(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ミストコレクタおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
B01D 46/10 20060101AFI20230613BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230613BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B01D46/10 E
B01D46/10 D
B23Q11/00 K
B23Q11/08 Z
(21)【出願番号】P 2022544986
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032315
(87)【国際公開番号】W WO2022044188
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 研次郎
(72)【発明者】
【氏名】小菅 正裕
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-055839(JP,A)
【文献】実開昭58-031023(JP,U)
【文献】実開平06-007822(JP,U)
【文献】実開平03-119412(JP,U)
【文献】特開2003-172129(JP,A)
【文献】実開昭55-174920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流と交差するように設けられており、ミストを捕集するためのフィルタと、
流体を噴出可能な噴出口を含み、前記噴出口が前記フィルタと対向するように配置される
とともに、前記フィルタを通過する気流の流れ方向において、前記フィルタよりも下流側に配置されるノズルと、
前記噴出口が対向する前記フィルタにおける位置が変化するように、前記フィルタおよび前記ノズルの少なくともいずれか一方を動作させる駆動部とを備え
、
前記駆動部は、前記フィルタによりミストを捕集する場合に、前記フィルタおよび前記ノズルの相対速度が第1速度となり、前記噴出口から前記フィルタに向けて流体を噴出する場合に、前記フィルタおよび前記ノズルの相対速度が前記第1速度よりも遅い第2速度となるように、前記フィルタおよび前記ノズルの少なくとも一方を駆動する、ミストコレクタ。
【請求項2】
前記ノズルは、固定されており、
前記駆動部は、前記フィルタを動作させる、請求項1に記載のミストコレクタ。
【請求項3】
前記フィルタは、所定軸を中心とする円盤形状を有し、前記所定軸に直交するフィルタ表面を含み、
前記駆動部は、前記所定軸を中心に前記フィルタを回転させ、
前記ノズルは、前記噴出口が前記フィルタ表面と対向するように配置される、請求項1または2に記載のミストコレクタ。
【請求項4】
前記ノズルは、前記所定軸の半径方向に沿って並ぶ複数の前記噴出口を含む、請求項3に記載のミストコレクタ。
【請求項5】
前記フィルタを通過する気流を発生させるためのファンをさらに備え、
前記駆動部は、前記フィルタとともに前記ファンを回転させる、請求項3または4に記載のミストコレクタ。
【請求項6】
加工エリアを区画形成するカバー体と、
前記カバー体に接続され、前記加工エリア内で発生したミストが導かれる、請求項1から
5のいずれか1項に記載のミストコレクタとを備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミストコレクタおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、実開平6-36742号公報(特許文献1)には、開口部が設けられる全体カバーと、開口部に配置される自動開閉カバーと、開口部の対向二辺に設けられる複数の吐出口および吸入口と、ダクトを介して吸入口と接続されるミスト回収装置とを備える工作機械用ミスト飛散防止装置が開示されている。自動開閉カバーが開いた場合に、吐出口から吸入口に向かう空気流れを設けることによって、エアカーテンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、加工エリア内で生じたミストを回収するためのミストコレクタが知られている。工作機械においてクーラントを用いてワークの加工を行なうと、加工熱により温められたクーラントがミスト状(霧状)になる。このようなオイルミストが工作機械の機外に排出されると、工場内を汚損する原因となるため、工作機械にはミストコレクタが設置されている。
【0005】
