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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】冷却床部材及び冷却床部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20230614BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20230614BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230614BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230614BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230614BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/625
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023506174
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2022037957
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】崎山 達也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翔平
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-111466(JP,A)
【文献】特開2021-103060(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを冷却する冷却床部材であって、
金属床下材と、
前記金属床下材に対向配置され、前記金属床下材に対して反対側の表面が前記電池セルと接する平板状金属床板と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板とに接合せずに挟持された仕切部材と、
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁が直接連続接合された接合部と、
を有し、
前記金属床下材、前記平板状金属床板、及び前記仕切部材とによって囲まれた領域が、冷却液が流れる冷却液流路である、
冷却床部材。
【請求項2】
前記仕切部材はシート状固形物である請求項1に記載の冷却床部材。
【請求項3】
前記仕切部材は固形樹脂である請求項1又は2に記載の冷却床部材。
【請求項4】
前記仕切部材は、ヤング率が0.01GPa以上0.1GPa以下の粘弾性樹脂である請求項3に記載の冷却床部材。
【請求項5】
前記シート状固形物は前記金属床下材と前記平板状金属床板と同種の金属である請求項2に記載の冷却床部材。
【請求項6】
前記金属床下材と前記平板状金属床板とは鋼材である請求項1に記載の冷却床部材。
【請求項7】
金属床下材と平板状金属床板の一方の表面に、液状樹脂を平面視において複数並置して流路を形成する工程と、
前記金属床下材と平板状金属床板の他方を前記液状樹脂上に重ねて、前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記流路に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記液状樹脂とは接合しない、
冷却床部材の製造方法。
【請求項8】
金属床下材と平板状金属床板の間に、経路部を含むシート状固形物を挟み込む工程と、前記経路部は、凹部又は貫通孔であり、
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記経路部に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記シート状固形物とは接合しない、
冷却床部材の製造方法。
【請求項9】
金属床下材と平板状金属床板の一方の表面に、樹脂を被覆する工程と、
被覆された前記樹脂の一部を剥離して流路を形成する工程と、
前記金属床下材と平板状金属床板の他方を前記樹脂上に重ねて、前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記流路に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記樹脂とは接合しない、
冷却床部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却床部材及び冷却床部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中で燃費規制が厳格化され、自動車業界では電動化を推し進められている。電気自動車(Electric Vehicle:EV)及びハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)では、航続距離の延長を狙い、大容量且つ急速充電対応のバッテリを搭載するニーズが高まっている。急速充電バッテリ(電池)は利用条件によって自己発熱を生ずるとともに、使用温度範囲が定められている。電池を構成するセルは高温になると内部の化学物質の変化などにより容量の低下が著しくなるため、使用上限温度が規定されている。そのため、電池の温度が上限温度を超えないように電池の冷却システムを有することが多く、現行の多くのEV車及びHEV車では空冷による冷却方法が採用されている。一方で効率よくバッテリ温度上昇を抑える必要があり、大容量化に伴い冷却システムには水冷構造の採用が検討されている。また、自動車の航続距離を伸ばすためには、電池セルの数を多くすると共に冷却システムの重量を低減することが求められる。
