(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】スズイオンを含む口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230613BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/25
A61K8/21
A61K8/27
A61K8/73
(21)【出願番号】P 2021576352
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2020070178
(87)【国際公開番号】W WO2020264562
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】アリフ、アリ、ベーグ
(72)【発明者】
【氏名】タミー、ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム、マイケル、グランドルフ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル、ジェームズ、セント、ジョン
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/178652(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324738(US,A1)
【文献】特表2017-519797(JP,A)
【文献】特開2017-052700(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093279(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
(a)前記口腔ケア組成物の
0.0025重量%~5重量%の
スズイオン源と、
(b)前記口腔ケア組成物の
5重量%~50重量%の、5つ以上の炭素原子を有するポリオールで
あって、キシリトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせである、ポリオールと、
(c)
水と、
を含み、
前記口腔ケア組成物が、
8~10のpHを有する、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記口腔ケア組成物が、
10%~50%のシリカ研磨剤を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記口腔ケア組成物が、
10%~50%のカルシウム研磨剤
を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記口腔ケア組成物が、前記口腔ケア組成物の
0.01重量%~5重量%の亜鉛イオン源を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記口腔ケア組成物が、前記口腔ケア組成物の
0.01重量%~15重量%の1種以上の界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記口腔ケア組成物が、増粘剤を
含み、前記増粘剤が、キサタンガム、カラギーナン、ポリエチレングリコール、架橋ポリアクリル酸ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記
スズイオン源が、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記口腔ケア組成物が、フッ化物を含み、前記フッ化物が、フッ化ナトリウ
ム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、フッ化亜鉛、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記口腔ケア組成物の最大45重量%の水を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記口腔ケア組成物の10重量%~45重量%の水を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
前記口腔ケア組成物の45重量%~75重量%の水を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
前記口腔ケア組成物の75重量%超の水を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
前記カルシウム研磨剤が、炭酸カルシウムからなる、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
前記口腔ケア組成物が、前記口腔ケア組成物の1%未満のシリカ研磨剤を含む、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7を超えるpHで、スズ及びポリオールを含む組成物に関する。本発明はまた、約7.5~約10のpHで、フッ化第一スズと、5つ以上の炭素を有するポリオールとを含む組成物に関する。本発明はまた、7を超えるpHで、スズ、ポリオール、及びポリホスフェートを含む組成物に関する。本発明はまた、約7.5~約10のpHで、5つ以上の炭素有するポリオール及びポリホスフェートと組み合わせて、フッ化第一スズ又は塩化第一スズを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化第一スズなどのスズイオン源が歯磨剤組成物に添加され、抗菌性及び抗感受性の利点を提供する。しかしながら、スズイオン源は、(i)スズイオンと、シリカなどの他の歯磨剤構成成分との間の反応性、及び(ii)特定のpH条件での不溶性スズ化合物の形成に起因して、歯磨剤組成物に組み込むことが困難であり得る。したがって、スズイオンを歯磨剤組成物に組み込むことは、保管中のスズイオンと主要な歯磨剤構成成分との間の相互作用を最小限に抑えて、エナメル質、象牙質、歯肉、歯垢、及び細菌などの口腔表面との反応性に対するスズイオンの利用能を最大化することによってのみ可能である。
【0003】
スズイオンの溶液中の化学的不安定性は、溶液のpHを下げるか、有機酸のアニオンなどのアニオン性キレート剤を提供するか、又はポリホスフェート若しくはポリカルボン酸塩などの高分子キレート剤を提供することによって軽減され得る。これらのキレート剤のいくつかはまた、スズイオンに直接結合することにより、シリカ分子の表面とのスズイオンの相互作用も防止することができる。しかしながら、キレート剤-スズイオンの相互作用がスズイオンと口腔内表面との間の結合親和性よりも強い場合、強いキレート剤-スズイオンの相互作用はスズイオンの利用能にも有害であり得、そのようなスズイオンの供給は、歯垢、歯肉炎、悪臭、虫歯、過敏症、及び酸蝕症などの口腔の疾患に対する性能の前提条件である。したがって、キレート剤の選択さえも、スズイオン利用能を最大化するように、歯磨剤配合物全体とのバランスを取らなければならない。
【0004】
水性歯磨剤組成物中のスズイオンの化学的不安定性に起因して、フッ化第一スズは、通常、グルコン酸塩又はクエン酸塩などのキレート剤を使用せずに水性組成物に使用されることはない。更に、高pH水性歯磨剤組成物は、7を超えるpHで歯磨剤組成物から沈降し得るSn(OH)2の潜在的な形成のため、より好ましくない。無水条件を使用して、フッ化第一スズを含む安定した組成物を配合することができる。グリセリン、ソルビトール、及びキシリトールなどのポリオールを、水の代わりに置換キャリア材料として無水歯磨剤組成物に添加することができる。しかしながら、ポリオールは、水性歯磨剤組成物中の他のキャリア材料に対して高価であり得る。したがって、歯磨剤組成物中のスズイオンの利用能に有害であり得るキレート剤を必要としない、安定した水性歯磨剤組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この概要は、詳細な説明において以下に更に記載される簡略化された形態の概念の選択を導入するために提供される。この概要は、特許請求された主題の必須の又は本質的な特徴を特定することを意図するものではない。また、この概要は、特許請求された主題の範囲を制限するために使用されることを意図するものでもない。
