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7295263歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズ
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20230613BHJP
   A43B 7/14 20220101ALI20230613BHJP
【FI】
A61H3/00 B
A43B7/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021553940
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042429
(87)【国際公開番号】W WO2021084628
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 将
(72)【発明者】
【氏名】高増 翔
(72)【発明者】
【氏名】入江 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】兼松 慧
(72)【発明者】
【氏名】小澤 圭太
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094322(JP,A)
【文献】特開2000-350754(JP,A)
【文献】特開2001-037826(JP,A)
【文献】特表2017-517375(JP,A)
【文献】特開2005-000500(JP,A)
【文献】特開2010-125030(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044980(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0038169(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0018478(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105816298(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
A43B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に接続され、前記駆動源から伝達された駆動力によって、シューズの装着者の足首近傍を回動中心として前後方向に回動する歩行補助装置用フレームであって、
前記シューズのアッパーの底面より下方の位置において、前記シューズの底面に対してその前側が後側よりも下方に位置するように傾斜して、前記シューズに取り付けられたプレート部を備え、
前記歩行補助装置用フレームに駆動力が伝達される前記駆動源との接続箇所が、前記回動中心よりも前側に位置する、
ことを特徴とする歩行補助装置用フレーム。
【請求項2】
前記プレート部は、前記シューズのミッドソール中に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置用フレーム。
【請求項3】
前記プレート部は、前記アッパーの底面と、前記シューズのミッドソールの上面との間に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置用フレーム。
【請求項4】
前記プレート部は、前記シューズのミッドソールの底面と、前記シューズのアウトソールの上面との間に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置用フレーム。
【請求項5】
前記プレート部は、前側の幅の方が後側の幅よりも大きな略台形状である、
ことを特徴とする請求項1からの何れかに記載の歩行補助装置用フレーム。
【請求項6】
請求項1からの何れかに記載の歩行補助装置用フレームと、
前記駆動源と、を備える、
ことを特徴とする歩行補助装置。
【請求項7】
請求項に記載の歩行補助装置と、
前記シューズと、を備える、
ことを特徴とする歩行補助装置付きシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の歩行動作を補助する歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズに関する。特に、本発明は、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクを装着者の足裏に十分に伝達し、歩行動作を効果的に補助することが可能な歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、短下肢装具など、装着者の歩行動作を受動的に補助する(ユーザの体重を支持する)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、モータ等の駆動源に接続され、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクを装着者の足裏に伝達することで、装着者の歩行動作を能動的に補助する歩行補助装置も知られている。
