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特許7295519電力変換装置の劣化推定装置および劣化推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】電力変換装置の劣化推定装置および劣化推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230614BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20230614BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022512613
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013799
(87)【国際公開番号】W WO2021201090
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020067565
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502435889
【氏名又は名称】学校法人長崎総合科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 不二雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 利孝
(72)【発明者】
【氏名】白石 創
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-148192(JP,A)
【文献】特開2004-317277(JP,A)
【文献】特開2003-70231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置における電力変換用のスイッチング素子の特性の変化量を、前記電力変換装置の出力電圧の目標となる電圧指令と、前記電力変換装置の出力電圧値とから算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された特性の変化量が、初期状態から閾値以上に変化したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が閾値以上と判定したときに警告を報知する報知手段とを備え、
前記演算手段は、前記スイッチング素子による上アームと下アームとから形成された前記電力変換装置からの出力電流により電流の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの切り替え信号により前記特性の変化量を切り替える切替手段とを備え、
前記判定手段は、前記切替手段により切り替えられた特性の変化量をそれぞれ判定するために、一対設けられた電力変換装置の劣化推定装置
【請求項2】
前記判定手段は、前記電力変換装置の出力電圧値に対応する特性の変化量を記憶して初期状態とし、この初期状態に基づいて前記閾値を決定する請求項1記載の電力変換装置の劣化推定装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記電圧指令と、前記出力電圧値との差分を算出する減算手段と、前記減算手段により算出された差分を積分した差分積分値を前記判定手段に出力する積分手段とを備えた請求項1または2記載の電力変換装置の劣化推定装置。
【請求項4】
前記積分手段は、所定区間における定積分による積分値を前記差分積分値として出力する請求項3記載の電力変換装置の劣化推定装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記電力変換装置への入力電圧値の平均値をキャリア信号と同期した時間間隔ごとに算出する第1平均化手段と、前記第1平均化手段からの入力電圧値の平均値と変調率とを乗算して前記電圧指令を算出して前記減算手段へ出力する乗算手段と、前記電力変換装置の出力電圧値の平均値をキャリア信号と同期した時間間隔ごとに算出して前記減算手段へ出力する第2平均化手段とを備えた請求項3または4記載の電力変換装置の劣化推定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
電力変換装置における電力変換用のスイッチング素子の特性の変化量を、前記スイッチング素子の出力電圧の目標となる電圧指令と、前記電力変換装置の出力電圧値とから算出する演算手段、
前記演算手段により算出された特性の変化量が、初期状態から閾値以上に変化したか否かを判定する判定手段、
前記判定手段が閾値以上と判定したときに警告を報知する報知手段として機能させ、
前記演算手段は、前記スイッチング素子による上アームと下アームとから形成された前記電力変換装置からの出力電流により電流の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの切り替え信号により前記特性の変化量を切り替える切替手段とを備え、
