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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】聴診音の解析システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
A61B7/04 U
A61B7/04 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020220113
(22)【出願日】2020-12-31
(65)【公開番号】P2022105244
(43)【公開日】2022-07-13
【審査請求日】2022-04-20
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】706001031
【氏名又は名称】YANCHERS株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 順一
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05301679(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228468(US,A1)
【文献】特表2002-538921(JP,A)
【文献】特表2009-535106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0315537(US,A1)
【文献】特開2012-200383(JP,A)
【文献】特開2020-025797(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170772(WO,A2)
【文献】特開2015-171544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴診音の解析システムであって
a)患者から体内聴診音信号を取得する聴診音信号取得手段と、
b)前記体内聴診音信号をデジタルサンプリングして、聴診音離散データに変換する聴診音信号サンプリング手段と、
c)前記聴診音離散データを聴診音スペクトログラムに変換するスペクトログラム変換手段と、を備え
前記スペクトログラム変換手段で得られたデータから、予め定められた少なくとも一つの周波数範囲における信号成分の強さを、
時間をあけて複数回測定し、各測定回について一定の閾値を超える信号成分を抽出し、当該信号成分の強さを時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の聴診音の解析システムにおいて、
表示機能を備えた通信演算装置を組み込んだことを特徴とする聴診音の解析システム。
【請求項3】
請求項1、または請求項2に記載の聴診音の解析システムにおいて、
体温計と心電図計が組み込まれたことを特徴とする聴診音の解析システム。
【請求項4】
請求項1、請求項2、または請求項3に記載の聴診音の解析システムにおいて、
システムで生成したデータをインターネット上クラウドサーバーにアップロードすることを特徴とする聴診音の解析システム。
【請求項5】
請求項4に記載の聴診音の解析システムにおいて、
解析に関するデータをインターネット上クラウドサーバーからダウンロードすることを特徴とする聴診音の解析システム。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5に記載の聴診音の解析システムにおいて、システムを稼働させることを可能にすることを特徴とする聴診音の解析システムのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診音の解析システムにおいて、音の「信号成分の強さ」の経時的変化を把握することを目的として、その出力方法、およびそのプログラムにかかり、聴診音のスペクトログラム変換を行い、特定の周波数もしくは周波数範囲の、信号成分の強さを、時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システム、出力方法、表示方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体が発する音を利用して、生体の状態を把握する行為は診療行為として、一般的に行われている。例えば、内科検診などでは、聴診器を使って、呼吸音,心音,その他の各種臓器音を聴診し、呼吸器疾患,心疾患,消化器疾患などの診断に利用している。
【0003】
診察の場面で、聴診器を使用して、生体情報を得るのは、その場、その場で、実時間での情報把握である。
【0004】
従来、聴診器はアナログタイプのものが主流であったが、近年、デジタル技術を適用した電子聴診器も各社から開発が行われており、ボリューム調整,周波数特性調整(呼吸器用,心音用など)などの機能が実装され、使い勝手も向上してきた。さらに、遠隔医療を視野に入れた電子聴診器も開発が行われている。(WO2019067880A1 参照)
【0005】