ミストコレクタには、オイルミストを捕集するためのフィルタが設けられている。しかしながら、ミストコレクタには、オイルミストに加えて、ワーク加工に伴って発生する微細な切屑等が流入することが想定される。このため、微細な切屑等がフィルタの目詰まりを起こし、オイルミストの効率的な捕集が損なわれる可能性がある。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、フィルタの目詰まりを防ぐことが可能なミストコレクタと、そのようなミストコレクタを備える工作機械とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従ったミストコレクタは、気流と交差するように設けられており、ミストを捕集するためのフィルタと、流体を噴出可能な噴出口を含み、噴出口がフィルタと対向するように配置されるとともに、フィルタを通過する気流の流れ方向において、フィルタよりも下流側に配置されるノズルと、噴出口が対向するフィルタにおける位置が変化するように、フィルタおよびノズルの少なくともいずれか一方を動作させる駆動部とを備える。駆動部は、フィルタによりミストを捕集する場合に、フィルタおよびノズルの相対速度が第1速度となり、噴出口からフィルタに向けて流体を噴出する場合に、フィルタおよびノズルの相対速度が第1速度よりも遅い第2速度となるように、フィルタおよびノズルの少なくとも一方を駆動する。
この発明の別の局面に従ったミストコレクタは、ミストを捕集するためのフィルタと、流体を噴出可能な噴出口を含み、噴出口がフィルタと対向するように配置されるノズルと、噴出口が対向するフィルタにおける位置が変化するように、フィルタおよびノズルの少なくともいずれか一方を動作させる駆動部とを備える。
【0008】
このように構成されたミストコレクタによれば、駆動部によりフィルタおよびノズルの少なくともいずれか一方を動作させることにより、噴出口が対向するフィルタにおける位置を変化させつつ、噴出口からフィルタに向けて流体を噴出する。これにより、フィルタを清浄にして、フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【0009】
また好ましくは、ノズルは、固定されている。駆動部は、フィルタを動作させる。
このように構成されたミストコレクタによれば、ノズルを固定式とすることにより、簡易な構成で、フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
【0010】
また好ましくは、フィルタは、所定軸を中心とする円盤形状を有し、所定軸に直交するフィルタ表面を含む。駆動部は、所定軸を中心にフィルタを回転させる。ノズルは、噴出口がフィルタ表面と対向するように配置される。
【0011】
このように構成されたミストコレクタによれば、フィルタによりミストを捕集する場合に、フィルタを回転させることによって、ミストがフィルタを通過することを抑制できる。これにより、フィルタによってミストを効率的に捕集することができる。また、噴出口からフィルタ表面に向けて流体を噴出する場合に、フィルタを回転させることによって、噴出口が対向するフィルタにおける位置を変化させることができる。これにより、フィルタを効率的に清浄にすることができる。
【0012】
また好ましくは、ノズルは、所定軸の半径方向に沿って並ぶ複数の噴出口を含む。
このように構成されたミストコレクタによれば、フィルタの回転に伴って、フィルタ表面のより広い範囲に向けて流体を噴出することができる。
【0013】
また好ましくは、ミストコレクタは、フィルタを通過する気流を発生させるためのファンをさらに備える。駆動部は、フィルタとともにファンを回転させる。
【0014】
このように構成されたミストコレクタによれば、駆動部を、フィルタの回転と、ファンの回転とに共用することによって、ミストコレクタの構成を簡易にできる。
【0015】
また好ましくは、駆動部は、フィルタによりミストを捕集する場合に、フィルタおよびノズルの相対速度が第1速度となり、噴出口からフィルタに向けて流体を噴出する場合に、フィルタおよびノズルの相対速度が第1速度よりも遅い第2速度となるように、フィルタおよびノズルの少なくとも一方を駆動する。
【0016】
このように構成されたミストコレクタによれば、噴出口からフィルタに向けて流体を噴出する場合に、フィルタおよびノズルの相対速度を第1速度よりも遅い第2速度とすることによって、フィルタを効率的に清浄にすることができる。
【0017】
また好ましくは、ノズルは、フィルタを通過する気流の流れ方向において、フィルタよりも下流側に配置される。
【0018】
このように構成されたミストコレクタによれば、フィルタの目詰まりは、主に、フィルタを通過する気流の流れ方向の上流側に生じる。このため、フィルタを通過する気流の流れ方向の下流側からフィルタに向けて流体を噴出することによって、フィルタの目詰まりをより効果的に防ぐことができる。
【0019】