【0006】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%のスズイオン源と、(b)口腔ケア組成物の約5重量%~約50重量%の、5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(c)口腔ケア組成物の最大約45重量%の水とを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0007】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)スズと、(b)5つ以上の炭素原子を含むポリオールと、(c)口腔ケア組成物の最大約45重量%の水とを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0008】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%のスズイオン源と、(b)口腔ケア組成物の約5重量%~約50重量%の、5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(c)口腔ケア組成物の約45重量%~約75重量%の水とを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0009】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%のスズイオン源と、(b)口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%のフッ化物イオン源であって、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、又はこれらの組み合わせを含む、フッ化物イオン源と、(c)口腔ケア組成物の約5重量%~約50重量%の、5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(d)口腔ケア組成物の約10重量%~約45重量%の水とを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0010】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%のスズイオン源と、(b)口腔ケア組成物の約5重量%~約50重量%の、5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(c)組成物の約75重量%~約99重量%の水とを含み、口腔組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0011】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)スズと、(b)5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(c)ポリホスフェートとを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【0012】
本明細書では、口腔ケア組成物であって、(a)スズと、(b)5つ以上の炭素原子を有するポリオールと、(c)ポリホスフェートと、(d)口腔ケア組成物の最大約45重量%の水とを含み、口腔ケア組成物が、7を超えるpHを有する、口腔ケア組成物が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ソルビトールを用いた様々なpH条件におけるスズイオンの可溶化の図である。
【
図2】エリトリトールを用いた様々なpH条件におけるスズイオンの可溶化の図である。
【
図3】グリセリンを用いた様々なpH条件におけるスズイオンの可溶化の図である。
【
図4】キシリトールを用いた様々なpH条件におけるスズイオンの可溶化の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水性口腔ケア組成物中に、7超又は約7.5~約10のpHで、スズイオン源と、5つ以上の炭素原子を有するポリオールとを含む、口腔ケア組成物を対象とする。
【0015】
スズイオン源は、Sn(OH)2が形成されるため、通常、pHが7を超える水性歯磨剤組成物では使用されず、Sn(OH)2は、混合直後に、又は消費者が使用する前に歯磨剤組成物が保管されている間に、歯磨剤組成物から沈降する可能性があり、これにより、遊離スズイオンから得られる利点がなくなる。
【0016】
したがって、7を超えるpHでスズイオン源を含む水性歯磨剤組成物は、通常、相溶性があると予測されない。予想外に、また本明細書に記載されるように、7を超えるpHで、スズイオン源と、5つ以上の炭素原子を有するポリオールとを含む安定な歯磨剤組成物は、Sn(OH)2の形成を最小限に抑えるか、又は形成のない、貯蔵安定性であることが見出されている。理論に束縛されるものではないが、スズイオン源と、5つ以上の炭素原子を有するポリオールとを含む歯磨剤組成物が適切に配合されている場合、5つ以上の炭素原子を有するポリオールは、遊離スズイオンと弱く相互作用して、高pH条件での不溶性Sn(OH)2の形成を防止することができると考えられる。加えて、本明細書に記載の歯磨剤組成物は、そのような手法の商業的実現可能性を高めるために、より低い費用で構成成分を含み得る。
【0017】
本明細書は、本発明を具体的に指摘し、かつ明確に請求する、「特許請求の範囲」をもって結論とするが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0018】
定義
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別途記載のない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。ある用語が本開示で使用されているが本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が、本明細書に適用される任意の他の開示若しくは定義と矛盾しない限り、又はその定義が適用される任意の請求項を不明確に若しくは不可能にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd Ed(1997)からの定義を適用することができる。
【0019】
「口腔ケア組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、歯の表面又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を含む。口腔ケア組成物の例としては、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、泡、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、口腔表面に直接適用又は付着するためのストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0020】
「歯磨剤組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、別途指示がない限り、歯用若しくは歯肉縁下用ペースト、ゲル、又は液体配合物を含む。歯磨剤組成物は、単相組成物であってもよく、又は2つ以上の別個の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深い縞状、表面的な縞状、多層状、ペーストをゲルで包囲した状態、又はこれらの任意の組み合わせなどの、任意の所望の形態であってもよい。2つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサの物理的に分離された区画内に収容され、同時に分注されてもよい。
