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特許7295517予測システム、予測装置、および予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】予測システム、予測装置、および予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230614BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20230614BHJP
【FI】
G16H50/30
G16Y10/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021075064
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169193
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2022-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301049157
【氏名又は名称】株式会社アルム
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168952
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 信哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 信一
(72)【発明者】
【氏名】中山 正光
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026447(JP,A)
【文献】特開2008-011865(JP,A)
【文献】特開2001-236337(JP,A)
【文献】特開2010-218444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G16Y 10/00-40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、前記対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、前記対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および前記対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて前記対象者が発症する可能性がある疾患や前記対象者に発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、前記対象者の前記活動情報、前記バイタル・センシング情報、前記計画情報、および前記記録情報を入力として、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や、前記対象者に将来発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手段と、
前記予測手段による予測結果を前記対象者の家族および前記対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手段とを備えることを特徴とする予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の予測システムにおいて、
前記対象者に発生したイベントに関する情報に基づいて、前記学習モデルを更新する学習モデル更新手段をさらに備えることを特徴とする予測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の予測システムにおいて、
前記予測手段は、前記学習モデル更新手段によって更新された学習モデルを利用して、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や前記対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、
更新された学習モデルを利用した前記予測手段による予測結果に基づいて、前記対象者の医療・介護従事者に、前記対象者のケアプラン、前記対象者の看護計画、前記対象者の療養計画、または前記対象者の診療計画の見直しを促すための計画改訂アラートを通知する計画改訂アラート通知手段をさらに備えることを特徴とする予測システム。
【請求項4】
要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、前記対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、前記対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および前記対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて前記対象者が発症する可能性がある疾患や前記対象者に発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、前記対象者の前記活動情報、前記バイタル・センシング情報、前記計画情報、および前記記録情報を入力として、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や、前記対象者に将来発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手段と、
前記予測手段による予測結果を前記対象者の家族および前記対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手段とを備えることを特徴とする予測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の予測装置において、
前記対象者に発生したイベントに関する情報に基づいて、前記学習モデルを更新する学習モデル更新手段をさらに備えることを特徴とする予測装置。
【請求項6】
請求項5に記載の予測装置において、
前記予測手段は、前記学習モデル更新手段によって更新された学習モデルを利用して、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や前記対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、
更新された学習モデルを利用した前記予測手段による予測結果に基づいて、前記対象者の医療・介護従事者に、前記対象者のケアプラン、前記対象者の看護計画、前記対象者の療養計画、または前記対象者の診療計画の見直しを促すための計画改訂アラートを通知する計画改訂アラート通知手段をさらに備えることを特徴とする予測装置。
【請求項7】
