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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230614BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 175/16 20060101ALI20230614BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D4/02
C09J4/02
C09D175/16
C09J175/16
C09K3/10 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020541031
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026107
(87)【国際公開番号】W WO2020049846
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018165221
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 寛人
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-045612(JP,A)
【文献】特開2001-183502(JP,A)
【文献】特開2001-188101(JP,A)
【文献】特開平05-019214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/06
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:1分子中に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子とを含むオリゴマーと、
(B)成分:1分子中にフッ素原子を含まない多官能(メタ)アクリレートと、
(C)成分:水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレート、脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレート、芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つの、フッ素原子を分子中に含まない化合物と、
(D)成分:ラジカル開始剤と、を含み、
前記(A)成分が、パーフルオロポリエーテル骨格を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上7.8質量部以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分1質量部に対して、前記(C)成分を2質量部以上100質量部以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)成分が、光ラジカル開始剤であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリロイルモルフォリン、アクリル酸、およびイソボルニルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物
【請求項7】
前記(D)成分が、アセトフェノン系光ラジカル開始剤およびアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤からなる群より選択される1種以上である請求項5に記載の硬化性樹脂組成物
【請求項8】
硬化物の屈折率が1.40以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
光学用コーティング剤、封止剤、または接着剤であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気・電子部品の製造工程において、光を照射することにより短時間で透明性の優れた光硬化性樹脂組成物が多用されている。例えば、近年、携帯電話、多機能携帯電話等の電子モバイル機器、ゲーム機、パソコンなどにおいて液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの画像表示装置が搭載されているが、この画像表示装置は表示モジュールとカバーパネルとの間に空間が設けられている。この画像表示装置の課題としては、この空間の中が空気だけの場合、光の散乱が生じ、照度やコントラストの低下を招いていたことである。そこでカバーパネルと表示モジュールとの間に、透明性の優れた光硬化性樹脂組成物を充填することが検討されている。例えば、特開2016-103030号公報(米国特許出願公開第2010/097746号明細書に相当)の実施例においてポリウレタンアクリレ-ト、イソボルニルアクリレ-ト、光重合開始剤を含む接着剤組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、特開2016-103030号公報に開示された接着剤の硬化物の屈折率が高いので、光学装置に用いられる各種レンズ、発光素子、受光素子等の光学部品用接着剤としては、不十分であった。
【0004】
本発明は上記の問題点を踏まえ、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の要旨を次に説明する。
【0006】
[1](A)成分:1分子中に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子とを含むオリゴマーと、
(B)成分:フッ素原子を1分子中に含まない多官能(メタ)アクリレートと、
(C)成分:水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレート、脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレート、芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つの、フッ素原子を分子中に含まない化合物と、
(D)成分:ラジカル開始剤と、を含み、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上7.8質量部以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0007】
[2]前記(A)成分が、1分子中にフッ素原子を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0008】
[3]前記(A)成分が、パーフルオロポリエーテル骨格を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0009】
[4]前記(B)成分が、2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
[5]前記(B)成分が、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
[6]前記(B)成分1質量部に対して、前記(C)成分を2質量部以上100質量部以下の範囲で含むことを特徴とする[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
[7]前記(D)成分が、光ラジカル開始剤であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
[8]硬化物の屈折率が1.40以下であることを特徴とする[1]~[7]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