【0021】
本明細書で有用な「有効成分及び他の成分」は、美容的及び/若しくは治療的効果、又はそれらが要求される作用形態若しくは機能により、本明細書中で分類又は記述してよい。しかしながら、本明細書において有用な有効成分及び他の成分は、場合によっては、2つ以上の美容的及び/又は治療的効果をもたらす、あるいは2つ以上の作用形態で機能又は作用してもよいと理解すべきである。したがって、本明細書における分類は、便宜上実施されるものであり、成分を列挙される具体的に規定した機能又は作用に制限することを意図するものではない。
【0022】
「口腔的に許容可能なキャリア」という用語は、局所口腔投与に好適である、1種以上の相溶性のある固体又は液体の賦形剤又は希釈剤を含む。「相溶性」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物の構成成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に低下させるような方式で相互作用することなく、混合され得ることを意味する。本発明のキャリア又は賦形剤は、以下により完全に記載されるように、マウスウォッシュ又はマウスリンスの通常の及び従来の構成成分を含むことができる。マウスウォッシュ又はマウスリンスのキャリア材料は、通常、水、アルコール、保湿剤、界面活性剤、並びに着香剤、甘味剤、着色剤、及び/又は冷感剤などの許容改善剤のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0023】
「実質的に含まない」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物中に、そのような組成物の総重量の0.05%以下、好ましくは0.01%以下、及びより好ましくは0.001%以下の指示された材料が存在することを指す。
【0024】
「本質的に含まない」という用語は、本明細書で使用する場合、指示された材料が、組成物に意図的に添加されていないか、又は好ましくは分析的に検出可能な濃度で存在しないことを意味する。それは、指示された材料が、意図的に添加された他の材料のうちの1つの不純物としてのみ存在する、組成物を含むことを意味する。
【0025】
組成物及び方法は、本明細書において、様々な構成成分又は工程を「含む」という観点で記載されているが、組成物及び方法はまた、別途記載のない限り、様々な構成成分若しくは工程「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0026】
本明細書で使用する場合、単語「又は」は、2つ以上の要素の接続詞として使用される場合に、要素を個々にかつ組み合わせて含むことを意味し、例えば、X又はYは、X若しくはY、又はこれら両方を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」及び「an」は、特許請求される又は記載される材料、例えば、「口腔ケア組成物」又は「漂白剤」のうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0028】
別途指示がない限り、本明細書で言及される全ての測定は、約23℃(すなわち、室温)で行われる。
【0029】
一般に、元素群は、Chemical and Engineering News,63(5),27,1985に掲載されている元素周期表のバージョンで示される番号付けスキームを使用して示される。いくつかの例では、族に割り当てられた共通の名前を使用して、元素の群を示すことができ、例えば、第1族元素のアルカリ金属、第2族元素のアルカリ土類金属などである。
【0030】
いくつかの種類の範囲が本発明に開示される。任意の種類の範囲が開示又は特許請求される場合、範囲の端点並びにその中に包含される任意の部分範囲及び任意の部分範囲の組み合わせを含む、そのような範囲が合理的に包含し得る各可能な数を個々に開示又は特許請求することを意図している。
【0031】
「約」という用語は、量、サイズ、配合物、パラメータ、並びに他の数量及び特性が正確ではなく、正確である必要はないが、所望に応じて、許容誤差、変換係数、丸め、測定誤差など、並びに当業者に既知の他の要因を反映して、近似的及び/又はより大きい若しくはより小さい場合があることを意味する。一般に、量、サイズ、配合物、パラメータ、又は他の数量若しくは特性は、そのようであると明示的に記載されているか否かに関わらず、「約」又は「近似的」である。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡状態に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かに関わらず、特許請求の範囲は、その量に対する均等物を含む。「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味し得る。
【0032】
歯磨剤組成物は、固体、液体、粉末、ペースト、又はこれらの組み合わせなどの任意の好適な形態であり得る。口腔ケア組成物は、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、泡、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品であり得る。歯磨剤組成物の構成成分は、フィルム、ストリップ、泡、又は繊維ベースの歯磨剤組成物に組み込まれることができる。歯磨剤組成物には、例えば、限定するものではないが、以下に記載されるように、スズイオン源、ポリオール、研磨剤、水、フッ化物イオン源、亜鉛イオン源、1つ以上のポリホスフェート、追加の保湿剤、界面活性剤、他の成分など、並びにこれらの任意の組み合わせなどの、様々な活性及び不活性成分が挙げられ得る。
【0033】
スズ
本発明の口腔ケア組成物は、スズを含む。スズは、スズイオン源によって提供することができる。スズイオン源は、口腔ケア組成物中にスズイオンを提供することができ、及び/又は歯磨剤組成物が口腔に適用されるときに、口腔にスズイオンを供給することができる任意の好適な化合物であり得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、酸化第一スズ、硫酸第一スズ、硫化第一スズ、フッ化第二スズ、塩化第二スズ、臭化第二スズ、ヨウ化第二スズ、硫化第二スズ、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のスズ含有化合物を含み得る。好ましくは、スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及び/又はこれらの混合物を含み得る。
【0034】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%のスズイオン源を含み得る。
【0035】
ポリオール
本発明の口腔ケア組成物は、ポリオールを含む。ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル官能基を有する有機化合物である。ポリオールは、口腔ケア組成物が使用前に保管されている間、スズイオンに弱く会合、相互作用、又は結合し得る任意の好適なポリオールであり得る。ポリオールは、糖アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、又は非還元糖であり得る。糖アルコールは、式(CHOH)nH2(n=4~6)を有する、糖化合物の水素化によって得ることができるポリオールの部類である。好ましくは、nは5及び/又は6であり、これは、これらの化合物が、本明細書に記載されるように、スズイオン源と予想外に相互作用して、可溶性錯体を生成することが示されているからである。
