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特許7295424無線環境測定装置、無線環境測定システム、および解析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】無線環境測定装置、無線環境測定システム、および解析装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20230614BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230614BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20230614BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20230614BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W84/12
H04B17/309
H04B17/391
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019166029
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044722
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】菊月 達也
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-193283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 17/309
H04B 17/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と基地局とが複数のチャネルで無線通信を行うエリア内に配置され、N個(≧2)のグループに分類された複数のプローブを備え、
各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上の前記プローブが配置されており、
前記Nは、前記複数のチャネルの数よりも大きく、
前記複数のプローブは、同一のグループ単位で同期して前記複数のチャネルを順次切り替えて、各チャネルに対してtscanのスキャン期間、無線信号のスキャンを行い、
グループi(0≦i≦N-1)には、同一のチャネルに対するスキャンタイミングにi×toffset(toffset≦tscan)のオフセットがスキャン開始時間に設けられ、
offsetは、N×toffset=チャネル数×(tscan+tinterval)を満たし、
intervalは、各プローブがスキャン対象のチャネルを切り替えるために要する時間であることを特徴とする無線環境測定装置。
【請求項2】
2つのグループ間で、同一のチャネルをスキャンする重複受信期間(tscan-toffset)は、前記端末装置が定期的に送信するパケットの周期以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の無線環境測定装置。
【請求項3】
前記グループの数は4であり、
前記複数のプローブは、各グループが正方格子状に順番に配置されるように配置されており、
前記端末装置の電波到達距離Lと前記正方格子の格子間距離dとの間に、d<√2Lの関係が成立することを特徴とする請求項1または2に記載の無線環境測定装置。
【請求項4】
前記電波到達距離Lから(N×toffset)×(前記端末装置の移動速度)を差し引いた距離をL´とした場合に、d<√2L´の関係が成立することを特徴とする請求項3記載の無線環境測定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の無線環境測定装置と、
前記複数のプローブのスキャン結果を解析する解析装置と、を備えることを特徴とする無線環境測定システム。
【請求項6】
端末装置と基地局とが複数のチャネルで無線通信を行うエリア内に配置され、N個(≧2)のグループに分類された複数のプローブに対して、各チャネルの無線信号のスキャンのタイミングを指示する指示部と、
前記複数のプローブのスキャン結果を解析する解析部と、を備え、
各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上の前記プローブが配置されており、
前記Nは、前記複数のチャネルの数よりも大きく、
前記指示部は、前記複数のプローブに、同一のグループ単位で同期して前記複数のチャネルを順次切り替えて、各チャネルに対してtscanのスキャン期間、スキャンを行わせ、グループi(0≦i≦N-1)には、同一のチャネルに対するスキャンタイミングにi×toffset(toffset≦tscan)のオフセットをスキャン開始時間に設け、