[9]光学用コーティング剤、封止剤、または接着剤であることを特徴とする[1]~[8]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
[10] [1]~[9]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分:1分子中に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子とを含むオリゴマーと、
(B)成分:フッ素原子を1分子中に含まない多官能(メタ)アクリレートと、
(C)成分:水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレート、脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレート、芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つの、フッ素原子を分子中に含まない化合物と、
(D)成分:ラジカル開始剤と、を含み、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上7.8質量部以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明は、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0019】
<(A)成分>
本発明の(A)成分としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子を含むオリゴマーであれば特に限定されない。オリゴマーの中でも、本発明の(A)成分を採用することで、特異的に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるという顕著な効果をもたらす。前記(A)成分としては、上記効果がより顕著にもたらされることから、好ましくは1分子中にフッ素原子を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、上記効果が特に顕著にもたらされることから、特に好ましくはパーフルオロポリエーテル骨格を含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0020】
前記(A)成分の(メタ)アクリロイル基の分子中の位置は、特に限定されないが、接着力が優れるとの観点から、分子中の末端または側鎖が好ましく、特に好ましくは、末端である。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基を意味するが、本発明の(A)成分において、より一層、硬化性が高く屈折率が低い硬化物が得られるという観点からメタクリロイル基が好ましい。
【0021】
前記(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは300以上1万未満であり、より好ましくは500以上7500未満、特に好ましくは700以上5000未満である。上記の範囲内であることで、より一層、接着力が優れる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいう。
【0022】
前記(A)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製フォンブリン(登録商標)MD40、フルオロリンク(登録商標)AD1700、フルオロリンク(登録商標)MD700などが挙げられる。
【0023】
<(B)成分>
本発明の(B)成分としては、1分子中にフッ素原子を含まない多官能(メタ)アクリレートであれば特に制限されない。前記(B)成分としては、例えば、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが好ましいものとして挙げられる。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
前記2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくはジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートである。本発明の(B)成分の中でも、上記化合物を選択することで、より一層、特異的に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるという顕著な効果をもたらす。
【0025】
前記3~6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明の(B)成分の中でも、上記化合物を選択することで、より一層、特異的に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるという顕著な効果をもたらす。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。
【0026】
前記(B)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えば、東亜合成株式会社製アロニックス(登録商標)M-313、315、日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) DPHA、日立化成株式会社製FA-731Aなどが挙げられる。
【0027】
前記(B)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.1質量部以上7.8質量部以下の範囲であり、0.1質量部以上7.5質量部以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上5.0質量部以下であり、特に好ましくは0.3質量部以上3.0質量部以下である。上記の範囲であることで、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【0028】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレート、脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレート、芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つの、フッ素原子を分子中に含まない化合物であれば特に制限されない。より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、特に好ましくは、水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレート、脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つの、フッ素原子を分子中に含まない化合物である。単官能モノマーの中でも、本発明の(C)成分を選択し、本発明の(A)成分と(B)成分と組み合わせることで、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるという顕著な効果をもたらす。なお、本明細書において単官能(メタ)アクリレートとは(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体を意味する。
【0029】