要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、前記対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、前記対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および前記対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて前記対象者が発症する可能性がある疾患や前記対象者に発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、前記対象者の前記活動情報、前記バイタル・センシング情報、前記計画情報、および前記記録情報を入力として、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や、前記対象者に将来発生する可能性がある前記対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手順と、
前記予測手順による予測結果を前記対象者の家族および前記対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手順をコンピュータに実行させるための予測プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の予測プログラムにおいて、
前記対象者に発生したイベントに関する情報に基づいて、前記学習モデルを更新する学習モデル更新手順をさらに有することを特徴とする予測プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の予測プログラムにおいて、
前記予測手順は、前記学習モデル更新手順で更新した学習モデルを利用して、前記対象者が将来発症する可能性がある疾患や前記対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、
更新された学習モデルを利用した前記予測手順による予測結果に基づいて、前記対象者の医療・介護従事者に、前記対象者のケアプラン、前記対象者の看護計画、前記対象者の療養計画、または前記対象者の診療計画の見直しを促すための計画改訂アラートを通知する計画改訂アラート通知手順をさらに有することを特徴とする予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測システム、予測装置、および予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次のような生体情報・業務管理システムが知られている。この生体情報・業務管理システムでは、患者の生体情報に基づいて患者ごとおよび疾患ごとに重症化予測を実行して緊急患者とオンコールリスク患者に区分し、緊急患者を空き時間のある看護師のスケジュールに割り当てる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-021509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者の生体情報に基づいて患者ごとおよび疾患ごとに重症化を予測する場合には、予測した結果を患者の家族や医療従事者に事前に通知することができれば、通知を受けた人物は、通知された内容に基づいて、患者の体調の変化を注意深く見守ったり、重症化を防止するための措置を行ったりすることができる可能性がある。これは介護を必要とする要介護者の場合も同様のことがいえる。このため、患者や要介護者が将来発症する可能性がある疾患や将来発生する可能性があるイベントを予測して、予測結果を家族や医療・介護従事者へ通知するための仕組みが求められているが、従来の技術ではそのための技術については何ら検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による予測システムは、要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて対象者が発症する可能性がある疾患や対象者に発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報を入力として、対象者が将来発症する可能性がある疾患や、対象者に将来発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手段と、予測手段による予測結果を対象者の家族および対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手段とを備えることを特徴とする。
本発明による予測装置は、要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて対象者が発症する可能性がある疾患や対象者に発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報を入力として、対象者が将来発症する可能性がある疾患や、対象者に将来発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手段と、予測手段による予測結果を対象者の家族および対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手段とを備えることを特徴とする。
本発明による予測プログラムは、要介護者または患者である対象者の活動内容を示す活動情報、対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて対象者が発症する可能性がある疾患や対象者に発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報を入力として、対象者が将来発症する可能性がある疾患や、対象者に将来発生する可能性がある対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むイベントを予測する予測手順と、予測手順による予測結果を対象者の家族および対象者の医療・介護従事者の少なくとも一方に通知する通知手順をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測して、その予測結果を対象者、対象者の家族、および対象者の医療・介護従事者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】予測システム10の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2】対象者用端末100の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図3】家族用端末200の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図4】医療・介護従事者用端末300の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図5】サーバー400の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図6】血圧測定数値に基づいて生成した学習モデルから将来発生するイベントを予測した例を示した図である。
図7】対象者用端末100で実行される処理の流れを示すフローチャート図である。
図8】家族用端末200で実行される処理の流れを示すフローチャート図である。
図9】医療・介護従事者用端末300で実行される処理の流れを示すフローチャート図である。
図10】サーバー400で実行される予測処理の流れを示すフローチャート図である。