この発明に従った工作機械は、加工エリアを区画形成するカバー体と、カバー体に接続され、加工エリア内で発生したミストが導かれるミストコレクタとを備える。
【0020】
このように構成された工作機械によれば、加工エリア内に生じたミストを、ミストコレクタにより効率的に回収することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、この発明に従えば、フィルタの目詰まりを防ぐことが可能なミストコレクタと、そのようなミストコレクタを備える工作機械とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1中のミストコレクタを示す断面図である。
【
図3】フィルタの洗浄時におけるフィルタおよびノズルを示す斜視図である。
【
図4】オイルミストの捕集時におけるフィルタおよびノズルを示す斜視図である。
【
図5】
図3および
図4中のノズルの第1変形例を示す上面図である。
【
図6】
図3および
図4中のノズルの第2変形例を示す上面図である。
【
図7】
図3および
図4中のノズルの第3変形例を示す上面図である。
【
図8】
図3および
図4中のノズルの第4変形例を示す上面図である。
【
図9】
図2中のミストコレクタを工作機械に設置する形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0024】
図1は、工作機械を示す斜視図である。
図1を参照して、工作機械100は、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋盤である。工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0025】
本明細書においては、工作機械100の構造を説明する便宜上、工作機械100の左右方向(幅方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、工作機械100の前後方向(奥行き方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、鉛直方向に延びる軸を「X軸」という。
【0026】
まず、本実施の形態におけるミストコレクタ31が用いられる工作機械100の全体構造について説明する。
【0027】
工作機械100は、カバー体21を有する。カバー体21は、加工エリア200を区画形成するとともに、工作機械100の外観をなしている。加工エリア200は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が加工エリア200の外側に漏出しないように密閉されている。
【0028】
加工エリア200には、Z軸に平行な回転中心軸210を中心にワークを回転させるためのワーク主軸11と、複数の工具を保持し、Z軸方向に平行な旋回中心軸220を中心に旋回可能なタレットタイプの刃物台12とが配置されている。刃物台12は、Z軸方向と、Y軸方向成分およびX軸方向成分を含む斜め方向とに移動可能である。加工エリア200には、ワークの回転中心を支持するための心押し台、または、Z軸方向においてワーク主軸11と対向して配置される対向ワーク主軸がさらに配置されてもよい。
【0029】
カバー体21には、開口部26が設けられている。開口部26は、加工エリア200を外部空間に開放している。
【0030】
カバー体21は、第1サイドカバー22および第2サイドカバー23と、天井カバー24とを有する。
【0031】
第1サイドカバー22および第2サイドカバー23は、Z軸方向おいて、開口部26の両側にそれぞれ設けられている。第1サイドカバー22には、操作パネル28が設けられている。操作パネル28は、作業者が工作機械100を操作する際に用いる各種のボタンおよびスイッチ、ならびに、工作機械100におけるワークの加工状態等を示す表示部などを含む。第2サイドカバー23の内側には、ワーク主軸11等が配置されている。
【0032】
天井カバー24は、工作機械100の天井に配置されている。第1サイドカバー22、第2サイドカバー23および天井カバー24により、開口部26が画定されている。
【0033】
工作機械100は、扉部25をさらに有する。扉部25は、開口部26に設けられている。扉部25は、開口部26を開状態とする開位置(
図1中に示される扉部25の位置)と、開口部26を閉状態とする閉位置との間において、Z軸方向にスライド動作可能である。扉部25は、開位置に位置決めされた場合に、第2サイドカバー23と重なって配置される。扉部25は、閉位置に位置決めされた場合に、加工エリア200を区画形成している。
【0034】