前記水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸などが挙げられ、中でも、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが好ましい。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基を意味するが、前記水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートとしては、より一層、硬化性が高く屈折率が低い硬化物が得られるという観点からメタクリロイル基が好ましい。また、前記水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、特に限定されないが、例えば、共栄社化学株式会社製ライトエステル(登録商標)HOB、HO-250(N)、日本化薬株式会社製HPMAなどが挙げられる。なお、本明細書において水酸基と芳香族環との両方を含む単官能(メタ)アクリレートは、水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートとしてみなす。
【0030】
前記脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、中でも、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基を意味するが、前記脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレートとしては、より一層、硬化性が高く屈折率が低い硬化物が得られるという観点から、アクリロイル基が好ましい。また、前記脂環式環を含む単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、特に限定されないが、例えば、共栄社化学株式会社製IBX-A、IBX、日立化成株式会社製FA-513M、FA-513AS、FA511AS、FA-512AS、大阪有機化学工業株式会社製ビスコート#155、MADA、東亜合成株式会社製CHA、サートマー社製SR-217、MCCユニテック株式会社製TBCHMAなどが挙げられる。なお、本明細書において水酸基と脂環式環との両方を含む単官能(メタ)アクリレートは、水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートとしてみなす。
【0031】
前記芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシモノエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシモノエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、中でも、より一層、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシモノエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシモノエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。また、前記芳香族環を含む単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、特に限定されないが、例えば、共栄社化学株式会社製PO-A、P2H-A、P-200Aなどが挙げられる。
【0032】
前記(メタ)アクリルアミドとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられ、中でも、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリンが好ましい。これらは単独で若しくは2種以上の混合物として用いることができる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基を意味するが、前記(メタ)アクリルアミドとしては、より一層、硬化性が高く屈折率が低い硬化物が得られるという観点からアクリロイル基が好ましい。また、前記(メタ)アクリルアミドの市販品としては、特に限定されないが、例えば、KJケミカルズ株式会社製DMAA(登録商標)、HEAA(登録商標)、DEAA(登録商標)、ACMO(登録商標)などが挙げられる。
【0033】
前記(メタ)アクリル酸の市販品としては、特に限定されないが、例えば、三菱ケミカル株式会社製GAなどが挙げられる。
【0034】
前記(B)成分1質量部に対する前記(C)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、前記(B)成分1質量部に対して、好ましくは2質量部以上100質量部以下の範囲であり、より好ましくは4質量部以上50質量部以下の範囲であり、特に好ましくは5質量部以上30質量部以下の範囲である。上記の範囲であることで、より一層、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【0035】
また、前記(A)成分100質量部に対する前記(C)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは1質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは2質量部以上100質量部以下の範囲であり、特に好ましくは3質量部以上50質量部以下の範囲である。上記の範囲であることで、より一層、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【0036】
<(D)成分>
本発明で使用することができる(D)成分は、ラジカル開始剤である。このような(D)成分としては、光ラジカル開始剤、有機過酸化物等が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物の硬化形態は、本発明の(D)成分の選択により、光硬化、加熱硬化又はレドックス硬化を選択することが可能である。例えば、硬化性樹脂組成物に関して「光硬化性」を付与したい場合は、光ラジカル開始剤を選択し、「加熱硬化又はレドックス反応による硬化」を付与したい場合は、有機過酸化物を選択すればよい。短時間硬化を実現できるという観点から、(D)成分は、光ラジカル開始剤であるが好ましい。
【0037】
前記(D)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、(A)成分の100質量部に対して、(D)成分が0.01質量部以上10質量部以下の範囲が好ましい。(D)成分が0.01質量部以上であることで硬化性が優れ、10質量部以下であることで硬化性樹脂組成物の保存性が良好とすることができる。
【0038】
本発明に用いられる(D)成分である光ラジカル開始剤は、活性エネルギー線を照射することにより、ラジカルが発生する化合物であれば限定されるものではない。(D)成分である光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル開始剤、ベンゾイン系光ラジカル開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤、チオキサントン系光ラジカル開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤、チタノセン系光ラジカル開始剤等が挙げられ、この中でも、光硬化性に優れるという観点から、アセトフェノン系光ラジカル開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤が好ましい。またこれらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