【0003】
冷却システムの水冷構造として、例えば特許文献1では、内部に流路を有する2つのプレートを向かい合わせに接合して構成されるパネルが開示されている。2つのプレートは、流路の中心を通る平面で分割された同じ形状をしている。パネル内部に形成された流路に冷媒を流通させて、冷却対象を冷却する。流路はパネル内部を蛇行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6064730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成の場合、パネル内部の流路の作成が複雑であり製造コストが掛かる。すなわち、パネル内部の蛇行する流路は、例えばプレートの内面を溝加工することで形成される。また、2つのプレートは同じ形状のため、2つのプレートに対してそれぞれ溝加工が必要となる。プレートは溝加工を行うための厚さが必要となり、パネルの重量が増す。また、流路が形成されていない範囲をろう付で全て接合するが、ろう付が不十分な場合、冷媒(水)が漏れる虞がある。冷媒が漏れた場合、電池セル及び冷却システムを収納するバッテリパック内に水が溜まり、電池セルがバッテリパック内で水没状態となる虞がある。更に、電池セルからの熱により冷却システムが変形し、冷却性能が不安定となる恐れがある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、冷却性能が安定し、且つ冷却効率に優れた冷却床部材及び冷却床部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく、冷媒の漏れを抑制し、軽量で、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を鋭意検討した。その結果、本発明者らは、金属薄板間に仕切部材(インサート)を金属薄板に接合することなく挿入し、金属薄板間と仕切部材で形成される空間に冷媒を流すことで、溝加工及びプレス加工等の加工を行わずに、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、熱ひずみ及び面ひずみを抑制し、且つ冷却効率に優れた冷却床部材及び冷却床部材の製造方法を、得ることができることを見出した。
【0008】
本開示は上記の知見に鑑みてなされた。本開示の要旨は以下の手段を採用する。
(1)本開示の一実施形態に係る冷却床部材は、
電池セルを冷却する冷却床部材であって、
金属床下材と、
前記金属床下材に対向配置され、前記金属床下材に対して反対側の表面が前記電池セルと接する平板状金属床板と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板とに接合せずに挟持された仕切部材と、
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁が直接連続接合された接合部と、
を有し、
前記金属床下材、前記平板状金属床板、及び前記仕切部材とによって囲まれた領域が、冷却液が流れる冷却液流路である。
【0009】
上記の構成からなる冷却床部材によれば、金属床下材と平板状金属床板との間に仕切部材を挟持して、その外周縁を直接連続接合する構造であるので、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となるとともに、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セルと接する金属床板が平板状であるので、電池セルと冷却床部材とを密着させることができ、また電池セルを隙間なく密集して冷却床部材の上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材はシート状固形物である。
(3)上記(2)又は(2)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材は固形樹脂である。
(4)上記(3)において、以下の構成を採用してもよい:
前記仕切部材は、ヤング率が0.01GPa以上0.1GPa以下の粘弾性樹脂である。
(5)上記(2)において、以下の構成を採用してもよい:
前記シート状固形物は前記金属床下材と前記平板状金属床板と同種の金属である。
(6)上記(1)において、以下の構成を採用してもよい:
前記金属床下材と前記平板状金属床板とは鋼材である。
【0011】
(7)本開示の一実施形態に係る冷却床部材の製造方法は、
金属床下材と平板状金属床板の一方の表面に、液状樹脂を平面視において複数並置して流路を形成する工程と、
前記金属床下材と平板状金属床板の他方を前記液状樹脂上に重ねて、前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記流路に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記液状樹脂とは接合しない。
【0012】
上記の構成からなる冷却床部材の製造方法によれば、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となるとともに、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セルと接する金属床板が平板状であるので、電池セルと冷却床部材とを密着させることができ、また電池セルを隙間なく密集して冷却床部材の上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係る冷却床部材の製造方法は、
金属床下材と平板状金属床板の間に、経路部を含むシート状固形物を挟み込む工程と、前記経路部は、凹部又は貫通孔であり、