工作機械100は、ミストコレクタ31をさらに有する。ミストコレクタ31は、カバー体21に接続されている。ミストコレクタ31には、加工エリア200から、クーラントがミスト状となったオイルミストが導かれる。ミストコレクタ31は、空気中に含まれるオイルミストを回収し、清浄な空気を排出する装置である。
【0035】
ミストコレクタ31は、ケース体36を有する。ケース体36は、ミストコレクタ31の外観をなす筐体からなる。ケース体36は、全体として、仮想上の中心軸101を中心とする円筒形状を有する。
【0036】
ケース体36には、吸気口34と、排気口37とが設けられている。吸気口34および排気口37は、中心軸101の軸方向において互いに離れて設けられている。吸気口34は、中心軸101の軸方向におけるケース体36の一方端において、中心軸101の軸方向を向いて開口している。ケース体36は、吸気口34が開口する位置で縮径する先細り形状を有する。排気口37は、中心軸101の軸方向におけるケース体36の他方端において、中心軸101の半径方向外側を向いて開口している。
【0037】
ミストコレクタ31は、ダクト32を介してカバー体21に接続されている。ケース体36内の空間は、ダクト32を通じて加工エリア200と連通している。ダクト32の一方端は、吸気口34に接続され、ダクト32の他方端は、第1サイドカバー22に接続されている。ダクト32が接続されるカバー体21の位置は、特に限定されず、たとえば、天井カバー24であってもよい。
【0038】
ミストコレクタ31は、天井カバー24上に設置されている。ミストコレクタ31は、支持脚33によって、天井カバー24上に支持されている。ミストコレクタ31は、中心軸101が上下方向に延びる姿勢に支持されている。ミストコレクタ31は、吸気口34が下方を向いて開口し、排気口37が吸気口34よりも上方に配置される姿勢に支持されている。
【0039】
続いて、ミストコレクタ31の構造について詳細に説明する。
図2は、
図1中のミストコレクタを示す断面図である。
【0040】
図2を参照して、ミストコレクタ31は、第1隔壁部41と、第2隔壁部46と、第3隔壁部51とをさらに有する。第1隔壁部41、第2隔壁部46および第3隔壁部51は、ケース体36内に設けられている。第1隔壁部41、第2隔壁部46および第3隔壁部51は、中心軸101に直交する平板からなる。第1隔壁部41、第2隔壁部46および第3隔壁部51は、水平面に平行に配置されている。
【0041】
第1隔壁部41、第2隔壁部46および第3隔壁部51は、上下方向(中心軸101の軸方向)において、互いに間隔を設けて並んでいる。第1隔壁部41は、吸気口34の上方に設けられている。第2隔壁部46は、第1隔壁部41の上方に設けられている。第3隔壁部51は、第2隔壁部46の上方に設けられている。
【0042】
第1隔壁部41の下方には、第1内部空間110が形成されている。吸気口34は、第1内部空間110に開口している。第1隔壁部41および第2隔壁部46の間には、第2内部空間120が形成されている。第2隔壁部46および第3隔壁部51の間には、第3内部空間130が形成されている。第3隔壁部51の上方には、第4内部空間140が形成されている。排気口37は、第4内部空間140に開口している。
【0043】
ミストコレクタ31は、衝突板43をさらに有する。衝突板43は、第1内部空間110に設けられている。衝突板43は、中心軸101の軸方向において、第1隔壁部41から下方に突出するように設けられている。衝突板43は、下方を向いて開口する受け皿形状を有する。衝突板43は、中心軸101を中心とする円錐状の受け皿形状を有する。衝突板43がなす開口は、中心軸101の軸方向において、吸気口34がケース体36になす開口と対向している。
【0044】
第1隔壁部41には、第1開口部42が設けられている。第1開口部42は、中心軸101の軸方向において第1隔壁部41を貫通する貫通孔からなる。第1開口部42は、第1内部空間110および第2内部空間120を互いに連通させている。第1開口部42は、中心軸101の軸方向に見た場合に、衝突板43からずれた位置に設けられている。第1開口部42は、中心軸101の軸方向に見た場合に、衝突板43の外周上に設けられている。
【0045】
図3は、フィルタの洗浄時におけるフィルタおよびノズルを示す斜視図である。
図4は、オイルミストの捕集時におけるフィルタおよびノズルを示す斜視図である。
【0046】
図2から
図4を参照して、ミストコレクタ31は、フィルタ81をさらに有する。フィルタ81は、オイルミストを捕集可能なように構成されている。
【0047】
フィルタ81は、第2内部空間120に配置されている。フィルタ81は、中心軸101を中心とする円盤形状を有する。フィルタ81は、第1フィルタ表面82aと、第2フィルタ表面82bとを有する。第1フィルタ表面82aおよび第2フィルタ表面82bは、中心軸101に直交する平面からなる。第1フィルタ表面82aは、中心軸101の軸方向において、第2隔壁部46と対向している。第2フィルタ表面82bは、中心軸101の軸方向において、第1隔壁部41と対向している。