offsetは、N×toffset=チャネル数×(tscan+tinterval)を満たし、
intervalは、各プローブがスキャン対象のチャネルを切り替えるために要する時間であることを特徴とする解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、無線環境測定装置、無線環境測定システム、および解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線を利用したネットワークでは、基地局と端末装置との間で無線による通信が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-239297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような無線ネットワークでは、干渉源の存在、端末装置の電波到達範囲の制約などに起因して、無線通信に障害が生じることがある。そこで、複数の無線プローブを配置し、現場の電波状況を網羅的に測定するため、複数のチャネル(周波数帯)全ての無線信号を測定することが考えられる。しかしながら、チャネル数が多くなるにつれて、プローブ数が莫大になってしまう。そこで、各プローブに、複数チャネルの測定を順次切り替えて行わせることが考えられる。しかしながら、チャネルの切替時に制御遅延などに起因してスキャン不可時間が生じてしまう。
【0005】
1つの側面では、本発明は、途切れなく無線環境を測定することができる無線環境測定装置、無線環境測定システム、および解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、無線環境測定装置は、端末装置と基地局とが複数のチャネルで無線通信を行うエリア内に配置され、N個(≧2)のグループに分類された複数のプローブを備え、各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上の前記プローブが配置されており、前記Nは、前記複数のチャネルの数よりも大きく、前記複数のプローブは、同一のグループ単位で同期して前記複数のチャネルを順次切り替えて、各チャネルに対してtscanのスキャン期間、無線信号のスキャンを行い、グループi(0≦i≦N-1)には、同一のチャネルに対するスキャンタイミングにi×toffset(toffset≦tscan)のオフセットがスキャン開始時間に設けられ、toffsetは、N×toffset=チャネル数×(tscan+tinterval)を満たし、tintervalは、各プローブがスキャン対象のチャネルを切り替えるために要する時間である。
【0007】
他の態様では、無線環境測定システムは、上記無線環境測定装置と、前記複数のプローブのスキャン結果を解析する解析装置と、を備える。
【0008】
他の態様では、解析装置は、端末装置と基地局とが複数のチャネルで無線通信を行うエリア内に配置され、N個(≧2)のグループに分類された複数のプローブに対して、各チャネルの無線信号のスキャンのタイミングを指示する指示部と、前記複数のプローブのスキャン結果を解析する解析部と、を備え、各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上の前記プローブが配置されており、前記Nは、前記複数のチャネルの数よりも大きく、前記指示部は、前記複数のプローブに、同一のグループ単位で同期して前記複数のチャネルを順次切り替えて、各チャネルに対してtscanのスキャン期間、スキャンを行わせ、グループi(0≦i≦N-1)には、同一のチャネルに対するスキャンタイミングにi×toffset(toffset≦tscan)のオフセットをスキャン開始時間に設け、toffsetは、N×toffset=チャネル数×(tscan+tinterval)を満たし、tintervalは、各プローブがスキャン対象のチャネルを切り替えるために要する時間である。
【発明の効果】
【0009】
途切れなく無線環境を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無線プローブの配置を例示する図である。
図2】(a)および(b)は運用されるチャネルを例示する図である。
図3】複数チャネルの測定を例示する図である。
図4】(a)は実施例1に係る無線環境測定システムの全体構成を表すブロック図であり、(b)はプローブの機能ブロック図であり、(c)は解析サーバの機能ブロック図である。
図5】無線環境測定システムの各部の動作を説明するための図である。
図6】無線環境測定システムの各部の動作を説明するための図である。