近年、コンピュータの中央演算装置の高機能化で、データ変換が簡便に行えるようになってきている。スペクトログラムとは、複合信号を窓関数に通して、周波数スペクトルを計算した結果を指す。3次元のグラフ(時間、周波数、信号成分の強さ)で表される。スペクトログラムは声紋の鑑定、動物の鳴き声の分析、音楽、ソナー/レーダー、音声処理などに使われている。スペクトログラムを声紋と呼ぶこともある。スペクトログラムを生成する機器をソノグラフという。
【0006】
また、単に生体(被験者)が発生する音だけを出力するのではなく、生体音をビジュアル化(視覚化)した結果を出力することで、視認性、操作性、監視対象の改善を目的として、視覚で情報把握して診断に役立てようとの試みも行われている(特許文献1(特許第3625294号)参照)。
【0007】
上記特許文献1に開示されるビジュアル聴診器によれば、聴診音を周波数,時間,振幅情報を有する3次元情報として表示可能であり、主観的な判断に頼りがちな音という情報を客観的な情報として出力することが可能となる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1が開示するビジュアル聴診器には、次のような点で課題がある。
【0009】
一般的に、聴診器を診断に利用している検査者は、自らの耳から得られる音情報を元に、過去の経験と照らし合わせて、疾病の疑いを判断している。各種疾病での聴診音には、それぞれ周波数的な特徴があり、正常時の聴診音と疾病時の聴診音では、各周波数における信号成分の強さが異なる。検査者は、耳から取得する聴診音情報の周波数的な特徴を自らの経験に当て嵌めて判断しているが、各種疾患に起因する聴診音が具体的に何Hzの周波数である場合に特定の疾病Aであり、聴診音が別の周波数(Hz)の場合に別の疾病Bであると、疾病と聴診音の具体的な周波数とを関連付けて診断している訳ではない。したがって、いくら聴診音の周波数,時間,振幅情報をビジュアル化したとしても、その聴診音のビジュアル情報を基に検査者が診断するためには、検査者があらためて訓練する必要がある。臨床現場で診断行為を行っている検査者が忙しい時間を割いて、上記のような新たな訓練を行うことは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3625294号
【0011】
前述の特許文献1では、たしかに従来の診察を想定した「実時間」で得られた短い時間の範囲での聴診音のスペクトログラムを得て、当該特許の発明者が麻酔科医師であることから、「その場の実時間での呼吸音や心音」の3次元的な視覚的客観的診断に寄与しようとの技術アイデアであった。
【0012】
患者から聴診音をえて、その場で「実時間」で聴診音を得て、3次元化して画像化しても、使用者の聴覚特性の個人差を回避するように微妙に調整して、聴診音の「実時間」での取得にこだわっても、聴診音のデータの自体は、その診療の「実時間」のデータである。
【参考文献1】
P2012-223509A
【0013】
これゆえ、いままでの装置では、聴診音を音データとして遠隔に電送する手段や、実時間の聴診音を視覚的に客観的に把握する手段の提供までであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
新型コロナウイルス感染症において、PCR陽性患者で無症状者や軽症者などの医療機関以外で経過観察を余儀なくされた患者は、陽性者の80%近くにのぼるとも推定されている。
【0015】
しかし、新型コロナウイルス感染症において、PCR陽性患者で無症状者や軽症者などの医療機関以外で経過観察を余儀なくされた患者が、ウイルス性間質性肺炎の状態が急変し、死亡するという課題がある。
【0016】
新型コロナウイルス感染症において、PCR陽性患者で無症状者や軽症者などの医療機関以外で経過観察を余儀なくされた患者が、ウイルス性間質性肺炎の状態が急変し死亡した事例でも、血中酸素飽和度が低下してきたときには、もう間に合わなかったという報道もある。
【0017】
新型コロナウイルス感染症において、PCR陽性患者で無症状者や軽症者などの医療機関以外で経過観察を余儀なくされた患者のなかで、ウイルス性間質性肺炎の状態が急変し死亡した事例で、血中酸素飽和度が低下してくるまえに発症している「間質性肺炎の捻髪音」、すなわち高い周波数範囲で、-120dBから-80dBの範囲であることの多いハイピッチの「パリパリ」とのいえる聴診音、の経時的変化を把握することが適切な治療方針決定に重要であると着想した。
【0018】
そこで、この発明の課題は、聴診音からデジタルデータに変換し、さらにスペクトログラム変換を行い、特定の周波数もしくは周波数範囲の、信号成分の強さを、時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
聴診音の解析システムにおいて、
a)前記患者から体内聴診音信号を取得する聴診音信号取得手段と、
b)前記体内聴診音信号をデジタルサンプリングして、聴診音離散データに変換する聴診音信号サンプリング手段と、
c)前記聴診音離散データを聴診音スペクトログラムに変換するスペクトログラム変換手段と、
d)前記スペクトログラム変換手段で得られたデータから、予め定められた少なくとも一つの周波数における、信号成分の強さを、