前記判定手段は、前記切替手段により切り替えられた特性の変化量をそれぞれ判定するために、一対設けられた電力変換装置の劣化推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータやコンバータなどの電力変換装置にて使用されるスイッチング素子の劣化を推定する劣化推定装置および劣化推定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータドライブ用インバータや電力送電用変換器などの電力変換装置では、電力変換用のスイッチング素子のスイッチング幅を制御することで電力が制御される。スイッチング素子は、電力変換装置にとっては基幹部品であり、このスイッチング素子が故障すると、電力変換装置から電力を得る装置が停止する、あるいはシステム全体が停止するなど、大きな影響を与える。
【0003】
故障を未然に防ぐためには、年数が経過した装置の電力変換用半導体スイッチング素子を新品に交換する等の処置が施されることもあるが、メンテンナンス費用が嵩張るだけでなく、メンテナンス要員の人手不足といった問題がある。従って、電力変換用半導体スイッチング素子が故障する前に、未然に故障の兆候を検出して、アラームを発報する手段を設けることが、所望されている。
【0004】
未然に故障の兆候を検出する技術に関して、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の電力変換装置は、電力変換用半導体スイッチング素子のゲート漏れ電流を検出する漏れ電流検出手段と、装置の使用開始時の漏れ電流を基準にして、その大きさが一定値以上変化したとき、異常の兆候を示す素子異常検出信号を出力する素子異常検出手段とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-70231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電力変換装置は、半導体スイッチング素子のゲートとエミッタとの間の漏れ電流検出手段として、ゲート抵抗と半導体スイッチング素子のゲートの相互接続点と、半導体スイッチング素子のエミッタとの間に印加されるゲート電圧を検出するVGE検出回路を新たに設けている。
電力変換装置では、入力電圧や入力電流、出力電圧や出力電流などを測定するための手段を、変換制御のために備えていても、スイッチング素子の特性を測定しフィードバックするような手段は通常備えていないものである。従って、特許文献1に記載の電力変換装置では、スイッチング素子に新たな特別なセンサを設ける必要がある。
【0007】
ゲートとエミッタ間の漏れ電流を測定するために抵抗を接続して電圧を測定する簡易な方法もあるが、ゲートの制御信号から電流を流すとオン時やオフ時の条件が変わってしまう。そうなると、やはり、クランプ型電流計のような特殊な計測手段を用いるしかない。
【0008】
そこで本発明は、特別なセンサを設けることなく、スイッチング素子の劣化が推定できる電力変換装置の劣化推定装置および劣化推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力変換装置の劣化推定装置は、電力変換装置における電力変換用のスイッチング素子の特性の変化量を、前記電力変換装置の出力電圧の目標となる電圧指令と、前記電力変換装置の出力電圧値とから算出する演算手段と、前記演算手段により算出された特性の変化量が、初期状態から閾値以上に変化したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が閾値以上と判定したときに警告を報知する報知手段とを備え、前記演算手段は、前記スイッチング素子による上アームと下アームとから形成された前記電力変換装置からの出力電流により電流の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの切り替え信号により前記特性の変化量を切り替える切替手段とを備え、前記判定手段は、前記切替手段により切り替えられた特性の変化量をそれぞれ判定するために、一対設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電力変換装置の劣化推定プログラムは、コンピュータを、電力変換装置における電力変換用のスイッチング素子の特性の変化量を、前記電力変換装置の出力電圧の目標となる電圧指令と、前記電力変換装置の出力電圧値とから算出する演算手段、前記演算手段により算出された特性の変化量が、初期状態から閾値以上に変化したか否かを判定する判定手段、前記判定手段が閾値以上と判定したときに警告を報知する報知手段として機能させ、前記演算手段は、前記スイッチング素子による上アームと下アームとから形成された前記電力変換装置からの出力電流により電流の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの切り替え信号により前記特性の変化量を切り替える切替手段とを備え、前記判定手段は、前記切替手段により切り替えられた特性の変化量をそれぞれ判定するために、一対設けられたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、演算手段により、電力変換装置に対する電圧指令と、電力変換装置の出力電圧値とから、スイッチング素子の特性の変化量を算出し、判定手段により特性の変化量の変化が閾値以上か否かを判定することにより、判定手段が閾値以上と判定したときに、報知手段が警告を報知する。電力変換装置に対するに対する電圧指令や、電力変換装置の出力電圧値や出力電流は、インバータが備えた直流電圧測定手段や、出力電圧測定手段、出力電流測定手段から取得することができるため、特別なセンサを設ける必要がない。