前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記経路部に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記シート状固形物とは接合しない。
【0014】
上記の構成からなる冷却床部材の製造方法によれば、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となるとともに、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セルと接する金属床板が平板状であるので、電池セルと冷却床部材とを密着させることができ、また電池セルを隙間なく密集して冷却床部材の上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0015】
(9)本開示の一実施形態に係る冷却床部材の製造方法は、
金属床下材と平板状金属床板の一方の表面に、樹脂を被覆する工程と、
被覆された前記樹脂の一部を剥離して流路を形成する工程と、
前記金属床下材と平板状金属床板の他方を前記樹脂上に重ねて、前記金属床下材の外周縁と前記平板状金属床板の外周縁を直接連続接合する工程と、
前記金属床下材と前記平板状金属床板に囲まれた前記流路に冷却液を供給する供給管と前記冷却液を排出する排出管を設ける工程と、
を備え、
前記金属床下材及び前記平板状金属床板と、前記樹脂とは接合しない。
【0016】
上記の構成からなる冷却床部材の製造方法によれば、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となるとともに、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セルと接する金属床板が平板状であるので、電池セルと冷却床部材とを密着させることができ、また電池セルを隙間なく密集して冷却床部材の上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、冷却性能が安定し、且つ冷却効率に優れた冷却床部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第1実施形態に係る冷却床部材が適用されるバッテリパックの概略構成の一例を示す分解斜視図である。
図2A】同実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
図2B】(a)は同実施形態に係る冷却床部材の平面図、(b)は(a)の矢視A-A’で見た場合の切断端面図、(c)は(b)の矢視a-a’で見た場合の断面図である。
図3A】本開示の第2実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
図3B】(a)は同実施形態に係る冷却床部材の平面図、(b)は(a)の矢視B-B’で見た場合の切断端面図、(c)は(b)の矢視b-b’で見た場合の断面図である。
図4A】本開示の第3実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。
図4B】(a)はは同実施形態に係る冷却床部材の平面図、(b)は(a)の矢視C-C’で見た場合の切断端面図、(c)は(b)の矢視c-c’で見た場合の断面図である。
図5A】本開示の一実施形態に係る冷却床部材における金属床下材及び平板状金属床板の接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材の断面図である。
図5B】本開示の一実施形態に係る冷却床部材における金属床下材及び平板状金属床板の接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の各実施形態に係る冷却床部材について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、各実施形態において共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0020】
以下の説明では、平面視における冷却床部材の長手方向をX方向、冷却床部材の幅方向をY方向、冷却床部材の厚さ方向をZ方向とする。
【0021】
図1は、本実施形態に係る冷却床部材100が適用されるバッテリパック1の概略構成の一例を示す分解斜視図である。
図1に示すように、バッテリパック1は主に、上側カバー2と、電池セル3と、冷却床部材100と、下側カバー4と、を備える。上側カバー2は電池セル3を上側から覆う。冷却床部材100の上面に電池セル3が密着して配置される。下側カバー4は冷却床部材100と電池セル3を下側から格納する。
図1においては、冷却床部材100の長手方向(X方向)、幅方向(Y方向)、厚さ方向(Z方向)は、それぞれバッテリパック1の長手方向、幅方向、厚さ方向と同じ方向である。図1において、Z方向プラス側が上側、Z方向マイナス側が下側である。
【0022】
図1においては、X方向に2つの電池セル3を配置することが図示されているが、電池セル3の数はX方向に2つに限られるものではない。例えば、電池セル3は、X方向に3つ以上配置してもよく、Y方向に2つ以上配置してもよい。電池セル3は、1つであってもよい。
【0023】
[第1実施形態]
図2A及び図2Bを参照して、第1実施形態に係る冷却床部材100Aについて説明する。
図2Aは、同実施形態に係る冷却床部材100Aの概略構成を説明する分解斜視図である。図2Bは、図2Aの矢視A-A’で見た場合の断面に、平板状金属床板102が金属床下材101に接合した状態を示す図である。
