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▶ 川端 廣己の特許一覧

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  • 特許-知育サイコロ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】知育サイコロ
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/04 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
A63F9/04 B
A63F9/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021092606
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163662
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521236531
【氏名又は名称】川端 廣己
(72)【発明者】
【氏名】川端 廣己
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-284324(JP,A)
【文献】特開昭47-15234(JP,A)
【文献】米国特許第6302395(US,B1)
【文献】国際公開第99/01190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/04
A63F 3/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
10面以上の面を持ち、各面に0から9までの10種の数字のひとつが出目として記され、各々の数字が少なくともひとつの面には記されている多面体形状のサイコロであって、1、4、5、6、7、9の数字あるいは1、4、5,6、7、9の面が共通の同色で彩色され、他の数字あるいはその面はそれ以外の異なる色で彩色されているサイコロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は簡単なサイコロ遊びを通じて計算能力を高めると同時に、所定の計算とサイコロ操作を繰り返すと出目が必ず同じ色に収束するという知的発見が得られ、それにより算数、数学への興味を抱かせることができる知育サイコロとその使い方を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
多面体のサイコロに数字を記載し、出た目の数字を用いて計算を行わせる学習方法などは既に提案されている。(例えば特許文献1)
また数字と演算記号をサイコロに記載し、出た目の数字と演算記号を組み合わせて計算パズルにすることも既に提案されている。(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-230629
【文献】実開平6-57391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、サイコロによりランダムに計算問題やパズルを作成することはできても、その計算結果自体に何ら感動も新たな知的発見はなく、自ら楽しんで計算を続けようとする動機や興味が長続きしないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、0から9までの10種の数字が記載された10面体以上の多面体のサイコロにおいて、特定の数字群だけ、数字自体またはそれが出目となる面を共通の色で彩色することを特徴とする。
【0006】
本発明のサイコロを用いて、所定の計算とサイコロ操作を有限回繰り返すと、必ずサイコロの出目がすべて同じ色に揃うという結果に到達する。これは整数の持つ特性を利用したものであるが、本発明のサイコロにより、その整数の特性を自らの計算とサイコロ操作を通じて実感し、理解することができる。
【0007】
この不思議さと知的発見により、子供から大人まで興味を持って、繰り返して計算とサイコロ操作を続けることができる。それにより計算力の涵養と脳の活性化が可能となり、ひいては数学という学問に興味を持つ端緒ともなりうる。
【0008】
請求項1のサイコロは3桁の整数を扱うためのものである。
具体的には、3桁の整数を扱う場合は、4、5、9の3つの数字のみ、数字自体またはそれが出目となる面を共通の色(仮にA色と呼ぶ)で彩色する。他の数字については、数字あるいはそれが出目となる面にA色以外の色で彩色する。
【0009】
4、5、9以外の数字に使う色は、A色とは明確に異なる色を使う方が好ましい。また4、5、9以外の他の数字についてはすべて同じ色にする必要はなく、適当なグループに分けてB色、C色、、、と塗り分けても構わない。むしろA色以外の複数の色に塗り分けることにより、サイコロを振る際のランダムな出目を意識でき、計算操作後に出目がA色に収束する様子がより印象的な効果を生むため、より好ましい。
