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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電流デバイス読み出しシステム
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20230613BHJP
   H10N 60/12 20230101ALI20230613BHJP
   G11C 11/44 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H10N60/10 K
H10N60/12 Z
G11C11/44
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547256
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020015646
(87)【国際公開番号】W WO2020167473
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】16/277,560
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プシビシュ、アンソニー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ファーガソン、デイビッド ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】カリル、モー シュワン
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0019098(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0013065(US,A1)
【文献】特表2018-533253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/10、60/12
G06N 10/00
G11C 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流デバイス読み出しシステムであって、
電流デバイスの電流状態に関連付けられた共振周波数を有するチューナブル共振器であって、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信して前記電流デバイスの電流状態を決定するように構成されたチューナブル共振器と、
前記チューナブル共振器に誘導結合されるとともに前記電流デバイスに誘導結合される量子磁束パラメトロン(QFP)として構成された分離デバイスと、
を備え、前記QFPは、前記電流デバイスの電流状態の増幅を可能とする閾値を設定するべく静的磁束に基づいて調整可能であり、前記QFPは、第1の状態で前記電流デバイスと前記チューナブル共振器とを分離し、第2の状態で前記電流デバイスの増幅電流状態をチューナブル共振器に与えて前記第2の状態で前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするように構成されている、電流デバイス読み出しシステム。
【請求項2】
前記電流デバイスは磁束量子ビットとして構成されており、第1の電流状態が前記磁束量子ビットに関連付けられた電流ループの第1の電流方向に基づく第1の磁束状態に対応し、第2の電流状態が前記磁束量子ビットに関連付けられた前記電流ループの第2の電流方向に基づく第2の磁束状態に対応する、請求項1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項3】
前記QFPは、前記電流デバイスおよび前記チューナブル共振器に対してチューナブルカプラとして構成されている、請求項1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項4】
記QFPは、第1のQFP状態で磁束分離をもたらし、第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅して前記第2のQFP状態で前記QFPに前記電流状態を記憶するように調整可能とされており、前記トーン信号に応答して前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするために、前記第2の状態で前記電流デバイスの増幅電流状態が前記QFPを介して前記チューナブル共振器に誘導的に与えられる、請求項3に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項5】
前記QFPは、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスを前記第1のQFP状態でほぼゼロとするように誘導的に調整される、請求項4に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項6】
前記QFPは、前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅して、前記第2のQFP状態で前記QFPに前記電流状態を記憶するように約Φの磁束に断熱的かつ誘導的に調整される、請求項4に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項7】
前記QFPは、前記第1のQFP状態と前記第2のQFP状態との間で誘導的に調整されるように構成された複合ジョセフソン接合(CJJ)を含む、請求項に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項8】
前記QFPは、前記QFPの前記第2の状態において、前記電流デバイスの電流状態を第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つとして増幅することを可能とする閾値を設定するべく前記静的磁束によって調整されるインダクタをさらに含み、前記第1の電流状態は、前記チューナブル共振器の共振周波数を第1の共振周波数に設定し、前記第2の電流状態は、前記チューナブル共振器の共振周波数を第2の共振周波数に設定する、請求項7に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項9】
前記静的磁束が第1の静的磁束であり、前記チューナブル共振器は、前記チューナブル共振器の共振周波数を前記電流デバイスの第1の電流状態に関連付けられたオンレゾナンス周波数に対応する第1の所定周波数に設定するべく第2の静的磁束により調整される、請求項1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項10】
前記QFPは複数のQFPのうちの第1のQFPであり、前記複数のQFPの各々は、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間に連続して誘導配置される、請求項1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項11】