【0048】
図3および
図4に示されるように、フィルタ81は、フィルタ本体部87と、フレーム部86とを有する。フィルタ本体部87は、オイルミストを捕集するフィルタ81の本体部分である。フィルタ本体部87は、微細な孔が並ぶ網目状のメッシュ体からなる。フィルタ本体部87の網目の大きさ(各孔の最小隙間)は、30μm以上1000μm以下の範囲であってもよいし、50μm以上80μm以下の範囲であってもよい。フレーム部86は、フィルタ本体部87を保持する保持体である。
【0049】
フレーム部86は、円盤部86kと、リング部86jと、連結部86hとを有する。円盤部86kは、中心軸101を中心とする円盤形状を有する。円盤部86kの直径は、フィルタ81の直径よりも小さい。リング部86jは、中心軸101を中心とするリング形状を有する。リング部86jは、フィルタ81の外周縁に沿って周回するように設けられている。連結部86hは、円盤部86kおよびリング部86jを連結している。連結部86hは、直線状に延びている。連結部86hの一方端は、円盤部86kに接続され、連結部86hの他方端は、リング部86jに接続されている。
【0050】
フィルタ本体部87は、円盤部86k、リング部86jおよび連結部86hにより保持されている。フィルタ本体部87は、円盤部86kおよびリング部86jの間にあって、中心軸101を中心にベルト状に周回する領域に設けられている。フィルタ本体部87は、中心軸101の軸方向において、第1開口部42と対向している。
【0051】
なお、
図3および
図4中には、中心軸101の半径方向に延びる4本の連結部86hが示されているが、連結部86hの数およびレイアウトは、特に限定されない。たとえば、複数本の連結部86hが、円盤部86kおよびリング部86jの間において格子状に設けられてもよい。
【0052】
ミストコレクタ31は、ノズル91をさらに有する。ノズル91は、噴出口93を有する。噴出口93は、流体を噴出可能な開口をなしている。ノズル91は、噴出口93がフィルタ81と対向するように配置されている。ノズル91は、固定されている。
【0053】
ノズル91は、第2内部空間120に配置されている。ノズル91は、中心軸101の軸方向において、フィルタ81および第2隔壁部46の間に配置されている。ノズル91が、フィルタ81を通過する気流の流れ方向において、フィルタ81よりも下流側に配置されている。噴出口93は、第1フィルタ表面82aと対向している。噴出口93は、フィルタ本体部87と対向している。噴出口93は、円形の開口形状を有する。
【0054】
第2内部空間120には、支持部材44がさらに設けられている。支持部材44は、第1隔壁部41および第2隔壁部46の間において、中心軸101の軸方向に延びる壁形状を有する。支持部材44は、フィルタ81から、中心軸101の半径方向外側に離れた位置に設けられている。ノズル91は、支持部材44により支持されている。ノズル91は、支持部材44により支持されることによって、第2内部空間120において固定されている。
【0055】
ノズル91は、中心軸101の半径方向に延びている。ノズル91は、中心軸101の軸方向におけるノズル91およびフィルタ81間の距離が、中心軸101の半径方向の位置にかかわらず一定となるように設けられている。
【0056】
図3および
図4に示されるように、ノズル91は、複数の噴出口93(93a,93b,93c)を有する。複数の噴出口93(93a,93b,93c)は、中心軸101の半径方向に沿って並んでいる。噴出口93a、噴出口93bおよび噴出口93cは、挙げた順に、中心軸101の半径方向内側から半径方向外側に向けて並んでいる。
【0057】
ノズル91にはクーラントが供給される。ノズル91には、工作機械100に併設されたクーラントタンクからのクーラントが供給される。ノズル91に供給されたクーラントは、噴出口93を通じて、フィルタ81(フィルタ本体部87)に噴出される。なお、噴出口93を通じてフィルタ81に噴出される流体は、クーラントに限られず、たとえば、エアであってもよい。
【0058】
図2を参照して、第2内部空間120には、整流ファン72がさらに配置されている。整流ファン72は、中心軸101の軸方向において、フィルタ81および第2隔壁部46の間に配置されている。整流ファン72は、固定式であって、後述するファン71の回転に伴って形成される空気流れを整えるための静翼である。整流ファン72は、第2隔壁部46に固定されている。
【0059】
ノズル91は、中心軸101の軸方向および半径方向において、整流ファン72と重なる位置に設けられている。整流ファン72は、複数枚の翼72pを有する。ノズル91は、互いに隣り合う複数枚の翼72p間の空間に配置されている。