【0036】
ポリオールは、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、ガラクチトール、及び/又はこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、ポリオールは、式(CHOH)nH2(n=4~-6)を有する糖アルコールであり得る。より好ましくは、ポリオールは、式(CHOH)nH2(n=5~6)を有する糖アルコールであり得る。更により好ましくは、ポリオールは、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、及び/又はこれらの混合物であり得る。
【0037】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の0.01重量%~約70重量%、約5重量%~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約80重量%のポリオールを含み得る。
【0038】
口腔ケア組成物はまた、追加の保湿剤を含むか、低濃度の追加の保湿剤を有するか、追加の保湿剤を実質的に含まないか、本質的に含まないか、又は含まなくてもよい。保湿剤は、一般に、口腔ケア組成物又は歯磨剤に、こく味又は「口当たり」を加えるだけでなく、口腔ケア組成物が乾燥するのを防止する役割を果たす。好適な保湿剤としては、ポリエチレングリコール(様々な異なる分子量で)、プロピレングリコール、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、加水分解水添デンプン、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。口腔ケア組成物は、ポリオール及び追加の保湿剤、例えば、スズイオン源と相互作用するキシリトール及び口腔ケア組成物が保管中に乾燥するのを防止するか、又は口腔ケア組成物にこく味を加えるためのグリセリンを含み得る。ポリオールがキシリトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせである場合など、ポリオールは、ポリオール及び追加の保湿剤の両方として機能することができるため、口腔ケア組成物は、追加の保湿剤を含まなくてもよい。
【0039】
口腔ケア組成物は、1種以上の保湿剤を各々が口腔ケア組成物の約0.01重量%~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約80重量%の濃度で含み得る。
【0040】
研磨剤
本発明の口腔ケア組成物は、研磨剤を含み得る。研磨剤は、歯から表面の着色汚れを除去するのを助けるために口腔ケア配合物に添加され得る。好ましくは、研磨剤は、カルシウム研磨剤又はシリカ研磨剤である。
【0041】
カルシウム研磨剤は、口腔ケア組成物中にカルシウムイオンを提供することができ、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されるときに、口腔にカルシウムイオンを供給することができる任意の好適な研磨剤化合物であり得る。口腔ケア組成物は、約5%~約70%、約10%~約60%、約20%~約50%、約25%~約40%、又は約1%~約50%のカルシウム研磨剤を含み得る。カルシウム研磨剤は、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(precipitated calcium carbonate、PCC)、粉砕炭酸カルシウム(ground calcium carbonate、GCC)、チョーク、リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のカルシウム研磨剤化合物を含み得る。
【0042】
口腔ケア組成物はまた、シリカゲル(それ自体、及び任意の構造のもの)、沈降シリカ、非晶質沈降シリカ(それ自体、及び任意の構造のもの)、水和シリカ、及び/又はこれらの組み合わせなどのシリカ研磨剤を含み得る。口腔ケア組成物は、約5%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約20%~約50%、約25%~約40%、又は約1%~約50%のシリカ研磨剤を含み得る。
【0043】
口腔ケア組成物はまた、ベントナイト、パーライト、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、不溶性炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、粒子状熱硬化性樹脂、及び他の好適な研磨剤材料などの別の研磨剤を含み得る。口腔ケア組成物は、約5%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約20%~約50%、約25%~約40%、又は約1%~約50%の別の研磨剤を含み得る。
【0044】
代替として、口腔ケア組成物は、シリカ、アルミナ、若しくは任意の他の非カルシウム研磨剤を実質的に含まなか、本質的に含まないか、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、又は0%の非カルシウム研磨剤、例えば、シリカ及び/又はアルミナを含み得る。
【0045】
水
本発明の口腔ケア組成物は、無水、低含水製剤、又は高含水配合物である歯磨剤組成物であり得る。合計で、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約99重量%、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上、最大約45重量%、又は最大約75重量%の水を含み得る。好ましくは、水は、USP水である。
【0046】
高含水歯磨剤配合物では、歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約75重量%の水を含む。高含水歯磨剤組成物は、組成物の約45重量%~約65重量%、約45重量%~約55重量%、又は約46重量%~約54重量%の水を含み得る。水は、高含水歯磨剤配合物に直接添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に含まれてもよい。
【0047】
低含水歯磨剤配合物では、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約45重量%の水を含む。低含水歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%~約35重量%、約15重量%~約25重量%、又は約20重量%~約25重量%の水を含み得る。水は、低含水歯磨剤配合物に直接添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に含まれてもよい。
【0048】
無水歯磨剤配合物において、歯磨剤組成物は、組成物の約10重量%未満の水を含む。無水歯磨剤組成物は、組成物の約5重量%未満、約1重量%未満、又は0重量%の水を含む。水は、無水配合物に直接添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって歯磨剤組成物に含まれてもよい。
【0049】
歯磨剤組成物はまた、アルコール、保湿剤、ポリマー、界面活性剤、及び許容改善剤、例えば着香剤、甘味剤、着色剤、及び/又は冷感剤などの、他の口腔的に許容可能なキャリア材料を含み得る。
【0050】
口腔ケア組成物はまた、マウスリンス配合物であってもよい。マウスリンス配合物は、約75%~約99%、約75%~約95%、又は約80%~約95%の水を含み得る。
【0051】
pH
