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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】男性用下衣
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
A41B9/02 G
A41B9/02 M
A41B9/02 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019082035
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020180384
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真弓
(72)【発明者】
【氏名】中西 康貴
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-146411(JP,U)
【文献】特開2012-193487(JP,A)
【文献】登録実用新案第3112241(JP,U)
【文献】実開昭57-013604(JP,U)
【文献】米国特許第06014777(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0036293(KR,A)
【文献】登録実用新案第3013065(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成する男性用下衣であって、
下腹部の左前を覆う左前身頃部と、
下腹部の右前を覆い、前記左前身頃部よりも肌側に配設される右前身頃部と、
臀部を覆う後身頃部を備え、
前記右前身頃部の下端、前記左前身頃部の下端および前記後身頃部の下端が接続するクロッチ接続部と、
前記左前身頃部の右端の上方を、前記右前身頃部に接続する左接続部が形成され、
前記左前身頃部の右端は、前記生地の切断面を露出して局部の右側に形成され、前記左接続部と前記クロッチ接続部との間において、前記右前身頃部と遊離可能に形成され
前記左接続部から前記クロッチ接続部において、前記左前身頃部の生地の長さは、前記右前身頃部の生地の長さよりも短い
ことを特徴とする男性用下衣。
【請求項2】
前記右前身頃部の左端の上方を、前記左前身頃部に接続する右接続部が形成され、
前記右前身頃部の左端は、前記生地の切断面を露出して局部の左側に形成され、前記右接続部と前記クロッチ接続部との間において、前記左前身頃部と遊離可能に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の男性用下衣。
【請求項3】
前記右接続部から前記クロッチ接続部において、前記右前身頃部の生地の長さは、前記左前身頃部の生地の長さよりも短い
ことを特徴とする請求項2に記載の男性用下衣。
【請求項4】
前記左接続部から前記右接続部の間において、前記左前身頃部および前記右前身頃部は、遊離可能に形成される
ことを特徴とする請求項2または3に記載の男性用下衣。
【請求項5】
前記左接続部の長手方向が、上下方向になるように配設される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の男性用下衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成する男性用下衣に関する。
【背景技術】
【0002】
端始末不要の切断端を有する伸縮性素材で形成された下衣がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1は、下衣のずりさがりを防止するために、左右脇線が、裾側が広く、ウエスト側が狭くなるように形成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-193487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、下衣のずり下がりに着目するにすぎず、男性用の下衣について、何ら言及されていない。
【0005】
従って本発明の目的は、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成する男性用下衣を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成する男性用下衣に関する。本発明の第1の特徴に係る男性用下衣は、下腹部の左前を覆う左前身頃部と、下腹部の右前を覆い、左前身頃部よりも肌側に配設される右前身頃部と、臀部を覆う後身頃部を備える。右前身頃部の下端、左前身頃部の下端および後身頃部の下端が接続するクロッチ接続部と、左前身頃部の右端の上方を、右前身頃部に接続する左接続部が形成される。左前身頃部の右端は、生地の切断面を露出して局部の右側に形成され、左接続部とクロッチ接続部との間において、右前身頃部と遊離可能に形成される。