時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0020】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、目的の周波数の信号成分の強さを時間軸にそって、患者の臨床経過を解析できることになる。
【0021】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項1に記載の聴診音の解析システムにおいて、
d)前記スペクトログラム変換手段で得られたデータから、予め定められた少なくとも一つの周波数範囲における、信号成分の強さを、
時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0022】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、目的の周波数範囲の信号成分の強さを時間軸にそって、患者の臨床経過を解析できることになる。
【0023】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項1に記載の聴診音の解析システムにおいて、
d)前記スペクトログラム変換手段で得られたデータから、予め定められた少なくとも一つの周波数範囲における、一定の閾値を超える信号成分の強さを、
時間軸に沿って出力することを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0024】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、目的の周波数範囲における、一定の閾値を超える信号成分の強さを時間軸にそって、患者の臨床経過を解析できることになる。
【0025】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
[請求項4]に記載の聴診音の解析システムでは、出力データを表示手段により、視認することができる。
【0026】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項1,請求項2,請求項3、請求項4に記載の聴診音の解析システムにおいて、
スマートフォンなどの表示機能を備えた通信演算装置を組み込んだことを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0027】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、スマートフォンの表示画面を使用して、信号成分の強さなどの解析情報を表示できる。(図1B
【0028】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項1,請求項2,請求項3、請求項4,請求項5に記載の聴診音の解析システムにおいて、
体温計と心電図計が同時に組み込まれたことを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0029】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、体温、心電図に関係した情報も聴診音の解析後の信号成分の強さとともに表示できる。(図2
【0030】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項1,請求項2,請求項3、請求項4,請求項5,請求項6に記載の聴診音の解析システムにおいて、
システムで生成したデータをインターネット上クラウドサーバーにアップロードすることを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0031】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、患者から取得した生体情報を、聴診音のスペクトログラム解析後の信号成分の強さとともに、クラウドサーバーに集約することができる。(図1B
【0032】
上記課題を解決するため、この発明の聴診音の解析システムでは、
請求項7に記載の聴診音の解析システムにおいて、
解析に関するデータをインターネット上クラウドサーバーからダウンロードすることを特徴とする聴診音の解析システム
を備えることを特徴としている。
【0033】
この発明の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、患者から取得した生体情報を、聴診音のスペクトログラム解析後の信号成分の強さとともに、クラウドサーバーに集約したあとの判断情報を取得し、出力もしくは表示することができる。(図1B
【発明の効果】
【0034】
この実施形態の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、医師,看護師などの医療者は、数時間、もしくは数日の期間に変化する患者の病態を聴診音データや体温、心電図の変化から知ることができる。
【0035】
図5]聴診音のスペクトログラムの3次元画像表示の例に示すように、300Hz以下は同じようにエネルギーが存在しているならば、300Hz以下の周波数帯がもつエネルギーは、使用者が呼吸音を診断するための情報としては意味が無いと考え、あえて、低周波数成分を弱めるという補正を行うことで、300Hz以上の周波数帯がもつエネルギーから使用者が各種呼吸音を診断できるような補正を行ってもよい。正常な呼吸音,肺炎の呼吸音,喘息の呼吸音のいずれに関しても、300Hz以下の低周波の領域には大きなエネルギーが有ることもわかる。
