(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】無水削孔によるロックボルト打設方法、及びそれに用いる無水削孔システム、並びに口元処理装置
(51)【国際特許分類】
E21B 21/00 20060101AFI20230614BHJP
E21D 20/00 20060101ALI20230614BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E21B21/00 Z
E21D20/00 L
E21D11/40 Z
(21)【出願番号】P 2020138917
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501133247
【氏名又は名称】構造工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 康夫
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康伸
(72)【発明者】
【氏名】甲谷 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和人
(72)【発明者】
【氏名】山口 純一
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 研一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 清司
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 21/00
E21D 20/00
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内において無水で削孔してロックボルトを打設する方法であって、
ロックボルト取付け位置に口元処理装置を設置する段階と、
先端にインナービットを備えるインナーロッドと、先端にアウタービットを備えるアウターロッドとの二重管により削孔を行う段階と、
前記インナーロッドを回収してモルタルを充填し、ロックボルトを挿入する段階と、
前記アウターロッド及び前記口元処理装置を回収してモルタルを追加注入する段階と、
前記ロックボルトにベアリングプレート及びナットを取り付ける段階とを有し、
前記口元処理装置は、前記二重管を挿通するための挿通孔と、削孔を行う段階で前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、供給された圧縮空気の内前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備え
、
前記漏洩防止手段は、前記二重管の周りを、前記二重管の動作を阻害しないようにしながら圧縮空気が漏れないように閉塞し、
前記二重管により削孔を行う段階は、
削孔により発生するくり粉を、前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の内、前記インナーロッドと前記アウターロッドとの間に分流される圧縮空気とともに前記アウターロッドを経由して排出する第1経路と、前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気及び供給口から供給された新たな圧縮空気とともに前記口元処理装置の排出口から排出する第2経路との2つの経路により排出する段階を含み、
前記ロックボルト取付け位置に前記口元処理装置を設置する段階は、
予めコア抜きした穴を覆うようにしてコンクリート舗装面に直接アンカーで固定する段階と、
予めコア抜きした穴の中央部に設置したアウターロッドより外径の大きい中空円管状のドリルロッドの外周を、モルタルで充填して地山との隙間を塞いだ上で、前記ドリルロッドの頭部に前記口元処理装置を取り付ける段階と、
のいずれか一つの段階を含むことを特徴とする無水削孔によるロックボルト打設方法。
【請求項2】
前記二重管により削孔を行う段階は、
排出されたくり粉を集塵機により圧縮空気と分離して回収する段
階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無水削孔によるロックボルト打設方法。
【請求項3】
前記集塵機の吸引量は削孔時に供給される圧縮空気量より大きいことを特徴とする請求項1
又は2に記載の無水削孔によるロックボルト打設方法。
【請求項4】
無水削孔によるロックボルト打設方法における二重管による削孔に使用する口元処理装置であって、
削孔に使用する前記二重管を挿通するための挿通孔と、
削孔を行う段階で前記二重管のインナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、
供給された圧縮空気の分流分をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、
前記二重管を挿通した状態で前記二重管の周囲にあって前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備えることを特徴とする口元処理装置。
【請求項5】
トンネル内のロックボルト打設のための削孔に使用する無水削孔システムであって、
削孔機と、
前記削孔機に取り付けられ、先端にそれぞれビットを備えるインナーロッドとアウターロッドとを備える二重管と、
削孔時に圧縮空気を供給する空気圧縮機と、