図11】サーバー400で実行される学習モデル更新処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態における予測システム10の一実施の形態の構成を示すブロック図である。予測システム10は、患者や要介護者などの対象者が所持する対象者用端末100と、対象者の家族が所持する家族用端末200と、介護士、ケアマネージャー、ヘルパー、看護師、または医師などの介護従事者や医療従事者が所持する医療・介護従事者用端末300と、対象者用端末100、家族用端末200、および医療・介護従事者用端末300と通信をして後述する種々の処理を実行するサーバー400とがインターネットなどの通信回線を介して接続されている。
【0009】
対象者用端末100は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどが用いられる。図2は、本実施の形態における対象者用端末100として、スマートフォンを用いた場合の一実施の形態の構成を示すブロック図である。対象者用端末100は、タッチパネル101と、通信モジュール102と、制御装置103とを備えている。
【0010】
タッチパネル101は、液晶パネル等の表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作することができる入力装置である。例えば、対象者用端末100の操作者は、液晶パネル上に表示されたボタンやアイコンやメニュー等の表示項目を指やタッチペンを用いてタッチまたはスライドさせることにより、対象者用端末100を操作することができる。タッチパネル101は、操作者によるタッチやスライドといった操作を検出して、その検出信号を制御装置103へ出力する。
【0011】
通信モジュール102は、無線または有線により、LANや携帯電話通信網を介してインターネットに接続するためのモジュールや、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信用のためのモジュールを含む。
【0012】
制御装置103は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、対象者用端末100の全体を制御する。なお、制御装置103を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、対象者用端末100を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。なお、本実施の形態では、制御装置103を構成するメモリには後述するPHR(パーソナルヘルスレコード)アプリケーション(以下「PHRアプリ」と呼ぶ)のプログラムデータが記録されている。
【0013】
家族用端末200は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどが用いられる。図3は、本実施の形態における家族用端末200として、スマートフォンを用いた場合の一実施の形態の構成を示すブロック図である。家族用端末200は、タッチパネル201と、通信モジュール202と、制御装置203とを備えている。
【0014】
タッチパネル201は、液晶パネル等の表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作することができる入力装置である。例えば、家族用端末200の操作者は、液晶パネル上に表示されたボタンやアイコンやメニュー等の表示項目を指やタッチペンを用いてタッチまたはスライドさせることにより、家族用端末200を操作することができる。タッチパネル201は、操作者によるタッチやスライドといった操作を検出して、その検出信号を制御装置203へ出力する。
【0015】
通信モジュール202は、無線または有線により、LANや携帯電話通信網を介してインターネットに接続するためのモジュールを含む。
【0016】
制御装置203は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、家族用端末200の全体を制御する。なお、制御装置203を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、家族用端末200を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。なお、本実施の形態では、制御装置203を構成するメモリには後述するPHRアプリのプログラムデータが記録されている。
【0017】
医療・介護従事者用端末300は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パソコンなどが用いられる。図4は、本実施の形態における医療・介護従事者用端末300として、スマートフォンを用いた場合の一実施の形態の構成を示すブロック図である。医療・介護従事者用端末300は、タッチパネル301と、通信モジュール302と、制御装置303とを備えている。
【0018】
タッチパネル301は、液晶パネル等の表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作することができる入力装置である。例えば、医療・介護従事者用端末300の操作者は、液晶パネル上に表示されたボタンやアイコンやメニュー等の表示項目を指やタッチペンを用いてタッチまたはスライドさせることにより、医療・介護従事者用端末300を操作することができる。タッチパネル301は、操作者によるタッチやスライドといった操作を検出して、その検出信号を制御装置303へ出力する。
【0019】
通信モジュール302は、無線または有線により、LANや携帯電話通信網を介してインターネットに接続するためのモジュールを含む。
【0020】
制御装置303は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、医療・介護従事者用端末300の全体を制御する。なお、制御装置303を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、医療・介護従事者用端末300を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。なお、本実施の形態では、制御装置303を構成するメモリに後述する介護・看護・電子カルテ用アプリケーション(以下「介護・看護・電子カルテアプリ」と呼ぶ)のプログラムデータが記録されている。
【0021】
サーバー400は、インターネットに接続された装置であって、図5は、本実施の形態におけるサーバー400の一実施の形態の構成を示すブロック図である。サーバー400は、接続インターフェース401と、制御装置402と、記憶媒体403とを備えている。
【0022】
接続インターフェース401は、サーバー400をインターネット等の通信回線に接続するためのインターフェースであり、例えば、インターネットに有線で接続するための有線LANモジュールや、インターネットに無線で接続するための無線LANモジュールなどを含んでいる。
【0023】
制御装置402は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、サーバー400の全体を制御する。なお、制御装置402を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリである。このメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。例えば、接続インターフェース401を介して読み込まれたデータは、バッファメモリに一時的に記録される。