前記QFPは複数のQFPのうちの第1のQFPであり、前記第1のQFPは、複数の電流デバイスのうちの第1の電流デバイスに誘導結合され、前記複数のQFPの各々は、前記複数の電流デバイスのうちの対応する一つを誘導相互接続する、請求項1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
【請求項12】
電流デバイスの電流状態を読み出す方法であって、
チューナブル共振器に誘導結合されるとともに前記電流デバイスに誘導結合される量子磁束パラメトロン(QFP)に第1のバイアス磁束を供給して前記QFPを第1のQFP状態に設定することにより前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導分離することであって、前記QFPは、前記電流デバイスの電流状態の増幅を可能とする閾値を設定するべく静的磁束に基づいて調整可能であり、前記電流デバイスの電流状態は、第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つに対応する、前記第1のバイアス磁束を供給すること、
前記QFPに第2のバイアス磁束を供給して前記QFPを第2のQFP状態に設定することにより前記電流デバイスの電流状態に関連付けられた前記チューナブル共振器の共振周波数を設定することであって、前記QFPは、前記第2のバイアス磁束に基づいて、前記第2の電流状態における前記電流デバイスの増幅電流状態を前記チューナブル共振器に与えるように構成されている、前記第2のバイアス磁束を供給すること、
所定の周波数を有するトーン信号を給電線から前記チューナブル共振器に供給すること、
前記トーン信号の供給に応答して前記給電線を監視して前記電流デバイスの電流状態を決定すること、
を備える方法。
【請求項13】
前記電流デバイスは磁束量子ビットとして構成されており、前記第1の電流状態が、前記磁束量子ビットに関連付けられた電流ループの第1の電流方向に基づく第1の磁束状態に対応し、前記第2の電流状態が、前記磁束量子ビットに関連付けられた前記電流ループの第2の電流方向に基づく第2の磁束状態に対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のバイアス磁束を供給することは、前記QFPに前記第1のバイアス磁束を供給して前記QFPを約Φ/2の磁束に誘導的に調整することにより、前記第1のQFP状態で前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスをほぼゼロにすることを含み、
前記第2のバイアス磁束を供給することは、前記第1のバイアス磁束を前記第2のバイアス磁束へと断熱的に増加させて前記QFPの磁束を約Φまで断熱的に増加させることにより、前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅させて前記第2のQFP状態で当該電流状態を前記QFPに記憶することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記QFPに前記第1のバイアス磁束および前記第2のバイアス磁束を供給することは、前記第1のQFP状態と前記第2のQFP状態との間で誘導的に調整されるように構成された複合ジョセフソン接合(CJJ)に前記第1のバイアス磁束および前記第2のバイアス磁束を供給することを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して量子および古典的コンピューティングシステムに関し、より具体的には電流デバイス読み出しシステムに関する。この出願は、2019年2月15日に出願された米国特許出願第16/277,560に基づく優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
回路量子電磁力学(cQED)に基づく量子コンピュータアーキテクチャでは、複数の量子ビット読み出し共振器を単一の伝送線路に多重化することが一般的に行われている。読み出し動作は、一定の相互インダクタンスまたは一定のコンデンサを介してわずかに異なる共振周波数を有する各量子ビット読み出し共振器を伝送線路に結合することによって行われ、典型的な結合Qは数千のオーダーである。読み出し時間を短縮するには、通常より強い結合が望ましいが、回路のデコヒーレンスが高くなるため、回路が計算に使用可能な時間が制限される。量子ビットの読み出し忠実度は、共振器を介した伝送線路への量子ビットエネルギー緩和によって部分的に制限される。また、量子ビットの論理および/または記憶動作中には量子ビットを送信から分離することが望ましい。現在の技術は、単一の50オーム伝送線路との間で量子ビット読み出し共振器を強結合および/または分離する点において課題がある。
【発明の概要】
【0003】
一実施例は、電流デバイス読み出しシステムを含む。当該システムは、電流デバイスの電流状態に関連付けられた共振周波数を有するチューナブル共振器を含む。前記チューナブル共振器は、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信して前記電流デバイスの電流状態を決定するように構成され得る。システムはさらに、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導相互接続する分離デバイスを含む。前記分離デバイスは、第1の状態で前記電流デバイスを分離し、第2の状態で前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするように調整可能とされ得る。
【0004】
別の実施例は、電流デバイスの電流状態を読み出す方法を含む。当該方法は、チューナブル共振器と電流デバイスとを誘導相互接続する量子磁束パラメトロン(QFP)に第1のバイアス磁束を供給して前記QFPを第1のQFP状態に設定することにより、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導分離することを含む。前記電流デバイスは、第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つに対応する電流状態を有し得る。当該方法はさらに、前記QFPに第2のバイアス磁束を供給して前記QFPを第2のQFP状態に設定することにより、前記電流デバイスの電流状態に関連付けられた前記チューナブル共振器の共振周波数を設定することを含む。当該方法はさらに、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から前記チューナブル共振器に供給することを含む。当該方法はさらに、前記電流デバイスの電流状態を決定するために前記トーン信号の供給に応答して前記給電線を監視することを含む。
【0005】