更に、極性判定手段が判定した電流の極性により、切替手段が一対の積分手段を切り替えることができるので、上アームおよび下アームのそれぞれの特性の変化量の変化を演算することができる。従って、一対の判定手段により、上アームおよび下アームの故障の兆候を推定することができる。
【0012】
前記判定手段は、前記電力変換装置の出力電流に対応する特性の変化量を記憶して初期状態とし、この初期状態に基づいて前記閾値を決定することができる。そうすることで、出力電流に応じた特性の変化量の閾値を決定することができるため、正確にスイッチング素子の劣化を推定することができる。
【0013】
前記演算手段は、前記電圧指令と、前記出力電圧値との差分を算出する減算手段と、前記減算手段により算出された差分を積分した差分積分値を前記判定手段に出力する積分手段とを備えたものとすることができる。減算手段により算出された電圧指令と出力電圧値との差分を積分手段により積分するため、電圧値の微小な変動等を無視することができ、差分が蓄積するため劣化の兆候を大きくすることができる。
【0014】
前記積分手段は、所定区間における定積分の積分値を前記差分積分値として出力するものとすることができる。差分積分値を区間における定積分により算出することにより、発散する積分値を抑制することができる。
【0015】
前記演算手段は、前記電力変換装置への入力電圧値の平均値をキャリア信号と同期した時間間隔ごとに算出する第1平均化手段と、前記第1平均化手段からの入力電圧値の平均値と変調率とを乗算して前記電圧指令を算出して前記減算手段へ出力する乗算手段と、前記電力変換装置の出力電圧値の平均値をキャリア信号と同期した時間間隔ごとに算出して前記減算手段へ出力する第2平均化手段とを備えたものとすることができる。第1平均化手段により入力電圧値を平均化し、第2平均化手段により出力電圧値を平均化することにより、メンテナンス時などに作業者が波形を観察することで、電力変換装置の動作状態を把握することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特別なセンサを設けることなく、スイッチング素子の劣化が推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電力変換装置の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置を示す図である。
図3】(a)は出力電流の極性が正のときの、乗算手段からのU相電圧指令の平均値と、第2平均化手段からの出力電圧値を平均値とを示す波形の一例を示す図、(b)は出力電流の極性が負のときの、乗算手段からのU相電圧指令の平均値と、第2平均化手段からの出力電圧値を平均値とを示す波形の一例を示す図である。
図4】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの積分値の波形の一例を示す図であり、(a)は上アームおよび下アームの遅延が初期状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態であり、出力電流の極性が負であるときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図5】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの積分値の波形の一例を示す図であり、(a)は上アームのオフ遅延が増大し、下アームの遅延が初期状態のままの状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態のときの出力電流の極性が負であるときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図6】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの積分値の波形の一例を示す図であり、(a)は上アームの遅延が初期状態のままで、下アームのオフ遅延が増大した状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態のときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図7】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの差分積分値を区間積分したときの波形の一例を示す図であり、(a)は上アームおよび下アームの遅延が初期状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態であり、出力電流の極性が負であるときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図8】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの差分積分値を区間積分したときの波形の一例を示す図であり、(a)は上アームのオフ遅延が増大し、下アームの遅延が初期状態のままの状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態であり、出力電流の極性が負であるときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図9】三相交流電動機をインバータにより駆動するときの、積分手段からの差分積分値を区間積分したときの波形の一例を示す図であり、(a)は上アームの遅延が初期状態のままで、下アームのオフ遅延が増大した状態であり、出力電流の極性が正であるときの一方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図、(b)は(a)の遅延状態であり、出力電流の極性が負であるときの他方の積分手段からの出力の波形の一例を示す図である。