【0024】
記憶媒体403は、サーバー400が蓄える種々のデータや、制御装置402が実行するためのプログラムのデータ等を記録するための記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。なお、記憶媒体403に記録されるプログラムのデータは、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体に記録されて提供されたり、ネットワークを介して提供されて、操作者が取得したプログラムのデータを記憶媒体403にインストールすることによって、制御装置402がプログラムを実行できるようになる。本実施の形態では、記憶媒体403に、サーバー400を本発明における予測装置として動作させるためのプログラムがインストールされているものとする。
【0025】
本実施の形態における予測システム10は、対象者の健康情報やバイタルデータに基づいて対象者の現在のリスクや疾患の発症予測を行い、予測結果をアラート情報として対象者の家族や医療・介護従事者へ通報することを目的として利用される。本実施の形態では、対象者は、患者や要介護者などを想定する。また、医療・介護従事者は、例えば看護師や医師などの医療従事者と、介護士やケアマネージャーやヘルパーなどの介護従事者を含む。
【0026】
例えば、疾患として脳卒中を考えると、脳卒中の危険因子としては、喫煙、高血圧、ストレス、多量飲酒、および脂質異常症等の様々な因果関係が研究されてきた。このように疾患と危険因子は多種多様であり、生活習慣の改善が主な予防アプローチである。これらは、年に1度または数度の健康診断や、通院や訪問診療などの診療の際に得られたデータに基づき研究されてきており、リアルタイムのデータによる将来発症予測の取り組みは限定的であった。また、介護現場においては、医療機器やセンサー技術の導入は、聴診器、血圧測定器、超音波装置、呼吸器、体温計、心電図、またはパルスオキシメーター程度で、診断と薬物治療とトリアージが中心であり、昨今、転倒を検知するためのセンサーや、心拍数や呼吸数をモニタリングするためのセンサーなどがようやく登場してきた状況である。
【0027】
一方で、対象者の健康情報やバイタルデータなどのリアルタイムデータから、具体的な現在のリスク及び、疾患毎の重症化予測を長期または短期でできれば、家族や医療・介護従事者がその時点でとるべき行動を判断したり、医療体制、介護体制、または看護体制の長期的なケアプランや看護計画や診療計画などの見直しをしたり、医療体制、介護体制、または看護体制の最適化をしたり、対象者のリスク悪化時のモニタリング強化等の取り組みを支援することができる。
【0028】
そこで、本実施の形態における予測システム10は、対象者の基礎情報、健康情報、活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、記録情報、イベント情報に基づいて、対象者のリアルタイムのリスクや疾患の発症を予測し、予測結果を、家族や医療・介護従事者へ通知するための仕組みを提供する。以下、本実施の形態における予測システム10について説明する。なお、基礎情報、健康情報、活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、記録情報、およびイベント情報の詳細については後述する。
【0029】
対象者の家族は、家族用端末200を操作して対象者の基礎情報と健康情報を入力する。本実施の形態では、家族は家族用端末200上で上述したPHRアプリを起動させてタッチパネル201に表示される入力画面上で対象者の基礎情報と健康情報を入力する。対象者の基礎情報としては、例えば、対象者の名前、生年月日、性別、体重、身長、住所、電話番号、家族情報、および住居情報等の情報が入力される。また、対象者の健康情報としては、対象者の体調、喫煙歴、飲酒歴、かかりつけ医情報、既往歴、服薬歴、入院歴、ADL、家族の既往歴等の情報が入力される。なお、上記の対象者の基礎情報と健康情報の内容は一例であって、本発明の目的を達成することができる情報であればこれに限定されるものではない。
【0030】
また、対象者の家族は、対象者が活動を行った場合には、家族用端末200を操作して対象者の活動内容を表す活動情報を入力する。本実施の形態では、家族は家族用端末200上で上述したPHRアプリを起動させてタッチパネル201に表示される入力画面上で対象者の活動情報を入力する。対象者の活動情報としては、例えば、運動、食事、精神状態、食欲、排泄、社会活動、睡眠、症状等に関する情報が入力される。なお、上記の対象者の活動情報の内容は一例であって、本発明の目的を達成することができる情報であればこれに限定されるものではない。
【0031】
家族用端末200では、制御装置203は、家族によって対象者の基礎情報と健康情報、または活動情報の入力が完了すると、入力された情報をサーバー400へ送信する。
【0032】
サーバー400では、制御装置402は、家族用端末200から基礎情報と健康情報、または活動情報を受信すると、受信した情報を記憶媒体403に記録する。本実施の形態では、記憶媒体403には複数の対象者に関する情報を記録することができ、基礎情報と健康情報と活動情報を含んだ対象者情報は対象者ごとに記録されるものとする。
【0033】
対象者用端末100では、制御装置103は、対象者のバイタルデータやセンシングデータを含んだバイタル・センシング情報をサーバー400へ送信する。対象者用端末100では、あらかじめ上述したPHRアプリが起動されており、該PHRアプリが対象者のバイタル・センシング情報をサーバー400へ送信する機能を備えているものとする。本実施の形態では、制御装置103は、あらかじめ設定された送信タイミングに基づいて、対象者のバイタル・センシング情報をサーバー400へ送信する。送信タイミングとしては、例えば、あらかじめ設定された所定時間ごとに送信してもよいし、制御装置103が対象者のバイタルデータやセンシングデータを取得したタイミングで送信してもよい。
【0034】
バイタル・センシング情報としては、例えば、対象者の動きに関する情報、排泄に関する情報、及びバイタル情報を含む。なお、対象者の動きに関する情報としては、例えば、起床、睡眠、座位、仰臥位、食事の動きがあったことが検出されたことを示す情報である。また、対象者のバイタル情報は、例えば、血圧、心拍数、呼吸数、脈拍、心電図、SpO2等のデータが含まれる。
【0035】
なお、バイタル・センシング情報は、公知のウェアラブル端末や医療機器やセンシング機器などにより検出されたデータが対象者用端末100に入力されることにより、制御装置103が取得できるようにすればよい。あるいは、対象者がPHRアプリの入力画面上で手入力するようにしてもよい。
【0036】
サーバー400では、制御装置402は、対象者用端末100からバイタル・センシング情報を受信すると、受信した情報を記憶媒体403に記録する。本実施の形態では、上述した対象者情報に関連付けてバイタル・センシング情報を記録することにより、対象者ごとにバイタル・センシング情報を記録するものとする。
【0037】