冷却床部材100Aの上方に電池セル3が載置される。冷却床部材100Aは、金属床下材101と、平板状金属床板102と、仕切部材105を有する。平板状金属床板102は金属床下材101に対向配置され、仕切部材105を挟んで、その外周縁が直接連続接合される。以下、直接連続接合された部分を接合部130と称す。金属床下材101、平板状金属床板102、及び仕切部材105によって囲まれた領域が、冷却液が流れる冷却液流路104となる。平板状金属床板102の表面のうち、金属床下材101に対して反対側の表面が電池セル3と接する。このような構成により、冷却床部材100Aは、冷却液流路104に流れる冷却液により、平板状金属床板102上に載置した電池セル3を冷却する。
【0024】
金属床下材101は、例えばアルミニウム合金材、鋼材である。金属床下材101にアルミニウム合金材を使用した場合、鋼材に比べて軽量ではあるものの、板厚を厚くする必要があるため、バッテリパック全体をコンパクトに纏めることができない。またアルミニウム合金材は鋼材に比べて高価である。このような観点より、金属床下材101は、鋼材が好ましい。金属床下材101は、路面干渉性に優れ、且つ薄肉化でスペースを有効に確保できる高強度鋼材がより好ましい。高強度鋼材は、590MPa級以上の鋼材である。
金属床下材101の厚さは0.5mmから3.2mmが好ましい。軽量化及び強度の観点からは0.8mmから1.6mmがより好ましい。
【0025】
平板状金属床板102は特に冷却性能が求められる。平板状金属床板102は、例えばアルミニウム合金材、鋼材である。平板状金属床板102にアルミニウム合金材を使用した場合、鋼材に比べて軽量ではあるものの、板厚を厚くする必要があるため、バッテリパック全体をコンパクトに纏めることができない。またアルミニウム合金材は鋼材に比べて高価である。このような観点より、平板状金属床板102は、鋼材が好ましい。平板状金属床板102は、冷却性能に優れ、且つ薄肉化でスペースを有効に確保できる高強度鋼材がより好ましい。
平板状金属床板102の厚さは薄肉が望ましいが、振動等からの部品接触により損傷を受けるので、0.2mmから2.6mmが好ましい。冷却性能、軽量化及び強度の観点から、平板状金属床板102の厚さは0.4mmから1.0mmが好ましい。
【0026】
平板状金属床板102の外表面は平板状、すなわち凹凸形状ではない。電池セル3と接する平板状金属床板102の外表面が平板状であるので、電池セル3と冷却床部材100Aとを全面接触するように密着させることができる。また平板状金属床板102の外表面が平板状であるので、電池セル3の配置に制約が生じない。すなわち、電池セル3を隙間なく密集して冷却床部材100Aの上面に設置することができる。平板状金属床板102の外表面が平板状であることにより、効率良く電池セル3を冷却することができる。又、特別な形状加工を施す必要なく平板を利用できるため、加工コストを削減できる。
【0027】
金属床下材101と平板状金属床板102は、耐食性の観点から同じ金属であることが好ましい。金属床下材101と平板状金属床板102を同じ金属とすることで、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁との接続部に生じる異種金属接触腐食による劣化、又は異種金属溶融接合による接合強度低下を回避することができる。
【0028】
電池セル3は冷却床部材100Aの上方に載置される。電池セル3は、例えばリチウムイオン電池である。電池セル3は例えば直方体状である。複数の電池セル3がX方向に並んでもよい。複数の電池セル3がY方向に並んでもよい。複数の電池セル3がZ方向に積み重ねられてもよい。なお、電池セル3は冷却床部材100Aの上方に載置されるが、電池セル3が、冷却床部材100Aの上方に直接、載置される場合だけでない。例えば、電池セル3を束ねて収納するバッテリケース(図示なし)を冷却床部材100Aの上方に載置する場合も含まれる。この場合、バッテリケースが、電池セル3から冷却床部材100Aに熱伝導が可能な程度の熱伝導率や厚さなどを備えていることが好ましい。
【0029】
金属床下材101と平板状金属床板102とを向かい合わせにして仕切部材105を挟み込んだ状態で、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁とが直接連続接合される。これにより、冷却床部材100Aの内部に冷却液流路104が形成される。仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とは接合されないが、仕切部材105の少なくとも一部は、金属床下材101と平板状金属床板102に挟み込まれて固定される。この固定領域において仕切部材105は、金属床下材101と平板状金属床板102とに接合していなければ、当接、密接のいずれの状態でもよい。又、固定領域以外については、仕切部材105と金属床下材101と平板状金属床板102のいずれかとの間に隙間があっても良い。少なくとも冷却液流路104が確保されていれば、隙間量は適宜調整され得る。例えば、電池セル3が載置される前に当該隙間があったとしても、電池セル3を載置することにより平板状金属床板102が撓み、仕切部材105が固定され得る。冷却床部材100Aにおいて直接連続接合された接合部130の近傍が固定領域となり得る。固定領域の面積率、すなわち、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102との接触面積率は、仕切部材105の全体の5%以上であることが好ましい。又、固定領域の面積率は、仕切部材105の全体の15%以上、25%以上、40%以上であってもよい。ここで、仕切部材105の全体とは、仕切部材105における金属床下材101側の表面と平板状金属床板102側の表面の合計面積を示す。又、金属床下材101及び平板状金属床板102のそれぞれと仕切部材105との接触面積率は、例えば、超音波により平板状金属床板102側より連続的に全面を走査することにより、接触部と非接触部を測定し、接触部の面積/仕切部材105の平板状金属床板側面積で求められる。
【0030】
