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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】血管位置表示装置及び血管位置表示方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20230614BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20230614BHJP
   A61B 5/15 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/107
A61B5/15
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019091841
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020185198
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】深見 美行
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩
(72)【発明者】
【氏名】新井 治
(72)【発明者】
【氏名】笹川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐川 貢一
(72)【発明者】
【氏名】花田 修賢
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊郎
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102360(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183307(WO,A1)
【文献】特開2014-233521(JP,A)
【文献】特開2011-212386(JP,A)
【文献】特開2011-139731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/107
A61B 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部位の解析用画像を画像処理して、前記対象部位に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得する画像処理装置と、
前記血管情報から得られるパラメータが一定の条件を満たす血管を適合血管として選別する選別装置と、
前記適合血管と少なくとも長さが対応し、且つ、前記適合血管を単純化させた表示線を含む投影画像を生成する画像生成装置と、
前記適合血管の位置に前記表示線の位置を対応させて前記投影画像を前記対象部位に投影する投影装置と
を備え
前記選別装置は、血管の延伸方向と血管に針を穿刺しやすい方向とのなす角度に基づいて、前記適合血管を選別し、
前記表示線は、少なくとも一つの直線部で構成され、
前記画像生成装置は、前記適合血管の直進性に基づいて前記表示線の直線部を生成する
ことを特徴とする血管位置表示装置。
【請求項2】
前記画像処理装置が、前記解析用画像の二値化によって血管が下方にある領域をその他の領域と区別して、前記血管情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の血管位置表示装置。
【請求項3】
前記選別装置が、前記血管情報から得られる前記パラメータを判定値と比較して前記適合血管を選別することを特徴とする請求項1又は2に記載の血管位置表示装置。
【請求項4】
前記選別装置が、前記パラメータが前記一定の条件を満たす血管の画像をデータベース化した血管画像情報を用いて、前記適合血管を選別することを特徴とする請求項1又は2に記載の血管位置表示装置。
【請求項5】
前記対象部位に特定の波長の照射光を照射する照明装置と、
前記対象部位を撮影して前記解析用画像を取得する撮像装置と
を更に備え、
前記特定の波長が、前記照射光が前記対象部位に照射されることにより、前記照射光が照射されない場合よりも血管と他の領域との境界が明確である前記解析用画像が前記撮像装置によって取得されるように選択されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の血管位置表示装置。
【請求項6】
前記照射光が近赤外線であることを特徴とする請求項に記載の血管位置表示装置。
【請求項7】
対象部位の解析用画像を画像処理して、前記対象部位に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得するステップと、
前記血管情報から得られるパラメータが一定の条件を満たす血管を適合血管として選別するステップと、
前記適合血管と少なくとも長さが対応し、且つ前記適合血管を単純化させた表示線を含む投影画像を生成するステップと、
前記適合血管の位置に前記表示線の位置を対応させて前記投影画像を前記対象部位に投影するステップと
を含み、
血管の延伸方向と血管に針を穿刺しやすい方向とのなす角度に基づいて、前記適合血管を選別し、