前記のアセトフェノン系光ラジカル開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられるが、この限りではない。市販品としては、IRGACURE (登録商標)184、DAROCUR(登録商標)1173(BASF社製)などが挙げられる。
【0040】
前記のアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられるが、この限りではない。
【0041】
本発明に用いられる(D)成分である有機過酸化物とは、50℃以上の加熱又はレドックス反応によりラジカル種が発生する化合物である。レドックス反応を用いると、室温でラジカル種を発生させることができるので好ましい。(D)成分である有機過酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール化合物;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド化合物;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジn-プロピルパーオキシジカーボネート、ビス-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノアート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル化合物;及びアセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート等が挙げられる。これらの有機過酸化物は単独で使用されてもよく、又は複数併用されてもよい。これらのうち、硬化性の観点から、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシエステル化合物が好ましく用いられる。また、レドックス反応に適した有機過酸化物としてはジアルキルパーオキサイド化合物が挙げられる。
【0042】
(D)成分として有機過酸化物を用いた場合、レドックス反応を促進させる目的で硬化促進剤を配合させることができる。そのような硬化促進剤としては、特に限定されないが、好ましくは、サッカリン(o-ベンゾイックスルフィミド)、ヒドラジン系化合物、アミン化合物、メルカプタン化合物、金属有機化合物等が使用される。前記の硬化促進剤は、単独で使用されてもよく、又は複数併用されてもよい。併用することが硬化促進効果が良好であるためにより好ましい。
【0043】
前記ヒドラジン系化合物としては、例えば、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2(p-トリル)ヒドラジン、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジン、1-(1’,1’,1’-トリフルオロ)アセチル-2-フェニルヒドラジン、1,5-ジフェニル-カルボヒドラジン、1-ホルミル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ブロモフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ニトロフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(2’-フェニルエチルヒドラジン)、エチルカルバゼート、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0044】
前記アミン化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルアミン、1,2,3,4-テトラヒドロキノン、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン等の複素環第二級アミン;キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第三級アミン;N,N-ジメチル-パラ-トルイジン、N,N-ジメチル-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン;1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、3-メルカプトベンゾトリゾール等のアゾール系化合物等が挙げられる。
【0045】
前記メルカプタン化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0046】
前記金属有機化合物としては、例えば、ペンタジオン鉄、ペンタジオンコバルト、ネオデカン酸コバルト、ペンタジオン銅、プロピレンジアミン銅、エチレンジアミン銅、ネオデカン酸銅、鉄ナフテート、ニッケルナフテート、コバルトナフテート、銅ナフテート、銅オクテート、鉄ヘキソエート、鉄プロピオネート、アセチルアセトンバナジウム等が挙げられる。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、一液型組成物として使用することもできるが、二液型組成物としても使用できる。二液型組成物とする際、一方の液に(D)成分の光ラジカル開始剤を含め、他方の液に(D)成分の金属有機化合物を含めることが好ましい。このように(D)成分の光ラジカル開始剤と金属有機化合物とを、別々の液に分けることにより貯蔵中に無駄な反応を抑えることができ、貯蔵安定性を高めることができる。そして、使用の際に二つの液を混合するか、又は別々に塗布した後接触させて硬化させることができる。ここで、(D)成分の光ラジカル開始剤及び金属有機化合物以外の成分は、任意の割合で分割していずれの液にも含めることができる。
【0048】
<任意成分>
本発明に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、シランカップリング剤等の接着助剤、充填材、タッキファイヤー等の粘着付与剤、熱可塑性エラストマー、ゴム状ポリマー微粒子、BHT等の保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、染料、顔料、難燃剤、増感剤、有機溶剤、重金属不活性剤、イオントラップ剤、乳化剤、水分散安定剤、消泡剤、離型剤、レベリング剤、ワックス、レオロジーコントロール剤、界面活性剤等の添加剤を適量配合しても良い。なお、本発明の硬化性樹脂組成物において、(A)~(C)成分の相溶性のバランスの観点から、ジメチルシリコーンを含まないものが好ましい。
【0049】
前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、その他γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも接着力が優れるという観点よりグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、シランカップリング剤の含有量は、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、本発明の(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0050】
前記充填材としては、ガラス、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。
【0051】