特許文献2には、上記のように装着者の歩行動作を能動的に補助する歩行補助装置が提案されている。具体的には、特許文献2に記載の歩行補助装置は、ユーザの脚に装着されてユーザの歩行を補助する歩行補助装置であり、ユーザの脚に沿って配置される脚装具と、ユーザの足底に固定される足底装具と、脚装具の下端と足底装具をユーザの足首のピッチ軸回りに揺動可能に連結する足首ジョイントと、を備えており、足首ジョイントと足底装具が、ユーザが装着したときのユーザの足首のヨー軸回りに足首ジョイントと足底装具の取り付け角度が調整可能に連結されていることを特徴とする歩行補助装置である。
特許文献2に記載の歩行補助装置によれば、装着者(ユーザ)の歩行動作を能動的に補助することが可能である。
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の歩行補助装置では、ベースプレートが上側靴底と下側靴底との間に、上側靴底及び下側靴底に対して平行に挟まれている(特許文献2の図2)。仮に特許文献2に記載の上側靴底及び下側靴底をアッパーを有するシューズのミッドソールとして用いた場合には、ベースプレートがシューズの底面(シューズを水平面(地面など)に置いたときに、その水平面に平行な面)に対して平行に配置されることになる。
また、特許文献2に記載の歩行補助装置では、ベースプレートに駆動力が伝達される駆動源との接続箇所(揺動部材)が、靴底(上側靴底及び下側靴底)の前後方向について、ベースプレートの回動中心(足首ジョイント)と略同一の位置にある(特許文献2の図1図2)。
このため、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクがベースプレートに十分には伝達されない。この結果、トルクが装着者の足裏に十分に伝達されず、歩行動作を効果的に補助できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-34051号公報
【文献】特開2010-125030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクを装着者の足裏に十分に伝達し、歩行動作を効果的に補助することが可能な歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、駆動源に接続され、前記駆動源から伝達された駆動力によって、シューズの装着者の足首近傍を回動中心として前後方向に回動する歩行補助装置用フレームであって、前記シューズのアッパーの底面より下方の位置において、前記シューズの底面に対してその前側が後側よりも下方に位置するように傾斜して、前記シューズに取り付けられたプレート部を備え、前記歩行補助装置用フレームに駆動力が伝達される前記駆動源との接続箇所が、前記回動中心よりも前側に位置する、ことを特徴とする歩行補助装置用フレームを提供する。
【0008】
本発明に係る歩行補助装置用フレームにおいて、プレート部の前側は、プレート部が取り付けられるシューズの前側(シューズの装着者の足の前側(末節骨側))に対応する側を意味し、プレート部の後側は、シューズの後側(シューズの装着者の足の後側(踵骨側)に対応する側を意味する。
また、本発明に係る歩行補助装置用フレームにおいて、シューズの底面は、シューズを水平面(地面など)に置いたときに、その水平面に平行な面を意味する。
本発明に係る歩行補助装置用フレームによれば、駆動源から接続箇所に伝達された駆動力によって、シューズの装着者の足首近傍の回動中心周りに、歩行補助装置用フレームを回動させるトルク(モーメント)が発生する。このトルクをプレート部ひいては装着者の足裏に最も効率良く伝達するには、プレート部の法線方向を歩行補助装置用フレームの回動中心を中心とする円の接線方向に近づければよい。理論上は、プレート部の法線方向が前記円の接線方向に一致する場合が最も効率的である。本発明に係る歩行補助装置用フレームによれば、プレート部がシューズの底面に対してその前方が後方よりも下方に位置するように傾斜しているため、プレート部がシューズの底面に対して平行である場合に比べて、プレート部の法線方向が歩行補助装置用フレームの回動中心を中心とする円の接線方向に近づくことになる。このため、発生したトルクがプレート部に効率良く伝達される。
また、本発明に係る歩行補助装置用フレームによれば、歩行補助装置用フレームに駆動力が伝達される駆動源との接続箇所が、回動中心よりも前側に位置するため、シューズの前後方向について接続箇所と回動中心とが略同一の位置にある場合に比べて、回動中心から接続箇所までの距離が長くなる。このため、駆動力によって発生し、歩行補助装置用フレームを回動させるトルクが、距離が長い分だけ大きくなる。
【0009】
以上のように、本発明に係る歩行補助装置用フレームによれば、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクが歩行補助装置用フレームに効率良く伝達され、装着者の足裏に十分に伝達する。このため、歩行動作を効果的に補助することが可能である。