【0007】
左接続部からクロッチ接続部において、左前身頃部の距離は、右前身頃部の距離よりも短いのが好ましい。
【0008】
右前身頃部の左端の上方を、左前身頃部に接続する右接続部が形成され、右前身頃部の左端は、生地の切断面を露出して局部の左側に形成され、右接続部とクロッチ接続部との間において、左前身頃部と遊離可能に形成されるのが好ましい。
【0009】
右接続部からクロッチ接続部において、右前身頃部の距離は、左前身頃部の距離よりも短いのが好ましい。
【0010】
左接続部から右接続部の間において、左前身頃部および右前身頃部は、遊離可能に形成されるのが好ましい。
【0011】
左接続部の長手方向が、上下方向になるように配設されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成する男性用下衣を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る下衣の着用状態を説明する正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る下衣の着用状態を説明する背面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る下衣の着用状態を説明する右側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る下衣のクロッチ接続部を、下衣の表側を上に平置きした図である。
図5】本発明の実施の形態に係る下衣の着用状態における左前身頃部と右前身頃部をそれぞれ説明する図である。
図6】本発明の実施の形態に係る下衣において、左前身頃部と右前身頃部との接続位置を説明する図である。
図7】本発明の実施の形態に係る下衣の左前身頃部と右前身頃部の各型紙を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
(実施の形態)
図1図3を参照して、本発明の実施の形態に係る下衣1を説明する。下衣1は、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成される。下衣1を形成する各生地は、生地の切断面が露出してもほつれないので、切断面に糸をかけたり袋縫いしたりするなどの端処理が不要である。従って下衣1の生地の切断面が着用者の肌にあたっても、肌にかける負担が少なく、快適な肌触りが得られる。
【0015】
本発明の実施の形態において下衣1は、男性用のボクサータイプの下着である場合を説明するが、これに限らない。下衣1は、例えば、ボクサータイプの下着に限らず、ブリーフ、トランクス、ステテコ、タイツ、スパッツ、レギンス等の他の男性用の下着であっても良い。また本発明の実施の形態において下衣1は、大腿の上方を覆う丈であるが、大腿を覆わないショートタイプの丈であっても良い。また下衣1は、上端がウエスト近傍まである場合を説明するが、ウエスト位置が低く、いわゆるローライズタイプであっても良い。端始末不要な伸縮性を有する生地で形成され、男性の局部(男性器)を覆うフロント部5を有する衣服であれば良い。
【0016】
本発明の実施の形態において下衣1は、下腹部の左前を覆う左前身頃部2と、下腹部の右前を覆い、左前身頃部2よりも肌側に配設される右前身頃部3と、臀部を覆う後身頃部4を備える。下衣1は、少なくとも左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4の3つの生地を接続して形成される。左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4はベアスムース、ベア天竺、ベアフライス、ベア片袋、ツーウェイラッセル、ツーウェイトリコット、ダブルラッセル等の素材が用いられる。
【0017】
本発明の実施の形態において、左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4は、それぞれ1枚の生地で形成される場合を説明するが、これに限らない。例えば後身頃部4を左後身頃部と右後身頃部に分割し、左右中心線近傍で接続するなど、左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4は、それぞれ複数の生地で形成されても良い。
【0018】
フロント部5は、男性の局部を被覆する部分である。フロント部5は、左前身頃部2と右前身頃部3が重ねられて形成される。フロント部5において左前身頃部2と右前身頃部3は、上方において左接続部21および右接続部31によって接続される。右前身頃部3の下端、左前身頃部2の下端および後身頃部4の下端は、クロッチ接続部42によって接続される。図4に示すように、左右方向に重ねられた左前身頃部2および右前身頃部3のそれぞれの下端と、後身頃部4の下端を、中表にして縫着することで、クロッチ接続部42が形成される。