【0010】
例えばA色を赤色とし、B色を青色、C色を黄色、、、等のように互いの色が明確に異なる方が、視覚的効果がより鮮明になり本発明が提供する効果は大きくなり好ましい。
【0011】
このように彩色した同じサイコロ3個を振って段落番号0017以降に詳述する計算とサイコロ操作を行っていく。
【0012】
請求項2のサイコロは4桁の整数を扱うためのものである。
具体的には、4桁の整数を扱う場合は、1、4、6、7の4つの数字のみ、数字自体またはそれが出目となる面を共通の色(仮にA色と呼ぶ)で彩色する。他の数字については、数字あるいはそれが出目となる面にA色以外の色で彩色する。
以下、色の選択、効果については段落番号0009~0010に既述した例と同様である。
【0013】
このように彩色した同じサイコロ4個を振って段落番号0017以降に詳述する計算とサイコロ操作を行っていく。
【0014】
請求項3のサイコロは1種のサイコロで3桁と4桁の整数の両方が扱うことができる。
具体的には、1、4、5、6、7、9の5つの数字のみ、数字自体またはそれが出目となる面を共通の色(仮にA色と呼ぶ)で彩色する。他の数字については、数字あるいはそれが出目となる面にA色以外の色で彩色する。
以下、色の選択、効果については段落番号0009~0010に既述した例と同様である。
【0015】
請求項3のサイコロで3桁の整数を扱う場合は、3個のサイコロを振って以下に詳述する計算とサイコロ操作を行っていく。4桁の整数を扱う場合は4個のサイコロを振って段落番号0017以降に詳述する計算とサイコロ操作を行っていく。
【0016】
但し、このサイコロは3桁の整数と4桁の整数の両方に使用できる長所があるものの、必然的にA色で彩色された数字あるいは面が多く存在しているため、計算操作が結果に到達した際の不思議さや視覚的効果はそれだけ希薄になるという短所はある。
【0017】
次に本発明が提供するサイコロを用いて行う計算手法とサイコロ操作について詳細に説明する。
【0018】
まず、請求項1にある3桁の整数を扱うサイコロを例にとって説明する。
このサイコロの出目のうち、4、5、9については同じ色(以下A色と記載)の彩色がなされており、他の数字にはA色以外の彩色がなされている。
【0019】
最初に同じサイコロ3個を振り、出目を確認する。
例えば、8、0、4の3つの数字が出たとする。3つのサイコロのうち4のみがA色なので、この段階ではA色は1個しか現れていない。なお、最初の出目が3個とも同じ数字の場合は無効として再度振りなおす。以下で説明する最大整数と最小整数の差がゼロとなり、計算操作が意味を為さなくなるからである。
【0020】
これから以下の計算とサイコロ操作を行う。この3つサイコロを、出目を維持したまま、大きい数字の順に並べ変えて最大の整数を、小さい数字の順に並べ替えて最小の整数を作る。出目に0が含まれる場合は最小の整数を作る際に最上位の桁が0になる。その際はその桁より下の、0以外の数字から始まる整数として取り扱う。
この例の場合、最大の整数は840であり、最小の整数は048(=すなわち48)である。
【0021】
こうして得られた最大の整数と最小の整数の差を取る。すなわち最大の整数から最小の整数を引くという計算を行う。暗算で行うことが好ましいが、難しければ筆算でも構わない。
この例の場合、答えは840-48=792である。
【0022】
答えに合わせてサイコロの出目を変えて7、9、2の面を出す。9のみがA色なので、この段階でA色は1個だけである。
【0023】
この段落番号0020~0022に既述された一連の計算とサイコロ操作を答えが収束するまで繰り返していく。
【0024】
引き続き具体的にこの例について説明していく。この状態のサイコロに対して段落番号0020で既述した同じ計算とサイコロ操作を行う。すなわち、この3つサイコロを、出目を維持したまま並べ変えて最大の整数と最小の整数を作る。
この例の場合、最大の整数は972であり、最小の整数は279である。
【0025】
こうして得られた最大の整数と最小の整数について、段落番号0021で既述した同じ計算を行う。すなわち最大の整数から最小の整数を引くという計算を行う。
この例の場合、972-279=693という答えを得る。
【0026】
段落番号0022で既述したように、答えに合わせてサイコロの出目を変えて、6、9、3の面を出す。9のみがA色なので、この段階でA色は1個だけである。
【0027】
さらに段落番号0020~0022に既述された一連の計算とサイコロ操作を繰り返していく。
【0028】
引き続き具体的にこの例について説明していく。この状態のサイコロに対して段落番号0020で既述した同じ計算とサイコロ操作を行う。この状態のサイコロに対して同じ計算操作を行う。最大の整数は963、最小の整数は369なので、引き算の答えとして963-369=594を得る。