【0036】
この実施形態の聴診音の解析システムを経時的に用いれば、ほかの医療応用として、透析のシャント音の波形が通常と異なる場合や、周波数の上限を超えた場合等の異常時に、端末から医療従事者に対しての通知も可能になる。さらに透析中のシャント聴診音の経時的解析となるシステムも可能である。また、抗がん剤などの投薬に伴う重大な副作用である「薬剤性間質性肺炎」の病態把握にも、もちろん、応用できる。呼吸器、消化器、循環器、ほか、臨床医学上で聴診の対象となる全ての疾患の経時的な変化をとらえて把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】この発明の聴診音の解析システムの装置の実施形態の構成図である。
図1B】構成にスマートフォンを組み込んだ場合の聴診音の解析システムである。
図1C】患者胸部に貼付する実施例でAuroraScopeTMのスキーム図である。
図2】Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラム、心電図が、コンパクトに表示される。
図3】Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラムの目的の複数の周波数範囲の「信号成分の強さ」の時間的変化が、心電図の目的部位の変化量が、表示される。
図4】Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラムの目的の周波数範囲の「信号成分の強さ」の時間的変化が、表示される。
図5】聴診音のスペクトログラムの3次元画像表示の例 300Hz以下は同じようにエネルギーが存在しているならば、300Hz以下の周波数帯がもつエネルギーは、使用者が呼吸音を診断するための情報としては意味が無いと考え、あえて、低周波数成分を弱めるという補正を行うことで、300Hz以上の周波数帯がもつエネルギーから使用者が各種呼吸音を診断できるような補正を行ってもよい。正常な呼吸音,肺炎の呼吸音,喘息の呼吸音のいずれに関しても、300Hz以下の低周波の領域には大きなエネルギーが有ることもわかる。
図6】緑、黄色、赤、黒のレゴブロックで構成した、正常の肺胞音(左)と間質性肺炎の捻髪音(右)のスペクトログラムの3次元立体模型の写真である。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1500-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。
図7】緑、黄色、のレゴブロックで構成した、正常の肺胞音のスペクトログラムの3次元立体模型の鳥観図写真である。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1500-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。
図8】緑、黄色、赤、黒のレゴブロックで構成した、間質性肺炎の捻髪音のスペクトログラムの3次元立体模型の鳥観図写真である。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1500-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、この発明の実施の形態について図面を用いてより詳細に説明する。
【0039】
図1A]は、この発明の聴診音の解析システムの装置の実施形態の構成図である。
新型コロナウイルス感染症では、まず、発熱があり、その後、ウイルス性間質性肺炎が発症し、血管内の血液凝集による臓器血流障害が発生し、とくに、心臓の血液循環が不良になる。このため、発症の始まりを把握できる体温計と重大な心筋への酸素障害を示唆する心電図変化を把握できる装置と機能をもつセンサを備える構成をとる。端末機として独立した電気的動作を可能とするため、内部電源を備える。外部装置へのデータ送受信のためのワイヤレス通信部も備える。マイクは、MEMSマイク、有機・無機のピエゾマイクがある。患者の状況に関するデータを表示する表示部も備える。
【0040】
図1B]は、この発明の聴診音の解析システムで、構成にスマートフォンを含む場合のシステム構成図である。この場合、スマートフォンの入力、出力、通信、演算、表示、課金機能を利用することができる。
【0041】
図1C]は、実施例でシステムを担うAuroraScopeTMのスキーム図である。
患者の胸部体表に貼付して使用する。
【0042】
図2]は、Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラム、心電図が、コンパクトに表示される。スペクトログラム上のスペクトルの出現頻度で、呼吸数は、容易に把握できる。本例では、スペクトログラムの下側の0-500Hzの周波数範囲では、恒常的に「信号成分の強さ」が観察されているのに、加えて、1000Hz付近に、呼吸に合わせて「信号成分の強さ」が検出されている。本例は、薬剤性の間質性肺炎の症例のデータのスペクトログラムであるが、聴診音の振幅を増幅することで、この疾患に対応する「周波数範囲」を「定量的」に扱うことができる。