別の実施例は、電流デバイス読み出しシステムを含む。当該システムは、磁束量子ビットの電流状態に関連付けられた共振周波数を有するチューナブル共振器を含む。前記チューナブル共振器は、前記磁束量子ビットの電流状態を決定するために、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信するように構成され得る。当該システムはさらに、前記チューナブル共振器と前記磁束量子ビットとを誘導相互接続する量子磁束パラメトロン(QFP)を含む。前記QFPは、第1のQFP状態において前記磁束量子ビットと前記チューナブル共振器とを誘導分離し、第2のQFP状態において前記電流デバイスの電流状態を増幅して前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするように調整可能とされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】電流デバイス読み出しシステムの一例を示す図。
図2】磁束量子ビット読み出しシステムの例示的な回路図。
図3】電流デバイス読み出しシステムの別の例を示す図。
図4】電流デバイス読み出しシステムのさらに別の例を示す図。
図5】電流デバイス読み出しシステムのさらなる他の例を示す図。
図6】電流デバイスの電流状態を読み取る方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、概して量子および古典的コンピューティングシステムに関し、より具体的には電流デバイス読み出しシステムに関する。電流デバイス読み出しシステムは、チューナブル共振器と、1つまたは複数の分離デバイスとを含む。チューナブル共振器は給電線に結合可能であり、読み出し対象の電流デバイスの電流状態に関連付けられた共振周波数を有し得る。例えば、電流デバイスの読み出し中、チューナブル共振器の共振周波数は、電流デバイスの第1の電流状態に基づく第1の共振周波数を有し得るとともに、電流デバイスの第2の電流状態に基づく第2の共振周波数を有し得る。したがって、チューナブル共振器は、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信して電流デバイスの電流状態を決定するように構成され得る。例えば、トーン信号がチューナブル共振器の共振周波数とオンレゾナンス(on-resonance)であるかオフレゾナンス(off-resonance)であるかに基づいて、給電線がトーン信号の適用に対する周波数応答について監視され得る。
【0008】
電流デバイス読み出しシステムはさらに、チューナブル共振器と電流デバイスとに誘導結合された分離デバイスを含む。例えば、分離デバイスは、量子磁束パラメトロン(QFP)として構成され得る。電流デバイスは、磁束量子ビットとして構成され得るが、電流デバイス読み出しシステムにより読み出される記憶状態に対応する方向に電流を伝導する種々のヒステリシスデバイスのいずれかに対応し得るものであってもよい。分離デバイスは、第1の状態において電流デバイスをチューナブル共振器から分離し、第2の状態において電流デバイスの電流状態を増幅してその電流状態をチューナブル共振器に与えることでチューナブル共振器の共振周波数を設定するべく(例えば、磁束を介して)調整されるように構成されている。したがって、第2の状態において、チューナブル共振器は、トーン信号に応答して電流状態の読み出しを可能にするために、その電流状態を示す共振周波数を有し得る。
【0009】
図1は、電流デバイス読み出しシステム10の一例を示している。電流デバイス読み出しシステム10は、多数の量子および古典的なコンピュータアーキテクチャで実装され得る。例えば、電流デバイス読み出しシステム10は、量子論理システムにおいてデータ読み出しをもたらすように実装され得る。電流デバイス読み出しシステム10は、電流デバイス読み出しシステム10に誘導結合される(点線14により示されている)電流デバイス12の電流状態を読み出すように構成されている。本明細書に記載される「電流状態」という用語は、電流デバイス12の導電要素を流れる電流の方向を指す。図1の例では、電流デバイス12は信号「SET」を介して調整可能であり、電流デバイス12は、信号SETに応答して電流状態を維持するヒステリシスを有している。例えば、電流デバイス12は、その電流状態が磁束量子ビットの磁束状態に対応するように、磁束量子ビットとして構成され得る。しかしながら、代替的に、電流デバイス12は、電流デバイス読み出しシステム10により読み出される記憶状態に対応する方向に電流を伝導する種々のヒステリシスデバイスのいずれかに対応し得るものであってもよいことが理解され得る。
【0010】
電流デバイス読み出しシステム10は、チューナブル共振器16および分離デバイス18を含む。チューナブル共振器16は、図1の例においては、所定の周波数を有するトーン信号FLを提供するように構成された給電線20に結合されているものとして示されている。本明細書でより詳細に説明されるように、チューナブル共振器16は、電流デバイス12の電流状態に関連付けられた共振周波数を有し得る。例えば、電流デバイス12の読み出し中に、チューナブル共振器16の共振周波数は、電流デバイス12の第1の電流状態(例えば、第1の電流方向)に基づく第1の共振周波数を有し得るとともに、電流デバイス12の第2の電流状態(例えば、第2の電流方向)に基づく第2の共振周波数を有し得る。したがって、チューナブル共振器16は、電流デバイス12の読み出し中に給電線20からトーン信号FLを受信して電流デバイス12の電流状態を決定し得る。例えば、トーン信号FLがチューナブル共振器16の共振周波数とオンレゾナンスであるかオフレゾナンスであるかに基づいて、給電線20がトーン信号FLの適用に対する周波数応答について(例えば、図1の例では示されていない監視回路により)監視され得る。
【0011】
分離デバイス18は、チューナブル共振器16および電流デバイス12にそれぞれ点線22および点線14を介して誘導結合されるものとして示されている。例えば、分離デバイス18は、量子磁束パラメトロン(QFP)として構成され得る。図1の例では、分離デバイス18は、分離デバイス18を第1の状態または第2の状態のいずれかに設定するべく信号TNにより調整されるように構成されている。一例として、信号TNは、第1の状態に対応する約Φ/2の安定磁束および第2の状態に対応する約Φの安定磁束のうちの1つなどのように、分離デバイス18に誘導結合されて分離デバイス18に磁束を誘導する磁束信号であり得る。例えば、分離デバイス18は、第1の状態において、チューナブル共振器16に関連付けられた磁束が電流デバイス12に影響を与えることなどを防ぐために、電流デバイス12をチューナブル共振器16から分離するように構成され得る。別の例として、第2の状態では、分離デバイス18は、電流デバイス12の電流状態を増幅してその電流状態をチューナブル共振器16に与えることによりチューナブル共振器16の共振周波数を設定するように構成され得る。したがって、第2の状態では、チューナブル共振器16は、トーン信号FLに応答して電流デバイス12の電流状態の読み出しを可能とするべく、その電流状態を示す共振周波数を有し得る。
【0012】