【0029】
答えに合わせてサイコロの出目を変えて5、9、4の面をだす。するとこれらの3個の数字はA色なので、3個のサイコロがすべてA色で揃ったことが確認できる。
【0030】
さらに段落番号0020~0022に既述された一連の計算とサイコロ操作を繰り返していく。
【0031】
この状態のサイコロに対して同じ計算操作を行う。最大の整数は954、最小の整数は459なので引き算の答えとして954-459=495を得る。答えに合わせてサイコロの出目を確認しても、同様に3個ともA色である。
【0032】
以降、同じ計算操作を繰り返しても答えは495で変わらず、3個のサイコロはすべてA色の出目のままとなる。
【0033】
ここでは最初にサイコロを振ったときに8、0、4という数字が出目として現れた場合を例として、計算ならびにサイコロ操作を説明したが、最初の出目が8、0、4以外の任意の3つの数字の組み合わせであっても同じ結果に収束する。但し、既に記載しているように、最初の出目が3個とも同じ数字の場合は無効として再度振りなおすものとする。
【0034】
これは整数の特性に基づくため、最初の出目が3個とも同じ数字でない限り、段落番号0020~0022に既述された一連の計算とサイコロ操作を有限回繰り返せば同じ整数に収束する。本発明のサイコロを用いて行うと、最初はバラバラの色が現れているが、一連の計算とサイコロ操作を繰り返すと必ずすべての面がA色に揃い、それ以降は状況が変わらないという知的発見を体験できる。
【0035】
請求項2にある4桁の整数を扱うサイコロについても、振るサイコロが4個になり、計算が4桁の整数同士の引き算になるだけで、行う計算とサイコロ操作は全く同様である。
このサイコロの出目のうち、1、4、6、7については同じ色(以下A色と記載)の彩色がなされており、他の数字にはA色以外の彩色がなされている。
【0036】
最初に同じサイコロ4個を振り出目を確認する。なお、最初の出目が4個とも同じ数字の場合は無効として再度振りなおす。以下で説明する最大整数と最小整数の差がゼロとなり、計算操作が意味を為さなくなるからである。
【0037】
例えば最初の出目が3、0、5、9であったとする。ここでは4桁の整数となるが、段落番号0020~0022に既述した3桁の整数の場合と同様に、最大整数と最小整数を求め、その差を計算し、サイコロ操作を行う。
【0038】
この例の場合は、9530-359=9171を得る。
さらに同様の計算とサイコロ操作を繰り返していく。すると得られる整数は順次、
9711-1179=8532
8532-2358=6174
7641-1467=6174
と6174に収束し以降は不変である。よって4個のサイコロの目はすべてA色に揃う。
【0039】
ここでは最初にサイコロを振ったときに3、0、5、9という数字が出目として現れた場合を例として、計算ならびにサイコロ操作を説明したが、最初の出目が3、0、5、9以外の任意の4つの数字の組み合わせであっても同じ結果に収束する。但し、既に記載しているように、最初の出目が4個とも同じ数字の場合は無効として再度振りなおすものとする。
【0040】
これは整数の特性に基づくため、最初の出目が4個とも同じ数字でない限り、段落番号0020~0022に既述された一連の計算とサイコロ操作を有限回繰り返せば同じ整数に収束する。本発明のサイコロを用いて行うと、最初はバラバラの色が現れているが、一連の計算とサイコロ操作を繰り返すと必ずすべての面がA色に揃い、それ以降は状況が変わらないという知的発見を体験できる。
【0041】
請求項3のサイコロは3桁と4桁の整数の両方が扱うことができる。
3桁の整数を扱う場合は3個のサイコロを振って既述した一連の計算とサイコロ操作を行っていく。4桁の整数を扱う場合は4個のサイコロを振って同様の一連の計算とサイコロ操作を行っていく。いずれの場合も結果としてサイコロの目はすべてA色に揃う。
【0042】
易しい計算から始めたければ3桁の整数を扱えばよい。請求項1のサイコロまたは請求項3のサイコロを3個用いれば、既述した一連の計算とサイコロ操作を行って必ずすべてのサイコロの色が揃うという知的発見に到達する。
【0043】
計算を容易にする工夫として、6個のサイコロを用いることもできる。3桁の整数を作るために最初に振るサイコロは3個であるが、その後の計算においては、3桁の最大数と最小数を上下2段にサイコロの出目として置けばよい。
【0044】
さらなる工夫として9個のサイコロを用いて、3桁の最大数、最小数、その引き算の答えを上下3段にサイコロの出目として置けば、計算も容易に、検算も可能となる。
【0045】
4桁の整数を扱う場合も、請求項2のサイコロまたは請求項3のサイコロを4個用いて、既述した一連の計算とサイコロ操作を行って必ずすべてのサイコロの色が揃うという知的発見に到達する。