充填材の平均粒径は、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、0.001μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.01μm以上50μm以下の範囲であり、特に好ましくは0.1μm以上20μm以下の範囲である。なお、平均粒径の測定方法はレーザー回析法である。なお、充填材の含有量は、特に限定されないが、より一層に硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れるとの観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上300質量部以下の範囲が好ましく、更に好ましくは1質量部以上200質量部以下の範囲であり、特に好ましくは、5質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0052】
シリカ系充填材は、硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合される。好ましくは、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルシラザン、アミノシラン、炭素数1~12のアルキルシラン、(メタ)アクリロイル基を有するシランなどで疎水化処理したものなどが用いられる。シリカの市販品としては、例えば、アエロジル(登録商標)R974、R972、R9200、R976、R976S、RX50、NAX50、NX90、RX200,R8200、RX300,R812、R812S、RY50、NY50、RY200S、R202,RY200、RY300、R104、R106、RA200H、RA200HS、R805、R816、RM50、R711、R7200(日本アエロジル株式会社製)が挙げられる。
【0053】
上記の任意成分のうち、酸化防止剤及び光安定剤の添加は、硬化性樹脂組成物の耐候性向上のために好ましい。酸化防止剤及び光安定剤としては、市販品を使用することができる。例えば、スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP-76、スミライザーMDP-S、スミライザーGM、スミライザーBBM-S、スミライザーWX-R、スミライザーNW、スミライザーBP-179、スミライザーBP-101、スミライザーGA-80、スミライザーTNP、スミライザーTPP-R、スミライザーP-16(住友化学株式会社製、「スミライザー」は同社の登録商標である)、アデカスタブAO-20、アデカスタブAO-30、アデカスタブAO-40、アデカスタブAO-50、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-70、アデカスタブAO-80、アデカスタブAO-330、アデカスタブPEP-4C、アデカスタブPEP-8、アデカスタブPEP-24G、アデカスタブPEP-36、アデカスタブHP-10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ」は、同社の登録商標である)、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、「チヌビン」は同社の登録商標である)等が挙げられる。これらの酸化防止剤及び光安定剤の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0054】
<製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(D)成分の所定量を配合して、ミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10℃以上70℃以下の温度で好ましくは0.1時間以上5時間以下混合することにより製造することができる。また、遮光環境下で製造することが好ましい。
【0055】
<塗布方法>
本発明の硬化性樹脂組成物を被着体へ塗布する方法としては、例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0056】
<硬化方法および硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化形態は、本発明の(D)成分の選択により、光硬化、加熱硬化又はレドックス硬化を選択することが可能である。例えば、硬化性樹脂組成物に関して「光硬化性」を付与したい場合は、光ラジカル開始剤を選択し、「加熱硬化又はレドックス反応による硬化」を付与したい場合は、有機過酸化物を選択すればよい。また、硬化性樹脂組成物に関して、光硬化性と、加熱硬化又はレドックス反応による硬化(単に加熱硬化性ともいう)とを付与してもよく、(D)成分に光ラジカル開始剤と、有機過酸化物とを併用し、以下の光硬化性を付与した場合の硬化条件と、加熱硬化性を付与した場合の硬化条件とを加えればよい。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物において光硬化性を付与した場合の硬化条件は、本発明の硬化性樹脂組成物を紫外線、可視光等の光を照射することにより硬化させるに際しての光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。光照射の照射量は、硬化物の特性の観点から、10kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは15kJ/m以上である。また、本発明の硬化性樹脂組成物において加熱硬化性を付与した場合の硬化条件は、特に限定されないが、例えば、45℃以上200℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、50℃以上150℃未満である。硬化時間は特に限定されないが、45℃以上200℃未満の温度の場合には3分以上5時間未満が好ましく、10分以上3時間以内がさらに好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物もまた本発明の実施形態の一部である。本発明の硬化性樹脂組成物を後述する光学用接着剤として使用する場合、硬化物の屈折率が1.40以下であることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物で接着してなる接合体もまた本発明の実施形態の一部である。
【0058】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れることから、光学用コーティング剤、封止剤、接着剤として用いることができる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物の具体的な用途である光学用コーティング剤、封止剤、接着剤としては、例えば、フラットパネルディスプレイでは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、発光ダイオード表示装置、フィールドエミッションディスプレイ等の封止剤、接着剤;記録分野では、ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク周辺(スピンドルモータ用部材、磁気ヘッドアクチュエータ用部材など)、ブルーレイディスク等の封止剤、接着剤;光学部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺の等の封止剤、接着剤;光学機器分野では、カメラモジュール、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの投射レンズ等のコーティング剤、封止剤、接着剤等が挙げられる。
【実施例
【0060】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
<硬化性樹脂組成物の調製>
・実施例1