したがって、このような電流デバイス読み出しシステム10の配置に基づいて、分離デバイス18の第1の状態でチューナブル共振器16からの電流デバイス12の安定した分離を可能とし、分離デバイス18の第2の状態でチューナブル共振器16への電流デバイス12の状態の安定した結合を可能としつつ、電流デバイス12の電流状態を読み出すことができる。また、誘導的に介在する分離デバイス18を提供することにより、電流デバイス読み出しシステム10は、周囲環境の考慮事項(例えば、スプリアス磁束源)に関して、電流デバイス12の電流状態に関連するデコヒーレンスを実質的に軽減することができる。したがって、電流デバイス読み出しシステム10は、チューナブル共振器を関連する電流デバイスに直接結合する読み出しシステムと比較して、改善された読み出し動作を提供することができる。
【0013】
図2は、磁束量子ビット読み出しシステム50の例示的な回路図を示している。磁束量子ビット読み出しシステム50は、多数の量子および古典的なコンピュータアーキテクチャで実装され得る。一例として、磁束量子ビット読み出しシステム50は、図1の例における電流デバイス読み出しシステム10に対応し得る。したがって、以下の図2の例の説明においては、図1の例を参照する。
【0014】
磁束量子ビット読み出しシステム50は、チューナブル共振器52と、QFP54とを含む。QFP54は、磁束量子ビット56に誘導結合されるものとして示されており、磁束量子ビット読み出しシステム50は、磁束量子ビット56の循環電流方向に対応する磁束状態を読み取るように構成されている。したがって、QFP54は、図1の例における分離デバイス18に対応し得るものであり、磁束量子ビット56は、図1の例における電流デバイス12に対応し得るものであり、磁束量子ビット56の磁束状態は、電流デバイス12の電流状態に対応する。磁束量子ビット56は、図2の例においては、インダクタLと、インダクタLと、直列に配置された一対のジョセフソン接合J,Jと、一対の並列なジョセフソン接合J,Jを含む複合ジョセフソン接合(CJJ)58から形成されたDC超伝導量子干渉デバイス(squid)と、インダクタLとを含むものとして示されている。図2の例では、磁束量子ビット56は、循環電流方向に基づく磁束状態を維持するヒステリシスを有するように(例えば、図2の例では示されていない信号SETにより)調整可能である。
【0015】
図2の例では、チューナブル共振器52は、コンデンサCを介して給電線60に結合されているものとして示されている。給電線60は、上記のように所定の周波数を有するトーン信号FLを供給するように構成されている。コンデンサCは、チューナブル共振器52へのトーン信号FLの安定した容量結合をもたらし、磁束量子ビット56の状態の迅速な読み出しを可能とするように構成されている。チューナブル共振器52は、ジョセフソン接合JとインダクタLとを含むものとして示されている。チューナブル共振器52は、磁束量子ビット56の読み出し中に磁束量子ビット56の電流状態に関連付けられた共振周波数を有するように構成され得る。図2の例では、チューナブル共振器52は、インダクタLを介して誘導的に供給される静的磁束ΦRESにより調整される。したがって、静的磁束ΦRESは、磁束量子ビット56の2つの磁束状態の間でチューナブル共振器52の大きな周波数差をもたらすようにチューナブル共振器52の共振状態を提供し得る。
【0016】
例えば、磁束量子ビット56の読み出し中、チューナブル共振器52の共振周波数は、磁束量子ビット56の第1の磁束状態に基づいて第1の共振周波数を有し得るとともに、磁束量子ビット56の第2の磁束状態に基づいて第2の共振周波数を有し得る。ここで、第1および第2の磁束状態は、静的磁束ΦRESに応答して大きな周波数差を有する。したがって、磁束量子ビット56の状態の読み出し中に給電線60からトーン信号FLが供給されると、トーン信号FLは、チューナブル共振器52の共振周波数とオンレゾナンス(例えば、第1の磁束状態にある)またはチューナブル共振器52の共振周波数とオフレゾナンス(例えば、第2の磁束状態にある)のいずれかとなり得る。したがって、トーン信号FLがチューナブル共振器52の共振周波数とオンレゾナンスであるかオフレゾナンスであるかに基づいて、給電線60がトーン信号FLの適用に対する周波数応答について(例えば、図2の例では示されていない監視回路により)監視され得る。
【0017】
図2の例では、QFP54は、無線周波数(RF)超伝導量子干渉デバイス(SQUID)として示されており、インダクタLと、インダクタLと、インダクタLと、一対の並列なジョセフソン接合J,Jを含むCJJ62から形成されたDC超伝導量子干渉デバイス(squid)とを含む。QFP54は、インダクタLとチューナブル共振器52のインダクタLとの誘導結合により、チューナブル共振器52に誘導結合されている。同様に、QFP54は、インダクタLと磁束量子ビット56のインダクタLとの誘導結合により、磁束量子ビット56に誘導結合されている。図2の例では、QFP54は、インダクタLおよびインダクタL10を介してそれぞれ提供される第1の磁束信号TNおよび第2の磁束信号TNにより調整可能である。インダクタL10は、CJJ62に誘導結合され、ジョセフソン接合J,Jの実効臨界電流を調整することで、QFP54を第1のQFP状態または第2のQFP状態のいずれかに設定する。インダクタLは、インダクタLに誘導結合され、QFP54にバイアスを印加して磁束量子ビット56の磁束状態の増幅を可能にする閾値を設定し、磁束量子ビット56の第1の磁束状態に対応する第1の方向、および磁束量子ビット56の第2の磁束状態に対応する第2の方向にQFP54を流れる磁束量子ビット56の循環電流をコピーして確実に記憶する。
【0018】
したがって、磁束信号TNは、第1のQFP状態に対応する約Φ/2の安定磁束および第2のQFP状態に対応する約Φの安定磁束のうちの1つなどの磁束をQFP54に供給し得る。例えば、磁束信号TNは、第1のQFP状態でQFP54に約Φ/2の磁束を誘導してチューナブル共振器52から磁束量子ビット56を分離することにより、チューナブル共振器52に関連する磁束が磁束量子ビット56に影響を与えることなどを防止することができる。別の例として、磁束信号TNは、QFP54の磁束を第2のQFP状態に対応する約Φの磁束まで断熱的に増加させ得る。第2のQFP状態において、QFP54は、QFP54に同じ磁束状態を供給するように磁束量子ビット56の磁束状態を増幅し、これによりQFP54からの磁束状態をチューナブル共振器52に与え得る。磁束状態がチューナブル共振器52に与えられる結果として、チューナブル共振器52の共振周波数は、上述のように、第1および第2の共振周波数のうちの1つとして設定され得る。したがって、第2のQFP状態において、チューナブル共振器52は、トーン信号FLに応答して磁束量子ビット56の磁束状態の読み出しを可能とするべく、磁束量子ビット56の磁束状態を示す共振周波数を有し得る。
【0019】
上述のように、QFP54の第2のQFP状態において、QFP54は磁束量子ビット56の磁束状態を増幅し、その時点における量子ビット56の磁束状態はQFP54に記憶されてチューナブル共振器52に与えられる。さらに、QFP54の第2のQFP状態の間、磁束量子ビット56の磁束状態はQFP54内に確実に維持される。したがって、QFP54内に磁束状態が確実に記憶されていることにより、磁束量子ビット56に影響を与える可能性のあるスプリアスノイズ源は、チューナブル共振器52による磁束量子ビット54の読み出しに影響を及ぼさない。結果として、磁束状態がQFP54に記憶されることにより、磁束量子ビット56は、チューナブル共振器52がアクティブとされたとき、記憶された磁束状態を維持する必要がない。換言すれば、QFP54が約Φの安定磁束の断熱的増加により第2のQFP状態に切り替えられた後、磁束状態がチューナブル共振器52によって読み出されるとき、磁束状態は磁束量子ビット56からではなくQFP54からチューナブル共振器52によって読み出される。したがって、磁束量子ビット56の磁束状態の変化は、QFP54の第2のQFP状態における磁束状態の読み出しに影響を及ぼさない。