【0019】
図4に示す例において、左前身頃部2の右端22とクロッチ接続部42との交点は、胴体と右足との境界近傍に位置する。右前身頃部3の左端32とクロッチ接続部42との交点は、胴体と左足との境界近傍に位置する。
【0020】
下衣1は、左右一対の脇接続部41により、右前身頃部3の右脇側、左前身頃部2の左脇側および後身頃部4の左右の脇側が接続される。左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4は、接着剤によって接続される場合を説明するが、これに限らない。例えば、糸による縫着、抜蝕加工等の、生地の接続により緊締力が生じることが可能な方法で、接続されても良い。なお、接着剤によって接続される部分の適所に、接着の負担を軽減するために、縫着による縫い止めが設けられても良い。
【0021】
左前身頃部2と後身頃部4とを重ねて左側の脇接続部41が形成され、右前身頃部3と後身頃部4とを重ねて右側の脇接続部41が形成される。本発明の実施の形態において、左前身頃部2および右前身頃部3は、後身頃部4よりも肌側に配設される。
【0022】
脇接続部41は、左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4を重ねて、接着剤で接続することにより、所望の緊締力を有する。下衣1は、ウエスト位置にずり下がり防止のゴムが配設されていないが、脇接続部41が緊締力を有することにより、下衣1は、ウエストのずり下がりが防止される。
【0023】
脇接続部41は、図1ないし図3等に示すように、大転子より上方において逆三角形状を有し、大転子より下方において直線形状(矩形形状)を有する。左前身頃部2および右前身頃部3の脇端(後身頃部4との接続端)は、上端は、左右中心線側まで延伸し、カーブを描きながら大転子近傍を経由して、左右脇近傍をほぼ垂直に下りる。一方、後身頃部4の脇端(左前身頃部2および右前身頃部3との接続端)は、左右脇近傍をほぼ垂直に下りる。これにより脇接続部41は、左右脇近傍の大転子より上方において、逆三角形状に形成される。脇接続部41は、大転子よりも上方において左右脇を面で緊締することができるので、左右端のウエスト位置における締め付けを軽減し、肌当たりおよび着心地を改善することができる。また左右脇を面で緊締することにより、左右脇における下衣1と肌とのフィット感を向上させることもできる。
【0024】
また脇接続部41は、ウエスト近傍に比べて、大転子近傍において左右方向に小さく形成されるので、脇接続部41の緊締力が大転子に与える影響は少ない。従って下衣1が肌にフィットしている状態でも、動きに伴う着くずれが生じにくい。
【0025】
図3に示すように、脇接続部41の上方の逆三角形部分は、前側よりも背側に広く配設されることにより、骨盤に対応する位置に安定的に配設することができる。これにより逆三角形部分の緊締力を効果的に発揮することができ、さらに緊締力による着用者の違和感を軽減することもできる。
【0026】
(フロント部)
図5ないし図7を参照して、フロント部5を参照する。図5(a)および図7(a)は、右前身頃部3に関し、図5(b)および図7(b)は、左前身頃部2に関する。
【0027】
図5に示すように、フロント部5において、左前身頃部2は、左右中心線近傍に、クロッチ接続部42から上方に伸びるダーツ23を形成し、右前身頃部3は、左右中心線近傍に、クロッチ接続部42から上方に伸びるダーツ33を形成する。これらのダーツによりフロント部5は、局部の形状に合わせて立体的に形成することができる。
【0028】
またフロント部5において、左前身頃部2と右前身頃部3は、上方において、左接続部21および右接続部31に塗布された接着剤により、接続される。
【0029】
図5(a)に示すように、右接続部31は、右前身頃部3の左端32の上方を、左前身頃部2に接続する。右前身頃部3の左端32は、生地の切断面を露出して局部の左側に形成される。右前身頃部3の左端32のうち、右接続部31とクロッチ接続部42との間において、左前身頃部2と遊離可能に形成される。
【0030】
図5(b)に示すように、左接続部21は、左前身頃部2の右端22の上方を、右前身頃部3に接続する。左前身頃部2の右端22は、生地の切断面を露出して局部の右側に形成される。左前身頃部2の右端22のうち、左接続部21とクロッチ接続部42との間において、遊離可能に形成される。
【0031】
左接続部21からクロッチ接続部42の間に開口部分P21が形成され、同様に右接続部31からクロッチ接続部42との間に開口部分P31が形成される。左前身頃部2の右端22のうち、左接続部21からクロッチ接続部42との間の開口部分P21は、右前身頃部3に接続せず、右前身頃部3の左端32のうち、右接続部31からクロッチ接続部42との間の開口部分P31は、左前身頃部2に接続しない。開口部分P21およびP31により、フロント部5に被覆された局部を出し入れすることができる。