【0060】
第2隔壁部46には、第2開口部47が設けられている。第2開口部47は、中心軸101の軸方向において第2隔壁部46を貫通する貫通孔からなる。第2開口部47は、第2内部空間120および第3内部空間130を互いに連通させている。第2開口部47は、中心軸101を中心とする円形の開口をなしている。第2開口部47がなす開口は、中心軸101の軸方向において、フィルタ81の円盤部86kと対向している。
【0061】
ミストコレクタ31は、モータ61(駆動部)と、シャフト64とをさらに有する。モータ61は、ノズル91の噴出口93が対向するフィルタ81における位置が変化するように、フィルタ81を動作させる。
【0062】
モータ61は、第4内部空間140に設けられている。モータ61は、回転を出力する出力軸62を有する。出力軸62は、中心軸101の軸上で延び、第3内部空間130に向けて延出している。モータ61は、出力軸62の回転中心が中心軸101となるように設けられている。
【0063】
シャフト64は、第2開口部47を通って、第2内部空間120および第3内部空間130の間で延びている。シャフト64は、中心軸101の軸上で延びている。シャフト64は、モータ61(出力軸62)およびフィルタ81を連結している。シャフト64の一方端は、カップリング63を介して出力軸62に接続されている。シャフト64の他方端は、フィルタ81に接続されている。シャフト64の他方端は、円盤部86kに接続されている。
【0064】
第3隔壁部51には、第3開口部52が設けられている。第3開口部52は、中心軸101の軸方向において第3隔壁部51を貫通する貫通孔からなる。第3開口部52は、第3内部空間130および第4内部空間140を互いに連通させている。第3開口部52は、中心軸101の軸方向に見た場合に、モータ61の外周上に設けられている。
【0065】
ミストコレクタ31は、ファン71をさらに有する。ファン71は、フィルタ81(フィルタ本体部87)を通過する気流を発生させるための動翼である。
【0066】
ファン71は、第3内部空間130に設けられている。ファン71は、中心軸101の軸方向において、モータ61(出力軸62)およびフィルタ81の間に配置されている。ファン71は、出力軸62およびフィルタ81の間において、シャフト64に接続されている。
【0067】
モータ61の駆動時、出力軸62からの回転が、シャフト64を介してファン71およびフィルタ81に伝達される。これにより、ファン71およびフィルタ81は、中心軸101を中心に回転する。ファン71が回転することにより、ケース体36内には、
図2中の矢印に示される吸気口34から排気口37に向かう気流が形成される。
【0068】
加工エリア200内で発生したオイルミストを含む空気は、ファン71の回転に伴って、
図1中のダクト32を通ってミストコレクタ31に導かれる。空気は、吸気口34を通じて第1内部空間110に進入する。このとき、空気が衝突板43に衝突することによって、空気中に含まれる切屑等が除去される。
【0069】
空気は、第1内部空間110から第1開口部42を通じて第2内部空間120に進入する。空気は、第2内部空間120において、中心軸101を中心に回転するフィルタ81(フィルタ本体部87)を通過する。このとき、空気がフィルタ本体部87の網目を通過する一方で、空気中に含まれるオイルミストは、高速回転するフィルタ本体部87と衝突して、フィルタ本体部87の網目を通過することができない。これにより、空気と、オイルミストとが分離される。分離されたオイルミストは、図示しないドレンを通じて、工作機械100の加工エリア200内またはクーラントタンクに回収される。
【0070】
オイルミストが分離された空気は、第2開口部47を通じて第3内部空間130に進入し、さらに、第3開口部52を通じて第4内部空間140に進入する。空気は、第4内部空間140において、中心軸101を中心に螺旋状に流れたあと、排気口37を通じて外部空間に排出される。
【0071】
なお、排気口37には、最終的なフィルタがさらに設けられてもよい。排気口37から排出された空気は、工作機械100の加工エリア200内に戻されてもよい。
【0072】
オイルミストの捕集が繰り返し行なわれると、オイルミストとともにミストコレクタ31に導かれた微細な切屑等が、フィルタ81(フィルタ本体部87)を目詰まりさせる。これに対して、本実施の形態では、
図2および
図3に示されるように、モータ61の駆動によりフィルタ81を回転させながら、ノズル91にクーラントを供給する。これにより、ノズル91の噴出口93が対向するフィルタ81における位置を変化させつつ、噴出口93からフィルタ81に向けてクーラントを噴出する。これにより、クーラントによりフィルタ81を洗浄して、フィルタ81の目詰まりを防ぐことができる。