【0020】
QFP54の動作例について以下に説明する。例えば、QFP54は、次式で記述される相互インダクタンスパラメータβを有し得る。
【0021】
【数1】
ここで、I0 qfpはジョセフソン接合J,Jの臨界電流であり、Lqfpは、QFP54のループ内のすべての幾何学的インダクタンスの合計であり、Φα qfpは、磁束信号TNによって印加される磁束である。
【0022】
QFP54の潜在的に安定した磁束状態の数nΦは、nΦ=1+βで表すことができるため、β>1になると、QFP54は、QFP54の第1および第2の磁束状態にそれぞれ対応する2つの循環電流状態のいずれかとなり得る。上記のように、QFP54は最初に、βに比例する実効臨界電流が0となるように磁束信号TNにより調整されてΦα qfp=Φ/2を設定し、これにより、ほぼゼロの相互インダクタンスに基づいて磁束量子ビット56をチューナブル共振器52から分離する。磁束量子ビット56の読み出しを行うには、QFP54は、Φα qfpを断熱的に増加させるように磁束信号TNにより調整され、QFP54が磁束量子ビット56から検出した磁束に基づいて、磁束量子ビット56の循環電流状態をエミュレートし得る。
【0023】
また、βに比例する調整可能な臨界電流を有することにより、QFP54の磁化率χも調整可能となる。したがって、QFP54は、磁束量子ビット56と別の読み出し回路との間の調整可能な相互インダクタンスを提供することができる。この調整可能な相互インダクタンスは、Meff=Mqu,qfpqfp,roχによって記述され、ここで、Ma,bは、要素a,b間の相互インダクタンスであり、χは、QFP54の磁化率である。一例として、QFP54の磁化率は、次式で記述することができる。
【0024】
【数2】
一例として、Φα qfp=Φ/2、χ=0、したがってMeff=0のアイドル点の場合、磁束量子ビット56は、QFP54に結合され得る他のノイズ回路から誘導分離され、これにより、磁束量子ビット56を周囲環境条件(例えば、スプリアス磁束源)からさらに分離することができる。
【0025】
したがって、このような磁束量子ビット読み出しシステム50の配置に基づき、QFP54の第1のQFP状態においてチューナブル共振器52(および他の潜在的な磁束源)からの磁束量子ビット56の安定した分離を可能とし、QFP54の第2のQFP状態においてチューナブル共振器52への磁束量子ビット56の状態の安定した結合を可能としながら、磁束量子ビット56の磁束状態を読み出すことができる。したがって、磁束量子ビット読み出しシステム50は、チューナブル共振器の関連する電流デバイスへの直接結合を提供する読み出しシステムと比較して、改善された読み出し動作を提供することができる。
【0026】
図3は、電流デバイス読み出しシステム100の一例を示している。電流デバイス読み出しシステム100は、量子論理システムにおいてデータ読み出しを可能とするべく多数の量子および古典的なコンピュータアーキテクチャで実装され得る。図3の例では、電流デバイス読み出しシステム100は、電流デバイス読み出しシステム100に誘導結合される(点線104により示されている)電流デバイス102の電流状態を読み出すように構成されている。図2の例で説明したものと同様に、電流デバイス102は、電流デバイス102の電流状態が磁束量子ビットの磁束状態に対応し得るように磁束量子ビットとして構成され得る。
【0027】
電流デバイス読み出しシステム100は、チューナブル共振器106と、複数(N個)の分離デバイス108とを含み、ここで、Nは1よりも大きい整数である。チューナブル共振器106は、図3の例においては、所定の周波数を有するトーン信号FLを供給するように構成された給電線110に結合されているものとして示されている。上記で説明したものと同様に、チューナブル共振器106は、電流デバイス102の読み出し中にその電流デバイス102の電流状態に関連付けられた共振周波数を有し得る。したがって、チューナブル共振器106は、電流デバイス102の読み出し中に給電線110からトーン信号FLを受信して電流デバイス102の電流状態を決定し得る。例えば、トーン信号FLがチューナブル共振器106の共振周波数とオンレゾナンスであるかオフレゾナンスであるかに基づいて、給電線110がトーン信号FLの適用に対する周波数応答について(例えば、図3の例では示されていない監視回路により)監視され得る。
【0028】
複数の分離デバイス108は、チューナブル共振器106と電流デバイス102との間に、連続した配置で誘導結合されるものとして示されている。一例として、各分離デバイス108は、図2の例におけるQFP54に対応するものなどと実質的に同一に配置され得る。本明細書に記載される「連続した配置」および「連続した誘導配置」という用語は、各分離デバイス108がチューナブル共振器106と電流デバイス102との間で連続して互いに誘導相互接続されることを示す。複数の分離デバイス108間の誘導性相互接続は、図3の例では点線112として示されている。
【0029】
上記のように、各分離デバイス108は、その分離デバイス108を第1の状態または第2の状態のいずれかに設定するべく(例えば、図3の例では示されていない信号TNにより)調整されるように構成され得る。例えば、複数の分離デバイス108は、所与のタイミングで実質的に同様に調整され得る。一例として、調整信号は、対応する分離デバイス108に誘導結合されて、その分離デバイス108内に、第1の状態に対応する約Φ/2の安定磁束および第2の状態に対応する約Φの安定磁束のうちの1つなどの磁束を誘導する磁束信号であり得る。例えば、分離デバイス108は、第1の状態において、チューナブル共振器106に関連付けられた磁束が電流デバイス102に影響を与えることなどを防ぐために、電流デバイス102をチューナブル共振器106から分離するように構成され得る。例えば、複数の分離デバイス108を提供することにより、図1の例における電流デバイス読み出しシステム10と比較して、より大きな分離を達成することができる。別の例として、分離デバイス108は、第2の状態において、電流デバイス102の電流状態を連続的に増幅してその電流状態をチューナブル共振器106に与えることでチューナブル共振器106の共振周波数を設定するように構成され得る。したがって、第2の状態では、チューナブル共振器106は、トーン信号FLに応答して電流デバイス102の電流状態の読み出しを可能とするべく、電流状態を示す共振周波数を有し得る。
【0030】