また、本発明に係る歩行補助装置用フレームによれば、プレート部がシューズに取り付けられているため、プレート部がシューズのアッパーの底面上に載置されている(プレート部がアッパー内に単に挿入されている)場合に比べて、プレート部の位置が安定化し、装着者の歩行動作を確実に補助することが可能である。
【0010】
好ましくは、前記プレート部は、前記シューズのミッドソール中に取り付けられている。
【0011】
上記の好ましい構成によれば、プレート部と装着者の足裏との間に少なくともアッパーの底面及びミッドソールの一部が介在することになり、プレート部がシューズのアッパーの底面上に載置されている場合に比べて、装着者の足当たりが良くなるという利点を有する。
【0012】
好ましくは、前記プレート部は、前記アッパーの底面と、前記シューズのミッドソールの上面との間に取り付けられている。
【0013】
上記の好ましい構成によれば、プレート部と装着者の足裏との間に少なくともアッパーの底面が介在することになり、プレート部がシューズのアッパーの底面上に載置されている場合に比べて、装着者の足当たりが良くなるという利点を有する。
【0014】
好ましくは、前記プレート部は、前記シューズのミッドソールの底面と、前記シューズのアウトソールの上面との間に取り付けられている。
【0015】
上記の好ましい構成によれば、プレート部と装着者の足裏との間に少なくともアッパーの底面及びミッドソールが介在することになり、プレート部がシューズのアッパーの底面上に載置されている場合に比べて、装着者の足当たりが良くなるという利点を有する。
【0016】
好ましくは、前記プレート部の前後方向の範囲は、前記シューズの中足部に略対応する範囲を含む。
【0017】
上記の好ましい構成によれば、シューズの中足部に略対応する範囲を含む大きさのプレート部によって、装着者の歩行動作をより一層効果的に補助することが可能である。また、プレート部の前後方向の範囲をシューズの中足部に略対応させれば、装着者の足のMP関節に対応する位置までプレート部が延びないため、シューズの屈曲性を阻害することがない。
【0018】
好ましくは、前記プレート部は、前側の幅の方が後側の幅よりも大きな略台形状である。
【0019】
上記の好ましい構成によれば、プレート部の前側の幅(前後方向に直交する方向の寸法)の方が後側の幅よりも大きいため、シューズの装着者の足の母指球の下までプレート部が位置し易く、装着者の歩行動作をより一層効果的に補助することが可能である。
【0020】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記何れかに記載の歩行補助装置用フレームと、前記駆動源と、を備える、ことを特徴とする歩行補助装置としても提供される。
【0021】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記歩行補助装置と、前記シューズと、を備える、ことを特徴とする歩行補助装置付きシューズとしても提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、駆動源から伝達された駆動力によって発生するトルクを装着者の足裏に十分に伝達し、歩行動作を効果的に補助することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る歩行補助装置付きシューズの概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示す歩行補助装置付きシューズが備える歩行補助装置用フレーム及びミッドソールの概略構成を示す図である。
図3図1に示す歩行補助装置用フレームの作用効果を説明する側面図である。
図4】シューズと足の骨との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る歩行補助装置用フレーム、歩行補助装置及び歩行補助装置付きシューズについて説明する。
なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0025】
最初に、図4を参照しつつ、本明細書で使用するシューズの「中足部」の用語の意味について説明する。
図4は、シューズと足の骨との位置関係を示す平面図である。
図4に示すように、「中足部」とは、楔状骨、舟状骨及び立方骨に概ね対応する(装着時にこれらの骨の下側にシューズ20が備えるミッドソール4が位置する)部分を意味する。シューズ20の全長を100%とした場合、シューズ20の後端から概ね30~60%の領域が中足部に対応する。
なお、「前足部」とは、趾骨、MP関節及び中足骨に概ね対応する(装着時にこれらの骨の下側にシューズ20が備えるミッドソール4が位置する)部分を意味する。シューズ20の全長を100%とした場合、シューズ20の後端から概ね60~100%の領域が前足部に対応する。