前記二重管を挿通するための挿通孔と、削孔を行う段階で前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、供給された圧縮空気の内、前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備える口元処理装置と、
中間粉塵収集機と集塵機
とから構成され、前記インナーロッドと前記アウターロッドとの間に分流される圧縮空気及び前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気により排出されたくり粉を分離して回収する集塵手段とを有することを特徴とする無水削孔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水削孔によるロックボルト打設方法、及びそれに用いる無水削孔システム、並びに口元処理装置に関し、特に切削水を使用せず、削孔により発生するくり粉を、圧縮空気によって集塵機に排出する無水、無粉塵の二重管式削孔を行うことにより、盤膨れしやすい地山のトンネル坑内に適用可能な無水削孔によるロックボルト打設方法、及びそれに用いる無水削孔システム、並びに口元処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工において、トンネルの周辺地山を補強するためにロックボルトを打設することが一般的に行われる。ロックボルトの打設に当たっては、ロックボルトを挿入するための削孔が行われる。ロックボルト挿入孔の削孔は、先端にビットを有するロッドを、削岩機に取り付け、ロッドを回転させながら地山に押し込み、先端のビットで地山を削っていくことにより進行する。このときビットにより破砕されたくり粉の排出のために、ビット先端から切削水を注水し循環させる。切削水は削岩機やビットの冷却の機能も果たすため、ロックボルト挿入孔の削孔には重要な役割を果たす。
【0003】
しかし、地山が盤膨れしやすい地層の場合、地下水の供給により変位が増長されることが判明しており、ロックボルト挿入孔の削孔時に切削水を注水すると、地山を傷め、膨張を促進する可能性がある。そこでこうした地山の削孔には、切削水を使用しない「無水」による削孔方法が求められる。
【0004】
無水による削孔を行う場合、切削水の代わりに使用するのが圧縮空気である。圧縮空気は中空のロッドの中を通してビット先端から噴出され、ビットを冷却するとともにビットにより破砕されたくり粉を巻き込み、ロッドと地山の間をロッドの根元に向かって回帰していく。削孔の開口端まで達した圧縮空気は、ロッドと地山の間から噴出するため、大きいくり粉はロッドの周辺に堆積されるが、細かいくり粉は粉塵として空気中に放散される。
このため閉塞空間であるトンネル坑内の削孔には粉塵対策が必要となる。特に既設トンネルの盤膨れ対策工では、一般車両が往来する中での作業が求められることが有り、このような場合に粉塵対策は必須である。
【0005】
特許文献1はこうした、圧縮空気を使用する削孔における粉塵対策を目的としたものであり、特許文献1には、穿孔口元を覆う集塵蓋と穿孔機本体上に搭載された集塵器とを接続し、穿孔くり粉を輸送するための粉塵輸送管の途中に、該粉塵輸送管の通路断面積より大きな断面積を有する粗粒分離器を設けた穿孔機用集塵器の粉塵輸送管が開示されている。
特許文献1の技術は一般的な地盤の削孔には有効であるが、盤膨れしやすい地山の場合は、削孔した壁面が内径を縮小する方向に変形してくるため、こうした地盤の削孔にはそのまま適用はできない。即ち、削孔した内壁の変形を防止する外管(アウターロッド)を含む二重管による削孔技術が必要となる。
【0006】
特許文献2には、二重管を用いた削孔装置であって、内管(インナーロッド)内に気体流通往路が形成されるとともに、内管と外管との間に気体流通復路が形成され、ビット部材には、ビット部材によって地山を掘削して生じた土砂を気体流通往路に導入する土砂排出部と、気体流通往路を流通した気体を気体流通往路から流通復路に向けて案内する複数の案内路が形成されており、案内路を気体が流通することにより、土砂排出部を介して気体流通往路に向けて土砂が吸引される削孔装置が開示されている。
【0007】
ところが盤膨れしやすい地山の場合、広い範囲の地盤を補強する必要があり、補強に使用するロックボルトは10mを超える長尺のものを使用する必要がある。このため削孔もその分深く行う必要がある。しかし、深い削孔を行うと外管と地山との摩擦が大きくなり、外管が回転しなくなるなど、削孔に支障が出ることが有る。そこで外管の先端にあるアウタービットを外管の外径より少し大きい径になるように形成し、削孔中は外管と地山との間に隙間ができるようにして削孔を進めることが有効である。
【0008】
外管と地山との間に隙間を作ると、内管を通して供給する圧縮空気が内管と外管との間ばかりでなく外管と地山との間にも分流するため、削孔時のくり粉はこの2つの流れにより排出されることになる。しかし外管と地山との間の経路は地山の変形により不安定になりやすく、くり粉も詰まりやすいことが判明してきている。外管と地山との間の経路がくり粉で詰まってしまうと外管の回転にも支障が出るため、安定的にくり粉を排出することが重要である。そこで、盤膨れしやすい地山のトンネル坑内の補強にも適用可能な無水、無粉塵の二重管式削孔を可能とする削孔システム及びそれを用いたロックボルト打設技術の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実全昭58-172589号公報