図4は、電流デバイス読み出しシステム150の一例を示している。電流デバイス読み出しシステム150は、量子論理システムにおいてデータ読み出しを可能とするべく多数の量子および古典的なコンピュータアーキテクチャで実装され得る。図4の例では、電流デバイス読み出しシステム150は、電流デバイス読み出しシステム150に誘導結合される(点線154により示されている)複数(X個)の電流デバイス152の各々の電流状態を読み出すように構成されている。図2の例で説明したものと同様に、電流デバイス152は、電流デバイス152の電流状態が磁束状態に対応し得るように磁束量子ビットとして構成され得る。図4の例で説明するような電流デバイス読み出しシステム150は、所与のタイミングで複数の電流デバイス152のうちの所与の1つの電流状態を読み出すように構成され得る。
【0031】
電流デバイス読み出しシステム150は、チューナブル共振器156と、複数(X個)の分離デバイス158とを含み、ここで、Xは1よりも大きい整数である。チューナブル共振器156は、図4の例においては、所定の周波数を有するトーン信号FLを供給するように構成された給電線160に結合されているものとして示されている。上記で説明したものと同様に、チューナブル共振器156は、各電流デバイス152の読み出し中に現在読み出されている電流デバイス152の電流状態に関連付けられた共振周波数を有し得る。したがって、チューナブル共振器156は、各電流デバイス152の読み出し中に給電線160からトーン信号FLを受信してその電流デバイス152の電流状態を決定し得る。例えば、トーン信号FLがチューナブル共振器156の共振周波数とオンレゾナンスであるかオフレゾナンスであるかに基づいて、給電線160が、トーン信号FLの適用に対する周波数応答について(例えば、図4の例では示されていない監視回路により)監視され得る。
【0032】
各分離デバイス158は、チューナブル共振器156と電流デバイス152との間で誘導結合されているものとして示されている。一例として、各分離デバイス158は、図2の例におけるQFP54に対応するものなどと実質的に同一に配置され得る。分離デバイス158とチューナブル共振器156との間の誘導性相互接続は、図4の例では点線162として示されている。
【0033】
上記で説明したものと同様に、各分離デバイス158は、各分離デバイス158を第1の状態または第2の状態のいずれかに設定するべく(例えば、図4の例では示されていない、対応する信号TNにより)調整されるように構成され得る。例えば、所与のタイミングで複数の分離デバイス158のうちの所与の1つが第2の状態に調整される一方、残りの分離デバイス158が第1の状態に調整される。一例として、調整信号は、対応する分離デバイス158に誘導結合されて、その分離デバイス158内に、第1の状態に対応する約Φ/2の安定磁束および第2の状態に対応する約Φの安定磁束のうちの1つなどの磁束を誘導する磁束信号であり得る。
【0034】
例えば、分離デバイス158は、第1の状態において、チューナブル共振器156に関連付けられた磁束が電流デバイス152の対応する1つに影響を与えることなどを防ぐために、その電流デバイス152をチューナブル共振器156から分離するように構成され得る。別の例として、複数の分離デバイス158のうちの所与の1つは、第2の状態において、各電流デバイス152の電流状態を増幅してその電流状態をチューナブル共振器156に与えることでチューナブル共振器156の共振周波数を設定するように構成され得る。したがって、第2の状態では、チューナブル共振器156は、トーン信号FLに応答して電流デバイス152の電流状態の読み出しを可能とするべく、その電流状態を示す共振周波数を有し得る。したがって、電流デバイス読み出しシステム150は、複数の電流デバイスを読み出す回路を最小化するなどのために、単一のチューナブル共振器156を介して複数の電流デバイス152の選択的な読み出しを可能とする。
【0035】
図5は、電流デバイス読み出しシステム200の一例を示している。電流デバイス読み出しシステム200は、量子論理システムにおいてデータ読み出しを可能とするべく多数の量子および古典的なコンピュータアーキテクチャで実装され得る。図5の例では、電流デバイス読み出しシステム200は、電流デバイス読み出しシステム200に誘導結合される(点線204で示されている)少なくとも複数(Y個)の電流デバイス202の各々の電流状態を読み出すように構成されている。図2の例において説明したものと同様に、電流デバイス202は、各電流デバイス202の電流状態が磁束状態に対応し得るように磁束量子ビットとして構成され得る。図5の例で説明するような電流デバイス読み出しシステム200は、所与のタイミングで複数の電流デバイス202のうちの所与の1つの電流状態を読み出すように構成され得る。
【0036】
電流デバイス読み出しシステム200は、複数(Y個)のチューナブル共振器206と、対応する複数(Y個)の分離デバイス208とを含む。各チューナブル共振器206は、図5の例においては、所定の周波数を有するトーン信号FLを供給するように構成された給電線210に結合されているものとして示されている。上記で説明したものと同様に、各チューナブル共振器206は、各電流デバイス202の読み出し中に現在読み出されている電流デバイス202の電流状態に関連付けられた共振周波数を有し得る。したがって、各チューナブル共振器206は、各電流デバイス202の読み出し中に給電線210からトーン信号FLを受信してその電流デバイス202の電流状態を決定し得る。例えば、トーン信号FLがチューナブル共振器206の共振周波数とオンレゾナンスであるかオフレゾナンスであるかに基づいて、すなわち多重化読み出しに影響を与えるかどうかに基づいて、給電線210が、トーン信号FLの適用に対する周波数応答について(例えば、図5の例では示されていない監視回路により)監視され得る。
【0037】
各分離デバイス208は、チューナブル共振器206と電流デバイス202との間に誘導結合されたものとして示されている。一例として、各分離デバイス208は、図2の例におけるQFP54に対応するものなどと実質的に同一に配置され得る。また、電流デバイス読み出しシステム200は、図3の例において示されたものと同様に、チューナブル共振器206の所与の1つと電流デバイス202とを相互接続する複数の分離デバイス208を含むことができる。分離デバイス208と各チューナブル共振器206との間の誘導性相互接続は、図5の例では点線212として示されている。
【0038】
上記で説明したものと同様に、各分離デバイス208は、各分離デバイス208を第1の状態または第2の状態のいずれかに設定するべく(例えば、図5の例では示されていない、対応する信号TNにより)調整されるように構成され得る。例えば、所与のタイミングで複数の分離デバイス208のうちの所与の1つが第2の状態に調整される一方、残りの分離デバイス208が第1の状態に調整される。一例として、調整信号は、対応する分離デバイス208に誘導結合されて、その分離デバイス208内に、第1の状態に対応する約Φ/2の安定磁束および第2の状態に対応する約Φの安定磁束のうちの1つなどの磁束を誘導する磁束信号であり得る。
【0039】