口腔ケア組成物は、1種以上の緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、本明細書で使用する場合、口腔ケア組成物のスラリーpHを7超、7超~約14、約7.5超、約8超、約7.5~約10、7超~約10、約8~約10、約8~約9.5、又は約8.5~約9の範囲に調整するために使用することができる薬剤を指す。マウスリンス溶液のpHは、未希釈溶液のpHとして決定することができる。歯磨剤組成物のpHは、スラリーpHとして決定することができ、歯磨剤組成物及び水の1:4、1:3、又は1:2混合物など、歯磨剤組成物及び水の混合物のpHである。緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、カーボネート、セスキカーボネート、ボレート、シリケート、ホスフェート、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロホスフェート、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。口腔ケア組成物は、1種以上の緩衝剤を各々が本組成物の約0.1重量%~約30重量%、約1重量%~約10重量%、又は約1.5重量%~約3重量%の濃度で含み得る。
【0052】
亜鉛
口腔ケア組成物は、亜鉛を含み得る。亜鉛は、亜鉛イオン源によって提供することができる。亜鉛イオン源は、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ヘキサフルオロジルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及び/又は炭酸亜鉛などの1つ以上の亜鉛含有化合物を含み得る。
【0053】
亜鉛イオン源は、全口腔ケア組成物中に、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在してもよい。
【0054】
フッ化物
口腔ケア組成物は、フッ化物を含み得る。フッ化物は、フッ化物イオン源によって提供することができる。フッ化物イオン源は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のフッ化物含有化合物を含み得る。
【0055】
フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化第一スズなどの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン源が塩化第一スズであり、フッ化物イオン源がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである場合など、別個の化合物であり得る。
【0056】
フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化亜鉛などの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン源がリン酸亜鉛であり、フッ化物イオン源がフッ化第一スズである場合など、別個の化合物であり得る。
【0057】
口腔ケア組成物は、約50ppm~約3500ppm、好ましくは約500ppm~約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができるフッ化物イオン源を含み得る。所望の量のフッ化物イオンを供給するために、フッ化物イオン源は、全口腔ケア組成物中に、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在してもよい。
【0058】
ポリホスフェート
口腔ケア組成物は、ポリホスフェートを含み得る。ポリホスフェートは、ポリホスフェート源によって提供することができる。ポリホスフェート源は、1つ以上のポリホスフェート分子を含み得る。ポリホスフェートは、様々な鎖長の直鎖状及び環状ポリホスフェートをもたらすための、オルトホスフェートの脱水及び縮合により得られる材料の部類である。したがって、ポリホスフェート分子は、一般に、以下に記載されるように、ポリホスフェート分子の平均数(n)で同定される。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖状構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなるものと理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在してもよい。
【0059】
好ましいポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、平均して2つ以上のホスフェート基を有するものである。本発明において好ましいものは、式:XO(XPO3)nX(式中、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は任意の他のアルカリ金属カチオンであり、nは平均約2~約21である)を有する直鎖状ポリホスフェートである。カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオンは、フッ化物イオン及びアルカリ土類金属カチオンを含む水溶液から不溶性フッ化物塩を形成する傾向があるため、好ましくない。したがって、本明細書に開示される口腔ケア組成物は、ピロリン酸カルシウムを含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。
【0060】
好適なポリホスフェート分子のいくつかの例としては、例えば、ピロホスフェート(n=2)、トリポリホスフェート(n=3)、テトラポリホスフェート(n=4)、ソーダフォス(sodaphos)ポリホスフェート(n=6)、ヘキサフォス(hexaphos)ポリホスフェート(n=13)、ベネフォス(benephos)ポリホスフェート(n=14)、ヘキサメタホスフェート(n=21)(Glass Hとしても知られる)が挙げられる。ポリホスフェートとしては、FMC Corporation、ICL Performance Products、及び/又はAstarisによって製造されるポリホスフェート化合物が挙げられ得る。
【0061】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1~約20重量%、又は約10重量%以下のポリホスフェート源を含み得る。
【0062】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、1種以上の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、組成物をより美容的に許容可能にするために使用することができる。界面活性剤は、好ましくは、組成物に洗浄性及び起泡性を付与する洗浄性材料である。好適な界面活性剤は、安全かつ有効な量のアニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及びベタイン界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルイセチオン酸ナトリウム、グルタミン酸ココイルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸及びオレオイルサルコシン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、N-ラウロイル、N-ミリストイル、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、及びエタノールアミン塩、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、パルミチルベタイン、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどである。ラウリル硫酸ナトリウムが、好ましい界面活性剤である。口腔ケア組成物は、1種以上の界面活性剤を各々が口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.3重量%~約10重量%、又は約0.3重量%~約2.5重量%の濃度で含み得る。