【0073】
また、本実施の形態では、複数の噴出口93(93a,93b,93c)が、中心軸101の半径方向に沿って並んでいる。このような構成によれば、複数の噴出口93(93a,93b,93c)が対向するフィルタ81(フィルタ本体部87)における位置が、フィルタ81の回転中心である中心軸101の半径方向に並び、その位置が、フィルタ81に回転に伴って、中心軸101の周方向に移動する。このため、フィルタ81(フィルタ本体部87)のより広い範囲に効率的にクーラントを供給することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、ノズル91が、フィルタ81を通過する気流の流れ方向において、フィルタ81よりも下流側に配置されている。
【0075】
フィルタ81の目詰まりは、主に、フィルタ81を通過する気流の流れ方向の上流側のフィルタ表面(第2フィルタ表面82b)で生じる。このため、ノズル91から、第2フィルタ表面82bとは反対側の第1フィルタ表面82aに向けてクーラントを噴出することによって、フィルタ81の目詰まりをより効果的に解消することができる。
【0076】
上記のフィルタ81の洗浄工程は、オイルミストの捕集工程が一定時間行なわれたタイミングで自動的に実行されてもよいし、操作パネル28を通じて作業者からの指示を受けた場合に実行されてもよい。また、ケース体36内に空気の流量計を設けておき、ケース体36内に流れる空気流量が所定値以下となったタイミングで、フィルタ81の洗浄工程を実行してもよい。
【0077】
図3および
図4に示されるように、モータ61は、フィルタ81の洗浄を行なう場合のフィルタ81の回転速度が、オイルミストを捕集する場合のフィルタ81の回転速度よりも遅くなるように、フィルタ81を回転駆動させてもよい。このような構成によれば、フィルタ81の洗浄工程において、フィルタ81(フィルタ本体部87)の各位置により確実にクーラントを供給することが可能となるため、フィルタ81を効率的に洗浄することができる。
【0078】
フィルタ81によりオイルミストを捕集する場合のフィルタ本体部87の周速は、10m/s以上であってもよいし、50m/s以上であってもよい。フィルタ81の洗浄を行なう場合のフィルタ本体部87の周速は、1m/s以下であってもよいし、0.1m/s以下であってもよい。
【0079】
なお、本発明においては、固定されたフィルタに対してノズルを動作させることによって、噴出口が対向するフィルタにおける位置を変化させてもよいし、フィルタおよびノズルの双方を動作させることによって、噴出口が対向するフィルタにおける位置を変化させてもよい。フィルタおよび/またはノズルの動作は、回転動作に限られず、たとえば、直線方向に沿った往復移動であってもよいし、矩形または円周等の所定経路を繰り返し循環する移動であってもよい。フィルタおよび/またはノズルの動作は、噴出口が対向するフィルタ表面の面方向における移動であることが好ましい。
【0080】
また、本発明において、噴出口より噴出される流体は特に限定されず、たとえば、エアであってもよい。
【0081】
図5から
図8は、
図3および
図4中のノズルの変形例を示す上面図である。
図5を参照して、本変形例では、ノズル91が、噴出口94を有する。噴出口94は、中心軸101の半径方向が長手方向となり、中心軸101の周方向が幅方向となるスリット形状を有する。
【0082】
図6を参照して、本変形例では、ノズル91が、中心軸101の周方向に変位しながら、中心軸101の半径方向に延びている。ノズル91は、複数の噴出口95(95a,95b,95c,95d,95e)を有する。複数の噴出口95(95a,95b,95c,95d,95e)は、中心軸101の周方向に変位しながら、中心軸101の半径方向に延びる直線に沿って並んでいる。
【0083】
図7を参照して、本変形例では、ノズル91が、複数の第1噴出口96(96a,96b,96c)と、複数の第2噴出口97(97a,97b,97c)とを有する。複数の第1噴出口96(96a,96b,96c)は、中心軸101の半径方向に沿って並んでいる。複数の第2噴出口97(97a,97b,97c)は、中心軸101の半径方向に沿って並んでいる。第1噴出口96a、第1噴出口96bおよび第1噴出口96cは、それぞれ、第2噴出口97a、第2噴出口97bおよび第2噴出口97cと中心軸101の周方向に並んでいる。
【0084】
図5から
図7中の変形例に示されるように、ノズル91に設けられる噴出口の数は、1つであっても、複数であってもよい。ノズル91に設けられる噴出口の開口形状および配列は、特に限定されない。たとえば、
図5中のスリット状の噴出口94が、中心軸101の周方向に並んで複数、設けられてもよいし、