医療・介護従事者は、医療・介護従事者用端末300を操作して対象者の計画情報を入力する。本実施の形態では、医療・介護従事者は、医療・介護従事者用端末300上で上述した介護・看護・電子カルテアプリを起動させてタッチパネル301に表示される入力画面上で対象者の計画情報を入力する。対象者の計画情報としては、例えば、対象者が要介護者である場合には、介護従事者によって対象者の介護計画やケアプランが入力され、対象者が患者である場合には、医療従事者によって対象者の看護計画や療養計画や診療計画などが入力される。なお、上記の対象者の計画情報の内容は一例であって、本発明の目的を達成することができる情報であればこれに限定されるものではない。
【0038】
医療・介護従事者用端末300では、制御装置303は、医療・介護従事者による対象者の計画情報の入力が完了すると、入力された計画情報をサーバー400へ送信する。
【0039】
サーバー400では、制御装置402は、医療・介護従事者用端末300から計画情報を受信すると、受信した情報を記憶媒体403に記録する。本実施の形態では、上述した対象者情報に関連付けて計画情報を記録することにより、対象者ごとに計画情報を記録するものとする。
【0040】
医療・介護従事者はまた、医療・介護従事者用端末300を操作して対象者の記録情報を入力する。本実施の形態では、医療・介護従事者は、医療・介護従事者用端末300上で上述した介護・看護・電子カルテアプリを起動させてタッチパネル301に表示される入力画面上で対象者の記録情報を入力する。対象者の記録情報としては、例えば、対象者が要介護者である場合には、介護従事者によって対象者の介護記録や申し送りの情報などが入力され、対象者が患者である場合には、医療従事者によって対象者の看護記録や電子カルテや申し送りの情報などが入力される。なお、上記の対象者の記録情報の内容は一例であって、本発明の目的を達成することができる情報であればこれに限定されるものではない。
【0041】
医療・介護従事者用端末300では、制御装置303は、医療・介護従事者による対象者の記録情報の入力が完了すると、入力された記録情報をサーバー400へ送信する。
【0042】
サーバー400では、制御装置402は、医療・介護従事者用端末300から記録情報を受信すると、受信した情報を記憶媒体403に記録する。本実施の形態では、上述した対象者情報に関連付けて記録情報を記録することにより、対象者ごとに記録情報を記録するものとする。
【0043】
サーバー400では、制御装置402は、上述した対象者の基礎情報と健康情報を記憶媒体403に記録すると、対象者のモニタリングを開始する。そして、制御装置402は、上述した対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報が入力されると、それらの情報を加味して対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、予測結果をアラート情報として家族と医療・介護従事者に通知する。以下、制御装置402によって実行される処理の詳細について説明する。
【0044】
本実施の形態では、制御装置402は、あらかじめ用意されている学習モデルを利用して、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測する。ここで、本実施の形態で用いる学習モデルについて説明する。
【0045】
本実施の形態における学習モデルは、対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報に基づいて対象者が発症する疾患や対象者に発生するイベントを予測するように機械学習されたものを用いる。本実施の形態では、学習モデルは、1つまたは複数の将来発生し得るイベントを予測するために用いられる。そして、イベントは、例えば、転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送などを想定する。学習モデルは、これらのイベントに関するイベント情報と、対象者毎のバイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報を含むリアルタイム情報とを教師データとして、教師あり機械学習を行うことにより生成される。そして、機械学習により生成された学習モデル情報は、発症した疾患や発生したイベントの種類ごとに学習モデルとして記憶される。なお、本実施の形態では、学習モデルのデータは、サーバー400の記憶媒体403に記録されてもよいし、外部の学習モデルデータ記録用のサーバーに記録されてもよい。
【0046】
学習モデルを生成するための機械学習は、集積データから学習し、最新の訓練済みの学習モデルを作成する。訓練済み学習モデルは月に一度などイベント情報がまとまると定期的に更新される。学習モデルを更新するための更新処理については後述する。また、機械学習アルゴリズムは、しきい値や重み付けを調整してもよい。
【0047】
学習モデルを利用した予測処理では、過去から現在にかけての対象者の基礎情報と健康情報とを対象者の基本情報とし、該基本情報に含まれる対象者の年齢、性別、体重、身長、既往歴、服薬情報、喫煙歴、飲酒歴、および家族の既往歴等に基づくリスク情報を特定する。そして、対象者の基本情報に介護記録、看護記録、診療記録、センサー情報、および申し送り情報などのリアルタイム情報が付加されると、該リアルタイム情報に基づいてリスクの増減情報を特定して、個別の疾患の同年齢・同性に比べての対象者の発症予測を算出する。また、対象者の介護記録、看護記録、または診療記録に基づいて、対象者の食事量、排泄量、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2、または心電図等の測定バイタルや睡眠量や活動量や精神状態を解析する。さらに、対象者に、直近、何かしらイベント、すなわち転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送等が起きている、或いは起きつつあるリスクが発生していることも算出する。
【0048】
これにより、例えば、例えば急激な血圧の上昇に基づいて降圧剤の飲み忘れや脳梗塞の発症が予測される。また、自傷、徘徊、独り言、失語、失行、失忍、記憶障害、または見当識障害等の精神情報の悪化やADLの低下に基づいてお薬の副作用や転倒リスクや認知症の悪化等が予測される。さらには、申し送り情報を対象として自然言語解析が行われて、解析の結果に基づく意味解析により、疾患の発症やイベントの発生が予測される。例えば、申し送り情報の「フラフラしている」は意味解析によって「転倒リスク」が予測され、申し送り情報の「イライラしている」は意味解析によって「精神情報の悪化」が予測され、申し送り情報の「手元がおぼつかない」は意味解析によって「失行」が予測される。
【0049】
制御装置402は、学習モデルを用いた予測結果に基づいて、対象者に疾患の発症が予測されたり、イベントの発生が予測されたりした場合には、家族と医療・介護従事者に対して、予測結果に基づくリアルタイムアラートを送信する。すなわち、制御装置402は、リアルタイムアラートの内容を示すリアルタイムアラート情報を家族用端末200と医療・介護従事者用端末300へ送信する。ここで送信されるリアルタイムアラートの内容は、例えば、「只今、転倒リスクが上昇しています。介助サポートをお願いします。」や「血圧の急激な上昇を検知しました。降圧剤の飲み忘れはありませんか?」のようになる。
【0050】
家族用端末200では、制御装置203は、サーバー400からリアルタイムアラート情報を受信すると、受信した内容をタッチパネル201に表示する。また、医療・介護従事者用端末300では、制御装置303は、サーバー400からリアルタイムアラート情報を受信すると、受信した内容をタッチパネル301に表示する。これによって、家族や医療・介護従事者は、対象者に関する通知をリアルタイムで把握することができるため、通知された内容に応じて対象者の様子や行動に注意したり、事前に対応したりすることができる。