例えば、分離デバイス208のうちの1つ以上は、第1の状態において、チューナブル共振器206の対応する1つに関連付けられた磁束が電流デバイス202の対応する1つに影響を与えることなどを防ぐために、その電流デバイス202を、対応するチューナブル共振器206から分離するように構成され得る。別の例として、複数の分離デバイス208のうちの1つ以上は、第2の状態に設定されることで、各電流デバイス202の電流状態を増幅してその電流状態を各チューナブル共振器206に与えることにより各チューナブル共振器206の共振周波数を設定するように構成され得る。したがって、第2状態では、各チューナブル共振器206は、トーン信号FLに応答して電流デバイス202の電流状態の読み出しを可能とするべく、その電流状態を示す共振周波数を有し得る。例えば、各チューナブル共振器206は、選択的調整または個々のハードウェア特性に基づき、各電流デバイス202の電流状態に基づく別個の共振周波数の対を、互いに固有な対として有し得る。一例として、複数の周波数のトーン信号FLを給電線210に供給して、チューナブル共振器を介して電流デバイス202を選択的に読み取ることができる。したがって、電流デバイス読み出しシステム200は、複数の個別のチューナブル共振器206を介して複数の電流デバイス202のうちの1つ以上の選択的読み出しを同時に可能とする。
【0040】
上記の構造的および機能的特徴を考慮して、本発明の種々の態様による方法は、図6を参照してより理解され得る。説明を簡単にするために、図6の方法は、連続して実行するものとして図示され説明されているが、本発明は図示された順序によって制限されるものではなく、いくつかの態様が、本発明に従って、図示され本明細書に説明されるものとは異なる順序で生じ得るおよび/または他の態様と同時に生じ得ることが理解され得る。また、本発明の一態様による方法を実施するために、図示されたすべての特徴が必要とされるわけではない。
【0041】
図6は、電流デバイス(例えば、電流デバイス12)の電流状態を読み出すための方法250の一例を示している。252において、チューナブル共振器(例えば、チューナブル共振器16)と電流デバイスとを誘導相互接続するQFP(例えば、QFP54)に第1のバイアス磁束が(例えば、信号TNを介して)供給されてQFPが第1のQFP状態に設定されることにより、チューナブル共振器と電流デバイスとが誘導分離される。電流デバイスは、第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つに対応する電流状態を有し得る。254において、QFPに第2のバイアス磁束が(例えば、信号TNを介して)供給されてQFPが第2のQFP状態に設定されることにより、電流デバイスの電流状態に関連付けられたチューナブル共振器の共振周波数が設定される。256において、所定の周波数を有するトーン信号(例えば、トーン信号FL)が給電線(例えば、給電線20)からチューナブル共振器に供給される。258において、トーン信号の供給に応答して給電線が監視されて電流デバイスの電流状態が決定される。
【0042】
以上の説明は本開示の例示である。本開示を説明する目的のために構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを説明することはもちろん不可能であるが、当業者であれば、本開示のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。したがって、本開示は、特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替、変更、および変形を包含することが意図される。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
電流デバイス読み出しシステムであって、
電流デバイスの電流状態に関連付けられた共振周波数を有するチューナブル共振器であって、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信して前記電流デバイスの電流状態を決定するように構成されたチューナブル共振器と、
前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導相互接続する量子磁束パラメトロン(QFP)として構成された分離デバイスと、
を備え、前記QFPは、前記電流デバイスの電流状態の増幅を可能とする閾値を設定するべく静的磁束に基づいて調整可能であり、前記QFPは、第1の状態で前記電流デバイスと前記チューナブル共振器とを分離し、第2の状態で前記電流デバイスの増幅電流状態をチューナブル共振器に与えて前記第2の状態で前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするように構成されている、電流デバイス読み出しシステム。
(付記2)
前記電流デバイスは磁束量子ビットとして構成されており、第1の電流状態が前記磁束量子ビットに関連付けられた電流ループの第1の電流方向に基づく第1の磁束状態に対応し、第2の電流状態が前記磁束量子ビットに関連付けられた前記電流ループの第2の電流方向に基づく第2の磁束状態に対応する、付記1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記3)
前記QFPは、前記電流デバイスおよび前記チューナブル共振器に対してチューナブルカプラとして構成されている、付記1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記4)
前記QFPは、前記チューナブル共振器および前記電流デバイスに誘導結合されており、前記QFPは、第1のQFP状態で磁束分離をもたらし、第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅して前記第2のQFP状態で前記QFPに前記電流状態を記憶するように調整可能とされており、前記トーン信号に応答して前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするために、前記第2の状態で前記電流デバイスの増幅電流状態が前記QFPを介して前記チューナブル共振器に誘導的に与えられる、付記3に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記5)
前記QFPは、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスを前記第1のQFP状態でほぼゼロとするように誘導的に調整される、付記4に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記6)
前記QFPは、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスを前記第1のQFP状態でほぼゼロとするように約Φ /2の磁束に誘導的に調整される、付記5に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記7)
前記QFPは、前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅して、前記第2のQFP状態で前記QFPに前記電流状態を記憶するように約Φ の磁束に断熱的かつ誘導的に調整される、付記4に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記8)