図7中の複数の第1噴出口96と、複数の第2噴出口9
7とが、中心軸101の半径方向に沿ってジグザグ状に並ぶように配列されてもよい。
【0085】
図8を参照して、本変形例では、ノズル91が、複数の噴出口98(98a,98b,98c)を有する。複数の噴出口98(98a,98b,98c)は、中心軸101の半径方向に沿って並んでいる。噴出口98a、噴出口98bおよび噴出口98cは、挙げた順に、中心軸101の半径方向内側から半径方向外側に向けて並んでいる。
【0086】
噴出口98a、噴出口98bおよび噴出口98cは、互いに異なる大きさの開口を有する。噴出口98bの開口面積は、噴出口98aの開口面積よりも大きく、噴出口98cの開口面積は、噴出口98bの開口面積よりも大きい。
【0087】
図8中の変形例に示されるように、ノズル91に設けられる噴出口は、互いに異なる形態で設けられてもよい。たとえば、
図8中の噴出口98bの開口面積が、噴出口98aの開口面積よりも小さく、噴出口98cの開口面積が、噴出口98bの開口面積よりも小さい構成であってもよい。
図8中の噴出口98a、噴出口98bおよび噴出口98cと、フィルタ81との間の距離が、互いに異なる構成であってもよい。
【0088】
図9は、
図2中のミストコレクタを工作機械に設置する形態の変形例を示す断面図である。
図9を参照して、本変形例では、ミストコレクタ31が、
図1中のダクト32を用いることなく、カバー体21に直接、接続されている。
【0089】
ミストコレクタ31は、天井カバー24に接続されている。天井カバー24には、開口部27が設けられている。開口部27は、上下方向において天井カバー24を貫通する貫通孔からなる。ミストコレクタ31は、開口部27に挿入された状態で、天井カバー24に締結されている。
【0090】
ミストコレクタ31の一部は、加工エリア200内に位置し、ミストコレクタ31の残る部分は、加工エリア200の外部に位置している。上下方向における開口部27の位置は、上下方向における第3隔壁部51の位置に対応している。吸気口34は、加工エリア200内で開口している。
【0091】
上下方向における開口部27の位置は、上下方向における第1隔壁部41および第2隔壁部46のいずれかの位置に対応してもよい。上下方向における開口部27の位置は、上下方向における第1内部空間110、第2内部空間120、第3内部空間130および第4内部空間140のいずれかの位置に対応してもよい。
【0092】
このような構成によれば、フィルタ81の洗浄工程により排出された切屑を含むクーラントを、ミストコレクタ31のケース体36内に残すことなく、工作機械100の加工エリア200内に戻すことができる。
【0093】
なお、ミストコレクタ31の設置場所は、工作機械100が設置される工場等の床面上であってもよい。また、本実施の形態では、ケース体36の軸方向が上下方向となる縦置きタイプのミストコレクタ31の構造について説明したが、本発明は、ケース体36の軸方向が水平方向となる横置きタイプのミストコレクタにも適用可能である。
【0094】
本実施の形態におけるミストコレクタ31が用いられる工作機械は、旋盤に限られず、マシニングセンタ、旋削機能と、ミーリング機能とを有する複合加工機、または、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機等であってもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
この発明は、たとえば、工作機械に用いられるミストコレクタに適用される。
【符号の説明】
【0097】
11 ワーク主軸、12 刃物台、21 カバー体、22 第1サイドカバー、23 第2サイドカバー、24 天井カバー、25 扉部、26,27 開口部、28 操作パネル、31 ミストコレクタ、32 ダクト、33 支持脚、34 吸気口、36 ケース体、37 排気口、41 第1隔壁部、42 第1開口部、43 衝突板、44 支持部材、46 第2隔壁部、47 第2開口部、51 第3隔壁部、52 第3開口部、61 モータ、62 出力軸、63 カップリング、64 シャフト、71 ファン、72 整流ファン、72p 翼、81 フィルタ、82a 第1フィルタ表面、82b 第2フィルタ表面、86 フレーム部、86h 連結部、86j リング部、86k 円盤部、87 フィルタ本体部、91 ノズル、93,93a,93b,93c,94,95,98,98a,98b,98c 噴出口、96,96a,96b,96c 第1噴出口、97,97a,97b,97c 第2噴出口、100 工作機械、101 中心軸、110 第1内部空間、120 第2内部空間、130 第3内部空間、140 第4内部空間、200 加工エリア、210 回転中心軸、220 旋回中心軸。