【文献】特開2006-328756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の削孔方法及び削孔システムにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、切削水を使用せず、削孔により発生するくり粉を、圧縮空気によって集塵機に排出する無水、無粉塵の二重管式削孔を行うことにより、盤膨れしやすい地山のトンネル坑内に適用可能な無水削孔によるロックボルト打設方法、及びそれに用いる無水削孔システム、並びに口元処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明による無水削孔によるロックボルト打設方法は、トンネル内において無水で削孔してロックボルトを打設する方法であって、ロックボルト取付け位置に口元処理装置を設置する段階と、先端にインナービットを備えるインナーロッドと、先端にアウタービットを備えるアウターロッドとの二重管により削孔を行う段階と、前記インナーロッドを回収してモルタルを充填し、ロックボルトを挿入する段階と、前記アウターロッド及び前記口元処理装置を回収してモルタルを追加注入する段階と、前記ロックボルトにベアリングプレート及びナットを取り付ける段階とを有し、前記口元処理装置は、前記二重管を挿通するための挿通孔と、削孔を行う段階で前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、供給された圧縮空気の内前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備え、前記漏洩防止手段は、前記二重管の周りを、前記二重管の動作を阻害しないようにしながら圧縮空気が漏れないように閉塞し、前記二重管により削孔を行う段階は、削孔により発生するくり粉を、前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の内、前記インナーロッドと前記アウターロッドとの間に分流される圧縮空気とともに前記アウターロッドを経由して排出する第1経路と、前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気及び供給口から供給された新たな圧縮空気とともに前記口元処理装置の排出口から排出する第2経路との2つの経路により排出する段階を含み、前記ロックボルト取付け位置に前記口元処理装置を設置する段階は、予めコア抜きした穴を覆うようにしてコンクリート舗装面に直接アンカーで固定する段階と、予めコア抜きした穴の中央部に設置したアウターロッドより外径の大きい中空円管状のドリルロッドの外周を、モルタルで充填して地山との隙間を塞いだ上で、前記ドリルロッドの頭部に前記口元処理装置を取り付ける段階と、のいずれか一つの段階を含むことを特徴とする。
【0012】
前記二重管により削孔を行う段階は、排出されたくり粉を集塵機により圧縮空気と分離して回収する段階をさらに含むことが好ましい。
【0013】
前記集塵機の吸引量は削孔時に供給される圧縮空気量より大きいことが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明による口元処理装置は、無水削孔によるロックボルト打設方法における二重管による削孔に使用する口元処理装置であって、削孔に使用する前記二重管を挿通するための挿通孔と、削孔を行う段階で前記二重管のインナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、供給された圧縮空気の分流分をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、前記二重管を挿通した状態で前記二重管の周囲にあって前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明による無水削孔システムは、トンネル内のロックボルト打設のための削孔に使用する無水削孔システムであって、削孔機と、前記削孔機に取り付けられ、先端にそれぞれビットを備えるインナーロッドとアウターロッドとを備える二重管と、削孔時に圧縮空気を供給する空気圧縮機と、前記二重管を挿通するための挿通孔と、削孔を行う段階で前記インナーロッドを介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段と、供給された圧縮空気の内、前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵機に排出する排出口と、前記排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口とを備える口元処理装置と、中間粉塵収集機と集塵機とから構成され、前記インナーロッドと前記アウターロッドとの間に分流される圧縮空気及び前記アウターロッドと地山との間に分流される圧縮空気により排出されたくり粉を分離して回収する集塵手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無水削孔によるロックボルト打設方法によれば、二重管を使用し、切削水の代わりに圧縮空気を使用してくり粉を排出しながら削孔を進めるため、切削水の注入により地山を傷めることなく削孔を進めることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る無水削孔によるロックボルト打設方法によれば、外管と地山との間の経路からのくり粉の排出に、新たな圧縮空気を供給して排出を促進させるので、くり粉の詰まりを生ずることなく安定的に排出が可能となるため、削孔の際の外管と地山又は外管と詰まったくり粉との接触による回転の障害を防止し、10mを超える長尺のロックボルトの打設に対応した深い削孔を可能とする。