【0051】
次に、本実施の形態における学習モデルの更新処理について説明する。本実施の形態では、対象者用端末100、家族用端末200、または医療・介護従事者用端末300から対象者に発生したイベントの内容を示すイベント情報の入力を受け付け、該イベント情報に基づいて学習モデルが更新される。なお、学習モデルの更新処理は、サーバー400で実行されてもよいし、学習モデルが外部のサーバーに記録されている場合には、該外部のサーバーによって実行されててもよいが、ここではサーバー400において制御装置402が実行するものとして説明する。
【0052】
対象者用端末100では、制御装置103は、対象者に学習モデルの更新に利用されるイベントが発生したことを検出した場合には、その検出したイベントの内容を示すイベント情報をサーバー400へ送信する。本実施の形態では、学習モデルの更新に利用されるイベントとして、例えば、対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、救急搬送などを想定する。なお、ここに記したイベントの内容は一例であって、本発明の目的を達成することができるものであればこれに限定されない。
【0053】
これらのイベントは、対象者用端末100が備えるセンサーや対象者による手入力により検出するようにすればよい。また、これらのイベントは、公知のウェアラブル端末や医療機器やセンシング機器などにより検出されたデータが対象者用端末100に入力されることにより、制御装置103が検出するようにしてもよい。
【0054】
学習モデルの更新に利用されるイベントの情報は、対象者にイベントが発生したことを確認した家族、医療従事者、または介護従事者が入力することもできる。家族がイベント情報を入力する場合には、家族は、家族用端末200を操作して対象者のイベント情報を入力する。本実施の形態では、家族は家族用端末200上で上述したPHRアプリを起動させてタッチパネル201に表示される入力画面上で対象者のイベント情報を入力する。制御装置203は、家族によるイベント情報の入力が完了すると、入力された情報をサーバー400へ送信する。
【0055】
また、医療従事者や介護従事者がイベント情報を入力する場合には、医療・介護従事者は、医療・介護従事者用端末300を操作して対象者のイベント情報を入力する。本実施の形態では、医療・介護従事者は、医療・介護従事者用端末300上で上述した介護・看護・電子カルテアプリを起動させてタッチパネル301に表示される入力画面上で対象者のイベント情報を入力する。制御装置303は、医療・介護従事者によるイベント情報の入力が完了すると、入力された情報をサーバー400へ送信する。
【0056】
サーバー400では、制御装置402は、対象者用端末100、家族用端末200、または医療・介護従事者用端末300からイベント情報を受信すると、受信した情報を用いて学習モデルを更新する。本実施の形態では、制御装置402は、対象者用端末100、家族用端末200、または医療・介護従事者用端末300から受信したイベント情報を記憶媒体403に記録しておき、あらかじめ設定された更新処理の開始条件を満たしたときに学習モデルを更新する。なお、学習モデルを更新するためのアルゴリズムはあらかじめ設定されているものとする。また、学習モデル更新の処理開始条件としては、例えば、あらかじめ設定された時刻になったとき、またはイベント情報の件数があらかじめ設定された件数分たまったときなどとすればよい。
【0057】
例えば、図6は、血圧測定数値に基づいて生成した学習モデルから、180日以内に発生する死亡というイベントを予測した例を示している。符号6aに示すグラフは更新前の学習モデルに基づく予想例を示しており、感度は低くなっている。これに対して、その他の健康情報やリアルタイム情報を付加して更新した学習モデルを利用した場合には、符号6bに示すグラフのように感度が良くなっている。このように学習モデルの精度を上げるためには、健康情報及びリアルタイム情報がより多く入力されることが重要となるが、学習モデルの更新のために必要な情報は疾患によって異なる。例えば、認知症を予測する場合には、年齢、性別、喫煙、および既往歴などの情報の感度が高くなり、頭部外傷や難聴の場合には、運動不足、食事不足、および精神状態などの情報の感度が高くなり、脳卒中の場合には、性別、年齢、喫煙歴、および既往歴などの情報の感度が高くなり、脂質異常症や糖尿病の場合には、飲酒歴、血圧、心電図などの感度が高くなる。
【0058】
制御装置402は、学習モデルを更新した後に、更新後の学習モデルに基づいて、上述した予測処理と同様に、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、その予測結果に基づいて、医療従事者や介護従事者へ、対象者に対する今後の計画の見直しを促すための計画改訂アラートを通知する。例えば、対象者が要介護者である場合には、対象者のケアプランの見直しを促すための計画改訂アラートが通知され、対象者が患者である場合には、対象者の看護計画や療養計画や診療計画の見直しを促すための計画改訂アラートが通知される。すなわち、制御装置402は、計画改訂アラートの内容を示す計画改訂アラート情報を医療・介護従事者用端末300へ送信する。ここで送信される計画改訂アラートの内容は、例えば、「180日以内の心筋梗塞の発症リスクが同世代・同性の〇%高まっているため、生体情報モニターによる血圧モニタリングを推奨します。」や「転倒リスクが高まっているため、起床時にサポートできるようにベッドにセンサーの設置を推奨します。」のようになる。
【0059】
医療・介護従事者用端末300では、制御装置303は、サーバー400から計画改訂アラート情報を受信すると、受信した内容をタッチパネル301に表示する。これによって、医療・介護従事者は、通知された内容に基づいて、対象者のケアプラン、看護計画、療養計画、または診療計画の見直しを行うことができる。
【0060】
図7は、本実施の形態における対象者用端末100で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図7に示す処理は、PHRアプリが実行されると起動するプログラムとして、制御装置103によって実行される。なお、PHRアプリの実行は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオンされると自動的に指示されるようにしてもよい。
【0061】
ステップS10において、制御装置103は、対象者のバイタルデータやセンシングデータを含んだバイタル・センシング情報の送信タイミングになったかどうかを判断する。ステップS10で否定判断した場合には、後述するステップS30へ進む。これに対して、ステップS10で肯定判断した場合には、ステップS20へ進む。
【0062】
ステップS20では、制御装置103は、バイタル・センシング情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS30へ進む。
【0063】
ステップS30では、制御装置103は、対象者に学習モデルの更新に利用されるイベントが発生したことを検出したか否かを判断する。ステップS30で否定判断した場合には、後述するステップS50へ進む。これに対して、ステップS30で肯定判断した場合には、ステップS40へ進む。