【0063】
増粘剤
口腔ケア組成物は、1種以上の増粘剤を含み得る。増粘剤は、口腔ケア組成物において、練り歯磨きを相分離に対して安定化させるゼラチン構造を提供するのに有用である。好適な増粘剤としては、多糖類、ポリマー、及び/又はシリカ増粘剤が挙げられる。多糖類のいくつかの非限定例としては、デンプン;デンプンのグリセライト;ガム、例えばカラヤガム(ステルクルアガム)、トラガカントガム、アラビアガム、ガティガム、アカシアガム、キサンタンガム、グアーガム及びセルロースガム;ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum);カラギーナン;アルギン酸ナトリウム;寒天;ペクチン;ゼラチン;セルロース化合物、例えばセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルカルボキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及び硫酸化セルロース;天然及び合成粘土、例えばヘクトライト粘土;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
増粘剤は、多糖類を含み得る。本明細書での使用に好適な多糖類としては、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボマー、ポロキサマー、変性セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。カラギーナンは、海藻由来の多糖類である。それらの海藻源によって、かつ/又はそれらの硫酸化の程度及び位置によって区別され得る、複数種類のカラギーナンが存在する。増粘剤は、カッパカラギーナン、変性カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、修飾イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、及びこれらの混合物を含み得る。本明細書での使用に好適なカラギーナンとしては、FMC Companyからシリーズ名「Viscarin」で市販されているものが挙げられ、限定するものではないが、Viscarin TP 329、Viscarin TP 388、及びViscarin TP 389が挙げられる。
【0065】
増粘剤は、1つ以上のポリマーを含み得る。ポリマーは、口腔ケア組成物の様々な重量パーセントの、並びに様々な範囲の平均分子範囲の、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリアクリル酸、少なくとも1つのアクリル酸モノマーから誘導されたポリマー、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマーであり得る。
【0066】
増粘剤は、無機増粘剤を含み得る。好適な無機増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ増粘剤が挙げられる。有用なシリカ増粘剤としては、例えば、非限定的な例として、ZEODENT(登録商標)165シリカなどの非晶質沈降シリカが挙げられる。他の非限定的なシリカ増粘剤としては、ZEODENT(登録商標)153、163及び167、並びにZEOFREE(登録商標)177及び265シリカ製品(全てEvonik Corporationから入手可能)、並びにAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカが挙げられる。
【0067】
口腔ケア組成物は、0.01%~約15%、0.1%~約10%、約0.2%~約5%、又は約0.5%~約2%の1種以上の増粘剤を含み得る。
【0068】
キレート剤
口腔ケア組成物は、1000未満の分子量(molecular weight、MW)を有する1種以上のキレート剤を含み得る。「キレート剤」という用語は、本明細書で使用する場合、二価金属イオンに結合することができる少なくとも2つの基を有する二座又は多座配位子を意味する。通常、本明細書で有用なそれらのキレート剤はまた、スズイオンと水溶性錯体を形成する。シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物は、通常、スズイオンがシリカ粒子の表面に不可逆的に結合するのを防止するために、スズイオンを可逆的に結合するための1種以上のキレート剤を含む。本明細書における好適なキレート剤としては、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸などのC2~C6ジカルボン酸及びトリカルボン酸;グルコン酸などの、ヒドロキシルで置換されたC3~C6モノカルボン酸;ピコリン酸;グリシンなどのアミノ酸;フィチン酸、これらの塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、キレート剤は、グルコン酸ナトリウム又はクエン酸の塩である。
【0069】
口腔ケア組成物は、1種以上のキレート剤を各々が口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.2重量%~約2重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約1重量%~約3重量%の濃度で含み得る。代替として、本発明の口腔ケア組成物がシリカ研磨剤の代わりにカルシウム研磨剤を含むため、口腔ケア組成物は、キレート剤を実質的に含まないか、又は含まなくてもよい。加えて、口腔ケア組成物は、1種以上のキレート剤を各々が口腔ケア組成物の約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の濃度で含み得る。
【0070】
他の成分
口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、着香剤、甘味料、着色剤、防腐剤、緩衝剤、又は口腔ケア組成物での使用に好適な他の成分などの様々な他の成分を含み得る。
【0071】
着香剤を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な着香剤としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、メチルサリチレート、ユーカリプトール、カッシア、1-メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、アルファ-イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-パラ-tert-ブチルフェニルアセテート、及びこれらの混合物が挙げられる。清涼剤も、着香剤系の一部であってもよい。本組成物に好ましい清涼剤は、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(商業的に「WS-3」として知られている)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤、又はN-(エトキシカルボニルメチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(商業的に「WS-5」として知られている)、及びこれらの混合物である。着香剤系は、一般に、組成物中で、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%の濃度で使用される。これらの着香剤は、一般に、アルデヒド、ケトン、エステル、フェノール、酸、並びに脂肪族、芳香族、及び他のアルコールの混合物を含む。