図2Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。図2Bでは、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁とが直接連続接合されている状態を示す。
【0031】
仕切部材105は、金属床下材101及び平板状金属床板102とは接合されない。ここでいう接合とは、リベット接合、ネジ接合、圧入等の機械的接合、融接、圧接、ろう接等の溶接を含む冶金的接合、樹脂の接着や溶着を含む。
【0032】
冷却液流路104には冷媒(冷却液)が流れる。
冷却液流路104の高さ(Z方向の長さ)が長い場合には多くの冷媒を流すことができるが、軽量化及び冷却効率の観点から1mmから10mmである。より好ましくは、冷却液流路104の高さは1mmから5mmである。
【0033】
冷却液流路104には、冷媒を供給する供給管(図示なし)と、冷媒を排水する排水管(図示なし)が設けられる。供給管と排水管は金属床下材101を介して冷却液流路104に接続されることが好ましい。これらは、冷却液流路104の概ね両末端にそれぞれ接続されるか、もしくは、冷却液流路104の概ね中間に供給管を位置し、冷却液流路104の両端部に複数以上の排水管を設けるなど冷却設計により配置される。供給管から供給される冷媒が冷却液流路104を流れて排水管から排水され、冷媒が冷却装置(図示なし)により冷却された後に再び供給管から冷却液流路104に供給される。
【0034】
仕切部材105は、複数並置されることで冷却液流路104を形成し、その流路の長さや経路によって冷媒の流れる向きを揃えるように制御できる。仕切部材105を適切に配置することで、効率良く電池セル3を冷却することができる。仕切部材105と、金属床下材101又は平板状金属床板102との間に隙間があった場合、冷却液流路104から冷却液が漏れるが、冷却床部材100Aの外周縁が直接連続接合されて接合部130を形成しているため、冷却床部材100Aの外側に漏れることはない。又、冷却液流路104から冷却液が漏れていたとしても、冷却液の流れは冷却液流路104の形状に従うため、冷却能力が著しく劣化することはない。あるいは、仕切部材105と、金属床下材101又は平板状金属床板102との間の隙間を積極的に利用して、冷却液流路104から漏れた冷却液で冷却液流路104の外側を満たし、冷却液流路104内を流れる冷却液とともに、電池セル3を冷却することも可能である。
【0035】
上記のように冷却床部材100Aは、金属床下材101と平板状金属床板102との間に仕切部材105を挟持して、その外周縁を直接連続接合する構造である。このため、溝加工及びプレス加工等の加工が不要となるとともに、冷媒の漏れを抑制することができ、また軽量化することができる。さらに、外表面が電池セル3と接する金属床板が平板状であるので、電池セル3と冷却床部材100Aとを密着させることができ、また電池セル3を隙間なく密集して冷却床部材100Aの上面に設置することができるので、効率良く電池セルを冷却することができる。
【0036】
例えば、平板状金属床板102と仕切部材105が接合されている場合、平板状金属床板102の温度変化に伴い、平板状金属床板102と仕切部材105の線膨張差で平板状金属床板102に熱ひずみが生じ、平板状金属床板102上に設置された電池セル3との接触状況が変動するため冷却性能が不安定になる恐れがある。あるいは、金属床下材101と仕切部材105が接合されている場合、仕切部材105が硬化する際に、仕切部材105と金属床下材101との接合界面に残留ひずみが発生し、この残留ひずみの蓄積による面ひずみが、大面積である冷却床部材100Aの面精度の低下し、電池セルとの接触効率が低下する問題が生じる。冷却床部材100Aでは、仕切部材105が金属床下材101と平板状金属床板102に接合されないので、熱変動に伴う仕切部材105と金属床下材101、もしくは仕切部材105と平板状金属床板102に生じる熱ひずみが回避される。これにより、冷却床部材100Aと電池セル3との密着性が変動せず冷却性能が安定する。上述の熱ひずみや面ひずみの問題は、仕切部材105の材料によらず現出し得るが、仕切部材105が樹脂である場合に顕著となる。このため、仕切部材105が固形樹脂である場合、金属床下材101及び平板状金属床板102の両方と仕切部材105が接合していないことは、特に有効である。
【0037】
図5A及び図5Bは、本実施形態に係る冷却床部材100Aにおける金属床下材101と平板状金属床板102との接合方法の一例を説明する図であり、冷却床部材100Aの断面図である。
金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとは直接連続接合(水密接合)され、接合部130が形成される。直接連続接合とは、水が密閉され、水圧がかかっても漏れないようになっている接合である。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが直接連続接合されることにより、冷媒が冷却床部材100Aから漏れるのを防ぐ。
【0038】
直接連続接合は、例えば連続溶融接合、連続圧接、連続シール接合である。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとを、連続的に接合する。連続溶融接合とは、例えば、レーザ溶接、抵抗シーム溶接、アーク溶接、プラズマ溶接等による連続融接である。連続圧接とは、電磁圧接、超音波接合、摩擦撹拌接合等による固相接合である。連続シール接合とは、巻き締め、ハゼ折りなどのシーミング加工(機械的接合)による接合である。
【0039】
図示しないが、供給管及び排水管は、例えば金属床下材101を介して冷却液流路104に接続される。具体的には、金属床下材101に設けられた孔に供給管及び排水管が直接連続接合され、当該孔を介して供給管及び排水管と冷却液流路104が接続される。