本発明の(A)成分として、重量平均分子量が1650である1分子中にパーフルオロポリエーテル骨格を含むウレタンメタクリレートオリゴマー(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製フルオロリンクMD700)(a1)100質量部と、(B)成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD DPHA)(b1)0.5質量部と、(C)成分としてメタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート;日本触媒株式会社製 HPMA)(c1)8質量部と、(D)成分として光ラジカル開始剤の1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(d1)3質量部を添加し、遮光環境下で25℃にてミキサーで60分混合し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例1を得た。
【0062】
・実施例2
実施例1において、b1成分を0.5質量部から1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例2を得た。
【0063】
・実施例3
実施例1において、c1成分をメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-ヒドロキシエチルメタクリレート;共栄社化学株式会社製 ライトエステルHO-250(N))(c2)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例3を得た。
【0064】
・実施例4
実施例1において、c1成分をメタクリル酸2-ヒドロキシブチル(4-ヒドロキシブチルメタクリレート;共栄社化学株式会社製ライトエステルHOB)(c3)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例4を得た。
【0065】
・実施例5
実施例1において、c1成分をアクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製ACMO)(c4)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例5を得た。
【0066】
・実施例6
実施例1において、c1成分をアクリル酸(三菱ケミカル株式会社製GA)(c5)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例6を得た。
【0067】
・実施例7
実施例1において、c1成分をイソボルニルアクリレート(共栄社化学株式会社製IBX-A)(c6)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例7を得た。
【0068】
・実施例8
実施例1において、b1成分をイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレートとイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレートとの混合物(東亜合成株式会社製アロニックスM-313)(b2)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である実施例8を得た。
【0069】
・比較例1
実施例1において、c1成分をラウリルアクリレート(c’1)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例1を得た。
【0070】
・比較例2
実施例1において、c1成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例2を得た。
【0071】
・比較例3
実施例2において、c1成分を除いた以外は、実施例2と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例3を得た。
【0072】
・比較例4
実施例1において、a1成分を重量平均分子量が4500の1分子中にフッ素原子を含まないウレタンジアクリレート(共栄社化学株式会社製UF-8001G)(a’1)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例4を得た。
【0073】
・比較例5
実施例1において、b1成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例5を得た。
【0074】
・比較例6
実施例1において、b1成分を0.5質量部から8.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の硬化性樹脂組成物である比較例6を得た。
【0075】
表1の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。
【0076】
<硬化物の屈折率>
2枚の剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムの間に各硬化性樹脂組成物を挟み込み、厚さ100μmのスペ-サを用いてフィルム状にした。次に、紫外線照射装置により30kJ/mの紫外線を照射し、フィルム間の硬化性樹脂組成物を硬化させ、その後、剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムを除去したものを試料とした。そして、アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製多波長アッベ屈折率計DR-M2)を用い、25℃雰囲気下で各試料の硬化物の屈折率をJIS K 0062:1992に準拠し測定した。本発明において硬化物の屈折率は、1.40以下が好ましい。
【0077】
<せん断接着強さ試験>
各硬化性樹脂組成物を、ガラス製試験片(25mm×100mm×厚み5mm)に塗布して延ばした後、同様にガラス製試験片(25mm×100mm×厚み5mm)を接着面積が25mm×10mmになるように2枚の試験片を貼り合わせた。治具で固定した状態で紫外線照射装置により30kJ/mの紫外線を照射し、硬化させた後に、万能引張試験器を用いて引張り速度50mm/minにて引張せん断接着強さを測定した。結果を表1に示す。単位は[MPa]とする。試験の詳細についてはJIS K 6850:1999に従う。本発明において硬化物の引張せん断接着強さは、1.2MPa以上が好ましい。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の実施例1~8より、本発明は硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物であることがわかる。一方で、比較例1は本発明の(C)成分ではないラウリルアクリレートを用いた硬化性樹脂組成物であるが、硬化物の屈折率が劣ることがわかる。また、比較例2、3は本発明の(C)成分を含まない硬化性樹脂組成物であるが、接着力が劣るまたは硬化物の屈折率が劣ることがわかる。また、比較例4は、本発明の(A)成分ではないフッ素原子を含まないウレタンジアクリレートを用いた硬化性樹脂組成物であるが、硬化物の屈折率が劣ることがわかる。また、比較例5は、本発明の(B)成分を含まない硬化性樹脂組成物であるが、接着力が劣ることがわかる。比較例6は本発明の(B)成分を過剰量添加した硬化性樹脂組成物であるが、硬化物の屈折率が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、硬化物の屈折率が低く、部材に対する接着力が優れる硬化性樹脂組成物であることから、各種コーティング、封止剤、接着剤などの用途に使用することができ有効であることから産業上有用である。
【0081】
本出願は、2018年9月4日に出願された日本国特許出願第2018-165221号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。