図10】電力変換装置の出力電圧を相電圧から線間電圧としたことを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の劣化推定装置を図面に基づいて説明する。
本実施の形態1では、電力変換装置が、図1に示すように、インバータ10である。まず、このインバータ10の構成について説明する。
本実施の形態1に係るインバータ10は、直流から三相交流を出力するものである。図1に示すように、インバータ10には、三相交流電動機Mが接続されている。
インバータ10は、第1アーム11から第3アーム13を有しており、上アーム111,121,131と下アーム112,122,132とが、それぞれ直列に接続されている。
【0019】
上アーム111~131は、正側電源線Pに第1配線141a~141cにより接続されている。下アーム112~132は、負側電源線Nに第2配線142a~142cにより接続されている。上アーム111~131と下アーム112~132との間は、第3配線143a~143cにより接続されている。
【0020】
上アーム111~131と、下アーム112~132とは、スイッチング素子と還流ダイオードとにより構成されている。スイッチング素子は、半導体デバイスにより形成されている。例えば、スイッチング素子は、バイポーラトランジスタ、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが使用できる。本実施の形態1では、スイッチング素子として、大電流が流せ、スイッチング速度が早い、IGBTを使用している。
【0021】
インバータ10は、この上アーム111~131および下アーム112~132のスイッチングをPWM(Pulse Width Modulation)により制御する制御手段を備えている。
制御手段は、U相からW相について目標電圧としての電圧指令を出力する電圧指令手段15と、電圧指令手段15からの電圧指令と入力電圧値信号が示す入力電圧値とから変調率信号を出力する変調率演算手段16と、キャリア信号を出力する発振手段17と、変調率信号と三角波信号と比較してスイッチング信号(ゲート信号)を出力する比較手段18と、上アーム111~131へのスイッチング信号を下アーム112~132のために反転する反転手段19とを備えている。
【0022】
電圧指令手段15は、U相用のU相電圧指令手段151と、V相用のV相電圧指令手段152と、W相用のW相電圧指令手段153とを備えている。
U相電圧指令手段151と、V相電圧指令手段152と、W相電圧指令手段153とからは、U相電圧指令、V相電圧指令およびW相電圧指令が出力される。
【0023】
変調率演算手段16は、電圧指令手段15からの電圧指令を、後述する直流電圧測定手段により測定された入力電圧値信号が示す入力電圧値で除算して変調率を出力する除算器である。変調率は、-1.0~1.0とすることができる。
変調率演算手段16は、U相用のU相変調率演算手段161と、V相用のV相変調率演算手段162と、W相用のW相変調率演算手段163とを備えている。
U相変調率演算手段161と、V相変調率演算手段162と、W相変調率演算手段163からは、電圧指令(U相電圧指令,V相電圧指令,W相電圧指令)が比較手段18に出力されると共に、変調率がU相変調率信号、V相変調率信号およびW相変調率信号により出力される。
【0024】
発振手段17は、キャリア信号として三角波信号を出力する。
比較手段18は、U相用のU相比較手段181と、V相用のV相比較手段182と、W相用のW相比較手段183とを備えている。
反転手段19は、U相用のU相反転手段191と、V相用のV相反転手段192と、W相用のW相反転手段193とを備えている。
【0025】
また、インバータ10は、入力電圧値を測定する直流電圧測定手段21と、出力電圧(U相電圧、V相電圧,W相電圧)の基準電位を、正側電源線Pと負側電源線Nとの間に直列差接続された抵抗22aと抵抗22bとの接続点から取るための分圧器22と、インバータ10の出力電圧を測定する出力電圧測定手段23と、インバータ10の出力電流を測定する出力電流測定手段24とを備えている。
【0026】
図1に示す直流電圧測定手段21は、入力電圧の電圧値を入力電圧値信号として出力する。
分圧器22における抵抗22aと抵抗22bとは、入力電圧の中位電圧を基準電位とするために同じ抵抗値としている。
出力電圧測定手段23は、各相の出力電圧を測定する。出力電圧測定手段23は、U相用のU相出力電圧測定手段231と、V相用のV相出力電圧測定手段232と、W相用のW相出力電圧測定手段233とを備えている。
U相出力電圧測定手段231と、V相出力電圧測定手段232と、W相出力電圧測定手段233とからは、出力電圧値が、U相出力電圧値信号、V相出力電圧値信号およびW相出力電圧値信号により出力される。
【0027】