【0040】
図5Aは、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが溶接されている状態を示す。図5Bは、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとがハゼ折りされている状態を示す。金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとは、カシメ加工されてもよい。
【0041】
金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aとが直接連続接合によって接合部130が形成されることによって、冷媒が漏れることを防ぎ、冷却床部材100Aの上に載置される電池セル3が水没することを回避できる。たとえ冷媒が漏れた場合でも、連続溶融接合若しくは連続シール接合しているので、金属床下材101の外周縁101aと平板状金属床板102の外周縁102aの補修だけで冷媒の漏れを改善できる。
【0042】
本実施形態では、図2Aに示すように、冷却液流路104が蛇行するように仕切部材105を配置している。蛇行するように配置された仕切部材105に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。なお、冷却液流路104は、1本ではなく複数経路であっても良く、あるいは網の目状であってもよい。
【0043】
図2A及び2Bに示すように、本実施形態では、冷却液流路104はY方向が長手方向となるように蛇行しているが、蛇行する方向はこれに限らない。例えば、冷却液流路104は、X方向が長手方向となるように蛇行してもよい。さらには、冷却液流路104が蛇行しなくてもよい。
【0044】
仕切部材105は液状樹脂が固形化した固形樹脂106であってもよい。この場合、冷却液流路104は固形樹脂106により形成される。液状樹脂とは、ジェル状の樹脂であり、例えばシーラント剤である。
【0045】
本実施の形態における製法の一例を示す。ここでは、液状樹脂が、例えば金属床下材101と平板状金属床板102の一方の表面上に、平面視において複数並置される。並置された液状樹脂は固形化して仕切部材105となり、所望の形状の経路が形成される。ここで、液状樹脂は、ペースト樹脂(ゲル状樹脂ともいう)を含む。
液状樹脂は、例えばロボットに把持させたアプリケーションガンを用いてビード状に塗布されることで、任意の流路を配置できる。
金属床下材101と平板状金属床板102の他方を、固形化した樹脂上、すなわち仕切部材105の上に重ねて、金属床下材101と平板状金属床板102の外周縁を直接連続接合することで、並置された仕切部材105の間の経路が冷却液流路104となる。又、上述と同様に、冷却液流路104に供給管(図示なし)及び排出管(図示なし)が設けられる。なお、金属床下材101と平板状金属床板102により仕切部材105を挟み込むタイミングは、金属床下材101及び平板状金属床板102と、仕切部材105が接合しなければ、仕切部材105を構成する樹脂が完全に固形化した後でも、固形化が完了する前でもどちらでもよい。
【0046】
固形樹脂を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Aの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0047】
仕切部材105は粘弾性樹脂107であってもよい。粘弾性樹脂107とは、例えばゴム状の樹脂である。仕切部材105は、ヤング率が0.01GPa以上、0.1GPa以下の粘弾性樹脂107であってもよい。
仕切部材105に粘弾性樹脂107を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂107との線膨張係数が異なるが、相互に接合されていないため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
粘弾性樹脂107は、例えばロボットに把持させたアプリケーションガンを用いてビード状に塗布することで、任意の流路を配置できる。
固形樹脂を用いる場合と同様に、仕切部材105に粘弾性樹脂107を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Aの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0048】
[第2実施形態]
図3A及び図3Bを参照して、第2実施形態に係る冷却床部材100Bについて説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、仕切部材105がシート状固形物110である点において、第1実施形態と相違する。
平面視において、X方向又はY方向における、金属床下材101及び平板状金属床板102の外周縁と、仕切部材105との距離が近い場合、仕切部材105によって、金属床下材101と平板状金属床板102の高さ方向(厚さ方向)の距離を近づけることが困難となり、両者を直接連続接合できない場合がある。仕切部材105がシート状固形物である場合、当該外周縁近傍の仕切部材105の面積が大きいため、このような溶接不良の発生可能性が増大する。このため、本構成では、平面視において、仕切部材105の端部から接合部130までの最短距離が、仕切部材105の厚さの9.5倍以上となる構造、もしくは図5Aのような金属床下材101へのエンボス加工のような構成とすることが好ましい。このような構成が好ましいことは、他の実施の形態も同様である。
【0049】