前記表示線は、少なくとも一つの直線部で構成され、
前記適合血管の直進性に基づいて前記表示線の直線部を生成する
ことを特徴とする血管位置表示方法。
【請求項8】
前記解析用画像の二値化によって血管が下方にある領域をその他の領域と区別して、前記血管情報を取得することを特徴とする請求項に記載の血管位置表示方法。
【請求項9】
前記血管情報から得られる前記パラメータを判定値と比較して前記適合血管を選別することを特徴とする請求項7又は8に記載の血管位置表示方法。
【請求項10】
前記パラメータが前記一定の条件を満たす血管の画像をデータベース化した血管画像情報を用いて、前記適合血管を選別することを特徴とする請求項7又は8に記載の血管位置表示方法。
【請求項11】
前記対象部位に特定の波長の照射光を照射しながら前記対象部位を撮影して前記解析用画像を取得するステップを更に含み、
前記特定の波長が、前記照射光が前記対象部位に照射されることにより、前記照射光が照射されない場合よりも血管と他の領域との境界が明確である前記解析用画像が取得されるように選択されていることを特徴とする請求項乃至10のいずれか1項に記載の血管位置表示方法。
【請求項12】
前記照射光が近赤外線であることを特徴とする請求項11に記載の血管位置表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の位置を表示する血管位置表示装置及び血管位置表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの一部を撮影した画像から得られた血管の位置を表示するシステムが開発されている(特許文献1、2参照。)。例えば、近赤外線を吸収するヘモグロビンの性質を利用して、近赤外線を照射した部分を赤外線カメラで撮影して血管を可視化する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4555534号公報
【文献】特許第6127207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、血管を可視化するだけでなく目的に適合する血管の位置を表示する有効な技術が開発されていない。例えば、採血するために針の穿刺に適した血管を表示する方法などが望まれている。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、目的に適合する血管の位置を表示することができる血管位置表示装置及び血管位置表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、対象部位の解析用画像を画像処理して、対象部位に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得する画像処理装置と、血管情報から得られるパラメータが一定の条件を満たす血管を適合血管として選別する選別装置と、適合血管と少なくとも長さが対応し、且つ、適合血管を単純化させた表示線を含む投影画像を生成する画像生成装置と、適合血管の位置に表示線の位置を対応させて投影画像を対象部位に投影する投影装置とを備え、選別装置は、血管の延伸方向と血管に針を穿刺しやすい方向とのなす角度に基づいて適合血管を選別し、表示線は、少なくとも一つの直線部で構成され、画像生成装置は、適合血管の直進性に基づいて表示線の直線部を生成する血管位置表示装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、対象部位の解析用画像を画像処理して、対象部位に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得するステップと、血管情報から得られるパラメータが一定の条件を満たす血管を適合血管として選別するステップと、適合血管と少なくとも長さが対応し、且つ、適合血管を単純化させた表示線を含む投影画像を生成するステップと、適合血管の位置に表示線の位置を対応させて投影画像を対象部位に投影するステップとを含み、血管の延伸方向と血管に針を穿刺しやすい方向とのなす角度に基づいて適合血管を選別し、表示線は、少なくとも一つの直線部で構成され、適合血管の直進性に基づいて表示線の直線部を生成する血管位置表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目的に適合する血管の位置を表示することができる血管位置表示装置及び血管位置表示方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置の構成を示す模式図である。
図2】対象部位に含まれる血管の例を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置により作成される血管の近似線の例を示す模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置により選別された血管を示す模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置が作成する血管の表示線の例を示す模式図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置が生成する投影画像の例を示す模式図である。