また、「後足部」とは、距骨及び踵骨に概ね対応する(装着時にこれらの骨の下側にシューズ20が備えるミッドソール4が位置する)部分を意味する。シューズ20の全長を100%とした場合、シューズ20の後端から概ね0~30%の領域が後足部に対応する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る歩行補助装置付きシューズの概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す歩行補助装置付きシューズが備える歩行補助装置用フレーム及びミッドソールの概略構成を示す図である。図2(a)は、歩行補助装置用フレームの平面図を示す。図2(b)は、図1に示す矢符Aの方向から見た(外足側から見た)ミッドソールの部分的側面図を示す。図2(c)は、ミッドソールを構成する下部ミッドソールの部分的平面図を示す。図2(b)では、歩行補助装置用フレームの図示を省略している。なお、「外足側」とは、シューズの装着者の足の小指側を意味する。また、「内足側」とは、シューズの装着者の足の母指側を意味する。
図1及び図2では、左足用を図示しているが、右足用は左足用と線対称の構造を有するので図示を省略し、以下、左足用についてのみ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る歩行補助装置付きシューズ100は、歩行補助装置10と、シューズ20と、を備えている。シューズ20は、簡略化して外縁のみを図示したソックス状のアッパー3と、ミッドソール4と、ドット状のハッチングを施したアウトソール5と、を具備する。
【0027】
図1に示すように、歩行補助装置10は、駆動源と、歩行補助装置用フレーム2と、を備えている。本実施形態の駆動源は、カバー部材1aと、リンク1b、1cと、を具備する。本実施形態のカバー部材1aは、後述のように、軸11dに接続される下端部近傍を除き、樹脂製である。また、リンク1b、1c及びカバー部材1aの下端部近傍は、アルミニウム等の金属製である。
カバー部材1aはアッパー3の前側に位置し、カバー部材1aの内部には、モータ(図示せず)や、このモータを駆動するバッテリー(図示せず)等が内蔵されている。カバー部材1aに内蔵されたモータが回転することで、リンク1bの一端部に接続された軸11aが回動するように構成されている。なお、カバー部材1aは、ベルト(図示せず)等によって、アッパー3の上部に連結され、位置ズレしないようにアッパー3に固定されている。
【0028】
リンク1bは、その一端部が軸11aに固定して接続されており、軸11aが回動することで、リンク1bは軸11a周りに軸11aと一体的に回動する。リンク1bの他端部は軸11bに回動自在に接続され、同じ軸11bにリンク1cの一端部が回動自在に接続されている。リンク1cの他端部は軸11cに回動自在に接続され、同じ軸11cに歩行補助装置用フレーム2のアーム部2a(図1において斜線のハッチングを施した部分)の下端部が回動自在に接続されている。カバー部材1aの下端部は軸11dに回動自在に接続され、同じ軸11dに歩行補助装置用フレーム2のアーム部2aの上端部が回動自在に接続されている。
【0029】
以上に述べたカバー部材1a、リンク1b、1c及びアーム部2aがいわゆる4節リンク機構を構成している。本実施形態の駆動源は、前述のように、モータ等が内蔵されたカバー部材1a、リンク1b、1cを具備し、上記4節リンク機構の一部を構成している。本実施形態の駆動源が具備するモータの回転によって、軸11aを介してリンク1bが回動することで、4節リンク機構が作動する。そして、駆動源の駆動力(モータの回転力)が軸11cを介して(軸11cを接続箇所として)アーム部2aに伝達され、これによりアーム部2aが軸11dを回動中心として前後方向に回動することになる。
【0030】
図2(a)に示すように、歩行補助装置用フレーム2は、アーム部2aと、アーム部2aと一体的に形成されたプレート部2bと、を備えている。歩行補助装置用フレーム2は、その全体がアルミニウム等の金属製である。本実施形態のプレート部2bは、略平坦な形状を有し、図2(a)において白抜きで図示している部分が開口している。前述のように、アーム部2aが軸11dを回動中心として前後方向に回動することで、プレート部2bも軸11dを回動中心として前後方向に回動することになる。
なお、歩行補助装置用フレーム2の回動中心(アーム部2a及びプレート部2bの回動中心)である軸11dは、シューズ20の装着者の足首近傍に設けられている。具体的には、シューズ20の全長を100%とした場合、シューズ20の後端から概ね15~30%の領域が、シューズ20の前後方向における装着者の足首近傍に対応する。
【0031】
プレート部2bは、シューズ20のアッパー3の底面3a(図1参照)より下方の位置において、シューズ20に取り付けられている。本実施形態では、プレート部2bは、シューズ20のミッドソール4中に取り付けられている。アーム部2aは、ミッドソール4及びアッパー3の外部(外足側)に位置している。