図3Aは、本実施形態に係る冷却床部材100Bの概略構成を説明する分解斜視図である。図3Bは、図3Aの矢視B-B’で見た場合の断面に、平板状金属床板102が金属床下材101に接合した状態を示す図である。図3Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。図3Bでは、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周線とが直接連続接合されている状態を示す。
シート状固形物110は、例えば平板樹脂や平板鋼板をプレス加工されることで形成される。これにより、シート状固形物110は、冷却液流路104となる経路部140(例えば凹部又は貫通孔)、及びその周辺の平面部141(例えば未加工領域)が設けられる。本実施形態では、金属床下材101と平板状金属床板102との間に、シート状固形物110である仕切部材105を挟み込み、金属床下材101と平板状金属床板102の外周縁を直接連続接合する。この際、金属床下材101及び平板状金属床板102と、シート状固形物とは接合しない。又、上述と同様に、経路部(冷却液流路104)に供給管(図示なし)及び排出管(図示なし)が設けられる。
【0050】
本実施形態に係る仕切部材105は、シート状であるので、所望する冷却液流路104の形状に合わせて作成することが容易であり、レイアウト設計自由度が高い。さらに、流路の形状を目視で確認することが容易である。
【0051】
本実施形態では、図3A及び図3Bに示すように、シート状固形物110がY方向に沿うように配置されているが、シート状固形物110の配置する方向はこれに限らない。例えば、シート状固形物110がX方向に沿うように配置してもよい。また、第1実施形態のように、冷却液流路104が蛇行するようにシート状固形物110を配置してもよい。
このように配置されたシート状固形物110に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0052】
シート状固形物110は、固形樹脂111であってもよい。固形樹脂111は、例えば硬質樹脂であり、具体的には例えばエポキシ樹脂である。
固形樹脂111を用いる場合、圧縮強度が高いため、積載される電池セル3の重量による平板状金属床板102の変形を回避することができる。特に、シート状固形物110を仕切部材105として用いた場合、平板状金属床板102に対向する仕切部材105の面積が大きいため、上述の変形回避効果は高い。
固形樹脂111を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Bの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0053】
シート状固形物110は、粘弾性樹脂112であってもよい。粘弾性樹脂112は、例えば塩化ビニル樹脂である。
粘弾性樹脂112を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂112との線膨張係数が異なるため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
固形樹脂111を用いる場合と同様に、粘弾性樹脂112を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Bの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0054】
シート状固形物110は、金属床下材101と平板状金属床板102と同種の金属113であってもよい。これにより、シート状固形物110と金属床下材101及び平板状金属床板102との接続部に生じる異種金属接触腐食による劣化、又は異種金属溶融接合による接合強度低下を回避することができる。
【0055】
[第3実施形態]
図4A及び図4Bを参照して、第3実施形態に係る冷却床部材100Cについて説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、仕切部材が、樹脂が被覆された被覆樹脂である点において、第1実施形態と相違する。
【0056】
図4Aは、本実施形態に係る冷却床部材の概略構成を説明する分解斜視図である。図4Bは、図4Aの矢視C-C’で見た場合の断面に、平板状金属床板102が金属床下材101に接合した状態を示す図である。図4Aでは、金属床下材101と平板状金属床板102とが接合されていない状態を示す。図4Bでは、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁とが直接連続接合されている状態を示す。
【0057】
本実施形態では、金属床下材101と平板状金属床板102の一方の表面上に被覆された樹脂(被覆樹脂120)の一部を剥離することで、冷却液流路104を形成する。図4Aの(a)は、金属床下材101の上面に樹脂が被覆された状態を示し、被覆樹脂120を剥離する前の状態である。図4Aの(b)は被覆樹脂120を一部剥離した状態を示す。
例えば、図4Aの(a)で示すように、金属床下材101の一方の面(金属床下材101の上面)に樹脂が被覆される。次に、被覆された樹脂の一部を剥離して流路を形成し、平板状金属床板102を樹脂上に重ねて、金属床下材101の外周縁と平板状金属床板102の外周縁を直接連続接合する。これにより、剥離されずに残った樹脂が仕切部材105となり、剥離された後の経路が冷却液流路104となる。又、上述と同様に、冷却液流路104に供給管(図示なし)及び排出管(図示なし)が設けられる。ここで、金属床下材101から剥離されずに残った樹脂、すなわち仕切部材105は、時間経過にともない、金属床下材から分離する。分離時期は、平板状金属床板102を直接連続接合させた前でも、接合後でもどちらでもよい。金属床下材101と平板状金属床板102とが直接連続接合される接合部130には、樹脂が被覆されない、あるいは、樹脂が被覆されても、直接連続接合する前に剥離される。又、上述と同様に、冷却液流路104に供給管(図示なし)及び排出管(図示なし)が設けられる。