【0018】
さらに、本発明に係る無水削孔によるロックボルト打設方法によれば、内管と外管との間、及び外管と地山との間の2つの経路に分流した圧縮空気によりそれぞれ排出されるくり粉を漏洩することなく、集塵手段に導くため、閉塞された既設のトンネル空間内でも、隣接車線の一般車両の通行を止めることなく、粉塵を発生しないクリーンな作業環境を保った削孔及びロックボルトの打設が可能となる。
【0019】
本発明に係る無水削孔システム、並びに口元処理装置によれば、口元処理装置は、外管と地山との間の経路からのくり粉の排出用に、排出口と共通の空間に開口する新たな圧縮空気の供給口を備えるため、くり粉が排出パイプ内に詰まることがなく安定的なくり粉の排出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の無水削孔によるロックボルト打設方法に使用する第1の実施形態による無水削孔システムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による口元処理装置の構造を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の無水削孔によるロックボルト打設方法に使用する第2の実施形態による無水削孔システムを概略的に示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による口元処理装置の構造を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による無水削孔によるロックボルト打設方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る無水削孔によるロックボルト打設方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の無水削孔によるロックボルト打設方法に使用する第1の実施形態による無水削孔システムを概略的に示す図である。
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による無水削孔システム1は、削孔機10、空気圧縮機20、削孔機10に取り付けられる二重管30、口元処理装置40、及び集塵手段50を備える。
【0022】
本発明による無水削孔によるロックボルト打設方法は、盤膨れの発生しやすいような地層に設けたトンネルの補強に適用可能なロックボルトの打設方法であって、ロックボルト挿入孔の削孔の際、地山60を傷めるおそれのある切削水を使用せず、又変形しやすい地盤においても所定の内径を有する深い削孔を確実に行うための二重管30を使用した削孔を行う削孔方法を利用する。削孔時に発生するくり粉を排出するために、切削水の代わりに圧縮空気を使用するが、盤膨れの発生しやすいような地層の削孔では、削孔に伴い地山60の変形が生じることがあり、二重管30と地山60との間にくり粉が詰まってしまうと摩擦力の増加により削孔に支障が生じる。
【0023】
そこで本発明の実施形態による無水削孔システム1では、二重管30と地山60との間を経由するくり粉の排出経路の途中に、削孔用とは別の新たな圧縮空気を供給して、この排出経路からのくり粉の排出を促すことで、くり粉の詰まりを防止する。
また無水削孔システム1は、トンネル内の補強工事に適用することから、上記の排出経路から排出されるくり粉のほか、二重管30の中を経由して排出されるくり粉も含めてすべてのくり粉を含む圧縮空気を集塵手段50に導き、集塵手段50でくり粉を分離、回収して清浄化した空気を排出する。
【0024】
このように本発明による無水削孔によるロックボルト打設方法では、無水で削孔することにより地山60を傷めず、二重管30で削孔する際に、新たな圧縮空気を供給して、くり粉が詰まりやすい二重管30と地山60との間から排出されるくり粉の詰まりを防止して、盤膨れの発生しやすいような地層でも安定して深い削孔を可能とし、削孔により発生するくり粉を回収して粉塵の飛散を防止するクリーンな削孔を実現する。このようにして二重管30を使用することにより、その特徴を生かし、削孔したロックボルト用の挿入孔の形状を維持してロックボルトの挿入を容易にする打設方法を提供する。
【0025】
無水削孔システム1が備える削孔機10は、実施形態ではロータリーパーカッション機能を備えた削孔機10を使用する。削孔機10は、インナーロッド31及びアウターロッド35を備える二重管30が取り付けられるよう、ドリルヘッド11の部分には、図示しないが、インナーロッド31とアウターロッド35をそれぞれ独立してクランプするクランプ手段を備える。
【0026】
ドリルヘッド11は、このクランプ手段を通じて、インナーロッド31及びアウターロッド35に回転力と打撃力を加えることができる。インナーロッド31及びアウターロッド35はともに中空の円管状であり、インナーロッド31の先端にはインナービット32が備えられ、インナーロッド31の外周側に一定の空間を有するように離隔して取り囲むアウターロッド35の先端にはリング状に配置されるアウタービット36が備えられる。インナーロッド31及びアウタービット36はともにドリルヘッド11から加えられる回転力と打撃力により削孔を進める。
【0027】