出力電流測定手段24は、各相の出力電流を測定する。出力電流測定手段24は、各種の電流センサが使用できる。例えば、出力電流測定手段24は、CT方式やホール素子方式、ロゴスキーコイル方式など各種の方式のものが使用できる。出力電流測定手段24は、U相用のU相出力電流測定手段241と、V相用のV相出力電流測定手段242と、W相用のW相出力電流測定手段243とを備えている。U相出力電流測定手段241と、V相出力電流測定手段242と、W相出力電流測定手段243とからは、出力電流値が、U相出力電流信号、V相出力電流信号およびW相出力電流信号により出力される。
【0028】
次に、このインバータ10におけるスイッチング素子であるIGBT(第1アーム11から第3アーム13の上アーム111~131および下アーム112~132)の劣化を推定する劣化推定装置の構成について、図面に基づいて説明する。
【0029】
図2に示す劣化推定装置30は、コンピュータに劣化推定プログラムを動作させたものである。
【0030】
また、劣化推定装置30は、演算手段31と、判定手段32と、報知手段33とを備えている。
演算手段31は、スイッチング素子の特性の変化量の一例である遅延を、図1に示すインバータ10の出力電圧の目標となる電圧指令と、インバータ10からの出力電圧値とから算出するものである。
演算手段31は、U相用のU相演算手段311と、V相用のV相演算手段312と、W相用のW相演算手段313とを備えている。U相演算手段311と、V相演算手段312と、W相演算手段313とは同じ構成である。
【0031】
それぞれの演算手段31は、第1平均化手段31aと、第2平均化手段31bと、乗算手段31cと、減算手段31dと、積分手段31eと、極性判定手段31fと、切り替える切替手段31gとを備えている。
第1平均化手段31aは、三角波信号(キャリア信号)と同期した時間間隔ごとの第1アーム11から第3アーム13のオン時およびオフ時の入力電圧値を平均化する。
【0032】
第2平均化手段31bは、三角波信号(キャリア信号)と同期した時間間隔ごとの第1アーム11から第3アーム13のオン時およびオフ時の出力電圧値信号(U相出力電圧値信号,V相出力電圧値信号,W相出力電圧値信号)が示す電圧値を平均化する。
乗算手段31cは、第1平均化手段31aからの電圧値と、電圧指令手段15(U相電圧指令手段151,V相電圧指令手段152,W相電圧指令手段153)からの変調率信号(U相変調率信号,V相変調率信号,W相変調率信号)とを乗算する。
【0033】
減算手段31dは、乗算手段31cからの電圧値から、第2平均化手段31bからの電圧値を減算する。
積分手段31eは、減算手段31dからの電圧値を積分した差分積分値を出力するものであり、一対設けられている。
【0034】
極性判定手段31fは、各相の出力電流測定手段24(図1参照)からの出力電流信号が示す出力電流により電流の極性を判定する。
切替手段31gは、極性判定手段31fからの切り替え信号により減算手段31dからの信号を一方の積分手段31eと他方の積分手段31eとのいずれかに切り替える。
【0035】
判定手段32は、演算手段31からの電圧値が、初期状態から閾値以上に変化したことを検出することにより、スイッチング素子である第1アーム11~第3アーム13における上アーム111~131と下アーム112~132との遅延異常を検出する。閾値は、スイッチング素子の個々の特性や個体差、負荷に応じた任意の値とすることができる。
判定手段32は、U相用のU相判定手段321と、V相用のV相判定手段322と、W相用のW相判定手段323とを備えている。
U相用のU相判定手段321と、V相用のV相判定手段322と、W相用のW相判定手段323とは、一方の積分手段31eと他方の積分手段31eとからのそれぞれの差分積分値を判定するために、各相ごとに一対設けられている。
報知手段33は、判定手段32からの異常の検出を、使用者や作業者、メンテナンス担当に通知する。
【0036】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置30の動作について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態1における説明については、U相を代表して説明する。
【0037】
[インバータ10の動作の説明]
まず、図1に示すインバータ10の動作について説明する。
U相電圧指令手段151から電圧指令信号が出力される。この電圧指令信号により指定された電圧指令に基づいて、U相変調率演算手段161が変調率を示すU相変調率信号を出力する。
【0038】
発振手段17からの三角波信号による電圧と、U相電圧指令手段151(U相変調率演算手段161)からのU相電圧指令とをU相比較手段181により比較して、U相電圧指令が三角波信号より高い期間、第1アーム11の上アーム111をオンとするための上アーム用PWM信号を出力する。また、U相反転手段191により、U相指令電圧が三角波信号より低い期間、第1アーム11の下アーム112をオンとするための下アーム用PWM信号を出力する。これを繰り返すことにより、三相交流電動機Mは、U相出力として交流を得ることができる。
【0039】
[劣化推定装置30の動作の説明]
IGBT(スイッチング素子)の故障の事前兆候としては、インバータ10の出力電圧が、その電圧指令に対して追従しなくなる(誤差が通常よりも大きくなる)ことが予測される。