具体的には、図1及び図2(b)に示すように、ミッドソール4は、上部ミッドソール4aと、下部ミッドソール4bと、から構成されている。そして、図2(c)に示すように、下部ミッドソール4bの上面には、プレート部2bの平面形状及び厚みに応じた平面形状及び深さを有する凹部41(図2(c)において斜線のハッチングを施した部分)が形成されている。プレート部2bは、下部ミッドソール4bの凹部41上に嵌め込まれる。その上に上部ミッドソール4aが配置され、凹部41を除く下部ミッドソール4bの上面と、上部ミッドソール4aの下面とが接着されることで、プレート部2bは、ミッドソール4中に取り付けられる。ミッドソール4の外足側の側面には、凹部41に応じた形状を有する開口部42が形成されているため、アーム部2aと一体的に形成されたプレート部2bをミッドソール4中に取り付ける際に支障が生じない。
上記のように、本実施形態では、プレート部2bがシューズ20のミッドソール4中に取り付けられているため、プレート部2bと装着者の足裏との間に少なくともアッパー3の底面3a及び上部ミッドソール4aが介在することになり、プレート部2bがアッパー3の底面3a上に載置されている(プレート部2bがアッパー3内に挿入されている)場合に比べて、装着者の足当たりが良くなる。
【0032】
また、図1及び図4を参照すれば分かるように、本実施形態のプレート部2bの前後方向の範囲は、シューズ20の中足部に略対応する。本実施形態では、シューズ20の中足部に略対応する大きさのプレート部2bによって、装着者の歩行動作をより一層効果的に補助することが可能である。また、装着者の足のMP関節(図4参照)に対応する位置までプレート部2bが延びていないため、シューズ20の屈曲性を阻害することがない。
【0033】
さらに、図2(a)に示すように、本実施形態のプレート部2bは、前側の幅の方が後側の幅よりも大きな略台形状である。これにより、シューズ20の装着者の足の母指球の下までプレート部2bが位置し易く、装着者の歩行動作をより一層効果的に補助することが可能である。
【0034】
本実施形態の歩行補助装置用フレーム2において、プレート部2bが、シューズ20の底面に対してその前側が後側よりも下方に位置するように傾斜して、シューズ20(本実施形態ではシューズ20のミッドソール4中)に取り付けられている点が特徴的である。また、図1に示すように、本実施形態の歩行補助装置用フレーム2に駆動力が伝達される駆動源との接続箇所(軸11c)が、歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)よりも前側に位置する点も特徴的である。
以下、上記の特徴点の作用効果について説明する。
【0035】
図3は、本実施形態の歩行補助装置用フレーム2の作用効果を説明する側面図である。図3において、ミッドソール4(図1参照)の図示は省略している。なお、図3において、破線20aは、シューズ20の底面(図1参照)と平行な直線である。また、図3において、角度θは、歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)からシューズ20の底面(破線20a)に下した垂線と、プレート部2bにおいて装着者の足裏に作用する力の作用点21(実際にはプレート部2bの平面全体が作用点になるが、図3では説明の便宜上、1点のみを作用点21として取り扱う)及び回動中心(軸11d)を結ぶ直線との成す角度を意味する。以下では、歩行補助装置10によって装着者の背屈動作を補助する場合を例に挙げて説明する。
図3に示すように、プレート部2bは、シューズ20の底面(破線20a)に対して、その前側が後側よりも下方に位置するように傾斜角θfだけ傾斜して取り付けられている。また、歩行補助装置用フレーム2に駆動力が伝達される駆動源との接続箇所(軸11c)が、歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)よりも前側に位置している。
【0036】
装着者が背屈動作を行う際、駆動源(図3には、駆動源を構成するリンク1b、1cのみを図示)から接続箇所(軸11c)に伝達された駆動力F’(軸11aが反時計回りに回動することで生じる駆動力)によって、シューズ20の装着者の足首近傍の回動中心(軸11d)周りに、歩行補助装置用フレーム2を回動させる時計回りのトルクT(モーメント)が発生する。このトルクTをプレート部2bひいては装着者の足裏に最も効率良く伝達するには、プレート部2bの法線方向を歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)を中心とする円(軸11dと作用点21を結ぶ線分を半径とする円)の作用点21における接線方向(図3に示す力F1の方向)に近づければよい。理論上は、プレート部2bの法線方向が前記円の接線方向に一致する場合が最も効率的である。
【0037】
本実施形態では、歩行補助装置用フレーム2において、プレート部2bがシューズ20の底面(破線20a)に対してその前方が後方よりも下方に位置するように傾斜角θfだけ傾斜している。このため、プレート部2bがシューズ20の底面(破線20a)に対して平行である(すなわち、傾斜角θf=0°である)場合に比べて、プレート部2bの法線方向が歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)を中心とする円の接線方向に近づくことになる。具体的には、力F(プレート部2bの法線方向の力)の分力である力F1(前記接線方向の力)が装着者の足裏に作用し、この力F1が傾斜角θf=0°の場合に比べて大きくなる。このため、発生したトルクがプレート部2bに効率良く伝達される。