図7】(a)は無線環境測定システムの初期設定の手順を表したフロー図であり、(b)はスキャン開始時間およびスキャン終了時間のテーブルを例示する図である。
図8】各グループのスキャンを例示する図である。
図9】各プローブの配置を例示する図である。
図10】2つのグループ間で同一のチャネルをスキャンする重複受信期間について例示する図である。
図11】各プローブの配置を例示する図である。
図12】無線環境測定システムの各部の動作を説明するための図である。
図13】無線環境測定システムの各部の動作を説明するための図である。
図14】(a)はプローブのハードウェア構成を例示するブロック図であり、(b)は解析サーバのハードウェア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
無線通信を利用したネットワークでは、基地局と端末とが無線で通信を行う。このような無線ネットワークでは、干渉源の存在、電波到達範囲の制約などに起因して、無線通信に障害が生じることがある。そこで、ネットワークの障害原因を特定するために、無線通信の状況を解析するパケットキャプチャが有効である。しかしながら、干渉源位置や電波到達範囲の解析には、無線プローブを携帯して複数地点を歩き回ることが求められる。この場合、膨大な手間を要することになる。
【0012】
そこで、図1で例示するように、基地局と複数の端末装置とが無線通信を行うネットワークエリア内に複数の無線プローブを配置し、干渉源位置、電波到達範囲などを解析サーバで自動解析するシステムが開発されている。特に、Wi-Fiを利用したネットワークでは、持ち込みルータ、ローミング設定、チャネル干渉など複数の要因で障害が頻発するため、原因究明が困難である。したがって、障害復旧へ繋がる情報を解析・提示してほしいという要望が強い。例えば、障害の原因(干渉源)、当該干渉源の位置などが得られることが望まれている。
【0013】
障害分析においては、現場の電波状況を網羅的に分析するため、運用されている複数チャネル全ての無線信号を測定することが望まれる。例えば、図2(a)で例示するように、2.4GHz帯のWi-Fiネットワークでは、隣接チャネル間干渉を避けるため、チャネル#1、チャネル#6、チャネル#11の3つのチャネルが利用される。図2(b)で例示するように、5GHz帯のWi-Fiネットワークでは、例えば19個のチャネルが利用される。
【0014】
これらの利用されている複数チャネルの全ての無線信号を、いずれかの無線プローブで受信する。測位のため、ある位置に配置された端末の無線信号を、3点以上の無線プローブで受信する。
【0015】
例えば、チャネル数が多くなるにつれて、プローブ数を増やすことが考えられる。しかしながら、この手法では、ある端末装置の無線信号を受信できる範囲(電波到達範囲)にチャネル数×3以上のプローブを配置することが求められる。したがって、チャネル数が多くなるにつれて、プローブ数が莫大になってしまう。
【0016】
そこで、各プローブに、複数チャネルの観測を順次切り替えて行わせることが考えられる。例えば、各プローブに各チャネルを巡回切替させ、切替タイミングを同期させることが考えられる。例えば、図3で例示するように、tscanのスキャン期間、プローブ1およびプローブ4はチャネル#1の無線信号を受信するスキャンを行い、プローブ2はチャネル#6の無線信号を受信するスキャンを行い、プローブ3はチャネル#11の無線信号を受信するスキャンを行う。その後、tintervalの後、次のtscanのスキャン期間、プローブ1およびプローブ4はチャネル#6をスキャンし、プローブ2はチャネル#11をスキャンし、プローブ3はチャネル#1をスキャンする。このように、1台のプローブで、チャネル#1、チャネル#6およびチャネル#11の全てのチャネルのスキャンを行う。このようにすることで、プローブ数を削減することができる。
【0017】
しかしながら、各プローブでチャネルを切り替えるためには、制御遅延などに起因してチャネル切替時間(tinterval)が発生する。このチャネル切替時間に起因して、例えば、周期的に数百msのスキャン不可時間が生じてしまう。この場合、接続シーケンスなどの、数百ms以下の短いパケット群列の分析が困難になる。また、動線分析、障害の因果関係分析などの、周期的に送信される信号の短区間の時系列分析が困難になる。また、CW(連続波)の検出が困難になる。以上のことから、各チャネルについて、途切れなくスキャンできることが望まれる。
【0018】
そこで、以下の実施例では、各チャネルについて途切れなくスキャンすることで、途切れなく無線環境を測定することができる無線環境測定装置、無線環境測定システム、および解析装置について説明する。
【実施例1】
【0019】