図7】投影画像において表示線を太線化した例を示す模式図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置が生成した投影画像を対象部位に投影した例を示す模式図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示方法を説明するためのフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施形態に係る血管位置表示装置の構成を示す模式図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る血管位置表示方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る血管位置表示装置は、被検体の対象部位に含まれる血管の中から、特定の目的に適合する血管の位置を表示する。以下では、図1に示すように、人体の前腕の一部が対象部位2である場合について例示的に説明する。図1に示す血管位置表示装置1は、照明装置10、撮像装置20、演算装置30及び投影装置40を備える。演算装置30は、画像処理装置31、選別装置32及び画像生成装置33を有する。
【0012】
照明装置10は、対象部位2に特定の波長の照射光Lを照射する。撮像装置20は、血管周辺の領域を含む対象部位2を撮影して、対象部位2の解析用画像を取得する。演算装置30は、解析用画像に基づき、対象部位2に含まれる血管の中から一定の条件を満たす血管を、「適合血管」として選別する。更に、演算装置30は、適合血管の表示線を含む投影画像を生成する。演算装置30によって生成された投影画像は、投影装置40によって対象部位2に投影される。以下、血管位置表示装置1の詳細について説明する。
【0013】
照明装置10から照射される照射光Lの波長は、照射光Lが対象部位2に照射されることにより、照射光Lが照射されない場合よりも血管と他の領域との境界が明確である解析用画像が撮像装置20によって取得されるように選択される。例えば、近赤外線を吸収するヘモグロビンの性質を利用して、照射光Lとして波長が800nm~900nm程度の近赤外線を使用してもよい。近赤外線を照射光Lに使用した場合、撮像装置20には赤外線カメラが好適に使用される。その結果、血管が黒く写り、皮膚などのその他の部分が白く写った解析用画像が得られる。
【0014】
ただし、照射光Lが照射されていない場合でも血管と他の領域との境界が明確である解析用画像を取得できる場合には、解析用画像を取得する際に対象部位2に照射光Lを照射することは必ずしも必要でない。
【0015】
撮像装置20によって取得された対象部位2の解析用画像は、画像処理装置31に送信される。画像処理装置31は、解析用画像を画像処理して、対象部位2に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得する。
【0016】
図2に、対象部位2に含まれる血管を画像処理して得られる血管像の例を示す。図2に示した例では、血管201~205の血管情報が取得される。対象部位2で皮膚の下に存在していても血管像が得られていない部分もあり得る。これらの部分は、照射光Lが弱かった部分、撮像装置20の光検出器の感度が低い部分、深い位置にあるなどの理由で血液による光吸収の影響が強くでない部分などが考えられる。なお、血管に分岐がある場合には、画像処理装置31は、分岐する位置から解析用画像で確認できる端部までを一つの血管として、血管情報を取得する。つまり、分岐する位置から個々の端部までを一つの血管とし、それぞれの血管の血管情報が取得される。
【0017】
画像処理装置31は、例えば、血管が下方にある領域(以下、「血管領域」という。)と血管が下方にないその他の領域(以下、「その他領域」という。)との輝度の差に基づいて解析用画像の二値化を行い、血管領域とその他領域を区別して、血管情報を取得する。血管領域では、血管による光の吸収で血管像が暗く見える。このとき、解析用画像について、血管領域とその他領域とでコントラストをつける画像処理をしてから、解析用画像の二値化を行ってもよい。
【0018】
選別装置32は、特定の目的のために一定の範囲にあることが有効なパラメータ(以下において「選別パラメータ」という。)を選別の基準に用いて、解析用画像に含まれる血管像から選別パラメータが一定の条件を満たす血管像を選別する。具体的には、選別装置32は、血管情報から得られる選別パラメータを判定値と比較し、選別パラメータが判定値を満たす血管像を選別する。
【0019】
判定値と比較する選別パラメータは、血管を選別する目的に応じて選択される。例えば、針を穿刺しやすい血管を選別する目的の場合に、針の穿刺しやすさを示すパラメータが選別パラメータとして使用される。例えば、血管の直進性、血管の延伸方向、血管の長さ、血管の太さなどのパラメータが、判定値と比較される。これは、以下の理由による。
【0020】
即ち、血管の直進性が低いほど、針を血管に穿刺することが難しい。したがって、直進性が高い血管ほど好ましい。また、血管の部位によっては、特定の方向からの方が、他の方向からよりも、針を穿刺しやすい場合がある。例えば、前腕に穿刺する場合には、手首から肘に向けた方向が穿刺しやすい方向であることが多い。このように、血管の延伸方向が特定の方向であることが好ましい場合がある。また、血管が短すぎると穿刺が難しいため、血管が一定以上の長さであることが好ましい。一方、血管が太いほど穿刺することが容易であるため、血管の太さが一定以上であることが好ましい。