そこで、劣化推定装置30は、まず、図2に示すように、第1平均化手段31aにより、発振手段17からの三角波信号の半周期における直流電圧測定手段21(図1参照)からの入力電圧値信号が示す入力電圧値を平均化する。そして、乗算手段31cにより、第1平均化手段31aからの入力電圧値の平均値と、U相電圧指令手段151からのU相変調率信号が示す変調率とを乗算する。この乗算手段31cによる乗算によりU相電圧指令の平均値が算出される。
【0040】
また、第2平均化手段31bにより、発振手段17からの三角波信号に基づいて、三角波信号の半周期におけるU相出力電圧測定手段231(図1参照)からのU相出力電圧値信号が示す出力電圧値を平均化する。
本実施の形態1では、第1平均化手段31aおよび第2平均化手段31bは、三角波信号の半周期としているが、三角波信号と同期したタイミングとすればよいため、1周期としてもよい。
【0041】
図3(a)に、乗算手段31cからのU相電圧指令の平均値と、第2平均化手段31bからの出力電圧値を平均値とを示す。このように、U相電圧指令を平均化したり、出力電圧値を平均化したりすることで、電圧指令と出力電圧値との各波形を視覚的に把握しやすくすることができる。
【0042】
次に、減算手段31dにより、乗算手段31cからのU相電圧指令の平均値から、第2平均化手段31bからのU相出力電圧値の平均値を減算して差分を算出することで、スイッチング素子である第1アーム11の上アーム111の遅延を算出する。
そして、極性判定手段31fが、U相出力電流信号が示す出力電流により電流の極性を判定して、切り替え信号により切替手段31gを切り替える。
この切り替え信号により、出力電流の極性が正のときには、一方の積分手段31e(図2においては上側の積分手段31e)により減算手段31dからの差分が積分される。また、出力電流の極性が負のときには、他方の積分手段31e(図2においては下側の積分手段31e)により減算手段31dからの差分が積分される。
【0043】
ここで、図3(a)に、出力電流の極性が正のときの、乗算手段31cからのU相電圧指令の平均値と、第2平均化手段31bからの出力電圧値の平均値とを示す。
また、図3(b)に、出力電流の極性が負のときの、乗算手段31cからのU相電圧指令の平均値と、第2平均化手段31bからの出力電圧値の平均値とを示す。
【0044】
そして、上アーム111および下アーム112のオフ遅延が初期状態(4μs)であるときの一方の積分手段31e(図2においては上側の積分手段31e参照)からの出力(特性の変化量)を図4(a)に示す。
更に、図4(a)における遅延状態と同じ遅延であるときの他方の積分手段31e(図2においては下側の積分手段31e参照)からの出力を図4(b)に示す。
図4(a)および同図(b)に示す波形は、三相交流電動機M(図1参照)が一定回転数、一定負荷の状態であり、時刻10秒から、積分手段31e,31eにて積分を開始したものである。
図4(a)および同図(b)からも判るように積分手段31e,31eからの出力は、所定の傾きで上昇または下降している。
【0045】
例えば、図1に示す上アーム111~131と、下アーム112~132との両方が劣化して特性が変化してオフ遅延が増加すれば、図4(a)および同図(b)に示す両方の波形の傾きが緩やかになる。このとき、切替手段31gが無く、1つの積分手段31eで減算手段31dからの差分を積分すると、正値と負値の加算となり、相殺されるため、異常の兆候が検出できない。
【0046】
しかし、劣化推定装置30では、第1アーム11~第3アーム13から出力される電流の向きに基づいて、上アーム111~131または下アーム112~132のどちらかが劣化したかを判定するようにしている。
【0047】
例えば、上アーム111の特性の変化として、オフとなるときの遅延が、4μsから8μsに増大したとする。なお、下アーム112のオフ遅延は初期状態(4μsの遅延)のままである。
このときの一方の積分手段31eからの出力を図5(a)に示す。また、他方の積分手段31eからの出力を図5(b)に示す。
この図5(a)および同図(b)に示す波形においても、図4と同様に、三相交流電動機M(図1参照)が一定回転数、一定負荷の状態であり、時刻10秒から、積分手段31e,31eにて積分を開始したものである。
【0048】
図5(b)では、図4(b)から変化無いが、図5(a)では、オフ遅延が初期状態から傾きが緩やかになっていることが判る。
従って、特性の変化量が、初期状態からの差が大きくなり、初期状態からの変化が閾値以上になったことを、一方のU相判定手段321が検出することで、上アーム111が劣化したと推定できる。そして、一方のU相判定手段321が、U相第1アラーム信号を報知手段33に通知することができる。
【0049】
次に、例えば、上アーム111のオフ遅延は初期状態(4μsの遅延)のままであるが、下アーム112がオフとなるときの遅延が、4μsから8μsに増大したとする。このときの一方の積分手段31eからの出力を図6(a)に示す。また、他方の積分手段31eからの出力を図6(b)に示す。
この図6(a)および同図(b)に示す波形においても、図4と同様に、三相交流電動機M(図1参照)が一定回転数、一定負荷の状態であり、時刻10秒から、積分手段31e,31eにて積分を開始したものである。
【0050】
図6(a)では、図4(a)から変化が無いが、図6(b)では、遅延が初期状態から傾きが緩やかになっていることが判る。