【0064】
ステップS40では、制御装置103は、検出したイベントの内容を示すイベント情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS50へ進む。
【0065】
ステップS50では、制御装置103は、PHRアプリの終了が指示されたか否かを判断する。なお、PHRアプリの終了は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオフされると自動的に指示されるようにしてもよい。ステップS50で否定判断した場合には、ステップS10へ戻る。これに対して、ステップS50で肯定判断した場合には、処理を終了する。
【0066】
図8は、本実施の形態における家族用端末200で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図8に示す処理は、PHRアプリが実行されると起動するプログラムとして、制御装置203によって実行される。なお、PHRアプリの実行は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオンされると自動的に指示されるようにしてもよい。
【0067】
ステップS110において、制御装置203は、家族によって対象者の基礎情報と健康情報、または活動情報の入力が行われたか否かを判断する。ステップS110で否定判断した場合には、後述するステップS130へ進む。これに対して、ステップS110で肯定判断した場合には、ステップS120へ進む。
【0068】
ステップS120では、制御装置203は、家族によって入力された情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS130へ進む。
【0069】
ステップS130では、制御装置203は、サーバー400から上述したリアルタイムアラート情報を受信したか否かを判断する。ステップS130で否定判断した場合には、後述するステップS150へ進む。これに対して、ステップS130で肯定判断した場合には、ステップS140へ進む。
【0070】
ステップS140では、制御装置203は、受信したリアルタイムアラート情報の内容をタッチパネル201に表示する。その後、ステップS150へ進む。
【0071】
ステップS150では、制御装置203は、家族によって上述したイベント情報が入力されたか否かを判断する。ステップS150で否定判断した場合には、後述するステップS170へ進む。これに対して、ステップS150で肯定判断した場合には、ステップS160へ進む。
【0072】
ステップS160では、家族によって入力されたイベント情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS170へ進む。
【0073】
ステップS170では、制御装置203は、PHRアプリの終了が指示されたか否かを判断する。なお、PHRアプリの終了は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオフされると自動的に指示されるようにしてもよい。ステップS170で否定判断した場合には、ステップS110へ戻る。これに対して、ステップS170で肯定判断した場合には、処理を終了する。
【0074】
図9は、本実施の形態における医療・介護従事者用端末300で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す処理は、介護・看護・電子カルテアプリが実行されると起動するプログラムとして、制御装置303によって実行される。なお、介護・看護・電子カルテアプリの実行は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオンされると自動的に指示されるようにしてもよい。
【0075】
ステップS210において、制御装置303は、医療・介護従事者によって上述した計画情報または記録情報の入力が行われたか否かを判断する。ステップS210で否定判断した場合には、後述するステップS230へ進む。これに対して、ステップS210で肯定判断した場合には、ステップS220へ進む。
【0076】
ステップS220では、制御装置303は、医療・介護従事者によって入力された情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS230へ進む。
【0077】
ステップS230では、制御装置303は、サーバー400から上述したリアルタイムアラート情報を受信したか否かを判断する。ステップS230で否定判断した場合には、後述するステップS250へ進む。これに対して、ステップS230で肯定判断した場合には、ステップS240へ進む。
【0078】
ステップS240では、制御装置303は、受信したリアルタイムアラート情報の内容をタッチパネル301に表示する。その後、ステップS250へ進む。
【0079】
ステップS250では、制御装置303は、医療・介護従事者によって上述したイベント情報が入力されたか否かを判断する。ステップS250で否定判断した場合には、後述するステップS270へ進む。これに対して、ステップS250で肯定判断した場合には、ステップS260へ進む。
【0080】
ステップS260では、医療・介護従事者によって入力されたイベント情報をサーバー400へ送信する。その後、ステップS270へ進む。
【0081】
ステップS270では、制御装置303は、サーバー400から上述した計画改訂アラートアラート情報を受信したか否かを判断する。ステップS270で否定判断した場合には、後述するステップS290へ進む。これに対して、ステップS270で肯定判断した場合には、ステップS280へ進む。
【0082】
ステップS280では、制御装置303は、受信した計画改訂アラート情報の内容をタッチパネル301に表示する。その後、ステップS290へ進む。
【0083】
ステップS290では、制御装置303は、介護・看護・電子カルテアプリの終了が指示されたか否かを判断する。なお、介護・看護・電子カルテアプリの終了は、操作者によって指示されてもよく、端末の電源がオフされると自動的に指示されるようにしてもよい。ステップS290で否定判断した場合には、ステップS210へ戻る。これに対して、ステップS290で肯定判断した場合には、処理を終了する。
【0084】
図10は、本実施の形態におけるサーバー400で実行される予測処理の流れを示すフローチャートである。図10に示す処理は、上述した対象者のモニタリングを開始するタイミングで起動するプログラムとして、制御装置402によって実行される。なお、図10に示す処理では、上述した対象者の基礎情報、健康情報、活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、記録情報、およびイベント情報は、あらかじめ記憶媒体403に記録されているものとする。
【0085】
ステップS310において、制御装置402は、上述した予測処理を実行することによって、あらかじめ用意されている学習モデルを利用して、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測する。その後、ステップS320へ進む。
【0086】