【0072】
製品に快い味を付与するために、甘味料を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な甘味料としては、サッカリン(ナトリウム、カリウム又はカルシウムサッカリンとして)、シクラメート(ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩として)、アセスルファムK、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、スクラロース、ステビア、及びグルコースが挙げられる。
【0073】
製品の審美的外観を改善するために、着色剤を添加してもよい。好適な着色剤としては、限定するものではないが、FDAなどの適切な規制機関によって承認されたそれらの着色剤、及びEuropean Food and Pharmaceutical Directivesに列挙されている着色剤が挙げられ、TiO2などの顔料、並びにFD&C及びD&C染料などの色素が挙げられる。
【0074】
細菌増殖を防止するために、防腐剤もまた、口腔ケア組成物に添加されてもよい。メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、及び安息香酸ナトリウムなどの、口腔用組成物中での使用が承認された好適な防腐剤を、安全かつ有効な量で添加することができる。
【0075】
二酸化チタンもまた本発明の組成物に添加してもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、口腔ケア組成物の約0.25重量%~約5重量%を含む。
【0076】
減感剤、治癒剤、他のう蝕予防剤、キレート剤/金属イオン封鎖剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、他の抗歯垢/抗歯石剤、乳白剤、抗生物質、抗酵素類、酵素類、pH調整剤、酸化剤、酸化防止剤などの他の成分を、口腔ケア組成物中で使用することができる。
【実施例】
【0077】
本発明は、以下の実施例によって更に例示され、これは、本発明の範囲に制限を課すものとして解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それらの様々な他の態様、修正、及び均等物が、当業者に想到され得る。
【0078】
実験方法
可溶性Sn
この方法は、水性スラリー上澄み中の約5~約5,000ppmのSnの口腔ケア練り歯磨き又は歯磨剤組成物中の可溶性スズの決定に好適である。1部の練り歯磨きを3部の水と混合することによってスラリーを調製した。スラリーのアリコートを酸消化し、希釈し、測定された各練り歯磨きについて、誘導結合プラズマ発光分析法(inductively coupled plasma optical emission spectrometry、ICP-OES)によって分析した。結果は、本明細書では、練り歯磨き及び/又は歯磨剤の純水相中のppmとして報告される。
【0079】
分析の開始前に、いくつかの標準物及び試薬を調製した。目盛りの付きのシリンダを使用して、約1Lの超純の18MΩ(DI)水を含む2Lのメスフラスコに、100mLの濃HCl及び濃HNO3の各々を移すことによって、5%塩酸/5%硝酸すすぎ溶液を調製した。溶液を撹拌して混合し、目盛り付きのフラスコのマークまで希釈した後、フラスコの反転を繰り返して十分混合した。
【0080】
表1に従って標準溶液を調製するために、1000mg/Lのスズ及び1000mg/Lのガリウム標準溶液を購入した(Sigma Aldrich、Merck KGaA,Darmstadt,Germany)。ピペットを使用して、正確な量の標準物を50mLのメスフラスコに移し、一方、目盛りの付いたシリンダを濃酸に使用した。移した後、メスフラスコをDI水でラインまで充填し、十分混合した。
【0081】
【0082】
2.00グラムの試料を、10個のガラスビーズを含む風袋計量済丸底38mL遠心分離チューブに秤量することによって、スラリーを調製した。重量を、スラリー化直前に最小0.001gに記録し、6.0mLのDI水をチューブに移した。チューブに蓋をしてボルテクサーに置き、試料を1200rpmで60分間混合した。混合サイクルの完了直後にチューブをボルテクサーから取り出して遠心分離機に入れた。それらを、21,000相対遠心力(relative centrifugal force、RCF)で10分間遠心分離した。遠心分離の完了直後に、チューブを取り出し、上澄みをゆっくりと3回反転させることによって穏やかに混合して、遠心分離チューブの底部にある中実プラグが試料をデカントする前に確実に妨害されないようにした。次いで、上澄みを15mLのねじ蓋試料チューブにデカントして、上澄みの大部分を確実に移した。
【0083】
次いで、上澄み試料を、50mLのFalconチューブに、上澄みの0.5mLのアリコートを正確に秤量すること(0.001gまで)によって、上澄み試料を消化した。次いで、2.5mLの濃HCl及びHNO3を添加した。チューブをポリプロピレン時計皿で覆い、90℃で30分間、予熱したブロック消化器に入れた。試料を熱から取り出し、時計クラスをDI水(毎回約1mL)で3回すすぎ、そのすすぎ液を消化した上澄みに添加した。ガリウム標準物(0.2mL)を消化した上澄みにピペットで入れた後、上澄み試料をDI水で50mLに希釈した。チューブに蓋をして混合した。上澄みの代わりに0.5mLのDI水を使用して、消化方法ブランクを同じように調製した。一度にホットブロックに適合させることができるよりも多くの試料を調製した場合に、方法ブランクを、ホットブロック消化の各セットについて調製及び分析した。
【0084】
ICP-OES(Perkin-Elmer 8300,Waltham、MA,USA)を、器具を作動させる能力が実証されている、訓練を受け、かつ資格を有する操作者が操作し、口腔ケア組成物中のスズの量を正確に決定した。製造業者の指示に従って、モデル及び構成に基づいてICP-OES操作パラメータを選択した。以下のプロトコルに従って試料を分析した。
1. ICP-OESを、製造業者のガイドラインに従って予熱し、最適化した。推奨されるシステムチェックを実行した。試料導入システムにHCl/HNO3すすぎ溶液を通過させることによって、システムを30分間コンディショニングした。
2. 製造業者推奨の波長、積分時間、及び観察モードで、ガリウム内部標準物を使用してスズを決定する方法を、操作コンピュータにロードした。
3. 5%HCl/5%HNO3すすぎ溶液を使用して、各ブランク、標準物、又は試験溶液の分析の間に試料導入システムをすすぎ洗いした。
4. 分析中、全ての溶液について3~5回の読み取り値を記録した。
5. 較正ブランクを分析した。
6. 10ppmのSn標準物を測定した。
7. 5ppmのSn標準物を測定した。
8. 0.5ppmのLLOQスズ標準物を測定した。
9. 方法ブランクを測定した。
10. 試験溶液を測定した。
11. 5ppmのSn標準物を、試験溶液6回毎及び最後の試料の後に再測定した。分析を完了するために十分な標準物を作製した。
12. 試料分析の終了時に、0.5ppmのLLOQスズ標準物を測定した。
【0085】
10ppm及び5ppmのスズ標準物の複製読み取り値の相対標準偏差%が約3%未満である場合、分析は成功したと考えられた。5ppmのチェック標準物は、その値の96~104%以内であった。LLOQは、その値の75~125%以内であった。方法ブランクは、LLOQ試料よりも少ないスズ信号強度を示した。分析された各溶液中の内部標準物の回収は、その値の90~130%以内であった。
【0086】
可溶性スズを以下の式に従って決定した。
【0087】
【0088】
7を超えるpHにおけるスズイオンの溶解度