【0046】
計算を容易にする工夫として、8個のサイコロを用いることもできる。4桁の整数を作るために最初に振るサイコロは4個であるが、その後の計算においては、4桁の最大数と最小数を上下2段にサイコロの出目として置けばよい。
【0047】
さらなる工夫として12個のサイコロを用いて、4桁の最大数、最小数、その引き算の答えを上下3段にサイコロの出目として置けば、計算も容易に、検算も可能となる。
【0048】
本発明のサイコロには、3~4桁の整数の各桁の数字をサイコロ1個が表示する役割があるので、0から9までの10個の数字が出目として必ず存在する必要がある。10面体のサイコロを使えば各面に0から9までの数字が記されるが、サイコロの形状は10面体に限る必要はなく、10面体以上の多面体ならば本発明のサイコロが形成可能である。
【0049】
例えば12面体を使う場合には、10面に0から9までの10個の数字を各1個記しても2面残る。残った2面には何も記さないか、何らかの数字以外の記号や模様を記載し、それらの面が出たサイコロは再度数字が出るまで振り直しすればよい。あるいは残り2面には0から9までの数字のいずれかを再度記してもよい。各数字の出目の確率は同じではなくなるが、本発明が達成しようとする目的に対して大きな支障にはならない。
【0050】
本発明のサイコロを用いて一連の計算とサイコロ操作を繰り返し行っていくと必ずすべての面がA色に揃うという現象を利用して、手品、予言、占い等のような遊び方を工夫することができる。
【0051】
例えば対象とする相手に本発明のサイコロを振らせ、「サイコロの面をすべてA色に揃えて見せます」と言って、既述の一連の計算とサイコロ操作を相手に指示してやらせる。複数回繰り返せばすべてA色に揃うので、相手には手品か予言が的中したかのように見える。
【0052】
例えば対象とする相手に本発明のサイコロを振らせ、「サイコロの面の色で占いをします。A色に揃えば大吉、B色に揃えば小吉、C色に揃えば凶」と言って、既述の一連の計算とサイコロ操作を相手に指示してやらせる。複数回繰り返せばすべてA色に揃うので、相手には占いの結果が出たように見える。
【発明の効果】
【0053】
請求項1または2または3に記載されているサイコロを用いて、既述の一連の計算とサイコロ操作を繰り返していくことにより、楽しみながら3桁または4桁の整数の引き算の演習を繰り返すことができ、自然に計算力が涵養される。
【0054】
また、引き算の計算が毎回正しければ必ず有限回数後にはサイコロの数字あるいは面がすべて同じ色に揃い、そしてそれ以降は何度同じ計算操作を繰り返しても計算結果の整数は同じ整数になる。この不思議さを体験することにより、知的興味が湧く。そして何度も最初からサイコロを振りなおして現象を確かめようとするため、3桁または4桁の引き算の計算を自ら興味を持って繰り返していくことができる。単なる計算ドリルを何問も強制的に解かされるよりも、自ら喜んで計算を行うため、はるかに大きな学習効果が得られる。
【0055】
さらに、この計算操作を繰り返すと必ず有限回数後、同じ整数に収束するという事実に興味が湧く。これは整数の特性によるものだが、本発明のサイコロにより、整数論という数学の一端に楽しみながら触れることができる。それは数学という深淵な学問に親しむきっかけを与えることができる。
【0056】
さらに、本発明のサイコロを用いて既述の一連の計算とサイコロ操作を繰り返せば必ずサイコロの数字あるいは面がすべて同じ色に揃う現象を利用して、手品、予言、占い等のような娯楽的な遊び方も工夫できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1
図2】本発明のサイコロの一例である。請求項1に記載する3桁整数用のサイコロを10面体で構成した場合の例で、0から9までの10個の数字が各面にひとつ記載されている。4、5、9の面をある共通の色(仮にA色とする)に彩色し、それ以外の数字の面はA色以外の色で彩色している。図1は上から見た場合、図2は下から見た場合を示す。
【0058】
図3
図4】本発明のサイコロの一例である。請求項1に記載する3桁整数用のサイコロを10面体で構成した場合の例で、0から9までの10個の数字が各面にひとつ記載されている。4、5、9の数字をある共通の色(仮にA色とする)に彩色し、それ以外の数字はA色以外の色で彩色している。図3は上から見た場合、図4は下から見た場合を示す。
【符号の説明】
【0059】
1 頂部面で、面がA色に彩色されている
2 胴部面で、面がA色に彩色されている
3 胴部面で、面がA色以外である
4 胴部面同志の稜線部
5 頂部面と胴部面の稜線部
6 底部面で、面がA色以外である
7 底部面と胴部面の稜線部
8 頂部面で、数字がA色に彩色されている
9 胴部面で、数字がA色に彩色されている
10 胴部面で、数字がA色以外である
11 底部面で、数字がA色以外である
図1
図2
図3
図4