図4(a)は、実施例1に係る無線環境測定システム100の全体構成を表すブロック図である。図4(b)は、無線環境測定システム100に含まれる第1プローブ10a、第2プローブ10b、第3プローブ10c、および第4プローブ10dの機能ブロック図である。図4(c)は、無線環境測定システム100に含まれる解析サーバ20の機能ブロック図である。本実施例においては、一例として、Wi-Fiのチャネル#1、チャネル#6およびチャネル#11を利用しているものとする。
【0020】
図4(a)で例示するように、無線環境測定システム100は、複数のプローブおよび解析サーバ20を備えている。本実施例においては、一例として、複数のプローブは、第1プローブ10a~第4プローブ10dであるものとする。
これらの第1プローブ10a~第4プローブ10dは、図1で説明したように、基地局と複数の端末装置とが無線通信を行うネットワークエリア内に配置されている。第1プローブ10a~第4プローブ10dは、無線環境測定装置として機能する。
【0021】
図4(b)で例示するように、第1プローブ10a~第4プローブ10dのそれぞれは、送受信部11、チャネル切替部12、キャプチャ用受信部13、データ保存部14などとして機能する。チャネル切替部12は、スキャン対象のチャネルの切替を制御する。キャプチャ用受信部13は、チャネル切替部12によって指定されたチャネルについて無線信号(パケット)をスキャンすることで、当該チャネルのパケットをキャプチャする。データ保存部14は、キャプチャ用受信部13が測定したキャプチャデータを保存する。キャプチャデータには、受信強度などが含まれる。
【0022】
図4(c)で例示するように、解析サーバ20は、解析装置として機能し、開始指示部21、終了指示部22、解析部23などとして機能する。開始指示部21は、第1プローブ10a~第4プローブ10dのそれぞれに、指定のチャネルのスキャンの開始を指示する。終了指示部22は、スキャンの終了を指示する。開始指示部21および終了指示部22は、指示部として機能する。解析部23は、第1プローブ10a~第4プローブ10dのそれぞれからキャプチャデータを受信し、当該キャプチャデータについて解析を行う。例えば、解析部23は、3以上のプローブのキャプチャデータを用いて、端末の電波到達範囲、干渉源の位置などを解析する。
【0023】
図5および図6は、無線環境測定システム100の各部の動作を説明するための図である。以下、図4(a)~図4(c)、図5および図6を参照しつつ、各部の動作を説明する。図5で例示するように、第1プローブ10aの送受信部11は、解析サーバ20の開始指示部21から最初のチャネルとしてチャネル#1の開始指示を受信すると、チャネル#1のスキャン開始指示をチャネル切替部12に送信する。チャネル切替部12は、チャネル#1のスキャン開始指示を受信すると、キャプチャ用受信部13に、チャネル#1の設定を行うとともに、スキャン開始指示を送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#1のパケットのスキャンを開始する。
【0024】
その後、第1プローブ10aの送受信部11は、解析サーバ20の開始指示部21から次のチャネルとしてチャネル#6の開始指示を受信する。それにより、第1プローブ10aの送受信部11は、チャネル#1のスキャン終了指示をチャネル切替部12に送信するとともに、チャネル#6のスキャン開始指示をチャネル切替部12に送信する。チャネル切替部12がチャネル#1のスキャン終了指示を受信すると、キャプチャ用受信部13は、チャネル#1のスキャンを終了させ、チャネル#1のキャプチャデータをデータ保存部14に保存する。チャネル切替部12は、チャネル#6のスキャン開始指示を受信すると、キャプチャ用受信部13に、チャネル#6の設定を行うとともに、スキャン開始指示を送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#6のパケットのスキャンを開始する。
【0025】
その後、第1プローブ10aの送受信部11は、解析サーバ20の終了指示部22から、スキャン終了指示を受信する。それにより、第1プローブ10aの送受信部11は、チャネル#6のスキャン終了指示をチャネル切替部12に送信する。チャネル切替部12がチャネル#6のスキャン終了指示を受信すると、キャプチャ用受信部13は、チャネル#6のスキャンを終了させ、チャネル#6のキャプチャデータをデータ保存部14に保存する。また、チャネル切替部12は、データの送信指示をデータ保存部14に送信する。それにより、データ保存部14は、保存したキャプチャデータを送受信部11に転送する。送受信部11は、データ保存部14から転送されてきたキャプチャデータを解析サーバ20に送信する。解析サーバ20の解析部23は、受信したキャプチャデータを解析する。
【0026】