アウタービット36は、削孔時にアウターロッド35と地山60との間に隙間を形成するため、アウタービット36の最外周の径が、アウターロッド35の外径より大きくなるように設置される。このような隙間を形成することにより、削孔中のアウターロッド35と地山60との間の摩擦力による回転抵抗の発生を防止する。
【0028】
インナーロッド31の頭頂部には、スイベルジョイント等のジョイントを含んでインナーロッド31内に圧縮空気を供給するための供給パイプ接続手段を備え、削孔時には、空気圧縮機20からの供給パイプ21を接続して、圧縮空気を流しながら削孔を行う。インナービット32には、圧縮空気を削孔部に噴出させるための噴出口が備えられ、空気圧縮機20から供給された圧縮空気は、インナーロッド31の内部を通って噴出口から削孔部に噴出される。この圧縮空気は削孔時に発熱するインナービット32やアウタービット36を冷却するとともに、削孔時に発生するくり粉を排出するのに使用される。
【0029】
インナービット32の噴出口から噴出された圧縮空気は、くり粉を巻き込み、インナーロッド31とアウターロッド35との間の空間をドリルヘッド11側に回帰する第1経路33と、アウターロッド35と地山60との間を開口側に戻る第2経路37との2つの経路に分流し、くり粉の排出に使用される。
【0030】
アウターロッド35の頭頂部には、インナーロッド31を回転可能に挿通させるものの、
第1経路33を通ってドリルヘッド11側に回帰したくり粉混じりの圧縮空気を漏洩させることなく排出口に導く図示しないスイベルジョイントを備える。第1経路33を通ってドリルヘッド11側に回帰したくり粉混じりの圧縮空気は、スイベルジョイントの排出口に接続される排出パイプ12を通って集塵手段50に送られる。
【0031】
口元処理装置40は、アウターロッド35と地山60との間の隙間を経由する第2経路37を流れてくるくり粉混じりの圧縮空気を、漏洩させることなく排出口に導く装置である。
口元処理装置40は、二重管30による削孔を行う開始点の部分に設置するが、単に固定しただけでは口元処理装置40と接地面との隙間などから、くり粉混じりの圧縮空気が流出してしまい、粉塵の発生要因となる。そこで第1の実施形態では以下の手順で口元処理装置40を設置する。
【0032】
ロックボルト打設による補強を行うトンネルは、地山60の上に所定厚さの路盤61と路盤61の上に路盤コンクリート62が形成された状態を前提とする。この状態を出発点として、先ず路盤コンクリート62のコア抜きを行う。コア抜きは円柱状に路盤コンクリート62をくり抜くものであり、コア抜きには、コア抜きした底部に後から圧縮空気の漏洩を防止するための処理を行う目的の他、ロックボルト打設後のロックボルト頭部を補強するための鉄筋を側面に打ち込みやすくするなどの目的がある。第1の実施形態では、コア抜きした底部に後から圧縮空気の漏洩を防止するための処理を行うので、口元処理装置40を取り付けるための部分より余裕をもって広く抜き取る。
【0033】
次に、コア抜きした部分と中心軸が同軸となるようにして、口元処理装置40を取り付けるための短尺のドリルロッド70を打ち込む。ドリルロッド70は円管状の形状をしており、中に二重管30を通せるように、アウタービット36の最外周の径より大きな内径を有する。打ち込んだドリルロッド70の周辺のコア抜きした底部には、地山60とドリルロッド70との隙間から圧縮空気が漏洩しないようにモルタル71を充当する。
【0034】
このようにドリルロッド70周辺の漏洩防止を行った上で、ドリルロッド70の頭頂部に、口元処理装置40を取り付ける。ドリルロッド70の頭頂部には予めフランジ又はねじなどの取り付け手段を設けておき、口元処理装置40にもこれに対応してフランジ又はねじなどの取り付け手段を設け、これにより圧縮空気が漏洩しないようにしてドリルロッド70に取り付ける。フランジにより取付ける場合は間にパッキンを介するようにして漏洩を防止する。
口元処理装置40の詳細は
図2に示すので、以下
図2を併せて参照して説明する。
【0035】
図2は、本発明の第1の実施形態による口元処理装置の構造を概略的に示す図である。
図2(a)はドリルロッド70に取り付けた口元処理装置40の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A線に沿って要部を切断した部分断面を示す図である。
図2を参照すると、本発明の第1の実施形態による口元処理装置40は、二重管30を挿通するための挿通孔41と、削孔を行う段階でインナーロッド31を介して供給される圧縮空気の漏洩防止手段42と、供給された圧縮空気の内、アウターロッド35と地山60との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵手段50に排出する排出口43と、排出口43と共通の空間46に開口する新たな圧縮空気の供給口44とを備える。
【0036】
漏洩防止手段42は、削孔時には回転したり軸方向に移動したりする二重管30の周り、即ちアウターロッド35の周りを、二重管30の動作を阻害しないようにしながら圧縮空気が漏れないように閉塞するものである。漏洩防止手段42は、二重管30に接する部分に弾性体を備え、実施形態では空気圧により膨らむチューブを有するプリペンダにより実現される。プリペンダは挿通孔41に取り付けられ、アウターロッド35を挿通した状態でチューブに空気を注入して膨らませ、アウターロッド35の外周に密着させることで挿通孔41とアウターロッド35外周との隙間を閉塞する。他の実施形態ではプリペンダの代わりに、Oリングやゴムパッキンを1重又は多重に設けてOリングやゴムパッキンの弾性を利用してアウターロッド35の外周を塞ぐようにしてもよい。