ポリオール毎に30%(重量/重量)溶液を、適切な量の純粋なポリオール及び脱イオン水を使用して調製した。次に、46gの30%(重量/重量)ポリオール溶液を、磁気撹拌装置の上部に撹拌棒を備えた250mLガラスビーカーに入れた。21gの脱イオン水をガラスビーカーに添加し、磁気撹拌装置を開始して溶液の撹拌を開始した。pH電極をpHメーター(VWR Scientific、Model 9100,Radnor,PA)に接続し、pH電極(ThermoFisher Scientific、Orion 8165BNWP,Waltham,MA)を撹拌ポリオール溶液に入れた。
【0089】
0.45グラムのフッ化第一スズなどのスズイオン源を撹拌ポリオール溶液に添加した。スズイオン源を完全に添加した後、pHを記録した。溶液のpHは、NaOHの33%(重量/重量)溶液を滴下することによって上昇させた。
【0090】
7未満のpHにおけるスズイオンの溶解度
ポリオール毎に30%(重量/重量)溶液を、適切な量の純粋なポリオール及び脱イオン水を使用して調製した。次に、46gの30%(重量/重量)ポリオール溶液を、磁気撹拌装置の上部に撹拌棒を備えた250mLガラスビーカーに入れた。21gの脱イオン水をガラスビーカーに添加し、磁気撹拌装置を開始して溶液の撹拌を開始した。pH電極をpHメーター(VWR Scientific、Model 9100,Radnor,PA)に接続し、pH電極(ThermoFisher Scientific、Orion 8165BNWP,Waltham,MA)を撹拌ポリオール溶液に入れた。
【0091】
0.45グラムのフッ化第一スズなどのスズイオン源を撹拌ポリオール溶液に添加した。スズイオン源を完全に添加した後、pHを記録した。溶液のpHは、HClの33%(重量/重量)溶液を滴下することによって低下させた。
【0092】
【0093】
表2は、異なるpH範囲における様々なポリオールの存在下でのSn(OH)
2などの不溶性スズ化合物の形成を示す。混濁して見えた溶液は、不溶性スズ錯体の形成を示した。7を超えるpHでは、混濁した溶液は、Sn(OH)
2の形成を示した。
図1~
図4は、表2に記載の各溶液の外観を示すことによって、表2を示す。
【0094】
CaCO3などのカルシウム研磨剤を含む歯磨剤組成物は、塩基性pH(又は7超)を有し得る。したがって、ポリオールを、Sn(OH)2の形成の防止におけるその有効性についてスクリーニングした。例えば、ソルビトール及びフッ化第一スズの水溶液は、pH2~4で透明であった。しかしながら、pHが上昇すると、ソルビトール及びフッ化第一スズの溶液は、pH8~10(透明に見える)になるまで混濁して見えた。キシリトール及びフッ化第一スズの水溶液は、pH2~4で透明であった。しかしながら、pHが上昇すると、キシリトール及びフッ化第一スズの溶液は、pH8~10(透明に見える)になるまで混濁して見えた。対照的に、エリトリトール/フッ化第一スズ及びグリセリン/フッ化第一スズの溶液は混濁しており、これらのポリオールが7を超えるpHでSn(OH)2の形成を防止しなかったことを示していた。
【0095】
4未満の水溶液も透明であることが観察されたが、ヒドロキシアパタイトなどの無機リン酸カルシウム化合物の溶解度が低pH条件で増加するため、これらのpH範囲は望ましくない。換言すれば、第一スズはpH4で安定であり得るが、歯のエナメル質もこれらの条件下で可溶化され得る。
【0096】
重要なことに、表2は、驚くべきことに、スズイオンがポリオールとの可溶性錯体を形成できることを実証し、これにより、高pHでのSn(OH)2などの不溶性スズ化合物の形成が防止された。不溶性スズ化合物が形成されると、スズイオンの利用能が低下し得、スズイオン源の有効性が低下する場合がある。理論に束縛されるものではないが、キシリトール(5炭素原子)及び/又はソルビトール(6炭素原子)などの5つ以上の炭素原子を有する糖アルコールは、第一スズなどのスズイオンと錯体を形成する場合があり、錯体は、7を超えるpHで水性歯磨剤組成物中で可溶性であり得ると考えられる。したがって、フッ化第一スズは、フッ化第一スズを5つ以上の炭素原子を有する糖アルコールと対合させることによって、炭酸カルシウムなどの塩基のように作用する研磨剤を含む水性歯磨剤組成物に配合することができる。この結果は予想外であり、これは、5つ以上の炭素原子を有する糖アルコールが可溶性スズ錯体を形成し得る一方で、5未満の糖アルコール、例えばエリトリトール(4個の炭素)及び/又はグリセリン(3個の炭素)が、Sn(OH)2などの不溶性スズ化合物の形成を防止せず、これらのより小さな糖アルコールが、フッ化第一スズと水中で組み合わせたときに8~10のpHで可溶性スズ錯体を形成しないことを示した。好適な口腔ケア組成物を、表3、表4、及び表5に提示する。
【0097】
しかしながら、表6及び表7に示すように、これらの好適な口腔ケア組成物は、視覚的に安定であるが、若干量の不溶性スズ錯体を依然として実証し得る。例えば、最初にpH7.3を有する実施例1は、576ppmの初期可溶性Sn量のみを有した。実施例1の可溶性Sn量は、2か月までに248ppmに降下した。しかしながら、ピロホスフェート(実施例3)又はトリポリホスフェート(実施例2)の添加時に、可溶性Sn量は、最初に1300ppm(実施例2)及び1290ppm(実施例3)であり、3か月後、Snの初期量が変更されていないにもかかわらず、依然として1080ppm(実施例2)及び866ppm(実施例3)であった。理論に束縛されるものではないが、追加のポリホスフェート分子は、7を超えるpHでSn-ポリオール錯体を更に安定化させることができると考えられる。
【0098】
加えて、この効果は、これらの条件下では、Snが更により反応性であるため、pH9で更により印象的である。実施例4(ポリリン酸を含まない)は、最初に、550ppmの可溶性Sn量を有し、一方、実施例5(トリポリホスフェート)及び実施例6(ピロホスフェート)は、最初に、それぞれ664ppm及び709ppmの可溶性Sn量を有した。この予想外の結果は、3か月後でも観察され、実施例4は、303ppmの可溶性Sn量を有し、実施例5(トリポリホスフェート)は、513ppmの可溶性Sn量を有し、実施例6(ピロホスフェート)は、479ppmの可溶性Sn量を有した。
【0099】
【表3】
a水中の28%溶液、
b水中の50%溶液、
c水中の30%溶液
【0100】
全体として、理論に束縛されるものではないが、追加のポリホスフェート分子は、7を超えるpHでSn-ポリオール錯体を更に安定化させることができると考えられる。これは、Snが7を超えるpHで安定性が低いことが知られているため予想外であるが、これらのpH条件は、エナメル質の再石灰化により好ましい。したがって、これらの条件を利用することができる組成物は、歯に固有の化学物質を供給することができる。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、別途指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0106】
任意の相互参照される又は関連する特許又は特許出願、及び本出願がその優先権又は利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は別途限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示若しくは特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとは見なされず、又はそれが、単独で若しくは他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆若しくは開示するとは見なされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する範囲では、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0107】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。