従って、初期状態からの差が大きくなり、初期状態からの変化が閾値以上になったことを、他方のU相判定手段321が検出することで、下アーム112が劣化したと推定できる。そして、他方のU相判定手段321が、U相第2アラーム信号を報知手段33に通知することができる。
【0051】
更に、上アーム111と下アーム112との両方のオフ遅延が、4μsから8μsに増大した場合には、電流が正値となる上アーム111の出力電圧が、図5(a)が示す波形となり、電流が負値となる下アーム112の出力電圧が、図6(b)が示す波形となる。
従って、正常な状態を示す図5(b)および図6(a)が示す波形より、変化していることが判るため、この変化が閾値以上になったことを検出することで、上アーム111および下アーム112の両方が劣化したと推定できるU相第1アラーム信号を報知手段33に通知することができる。
【0052】
また、図2に示す積分手段31e,31eにより、減算手段31dからのオン遅延およびオフ遅延(差分)を積分することで、電圧値の微小な変動等を無視することができ、差分が蓄積するため劣化の兆候を大きくすることができる。
【0053】
そして、報知手段33が異常を通知することにより、使用者や管理者、メンテナンス担当などに、インバータ10(図1参照)が故障する可能性があることを通知することができる。この通知は、ランプなどによる光、スピーカーにより音、インターネットによる電子メールなど、様々な方法で行うことが可能である。
【0054】
以上のように本実施の形態1に係る劣化推定装置30によれば、演算手段31により、インバータ10の出力電圧の目標となるに対する電圧指令と、インバータ10からの出力電圧値とから、IGBTの特性の変化量を算出し、判定手段32により特性の変化量の変化が閾値以上か否かを判定することにより、判定手段32が閾値以上と判定したときに、報知手段33が警告を報知することができる。
【0055】
インバータ10に対する電圧指令や、インバータ10の出力電圧値や出力電流は、インバータ10が備えた直流電圧測定手段21や、出力電圧測定手段23、出力電流測定手段24から取得することができるため、劣化推定装置30は、特別なセンサを設けることなく、スイッチング素子であるIGBTの劣化が推定できる。
【0056】
また、出力電流の極性が正のときと負のときとで、積分手段31eを切り替え、それぞれ判定することにより、上アーム111または下アーム112のいずれか、または両方が劣化しても検出することができる。
更に、U相用、V相用およびW相用としてそれぞれ、演算手段31,判定手段32が設けられているため、各相ごとの劣化を検出することができる。
【0057】
上記説明では、電力変換装置の一例であるインバータ10への電圧指令と、インバータ10からの出力電圧値との減算による特性の変化量を検出することについて、オフ遅延の増加を例に説明したが、スイッチング素子の特性の変化としては、オン遅延、オフ遅延、オン電圧、オン抵抗、dv/dt(電圧変化率)等を検出することが可能である。
【0058】
本実施の形態1では、演算手段31にて、第1平均化手段31aにより入力電圧値信号が示す入力電圧値を平均化しており、また、第2平均化手段31bにより出力電圧値を平均化している。そうすることで、図3(a)および同図(b)に示す波形を得ることができるため、メンテナンス時などに作業者が波形を観察することで、インバータ10の動作状態を容易に把握することができる。
しかし、図3(a)および同図(b)に示す波形を得る必要がなければ、減算手段31dの後段にて差分を積分手段31eにて積分を取るため、第1平均化手段31aおよび第2平均化手段31bは省略することができる。
【0059】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る劣化推定装置を説明する。
図2に示す一対の積分手段31eでは、差分を積分していくため、時間の経過とともに、差分積分値は大きく発散する。
そこで、積分手段31eでの積分において、所定区間における定積分(区間積分)を行って差分積分値とする。以下、これを区間積分と称す。
【0060】
この区間積分は、例えば、区間を5秒としたときには、次の式(1)により求めることができる。
但し、Tは任意の時間、e(t)は積分手段31eからの積分値である。
【0061】
図1に示す三相交流電動機Mをインバータ10により駆動するときに、所定区間を、例えば、5秒として積分手段31eからの差分積分値を算出したときの波形を図7から図9に示す。
【0062】
図7(a)および同図(b)に示す波形は、上アーム111のオフ遅延と、下アーム112のオフ遅延とが初期状態(4μs)とした波形を示す図4に対応したもので、差分の積分の代わりに区間積分に置き換えた場合を示す。
また、図8(a)および同図(b)に示す波形は、上アーム111のオフ遅延が4μsから8μsに増大し、下アーム112のオフ遅延が初期状態(4μs)としたときの波形を示す図5(a)および同図(b)に対応したもので、差分の積分の代わりに区間積分に置き換えた場合を示す。
更に、図9(a)および同図(b)に示す波形は、上アーム111のオフ遅延が初期状態(4μs)とし、下アーム112のオフ遅延が4μsから8μsに増大したときの波形を示す図6(a)および同図(b)に対応したもので、差分の積分の代わりに区間積分に置き換えた場合を示す。
本実施の形態2では、5秒区間の積分なので、図7図9に示すように、積分開始(時刻10秒)から5秒後には一定の値となる。