【0037】
このように漏洩防止手段42によって、挿通孔41からの漏洩が防止されるため、インナーロッド31を介して供給される圧縮空気の内、アウターロッド35と地山60との間に分流されて第2経路37を流れる圧縮空気は、外部に漏洩することなく排出口43から排出される。排出口43には、集塵手段50に連結される排出パイプ53が接続されており、第2経路37を流れるくり粉は、外部に流出することなく集塵手段50に送り込まれる。
【0038】
上記で説明した口元処理装置40の機能、即ち円管(ドリルロッド70)の頭頂部に取り付け、円管の中で回転する回転体(アウターロッド35)を挿通する挿通孔(挿通孔41)を備え、当該回転体の回転を阻害することなくその周囲からの圧縮空気の漏洩を防止して排出口(排出口43)に導く機能は、アウターロッド35の頭頂部に取り付けられ、インナーロッド31を回転可能に挿通させつつ、アウターロッド35の中を流れる圧縮空気を漏洩させることなく排出口に導く前述のスイベルジョイントと同様である。
【0039】
インナーロッド31とアウターロッド35との間の空間をドリルヘッド11側に回帰する第1経路33は、流路が変化することなく安定してくり粉混じりの圧縮空気を流通させるが、アウターロッド35と地山60との間を開口側に戻る第2経路37は、地山60の削孔した壁面が変形しやすく、又地下水の発生がある場合はその影響も受け易く、くり粉混じりの圧縮空気の流れが不安定になり易い。そのため第2経路37からのくり粉が滞り、詰まるおそれがある。
【0040】
そこで、口元処理装置40には、第2経路37からのくり粉の排出を促すための、新たな圧縮空気の供給口44を備える。供給口44は排出口43と共通の空間46に開口し、供給口44には空気圧縮機20から供給される圧縮空気を導く供給パイプ22が接続される。供給口44から供給される新たな圧縮空気は、第2経路37を流れるくり粉混じりの圧縮空気とともに排出口43から排出される。新たな圧縮空気を供給することにより、第2経路37を流れるくり粉混じりの圧縮空気は加速されてくり粉の排出が容易となる。
【0041】
図2では、供給口44は排出口43と直交する位置に示すが、排出口43と対向する位置に設けてもよいし、それ以外の互いに任意の角度となる位置関係にあってもよい。また、供給口44は、排出口43と共通の空間46に開口している単純な開口形状でもよいが、空間46内でさらに排出口43に向かって新たな圧縮空気を噴出するようにノズル状の開口形状を有するようにしてもよい。排出口43に向かって噴出される圧縮空気は周りにあるくり粉混じりの圧縮空気を巻き込んで空間46内の圧力を低減させるように寄与するため、アウターロッド35と地山60との間の圧縮空気を吸い上げる効果が付加され、さらにくり粉の詰まりを生じにくくする。
【0042】
再び
図1を参照して、第2経路37を流れるくり粉混じりの圧縮空気は、排出パイプ53を経由して、また第1経路33を流れるくり粉混じりの圧縮空気は排出パイプ12を経由して、集塵手段50に送られる。集塵手段50は、中間粉塵収集機51と集塵機52とを備える。
【0043】
中間粉塵収集機51は、内部に遮蔽板を設置して、排出パイプ(12、53)から送り込まれたくり粉混じりの圧縮空気を、上下で折り返すように誘導し、この間にくり粉のうち比較的サイズの大きいくり粉54を沈下させて回収し、後段の集塵機52の集塵の負荷を低減するためのものである。
【0044】
集塵機52は吸引のためのファンとバグフィルターとを備え、中間粉塵収集機51により比較的サイズの大きいくり粉54が除かれた排気の中から、さらに細かいくり粉を除去し、清浄化した空気を排出する。中間粉塵収集機51を設けることにより、バグフィルターの寿命が長くなり、フィルターの交換頻度を低減することができる。
【0045】
集塵機52が備えるファンは、くり粉混じりの圧縮空気を吸引してバグフィルターにより正常化された空気を排出するためのものであるが、その吸引量が不足すると、圧縮空気の流れが低下し、くり粉が沈下して詰まりやすくなってしまう。このため集塵機52の吸引能力は十分余裕を持たせておく必要がある。
【0046】
削孔の際、空気圧縮機20から、インナーロッド31内に供給される圧縮空気量をA(m3/分)とすると、この圧縮空気は第1経路33を流れる分のA1(m3/分)と第2経路37を流れる分のA2(m3/分)とに分流される。このときそれぞれの経路に流れる圧縮空気の量はそれぞれの経路の断面積比によって決まってくる。例えば、標準的なアウタービット36の外径が101mm、アウターロッド35の外径及び内径がそれぞれ96mm、69mm、インナーロッド31の外径が57mmの二重管30の場合、
A1:A2=π×(692-572)/4:π×(1012-962)/4
=1:0.65
となる。
【0047】
このように標準的な寸法の二重管30を使用すると元々第2経路37の流路が狭い上、地山60の変形により、流路が更に狭くなったり、地山60の削孔壁面の粗度が大きくなったりして第2経路37の流量A2が低下しやすい。このような状況になると同じ供給源から供給される圧縮空気は分流のバランスが崩れ、第2経路37の流量A2は急激に低下してしまい、アウターロッド35と地山60との間ばかりでなく、口元処理装置40や排出パイプ53などでもくり粉が詰まりやすくなってしまう。口元処理装置40の供給口44から供給される新たな圧縮空気はこのような詰まりを防止する。この新たな圧縮空気の供給量をA0(m3/分)とすると、上記の圧縮空気量をA(m3/分)にこの供給量A0(m3/分)を加えたものが、削孔に伴い供給される圧縮空気の総量となる。集塵機52の吸引能力をB(m3/分)とすると、この吸引能力は削孔に伴い供給される圧縮空気の総量より多くする必要がある。即ち、