【0058】
例えば、樹脂は、予め金属床下材101に被覆される。樹脂を金属床下材101に被覆する方法は、例えば熱圧着もしくは接着で被覆する。もしくは、スリットコートやディップコートで被覆する。本実施形態においては、金属床下材101に被覆される樹脂は、上述のように、金属床下材101から分離できる程度の接合力で、金属床下材101に対して接合されている。このような接合力を実現するため、例えば、熱圧着時には、加圧力や加熱温度が適切に調整された条件を施工者が選択することが好ましい。さらに例えば、接着に用いられる接着剤として、接着強度が適切に調整された材質を施工者が選択することが好ましい。
【0059】
被覆樹脂の厚さは、1mmから7mmである。水路形状や必要水量によるが成形性の観点から、被覆樹脂の厚さは1mmから5mmが好ましい。より好ましくは、被覆樹脂の厚さは3mmである。
被覆樹脂は、例えばカッター、抜き加工、又はレーザ加工で剥離する。
【0060】
被覆樹脂120は、所望する冷却液流路104の形状に合わせて剥離することが容易であり、レイアウト設計自由度が高い。さらに、流路の形状を目視で確認することが容易である。
被覆樹脂120は、金属製コイル若しくは金属製シートに被覆されて提供できる。このため、冷却液流路104の製造工程で脱落する可能性が低い。
【0061】
本実施形態では、図4A及び図4Bに示すように、被覆樹脂120がY方向に沿うように配置されているが、被覆樹脂120の配置する方向はこれに限らない。例えば、被覆樹脂120がX方向に沿うように配置してもよい。また、第1実施形態のように、冷却液流路104が蛇行するように被覆樹脂120を剥離してもよい。
このように配置された被覆樹脂120に沿って冷媒が流れることで、より効率良く電池セル3を冷却することができる。
【0062】
被覆樹脂は、固形樹脂121であってもよい。固形樹脂121は、例えば硬質樹脂であり、具体的には例えば塩化ビニル樹脂である。
固形樹脂121を用いる場合、圧縮強度が高いため、積載される電池セル3の重量による平板状金属床板102の変形を回避することができる。特に、樹脂の被覆面積が大きい場合、平板状金属床板102に対向する仕切部材105の面積が大きくなるため、上述の変形回避効果は高い。
固形樹脂121を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Aの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0063】
被覆樹脂は、粘弾性樹脂122であってもよい。粘弾性樹脂122は、例えばポリエチレン樹脂である。
粘弾性樹脂122を用いる場合、金属床下材101及び平板状金属床板102と粘弾性樹脂112との線膨張係数が異なるため、温度変化に対する膨張収縮時に接触界面で発生するひずみを緩和できる。このため、安定した冷却液流路104を維持できる。さらに、金属床下材101及び平板状金属床板102の面外変形が少なく、金属床下材101及び平板状金属床板102の形状を平坦に維持しやすい。
固形樹脂121を用いる場合と同様に、粘弾性樹脂122を用いる場合、仕切部材105と、金属床下材101及び平板状金属床板102とに溶接個所がないことから、溶接部近傍に形成されるピンホール等の溶接欠陥から冷却床部材100Cの外部への冷媒の漏れを回避することができる。
【0064】
上述の各実施形態で説明した冷却床部材100A、100B、100Cは、例えば電気自動車、ハイブリッド自動車に適用される。
【0065】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本開示の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、開示の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された開示とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上述の各実施形態に係る冷却床部材は、図1で示すように、下側カバー4と電池セル3との間に配置されるが、複数の電池セル3がZ方向に積み重ねられる場合には、各電池セル3の間に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示によれば、冷媒の漏れを抑制することができ、軽量で、冷却性能が安定し、且つ冷却効率に優れた冷却床部材及び冷却床部材の製造方法を提供するができる。よって、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0068】
1 バッテリパック
2 上側カバー
3 電池セル
4 下側カバー
100、100A、100B、100C 冷却床部材
101 金属床下材
101a、102a 外周縁
102 平板状金属床板
104 冷却液流路
105 仕切部材(インサート)
106、111、121 固形樹脂
107、112、122 粘弾性樹脂
110 シート状固形物
120 被覆樹脂
130 接合部
【要約】
冷却床部材(100)は、電池セルを冷却する冷却床部材(100)であって、金属床下材(101)と、前記金属床下材(101)に対向配置され、前記金属床下材(101)に対して反対側の表面が前記電池セルと接する平板状金属床板(102)と、前記金属床下材(101)と前記平板状金属床板(102)とに接合せずに挟持された仕切部材(105)と、前記金属床下材(101)の外周縁と前記平板状金属床板(102)の外周縁が直接連続接合された接合部(130)と、を有し、前記金属床下材(101)、前記平板状金属床板(102)、及び前記仕切部材(105)とによって囲まれた領域が、冷却液が流れる冷却液流路(104)である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B