【0032】
フロント部5において生地が2枚重ねて得られる緊締力により、自然なフィット感が得られる。また開口部分P21およびP31において、生地の切断面を露出し、縫い目などの端処理が形成されない。一般的に端処理において生地の伸びが制限される一方、本発明の実施の形態に係る下衣1は、端処理による圧迫感および段差がなく、快適な着心地を得ることができる。また開口部分P21およびP31において、端処理が形成されないので、男性器(陰茎)の出し入れをしやすい効果がある。
【0033】
一般的に、着用者が加齢による機能の衰え等が原因で排尿後に慢性的に尿が残る症状が知られている。このような症状を抱える者は、一般的な下衣における端処理による圧迫感を避けるため、下衣1を膝まで下ろして排尿する場合がある。さらに尿を出し切るために、尿道に残った尿を陰嚢の下から手で搾り出すように排尿する場合がある。本発明の実施の形態に係る下衣1によれば、端処理がなく男性器を圧迫しないので、下衣1を膝上まで下げなくても、開口部分P21およびP31から陰茎を容易に出して排尿することができる。また尿道に残った尿を陰嚢の下から手で搾り出す際、陰茎を取り出した状態においても、端処理が陰茎を締め付けることがないので、陰茎への負担を軽減して、容易に排尿することができる。
【0034】
また、左接続部21から右接続部31の間において、左前身頃部2および右前身頃部3は、遊離可能に形成される。図6に示すように、左前身頃部2における左接続部21の接続部分21aと、右接続部31の接続部分31aとの間P22と、右前身頃部3における左接続部21の接続部分21bと、右接続部31の接続部分31bとの間P32は、接続されない。間P22と間P32は、接続に伴う緊締力はなく、ゴムなどの緊締力の強い素材が配設されることもないので、左前身頃部2および右前身頃部3の素材自体の相対的に弱い緊締力で着用者の肌に配設される。
【0035】
これにより、着用者のウエスト近傍において、ゴムなどの緊締力の強い素材によって肌が締め付けられることなく、左前身頃部2、右前身頃部3および後見頃部4の各生地が、着用に伴う伸長により、肌に留まるので、肌当たりが良く、快適な着用感が得られる。さらに、脇接続部41の緊締力により、ずり下がりが防止されるので、下衣1がずり下がることもない。また間P22および間P32が配設される部分は、腹部であり、腹部を支える骨もない。間P22および間P32において緊締力が弱いことにより、腹部の肌への負担が少なく、好適である。
【0036】
一般的に、男性用下衣の前身頃部は、局部の重みや揺れなどの影響を受け、ウエスト位置がずれ下がる場合などがある。本発明の実施の形態に係るフロント部5において、左前身頃部2および右前身頃部3は、左接続部21、右接続部31およびクロッチ接続部42でのみ接続し、それ以外は遊離可能に形成されるので、それぞれ独立して作用することができる。従って、肌側に配設される右前身頃部3が局部の重みや揺れなどの影響を受ける場合でも、外側に配設される左前身頃部2はその影響を受けにくいので、ウエスト位置が安定して配設されやすい。
【0037】
左接続部21および右接続部31は、長手方向が、上下方向になるように配設されることが好ましい。左接続部21および右接続部31は、局部を出し入れする開口の大きさを確保できるように、左前身頃部2および右前身頃部3の上端から、上下方向に形成される。また左接続部21および右接続部31は、左右方向において細く形成され緊締力がなくても、下衣1は、脇接続部41の緊締力によりずり下がりが防止される。従って、左接続部21および右接続部31は、それぞれ左右方向に短く、上下方向に長く形成されることが好ましい。
【0038】
なお、本発明の実施の形態において左接続部21および右接続部31に、ドット状の接着剤が、離散的に均一に塗布されるが、これに限られない。例えば、左接続部21および右接続部31に、それぞれの一面に接着剤が塗布されても良い。また、本発明の実施の形態のように左接続部21および右接続部31は、それぞれ長方形の接続部分を1つ設けるのではなく、複数の形状の集合によって形成されても良い。例えば、矩形または円形の複数の接続部分を上下方向に並べることにより、左接続部21および右接続部31が形成されても良い。
【0039】
左接続部21からクロッチ接続部42において、左前身頃部2の距離は、右前身頃部3の距離よりも短く形成される。右接続部31からクロッチ接続部において、右前身頃部3の距離は、左前身頃部2の距離よりも短く形成される。
【0040】
例えば、図7に示す左前身頃部2および右前身頃部3の型紙を示す。図7におけるLは、左右中心線である。丸に「-」が配された記号は、接着される部分を示す。図7における型紙上の各部分の参照番号は、下衣1の対応する部分の参照番号の末尾にkを付している。