【0043】
図3]は、Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。[0042]で説明した病態の温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラムの目的の複数の周波数範囲の「信号成分の強さ」の時間的変化が、心電図の目的部位の変化量が、表示される。特に本件で注目している新型コロナウイルス感染症による呼吸不全の発症は、数日単位の管理が必須であり、この経過中に、すべての患者のスペクトログラムの画像をみて判断などできない。これゆえ、スペクトログラムのなかの病態に直結する「周波数範囲」の「信号成分の強さ」の変化が病態の悪化に直結すると考えて、その経時的変化を把握するものである。図にしめすように、経過とともに「呼吸数」増え、(はあはあしてくる)、周波数範囲の変化では、高音域の「パリパリ」という捻髪音領域の「信号成分の強さ」が増加してきていることが、一目でわかる。
【0044】
図4]は、Wirelessで出力したスマホ画面のGUIである。[0043]での説明に加えて、温度(体温)、心拍数、呼吸数、聴診音のスペクトログラムの目的の周波数範囲の「信号成分の強さ」の時間的変化が、表示される。今回の特許出願では、間質性肺炎の高音域の捻髪音に注目しているが、呼吸の聴診音については、小児喘息の呼吸音、胸部では心臓の弁膜症の雑音、さらに、心臓弁膜症の手術後の人工心臓弁の開閉音の変化による術後早期の人工弁開閉不良の聴診音による把握、透析シャントのシャント音の不良検出、過敏性大腸症の下痢前の腹部腸管の蠕動運動の聴診音検出など、聴診音の経時的経過観察が可能になると、様々な病態の管理に有用になる。このような場合は、あらかじめ特定の目的に適した周波数、もしくは周波数範囲に絞りこんで、「信号成分の強さ」の経時的変化を把握することが、望ましい。
【0045】
図5]は、聴診音のスペクトログラムの3次元画像表示の例をしめす。300Hz以下は同じようにエネルギーが存在しているならば、300Hz以下の周波数帯がもつエネルギーは、使用者が呼吸音を診断するための情報としては意味が無いと考え、あえて、低周波数成分を弱めるという補正を行うことで、300Hz以上の周波数帯がもつエネルギーから使用者が各種呼吸音を診断できるような補正を行ってもよい。正常な呼吸音,肺炎の呼吸音,喘息の呼吸音のいずれに関しても、300Hz以下の低周波の領域には大きなエネルギーが有ることもわかる。このことから、本システムでは、請求項3に記載したように、一定の閾値を超える「信号成分の強さ」を抽出してデータ化することにあり、よりノイズの少ないデータが取得できる。さらに、周波数範囲も、正常肺胞音の範囲以外に、設定することで、肺の異常を把握しやすくなる。
【0046】
図6]は、緑、黄色、赤、黒のレゴブロックで構成した、正常の肺胞音(左)と間質性肺炎の捻髪音(右)のスペクトログラムの3次元立体模型の写真をしめす。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1501-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。本表示では。新型コロナウイルス感染症の病気の進行の状況を把握するには、赤、黒の領域の「信号成分の強さ」の出現の頻度に注目すればよい。
【0047】
図7]は、緑、黄色、のレゴブロックで構成した、正常の肺胞音のスペクトログラムの3次元立体模型の鳥観図写真である。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1501-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。この写真図は、鳥観図にすることで、周波数範囲での「信号成分の強さ」の高さを表したものである。間質性肺炎の悪化のまえの前兆現象として、正常の肺胞音の聴診音の500Hz以下のゾーン以外にも出現した信号には、注目できるように設定しておく。
【0048】
図8]は、緑、黄色、赤、黒のレゴブロックで構成した、間質性肺炎の捻髪音のスペクトログラムの3次元立体模型の鳥観図写真である。周波数範囲を、0-500,501-1000,1001-1500,1501-2000Hzの4ゾーンに設定。領域ごとに、「信号成分の強さ」の出現の状況を定量的に解析したスペクトログラムの状況を模式している。
【0049】
[0047]での説明に重ねて、高温領域での捻髪音の「パリパリ」の音の「パ」の音の「信号成分の強さ」の出現頻度と強さこそが、病態の進行と悪化の「兆候」となる。医療機関以外での療法中の新型コロナウイルス感染症などの患者を遠隔医療で管理できるようにするために、体表に貼付する端末モジュールからスマートフォンまでは、ブルートゥース通信で送受信、さらに、スマートフォンからクラウドサーバーに情報集約することで、Population Health Managementにつながることで、大規模感染症などの病態コントロールと医療福祉に貢献する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8