ステップS320では、制御装置402は、学習モデルを用いた予測処理の結果、対象者に疾患の発症が予測されたり、イベントの発生が予測されたりしたか否かを判断する。ステップS320で否定判断した場合には、処理を終了する。これに対して、ステップS320で肯定判断した場合には、ステップS330へ進む。
【0087】
ステップS330では、制御装置402は、上述したように、リアルタイムアラートの内容を示すリアルタイムアラート情報を家族用端末200と医療・介護従事者用端末300へ送信する。その後、処理を終了する。
【0088】
図11は、本実施の形態におけるサーバー400で実行される学習モデル更新処理の流れを示すフローチャートである。図11に示す処理は、上述したように学習モデルの更新条件を満たしたときに起動するプログラムとして、制御装置402によって実行される。なお、図11に示す処理では、上述した対象者の基礎情報、健康情報、活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、記録情報、およびイベント情報は、あらかじめサーバー400の記憶媒体403に記録されているものとする。
【0089】
ステップS410において、制御装置402は、上述したように、対象者用端末100、家族用端末200、または医療・介護従事者用端末300から受信して記憶媒体403に記録されているイベント情報を用いて学習モデルを更新する。その後、ステップS420へ進む。
【0090】
ステップS420では、制御装置402は、更新後の学習モデルに基づいて、上述した予測処理と同様に、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測するための処理を実行する。その後、ステップS430へ進む。
【0091】
ステップS430では、制御装置402は、更新後の学習モデルを用いた予測処理の結果、対象者に疾患の発症が予測されたり、イベントの発生が予測されたりしたか否かを判断する。ステップS430で否定判断した場合には、処理を終了する。これに対して、ステップS430で肯定判断した場合には、ステップS440へ進む。
【0092】
ステップS440では、制御装置402は、上述したように、対象者に対する今後の計画の見直しを促すための計画改訂アラートの内容を示す計画改訂アラート情報を医療・介護従事者用端末300へ送信する。その後、処理を終了する。
【0093】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)制御装置402は、要介護者または患者である対象者が発症する可能性がある疾患や対象者に発生する可能性があるイベントを予測するように機械学習された学習モデルを利用して、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測し、予測結果を対象者の家族と対象者の医療・介護従事者に通知するようにした。これによって、対象者が将来発症する可能性がある疾患や対象者に将来発生する可能性があるイベントを予測して、その予測結果を対象者の家族と対象者の医療・介護従事者に通知することができる。
【0094】
(2)制御装置402は、対象者に発生したイベントに関する情報に基づいて、学習モデルを更新するようにした。これによって、学習モデルの精度を向上させることができる。
【0095】
(3)制御装置402は、更新後の学習モデルを利用して、対象者の医療・介護従事者に、対象者のケアプラン、対象者の看護計画、対象者の療養計画、または対象者の診療計画の見直しを促すための計画改訂アラートを通知するようにした。これによって、医療・介護従事者は、通知された計画改訂アラートの内容に基づいて、対象者のケアプラン、看護計画、療養計画、または診療計画の見直しを行うことができる。
【0096】
(4)イベントは、対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送を含むようにした。これによって、対象者の転倒、重症化、死亡、発症、入院、または救急搬送といった、医療や介護にとって重要な要素をイベントとして考慮することができる。
【0097】
(5)学習モデルは、対象者の活動内容を示す活動情報、対象者のバイタル情報やセンシング情報の少なくとも1つを含むバイタル・センシング情報、対象者の介護計画や看護計画や療養計画や診療計画の少なくとも1つの情報を含む計画情報、および対象者の介護記録や看護記録や電子カルテや申し送りの少なくとも1つの情報を含む記録情報に基づいて対象者が発症する疾患や対象者に発生するイベントを予測するように機械学習されたものを用いるようにした。これによって、医療や介護にとって重要と考えられる対象者の活動情報、バイタル・センシング情報、計画情報、および記録情報に基づいて、対象者が発症する疾患や対象者に発生するイベントを予測することができる。
【0098】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の予測システムは、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、対象者のバイタルデータやセンシングデータは、対象者用端末100からサーバー400へ送信される例について説明した。しかしながら、対象者のバイタルデータやセンシングデータを検出するために用いるウェアラブル端末や医療機器などの装置が通信機能を備えている場合には、該対象者のバイタルデータやセンシングデータを検出するために用いる装置から直接サーバー400へバイタルデータやセンシングデータを送信するようにしてもよい。
【0099】
(2)上述した実施の形態では、対象者用端末100の制御装置103は、対象者に学習モデルの更新に利用されるイベントが発生したことを検出した場合には、その検出したイベントの内容を示すイベント情報をサーバー400へ送信する例について説明した。しかしながら、対象者のイベント発生を検出するために用いるウェアラブル端末や医療機器やセンシング機器などの装置が通信機能を備えている場合には、該対象者のイベント発生を検出するために用いる装置から直接サーバー400へイベント情報を送信するようにしてもよい。
【0100】
(3)上述した実施の形態では、制御装置402は、リアルタイムアラートの内容を示すリアルタイムアラート情報を家族用端末200と医療・介護従事者用端末300へ送信する例について説明した。しかしながら、制御装置402は、リアルタイムアラート情報を家族用端末200と医療・介護従事者用端末300のいずれか一方に送信するようにしてもよい。このとき、リアルタイムアラート情報を家族用端末200と医療・介護従事者用端末300のどちらに送信するかはあらかじめ設定できるようにしてもよい。あるいは、リアルタイムアラート情報を対象者用端末100、家族用端末200、および医療・介護従事者用端末300の少なくとも一つに送信するようにしてもよい。
【0101】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10 予測システム
100 対象者用端末
101 タッチパネル
102 通信モジュール
103 制御装置
200 家族用端末
201 タッチパネル
202 通信モジュール
203 制御装置
300 医療・介護従事者用端末
301 タッチパネル
302 通信モジュール
303 制御装置
400 サーバー
401 接続インターフェース
402 制御装置
403 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11