【0041】
図7(a)および(b)において、端子が四角の白抜き線が2つ(P21akおよびP21bk)と、端子が丸の白抜き線が2つ(P31akとP31bk)がある。端子が同じ2つの線は、下衣1において重なることを意味する。P21akおよびP21bkは、重なり、P31akとP31bkは重なる。
【0042】
P21akは、左前身頃部2kにおける左接続部21akの下端からクロッチ接続部42akまでを結ぶ線である。P21bkは、右前身頃部3kにおける左接続部21bkの下端からクロッチ接続部42bkまでを結ぶ線である。P21akは、P21bkよりも短い。
【0043】
P31akは、左前身頃部2kにおける右接続部31akの下端からクロッチ接続部42akまでを結ぶ線である。P31bkは、右前身頃部3kにおける右接続部31bkの下端からクロッチ接続部42bkまでを結ぶ線である。P31bkは、P31akよりも短い。
【0044】
このように本発明の実施の形態において、左前身頃部2および右前身頃部3の左右中心線側の各端部は、各端部が重なる左前身頃部2および右前身頃部3の部分よりも短く形成されることにより、下衣1の着用時に伸長する。これにより、左前身頃部2および右前身頃部3の左右中心線側の各端部が、男性の局部の左右を押さえてフィットし、局部を支えることができる。また生地の端部の伸長に伴うフィットなので、端始末等でフィットさせる場合に比べて、押さえが弱く、肌に対する負担が軽い。
【0045】
なお、本発明の実施の形態において脇接続部41は、上辺近傍において、長手方向が左右方向に形成され、生地の接続による緊締力を有する複数の接続帯が、上下方向に間隔を開けて配設される。上半身の動きに伴うウエスト位置から大転子近傍位置の皮膚が伸長は、左右方向(着用者の幅方向)よりも、上下方向(着用者の高さ方向)の方が、顕著である場合が多いことが知られている。従って、緊締力を有する複数の接続帯を上下方向に間隔を開けて配設することにより、生地を接続せず緊締力を有さない非接続帯は、上下方向の伸びにあわせて伸長することができる。これにより、脇接続部41は、左右方向の緊締力を担保しずり下がりを防止しつつ、上下方向の伸びにあわせて伸長することができる。
【0046】
このように本発明の実施の形態に係る男性用の下衣1は、端始末不要な伸縮性を有する生地を接続して形成することができる。
【0047】
(生地特性)
左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4は、上下方向(着用者の着丈方向)の伸び率が、130%から190%程度で、左右方向(着用者の幅方向)の伸び率が、190%から260%程度の素材が好ましい。左前身頃部2、右前身頃部3および後身頃部4は、伸長回復力が、上下方向および秀方向ともに、20cNから60cN程度の素材が好ましい。
【0048】
本発明の実施の形態において、伸び率および伸長回復力は、160mm×25mmの試験片を、上部つかみ25mm、下部つかみ35mmおよびつかみ間隔100mmで、定速伸長形引張試験機に取り付けて、測定される。生地の経方向および緯方向がそれぞれ長手方向(16mm側)になるように裁断された、複数の試験片が用いられる。
【0049】
伸び率は、試験片を定速伸長形引張試験機に取り付け、試験片を左右方向および上下方向にそれぞれ荷重14.7Nをかけて測定されたものである。伸長回復力は、試験片を定速伸長形引張試験機に取り付け、300mm/分程度の速度で伸長回復を複数回繰り返し、30%伸長した際の伸長力(cN)と、30%に回復した際の回復力(cN)の平均により算出される。
【0050】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態とその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0051】
例えば、本発明の実施の形態において、下衣1は、男性用のボクサーパンツの場合を説明したが、ブリーフまたはトランクス等の他の男性用下衣であっても良い。また本発明の実施の形態において、右前身頃部が肌側に配設され、左前身頃部が外側に配設され、右手で男性器を出し入れする下衣を説明したが、左前身頃部が肌側に配設され、右前身頃部が外側に配設され、左手で男性器を出し入れする下衣に適用しても良い。
【0052】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 下衣
2 左前身頃部
3 右前身頃部
4 後身頃部
5 フロント部
21 左接続部
22 右端
31 右接続部
32 左端
41 脇接続部
42 クロッチ接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7