【0063】
図8から図9のいずれの場合でも、図4から図6に示す波形と同様に、遅延が増大すると波形の傾きが緩やかになるため、初期状態からの変化が閾値以上になったことを検出することで、スイッチング素子の遅延特性の劣化を検出することができる。
また、図8から図9に示すように、積分手段31eが差分積分値を区間積分することにより、発散する積分値を抑制することができる。
【0064】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る劣化推定装置を説明する。
図1に示すインバータ10における第1アーム11~第3アーム13を構成するIGBTの遅延は、図2に示す一対の積分手段31eからの差分積分値により算出される。しかし、この差分積分値は、負荷電流によって影響を受ける。例えば、無負荷時と、出力電流として所定電流が流れている状態とでは、第1アーム11~第3アーム13を構成するIGBTの遅延が異なる。
【0065】
そこで、判定手段32では、各相の第1アーム11~第3アーム13からの出力電圧を入力し、出力電圧に対応する遅延を示す差分積分値を記憶して初期状態とし、この初期状態に基づいて閾値を決定する。そうすることで、負荷電流(出力電流)に応じた特性の変化量における閾値を決定することができるため、正確にスイッチング素子(IGBT)の劣化を推定することができる。
【0066】
なお、本実施の形態1~4では、図1に示すように、上アーム111~131および下アーム112~132による2レベルのインバータ10を例に説明したが、本発明の劣化推定装置は3レベルのインバータでも適用することができる。
【0067】
また、実施の形態では、図1に示すように、U相用のU相出力電圧測定手段231と、V相用のV相出力電圧測定手段232と、W相用のW相出力電圧測定手段233とによる出力電圧測定手段23が、各相の出力電圧を測定して、U相出力電圧値信号、V相出力電圧値信号およびW相出力電圧値信号として出力している。
しかし、出力電圧は、相電圧とするだけでなく、線間電圧としてもよい。
例えば、図2に示すU相演算手段311への出力電圧を出力するものとして、U相出力電圧値信号の代わりに、図10に示すようにU-V間出力電圧測定手段251からのU-V間出力電圧値信号とすることができる。この場合、U相演算手段311のU相変調率信号の代わりとして、”U相変調率信号-V相変調率信号”の信号を用いる。
また、図2に示すV相演算手段312への出力電圧を出力するものとして、V相出力電圧値信号の代わりに、図10に示すようにV-W間出力電圧測定手段252からのV-W間出力電圧値信号とすることができる。この場合、V相演算手段312のV相変調率信号の代わりとして、”V相変調率信号-W相変調率信号”の信号を用いる。
更に、図2に示すW相演算手段313への出力電圧を出力するものとして、W相出力電圧値信号の代わりに、図10に示すようにW-U間出力電圧測定手段253からのW-U間出力電圧値信号とすることができる。この場合、W相演算手段313のW相変調率信号の代わりとして、”W相変調率信号-U相変調率信号”の信号を用いる。
このような線間電圧を測定する出力電圧測定手段25(U-V間出力電圧測定手段251,V-W間出力電圧測定手段252,W-U間出力電圧測定手段253)としても、出力電圧を測定して、演算手段31により、スイッチング素子の特性の変化量の一例である遅延を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電力変換装置の劣化が推定できるため、簡易な電源から基幹システムに電力を供給する電源などに好適である。
【符号の説明】
【0069】
10 インバータ
11 第1アーム
12 第2アーム
13 第3アーム
111,121,131 上アーム
112,122,132 下アーム
141a~141c 第1配線
142a~142c 第2配線
143a~143c 第3配線
15 電圧指令手段
151 U相電圧指令手段
152 V相電圧指令手段
153 W相電圧指令手段
16 変調率演算手段
161 U相変調率演算手段
162 V相変調率演算手段
163 W相変調率演算手段
17 発振手段
18 比較手段
181 U相比較手段
182 V相比較手段
183 W相比較手段
19 反転手段
191 U相反転手段
192 V相反転手段
193 W相反転手段
21 直流電圧測定手段
22 分圧器
22a,22b 抵抗
23 出力電圧測定手段
231 U相出力電圧測定手段
232 V相出力電圧測定手段
233 W相出力電圧測定手段
24 出力電流測定手段
241 U相出力電流測定手段
242 V相出力電流測定手段
243 W相出力電流測定手段
25 出力電圧測定手段
251 U-V間出力電圧測定手段
252 V-W間出力電圧測定手段
253 W-U間出力電圧測定手段
30 劣化推定装置
31 演算手段
311 U相演算手段
312 V相演算手段
313 W相演算手段
31a 第1平均化手段
31b 第2平均化手段
31c 乗算手段
31d 減算手段
31e 積分手段
31f 極性判定手段
31g 切替手段
32 判定手段
321 U相判定手段
322 V相判定手段
323 W相判定手段
33 報知手段
P 正側電源線
N 負側電源線
M 三相交流電動機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10