図6で例示するように、第2プローブ10bについても、同様に、各チャネルについてスキャンが順次行われる。
【0027】
図5の例では、チャネル#1およびチャネル#6だけのスキャンが説明されているが、それに限られない。本実施例においては、巡回切替される全てのチャネル(チャネル#1、チャネル#6、チャネル#11)について、複数回のスキャンが行われる。また、図5および図6の例では、第1プローブ10aおよび第2プローブ10bだけが説明されているが、それに限られない。本実施例においては、無線環境測定システム100に備わっている第1プローブ10a~第4プローブ10dの全てのプローブについて同様の動作が行われる。
【0028】
続いて、無線環境測定システム100の初期設定の手順について説明する。図7(a)は、無線環境測定システム100の初期設定の手順を表したフロー図である。図7(a)で例示するように、ユーザは、無線環境測定システム100に備わっている複数のプローブをN個のグループに分類する(ステップS1)。本実施例においては、一例として、第1プローブ10aをグループ0に分類し、第2プローブ10bをグループ1に分類し、第3プローブ10cをグループ2に分類し、第4プローブ10dをグループ3に分類する。すなわち、N=4とする。プローブが多数備わっている場合には、各グループに複数のプローブを分類してもよい。
【0029】
次に、チャネル切替時間tintervalを考慮して、スキャン期間tscanのオフセットtoffsetを設定する(ステップS2)。具体的には、N×toffset=(チャネル数)×(tscan+tinterval)を満たすようにする。また、グループi(0≦i≦N-1)では、スキャンタイミングに、i×toffset(toffset≦tscan)だけスキャン期間のオフセットを設定する。
【0030】
次に、各グループでスキャン対象のチャネルを同期かつループさせるように設定する(ステップS3)。次に、各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上のプローブが位置するように、各プローブを設置する(ステップS4)。ここで、電波到達距離とは、障害物や干渉源などが無い場合(無線障害が無い場合)に端末装置の電波が到達する距離のことである。
【0031】
図7(a)の初期設定により、各グループについて、各チャネルについてのスキャン開始時間およびスキャン終了時間が決まる。解析サーバ20の開始指示部21および終了指示部22は、これらのスキャン開始時間およびスキャン終了時間を図7(b)のようなテーブルとして保持する。
【0032】
図8は、図7(a)の設定によって行われるスキャンを例示する図である。図8で例示するように、グループ0の第1プローブ10aは、tscanのスキャン期間、チャネル#1のスキャンを行う。第1プローブ10aによるチャネル#1のスキャン開始からtoffset後、グループ1の第2プローブ10bは、tscanのスキャン期間、チャネル#1のスキャンを行う。第2プローブ10bによるチャネル#1のスキャン開始からtoffset後、グループ2の第3プローブ10cは、tscanのスキャン期間、チャネル#1のスキャンを行う。第3プローブ10cによるチャネル#1のスキャン開始からtoffset後、グループ3の第4プローブ10dは、tscanのスキャン期間、チャネル#1のスキャンを行う。
【0033】
第1プローブ10aは、チャネル#1のスキャンを終了すると、tinterval後に、tscanのスキャン期間、チャネル#6のスキャンを行う。第1プローブ10aによるチャネル#6のスキャン開始からtoffset後、グループ1の第2プローブ10bは、tscanのスキャン期間、チャネル#6のスキャンを行う。第2プローブ10bによるチャネル#6のスキャン開始からtoffset後、グループ2の第3プローブ10cは、tscanのスキャン期間、チャネル#6のスキャンを行う。第3プローブ10cによるチャネル#6のスキャン開始からtoffset後、グループ3の第4プローブ10dは、tscanのスキャン期間、チャネル#6のスキャンを行う。
【0034】
第1プローブ10aは、チャネル#6のスキャンを終了すると、tinterval後に、tscanのスキャン期間、チャネル#11のスキャンを行う。第1プローブ10aによるチャネル#11のスキャン開始からtoffset後、グループ1の第2プローブ10bは、tscanのスキャン期間、チャネル#11のスキャンを行う。第2プローブ10bによるチャネル#11のスキャン開始からtoffset後、グループ2の第3プローブ10cは、tscanのスキャン期間、チャネル#11のスキャンを行う。第3プローブ10cによるチャネル#11のスキャン開始からtoffset後、グループ3の第4プローブ10dは、tscanのスキャン期間、チャネル#11のスキャンを行う。