前記QFPは、前記第1のQFP状態と前記第2のQFP状態との間で誘導的に調整されるように構成された複合ジョセフソン接合(CJJ)を含む、付記3に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記9)
前記QFPは、前記QFPの前記第2の状態において、前記電流デバイスの電流状態を第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つとして増幅することを可能とする閾値を設定するべく前記静的磁束によって調整されるインダクタをさらに含み、前記第1の電流状態は、前記チューナブル共振器の共振周波数を第1の共振周波数に設定し、前記第2の電流状態は、前記チューナブル共振器の共振周波数を第2の共振周波数に設定する、付記8に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記10)
前記静的磁束が第1の静的磁束であり、前記チューナブル共振器は、前記チューナブル共振器の共振周波数を前記電流デバイスの第1の電流状態に関連付けられたオンレゾナンス周波数に対応する第1の所定周波数に設定するべく第2の静的磁束により調整される、付記1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記11)
前記QFPは複数のQFPのうちの第1のQFPであり、前記複数のQFPの各々は、前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間に連続して誘導配置される、付記1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記12)
前記QFPは複数のQFPのうちの第1のQFPであり、前記第1のQFPは、複数の電流デバイスのうちの第1の電流デバイスに誘導結合され、前記複数のQFPの各々は、前記複数の電流デバイスのうちの対応する一つを誘導相互接続する、付記1に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記13)
電流デバイスの電流状態を読み出す方法であって、
チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導相互接続する量子磁束パラメトロン(QFP)に第1のバイアス磁束を供給して前記QFPを第1のQFP状態に設定することにより前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとを誘導分離することであって、前記QFPは、前記電流デバイスの電流状態の増幅を可能とする閾値を設定するべく静的磁束に基づいて調整可能であり、前記電流デバイスの電流状態は、第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つに対応する、前記第1のバイアス磁束を供給すること、
前記QFPに第2のバイアス磁束を供給して前記QFPを第2のQFP状態に設定することにより前記電流デバイスの電流状態に関連付けられた前記チューナブル共振器の共振周波数を設定することであって、前記QFPは、前記第2のバイアス磁束に基づいて、前記第2の電流状態における前記電流デバイスの増幅電流状態を前記チューナブル共振器に与えるように構成されている、前記第2のバイアス磁束を供給すること、
所定の周波数を有するトーン信号を給電線から前記チューナブル共振器に供給すること、
前記トーン信号の供給に応答して前記給電線を監視して前記電流デバイスの電流状態を決定すること、
を備える方法。
(付記14)
前記電流デバイスは磁束量子ビットとして構成されており、前記第1の電流状態が、前記磁束量子ビットに関連付けられた電流ループの第1の電流方向に基づく第1の磁束状態に対応し、前記第2の電流状態が、前記磁束量子ビットに関連付けられた前記電流ループの第2の電流方向に基づく第2の磁束状態に対応する、付記13に記載の方法。
(付記15)
前記第1のバイアス磁束を供給することは、前記QFPに前記第1のバイアス磁束を供給して前記QFPを約Φ /2の磁束に誘導的に調整することにより、前記第1のQFP状態で前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスをほぼゼロにすることを含み、
前記第2のバイアス磁束を供給することは、前記第1のバイアス磁束を前記第2のバイアス磁束へと断熱的に増加させて前記QFPの磁束を約Φ まで断熱的に増加させることにより、前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅させて前記第2のQFP状態で当該電流状態を前記QFPに記憶することを含む、付記13に記載の方法。
(付記16)
前記QFPに前記第1のバイアス磁束および前記第2のバイアス磁束を供給することは、前記第1のQFP状態と前記第2のQFP状態との間で誘導的に調整されるように構成された複合ジョセフソン接合(CJJ)に前記第1のバイアス磁束および前記第2のバイアス磁束を供給することを含む、付記13に記載の方法。
(付記17)
電流デバイス読み出しシステムであって、
磁束量子ビットの電流状態に関連付けられた共振周波数を有するチューナブル共振器であって、所定の周波数を有するトーン信号を給電線から受信して前記磁束量子ビットの電流状態を決定するように構成された前記チューナブル共振器と、
前記チューナブル共振器と前記磁束量子ビットとを誘導相互接続する量子磁束パラメトロン(QFP)と、
を備え、前記QFPは、第1のQFP状態で前記磁束量子ビットと前記チューナブル共振器とを誘導分離し、第2のQFP状態で電流デバイスの電流状態を増幅して前記電流デバイスの電流状態の決定を可能とするように調整可能であり、前記QFPは、前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を第1の電流状態および第2の電流状態のうちの1つに増幅することを可能とする閾値を設定するべく静的磁束によって調整されるインダクタを含む、電流デバイス読み出しシステム。
(付記18)
前記QFPは、約Φ /2の磁束に誘導的に調整されることで前記第1のQFP状態で前記チューナブル共振器と前記電流デバイスとの間の相互インダクタンスをほぼゼロにする、付記17に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記19)
前記QFPは、約Φ の磁束に断熱的に誘導的に調整されることで前記第2のQFP状態で前記電流デバイスの電流状態を増幅して前記第2のQFP状態で前記第1の電流状態および前記第2の電流状態のうちの1つを前記QFPに記憶する、付記17に記載の電流デバイス読み出しシステム。
(付記20)
前記QFPが、前記第1のQFP状態と前記第2のQFP状態との間で誘導的に調整されるように構成された複合ジョセフソン接合(CJJ)を含む、付記17に記載の電流デバイス読み出しシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6