【0038】
上記の力F1は、幾何学的に、下記の式(1)で表される。
F1=F・sin(θ+θf)・・・(1)
本実施形態では、角度θが45°程度であるため、θfを45°程度にする(すなわち、sin(θ+θf)≒1)ことで、式(1)の右辺がFと同等になり、最も効率的である。しかしながら、θf=45°のプレート部2bをミッドソール4中に取り付けるには、過大なミッドソール4の厚みが必要になる。したがい、現実的な好ましい範囲としては、5°≦θf≦15°である。本実施形態では、θf=7°に設定している。
【0039】
また、歩行補助装置用フレーム2に駆動力が伝達される駆動源との接続箇所(軸11c)が、歩行補助装置用フレーム2の回動中心(軸11d)よりも前側に位置するため、シューズ20の前後方向について接続箇所(軸11c)と回動中心(軸11d)とが略同一の位置にある場合に比べて、回動中心(軸11d)から接続箇所(11c)までの距離が長くなる。このため、駆動力F’によって発生し、歩行補助装置用フレーム2を回動させるトルクTが、距離が長い分だけ大きくなる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る歩行補助装置用フレーム2によれば、駆動源から伝達された駆動力F’によって発生するトルクTが歩行補助装置用フレーム2に効率良く伝達され、装着者の足裏に十分に伝達する。このため、歩行動作を効果的に補助することが可能である。
図3では、歩行補助装置10によって装着者の背屈動作を補助する場合を例に挙げて説明したが、装着者の底屈動作を補助する場合も同様である。
【0041】
なお、本実施形態では、プレート部2bが、シューズ20のミッドソール4中に取り付けられている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、シューズ20のアッパー3の底面3aより下方の位置に取り付けられていればよい。例えば、プレート部2bを、アッパー3の底面3aと、シューズ20のミッドソール4の上面との間に取り付けることが考えられる。また、プレート部2bを、シューズ20のミッドソール4の底面と、シューズ20のアウトソール5の上面との間に取り付けることも考えられる。
【0042】
また、本実施形態では、駆動源が4節リンク機構の一部を構成している場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。歩行補助装置用フレーム2をシューズ20の装着者の足首近傍を回動中心として前後方向に回動させる駆動力を付与することができる駆動源である限りにおいて、種々の構成を採用可能である。
【0043】
また、本実施形態では、プレート部2bの前後方向の範囲がシューズ20の中足部に略対応する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものでなく、シューズの屈曲性を阻害することが無い限り、より広い範囲に亘るプレート部を採用することも可能である。例えば、プレート部の前後方向の範囲がシューズ20の中足部から後足部に略対応するプレート部を採用することも可能である。
【0044】
また、本実施形態では、プレート部2bが略平坦な形状を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、前後方向に湾曲した形状のプレート部を採用することも可能である。この場合のプレート部の傾斜角θfを、プレート部の表面の各点における前後の接線方向とシューズ20の底面との成す角度とすると、何れの点における傾斜角θfも5°≦θf≦15°であることが好ましい。前後方向に湾曲した形状のプレート部を採用する場合には、特に、プレート部の前側に位置する点ほど傾斜角θfが小さくなるように、下方が凸状に湾曲した形状であることが好ましい。
【0045】
さらに、本実施形態では、歩行補助装置用フレーム2のアーム部2aが、ミッドソール4及びアッパー3の外部(外足側)に位置している場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、プレート部2bを、アッパー3の底面3aと、シューズ20のミッドソール4の上面との間に取り付ける場合には、アッパー3の底面3aの一部に開口部を設け、その開口部にアーム部2aを挿通して、アーム部2a及びこれに接続される駆動源をアッパー3の内部に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1a・・・カバー部材
1b、1c・・・リンク
2・・・歩行補助装置用フレーム
3・・・アッパー
4・・・ミッドソール
5・・・アウトソール
10・・・歩行補助装置
11c・・・軸(接続箇所)
11d・・・軸(回動中心)
20・・・シューズ
100・・・歩行補助装置付きシューズ
図1
図2
図3
図4