【0021】
上記のように、選別装置32は、血管を選別する目的に応じた選別パラメータを、その目的に適合するために設定した判定値と比較する。そして、選別装置32は、選別パラメータが判定値を満たす血管を適合血管として選別する。
【0022】
以下に、図2に示した血管201~205から針を穿刺しやすい血管を特定するために、選別装置32が針の穿刺しやすさを示すパラメータを選別パラメータとして血管を選別する例を説明する。ここで、血管の直進性、血管の延伸方向、血管の長さ、血管の太さを選別パラメータとする。
【0023】
血管の直進性を選別パラメータとする場合に、選別装置32は、図3に示すように血管像201~205のそれぞれについて近似線C1~C5を作成する。例えば、選別装置32は、二値化した解析用画像の血管像201~205を細線化により幅を1ピクセルにして、最小二乗法などを用いて近似線C1~C5を作成する。そして、選別装置32は、近似線C1~C5のそれぞれについて得られる決定係数(R2)を判定値と比較する。決定係数が1に近い血管ほど直進性が高く、穿刺しやすい。このため、決定係数の判定値を、例えば0.7以上(判定条件1)とする。
【0024】
血管の延伸方向を選別パラメータとする場合に、選別装置32は、上記の近似線を用いて血管像の延伸方向を特定する。近似線の延伸方向と特定の目的に適した方向とのなす角度(以下、「判定角度」という。)が小さい血管像ほど好ましい。このため、判定角度の判定値を、例えば最小値を-20度、最大値を+20度(判定条件2)とする。なお、目的に適する方向と解析用画像の水平方向が平行になるように解析用画像を取得し、血管像の延伸方向を特定してもよい。
【0025】
血管の長さを選別パラメータとする場合は、血管像の解析用画像に表れる一方の端部から他方の端部までの距離を血管の長さとする。例えば、血管像に近似された幅が1ピクセルの近似線のピクセル数を血管の長さとしてもよい。長い血管ほど、穿刺しやすい。例えば、血管の長さの判定値の最小値を10mm(判定条件3)とする。なお、血管が長すぎると不都合が生じる場合には、血管の長さの判定値に最大値を設けてもよい。
【0026】
血管の太さを選別パラメータとする場合は、解析用画像に表れる血管像の幅について判定値と比較する。或いは、上記で作成した近似線を利用して血管像の幅を算出してもよい。即ち、近似線から周囲に垂線を引き、この垂線と血管像の重なった部分の長さを血管の太さとする。太い血管ほど、穿刺しやすい。例えば、血管の太さの判定値の最小値を2mm(判定条件4)とする。なお、血管が太すぎると不都合が生じる場合には、血管の太さの判定値に最大値を設けてもよい。血管の太さが変化する場合は、最も太い部分若しくは細い部分をその血管の太さとしてもよいし、平均値を血管の太さとしてもよい。
【0027】
選別装置32は、解析用画像に含まれるすべての血管像について、選別パラメータを判定値と比較する。そして、選別パラメータが判定値を満足する血管を適合血管として選別する。例えば、対象部位2に含まれる血管像201~205のそれぞれについて、判定条件1~4のすべてを満足するか否かを判定する。ただし、判定条件1~4のすべてではなく、特に重要な選別パラメータのみを基準にして適合血管を選別してもよい。例えば、血管の直進性、血管の延伸方向、血管の長さ、及び血管の太さの少なくともいずれかを選別パラメータに用いて、適合血管を選別してもよい。
【0028】
上記のようにして、選別装置32は、選別パラメータが一定の条件を満たす血管を、適合血管として選別する。図4に、図2に示した血管像のうち、血管像201と血管像204が適合血管として選別された例を示す。
【0029】
画像生成装置33は、選別装置32により選別された適合血管について、適合血管と少なくとも長さを対応させた表示線を含む投影画像を生成する。以下に、図4に示した適合血管の表示線を含む投影画像を生成する例を説明する。
【0030】
まず、画像生成装置33が、解析用画像における血管像201と血管像204とそれぞれの同等の長さの表示線D201と表示線D204を作成する。例えば直進性の高い選別血管について直線状の表示線が作成されるなど、表示線は実際の血管の形状を単純化して作成される。例えば、湾曲部分などを含む形状の血管像を、曲線若しくは連結した複数の直線を組み合わせた表示線に単純化してもよい。そして、画像生成装置33は、図5に示すように、血管像201と血管像204に表示線D201と表示線D204を重ねた投影画像200を生成する。次いで、画像生成装置33は、図6に示すように投影画像200から血管像201と血管像204を消去し、表示線D201と表示線D204を投影画像200に残す。
【0031】
その後、画像生成装置33は、図7に示すように、投影画像200において表示線D201と表示線D204を任意の幅に太線化する。太線化により、表示線D201と表示線D204の目視が容易になる。なお、太線化では、例えば目視が容易な程度に表示線の幅を広くする。また、太線化しなくても目視が容易であれば、表示線を太線化しなくてもよい。