B>A+A0
であるような集塵機52を使用する。
【0048】
第1経路33の流量A1と第2経路37の流量A2とのバランスが重要であることから、流量が変動しやすい第2経路37側に流量計を設け、第2経路37側の流量が所定の流量を下回らないかを検知できるようにしてもよい。具体的には例えば排出パイプ53の途中又は口元処理装置40の供給口44に流量計を取り付け、排出パイプ53を流れるくり粉混じりの圧縮空気の流量が所定の流量を下回る場合、例えば一旦削孔動作を止めアウターロッド35の上下動作を行う、第1経路33側の排出パイプ12の流量を絞る、或は供給口44からの新たな圧縮空気の供給量を増やすなどのくり粉の詰まり防止のための対応策を取るようにしてもよい。排出パイプ53を流れるくり粉混じりの圧縮空気の流量が所定の流量を下回る場合、アラームを発するように警報装置をさらに設けてもよい。
【0049】
図3は、本発明の無水削孔によるロックボルト打設方法に使用する、第2の実施形態による無水削孔システムを概略的に示す図である。
図3を参照すると、本発明の第2の実施形態による無水削孔システム2は、削孔機10、空気圧縮機20、削孔機10に取り付けられる二重管30、口元処理装置48、及び集塵手段50を備える。
【0050】
無水削孔システム2は、
図1に示す無水削孔システム1の口元処理装置40の代わりに口元処理装置48を備えており、それ以外の構成は無水削孔システム1と変わらないので、無水削孔システム1で説明した内容と重複する説明は省略する。
口元処理装置48が口元処理装置40と相違するのは、その取付方法である。口元処理装置40は、ドリルロッド70を利用して、予めドリルロッド70の周りからの漏洩を防止する処理をした上で、ドリルロッド70の頭頂部に取り付けるように形成されるが、口元処理装置48は、ドリルロッド70を介さず、アンカー72を使用して、直接に路盤コンクリート62に取り付ける。口元処理装置48の詳細は
図4を参照して説明する。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施形態による口元処理装置の構造を概略的に示す図である。
図4(a)はアンカー72により取り付けた口元処理装置48の斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)のB-B線に沿って要部を切断した部分断面を示す図である。
図4を参照すると、本発明の第2の実施形態による口元処理装置48は、二重管30を挿通するための挿通孔41と、供給された圧縮空気の内、アウターロッド35と地山60との間に分流される圧縮空気をくり粉とともに集塵手段50に排出する排出口43と、排出口43と共通の空間46に開口する新たな圧縮空気の供給口44とを備える。また挿通孔41には漏洩防止手段42を備えることは口元処理装置40と変わらない。
【0052】
口元処理装置48の取り付け部は、アンカー72を挿通するための穴を有するフランジが形成され、予め路盤コンクリート62に打ち込んだアンカー72に合わせて口元処理装置48を設置した後、フランジの穴を挿通して突出するアンカー72にナットを締結することで、口元処理装置48が固定される。フランジの下面にはパッキン45を挟み込むことで、路盤コンクリート62との隙間を塞ぎ、圧縮空気の漏洩を防止する。この実施形態の場合もロックボルト打設後のロックボルト頭部を補強するための鉄筋を側面に打ち込みやすくするなどの目的のためコア抜きは行うが、パッキン45がコア抜き部の開口の外周側を覆うようにして口元処理装置48が取り付けられるため、実施形態1の口元処理装置40のようにモルタル71を充当する手間が省け、より簡便に使用することができる。
【0053】
図5は、本発明の実施形態による無水削孔によるロックボルト打設方法を説明するためのフローチャートである。
図5を参照すると、段階S500にて、ロックボルトの打設を行う場所に口元処理装置(40、48)を設置する。口元処理装置(40、48)は、上記で説明したように、実施形態により取付方法が異なるため、口元処理装置(40、48)に応じた取り付け方法を採用する。ドリルロッド70の頭頂部に取り付ける口元処理装置40の場合は、先ず路盤コンクリート62のコア抜きを行った後、コア抜きした孔の中央に中心軸を合わせて円管状のドリルロッド70を打ち込み、ドリルロッド70周辺のコア抜きした孔の底部にモルタル71を充当して圧縮空気の漏洩対策を行った上で、ドリルロッド70の頭頂部に取り付ける。
【0054】
路盤コンクリート62に直接取り付ける口元処理装置48の場合は、予めコア抜きした穴の上を覆うように口元処理装置48を取り付けるため、口元処理装置48の下端フランジのアンカー用孔の位置に対応してアンカー72を路盤コンクリート62に打ち込んだ後、アンカー72がアンカー用孔を挿通するようにフランジを設置してナットで締結する。このときパッキン45がコア抜き部の開口の外周側を覆うようにしてパッキン45を挟み込み、路盤コンクリート62と口元処理装置48の下端フランジとの隙間から圧縮空気が漏洩しないように取付ける。
【0055】
