカテーテルや支持カテーテルの摺動を可能にしている。1例では、高周波活性化前及び高周波活性化中に第1長尺部材を安定させるために、支持カテーテルを採用してもよい。別の例では、第1長尺部材はPTAバルーンカテーテルと共に利用され、第1長尺部材112は、電極140を使用して衝撃波エネルギーを血管壁に送達することによりバルーン膨張効果を促進するために利用される。
【0046】
各電極140は、バイポーラ配列を構成し、例示に過ぎないが、第1長尺部材112の遠位端126に配置したポリイミド、PTFE、PEEK、セラミックなどの誘電体バリアにより分離されている。誘電体バリアにより、送達された高周波エネルギーが遠位端126に集中し、組織改変のための電極構成に応じてエネルギー効果が前方又は側方に伝搬される。
【0047】
電極140は、図4A及び図4Dに示すように、第1長尺部材112の長さに沿って延び、第1長尺部材112の本体内で完全に絶縁されている。電極140の直径及び剛性は、第1長尺部材112の剛性及び/又は柔軟性を異ならせるように変化していてもよい。電極140の近位端は、図1に示すように、連結器16を介して高周波エネルギー源18に連結され、治療部位へのエネルギーの送達を可能にする。
【0048】
電極140は固定されていてもよく、移動可能であってもよい。1例では、(固定する場合)各電極140の近位端は2つの別個の電気的接触部(それぞれに1つ)で終端するので、第1長尺部材112の近位端を連結器16のコネクタに挿入し、高周波エネルギー源18に電気的に連結できる。あるいは、各電極140は第1長尺部材112の近位端から突出して、連結器16の1つ又は2つのコネクタにそれぞれ挿入できる。また、電極140は、使用者が電極140の一方(図4Dに示す)又は両方を、第1長尺部材112の遠位端126から固定距離又は可変距離のいずれかをとって移動できるように構成することが可能である。各電極140の露出した遠位チップ148のサイズ及び/又は形状は同一であってもよいし、又は高周波エネルギー効果を1つの電極に集中させるために意図的に異なってもよい。
【0049】
図5は、図1に示す末梢血管組織改変システム10で採用し得る別の例示的な第1長尺部材212を示す。末梢血管組織改変システム10の構造及び動作は、第1長尺部材212を用いた場合、後述する点を除いて、図1を参照して説明したものと同様である。
【0050】
この例では、第1長尺部材212はカテーテルである。第1長尺部材212の構造及び動作は、第1長尺部材212のカテーテル設計に固定された近位のルアーハブ(図示せず)が含まれることを除いて、図1を参照して説明した第1長尺部材12と同様である。この例では、第1長尺部材212は、コイル状及び/又は編組状素線で強化した管材料から成り、ここでは、素線は電線管として機能し、第1長尺部材212の内径及び外径を構成する絶縁誘電体材料を隔離する。この例では、第1長尺部材212は、一体型PTAや低圧バルーンなどの他のカテーテル要素、又は遠位端226に配置された他の拡張可能な要素を含むことができ、高周波エネルギー送達中に末梢血管内での安定性を高めることができる。
【0051】
第1長尺部材212は、例を挙げると、≦4Fプロファイルのカテーテルとすることが可能であるが、他のカテーテルサイズを採用してもよい。この例の第2長尺部材214は第2長尺部材14と同様であるが、例を挙げると、≦4Fプロファイルのカテーテルと互換性があるように外径が約0.035インチになるようにスケールアップする場合もある。
【0052】
第1長尺部材212は、その遠位端226の近傍に配置した電極240を備える。また、遠位端226は任意に、導電性材料(例えばステンレス鋼)から構成し、遠位電極240として機能してもよい。この例では、ルアーハブは、遠位電極240と電気的に接続するためのリード線又は接触部を備える。また、ルアーハブは、第1長尺部材212の生理食塩水洗浄を可能にするルアーポートも備えている。
【0053】
この例では、第1長尺部材212は、第2長尺部材214又は標準的な0.035インチ標準ガイドワイヤに沿って進められる。次いで、末梢血管の病変部位に達すると、第2長尺部材214は、遠位チップ248が第1長尺部材212の遠位端226から約5~50mm離れるように配置される。第2長尺部材214は任意に、第1長尺部材212の遠位チップ248に、又は遠位チップ248に近接して配置でき(内部に配置)、それにより、高周波活性化中、発生したプラズマ及び結果として生じた衝撃波エネルギーは第1長尺部材212の遠位端226から外に向けられる。
【0054】
第1及び第2長尺部材212及び214は、コネクタケーブルとなり得る連結器16を介して高周波エネルギー源18に連結されている。高周波エネルギー源18から高周波エネルギーが印加されると、エネルギーは第2長尺部材214の遠位チップ248及びその周辺に集中する。第1長尺部材12と同様、図1を参照して説明したように、第1長尺部材212は、標準的な支持カテーテルに交換され、順行方向に送った第2長尺部材214が定位置に置かれた状態で、第2ワイヤを、逆行アプローチにより病変部及び第2長尺部材214に向けて進めることが可能である。その後、2本のワイヤのチップ間に高周波エネルギーを印加して治療することが可能である。
【0055】
従って、例を挙げると、本明細書で例示及び説明しているように、本技術は、末梢動脈を治療するために効率的かつ効果的に組織を改変し、末梢動脈慢性完全閉塞を超えて従来のガイドワイヤを腔内に配置し易くする、より効率的かつ効果的な装置及び方法を提供する。
【0056】
このように本発明の基本的な概念を説明してきたが、前述した詳細な開示は例示としてのみ示し、限定するものではないことは、当業者にとってある程度自明である。本明細書では明示していないが、様々な変更、改良、及び改変を行うこともあり、当業者が行うことを意図している。これらの変更、改良、改変は本明細書により示すように意図しており、また、本発明の精神及び範囲内である。従って、本発明は以下の請求項及びその等価物によってのみ限定される。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6