【0035】
このように、第1プロ―ブ10aは、tscanのスキャン期間、チャネル#1のスキャンを行い、tinterval後に、tscanのスキャン期間、チャネル#6のスキャンを行い、tinterval後に、tscanのスキャン期間、チャネル#11のスキャンを行う。この動作を1セットとし、第1プローブ10aは、1セット後に、tinterval後に、次のセットを行うことを繰り返す。第2プローブ10bは、第1プローブ10aよりもtoffset後に遅れて当該セットを繰り返す。さらに、第3プローブ10cは、第2プローブ10bよりもtoffset後に遅れて当該セットを繰り返す。さらに、第4プローブ10dは、第3プローブ10cよりもtoffset後に遅れて当該セットを繰り返す。
【0036】
offsetがtscan以下であることから、各チャネルについて、いずれかのプローブがスキャンを行うことになる。したがって、チャネル切替にtintervalが必要であっても、各チャネルについて、有限の切替時間にかかわらず全時間帯の無線環境を測定することができるようになる。すなわち、途切れなく無線環境を測定することができる。
【0037】
N×toffset=(チャネル数)×(tscan+tinterval)を満たすようにtoffsetが設定されることから、グループN-1とグループ0との間の時間オフセットも、toffsetになる。各端末装置の電波到達距離内に、各グループにおいて1個以上のプローブが位置するように各プローブが設置されていることから、スキャン対象の端末装置がいずれのエリアにいても同様のスキャン情報が得られるようになる。さらに、N>チャネル数≧2であるため、3点以上のプローブでの受信が可能であり、測位が可能となる。なお、グループ数Nは、実質的にチャネル数+1程度にすることができるため、設置するプローブ数を大幅に削減することができる。
【0038】
intervalは、制御のレイテンシで、例えば0.1s程度である。したがって、チャネル切替によるオーバーヘッドを抑制するため、tscanは、tintervalよりも十分に大きくすることが好ましい。チャネル数が3の場合では、たとえなN=4とし、tscanを1.5sとし、toffsetを1.2sとすることが好ましい。この場合において、図9で例示するように、各プローブを、各グループが正方格子状に順番に配置されるように設置し、電波到達距離Lと格子間距離dとの関係をd<√2Lとすることが好ましい。
【0039】
(変形例1)
各プローブのクロック精度が低い場合、各プローブで観測したデータ群の同期が困難になるケースがある。そこで、図10で例示するように、2つのグループ間で、同一のチャネルをスキャンする重複受信期間(=tscan-toffset)を、端末装置が定期的に送信するパケットの周期以上に設定する。定期的に送信されるパケットは、例えば、Wi-Fiビーコン(通常は102.4msms周期)などである。Wi-Fi環境において必ず送信されるビーコンパケットを、重複受信期間内で少なくとも1つは複数プローブで受信することで、これらプローブのデータ群を同期することができるようになる。
【0040】
(変形例2)
ある観測対象の端末が移動する場合、各プローブで該端末のパケットを受信するタイミングが異なる。スキャン周期が長いと、各グループで受信チャネルを同期・ループできなくなる場合がある。
【0041】
そこで、変形例2では、電波到達距離Lから「スキャン周期×移動速度」分を差し引いて設置する。例えば、図11で例示するように、(スキャン周期=4.8s)で電波到達距離L=20m、移動速度1m/sの場合、電波到達範囲=20-4.8=15.2mとして設計することが好ましい。
【実施例2】
【0042】
実施例1では、解析サーバ20がチャネル切替のタイミングごとに各プローブに指示していたが、それに限られない。各プローブがチャネルの切替を自動で行ってもよい。実施例2では、各プローブがチャネルの切替を自動で行う例について説明する。
【0043】
図12および図13は、実施例2において、無線環境測定システム100の各部の動作を説明するための図である。図12で例示するように、第1プローブ10aの送受信部11が解析サーバ20の開始指示部21から各チャネルのリストと各チャネルのスキャンタイミングとを受信すると、チャネル切替部12は、当該リストおよびスキャンタイミングを登録する。各チャネルのリストには、スキャン対象のチャネルが順番に登録されている。スキャンタイミングは、各チャネルのスキャン開始タイミングおよびスキャン終了タイミングが含まれている。各チャネルのリストおよび各チャネルのスキャンタイミングは、図7(b)で例示したようなテーブルとして送受信部11に送信される。
【0044】