次いで先端にインナービット32を備えるインナーロッド31と、先端にアウタービット36を備えるアウターロッド35とからなる二重管30を取り付けた削孔機10によりロックボルト挿入孔の無水削孔を行って、インナーロッド31とアウターロッド35との間の第1経路33と、アウターロッド35と地山60との間の第2経路37より圧縮空気とともにくり粉を排出する(段階S510)。
【0056】
くり粉を排出するための圧縮空気は、空気圧縮機20からスイベルジョイント等のジョイントを介してインナーロッド31の内部に供給され、インナーロッド31先端の噴出口から噴出された後、第1経路33と、第2経路37に分流される。
第1経路33に流れる圧縮空気はインナービット32又はアウタービット36により削り出されるくり粉の一部を巻き込み、アウターロッド35頭頂部に備え付けられるスイベルジョイントの排出口より、くり粉とともに排出パイプ12に排出される。第2経路37に流れる圧縮空気はインナービット32又はアウタービット36により削り出されるくり粉の残りを巻き込み、口元処理装置(40、48)に流入後、供給口44より供給される新たな圧縮空気と混合されて加速され、新たな圧縮空気、くり粉とともに排出口43より排出パイプ53に排出される。
【0057】
排出パイプ(12、53)に排出されたくり粉混じりの圧縮空気は、集塵手段50に導入され、集塵手段50によりくり粉を分離して回収する(段階S520)。集塵手段50は前段の中間粉塵収集機51により、比較的サイズの大きいくり粉54を沈下させて回収し、後段の集塵機52のバグフィルターによりさらに細かいくり粉を除去して正常化した空気にして排出する。これにより閉塞されたトンネル内の作業であっても、粉塵が充満するようなことがなく、作業者は良好な作業環境で補強作業を行うことができる。
【0058】
深い削孔を行うためには、削孔を行う二重管30は削孔が進むごとに中継管を継ぎ足して深度を増していく。このため削孔機10は、ドリルヘッド11と口元処理装置(40、48)との間で動作するクランプ部(図示せず)を備える。クランプ部はそれぞれ独立して動作するインナーロッド用クランプ部とアウターロッド用クランプ部とを備え、これにより中継管、或はすでに削孔用に接続されたアウターロッド35又はインナーロッド31をクランプした状態でドリルヘッド11側のクランプ手段を回転させて、中継管をつないだり、逆に外したりすることができる。
【0059】
必要な深さまでの削孔が終了すると、段階S530にてインナーロッド31を回収して、ロックボルトを固定するためのモルタルをロックボルト挿入孔の中に充填し、続けてロックボルトを挿入する。モルタルを充填する際は、注入用ホースの先端をロックボルト挿入孔の底部まで挿入してから注入する。これにより孔内に湧水があっても、モルタルで置換することができる。モルタル注入により置換された湧水が口元まで上がってくる場合は小型バキュームで吸引して取り除くことができる。
【0060】
段階S530の処理を行う間、地山60が変形しようとしてもアウターロッド35が削孔の外壁を支持するため、作業性に影響が出ることはない。ロックボルトにはスペーサを取り付けることで挿入孔の中で適切な位置を維持するようにして挿入することが可能となる。また長尺のロックボルトが必要な場合はカプラーにより扱いやすい適度な長さのロックボルトをつなぎ合わせて使うことが可能である。ロックボルトの挿入にロータリーパーカッションドリルタイプの削孔機10に搭載されている電動ウィンチを使用してもよい。
【0061】
ロックボルトの挿入が終了し、ロックボルトの天端などの測定により、ロックボルトが所定深さまで挿入されていることを確認後、段階S540にて、アウターロッド35及び口元処理装置(40、48)を回収する。この時点ではまだモルタルは固まっておらず、アウターロッド35を回収する際、アウターロッド35の外側の隙間やクラックなどにモルタルが浸透し、モルタルの上面が低下することが有る。その場合は時間をおいてモルタルの沈降が収まってから所定の高さまでモルタルを追加注入する。
【0062】
モルタルが適正高さにて硬化した状態で、段階S550にてロックボルトの頭部にベアリングプレートをナットで締結してロックボルト打設を終了する。この時点でロックボルトによる補強効果が発揮されるようになる。
この後、道路として路面を平坦化するために、ロックボルトの頂部に路盤モルタルの充填や超早強コンクリートでの舗装盤充填などを実施する。このときロックボルトの頂部の上方からコア抜き部の側壁に向かって斜め下方向に鉄筋を打ち込んだ後、鉄筋の頭部をコア抜き部の内部に収めるように曲げてから、この鉄筋を含めロックボルトの頂部に路盤モルタルの充填や超早強コンクリートでの舗装盤充填などを実施する。このように鉄筋で補強することにより交通開放後もロックボルト頂部を埋め込んだ路盤モルタルや超早強コンクリートの沈み込みを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、2 無水削孔システム
10 削孔機
11 ドリルヘッド
12、53 排出パイプ
20 空気圧縮機
21、22 供給パイプ
30 二重管
31 インナーロッド
32 インナービット
33 第1経路
35 アウターロッド
36 アウタービット
37 第2経路
40、48 口元処理装置
41 挿通孔
42 漏洩防止手段
43 排出口
44 供給口
45 パッキン
46 空間
50 集塵手段
51 中間粉塵収集機
52 集塵機
54 くり粉
60 地山
61 路盤
62 路盤コンクリート
70 ドリルロッド
71 モルタル
72 アンカー