【0032】
以上により、画像生成装置33による投影画像の生成が完了する。画像生成装置33は、投影画像を投影装置40に送信する。
【0033】
投影装置40は、図8に示すように、画像生成装置33から送信された投影画像を、適合血管の位置に表示線の位置を対応させて、対象部位2に投影する。図8は、表示線D201と表示線D204を含む投影画像を、表示線D201を血管像201の血管に重ね、表示線D204を血管像204の血管に重ねて、対象部位2に投影した例である。上記のように、血管位置表示装置1によれば、血管の形状を単純化した表示線が、血管の位置と重ねて対象部位2に表示される。
【0034】
図9に、血管位置表示装置1を用いた血管位置表示方法における一連の処理を説明するフローチャートを示す。
【0035】
図9のフローチャートのステップS110において、撮像装置20によって対象部位2の解析用画像を取得する。このとき、照明装置10によって対象部位に特定の波長の照射光Lを照射してもよい。
【0036】
ステップS120において、画像処理装置31が解析用画像を画像処理して、対象部位2に含まれる血管の位置及び形状を含む血管情報を取得する。そして、ステップS130において、選別装置32が、血管情報から得られる選別パラメータを判定値と比較し、選別パラメータが一定の条件を満たす血管を適合血管として選別する。ステップS140において、画像生成装置33が、適合血管と少なくとも長さを対応させた適合血管の表示線を含む投影画像を生成する。
【0037】
そして、ステップS150において、投影装置40が、適合血管の位置に表示線の位置を対応させて投影画像を対象部位2に投影する。
【0038】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る血管位置表示装置1では、適合血管を単純化した表示線が適合血管と重ねて対象部位2に投影される。したがって、血管位置表示装置1によれば、選別パラメータが一定の条件を満たす血管の位置が明確且つ単純化されて対象部位2に表示されるため、目的に適合する血管の特定が容易である。
【0039】
(第2の実施形態)
図10に、第2の実施形態に係る血管位置表示装置1の構成を示す。図10に示した血管位置表示装置1は、選別パラメータが一定の条件を満たす血管の画像をデータベース化した血管画像情報を記憶した記憶装置50を更に備える。図10に示した血管位置表示装置1のその他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0040】
血管画像情報は、選別パラメータが特定の目的のために有効な一定の範囲にあることが確認された様々な形状の血管の画像情報を、目的ごとにデータベース化したものである。選別装置32は、データベース化された血管画像情報を参照して、対象部位2の解析用画像に含まれる血管像の画像を、選別パラメータが所定の目的に有効な一定の範囲にあることが確認された血管(以下、「適正血管」という。)の画像と比較する。そして、選別装置32は、解析用画像に含まれる血管像から、その画像が適正血管のいずれかの画像と一致する血管像の血管を適合血管として選別する。
【0041】
第2の実施形態に係る血管位置表示装置1は、適正血管をデータベース化した血管画像情報を用いて適合血管を選別する点が、選別パラメータを判定値と比較して適合血管を選別する第1の実施形態に係る血管位置表示装置1と異なる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0042】
図11に、第2の実施形態に係る血管位置表示装置1を用いた血管位置表示方法における一連の処理を説明するフローチャートを示す。
【0043】
図11のフローチャートのステップS110とステップS120の処理により、図9に示したフローチャートのステップS110とステップS120の処理と同様にして、対象部位2に含まれる血管の血管情報を取得する。そして、図11のステップS135において、選別装置32が、血管画像情報を用いて、解析用画像に含まれる血管像から適合血管を選別する。
【0044】
その後、図11のステップS140とステップS150の処理において、図9のステップS140とステップS150の処理と同様に、適合血管の表示線を含む投影画像を生成し、この投影画像を対象部位2に投影する。
【0045】
第2の実施形態に係る血管位置表示装置1では、目的ごとに多数の適正血管の画像情報をデータベース化することにより、人工知能(AI)技術などを用いて適合血管を選別することも可能である。
【0046】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0047】
例えば、血管位置表示装置1の演算装置30が、対象部位2の撮影場所から離れた場所に設置されていてもよい。
【0048】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1…血管位置表示装置
2…対象部位
10…照明装置
20…撮像装置
30…演算装置
31…画像処理装置
32…選別装置
33…画像生成装置
40…投影装置
50…記憶装置
201~205…血管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11