また、第1プローブ10aの送受信部11は、解析サーバ20の開始指示部21からスキャン開始指示を受信すると、リストの順番に従って、チャネル#1のスキャン開始指示をチャネル切替部12に送信する。それにより、チャネル切替部12は、キャプチャ用受信部13に、チャネル#1の設定を行うとともに、スキャン開始指示を送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#1のパケットのスキャンを開始する。
【0045】
チャネル#1のスキャン期間後、チャネル切替部12は、チャネル#1のスキャン終了指示をキャプチャ用受信部13に送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#1のスキャンを終了し、チャネル#1のキャプチャデータをデータ保存部14に保存する。次に、チャネル切替部12は、キャプチャ用受信部13に、リストの順番に従って、チャネル#6の設定を行うとともに、スキャン開始指示を送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#6のパケットのスキャンを開始する。
【0046】
チャネル#6のスキャン期間後、チャネル切替部12は、チャネル#6のスキャン終了指示をキャプチャ用受信部13に送信する。それにより、キャプチャ用受信部13は、チャネル#6のスキャンを終了し、チャネル#6のキャプチャデータをデータ保存部14に保存する。次に、チャネル切替部12は、データの送信指示をデータ保存部14に送信する。それにより、データ保存部14は、保存したキャプチャデータを送受信部11に転送する。送受信部11は、データ保存部14から転送されてきたキャプチャデータを解析サーバ20に送信する。解析サーバ20の解析部23は、受信したキャプチャデータを解析する。
【0047】
図13で例示するように、第2プローブ10bについても、同様に、各チャネルについてスキャンが順次行われる。
【0048】
図12の例では、チャネル#1およびチャネル#6だけのスキャンが説明されているが、それに限られない。本実施例においては、巡回切替される全てのチャネル(チャネル#1、チャネル#6、チャネル#11)について、複数回のスキャンが行われる。また、図12および図13の例では、第1プローブ10aおよび第2プローブ10bだけが説明されているが、それに限られない。本実施例においては、無線環境測定システム100に備わっている第1プローブ10a~第4プローブ10dの全てのプローブについて同様の動作が行われる。
【0049】
(プローブのハードウェア)
図14(a)は、第1プローブ10a~第4プローブ10dのそれぞれのハードウェア構成を例示するブロック図である。図14(a)で例示するように、第1プローブ10a~第4プローブ10dは、CPU101、RAM102、記憶装置103、通信装置104、受信装置105等を備える。
【0050】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置103は、プログラムなどを記憶している。通信装置104は、有線または無線で解析サーバ20との間で通信を行うための装置である。受信装置105は、端末装置が基地局に送信する無線信号を受信する装置である。本実施例においては第1プローブ10a~第4プローブ10dの各部は、プログラムの実行によって実現されている。例えば、通信装置104が、送受信部11として機能する。受信装置105がキャプチャ用受信部13として機能する。
【0051】
(解析サーバのハードウェア)
図14(b)は、解析サーバ20のハードウェア構成を例示するブロック図である。図14(b)で例示するように、解析サーバ20は、CPU201、RAM202、記憶装置203、通信装置204等を備える。
【0052】
CPU201は、中央演算処理装置である。CPU201は、1以上のコアを含む。RAM202は、CPU201が実行するプログラム、CPU201が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置203は、不揮発性記憶装置である。記憶装置203として、例えば、ROM、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置203は、プログラムなどを記憶している。通信装置204は、無線または有線で第1プローブ10a~第4プローブ10dとの間で通信を行うための装置である。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 プローブ
11 送受信部
12 チャネル切替部
13 キャプチャ用受信部
14 データ保存部
20 解析サーバ
21 開始指示部
22 終了指示部
23 解析部
100 無線環境測定システム
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